特許第5933672号(P5933672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933672
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】有機発光表示装置とその画質補償方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/30 20060101AFI20160602BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20160602BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   G09G3/30 J
   G09G3/20 611H
   G09G3/20 670J
   G09G3/20 641P
   G09G3/20 624B
   G09G3/20 612T
   G09G3/20 631V
   G09G3/20 631R
   G09G3/20 641D
   G09G3/20 642A
   H05B33/14 A
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-244800(P2014-244800)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-108828(P2015-108828A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2014年12月3日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0149395
(32)【優先日】2013年12月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】南 宇 鎭
(72)【発明者】
【氏名】崔 鎭 宅
(72)【発明者】
【氏名】崔 聖 ▲ミン▼
【審査官】 中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−034004(JP,A)
【文献】 特表2012−507041(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/094422(WO,A1)
【文献】 特開2009−053647(JP,A)
【文献】 特開2010−044299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 − 3/38
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する複数の画素を含み、各画素がOLED、前記OLEDに接続された駆動TFT、前記OLEDにデータ信号を供給するためのスイッチTFTを含む有機発光表示装置において、
前記各画素から前記駆動TFTの移動度の変化量をセンシングするセンシング部と、
前記移動度の変化量に基づいて前記駆動TFTのしきい値電圧の変化量を獲得するための補償値計算部と、
前記センシングされた移動度の変化量と、前記獲得されたしきい値電圧の変化量に基づいて、
前記データ信号を調整するデータ補償部と、
を備え
前記センシング部は、前記駆動TFTに印加される第1及び第2データ電圧に応じて前記駆動TFTから第1及び第2出力電圧をさらにセンシングし、
前記補償値計算部は、
前記第1及び第2出力電圧と前記第1及び第2データ電圧との間の機能的相関関係を求め、
前記第1及び第2データ電圧の前記機能的相関関係を示す第1グラフの第1傾きを求め、
前記駆動TFTに印加される基準データ電圧の基準出力電圧を示す基準グラフの基準傾きを求め、
前記第1傾きと前記基準傾きに基づいて、前記駆動TFTの移動度の変化量を求めること、
前記第1及び第2データ電圧の一軸上で、前記第1グラフの第1切片を求め、
前記一軸上で、前記基準グラフの基準切片を求め、
前記第1切片と前記基準切片の間の差に基づいて、前記駆動TFTのしきい値電圧の変化量を求めること
を特徴とする、有機発光表示装置。
【請求項2】
前記センシング部は、
前記駆動TFTのゲートに前記駆動TFTのしきい値電圧より高い一定電圧を印加して前記駆動TFTをターンオンさせ、この状態で一定時間の間に充電された前記駆動TFTのソース電圧を予め決められたセンシング期間内にセンシング電圧として検出することを特徴とする、請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項3】
前記センシング部は、
駆動電源がオンされてから映像表示がなされる前の非表示期間、または画像表示期間中の垂直ブランク期間中に前記移動度の変化量をセンシングすることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項4】
前記補償値計算部は、
前記駆動TFTのソースとドレインとの間の電流によって前記駆動TFTが飽和状態で動作する前に、前記しきい値電圧の変化量を獲得することを特徴とする、請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項5】
前記補償値計算部は、
前記駆動TFTの移動度の変化量としきい値電圧の変化量との間の相関関係の関数式、または、ルックアップテーブルに基づいて、前記駆動TFTの移動度の変化量から前記しきい値電圧の変化量を求めることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項6】
前記センシングされた移動度の変化量に基づいて、データ補償のためのゲイン値を求めるためのゲイン値算出部と、
前記獲得されたしきい値電圧の変化量に基づいて、データの補償のためのオフセット値を求めるためのオフセット値算出部をさらに備え、
前記データ補償部は、前記ゲイン値とオフセット値に基づいて、前記データ信号を調整することを特徴とする、請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項7】
映像を表示する複数の画素を含み、各画素がOLED、前記OLEDに接続された駆動TFT、前記OLEDにデータ信号を供給するためのスイッチTFTを含む有機発光表示装置の画質補償方法において、
前記各画素から前記駆動TFTの移動度の変化量をセンシングする段階と、
前記移動度の変化量に基づいて前記駆動TFTのしきい値電圧の変化量を獲得する段階と、
前記センシングされた移動度の変化量と、前記獲得されたしきい値電圧の変化量に基づいて、前記データ信号を調整する段階と、
