特許第5933712号(P5933712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5933712-呼気分析装置の変換器の機能性の監視 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933712
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】呼気分析装置の変換器の機能性の監視
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20160602BHJP
   G01N 33/497 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   G01N31/00 H
   G01N33/497 A
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-519488(P2014-519488)
(86)(22)【出願日】2012年6月27日
(65)【公表番号】特表2014-521077(P2014-521077A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2012062421
(87)【国際公開番号】WO2013007516
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2014年2月7日
(31)【優先権主張番号】102011078867.0
(32)【優先日】2011年7月8日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011080765.9
(32)【優先日】2011年8月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン フライシャー
(72)【発明者】
【氏名】エアハルト マゴーリ
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ポーレ
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ロイター
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/117552(WO,A1)
【文献】 特開2002−148193(JP,A)
【文献】 特表2009−533682(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0133116(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/115694(WO,A1)
【文献】 登録実用新案第3113917(JP,U)
【文献】 特開2000−221183(JP,A)
【文献】 特開昭64−045913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00
G01N 33/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス混合気のガス分析装置(10)であって、
・第1のガス成分を第1の目標ガス成分に変換する変換器(11)と、
・前記変換器(11)による変換後の、前記第1の目標ガス成分または前記ガス混合気の他の成分を検出するセンサシステム(20)と
を有しているガス分析装置(10)において、
・前記ガス混合気は、前記第1のガス成分と、前記第1のガス成分とは異なる第2のガス成分とを含み、但し、前記第1のガス成分は一酸化窒素であり、前記第1の目標ガス成分は二酸化窒素であり、
・前記変換器(11)は、前記第2のガス成分の濃度を変化させるうに構成されており、但し、前記第2のガス成分は水またはCOであり、
・前記センサシステム(20)は、前記第2のガス成分濃度を求めるように構成されており、
・評価装置が設けられており、前記評価装置は、前記第2のガス成分濃度に基づいて、前記変換器(11)の劣化を表す値を求めるように構成されている、
ことを特徴とする、ガス分析装置(10)。
【請求項2】
記変換器(11)は、前記第2のガス成分の蓄積を起こすように構成されている、請求項1載の装置(10)。
【請求項3】
ガス混合気の流入後に前記第2のガス成分濃度がいつ閾値を上回った、または、下回ったかによって、前記変換器(11)の劣化を表す値を求めるように、前記評価装置は構成されている、請求項1または2記載の装置(10)。
【請求項4】
前記第2のガス成分時間経過プロファイルの勾配に基づいて、前記変換器(11)の劣化を表す値を求めるように、前記評価装置は構成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項5】
前記変換器(11)は、過マンガン酸カリウムをしみこませたシリカゲルを含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項6】
前記ガス混合気は呼気であり、前記装置(10)は、呼気分析器として使用される、請求項1からまでのいずれか1項記載の置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
人間の呼気中のマーカーガスの測定は、病気および代謝機能異常を識別するための将来有望な非侵襲的技術である。考えられる用途はふるい分け検査、鑑別診断、治療の最適化である。これに対する例は、喘息治療の経過コントロールまたはCOPDの鑑別診断のためのNO検出、肺腫瘍、TBCまたは肺炎の検出である。
【0002】
EP1384069号から、呼気変換モジュールが公知である。元来のセンサユニットに導かれる前に、この呼気変換モジュールに呼気が供給される。この呼気モジュールのタスクは、例えば、呼気の除湿であり、これによって、湿度によるセンサユニットの過度に強い負荷を回避することができる。さらなるタスクは、特定の呼気成分の変換である。喘息用の用途の場合には、例えばここでNOがNOに酸化される。これは例えば、変換機能に対する例であり、ここでは、検出が困難である分析ガスが、センサよって良好に測定される他のガスに変換される。別のケースでは、妨害ガスが、センサによって検出不可能なガスに酸化される。
【0003】
この変換器は消耗し、その寿命は制限されている。見積もられた寿命の後、または何周期かの使用後にフィルタまたは変換器の交換を行うことが可能である。しかしこの方法は実行し難い。なぜなら、使用頻度を正確にモニタリングすることが必要だからである。別のエラーも生じ得る:例えば、格納状態時の劣化を回避するために、フィルタまたは変換器は、使用前の包装または機器内の弁制御によって周辺空気から遮断される。これが成功していない場合には、呼気分析器の早期の劣化および測定エラーの恐れが生じる。
