特許第5933711号(P5933711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5933711改善された収量を有する高級シランの製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933711
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】改善された収量を有する高級シランの製造法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/107 20060101AFI20160602BHJP
   C01G 17/04 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   C01B33/107 Z
   C01G17/04
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-519463(P2014-519463)
(86)(22)【出願日】2012年5月15日
(65)【公表番号】特表2014-525887(P2014-525887A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】EP2012059027
(87)【国際公開番号】WO2013007426
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年3月27日
(31)【優先権主張番号】102011078942.1
(32)【優先日】2011年7月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン エルヴィン ラング
(72)【発明者】
【氏名】ハルトヴィッヒ ラウレーダー
(72)【発明者】
【氏名】エッケハート ミュー
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−517922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/107
C01G 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサクロロジシランまたはGe2Cl6を製造する方法であって、
SiCl4またはGeCl4を含有するガス中で、
a)非熱プラズマを周波数fの交流電圧を用いて励起させ、その際に
当該プラズマ中には少なくとも1つの電磁インパルスが繰り返し周期gでカップリングされ、
当該電磁インパルスの電圧成分は、10V ns-1から1kV ns-1の登りになっている傾斜における傾斜勾配度および500ns〜100μsのパルス幅bを有し、その際に液相が得られ、
および
b)前記液相から純粋なヘキサクロロジシランまたはGe2Cl6が取得されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記交流電圧の周波数fは、1Hz〜100MHzであり、
前記繰り返し周期gは、50kHz〜50MHzであり
幅は、1〜15kVppであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記プラズマ中にカップリングされた電磁インパルスには、少なくとも1つのさらなる電磁インパルスが同じ繰り返し周期で重なり合わされ、および2つのインパルスまたは少なくとも2つのインパルスが1〜1000の衝撃係数で互いに存在することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの電磁インパルスは、電流印加または電圧印加を有するインパルスバラストによってカップリングされることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
その中で非熱プラズマが発生される反応器として、オゾン化装置が使用されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)において、液相を蒸留により後処理することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
蒸留による後処理は、常圧下、低圧下または過圧下で行なわれることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