前記駆動TFTの移動度の変化量をセンシングする段階は、
前記駆動TFTに第1及び第2データ電圧を印加する段階と、
前記駆動TFTから第1及び第2の出力電圧をセンシングする段階と、
前記第1及び第2出力電圧と前記第1及び第2データ電圧との間の機能的相関関係を求める段階と、
前記第1及び第2データ電圧の前記機能的相関関係を示す第1グラフの第1傾きを求める段階と、
前記駆動TFTに印加される基準データ電圧の基準出力電圧を示す基準グラフの基準傾きを求める段階と、
前記第1傾きと前記基準傾きに基づいて、前記駆動TFTの移動度の変化量を求める段階と、前記駆動TFTのしきい値電圧の変化量を獲得する段階は、
前記第1及び第2データ電圧の一軸上で、前記第1グラフの第1切片を求める段階と、
前記一軸上で、前記基準グラフの基準切片を求める段階と、
前記第1切片と前記基準切片との間の差に基づいて、前記駆動TFTのしきい値電圧の変化量を求める段階と、
を含むことを特徴とする、有機発光表示装置の画質補償方法。
【請求項8】
前記駆動TFTの移動度の変化量をセンシングする段階は、
前記駆動TFTのゲートに前記駆動TFTのしきい値電圧より高い一定電圧を印加して駆動TFTをターンオンさせ、この状態で一定時間の間に充電された前記駆動TFTのソース電圧を予め定められたセンシング期間内にてセンシング電圧で検出することを特徴とする、請求項に記載の有機発光表示装置の画質補償方法。
【請求項9】
前記駆動TFTの移動度の変化量をセンシングする段階は、
駆動電源がオンされてから映像表示がなされる前の非表示期間、または画像表示期間中の垂直ブランク期間の間の前記移動度の変化量をセンシングすることを特徴とする、請求項に記載の有機発光表示装置の画質補償方法。
【請求項10】
前記駆動TFTのしきい値電圧の変化量を獲得する段階は、
前記駆動TFTのソースとドレインとの間の電流によって駆動TFTが飽和状態で動作する前に、前記しきい値電圧の変化量を獲得することを特徴とする、請求項に記載の有機発光表示装置の画質補償方法。
【請求項11】
前記駆動TFTのしきい値電圧の変化量を獲得する段階は、
前記駆動TFTの移動度の変化量としきい値電圧の変化量との間の相関関係の関数式、
または、ルックアップテーブルに基づいて、前記駆動TFTの移動度の変化量から前記しきい値電圧の変化量を求めることを特徴とする、請求項に記載の有機発光表示装置の画質補償方法。
【請求項12】
前記センシングされた移動度の変化量に基づいて、データ補償のためのゲイン値を求める段階と、
前記獲得されたしきい値電圧の変化量に基づいて、データの補償のためのオフセット値を求める段階をさらに含み、
前記データ信号は、前記ゲイン値とオフセット値に基づいて調整されることを特徴とする、請求項に記載の有機発光表示装置の画質補償方法。
【請求項13】
映像を表示する複数の画素を含み、各画素がOLED、前記OLEDに接続された駆動TFT、前記OLEDにデータ信号を供給するためのスイッチTFTを含む有機発光表示装置の画質補償方法において、
前記駆動TFTに第1及び第2データ電圧を印加する段階と、
前記駆動TFTから第1及び第2の出力電圧をセンシングする段階と、
前記第1及び第2の出力電圧と前記第1及び第2データ電圧との間の機能的相関関係を求める段階と、
前記第1及び第2データ電圧の前記機能的相関関係を示す第1グラフの第1傾きを求める段階と、
前記駆動TFTに印加される基準データ電圧の基準出力電圧を示す基準グラフの基準傾きを求める段階と、
前記第1傾きと前記基準傾きに基づいて、前記駆動TFTの移動度の変化量を求める段階と、
前記第1及び第2データ電圧の一軸上で、前記第1グラフの第1切片を求める段階と、
前記一軸上で、前記基準グラフの基準切片を求める段階と、
前記第1切片と前記基準切片との間の差に基づいて、前記駆動TFTのしきい値電圧の変化量を求める段階と、
を含むことを特徴とする有機発光表示装置の画質補償方法。
【請求項14】
前記移動度の変化量と前記しきい値電圧の変化量に基づいて、前記データ信号を調整する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の有機発光表示装置の画質補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス型の有機発光表示装置に関し、特に、有機発光表示装置とその画質補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型の有機発光表示装置は、自ら発光する有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:以下、「OLED」という)を含み、応答速度が速く、発光効率、輝度及び視野角が大きい、という長所を有している。
【0003】
自発光素子であるOLEDは、アノード電極及びカソード電極と、これらの間に形成された有機化合物層(HIL、HTL、EML、ETL、EIL)を含む。有機化合物層は、正孔注入層(Hole Injection layer、HIL)、正孔輸送層(Hole transport layer、HTL)、発光層(Emission layer、EML)、電子輸送層(Electron transport layer、ETL)、電子注入層(Electron Injection layer、EIL)からなる。アノード電極とカソード電極に駆動電圧が印加されると、正孔輸送層(HTL)を通過した正孔及び電子輸送層(ETL)を通過した電子が発光層(EML)に移動して励起子を形成し、その結果、発光層(EML)から可視光が発生する。
【0004】
有機発光表示装置は、OLEDをそれぞれ含む画素をマトリクス形態で配列し、ビデオデータの階調に応じて、画素の輝度を調節する。画素の各々は、OLEDに流れる駆動電流を制御するための駆動TFT(Thin Film Transistor)を含む。しきい値電圧、移動度などのような駆動TFTの電気的特性は、全ての画素で同じように設計されることが望ましいが、実際には、プロセス条件、駆動環境等により、画素ごとに駆動TFTの電気的特性は不均一である。このような理由から、同じデータ電圧に応じた駆動電流は、画素ごとに変わり、その結果、画素間の輝度ばらつきが発生することになる。この問題を解決するために、各画素からの駆動TFTの特性パラメータ(しきい値電圧、移動度)をセンシングし、センシング結果に基づいて入力データを適切に補償することで、輝度不均一を減少させる画質補償技術が知られている。
【0005】
