特許第5933704号(P5933704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933704
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】メタン含有のガス容量流を改質する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/08 20060101AFI20160602BHJP
   C10L 3/00 20060101ALI20160602BHJP
   C01B 3/24 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   B01J19/08 E
   C10L3/00 D
   C01B3/24
【請求項の数】19
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-516251(P2014-516251)
(86)(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公表番号】特表2014-523801(P2014-523801A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】EP2012059698
(87)【国際公開番号】WO2012175279
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2014年12月25日
(31)【優先権主張番号】102011077788.1
(32)【優先日】2011年6月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク マルコヴツ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン エルヴィン ラング
(72)【発明者】
【氏名】リューディガー シュッテ
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−508418(JP,A)
【文献】 特開2000−119669(JP,A)
【文献】 特開平09−013060(JP,A)
【文献】 特開平07−197053(JP,A)
【文献】 特開2004−175617(JP,A)
【文献】 特開2002−213695(JP,A)
【文献】 特開2010−059416(JP,A)
【文献】 特開2008−247718(JP,A)
【文献】 特表昭62−501359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00−12/02
B01J 14/00−19/32
C01B 3/00− 6/34
C10L 3/00− 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン含有のガス容量流を改質する方法であって、
i)メタン含有のガス容量流から部分容量流を取り出すステップと、
ii)前記部分容量流を、電気的に発生されたプラズマによって処理して、前記メタン含有のガス容量流よりも少ないメタン含量を有する、改質されたガス組成物を形成するステップと、
iii)前記改質されたガス組成物を、前記メタン含有のガス容量流に戻すステップと、
を包含する、メタン含有のガス容量流を改質する方法。
【請求項2】
前記メタン含有のガス容量流は、天然ガスまたはバイオガスである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記改質されたガス組成物は、前記取り出された部分容量流よりも高い水素含量およびエタン含量を有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記改質されたガス組成物は、前記取り出された部分容量流よりも高いプロパン含量、エテン含量および/またはプロペン含量を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記改質されたガス組成物に、戻しの前に付加的なガスを添加する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記付加的なガスが、酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素および/または水素を含有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記付加的なガスが、空気を含有する、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記付加的なガスが、水の電気分解からの水素を含有する、請求項5または6記載の方法。