蒸留による後処理は、50〜1500ミリバールの圧力で行なわれることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法の工程a)および/またはb)は、連続的に行なわれ、および工程b)において得られる相を蒸留による後処理に掛けることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応器は、管状の誘電性材料を装備していることを特徴とする、請求項5、または請求項5を引用する請求項6から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器には、不活性材料からなるスペーサーによって保持されかつ間隔をもって維持されている管が使用されることを特徴とする、請求項5、または請求項5を引用する請求項6から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
低比誘電率材料からなるスペーサーを使用することを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
薄手の層の析出のための前駆体としての、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法により得られた化合物の使用。
【請求項14】
薄手のケイ素層、酸化ケイ素層、窒化ケイ素層、炭化ケイ素層、SiOC層、SiON層、SiGe層またはゲルマニウム層の析出のための前駆体としての、請求項13記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二量体ケイ素化合物および/または三量体ケイ素化合物、殊にケイ素ハロゲン化合物の製造法に関する。加えて、本発明による方法は、相応するゲルマニウム化合物の製造にも適している。そのうえ、本発明は、該方法を実施する装置ならびに製造されたケイ素化合物の使用に関する。
【0002】
マイクロエレクトロニクスにおいて、ならびに光起電力において使用される、例えばエピタキシーによる高純度ケイ素の製造のために用いられるケイ素化合物およびゲルマニウム化合物、または窒化ケイ素(SiN)、酸化ケイ素(SiO)、酸化窒化ケイ素(SiON)、酸化炭化ケイ素(SiOC)、炭化ケイ素(SiC)、混合されたSiGe層またはゲルマニウム層は、それらの純度に関してとりわけ高い要求を満たさなければならない。このことは、殊にこれらの材料の薄手の層の製造に際して重要である。上記の適用分野において、ppb範囲ないしppt範囲における出発化合物の汚染物質がすでに妨げとなる。例えばヘキサクロロジシランは、マイクロエレクトロニクスにおけるケイ素層の製造の際に最高の純度の要求を満たさなければならず、同時に大量に、特に安価に提供されなければならない。
【0003】
上記の高純度化合物の窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素または炭化ケイ素、殊にこれらの化合物の層を製造するために、ヘキサクロロジシランは、さらなる窒素含有前駆体、酸素含有前駆体または炭素含有前駆体との反応によって変換される。低温エピタキシーによるエピタキシャルケイ素層の製造にもヘキサクロロジシランが使用される。たいていCVD(Chemical Vapor Deposition「化学蒸着」)プロセスにより製造される層は、例えば記憶素子チップにおけるトランジスタ製造の範囲内で数ナノメートルの層厚を有するかまたは薄膜起電力素子の範囲内で100μmまでの層厚を有する。
【0004】
公知技術水準の公知方法は、ケイ素のハロゲン化合物の製造のために、例えばヘキサクロロジシラン(六塩化二ケイ素)の製造のために、塩素または塩化水素とケイ化カルシウムとの反応を利用するか、または塩素または塩化水素とケイ化銅との反応も利用する。さらなる方法は、溶融シリコンによる転換に際してのテトラクロロシラン(四塩化ケイ素)の反応である(Gmelin,System−Nr 15,Teil B,1959,第658頁−第659頁)。2つの方法の欠点は、ケイ化カルシウム中にもケイ素中にも存在する汚染物質のいわば起きる塩素化であり、該汚染物質は次いで生成物中に一緒に連行される。半導体の製造に際してヘキサクロロジシランが使用されるべき場合、これらの汚染物質は許容され得ない。
【0005】
1958年からのドイツ連邦共和国特許第1142848号明細書の開示によれば、ガス状のシリコクロロホルムを電極トーチにおいて200〜1000℃まで加熱し、かつ作製されたガス混合物を即座に冷却し、かつ凝縮した場合に、最高純度のヘキサクロロジシランが得られる。前記効果を高めるために、シリコクロロホルムは水素または不活性ガスで反応前に希釈される。
【0006】