従来の画質補償技術では、駆動TFTのしきい値電圧の変化量と、駆動TFTの移動度の変化量とをセンシングする方法及び期間は、それぞれ異なる。
【0006】
駆動TFT(DT)のしきい値電圧(Vth)の変化を抽出するためのセンシング方法1は、図1及び図2Aに示すように、駆動TFT(DT)をソースフォロワ(Source Follower)方式で動作させた後、駆動TFT(DT)のソース電圧(Vs)をセンシング電圧(VsenA)として検出し、このセンシング電圧(VsenA)に基づいて駆動TFT(DT)のしきい値電圧の変化量を検出する。駆動TFTのしきい値電圧の変化量は、センシング電圧(VsenA)の大きさに応じて決定され、これにより、データの補償のためのオフセット値が求まる。このようなセンシング方法1では、ソースフォロワ(Source Follower)方式で動作される駆動TFT(DT)のゲート‐ソース間電圧(Vgs)が飽和状態(saturation state)に達した(つまり、駆動TFT(DT)のドレイン‐ソース間の電流がゼロになる時)後に、センシング動作が行われなければならないので、センシングに要する時間が長く、センシング速度が遅いという特徴がある。このようなセンシング方法1をスローモード(Slow mode)センシング方法と称する。
【0007】
駆動TFT(DT)の移動度(μ)の変化を抽出するためのセンシング方法2は、図1及び図2Bに示すように、駆動TFT(DT)のしきい値電圧(Vth)を除外した電流能力の特性を規定するために、駆動TFT(DT)のゲートに駆動TFT(DT)のしきい電圧より高い一定電圧(Vdata+X、ここで、Xは、オフセット値の補償に応じた電圧)を印加して駆動TFT(DT)をターンオンさせる。この状態で、一定時間の間に充電された駆動TFT(DT)のソース電圧(Vs)をセンシング電圧(VsenB)として検出する。駆動TFTの移動度の変化量は、センシング電圧(VsenB)の大きさに応じて決定され、これにより、データの補償のためのゲイン値が求められる。センシング方法2は、駆動TFTがターンオンされた状態で行われるので、センシングに要する時間が短く、センシング速度が速いという特徴がある。このようなセンシング方法2をファストモード(Fast mode)センシング方法と称する。
【0008】
スローモードセンシング方法は、そのセンシング速度が遅いため、十分なセンシング期間が必要である。つまり、駆動TFTのしきい値電圧センシング用のスローモードセンシング方法は、ユーザーに認知されることなく、十分センシング時間を割り当てることができるように、第1センシング期間の間、すなわち、ユーザーからのパワーオフコマンド信号に応答して映像表示が終了した後から駆動電源がオフになる前まで実行されるしかない。反面、駆動TFTの移動度センシング用のファストモードセンシング方法は、そのセンシング速度が速いため、第2センシング期間の間、すなわち、ユーザーからのパワーオンコマンド信号に応答して駆動電源がオンされた以後から映像表示が行われる前、または画像表示駆動期間内の垂直ブランク期間で行うことができる。
【0009】
第1センシング期間に更新(UPDATE)されるオフセット値と第2センシング期間に更新されるゲイン値は、互いに影響を及ぼす。つまり、ゲイン値は、オフセット値が反映されたデータ電圧に基づいて求められる。したがって、パワーオフ過程で更新されたオフセット値は、以後パワーオン以後のゲイン値を決定する際に使用できるように不揮発性メモリに記憶させなければならない。このように、従来の画質補償技術では、しきい値電圧の変化量と移動度の変化量を調べるために、互いに異なるセンシング方法を採用しなければならなかったため、センシングに多くの時間がかかり、オフセット値を記憶させるための追加の不揮発性メモリがさらに必要となり、メモリの使用量が増加する問題がある。
【0010】
一方、しきい値電圧の変化量をセンシングするには多くの時間がかかるので、隣接する画像のフレームとの間に配置されて画像が非表示される比較的短い垂直ブランク期間では、しきい値電圧の変化量をセンシングすることは不可能である。したがって、表示装置を長時間駆動して画像表示を継続する場合、従来の画質補償技術は、しきい値電圧の変化量に基づいてオフセット値を更新することができず、その結果、駆動時間の経過によるしきい値電圧の変化の特性を適切に補償することができなくなる。
【0011】
図3は、駆動時間の経過に応じて駆動TFTの移動度(μ)だけでなく、しきい値電圧(Vth)まで変動することを示している。長時間駆動によって表示パネルの温度が上昇するときに、実際の駆動TFTは、移動度(μ)及びしきい値電圧(Vth)の双方が変動する特性を有する。もちろん、温度に応じた駆動TFTのしきい値電圧(Vth)の変化量は、移動度(μ)の変化量に比べ小さい。しかし、高階調に比べ、低階調では、しきい値電圧(Vth)の変化量が小さくても、画素電流の変化に及ぼす影響が相対的で大きいので、駆動TFTのしきい値電圧(Vth)の変化量が重要となる。図3から分かるように、画素の電流変化率は、低階調では、しきい値電圧(Vth)の変化量に大きく依存する。例えば、31階調レベルの低階調では、しきい値電圧(Vth)の変動による画素の電流変化率が約55%水準であり、移動度(μ)の変動による画素の電流変化率である37%に比べ大きい。しきい値電圧(Vth)の変動が適切に補償されない場合、電流不均一現象がもたらされるので、短い時間内に移動度(μ)の補償だけでなく、しきい値電圧(Vth)補償まで行うことができる新たな方法が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、センシングに必要な時間とメモリ使用量を削減し、補償の正確度を高めることが可能な有機発光表示装置とその画質補償方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明に係る有機発光表示装置は、
映像を表示する複数の画素を含み、各画素がOLED、前記OLEDに接続された駆動TFT、前記OLEDにデータ信号を供給するためのスイッチTFTを含む有機発光表示装置において、前記各画素から前記駆動TFTの移動度の変化量をセンシングするセンシング部と前記移動度の変化量に基づいて前記駆動TFTのしきい値電圧の変化量を獲得するための補償値計算部と、前記センシングされた移動度の変化量と、前記獲得されたしきい値電圧の変化量とに基づいて、前記データ信号を調整するデータ補償部とを備える。
【0014】
前記センシング部は、前記駆動TFTのゲートに前記駆動TFTのしきい値電圧より高い一定電圧を印加して前記駆動TFTをターンオンさせ、この状態で一定時間の間に充電された前記駆動TFTのソース電圧を予め定められたセンシング期間内においてセンシング電圧で検出する。