【請求項9】
前記メタン含有のガス容量流は天然ガスであり、前記付加的なガスはバイオガスである、請求項5または6記載の方法。
【請求項10】
前記改質されたガス組成物のウォッベ指数を連続的または間欠的に測定し、前記測定された値によって、添加される前記付加的なガスの量を制御する、請求項5から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記改質されたガス組成物のウォッベ指数対前記メタン含有のガス容量流のウォッベ指数の割合が、0.85:1〜1:0.85の範囲にある、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
戻しの前に、前記改質されたガス組成物から少なくとも1種の成分を選択的に分離する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
水素、一酸化炭素、エテン、プロペンおよび/またはプロパンを選択的に分離する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記プラズマを、再生可能エネルギからの電流によって発生させる、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記プラズマを用いた処理を、電流供給量に関連して行う、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記プラズマを、前記部分容量流内に誘電体バリア放電によって発生させる、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
水素流内でのアーク放電によってプラズマを発生させ、こうして発生されたプラズマによって前記部分容量流を処理する、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記水素流を、水の電気分解によって発生させる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記水素流を、前記改質されたガス組成物からの水素の選択的な分離により発生させる、請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン含有のガス容量流を改質する方法に関する。
【0002】
変動しかつ非効率的にしか制御可能でない発電プロフィール(Erzeugungsprofile)を有する再生可能エネルギ(RE)の拡大は、エネルギインフラストラクチャに対して、ますます増大する要求を課している。グリッド拡大やデマンドレスポンスへの試みの他に、適当な貯蔵容量の確保が要求される。この場合、具体的には、電流グリッド(網)を安定化させるための高動的な貯蔵器も、再生可能エネルギからの大きな余剰量を受容するためのテクノロジも挙げられる。後者の事例では、現在、確立された揚水貯蔵発電所の他に、とりわけ圧縮空気貯蔵発電所および水素の形での化学的な貯蔵が注目されており、研究や開発が進められている。水素の場合には、コンポーネントに関する投資コストの劇的な低減や、変換ステップにおける効率向上に対する要求の他、水素の貯蔵、分配および使用のための適当なインフラストラクチャに関する問題が存在する。
【0003】
過去数年間、水素インフラストラクチャを実現するためには、多数の方法が試みられた。区別されなければならないのは、水素を別個に貯蔵し、輸送し、かつ利用する試みである。この場合に不都合となるのは、別個のインフラストラクチャを導入するためにかかる著しい手間である。とりわけ、水素モビリティの例は、このようなコンセプトがエネルギキャリヤの広域にわたる利用可能性を前提としている場合、導入の際には高いハードルが存在することを示している。水素の貯蔵のための中央型の地下空洞ドーム貯蔵所(Erdkavernenlager)の、しばしば促進される使用も、高い初期投資により、高いハードルを乗り越えなければならないことを意味する。とりわけ、使用者が新しい器具類を設備することが必要となる。
【0004】
