(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933667
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】酸素含有仕込原料を深度脱硫する方法における亜鉛フェライトをベースとする固体の使用
(51)【国際特許分類】
C07C 29/76 20060101AFI20160602BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20160602BHJP
C07C 31/08 20060101ALI20160602BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
C07C29/76
C07C31/04
C07C31/08
B01J20/06 B
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-227728(P2014-227728)
(22)【出願日】2014年11月10日
(62)【分割の表示】特願2009-234672(P2009-234672)の分割
【原出願日】2009年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-61851(P2015-61851A)
(43)【公開日】2015年4月2日
【審査請求日】2014年11月10日
(31)【優先権主張番号】0805624
(32)【優先日】2008年10月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】アルノー ボドー
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー ユアール
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル トマ
【審査官】
松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2002/074883(WO,A1)
【文献】
特開2005−342611(JP,A)
【文献】
特開平07−039750(JP,A)
【文献】
特開2004−290955(JP,A)
【文献】
国際公開第2001/070393(WO,A1)
【文献】
米国特許第05914288(US,A)
【文献】
米国特許第06290734(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−409/44
B01J 20/00− 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールおよび/またはエタノールと、前記メタノールおよび/またはエタノールを含む仕込原料の重量を基準に1〜10重量%の変性剤とを含むアルコール性仕込原料を脱硫する方法であって、
前記変性剤は少なくとも一つの炭化水素含有化合物と少なくとも一つの硫黄含有有機化合物からなり、
前記炭化水素含有化合物は天然ガス凝縮液、ガソリン、軽油、および、ナフサタイプの炭化水素留分よりなる群から選ばれ、
前記硫黄含有有機化合物はメチル、エチルまたはプロピルチオール、それらの異性体および置換誘導体;テトラヒドロチオフェン;4〜10の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状のチオール;チオフェンおよびそのモノまたはジメチル化誘導体またはベンゾチオフェンおよびそのモノ−またはジ−メチル化誘導体よりなる群から選ばれ、
前記方法は、酸化鉄または酸化亜鉛と、20重量%超の亜鉛フェライトとを含む捕捉塊上に硫黄を捕捉することによって行われ、
前記方法は水素の存在下、200〜400℃の範囲の温度で操作され、
前記捕捉塊は下記の工程
・塩基の存在下に、6.1〜6.9の範囲のpH、30〜50℃の範囲の温度において亜鉛(II)および鉄(III)の各前駆体塩の混合物を共沈させるための工程;
・得られた沈殿物をろ過するための工程;
・得られた固形物を、12〜24時間の範囲の期間にわたって、125〜175℃の範囲の温度で乾燥させるための工程;
・得られた乾燥物を、酸素の存在下に、600〜700℃の範囲の温度で、1〜3時間の範囲の期間にわたって焼成するための工程、
からなる方法で製造されたものである、
脱硫方法。
【請求項2】
操作圧力は、0.2〜3.5MPaの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