【0015】
前記センシング部は駆動電源がオンされてから映像表示がなされる前の非表示期間、または画像表示期間中の垂直ブランク期間の間の前記移動度の変化量をセンシングする。
【0016】
前記補償値計算部は、前記駆動TFTのソース及びドレインの間の電流によって前記駆動TFTが飽和状態で動作する前に、前記しきい値電圧の変化量を獲得する。
【0017】
前記補償値計算部は、前記駆動TFTの移動度の変化量としきい値電圧の変化量との間の相関関係の関数式または、ルックアップテーブルに基づいて、前記駆動TFTの移動度の変化量から前記しきい値電圧の変化量を求める。
【0018】
本発明による有機発光表示装置は、前記センシングされた移動度の変化量に基づいて、データ補償のためのゲイン値を求めるためのゲイン値算出部と、前記獲得されたしきい値電圧の変化量に基づいて、データの補償のためのオフセット値を求めるためのオフセット値算出部をさらに備え、前記データ補償部は、前記ゲイン値とオフセット値に基づいて、前記データ信号を調整する。
【0019】
本発明による有機発光表示装置は、前記センシング部が、前記駆動TFTに印加される第1及び第2データ電圧に応じて前記駆動TFTから第1及び第2の出力電圧をさらにセンシングし、前記補償値計算部が、前記第1及び第2の出力電圧と前記第1及び第2データ電圧との間の機能的相関関係を求め、前記第1及び第2データ電圧の前記機能的相関関係を示す第1グラフの第1傾きを求め、前記駆動TFTに印加される基準データ電圧に対する基準出力電圧を示す基準グラフの基準傾きを求め、前記第1傾きと前記基準傾きに基づいて、前記駆動TFTの移動度の変化量を求める。
【0020】
前記補償値計算部は、前記第1及び第2データ電圧の一軸上で、前記第1グラフの第1切片を求め、前記一軸上で、前記基準グラフの基準切片を求め、前記第1切片と前記基準切片間の差に基づいて、前記駆動TFTのしきい値電圧の変化量を求める。
【0021】
また、本発明の実施の形態に基づいて映像を表示する複数の画素を含み、
各画素がOLED、前記OLEDに接続された駆動TFT、前記OLEDにデータ信号を供給するためのスイッチTFTを含む有機発光表示装置の画質補償方法は、前記各画素から前記駆動TFTの移動度の変化量をセンシングする段階と、前記移動度の変化量に基づいて前記駆動TFTのしきい値電圧の変化量を獲得する段階と、前記センシングされた移動度の変化量と前記獲得されたしきい値電圧の変化量とに基づいて、前記データ信号を調整する段階とを含む。
【発明の効果】
【0022】
第1に、本発明は、センシング速度が速い移動度センシング方法でしきい値電圧の変化量まで知ることができ、メモリ使用量とロジック・サイズ、及びセンシングにかかる時間を大幅に減少させることができる。
【0023】
第2に、本発明は、移動度補償としきい値電圧補償を1つのプロセス内で実行するため、TFTの実際のパラメータの変動特性を正確に補償することができ、補償能力を最大化することができる。
【0024】
第3に、本発明は、移動度補償としきい値電圧補償を1つのプロセス内で実行するため、補償プロセスが簡素化され、これは、ユーザーの利便性を増大させる。
【0025】
第4に、本発明は、移動度補償としきい値電圧補償が1つのプロセス内で実行されるため、従来技術に比べ移動度の変化量補償のための補償値のマージンを十分に確保することができる。図16のように継続的な画像表示駆動により劣化が3Yほど発生して、初期状態から駆動TFTの移動度及びしきい値電圧がそれぞれ2YとYほど追加補償するべき場合を仮定して、従来技術に対比される本発明の効果をさらに説明すると次の通りである。
【0026】
従来の画質補償技術では、駆動TFTのしきい値電圧の変化量の補償を、図9の第2非表示区間(X2)で行わざるを得ないため、画像表示区間(X0)から発生される3Yほどの劣化を補償するために、初期状態から3Yほど移動度だけを追加補償するしかない。従来技術では、移動度補償のための補償値のマージンを確保し難い。
【0027】
反面、本発明では、駆動TFTのしきい値電圧の変化量の補償が、図9の第1非表示区間(X1)または画像表示区間(X0)で駆動TFTの移動度補償と共に行われることがあり、初期状態から駆動TFTの移動度及びしきい値電圧をそれぞれ2YとYほど追加補償することができる。本発明では、移動度補償のための補償値のマージンを確保しやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来の画質補償技術を示す図である。
図2A】従来の画質補償技術で駆動TFTのしきい値電圧の変化を抽出するためのセンシングの原理を示す図である。
図2B】従来の画質補償技術で駆動TFTの移動度の変化を抽出するためのセンシングの原理を示す図である。
図3】駆動時間の経過に応じて、駆動TFTの移動度だけでなく、しきい値電圧まで変動することを示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置を示すブロック図である。
図5図4の表示パネルに形成された画素アレイを示す図である。
図6】外部補償用画素の具体的な構成と、タイミングコントローラ、データ駆動回路と画素間の接続構造を示す図である。
図7】センシング駆動時のファストモードセンシングを実現することができるセンシング用の第1及び第2ゲートパルスとサンプリングと初期化制御信号のタイミングを示す図である。
図8】画像表示駆動時の、画像表示用の第1及び第2ゲートパルスとサンプリングと初期化制御信号のタイミングを示す図である。
図9】画像表示区間とその両側に配置された非表示の区間を示す図である。
図10】本発明に係る有機発光表示装置の画質補償方法を示す図である。
図11】本発明の適用時の、駆動TFTの特性曲線の整合度を示す図である。
図12】本発明に係る有機発光表示装置の画質補償装置を示す図である。
図13】センシング電圧に基づいて求められるN次関数式を利用して、しきい値電圧の変化量を獲得する一例を示す図である。
図14】センシング電圧に基づいて求められるN次関数式を利用して、しきい値電圧の変化量を獲得する一例を示す図である。
図15】センシング電圧に基づいて移動度の変化量を求め、予め設定されたルックアップテーブルの移動度の変化量−しきい値電圧の間の変化量の相関関係を利用して、しきい値電圧の変化量を獲得する一例を示す図である。
図16】本発明の1つの効果として、移動度の変化を補償するためのゲイン値のマージンが増加する原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図4乃至図16を参照して本発明の望ましい実施の形態に対して説明する。