【0004】
本発明の課題は、上述の問題を鑑みて改善された、ガス混合気のガス分析のための装置を提供することである。この課題は、請求項1の特徴部分に記載された構成を有する装置によって解決される。
【0005】
本発明では、目標分析物、例えばNOに関する変換器の機能の直接的な測定が不可能であることが認識されている。なぜなら、当然であるが、この目標分析物の濃度が未知だからである。従って、関連するガス変換に関する間接的な測定が用いられる。
【0006】
ガス混合気のガス分析のための本発明の装置は、第1のガス成分を目標ガス成分に変換するガス変換器と、ガス変換器による変換後に、この目標ガス成分または別の成分を検出するためのセンサシステムとを含んでいる。さらに、ガス変換器は、第2のガス成分の濃度を変化させる、または、第2の目標ガス成分内での変換を起こすように構成されており、センサシステムは、第2のガス成分または第2の目標ガス成分の濃度を求めるように構成されている。最後に、評価装置が設けられており、これは、第2のガス成分または第2の目標ガス成分の濃度に基づいて、ガス変換器の劣化を表す値を求めるように構成されている。
【0007】
換言すれば、室内空気とは特徴的に異なる濃度で呼気ガス内に生じる他のガスを変換するまたは除去する変換器が使用される。これに対する例は水またはCOである。この場合にはこのガスの変換は、変換器の後方に取り付けられている、このガス用の付加的なセンサによって測定される。
【0008】
ここではこのガスの濃度は、機器内への吹き込み時に測定される。この第2のガス(呼気におけるその濃度は公知であり、充分に安定している)の濃度が充分に変換され場合には、変換器は有能であり、そうでない場合には例えばアラーム通知が生成される。
【0009】
このために、変換器は有利には、この補助ガスの変換が、目標ガスの変換と関連して劣化するように形成される。2つの劣化特性は、経験において定められるので、評価ロジックはここで補助ガスの変換の劣化から、目標ガスの変換の劣化を推測することができる。このようにしてはじめて、有利には、呼気変換器の自己監視が行われる。
【0010】
本発明の発展形態では、ガス変換器は、この第2のガス成分の蓄積が行われるように構成されている。この場合には、第2のガス成分は化学的または物理的に結合される。
【0011】
有利には、評価装置は、ガス混合気のガス流入の後、第2のガス成分または第2の目標ガス成分の濃度が、いつ閾値を上回ったか、または、下回ったかによって、ガス変換器の劣化を表す値を求める。
【0012】
択一的な構成では、または、付加的には、評価装置は、ガス変換器の劣化を表す値を、第2のガス成分または第2の目標ガス成分の勾配に基づいて求めるように構成されている。
【0013】
次に有利ではあるが、制限するものではない、本発明の実施例を、図面に基づいてより詳細に説明する。ここで、特徴は概略的に図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】喘息用呼気分析器のセンサの測定曲線
図2】喘息用呼気分析器の構造
図3】変換器の構造
【実施例】
【0015】
図は、人間の呼気内の窒素酸化物を測定するための測定機器10、すなわち、喘息用センサの例を示している。
【0016】
ここで、呼気は変換器11を介して供給され、さらに、弁15、16、17、19のシステムを介して供給され、変換された呼気または清浄な新鮮な空気が、測定チャンバ18内にあるセンサのセンサベースラインを再生するために供給される。
【0017】
例示された測定機器10はここで、図2に示されているように構成されている。変換器11には、呼気が供給される。変換器11は、ガス案内線路によって、流量測定器12と接続されている。これに、吸気弁15が続く。吸気弁15には、ガス線のノードポイントが続く。このノードポイントで、ガス案内線路が分岐する。第1の分路では、ノードポイントから見て、基準空気用のポンプ13とこのポンプに続く、活性炭を備えたフィルタ14が設けられている。第1の分路は、清浄な新鮮な空気の供給を、センサベースラインの再生のために、センサシステム20を有する測定チャンバ18へと導くことができる。第2の分路には、ノードポイントから見て、排気弁16が設けられている。第3の分路は、ノードポイントから見て、第2の吸気弁17と、測定チャンバ18と、第2の排気弁19とを含んでいる。
【0018】
変換器11は本願発明では、2種類のタスクを有している。変換器は、図3に示されているように、2つの終端部での格子21から成る。これらの格子の間には、フィルタ部材23が配置されている。変換部22は、過マンガン酸カリウムKMnOを有するセラミックとして、正確には、部分的にKMnOがしみ込ませてあるシリカゲルとして構成されている。ここでの主要機能は、呼気の一酸化窒素NOを、センサによって測定可能な二酸化窒素NOに変換することである。これはKMnOによって生じる。第2の機能は、余剰な呼気の湿度をシリカゲルによって除去することである。この構造では、2つの機能の劣化の相関関係が生じる。
【0019】
図1は、相対湿度に基づく、間接的な測定の関数を示している。図1では、5つの異なるプローベに対する変換器11後の相対湿度が、秒で表された時間に対して記載されている。相対湿度はここでは、測定チャンバ18内のセンサによって測定される。時点30で、相対的に高い湿度を含有している新たな呼気が吹き込まれる。
【0020】
第1の測定曲線36は、新しい変換器11での相対湿度の経過を示している。ここでは、変換器11後に相対湿度は、ほぼ上昇していない。第2の測定曲線32および第3の測定曲線35は、僅かに劣化した変換器11での相対湿度の経過特性を示している。ここでは、相対湿度は、変換器11後に、呼気供給後の8〜10秒後に上昇する。第4および第5の測定曲線33、34は、著しく劣化した変換器11での、変換器11後の湿度の経過を示している。ここでは湿度は、呼気の供給直後に急峻に上昇する。
【0021】
変換器11後に湿度が上昇する遅れ度合いから、および/または、上昇の急峻さから、図2は示されていない評価装置は、変換器11の劣化を表す値を得る。ここで、元来の測定タスク、すなわちNOないしはNOの測定はこれに使用されない、ということに留意されたい。なぜならNOの濃度は知られておらず、従って、変換器の効率を、NOの測定された濃度に基づいて、見積もることができないからである。これに対して、呼気中の湿度の濃度は、比較的よく知られている。
【0022】
すなわち、比較的少ない湿度を有する周辺空気がベースになる。ここで呼気が、新しい変換器によって吹き込まれる場合、ガスの湿度の僅かな上昇のみが生じ、劣化した変換器の場合には、上昇はより強く生じる。従って、ガスの湿度の上昇の経過から、変換器の劣化状態が推測される。図1には、付加的に、さらに、吹き込み経過をあらわす呼気圧31が示されている。
図1
図2
図3