1953年からのドイツ連邦共和国特許第1014971号明細書は、四塩化ケイ素を多孔質のケイ素成形体と、高められた温度で、特に1000℃を超える温度で、ホットウォール反応器中で反応させる、ヘキサクロロジシランの製造法に関する。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第362493号明細書から、ヘキサクロロジシランを製造するさらなる方法が公知である。この場合、工業的規模におけるヘキサクロロジシランの製造のために、ケイ素合金または金属ケイ素は、塩素と振動型反応器を用いて100〜500℃の温度で反応される。
【0008】
D.N.Andrejew(J.fuer praktische Chemie,4.Reihe,Bd.23,1964,第288頁〜第297頁)は、プラズマ条件下で水素(H2)の存在下での四塩化ケイ素(SiCl4)の反応により、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)および高次塩素化ポリシランが生じることを記載する。この反応生成物は、混合物として発生する。この方法の場合の欠点は、この生成物混合物が高粘性ないし固体で発生し、それゆえ反応器壁に堆積し得ることである。同様に、プラズマ中での水素の存在におけるアルキルシラン、例えばメチルトリクロロシラン(MTCS)の反応により、ヘキサクロロジシランおよび多数の不所望の副生成物が生じることが開示されている。2つの実施態様に共通していることは、還元剤としての水素が不都合にも付加的に必要とされることである。
【0009】
WO2006/125425A1は、ハロゲンシランからのバルクシリコンの二段階の製造法に関する。第一の段階で、有利にはハロゲンシラン、例えばフッ素シランまたはクロロシランが、水素の存在においてプラズマ放電に曝される。引き続く第二の段階で、第一の段階から得られたポリシラン混合物は、400℃からの温度で、有利には700℃からの温度でシリコンへと熱分解される。
【0010】
その開示内容が本明細書中に明らかに取り入れられているWO 2008/098640には、ケイ素化合物の非熱プラズマ処理によって少なくとも1つのシランを高い純度で取得し、該シランを蒸留分離する2段階法が記載されている。ケイ素化合物がSiCl4である場合には、この方法は、ヘキサクロロジシランを供給し、この場合には、任意に水素含有シランが使用されてよい。
【0011】
さらに、本発明の課題は、ヘキサクロロジシランが要求された純度で改善された収量で製造されるように、前記方法をさらに開発することであった。
【0012】
意外なことに、少なくとも1つの周期的な電磁インパルスを、SiCl4含有ガス中に発生される非熱プラズマ中にカップリングすることによって、ヘキサクロロジシランの収量が上昇されることが見い出された。同様に、少なくとも1つの周期的な電磁インパルスを、GeCl4含有ガス中に発生される非熱プラズマ中にカップリングすることによって、Ge2Cl6の収量が上昇されることが見い出された。
【0013】
すなわち、本発明の対象は、ヘキサクロロジシランまたはGe2Cl6を製造する方法であり、この方法は、SiCl4またはGeCl4を含有するガス中で、
a)非熱プラズマを周波数fの交流電圧を用いて励起させ、その際に当該プラズマ中には少なくとも1つの電磁インパルスが繰り返し周期gでカップリングされ、当該電磁インパルスの電圧成分は、10V ns-1から1kV ns-1の登りになっている傾斜における傾斜勾配度および500ns〜100μsのパルス幅bを有し、
その際に液相が得られ、
および
b)前記液相から純粋なヘキサクロロジシランまたはGe2Cl6が取得されることによって特徴付けられる。
【0014】
本発明による方法の顕著な利点は、還元剤、例えば水素の添加が省略されうることである。公知技術水準による公知方法とは異なり、均一な薄液状反応混合物が得られる。さらに、沈殿物または油状物質は、形成されない。
【0015】
殊に、前記反応混合物は、室温での貯蔵の際に固化しない。好ましくは、既に液状反応生成物において、ほとんど二量体の塩素化された化合物だけが存在する程度に、ヘキサクロロジシランまたはGe2Cl6の高度に選択的な形成が生じる。本発明による方法は、前記生成物を意図的に純粋な形および高度に純粋な形で、殊に蒸留による精製の後に準備することを可能にする。本発明による方法により製造されるケイ素化合物は、半導体工業または製薬工業における使用に適している。
【0016】
したがって、本発明の対象は、薄手の層の析出、特に薄手のケイ素層、酸化ケイ素層、窒化ケイ素層、炭化ケイ素層、SiOC層、SiON層、SiGe層またはゲルマニウム層の析出のための前駆体としての、本発明による方法により得られる化合物の使用である。
【0017】