一貫して、多くの労力が、再生式に発生された水素の貯蔵および輸送のために既存の天然ガスインフラストラクチャを利用することに費やされた。EUにより推進されているプロジェクト「NaturalHy」の枠内では、水素を天然ガス管路に供給する、技術的および特に安全技術的な実現可能性が調査され、かつ実証された。しかし、天然ガス中の水素含量が高くなり、しかもとりわけ上下に変動することに基づき、最終器具において問題が生ぜしめられる。なぜならば、多くの最終器具は「ウォッベ指数(Wobbe-Index)」における比較的狭い帯域しか許容せず、帯域を広げることは最終器具における手間のかかる付加設備を生ぜしめてしまうからである。DIN51857に基づいた燃焼性のガスのウォッベ指数は、ガスの発熱量と相対密度とから算出され、ノズル燃焼器でのガスの燃焼時に得られる加熱出力を表す。オランダ国では、たとえばウォッベ指数が、約1MJ/mの帯域内に保持されなければならない。しかし、水素の添加は、既に約5容量%の低い含量において前記帯域からの逸脱を生ぜしめる。それゆえに、たとえば天然ガスの分配のために使用される慣用的なガスグリッドへの水素の供給は、小規模でしか可能でない。
【0005】
再生可能エネルギ(RE)からの比較的大量の電流を合目的的に使用するための択一的な別の手段は、水素および一酸化炭素もしくは二酸化炭素をメタンに変換することである(以降、この変換を「メタン化」とも呼ぶ)。この場合には、原理的に、供給された電流の量に関する制限は存在しない。他方において、メタン化は水素発生に対して付加的に、器械的な面でかなりの手間を必要とし、かつ別のエネルギ損失をも併発することを顧慮しなければならない。すなわち、メタン化は気相プロセスにおいて約200〜300℃で過圧下に行われる。反応は平衡制約されているので、プロセスガスの、程度の差こそあれ大規模な後処理および循環が必要となる。さらに、反応は著しく発熱的となる。反応熱は、特に大型の設備においては、たいてい利用され得ないか、または部分的にしか利用され得ない。これによって、一連の変換プロセス全体におけるもともと既に低かった効率が一層減少する。
【0006】
そこで、公知先行技術に鑑み、本発明の課題は、特に電気的なエネルギの使用、特に貯蔵または合目的的な使用のための、技術的に改善された方法であって、しかも慣用の方法の欠点を伴わない方法を提供することである。
【0007】
すなわち、本発明による方法により、電気的なエネルギ、特に余剰な再生可能エネルギが、適当な方法によって、貯蔵可能な形に変えられることが望ましい。
【0008】
特に、本発明の課題は、有利には再生式に発生された水素の貯蔵、輸送および使用のためにかかる器械的および運転上の手間を公知先行技術に比べて減少させることを可能にする手段を見いだすことである。
【0009】
さらに、この方法はスケーラブルに実施され得ることが望ましい。これにより、モジュール式に構築することのできる比較的小さな設備も、貯蔵の実施のために使用され得ることが望ましい。さらに、設備の分散型の運転が可能であることが望ましい。
【0010】
さらに、この方法は、できるだけ高い効率を有することが望ましい。さらに、本発明による方法は、慣用の、しかも既存のインフラストラクチャを使用して実施され得ることが望ましい。
【0011】
さらに、本発明による方法により、方法実施の際に付加的な副生成物として生じる有用な化学薬品が提供され得ることが望ましい。
【0012】
さらに、この方法は、できるだけ簡単にかつ廉価に実施され得ることが望ましい。
【0013】
さらに、この方法はできるだけ少数の方法ステップを用いるだけで実施され得ることが望ましい。しかも、これらの方法ステップは簡単でかつ再現可能であることが望ましい。
【0014】
さらに、この方法の実施は、環境や人間の健康を危険にさらすことに結びつかないことが望ましいので、環境に対する不都合に結びつく恐れのある、健康上懸念のある物質または化合物の使用は実質的に断念され得ることが望ましい。
【0015】
さらに、この方法は、存在する天然ガス品質とは無関係に使用され得ることが望ましい。
【0016】
上記課題ならびに明確に挙げられていないが、しかし冒頭部で論じられた関連から容易に引出し可能または推論可能である別の課題は、メタン含有のガス容量流の部分流をプラズマによって処理し、これによりメタンの一部を水素およびより高級な炭化水素、つまりより炭素個数の多い炭化水素に変換し、処理された部分流が、メタン含有のガス容量流よりも高い発熱量を得るようにする方法により解決される。
【0017】
したがって、本発明の対象は、メタン含有のガス容量流を改質する方法であって、
i)メタン含有のガス容量流から部分容量流を取り出すステップと、