【0030】
図4は本発明の実施の形態に係る画質補償装置を含む有機発光表示装置を示し、図5図4の表示パネルに形成された画素アレイを示す。
【0031】
図4及び図5を参照すると、本発明の実施の形態に係る有機発光表示装置は、表示パネル10、データ駆動回路12、ゲート駆動回路13、及びタイミングコントローラ11を備える。
【0032】
表示パネル10には、複数のデータライン14と複数のゲートライン16とが交差され、この交差領域ごとに画素(P)がマトリックス状に配置される。データライン14は、m(mは正の整数)個のデータ電圧供給ライン(14A_1乃至14A_m)とm個のセンシング電圧リードアウトライン(14B_1乃至14B_m)を含む。そして、ゲートライン15は、n(nは正の整数)個の第1ゲートライン(15A_1乃至15A_n)とn個の第2ゲートライン(15B_1乃至15B_n)を含む。
【0033】
画素(P)のそれぞれは、図示しない電源発生部からの高電位駆動電圧(EVDD)と低電位駆動電圧(EVSS)の供給を受ける。本発明の画素(P)は、外部補償のためのOLED、駆動TFT、第1及び第2スイッチTFT、及びストレージキャパシタを含むことができる。画素(P)を構成するTFTはp型で実現されるか、または、n型で実現することができる。また、画素(P)を構成するTFTの半導体層は、アモルファスシリコンや、ポリシリコン、または酸化物を含むことができる。
【0034】
各画素(P)は、データ電圧供給ライン(14A_1乃至14A_m)のいずれか1つに接続され、センシング電圧リードアウトライン(14B_1乃至14B_m)のいずれか1つに接続され、第1ゲートライン(15A_1乃至15A_n)のいずれか1つに接続され、そして第2ゲートライン(15B_1乃至15B_n)のいずれか1つに接続される。駆動TFTの移動度の変化量としきい値電圧の変化量を検出するためのセンシング駆動時に、画素(P)は、第1ゲートライン(15A_1乃至15A_n)からライン順次方式で供給されるセンシング用の第1ゲートパルス、及び第2ゲートライン(15B_1乃至15B_n)からライン順次方式で供給されるセンシング用の第2ゲートパルスに応答し、1水平ライン分ずつ(L#1〜L#n)順次動作して、センシング電圧リードアウトライン(14B_1乃至14B_m)を介してセンシング電圧を出力する。画像表示のための画像表示駆動時に、画素(P)は、第1ゲートライン(15A_1乃至15A_n)からライン順次方式で供給される画像表示用の第1ゲートパルス、及び第2ゲートライン(15B_1乃至15B_n)からライン順次方式で供給される画像表示用の第2ゲートパルスに応答し、1水平ライン分ずつ(L#1〜L#n)順次動作し、データ電圧供給ライン(14A_1乃至14A_m)を介して画像表示用のデータ電圧の入力を受ける。
【0035】
データ駆動回路12は、センシング駆動時に、タイミングコントローラ11からのデータ制御信号(DDC)に基づいて、センシング用の第1ゲートパルスに同期されるセンシング用のデータ電圧を画素(P)に供給するとともに、センシング電圧リードアウトライン(14B_1乃至14B_m)を介して表示パネル10から入力されるセンシング電圧をデジタル値に変換してタイミングコントローラ11に供給する。データ駆動回路12は、画像表示駆動時に、データ制御信号(DDC)に基づいて、タイミングコントローラ11から入力されるデジタル補償データ(MDATA)を画像表示用のデータ電圧に変換した後、その画像表示用データ電圧を画像表示用の第1ゲートパルスに同期させてデータ電圧供給ライン(14A_1乃至14A_m)に供給する。
【0036】
ゲート駆動回路13は、タイミングコントローラ11からのゲート制御信号(GDC)に基づいてゲートパルスを発生する。ゲートパルスは、センシング用の第1ゲートパルス、センシング用の第2ゲートパルス、及び画像表示用の第1ゲートパルス、画像表示用の第2ゲートパルスを含むことができる。ゲート駆動回路13は、センシング駆動時に、センシング用の第1ゲートパルスを、ライン順次方式で第1ゲートライン(15A_1乃至15A_n)に供給するとともに、センシング用の第2ゲートパルスを、ライン順次方式で第2ゲートライン(15B_1乃至15B_n)に供給することができる。ゲート駆動回路13は、画像表示駆動時に、画像表示用の第1ゲートパルスを、ライン順次方式で第1ゲートライン(15A_1乃至15A_n)に供給するとともに、画像表示用の第2ゲートパルスを、ライン順次方式で第2ゲートライン(15B_1乃至15B_n)に供給することができる。ゲート駆動回路13は、GIP(Gate−driver In Panel)方式によって、表示パネル10上に直接形成することができる。
【0037】
タイミングコントローラ11は、垂直同期信号(VsYnc)、水平同期信号(HsYnc)、ドットクロック信号(DCLK)及びデータイネーブル信号(DE)などのタイミング信号に基づいて、データ駆動回路12の動作タイミングを制御するためのデータ制御信号(DDC)と、ゲート駆動回路13の動作タイミングを制御するためのゲート制御信号(GDC)を発生する。また、タイミングコントローラ11は、データ駆動回路12から供給されるデジタルセンシング電圧値を参照して、入力デジタルビデオデータ(DATA)を変調することにより、駆動TFTのしきい値電圧の変化と移動度の変化を補償するためのデジタル補償データ(MDATA)の発生後、このデジタル補償データ(MDATA)をデータ駆動回路12に供給する。
【0038】
タイミングコントローラ11は、センシング駆動時に、各画素からファストモードセンシング方法によって、少なくとも一つ以上のセンシング電圧が得られるように、データ駆動回路12とゲート駆動回路13の動作タイミングを制御する。また、タイミングコントローラ11は、データ駆動回路12から入力されるデジタルセンシング電圧(Vsen)に基づいて、駆動TFTの移動度の変化量を導出し、次いで、得られた移動度の変化量に基づいて、駆動TFTのしきい値電圧の変化量を導出する。タイミングコントローラ11は、駆動TFTのしきい値電圧の変化を補償するためのオフセット値と、駆動TFTの移動度の変化を補償するためのゲイン値を決定した後、このゲイン値とオフセット値を入力デジタルビデオデータ(DATA)に適用して、画素に印加されるデジタル補償データ(MDATA)を生成する。
【0039】
メモリ20は、移動度の変化量導出の基準となる基準電圧、オフセット値とゲイン値の決定の基準となる基準補償値を記憶することができる。