本発明による方法は、高価な不活性希ガスの添加を省略しうる、さらなる利点を有する。それとは別に、連行ガス、特に圧力下にある不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、別の希ガスまたはこれらの混合物が添加されうる。
【0018】
非熱プラズマが発生されるガスは、四塩化ケイ素の他に、水素、オルガニルおよび/またはハロゲンを含むケイ素化合物を有することができる。前記オルガニルは、1〜18個の炭素原子を有する直鎖状アルキル、分枝鎖状アルキルおよび/または環式アルキル、2〜8個の炭素原子を有する直鎖状アルケニル、分枝鎖状アルケニルおよび/または環式アルケニル、非置換アリールまたは置換アリールおよび/または相応するベンジルを含むことができ、殊に前記オルガニルは、水素またはハロゲンを有することができ、その際にハロゲンは、フッ素、塩素、臭素および/またはヨウ素から選択されている。
【0019】
本発明によれば、前記ガスがSiCl4またはGeCl4を含むかどうかに応じて、意外なことに高度に選択的にヘキサクロロジシランまたはGe2Cl6が形成される。副生成物は、僅かな程度にのみ形成される。
【0020】
未反応の反応体は、必要に応じて、非熱プラズマに再び供給されてよい。ヘキサジクロロジシランまたはGe2Cl6における反応体の完全な変換のために、サイクル運転形式は、1〜100回のサイクルで利用されうる。好ましくは、1〜5回のサイクルの小数、特に有利に1回だけのサイクルを走破する。非熱プラズマにおける変換により得られるケイ素化合物またはゲルマニウム化合物は、既に純粋に生じる相中に存在し、当該相から前記化合物は、高純度で取得されることができ、殊に前記化合物は、特にマルチカラムシステムにおいて、蒸留による後処理に掛けられうる。こうして、例えばヘキサクロロジシランは、最高の純度で残りの反応生成物および反応体から単離されうる。別の金属化合物を有する、本発明により得られたケイ素化合物またはゲルマニウム化合物の金属汚染物質は、少なくともppm範囲内ないしppt範囲内、特に一桁のppb範囲内にある。
【0021】
前記の非熱プラズマは、プラズマ反応器中で、プラズマエレクトロニクス物質が転移を誘発しかつアニソサーマルプラズマ(anisothermen Plasmen)を基礎とすることにより、発生される。前記プラズマに対して、104K以上の高い電子温度Teおよび103K以下の比較的低いガス温度Tgが特徴的である。化学的プロセスに必要とされる活性化エネルギーは、主に電子の衝突により発生される(プラズマエレクロトニクスによる物質転移)。典型的な非熱プラズマは、例えばグロー放電、HF放電、中空陰極放電またはコロナ放電によって発生されうる。本発明によるプラズマ処理が実施される動作圧力は、1〜10000ミリバール絶対、有利に1〜1000ミリバール絶対、特に有利に100〜500ミリバール絶対、殊に200〜500ミリバール絶対であり、その際に処理すべき相は、特に−40℃〜200℃、特に有利に20〜80℃、殊に有利に30〜70℃の温度に調節される。ゲルマニウム化合物の場合、相応する温度は、前記温度からはずれ、前記温度を上回るかまたは下回る。
【0022】
非熱プラズマおよび均一なプラズマ触媒反応の規定は、当該専門文献、例えば"Plasmatechnik:Grundlagen und Anwendungen−Eine Einfuehrung;Autorenkollektiv,Carl Hanser Verlag,Muenchen/Wien;1984,ISBN 3−446−13627−4"に指摘されている。
【0023】
パッシェンの法則は、プラズマ放電に対する火花電圧が基本的にガス圧pと電極間隔dとの積p・dの関数であることを意味する。本発明による方法に対して、前記積は、0.001〜300ミリバール、特に0.01〜100ミリバールの範囲内、特に有利に0.05〜10ミリバール、殊に0.07〜2ミリバールである。放電は、1〜1000kVの様々な種類の交流電圧および/またはパルス化された電圧により励起されうる。電圧の高さは、当業者に公知の方法で放電装置のp・d値の他にプロセスガス自体にも依存する。大きい傾斜勾配度および放電の同時の形成を前記反応器の全放電空間内で可能にする、かかるパルス化された電圧は、特に適している。
【0024】
交流電圧および/またはカップリングされた電磁インパルスの時間的経過は、矩形、台形であってよく、パルス化されたかまたは一つずつのインパルスは、個々の時間的経過から構成されていてよい。交流電圧およびカップリングされた電磁インパルスは、時間的経過の全ての前記形で組み合わされていてよい。
【0025】