操作圧力は、0.5〜3MPaの範囲である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
処理されるべき仕込原料の毎時空間速度は、0.1〜10h−1の範囲である、請求項
1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
水素/仕込原料の容積比は、5〜500の範囲である、請求項1〜4のいずれか1つに
記載の方法。
【請求項6】
前記捕捉塊は、80重量%超の亜鉛フェライトを含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記捕捉塊は、98重量%超の亜鉛フェライトを含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
酸素含有化合物を含む仕込原料は、水蒸気改質、部分酸化または自己熱改質反応による水素の製造のための触媒と接触させられ得る。補足的な水性ガスシフト反応は、水素収率を大いに向上させることができる。しかしながら、仕込原料中の不純物、特に硫黄含有不純物の存在は有害である。それによって、このような反応において用いられる単数種または複数種の触媒が徐々に不活性化する結果になるからである。
【0002】
アルコールリッチな仕込原料から水素を製造するために複数の方法が用いられている。挙げられ得る例は以下の通りである。
【0003】
・部分酸化反応(partial oxidation reaction:POX):これは、制御された量の空気により行われ、発熱性であり、エタノールが用いられる場合、その化学式は以下のように記述される:
【0004】
【化1】
【0005】
・水蒸気改質反応:これは吸熱性であり、以下のように記述される:
【0006】
【化2】
【0007】
・自己熱改質反応:これは、上記2つの反応を一緒に結び付け、一般的には断熱であると考えられ得、一方の反応の発熱性は、他方の吸熱性によってほぼ相殺される。
【0008】
得られた合成ガスは、それ故に、主として一酸化炭素および水素からなる。それはまた、単に空気からの窒素および過剰の水蒸気のみならず、仕込原料中に当初から存在する硫黄含有化合物の分解に由来する硫黄含有化合物も含み得る。
【0009】
補足的な水性ガスシフト(water gas shift:WGS)反応は、合成ガスの一酸化炭素の酸化によって水素収率を大幅に向上させ得る。この反応は以下の通りである。
【0010】
【化3】
【0011】
これらの化学反応は、気相において、頻繁には高温下、典型的には200℃超で、頻繁には600℃超で、触媒の存在下に行われ、この触媒は、しばしば、仕込原料中の硫黄含有化合物の存在に非常に敏感であり、このことは、その後にそれらが徐々に不活性化するという結果になり得る。
【0012】
99.9%超の純度を得るための最終的な水素の精製(例えば、水性ガスシフト反応後)は、PSA(pressure swing adsorption)タイプの吸着法またはパラジウムベースの金属性の膜を用いて行われ得る。全ての場合において、硫黄含有不純物、特に硫化水素の存在は、これらの方法に有害である。
【0013】
法律上の理由のために、アルコールリッチな仕込原料に変性剤が加えられ、そうした仕込原料は食品消費に不適にさせられる。変性剤の量は、一般的にはアルコールの量の1〜10重量%の範囲、より頻繁には2〜5重量%の範囲である。
【0014】
変性剤は、天然ガス凝縮液またはガソリン、軽油またはナフサタイプの炭化水素留分であり得る。炭化水素化合物に加えて、当該変性剤は、一般的に、軽質または中間チオール(mercaptan)タイプの硫黄含有化合物または芳香族性の硫黄含有化合物、例えば、チオフェン、ベンゾチオフェンまたはジベンゾチオフェンおよびそれらの置換誘導体を含む。仕込原料中の硫黄等価物は可変であるが、それは、一般的には、2000ppmS未満、通常は500ppmS未満、さらに100ppmS、なお一層には50ppmSである。
【0015】
仕込原料中の前記硫黄含有化合物の存在は、少量であったとしても、被毒に起因して徐々に不活性化することを受けて単数種または複数種の触媒の正しい機能に有害であることが判明し得る。さらに、PSA(pressure swing adsorption)タイプの方法を用いるか、または、パラジウムベースの膜を用いるかのいずれかの、得られた水素の深度精製も、非常に問題があることが判明し得る。
【背景技術】
【0016】
液体または気体の仕込原料を固体上で脱硫するための多くの方法が従来技術において記載された。
【0017】