【0040】
図6は、外部補償用の画素の具体的な構成と共に、タイミングコントローラ及びデータ駆動回路と画素との間の接続構造を示す。図7は、センシング駆動時のファストモードセンシングを実現することができるセンシング用の第1及び第2ゲートパルスと、サンプリングと、初期化制御信号のタイミングを示す。図8は、画像表示駆動時に、画像表示用の第1及び第2ゲートパルス、サンプリング、及び初期化制御信号のタイミングを示す。図9は、画像表示区間とその両側に配置された非表示区間を示す。
【0041】
図6を参照すると、画素(P)は、OLED、駆動TFT(DT)、ストレージキャパシタ(Cst)、第1スイッチTFT(ST)、及び第2スイッチTFT(ST2)を備えることができる。
【0042】
OLEDは、第2ノード(N2)に接続されたアノード電極と、低電位駆動電圧(EVSS)の入力端に接続されたカソード電極と、アノード電極とカソード電極との間に位置する有機化合物層を含む。
【0043】
駆動TFT(DT)は、ゲートーソース間電圧(Vgs)に応じて、OLEDに流れる電流(Ioled)を制御する。駆動TFT(DT)は、第1ノード(N1)に接続されたゲート電極、高電位駆動電圧(EVDD)の入力端に接続されたドレイン電極、及び第2ノード(N2)に接続されたソース電極を備える。
【0044】
ストレージキャパシタ(Cst)は、第1ノード(N1)と第2ノード(N2)との間に接続される。
【0045】
第1スイッチTFT(ST1)は、センシング駆動時に、センシング用の第1ゲートパルス(図7のSCAN)に応答して、データ電圧供給ライン(14A)に充電されたセンシング用データ電圧(駆動TFTのしきい値電圧より高い一定電圧)を第1ノード(N1)に印加する。第1スイッチTFT(ST1)は、画像表示駆動時に、画像表示用の第1ゲートパルス(図8のSCAN)に応答して、データ電圧供給ライン(14A)に充電された画像表示用のデータ電圧(Vdata、駆動TFTのしきい値電圧の変化と移動度の変化が補償されたデータ電圧)を第1ノード(N1)に印加して、駆動TFTをターンオンさせる。第1スイッチTFT(ST1)は、第1ゲートライン(15A)に接続されたゲート電極、データ電圧供給ライン(14A)に接続されたドレイン電極、及び第1ノード(N1)に接続されたソース電極を備える。
【0046】
第2スイッチTFT(ST2)は、センシング駆動時に、センシング用第2ゲートパルス(図7のSEN)に応答して、第2ノード(N2)とセンシング電圧リードアウトライン(14B)との間の電流の流れをスイッチングすることにより、第2ノード(N2)のソース電圧をセンシング電圧リードアウトライン(14B)のセンシングキャパシタ(CX)で保持する。第2スイッチTFT(ST2)は、画像表示駆動時に、画像表示用の第2ゲートパルス(図8のSEN)に応答して、第2ノード(N2)とセンシング電圧リードアウトライン(14B)との間の電流の流れをスイッチングすることにより、駆動TFT(DT)のソース電圧を初期化電圧(Vpre)でリセットする。第2スイッチTFT(ST2)のゲート電極は、第2ゲートライン(15B)に接続され、第2スイッチTFT(ST2)のドレイン電極は、第2ノード(N2)に接続され、第2スイッチTFT(ST2)のソース電極は、センシング電圧リードアウトライン(14B)に接続される。
【0047】
データ駆動回路12は、データ電圧供給ライン(14A)及びセンシング電圧リードアウトライン(14B)を介して画素(P)に接続されている。センシング電圧リードアウトライン(14B)には、第2ノード(N2)のソース電圧をセンシング電圧(Vsen)で保持するためのセンシングキャパシタ(CX)が形成されることができる。データ駆動回路12は、デジタル‐アナログコンバータ(DAC)、アナログ‐デジタル・コンバータ(ADC)、初期化スイッチ(SW1)、及びサンプリング・スイッチ(SW2)などを含む。
【0048】
DACは、センシング駆動時のタイミングコントローラ11の制御下にセンシング用のデータ電圧(Vdata)を生成して、データ電圧供給ライン(14A)に出力することができる。DACは、画像表示駆動時のタイミングコントローラ11の制御下にデジタル補償データを画像表示用のデータ電圧(Vdata)に変換して、データ電圧供給ライン(14A)に出力することができる。
【0049】
初期化スイッチ(SW1)は、初期化制御信号(図7及び図8のSPRE)に応答して初期化電圧(Vpre)入力端とセンシング電圧リードアウトライン(14B)との間の電流の流れをスイッチングする。サンプリングスイッチ(SW2)は、センシング駆動時のサンプリング制御信号(図7のSSAM)に応答して、センシング電圧リードアウトライン(14B)とADCとの間の電流の流れをスイッチングして、一定時間の間、センシング電圧リードアウトライン(14B)のセンシングキャパシタ(CX)で保持された駆動TFT(DT)のソース電圧をセンシング電圧としてADCに供給する。ADCは、センシングキャパシタ(CX)で保持されたアナログセンシング電圧をデジタル値(Vsen)に変換してタイミングコントローラ11に供給する。サンプリングスイッチ(SW2)は、画像表示駆動時のサンプリング制御信号(図8のSSAM)に応答して、継続してターンオフ状態を維持する。
【0050】
図6及び図7を参照してセンシング駆動時画素(P)の動作を説明すると次の通りである。
【0051】
本発明のファストモードセンシング方法によるセンシング駆動は、プログラミング期間(Tpg)、センシング及び保持期間(Tsen)、及びサンプリング期間(Tsam)を含む。
【0052】
プログラミング期間(Tpg)では、駆動TFT(DT)をターンオンさせるために、駆動TFT(DT)のゲート―ソース間電圧が設定される。このため、センシング用の第1及び第2ゲートパルス(SCAN、SEN)並びに初期化制御信号(SPRE)は、オンレベルで入力され、サンプリング制御信号(SSAM)はオフレベルで入力される。これにより、第1スイッチTFT(ST1)は、オンされて、センシング用のデータ電圧を第1ノード(N1)に供給し、第1スイッチ(SW1)と第2スイッチTFT(ST2)は、オンされて、初期化電圧(Vpre)を第2ノード(N2)に供給する。このとき、第2スイッチ(SW2)はオフになっている。
【0053】