ii)前記部分容量流を、電気的に発生されたプラズマによって処理して、メタン含有のガス容量流よりも少ないメタン含量を有する、改質されたガス組成物を形成するステップと、
iii)改質されたガス組成物を、メタン含有のガス容量流に戻すステップと、
を包含する、メタン含有のガス容量流を改質する方法により解決される。
【0018】
これにより、前で述べた形式の方法を改良して、特に良好な特性プロフィールを有し、かつ特に慣用の方法の不都合を具備していない方法を提供することができることは意想外であり、かつ予見し得ないものであった。
【0019】
「メタン含有のガス容量流」とは、本発明によれば、メタンの他に別のガス状の化合物をも含むことのできるガス容量流を意味する。使用されるメタン含有のガス容量流は、少なくとも50容量%、特に有利には少なくとも60容量%、特に少なくとも80容量%のメタン含量を有することが好ましい。メタン含有のガス容量流は天然ガス、都市ガスまたはバイオガスであると好ましく、特に天然ガスが有利である。メタン含有のガス容量流が、パイプラインまたは天然ガス分配管路を通って流れる天然ガスであると特に有利である。
【0020】
本発明による方法では、部分容量流としてメタン含有のガス容量流の最大80%、特に有利には最大60%、特に最大40%が取り出されることが好ましい。
【0021】
取り出された部分容量流は、プラズマを用いた処理の前に、ストックされ、貯蔵され、特に中間貯蔵され、変向され、かつ/または前処理され得る。
【0022】
取り出された部分容量流は、本発明による方法では、電気的に発生されたプラズマによって処理される。「電気的に発生されたプラズマ」とは、本発明によれば、電気的または電磁的に発生されたガス放電を意味する。電気的に発生されたプラズマは、熱的な平衡から大きく遠ざけられて行われるグロー放電(高い電子温度を有する非平衡プラズマ)、または熱的な平衡の近くに位置するガス放電(いわば等温のプラズマ)であってよい。プラズマ発生のための方法は当業者には、Rutscher/Deutsch著:Plasmatechnik−Grundlagen und Anwendung−Eine Einfuehrung,Carl Hanser Verlag Muenchen Wienに対する出版権所得版、出版社VEB Fachbuchverlag Leipzig、1984年、章1.2「Erzeugung des Plasmazustandes」、第46頁〜第58頁に基づき、知られている。
【0023】
プラズマ処理は、原理的には任意の圧力で行うことができる。処理のためには、取り出された部分容量流内の圧力を減少させることができる。しかし、この方法は、メタン含有のガス容量流の圧力から僅かにしか偏倚していない圧力で実施されると有利である。これにより、戻しのための手間のかかる圧力適合または圧縮が不要となる。
【0024】
プラズマは、誘電体バリア放電(Dielectric Barrier Discharge, DBD)によって発生されると好ましい。ガス流内に誘電体バリア放電を発生させるための装置は、当業者には知られており、市場で入手可能であり、たとえば酸素からオゾンを製造するために使用されている。メタンに誘電体バリア放電を発生させ、エタンを形成することは、「Beitr. Plasmaphys.」 23(1983年)181〜191頁に記載されている。誘電体バリア放電により発生されたプラズマを用いた処理は、50バールよりも低い圧力、特に有利には10バールよりも低い圧力、特に1.2バールよりも低い圧力で実施されることが好ましい。誘電体バリア放電は、低い周波数、たとえば50Hzのグリッド周波数の交流電圧によって運転され得る。スループットを高めるためには、最大100GHzまでの高い周波数で作業することができる。工業的に汎用の、13MHz、900MHzまたは2.4MHz周辺の周波数範囲で作業することが好ましい。誘電体バリア放電のジオメトリ(幾何学的形状)および運転条件は、電極の間のガス室のギャップ幅とガス圧との間の積が、0.75×10−3〜7.5×10mm・バールとなるように選択されることが好ましい。
【0025】