交流電圧の周波数fは、本発明による方法の場合に1Hz〜100GHz、有利に1Hz〜100MHzの範囲内にあってよい。前記の基本周波数に重なり合った電磁インパルスの繰り返し周期gは、0.1kHz〜50MHz、有利に50kHz〜50MHzの範囲内で選択されうる。前記インパルスの振幅は、1〜15kVpp(kVピーク対ピーク)、有利に1〜10kVpp、特に有利に1〜8kVppから選択されていてよい。
【0026】
前記インパルスは、当業者に公知の全ての形、例えば正弦波形、矩形、三角形またはこれらの組合せを有することができる。特に好ましい形は、矩形または三角形である。
【0027】
このことは、既に時間に関連した、ヘキサクロロジシランの収量を、公知技術水準の方法と比較して、カップリングされた電磁インパルスおよびプラズマを発生させる交流電圧の正弦波形の経過なしに著しく上昇させる。
【0028】
前記収量のさらなる上昇は、本発明による方法において、プラズマ中にカップリングされた電磁インパルスに少なくとも1つのさらなる電磁インパルスが同じ繰り返し周期で重なり合うか、または2つのインパルスまたは少なくとも2つのインパルスが1〜1000の衝撃係数で互いに存在する場合に達成されうる。それぞれ10の衝撃係数およびできるだけ大きな傾斜勾配度を有する、矩形の形を有する2つのインパルスが好ましい。傾斜勾配度が大きければ大きいほど、収量は、ますます高くなる。前記インパルスの振幅は、1〜15kVpp、有利に1〜10kVppから選択されてよい。
【0029】
前記収量は、前記繰り返し周期とともに上昇する。例えば、数倍の基本周波数、例えば10倍の基本周波数を有する繰り返し周期の際に、飽和効果が見い出され、すなわち収量のさらなる上昇はもはや生じないことが観察された。本発明は、ここで特殊な理論に関連することなく、前記の飽和効果が前記ガス組成、前記試験装置のp・d値に依存し、また、バラストへのプラズマ反応器の電気的適合にも依存するという見解である。
【0030】
本発明による方法において、単数または複数の電磁インパルスは、電流印加または電圧印加を有するインパルスバラストによってカップリングされうる。前記インパルスに電流が印加されると、大きな傾斜勾配度が得られる。
【0031】
本発明による方法のさらなる特徴において、前記インパルスは、当業者に公知の方法で周期的に同期であるのではなく、一時的に非同期でカップリングされうる。
【0032】
本発明による方法のさらなる特徴において、前記反応器は、反応空間内での不均一な磁場、ひいては無制御の反応を防ぐために、管状の誘電性材料を装備していてよい。特に、前記反応器の管径対当該反応器の管長の比は、50本の管の場合に300mm/700mmである。さらに有利には、低容量の誘電性材料を有する前記反応器および低抵抗性で広帯域に設計されたバラストは、1つのユニットを形成する。
【0033】
本発明による方法において、前記反応器には、不活性材料からなるスペーサーによって保持されかつ間隔をもって維持されている管が使用されうる。かかるスペーサーを用いると、前記管の完成許容差は、解消され、かつ同時に前記反応器中での当該管の移動度は、最小になる。
【0034】
同様に、本発明による方法において、低比誘電率材料(low−k−Material)からなるスペーサーを使用することは、好ましい。特に有利には、当業者に公知のテフロンが使用されうる。
【0035】
本方法の本発明による実施態様において、SiCl4と一緒にさらなる水素を含むケイ素化合物は、プラズマ反応器中で気相処理のために、殊に還元剤の添加なしに反応されうる。例示的に、ケイ素化合物として、トリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシラン、モノシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランおよび/またはプロピルトリクロロシランが挙げられる。
【0036】
このことは、相応するGe化合物にも当てはまる。
【0037】
それとは別の好ましい実施態様には、四塩化ケイ素をさらなるハイドロジェンシラン、例えばトリクロロシランだけと反応させることが設けられている。さらなる好ましい実施態様には、四塩化ケイ素をオルガニル基を含むシランだけと反応させることが設けられており、例えばメチルトリクロロシランは、テトラクロロシランに混入されかつ引き続き前記反応器に供給される。2つの二者択一の実施態様は、殊に還元剤の添加なしに行なわれる。
【0038】
一般に好ましい変法には、四塩化ケイ素を、ハイドロジェンシラン、例えばトリクロロシランおよび/またはアルキルを含むケイ素化合物、例えばメチルトリクロロシランと非熱プラズマ処理において、殊に還元剤の添加なしに反応させることが設けられている。