挙げられ得る例は、モレキュラーシーブ、一般的にはNaXタイプ(13X)のものを用いて、圧力下に、典型的には、50〜100バールの範囲において、天然ガスを、特に軽質チオールの除去により脱硫し、高温、一般的には300℃程度での熱再生工程を伴う方法である。特許文献1には、当該タイプの方法の例が記載されている。
【0018】
特許文献2には、天然ガスからチオールを除去するためのモレキュラーシーブの使用であって、5個を超える炭素原子を含む炭化水素化合物に富むパージガスを用いて吸着されたチオールの置換の工程を特に含む再生方法を伴う、使用が特に記載されている。
【0019】
特許文献3には、天然ガス等の炭化水素仕込原料を脱硫する方法であって、第1の固体を用いて水蒸気および触媒、例えばアルミナ、チタン、ジルコニアの存在下に硫黄含有COSおよびCS
2タイプの化合物の他の硫黄含有化合物、特にH
2Sへの加水分解を行い、他の硫黄含有化合物は、次いで、第2の吸着固体、特には、酸化亜鉛または酸化ニッケルタイプのものによって捕捉される、方法が記載されている。
【0020】
液体の仕込原料、例えば、軽油またはガソリンタイプのものを吸着または化学吸着タイプの方法を用いて脱硫する方法も挙げられ得る。
【0021】
例えば、特許文献4には、液体炭化水素留分を脱硫するためのモレキュラーシーブの使用であって、痕跡量の湿気を含有するパージガスを用いた熱再生工程を伴う、使用が記載されている。
【0022】
特許文献5には、接触分解(FCC)に由来するガソリンを脱硫するための方法であって、ガソリンを、少なくともチオフェンを含有する軽質フラクションと、重質フラクションとに蒸留する工程を含み、軽質留分は、フォージャサイト(faujasite)Xタイプモレキュラーシーブによる液相吸着法を用いて脱硫され、重質留分は、第VIII族からの少なくとも1種の元素(クロム、モリブデンおよびタングステンによって構成される群から選択される元素)を少なくとも一部硫化物の形態で含む触媒による従来の水素化処理法によって脱硫される、方法が記載されている。
【0023】
特許文献6には、酸化亜鉛および金属性ニッケル等の固体を用いて硫黄含有不純物、特にH
2S、COSおよび軽質チオール等を含有する天然ガスを脱硫した後に、その合成ガスへの変換を行うことが記載されている。
【0024】
特許文献7には、ニッケルベースの触媒を用いて炭化水素仕込原料を脱硫して精製流出物を得る方法であって、硫黄はニッケルと反応して、硫化ニッケルを形成する、方法が記載されている。
【0025】
特許文献8には、炭化水素留分、特にガソリンまたは軽油を脱硫する方法でカルシウム塩(スルファート、シリカート、ホスファート、アルミナート)と結合された、銅、コバルト、ニッケル、マンガンをベースとする金属性の促進剤を用いる、方法が記載されている。
【0026】
特許文献9には、水素の製造を目的として炭化水素仕込原料を脱硫する方法であって、硫黄含有化合物を、穏やかな温度で操作してゼオライト、炭(coal)、活性アルミナ、粘土、シリカ−アルミナ型の第1の固体上へ吸着させ、次いで、高温で操作してニッケルベースの固体上に吸着させることによる、方法が記載されている。
【0027】
特許文献10には、遷移金属カチオン(Cu、Ag)により交換されたYゼオライト等のミクロ孔固体の使用を使用して、π−コンプレックス化現象(π-complexing phenomenon)を介してガソリン等の液体炭化水素留分の脱硫を行うことが記載されている。
【0028】
特許文献11には、銅酸化物および還元金属促進剤を使用して、炭化水素仕込原料の脱硫を行うことが特許請求されている。
【0029】
最後に、特許文献12には、液体炭化水素仕込原料、例えば、ガソリンまたは軽油を脱硫する方法であって、酸素含有流出物、例えばメタノール、エタノールまたはMTBEの存在下にニッケルを用いる、方法が特許請求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】国際公開第03/062177号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0109206号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0131216号明細書
【特許文献4】米国特許第3620969号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/261993号明細書
【特許文献6】米国特許第5882614号明細書
【特許文献7】米国特許第6159256号明細書