択一的な有利な実施態様では、プラズマがアーク放電により発生される。ガス流にアーク放電を発生させるための装置は、当業者にはアセチレンの製造方法により知られており、「Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry」、第5版、第A1巻、第115〜第116頁および第A20巻、第428〜434頁に記載されている。アーク放電は、直流または交流によって運転され得る。本発明による方法においては、ガス放電により形成されたアークに、部分容量流の少なくとも一部が吹き付けられると好ましい。本発明による方法において、部分容量流の速度およびアーク放電によるエネルギ投入は、アセチレンを製造するための公知の方法の場合よりも著しく少ない、質量に関連したエネルギ投入が生ぜしめられるように選択されると好ましい。有利な1実施態様では、部分容量流の一部がアーク放電により案内され、このときに発生した高温のガスが、直接に引き続いて部分容量流の残分との混合によって化学的かつ熱的に急冷される。別の有利な1実施態様では、水素流中でのアーク放電により、プラズマが発生され、こうして発生されたプラズマによって部分容量流が処理される。水素流中にアーク放電を発生させるためには、プラズマバーナが使用され、これによって発生された水素プラズマジェットが部分容量流内に導かれることが好ましい。
【0026】
さらに別の実施態様では、アーク放電の代わりに、火花放電、無線周波放電または高周波数放電、たとえばマイクロ波放電によっても、プラズマを発生させることができる。
【0027】
部分容量流は、電気的に発生されたプラズマによって複数回処理することもできる。この場合、誘電伝体バリア放電、アーク放電、火花放電、無線周波数放電および高周波数放電を互いに組み合わせることもできる。
【0028】
プラズマ処理の際には、反応式:
2CH→C+H
に対応して、より高級な炭化水素および水素、特にエタンおよび水素へのメタンの変換が行われる。
【0029】
それゆえに、プラズマ処理により改質されたガス組成物は、取り出された部分容量流よりも、高い水素含量およびエタン含量を有する。エタンの他に、より高級な炭化水素、つまりより炭素個数の多い炭化水素、たとえばプロパンおよびブタンを得ることもできる。部分容量流のプラズマ処理の方法条件に関連して、特により高いエネルギ投入および高いプラズマ温度においては、付加的に、不飽和炭化水素、たとえばエテン、プロペンおよびアセチレンならびにカーボンブラックを形成することもできる。それゆえに、プラズマ処理により改質されたガス組成物は、特に有利には、取り出された部分容量流よりも高いプロパン含量、エテン含量および/またはプロペン含量をも有する。メタン含有のガス容量流が酸素、水または二酸化炭素を含有する場合、プラズマ処理により改質されたガス組成物はさらに、高められた一酸化炭素含量を含有することができる。
【0030】
プラズマを発生させるために使用された電気的なエネルギは、電気的なエネルギの供給量に応じて動的に適合され得る。電気的なエネルギは、特に有利には再生可能エネルギから取得された余剰電流からのものであると好ましい。本発明による方法を用いると、電流グリッドの負荷耐性の理由から、または供給の時間に電流需要が少なすぎるという理由から電流グリッドには供給することのできない電流過剰供給量を、化学的なエネルギの形で貯蔵することができるので有利である。本発明におけるプラズマ処理は制御可能に行われると好ましい。この場合、制御は特に電流供給量に関連して行うことができる。
【0031】
取り出された部分容量流の、提供されているエネルギおよび大きさに応じて、改質されたガス組成物の組成は著しく変動し得る。この場合、メタン含量は、使用されたメタン含有のガスに関して減少する。さらに、メタン含有のガス容量流の高さは変動し得るので、改質されたガス組成物がメタン含有のガス容量流へ戻された後に、このメタン含有のガス容量流の組成に変動が生ぜしめられる。これにより、一般に、平均値が得られ、この場合、設備が不経済になることなく、変換率はしばしば比較的小さく設定され得る。特別な1実施態様では、1年間にわたって見て、改質されたガス組成物中のメタン含量は少なくとも20容量%、有利には少なくとも40容量%、特に有利には少なくとも60容量%であってよい。改質されたガス組成物中の、より高級な炭化水素の含量の増大は、たとえば0.01〜40容量%、有利には1〜30容量%、特に有利には5〜20容量%であってよい。これらの値は、ウォッベ指数を規定の値に調節する前に該当し、この場合、これらの数値は、1年間にわたって測定された平均値である。
【0032】
さらに、プラズマ処理はウォッベ指数における所望の目標値に関連してメタンの化学的な変換率を、次に高い炭化水素の方向にさらにシフトするようになっていてよい。この場合、メタンの変換率は特に、著しく変動する電気的なエネルギに関連して制御され得るので、再生可能エネルギの供給量が高い場合には一層多くのメタンが変換され、再生可能エネルギの供給量が少ない場合には少ないメタンが変換される。