センシング&保持期間(Tsen)は、駆動TFT(DT)に流れる電流(Ids)によって駆動TFT(DT)のソース電圧が増加されることをセンシング及び保持する。センシング&保持期間(Tsen)では、正確なセンシングのための駆動TFT(DT)のゲート―ソース間電圧が一定に維持されなければならない。このため、センシング用の第1ゲートパルス(SCAN)は、オフレベルで入力され、センシング用の第2ゲートパルス(SEN)は、オンレベルで入力され、初期化制御信号(SPRE)及びサンプリング制御信号(SSAM)もオフレベルで入力される。センシング&保持期間(Tsen)で駆動TFT(DT)を介して流れる電流(Ids)により、第2ノード(N2)の電位は増加し、第2ノード(N2)の充電電圧(ソース電圧)が第2スイッチTFT(ST2)を経由してセンシングキャパシタ(CX)で保持されることになる。
【0054】
サンプリング期間(Tsam)では、一定時間の間センシングキャパシタ(CX)で保持された駆動TFT(DT)のソース電圧をセンシング電圧としてADCに供給する。このため、センシング用の第1ゲートパルス(SCAN)は、オフレベルで入力され、センシング用の第2ゲートパルス(SEN)とサンプリング制御信号(SSAM)は、オンレベルで入力され、初期化制御信号(SPRE)は、オフレベルで入力される。
【0055】
本発明は、ファストモードセンシング方法のみを利用してセンシング電圧を得て、このセンシング電圧に基づいて、駆動TFTのしきい値電圧の変化量と移動度の変化量の双方を求める。本発明においては、駆動TFTのしきい値電圧の変化量を求めるために、従来のスローモードセンシング方法を採用しない。ファストモードセンシング方法は、ソースフォロワ方式のスローモードセンシング方法に比べてセンシング速度が数十倍〜数百倍ほど速いので、本発明において、センシングに所要する時間は大幅に減る。本発明のセンシング駆動はファストモードセンシング方法を採用するために、図9のように、画像表示区間(X0)内に属する垂直ブランク期間(VB)、または、画像表示区間(X0)の前部に配置された第1非表示区間(X1)で行われることができる。本発明は、ファストモードセンシング方法によって得られたセンシング電圧に基づいて駆動TFTのしきい値電圧の変化量までを導出するために、画像表示区間(X0)の後部に配置された第2非表示区間(X2)でセンシング駆動を行う必要がない。ここで、垂直ブランク期間(VB)は、隣接した画像表示フレーム(DF)との間の区間で定義される。第1非表示区間(X1)は、駆動電源イネーブル信号(PEN)の印加時点から数十〜数百フレーム経過するまでの区間で定義され、第2非表示区間(X2)は、駆動電源をディセーブル信号(PDIS)の印加時点から数十〜数百フレーム経過するまでの区間で定義することができる。
【0056】
一方、このようなセンシング駆動を介して駆動TFTのしきい値電圧の変化と移動度の変化を補償するための補償値が決定されると、補償データ電圧を画素に印加して画像を表示する画像表示駆動が行われる。
【0057】
図6及び図8を参照して画像表示駆動時画素(P)の動作を説明すると次の通りである。
【0058】
本発明の画像表示駆動は、第一期間、第二期間、第三期間に分けて行われる。
【0059】
第一期間で、第1スイッチ(SW1)と第2スイッチTFT(ST2)はオンされ、第2ノード(N2)を初期化電圧(Vpre)にリセットさせる。
【0060】
第二期間で、第1スイッチTFT(ST1)は、オンされて補償用データ電圧(Vdata)を第1ノード(N1)に供給する。この時、第2ノード(N2)は、第2スイッチTFT(ST2)を介して初期化電圧(Vpre)を維持している。したがって、この期間で駆動TFT(DT)のゲート−ソース間電圧(Vgs)は、所望するレベルにプログラミングされる。
【0061】
第三期間で、第1及び第2スイッチTFT(ST1、ST2)がオフされ、駆動TFT(DT)は、プログラミングされたレベルで駆動電流(Ioled)を発生させ、OLEDに印加する。OLEDは、駆動電流(Ioled)に対応する明るさで発光して階調を表示する。
【0062】
図10は、本発明に係る有機発光表示装置の画質補償方法を示す。そして、図11は、本発明の適用時に駆動TFTの特性曲線の整合度を示す。
【0063】
図10を参照すると、本発明は、前述したように、画像を表示する前に(図9のX1)、または、画像表示中(図9のX0中のVB)に、ファストモードセンシング方法によってセンシング電圧を得る。このセンシング電圧に基づいて、移動度の変化量をセンシングした後、この移動度の変化量に応じたしきい値電圧の変化量を獲得する。本発明は、しきい値電圧の変化量を獲得するために、移動度の変化量センシング時に求められた関数式を利用し、あるいは、予め設定されたルックアップテーブルの移動度の変化量−しきい値電圧の変化量の間の相関関係を利用することもできる。移動度の変化量は、ゲイン値の補正と算出の基礎となり、算出されたゲイン値は、メモリに記憶される。しきい値電圧の変化量は、オフセット値補正と、算出の基礎となり、算出されたオフセット値は、メモリに記憶される。
【0064】
本発明は、センシング速度が速い移動度センシング方法でしきい値電圧の変化量まで知ることができ、ロジックのサイズを減少させることができる。従来では、初期オフセット値とは別に駆動オフ過程(図9のX2)で得られたオフセット値を保持するための追加のメモリ容量がさらに必要だったが、本発明は、移動度補償としきい値電圧補償を1つのプロセス(図9のX1、図9のX0の中のVB)内で同時に進行することができるので、追加のメモリ容量を必要としない。本発明は、メモリの第1記憶領域に初期ゲイン値を継続して保持させるか、または初期ゲイン値を新しい値で更新することができ、メモリの第2記憶領域に初期オフセット値を継続して保持させるか、または初期オフセット値を新しい値で更新することができる。
【0065】
本発明は、移動度補償としきい値電圧補償を1つのプロセス内で実行するため、TFTの実際のパラメータの変動特性を正確に補償することができ、補償能力を最大化することができる。
【0066】
例えば、図11の(A)で、温度上昇に伴って移動度(μ)の増加としきい値電圧(Vth)の減少が発生したと仮定すると、1番の初期TFT特性曲線は、2番の中間TFT特性曲線を経て、3番の最終TFT特性曲線に変わることになる。
【0067】
ところで、従来のように長時間駆動によって移動度(μ)の補償だけ行われる場合、1番の初期のTFT特性曲線は、図11の(B)のように、目標値から外れた4番の最終TFT特性曲線に歪曲されるようになるこのようなエラーは、しきい値電圧(Vth)の変化を考慮することなく、ただ移動度(μ)の変化だけで電流変動が発生したと認識したことから始まる。このような移動度(μ)の補償は比較的高階調を対象に行われるので、高階調以外の中間階調と低階調での補償の偏差が大きくなる問題がある。これに対し、本発明は、移動度(μ)の補償としきい値電圧(Vth)の補償を一プロセス内ですべて実行するので、図11の(A)に近い結果を得ることができる。