【0039】
前記方法の工程a)において形成されたケイ素化合物またはゲルマニウム化合物は、本方法を実施する装置の捕集容器中で、例えば前記装置の塔底部で含量が増加されていてよく、かつ蒸留による後処理部に供給されうる。
【0040】
前記方法の工程a)および/またはb)は、非連続的または連続的に実施されうる。前記方法の工程a)およびb)が連続的に行なわれる、1つの方法の実施は、特に経済的である。
【0041】
SiCl4またはGeCl4を含むガスは、気相処理のために前記プラズマ反応器に連続的に供給されることができ、その際に前記ガス中のSiCl4またはGeCl4は、先に含量が増加されていてよい。形成される相から、より高沸点の反応生成物は、捕集容器中で分離される。
【0042】
本発明による方法の工程a)において、ならびに工程b)において、プロセスを連続を監視することができる。前記反応生成物が捕集容器(「塔底部」)中で十分な濃度を達成すると同時に、当該反応生成物を分離する、蒸留による後処理は、連続的または非連続的な運転形式で行なうことができる。非連続的な蒸留による後処理には、1個の分離カラムで十分である。そのために、前記化合物は、十分な数の分離段を有するカラムの塔頂部で高い純度または最高の純度で取り出される。要求された純度は、GC、IR、NMR、ICP−MSを用いて、または抵抗測定によって、もしくはSiの分離後のGD−MSによって試験されうる。
【0043】
本発明によれば、前記方法の生成物の連続的な後処理は、少なくとも2個のカラムを有する1つのカラムシステム中、有利に少なくとも3個のカラムを有する1つのシステム中で行なうことができる。こうして、例えば同様に反応の際に形成された塩化水素ガス(HCl)は、いわゆる低沸点物塔を介して、塔頂部、第1のカラムを経て分離されることができ、および前記塔底部から捕集される混合物は、四塩化ケイ素(SiCl4)を第2のカラムの塔頂部で分離しかつヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)を第3のカラムの塔頂部で蒸留分離することにより、当該混合物の成分に分離されうる。こうして、前記プラズマ反応器から得られた反応混合物は、精留によって分離されることができ、当該反応生成物のヘキサクロロジシランまたはオクタクロロトリシランは、望ましい純度で得ることができる。前記ケイ素化合物の蒸留による後処理は、常圧下ならびに低圧下または過圧下で、殊に1〜1500ミリバール絶対の圧力で行なうことができる。その際に、前記ケイ素化合物の蒸留による後処理のためのカラムの塔頂部温度は、50〜250℃の塔頂部温度を有する。同様のことは、ゲルマニウム化合物にも当てはまる。
【0044】
いずれにせよ、強く汚染されていない、方法の生成物は、蒸留による後処理によって極めて高い純度ないし最高の純度で単離されうる。前記ゲルマニウム化合物を後処理する、相応する温度は、それとは相違しうる。
【0045】
本発明によれば、非熱プラズマを発生させるための反応器、ならびに捕集容器および蒸留による後処理のためのカラムシステムが使用されてよく、その際に連続的な方法の実施のためのカラムシステムは、少なくとも2個のカラム、殊に少なくとも3個のカラムを含むことができる。好ましい変法において、前記カラムシステムは、4個のカラムを含むことができる。非連続的な方法の実施の場合には、1個のカラムで十分である。前記カラムは、例えば精留カラムである。
【0046】
連続的な方法の実施において1つのカラムシステムを本発明により使用することによって、例えば塩化水素ガスは、低沸点物塔を介して第1のカラムの塔頂部で直接に当該装置から排出することができ、引き続き未反応のテトラクロロシランは、第2のカラムの塔頂部で取り出すことができ、かつより高沸点の反応生成物は、第3のカラムの塔頂部で取り出すことができる。複数のより高沸点の反応生成物を単離する場合には、第4のカラムが配属されていてよい。
【0047】
さらに、かかる装置において、前記反応器の他に1個以上のさらなる反応器が使用されてよく、当該反応器は、列をなして接続されているかまたは並行に接続されている。
【0048】
本発明によれば、前記装置の少なくとも1個の反応器は、オゾン化装置であることができる。このことは、市販のオゾン化装置をそれとは別に使用することができることで、投資費用を基本的に低下させるという多大な利点を有する。本発明の反応器は、有利にガラス管を装備しており、その際に当該管は、有利に並行に配置されるかまたは同軸に配置され、かつ不活性材料からなるスペーサーにより離れて立っている。不活性材料として、殊にテフロンが適している。
【0049】