【0033】
プラズマ処理が実施される装置に、堆積物、たとえば煤またはタールによる堆積物が形成されると、この装置において酸素含有のガス、たとえば空気中にプラズマを発生させることにより、堆積物を除去することができる。このためには、部分容量流の処理が中断されるか、または部分容量流が処理されるべきではない時間に堆積物の除去が実施されることが好ましい。
【0034】
プラズマ処理の後に、改質されたガス組成物の全てまたはその一部が、メタン含有のガス容量流内に戻される。改質されたガス組成物の少なくとも20容量%、特に有利には少なくとも60容量%、特に少なくとも80容量%がメタン含有のガス容量流内に戻されることが好ましい。改質されたガス組成物がメタン含有のガス容量流内に戻される前に、管路内でのガス輸送のために不都合となるコンポーネント、たとえば煤またはより高級な炭化水素は、適当な方法、たとえば濾過、凝縮またはガス洗浄により除去され得る。取り出された部分容量流の圧力が、電気的に発生されたプラズマを用いた処理の前または間に減少された場合、改質されたガス組成物は、メタン含有のガス容量流内に戻される前に、コンプレッサによって、より高い圧力にもたらされることが好ましい。
【0035】
プラズマを用いた処理により形成された、改質されたガス組成物は、その全てまたはその一部がメタン含有のガス容量流内に戻される前に、ストックされ、貯蔵され、特に中間貯蔵され、変向され、かつ/または後処理され得る。
【0036】
改質されたガス組成物はメタン含有のガス容量流への戻し時に、メタン含有のガス容量流と同様のウォッベ指数を有すると有利である。改質されたガス組成物のウォッベ指数対メタン含有のガス容量流のウォッベ指数の割合は、0.7:1〜1:0.7の範囲、特に有利には0.85:1〜1:0.85の範囲、特に0.95:1〜1:0.95の範囲にあると好ましい。
【0037】
プラズマ処理の際のメタンの低い変換率により、改質されたガス組成物とメタン含有のガス容量流との相似のウォッベ指数を得ることができる。しかし、メタンの変換率とは無関係に、改質されたガス組成物とメタン含有のガス容量流との相似のウォッベ指数を得るためには、改質されたガス組成物に、戻しの前に付加的なガス、好ましくは燃焼不可能なガスまたはメタン含有のガス容量流よりも小さな発熱量を有するガスが添加されると好ましい。これにより、本発明による方法において、改質されたガス組成物の、取り出された部分容量流に比べて高い発熱量が、メタン含有のガス容量流におけるウォッベ指数の著しい変化を生ぜしめないことが確保され得る。ウォッベ指数の著しい変化が生ぜしめられることは、最終消費者にとっては、最終消費器具のウォッベ指数の狭い許容範囲に基づき、不都合を招く恐れがある。ガス管路のオペレータにより規定された値にまでウォッベ指数を低下させるためには、酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素および/または水素を含んでいる付加的なガスが添加されることが好ましい。この付加的なガスはさらに、水蒸気を含んでいてよい。この場合、水蒸気の含量は、改質されたガス組成物がメタン含有のガス容量流へ戻された後に、目標とされる露点が超過されないように低く保持されることが望ましい。
【0038】
酸素および窒素は空気の形で添加されることが有利である。高いメタン変換率において高過ぎるウォッベ指数は、空気の適当な混加によって所要の値にまで低下させることができる。それに対して、プラズマ処理の際のメタンの、相応して低い変換率の場合には、天然ガス管路内で酸素の許容最高値(DVGWドイツガス水協会−指針:4%)が超過されないような低い空気量しか必要にならない。
【0039】
メタン含有のガス流が天然ガスである場合、付加的なガスとしてバイオガスを添加することもできる。バイオガスは、清浄化されないか、または部分的にしか清浄化されず、そして天然ガスよりも低いウォッベ指数を有していると好ましい。
【0040】