【0068】
図12は、本発明に係る有機発光表示装置の画質補償装置を示す。図13及び図14は、センシング電圧に基づいて求められるN次関数式を利用して、しきい値電圧の変化量を獲得する一例を示す。図15は、センシング電圧に基づいて移動度の変化量を求め、予め設定されたルックアップテーブルの移動度の変化量−しきい値電圧の変化量の相関関係を利用して、しきい値電圧の変化量を獲得する一例を示す。そして、図16は、本発明の一の効果として、移動度の変化を補償するためのゲイン値のマージンが増加する原理を示す。
【0069】
図12を参照すると、本発明に係る有機発光表示装置の画質補償装置は、センシング部30、補償パラメータ決定部40、データ補償部50を含む。センシング部30は、前述したデータ駆動回路12に含まれることができ、補償パラメータ決定部40と、データ補償部50は、前述したタイミングコントローラ11に含まれることができる。
【0070】
センシング部30は、表示パネルに形成された各画素からのファストモードセンシング方法に応じて、少なくとも一つ以上のセンシング電圧(Vsen)の入力を受ける。
【0071】
補償パラメータ決定部40は、センシング電圧(Vsen)に基づいて画素に含まれた駆動TFTの移動度の変化量を導出し、前記移動度の変化量に基づいて、駆動TFTのしきい値電圧の変化を補償するためのオフセット値(OSV)と駆動TFTの移動度の変化を補償するためのゲイン値(GV)を決定する。そのために、補償パラメータ決定部40は、補償値計算部41、オフセット値算出部42、ゲイン値算出部43を含む。
【0072】
補償値計算部41は、センシング電圧(Vsen)に基づいて駆動TFTの移動度の変化量を求め、駆動TFTの移動度の変化量に応じて駆動TFTのしきい値電圧の変化量を求めた後、しきい値電圧の変化量に応じての補償値1を導出し、移動度の変化量に応じて補償値2を導出する。補償値計算部41は、補償値1と補償値2を導出するために、図13及び図14に示すように関数式を利用し、あるいは、図15のようにルックアップテーブルを利用することができる。
【0073】
まず、図13及び図14を参照すると、補償値計算部41は、センシング電圧(Vsen)に基づいて駆動TFTの移動度の変化量を求めるためのN(Nは正の整数)次の関数式を導出し、このN次関数式を利用して駆動TFTのしきい値電圧の変化量までも計算することができる。N次関数式を導出するための補償値計算部41は、同じ画素に互いに異なるレベルのセンシング用のデータ電圧をN回印加してN個のセンシング電圧(Vsen)を得て、センシング用のデータ電圧とセンシング電圧を互いに対応させる座標点を求めることができる。
【0074】
例えば、補償値計算部41は、図13の第1及び第2センシング用データ電圧(V1、V2)に対応する初期のセンシング値(Vout1、Vout2)を介して、P1、P2を有するグラフ1(G1)に該当される1次関数式1を計算する。ここで、初期センシング値(Vout1、Vout2)は、製品出荷段階でセンシングされ、メモリに予め記憶されている。そして、補償値計算部41は、センシング駆動時に、第1及び第2のセンシング用のデータ電圧(V1、V2)を画素に再び印加してそれに対応する第1及び第2センシング電圧(Vsen1、Vsen2)を得て、これを介してP3、P4を有するグラフ2(G2)に該当される1次関数式2を計算する。そして、補償値計算部41は、関数式1及び2の傾きの差を求め、その結果を駆動TFTの移動度の変化量として算出し、この算出結果に基づいて、駆動TFTのしきい値電圧の変化量を計算する。つまり、補償値計算部41は、グラフ2(G2)をグラフ1(G1)の方向に平行移動させ、グラフ1(G1)とX切片を共有するグラフ3(G3)を調べ、グラフ1と3(G1、G3)との間の傾き差を駆動TFTの移動度の変化量として算出し、グラフ2及び3(G2、G3)との間のX切片差を駆動TFTのしきい値電圧の変化量(Vth_Shift)として算出する。図13に表記された「Vth_Init」は、駆動TFTの初期しきい値電圧を示す。一方、補償値計算部41は、図14のように3回のセンシングを通じて得られた2次関数式を介して、駆動TFTの移動度の変化量としきい値電圧の変化量を計算することもできる。
【0075】
次に、図15を参照すると、補償値計算部41は、温度変化による駆動TFTの移動度の変化量としきい値電圧の変化量の相関関係をルックアップテーブルに予め記憶し、メモリ20から読み込んだ基準電圧(Vref)とセンシング電圧(Vsen)との間の偏差に応じて駆動TFTの移動度の変化量が求められると、ルックアップテーブルの相関関係を利用して駆動TFTの移動度の変化量から駆動TFTのしきい値電圧の変化量を求めることができる。
【0076】
このように補償値1と補償値2とが導出されると、オフセット値算出部42は、メモリ20から読み込んだ基準補償値1と補償値1とを互いに比較して、オフセット値を算出し、ゲイン値算出部43は、メモリ20から読み込んだ基準補償値2と補償値2とを互いに比較してゲイン値を算出する。
【0077】
ここで、基準補償値1は、予め設定された初期補償値で固定されるか、または、一定のセンシング周期ごとに、前記補償値1に更新され、このとき、N−1回目の周期で計算された補償値1がN回目の周期での基準補償値1に選択することができる。同様に、基準補償値2は、予め設定された初期補償値で固定されるか、または、一定のセンシング周期ごとに、前記補償値2に更新され、このとき、N−1回目の周期で計算された補償値2がN回目の周期での基準補償値2に選択することができる。
【0078】
データ補償部50は、ゲイン値とオフセット値を入力デジタルビデオデータ(DATA)に適用し、画素に印加されるデジタル補償データ(MDATA)を生成する。具体的には、データ補償部50は、ゲイン値を入力デジタルビデオデータ(DATA)の階調値に乗算し、その乗算結果にオフセット値を加えることにより、デジタル補償データ(MDATA)を生成することができる。
【0079】
以上説明した内容を通じて、当業者であれば本発明の技術思想を逸脱しない範囲で多様な変更及び修正が可能であることが分かる。したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載した内容に限定されるのではなく特許請求の範囲によって決められなければならない。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16