【特許文献8】米国特許第6428685号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0091753号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2003/0163013号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開2003/0183803号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開2002/0139718号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
(発明の簡単な説明)
本発明は、酸素含有化合物、炭化水素含有化合物および硫黄含有有機化合物を含む仕込原料を脱硫する方法であって、酸化鉄または酸化亜鉛と、20重量%超の亜鉛フェライトとを含む捕捉塊上に硫黄を捕捉することによる、方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は、酸素含有化合物、好ましくはメタノールおよび/またはエタノールと、炭化水素含有化合物と、硫黄含有有機化合物、好ましくは脂肪族性、環状および/または芳香族性の硫黄含有化合物とを含む仕込原料を脱硫する方法であって、酸化鉄または酸化亜鉛と、20重量%超の亜鉛フェライトとを含む捕捉塊上に硫黄を捕捉することによる、方法に関する。この方法は、水素の存在下、200〜400℃の範囲の温度で操作される。
【0033】
捕捉塊は、20重量%超、より好ましくは50重量%超、より好ましくは80重量%超、一層より好ましくは98重量%超、一層より好ましくは99.5重量%超の亜鉛フェライトを含む。
【0034】
圧力は、一般的には0.2〜3.5MPaの範囲、好ましくは0.5〜3MPaの範囲、一層より好ましくは0.5〜1.5MPaの範囲である。処理されるべき仕込原料の毎時空間速度は、一般的には0.1〜10h
−1の範囲、好ましくは0.5〜5h
−1の範囲である。処理される液体仕込原料の毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、固体化合物の容積にわたる処理される液体仕込原料の容積流量として定義される。水素/仕込原料の容積比は、一般的には5〜500の範囲、好ましくは50〜300の範囲である。水素の流量および処理されるべき液体仕込原料の流量は、通常の条件下に与えられる。
【0035】
本発明の方法は、仕込原料の硫黄含有量を低減させ、連続的な水素製造反応において用いられる単数種または複数種の触媒の不活性化の現象を制限することができる。
【0036】
これらの仕込原料中に存在する硫黄は、基本的には、天然ガス凝縮液、ガソリン、ナフサ、軽油または硫黄含有化合物を含む任意の炭化水素留分タイプの変性剤に由来する。酸素含有化合物を含む仕込原料中の変性剤の量は、一般的には1〜10重量%の範囲、より頻繁には1〜5重量%の範囲または1〜2重量%の範囲である。前記変性剤中の硫黄含有量は、1〜5000ppm硫黄当量の範囲、より一般的には10〜500ppmSの範囲、さらには10〜100ppmSの範囲である。
【0037】
変性剤の性質に応じて、硫黄含有化合物の性質が変わり得る。天然ガス凝縮液の場合、それらは、基本的には、軽質チオール、例えば、メチル、エチル、プロピルまたはブチルチオール、並びにそれらの異性体および置換誘導体またはテトラヒドロチオフェン(tetrahydrothiophene:THT)等の芳香剤としても加えられてよい化合物である。ガソリンの場合、硫黄含有化合物は、例えば4〜10個の炭素原子を含む線状(linear)、分枝状または環状のチオール、並びに芳香族硫黄含有化合物、例えばチオフェンおよびそのモノまたはジメチル化誘導体またはベンゾチオフェンおよびそのモノ−またはジ−メチル化誘導体であり得る。軽油の場合、硫黄含有化合物は、基本的には、芳香族化合物、例えば、ベンゾチオフェンおよびそのモノ−またはジ−メチル化誘導体およびジベンゾチオフェンおよびそのモノ−またはジ−メチル化誘導体、特に4,6−ジメチルジベンゾチオフェンである。
【0038】
脱硫操作は、好ましくは、気相中で行われる。バリエーションにおいて、それは、液相中で行われ得る。これは、反応温度がアルコールおよび水素の混合物の臨界温度より低い時の場合である。
【0039】
本発明の捕捉塊は、硫黄含有有機分子、特に、従来の水素化脱硫操作にとって手に負えないと考えられる分子、例えば、アルキル化されたベンゾ−またはジベンゾ−チオフェンを捕捉する。