択一的な別の有利な実施態様では、水を電気分解して水素を形成することもできる。水素は引き続きウォッベ指数の調節のために、付加的なガスとして、改質されたガス組成物、好ましくは天然ガスに添加される。プラズマ処理のためにも、電気分解のためにも、余剰電流が使用されると好ましい。この場合、プラズマ処理および電気分解への電流の分配は、電気分解により形成された水素の添加の後のウォッベ指数が、メタン含有のガス容量流内のウォッベ指数に相当するように選択される。既に水素の僅か数%の容量割合の範囲において天然ガスのウォッベ指数の著しい減少をもたらす、天然ガス管路内での純水素の直接的な混入とは異なり、プラズマ処理と電気分解とのこのようなカップリングの場合には、規定のウォッベ指数を維持しながら、より大きな量の水素を天然ガス管路に供給することができる。電気分解とプラズマ処理との組合せの設計および運転は、局所的な天然ガス品質に簡単に適合され得ると同時に、運転開始後でも、可変の天然ガス品質に簡単に適合され得る。これに加えて、「余剰電流」の一部が、天然ガスの発熱量の増大につながるので、特に高価な電気分解は、「貯蔵出力」は同じままで、電気分解により形成された水素による純然たる貯蔵の場合よりも小さく形成され得る。
【0041】
本発明による方法の有利な1実施態様では、改質されたガス組成物のウォッベ指数が、連続的または間欠的に測定され、測定された値によって、添加された付加的なガスの量が制御される。ガス混合物のウォッベ指数の連続的または間欠的な測定のための適当な器具は、市場で入手可能であり、たとえばUnion Instruments社の「Kalorimeter CWD2005」の名称またはAMS Analysen−,Mess−und Systemtechnik社の「RHADOXTM−Analysator」の名称で市販されている。
【0042】
プラズマ処理後の付加的なガスの添加に対して付加的に、付加的なガスの添加をプラズマ処理の前または間にも行うことができる。プラズマ処理の間の付加的なガスの添加の有利な1実施態様では、水素流内にアーク放電によってプラズマが形成され、こうして発生されたプラズマによって部分容量流が処理される。この場合、プラズマを発生させるためには、Rutscher/Deutsch著:Plasmatechnik−Grundlagen und Anwendung−Eine Einfuehrung,Carl Hanser Verlag Muenchen Wienに対する出版権所得版、出版社VEB Fachbuchverlag Leipzig、1984年、章1.2「Erzeugung des Plasmazustandes」、第241頁〜第247頁に記載されているような「プラズマトロン(Plasmatron)」が使用されると好ましい。このために使用された水素流は、水の電気分解により形成されると好ましい。
【0043】
さらに別の有利な実施態様では、改質されたガス組成物から少なくとも1種の成分が選択的に分離される。この成分は水素、一酸化炭素、エテン、プロペンまたはプロパンであると好ましい。また、2種またはそれ以上の成分を別個にまたは一緒に分離することもできる。成分の分離は、このために当業者に知られている、あらゆる分離方法を用いて行われ得る。成分の分離は膜方法を用いて行われると好ましい。これに関連して、完全な分離が必要となるのではなく、経済的な考慮につき分離度が最適化され得ることが判った。たとえば、水素添加のための水素または化学的な合成のためのエテンおよび/またはプロペンを分離することができる。本発明による方法の有利な1実施態様では、改質されたガス組成物からの水素の選択的な分離により、水素流が形成され、この水素流内にアーク放電によってプラズマが発生され、こうして発生されたプラズマによって部分容量流が処理される。成分の選択的な分離により、改質されたガス組成物のガス容量が、最大60容量%、特に有利には最大40容量%、特に最大20容量%だけ減少させられることが好ましい。
【0044】
メタン含有のガス容量流が、天然ガスグリッド内の天然ガスである場合、択一的に前記成分を任意の取出し個所においても天然ガスグリッドから取り出すことができる。すなわち、たとえば、天然ガスのリフォーミングにより水素を発生させるよりも、消費の場所で天然ガスグリッドから水素を分離する方が簡単となる(特に小型の設備において実施可能である)。択一的には、エタン、エテン、プロパンおよび/またはプロペンをオートガス(LPGガス)として単離することができる。取出しの際には、場合によっては天然ガス管路内でウォッベ指数を維持することに配慮されなければならない。水素の濃度減少時では、濃度減少されたガス混合物のウォッベ指数は増大することができ、それに対して、より高級な炭化水素の取出し時では、ウォッベ指数は低下し得る。したがって、ウォッベ指数を一定に保持するためには、プラズマ処理から遠ざけられた取出し個所において、水素も、たとえばエテンまたはプロペンのような有価物質も、取り出されるようになっていてよい。択一的に、水素が取り出されて、取出し個所において、燃焼不可能な別のガス、たとえば窒素が添加され得るか、または天然ガスよりも低いウォッベ指数を有する別のガスが添加され得る。