本発明による方法により製造されたケイ素化合物またはゲルマニウム化合物は、半導体工業または製薬工業における使用に適しており、それというのも、当該化合物は、汚染物質をppb範囲内、有利にppt範囲内またはそれ以下だけを有するからである。前記化合物は、高い純度および最高の純度で製造されうる。それというのも、前記化合物は、本発明による方法により、意外なことに、選択的に形成され、それによってごくわずかな副生成物だけが微少量で前記方法の生成物の後処理を損なうからである。
【0050】
したがって、本発明により製造されたケイ素化合物またはゲルマニウム化合物は、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化炭化ケイ素または酸化ケイ素、または窒化ゲルマニウム、酸化窒化ゲルマニウム、炭化ゲルマニウム、酸化炭化ゲルマニウムまたは酸化ゲルマニウムの製造に適しており、殊に前記化合物からなる層の製造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】石英ガラス反応器Gを有する装置およびインパルスの経過を示す略図。
図2】合算されたインパルスILの時間的経過および石英ガラス反応器を備えた装置を示す略図。
図3】前記インパルスの時間的経過および石英ガラス反応器Gを有する装置を示す略図。
【0052】
次の実施例は、本発明による方法を詳説するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
比較例1.カップリングされた電磁インパルスなしに、プラズマを発生させる交流電圧の正弦波形の経過
トリクロロシラン(HSiCl3、略してTCS)で含量が増加された四塩化ケイ素(SiCl4)、その際に四塩化ケイ素は、過剰量で存在するものとし、を連続的に蒸発させ、かつ石英ガラス反応器のガス放電区間の非熱プラズマ中に導入した。前記ガス相を約250ml/時で前記反応器に導通した。前記ガス相を前記反応器に貫流する間に、正弦波形の交流電圧を周波数f、f=1.9kHz、および35kVppの振幅で印加した。その際に、反応器中への入力電力は、約40Wであった。動作圧力を約300ミリバール絶対に調節した。
【0054】
火花電圧は、約10kVであり、平均火花長を約1000μmに調節した。
【0055】
前記反応器の通過後に、前記反応混合物を液体の形で捕集容器中に捕集した。蒸留は、非連続的にスルザー金属パッキンを有する50cmカラムを備えた蒸留装置中で行なわれた。約70℃の塔底部温度および750ミリバール絶対の圧力の際に、約50℃の塔頂部温度で四塩化ケイ素が留去された。引続き、圧力は、約65ミリバール絶対に低下され、かつ80℃の塔底部温度で純粋なヘキサクロロジシランが留去された。塔頂部温度は、70℃であった。その際に、金属汚染物の含量は、IPC−MSにおける検出限界に相当した。
【0056】
17g/時のヘキサクロロジシランの収量が得られた。
【0057】
実施例1.
比較例1と同様に実施するが、しかし、さらに矩形の経過および8kVppの振幅を有する電磁インパルスをカップリングした。
【0058】
矩形の電磁インパルスの登りになっている部分における傾斜勾配度は、10kV/100nsに調節され、パルス幅bは、1μsであり、ならびに繰り返し周期gは、400Hzであった。本発明によれば、プラズマ中にカップリングされたインパルスILは、低周波数の矩形の経過を時間の関数として有していた。石英ガラス反応器Gを有する装置およびインパルスの経過は、図1に示されている。
【0059】
ヘキサクロロジシラン20g/時の収量が得られた。
【0060】
実施例2.
比較例1と同様に実施するが、しかし、実施例1と同様に傾斜勾配度および振幅を有する矩形のインパルスに、10kVppの振幅および10の衝撃係数を有するさらなる矩形のインパルスをカップリングした。
【0061】
合算されたインパルスILの時間的経過および石英ガラス反応器を備えた装置は、図2に示されている。
【0062】
収量は、ヘキサクロロジシラン24g/時であった。
【0063】
実施例3.
実施例2と同様に実施するが、しかし、前記インパルスを電圧印加を有するインパルスバラストを用いてカップリングした。さらなるインパルスは、12kVppの振幅および例2よりも小さな傾斜勾配度を有していた。図3は、前記インパルスの時間的経過および石英ガラス反応器Gを有する装置を示す。
【0064】
22g/時のヘキサクロロジシランの収量が得られた。
【0065】
前記実施例および前記比較例の結果は、第1表中にまとめられている。
【0066】
【表1】
【符号の説明】
【0067】
G 石英ガラス反応器、 IL インパルス
図1
図2
図3