【0040】
亜鉛フェライトタイプの混合酸化物は、一般的には、共沈およびその後の焼成によって得られる。調製方法は、促進剤として作用する第2の相の含浸のための中間工程を必要としない。亜鉛フェライト混合酸化物は10m
2/が未満の比表面積を有してさえ活性である。亜鉛フェライトをベースとする活性塊の本発明の合成は、硫黄含有分子に関してこの固体の高い反応性に必要とされる大きな比表面積を作り上げることを目的とする洗練された手順を必要としない。調製方法は、酸化物を活性にするための還元工程を必要とせず、促進剤(例えば鉄または銅の酸化物)の酸化物上への分散工程を必要としない。還元工程(例えば水素中)は、一般的に、反応の発熱性のため、工業スケールで固定床において行うことが困難である。
【0041】
しかしながら、水素中の還元のための先行工程も、本発明の範囲内である。この工程のための典型的な条件は、例えば、300〜400℃の範囲の温度および例えば1気圧〜10バールの範囲の圧力であるだろう。
【0042】
混合型亜鉛フェライトタイプの酸化物を調製する方法は一般的には以下の工程を包含する:
・塩基の存在下に、6.1〜6.9の範囲のpH、30〜50℃の範囲の温度において亜鉛(II)および鉄(III)前駆体塩の混合物を共沈させる工程;
・得られた沈殿物のろ過のための工程;
・12〜24時間の範囲の期間にわたって、125〜175℃の範囲の温度で乾燥させるための工程;
・酸素の存在下に、600〜700℃の範囲の温度で、1〜3時間の範囲の期間にわたって焼成するための工程。
【0043】
本発明において提案された固体は、活性であるために水素による先行活性化のための工程を必要としない。
【0044】
バリエーションにおいて、亜鉛フェライトは、担体、例えばアルミナ上に担持させられ得る。
【0045】
それ故に、アルミナ含有量は、好ましくは、80重量%未満である。
【0046】
式ZnFe
2O
4を有する亜鉛フェライトは、一般的に、フランクリンタイプの結晶構造を有する。
【0047】
亜鉛フェライトの結晶サイズは、一般的には20〜5000Åの範囲、好ましくは100〜1000Åの範囲である。
【0048】
BET法に従う77Kの窒素吸着技術を用いて測定される亜鉛フェライトの比表面積は、一般的には2〜10m
2/gの範囲である。亜鉛フェライトは、10m
2/g未満の比表面積について活性である。亜鉛フェライトは、粉体、小球または押出物の形態で用いられ得る。亜鉛フェライトは、好ましくは、固定床中で操作されるが、移動床を用いて操作することも可能である。
【0049】
BJH法またはそのバリエーションを用いる同じ窒素吸着技術によって測定される亜鉛フェライトのミクロ孔およびメソ孔の容積は、例えば、0.15cm
3/g未満である。
【0050】
水銀圧入および押出技術(これも当業者に周知である)を用いて測定される亜鉛フェライトのマクロ孔容積は、0.025cm
3/g未満である。
【0051】
これらの特徴化技術は、例えば、S Lowellらによる著書「Characterization of Porous Solids and Powder: Surface Area, Pore Size and Density」,Kluver Academic Publishers,2004において記載された。
【発明を実施するための形態】
【0052】
(実施例)
(実施例1:亜鉛フェライトタイプの固体吸着剤の調製)
吸着剤は、硝酸亜鉛(II)、硝酸鉄(III)の水溶液と、塩基性化剤としてのアンモニアの水溶液との混合物の沈殿によって調製された。硝酸塩溶液中、亜鉛および鉄の重量による濃度は、それぞれ、13g/Lおよび22.5g/Lであった。沈殿剤の重量による濃度は225g/Lであった。
【0053】
合成の開始時に、水の開始物は、ジャケット付きボロシリケートガラス反応器に導入され、次いで、プロペラタイプのロータによって供給される約150W/m
3の攪拌出力で40℃に加温された。前駆体および塩基が、次いで、導入速度および合成期間を調節するためのポンプシステムを介して反応器に導入された。pHは、塩基のポンプの流量によって制御された;それは、共沈を通して6.5±0.2に一定に維持された。
【0054】
反応の間、約75W/m
3の攪拌出力が反応媒体に適用され、40℃±2℃の温度が、恒温槽を用いて反応器内で維持された。
【0055】
合成の終了時に、沈殿物は、ブフナーフラスコを通して熱時ろ過された。45分間にわたってろ過した後に得られた湿気のあるケーキ状物は、18時間にわたって150℃の温度でオーブン乾燥させられた。得られた固体は、次いで、分子酸素の存在下に650℃の温度で2時間にわたって焼成された。