【0045】
本発明による方法を用いると、好ましくは再生可能エネルギ、たとえば風力または太陽光発電からの余剰の電気的なエネルギを、貯蔵可能な形に変えて、たとえば天然ガス貯蔵のための既存のインフラストラクチャにおいて貯蔵することができる。
【0046】
この方法は、高い効率を有し、そして規格化された小型設備、たとえばコンテナ構造のコンパクト設備の形の小型設備において、分散型に運転され得る。この方法は、国際公開第2010/028869号に記載されているような、統合されたインフラストラクチャを有するコンテナ構造の設備において運転されると好ましい。
【0047】
さらに、この方法は、簡単でかつ再現可能である比較的少数の方法ステップを用いて実施され得る。これにより、本発明による方法は簡単でかつ廉価に実施され得る。
【0048】
さらに、この方法の実施は、環境や人間の健康を危険にさらすことにつながらないので、健康的に懸念のある物質または環境に対する不都合に結びつく恐れのある化合物の使用が実質的に放棄され得る。それどころか、本発明による方法はエミッションフリーに運転され得る。
【0049】
さらに、改質されたメタン含有のガス容量流におけるウォッベ指数を、このウォッベ指数が標準の天然ガス管路内の値に相当するように調節することができる。
【0050】
付加的に、本発明による方法を用いると、方法実施の際に付加的な副生成物として生じる有用な化学薬品を提供することができる。
【0051】
さらに、本発明による方法は、天然ガスがメタン含有のガス容量流として使用される場合、局所的な天然ガス品質とは無関係である。
【0052】
さらに、別の目的のためには使用され得ず、かつたとえば再生可能エネルギからの電気的な出力の使用により、天然ガスの発熱量を、メタンからの水素およびエタンの発生によって増大させることができるので、未処理の天然ガスに比べて、このガスから特定のエネルギ量を発生させるために少量のガスしか必要とならない。これにより、天然ガスを節約することができる。
【0053】
電気分解による水素発生とメタン化との組み合わせに比べて、本発明による方法における投資コストは著しく低くなる。
【0054】
さらに、本発明による方法は、同じ貯蔵されたエネルギに関して、メタン化よりも著しく少ない効率損失を有する。このことは特に、メタン化のために必要とされる二酸化炭素が、煙道ガスまたはバイオガス設備から、より高い濃度で提供されておらず、空気から取得されなければならない場合に云える。さらに、メタン化は高い温度を必要とし、この場合、メタン化の際に生じた廃熱を利用することは極めて手間がかかり、このことは、たいてい不経済的となる。
【0055】
本発明による方法のプラズマ処理は、メタン化の気相プロセスとは異なり、比較的良好に動的に運転され得る。すなわち、本発明による方法のプラズマ処理は、電流供給量にフレキシブルにかつ可変に適合され得る。本発明による方法を水素の電気分解とカップリングすると、より高い発熱量およびウォッベ指数を有する炭化水素−水素混合物の発生が、電気分解水素の発生と同時に行われる。したがって、水素の中間貯蔵は必要とならない。これとは異なり、設備の経済的な運転のために有利には連続的に、すなわち時間的に電気分解とは分離されて実施されるメタン化の場合には、一般に水素を圧縮するための、付加的な器械的およびエネルギ的な手間をも必要とする水素の中間貯蔵のための手段が必要となる。
【0056】
電気分解のためにも、プラズマ処理のためにも、固有の資本需要は、高温メタン化の場合よりも少ない。したがって、高い規格化ポテンシャルを有する小型の分散型のユニット、たとえばコンテナユニットが一層簡単に経済的に実現可能となる。
【0057】
水素のメタン化の変化形に対する別の利点は、可能なエミッション低減である。なぜならば、メタン含有のガス容量流中の水素含量が、燃焼時におけるNOエミッションの減少をもたらすからである。
【0058】
メタン含有のガス容量流としてバイオガスが使用されるか、または付加的なガスとしてバイオガスが添加されることにより、所要の供給品質を得るためのバイオガスの後処理を簡単にすることができる。バイオガスはプラズマ処理の途中で直接に、または計画された供給が行われる場所に存在する天然ガスとの組み合わせで、濃度増大され得るので、天然ガスグリッドへの供給の前の吸収性の方法、吸着性の方法および/または膜方法による後処理が不要にされるか、または後処理手間が少なくとも著しく減少する。