【0056】
得られた固体は、Bragg-Brentanoタイプの粉体回折計を用いるX線回折によってθ−θの構成において特徴付けられた。記録条件は以下の通りであった:対陰極電圧は、35kVに調節され、対陰極フィラメント中の強度は、35mAに固定され、サンプリング間隔は0.05°2θであり、間隔当たりの計測時間は、5秒に固定され、角度領域は2〜72°2θであった。本発明者らの固体について得られた実験ディフラクトグラムに関して、ピークの位置は、フランクリナイトZnFe
2O
4(PDF N°00-022-1012)に対応する「Powder Diffraction File」データベースにおいて記録された既知の結晶学的構造の位置に類似していた。例えば、本発明者らの固体についての最も深い実験ピークの位置は、以下の通りであった:29.93°2θ−35.27°2θ−56.61°2θ−62.15°2θ。フランクリナイトについて、それらは、29.92°2θ−35.26°2θ−56.63°2θ−62.21°2θにあった。格子定数(立方晶系の場合においてa=b=c)は同一、すなわち、8.44Åに等しかった。本発明者らの固体について、平均の亜鉛フェライト結晶サイズは410±40Åであった。
【0057】
X線蛍光を用いた半定量分析も、本発明者らの合成された固体について行われた。550℃、4時間で行われた強熱減量についての修正(LOI=0.3%)の後に得られた含有量により、以下の含有量の結果が得られた:重量%Fe=42.48±0.74%および重量%Zn=23.18±0.78%。
【0058】
最後に、固体によって作り上げられた比表面積は、標準ASTM D 3363-84またはNFX 11-621を用いた低温窒素容積測定によって評価された:それは、6±1m
2/gに等しかった。
【0059】
(実施例2:5%のヘキサンおよび60ppmSのブタンチオールにより変性された95%エタノールのモデル仕込原料の亜鉛フェライト上の化学吸着による脱硫)
第2の実施例は、固定床タイプの反応器での固体の使用を記載する。実施例1に記載されたようにして製造された粉体の形態の12グラムの固体が、内径1cmおよび有効体積9cm
3を有するカラムに導入された。固体の密度に応じて、石英ウールおよび試験固体に等価な粒度分布を有する不活性物質が、反応器に対称的に加えられた。カラムは、温度調節されたオーブン中に置かれた。試験の前に、固体は、最初に、水素の流れ(5.7nL/時)の中、高温380℃、7バールの圧力で12時間にわたって還元された。冷却の後、オーブンの温度は250℃にされた。
【0060】
温度調節は、外部調節であり、カラム壁の温度が測定され、このことは、カラム中にサーモウェル(thermowell)なしで操作が行われ得、カラム中の優先進路が回避され得ることを意味する。
【0061】
排出される流出物は、温度保持され、オンライン分析モニタリングのためのサンプリングループを用いて除去された。化合物は、FID検出およびPFPD分析機を用いるガスクロマトグラフィーによって分析された。
【0062】
エタンによって構成されたモデル液体仕込原料が、Gilsonシリンジポンプを用いて4h
−1のHSVで供給され、次いで、専用の装置を用いて水素の存在中で揮発させられ、次いで、反応器に注入された。反応器内の圧力は、9バールであり、反応器入口における水素/仕込原料の比は420であった。
【0063】
仕込原料が吸着剤と接触し始めてすぐに、反応器からの流出物中の硫黄含有量におけるみかけ上即時の降下が、5重量ppm未満の値まで観察された。反応器出口における時間の関数としての硫黄のプロファイルは、その時、一定の1mg/L未満のままであり、その後、急進展の現象が起こり、このことは、吸着剤が完全に硫黄で飽和した時の、入口における硫黄濃度の値への硫黄の濃度上昇に対応する。急進展の前に、ガスクロマトグラフィーのPFPD検出器によって痕跡量の硫黄も検出され得なかった。
【0064】
固体をベースとする亜鉛フェライトの性能を示す2つのパラメータは、記載された例において区別され得る:
・動的容量(dynamic capacity);これは、急進展の直前に吸着剤上に捕捉された硫黄の量に対応する。用いられた操作条件下に、亜鉛フェライトベースの吸着剤の動的硫黄容量は9重量%であった;
飽和容量(saturation capacity):これは、飽和後に測定される吸着剤の最大硫黄容量に対応する。用いられた操作条件下に、亜鉛フェライトベースの吸着剤の硫黄飽和容量は14重量%であった。