特許第5933714号(P5933714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933714
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】電圧制限組成物
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/10 20060101AFI20160602BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20160602BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20160602BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20160602BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20160602BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20160602BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   H01C7/10
   C08L101/00
   C08K3/22
   C08K3/34
   H01B5/16
   H01B1/20 C
   H01B13/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-522026(P2014-522026)
(86)(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公表番号】特表2014-527713(P2014-527713A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】EP2012063811
(87)【国際公開番号】WO2013014007
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2014年3月27日
(31)【優先権主張番号】102011079813.7
(32)【優先日】2011年7月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ペーター グレッペル
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ラング
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06645886(US,B1)
【文献】 特表2008−544455(JP,A)
【文献】 特表2000−503454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/10
C08K 3/22
C08K 3/34
C08L 101/00
H01B 1/20
H01B 5/16
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ポリマーマトリックス(2)と、
・部分伝導性材料(5)を含有する粒子状フィラー(4)と
を有する電圧制限組成物(1)であって、
・該部分伝導性材料(5)が、不導電性キャリヤ材料(6)上に施されており、Bi、Mn、Co及び/又はAlの酸化物でドープされた酸化スズであり、かつ
・キャリヤ材料(6)が、該部分伝導性材料(5)よりも少ない密度を有する
ことを特徴とする、電圧制限組成物(1)。
【請求項2】
パーコレーション飽和されている、請求項1記載の組成物(1)。
【請求項3】
該キャリヤ材料(6)が、3.5kg・m-3未満の密度を有する、請求項1または2に記載の組成物(1)。
【請求項4】
該キャリヤ材料(6)が層状ケイ酸塩からなる、請求項記載の組成物(1)。
【請求項5】
該キャリヤ材料(6)が雲母である、請求項記載の組成物(1)。
【請求項6】
該キャリヤ材料(6)が、セラミックキャリヤ材料であり、かつ該粒子状フィラー(4)が強熱により製造されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の組成物(1)。
【請求項7】
該ポリマーマトリックス(2)が、射出成形できるポリマーを有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の組成物(1)。
【請求項8】
該ポリマーマトリックス(2)が、熱硬化性プラスチック及び/又は熱可塑性プラスチックを有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の組成物(1)。
【請求項9】
ポリマーマトリックス(2)と、部分伝導性材料(5)を含有する粒子状フィラー(4)とを有する電圧制限組成物(1)を有する物体であって、
該物体が、請求項1からまでのいずれか1項記載の電圧制限組成物(1)を有することを特徴とする、物体。
【請求項10】
該物体が、請求項1からまでのいずれか1項記載の電圧制限組成物(1)からなる少なくとも1つの層(12)を有する、請求項記載の物体。
【請求項11】
該物体が、電圧制限組成物(1)から製造された基体(13)を有する、請求項記載の物体。
【請求項12】
該物体が、繊維強化された組成物を有する、請求項記載の物体。
【請求項13】
ポリマーマトリックス(2)と、部分伝導性材料(5)を含有する粒子状フィラー(4)とから電圧制限組成物(1)を製造する方法であって、
該方法が、より軽量の不導電性キャリヤ材料(6)上に施された部分伝導性材料(5)を有する粒子状フィラー(4)を製造するための強熱を含み、
該部分伝導性材料(5)が、Bi、Mn、Co及び/又はAlの酸化物でドープされた酸化スズである、電圧制限組成物(1)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーマトリックスと、部分伝導性材料(teilleitfaehiges Material)を含有する粒子状フィラーとを有する、電圧制限組成物(spannungsbegrenzende Zusammensetzung)に関する。本発明は更に、そのような電圧制限組成物を有する物体に関する。本発明は、電圧制限組成物の製造方法にも関する。本発明は、バリスタ特性を有するサージアレスタ用に、特に中電圧装置、低電圧装置、ケーブル接続部及びケーブル封止部において、特に有利に使用可能である。
【0002】
バリスタ挙動を有する非線形抵抗器は、多種多様な用途において、例えば過電圧保護装置、ケーブル接続部、ケーブル端封部等において、見出される。これらの非線形抵抗器は、ポリマーマトリックスと、該ポリマーマトリックス中へ注封されたフィラーとを含有してよい。該フィラーは、ドープされた金属酸化物(金属酸化物バリスタ(MOV)フィラー)からなる主に球状の粒子を有する焼結粒状物を含有する。該粒状物の粒子は、結晶粒結合体からなる。ポリマーマトリックス/MOVフィラー複合材料を有するバリスタは、焼結セラミックをベースとし、匹敵する作用を有するバリスタよりも、本質的により単純に製造可能であるので、該複合材料を有するバリスタは、比較的単純に、安価にかつ大きな形状多様性で、製造することができる。
【0003】
該複合材料の粘度は、フィラー含量が増加するにつれて、マトリックス材料及び加工の種類に応じて、実際の上限、例えば注型用樹脂の場合に約50質量%に、達するまで、上昇する。塗料の場合及びプリプレグの製造の場合に、該複合材料の粘度は、溶剤の添加により、理想的な加工性に達するまで低下される。
【0004】
典型的には5kg/m3を上回るドープされた金属酸化物の高い密度及び約0.8〜1.3kg/m3の該プラスチックマトリックスのプラスチックの相対的に少ない密度に基づき、該フィラーは迅速に沈降し、それにより、該系中での最大の充填度は制限されるか、又は特定の種類の加工を事実上不可能にする。そして、低い粘度と部分伝導性フィラーとを有する塗料及びプリプレグは、これまで事実上有用ではない。
【0005】
国際公開(WO)第97/26693号には、そのようなポリマーマトリックス/MOVフィラー複合材料が記載されている。フィラーとして、Bi、Sb、Mn、Co、Al及び/又は更なる金属の酸化物でドープされた酸化亜鉛をベースとする噴霧乾燥MOV粉末の焼結により製造される、粉末状の金属酸化物粒状物が使用される。この粒状物は、バリスタ挙動を有し、サッカーボールのように形成された球状粒子を有する。該粒子は、125μmまでの直径を有し、かつそれらのサイズがガウス分布している。この材料は、ケーブル接続部及びケーブル端封部において使用され、そこで電圧制御層を形成する。
【0006】
本発明の課題は、技術水準の欠点を少なくとも部分的に克服し、かつ特に、より良好に加工可能な電圧制限組成物を提供することである。
【0007】
この課題は、独立請求項の特徴により解決される。好ましい実施態様は特に、従属請求項から読み取ることができる。
【0008】
前記課題は、ポリマーマトリックスと、部分伝導性材料を含有する粒子状フィラーとを有する電圧制限組成物により解決され、その際に該部分伝導性材料が、不導電性キャリヤ材料上に施されており、かつ該キャリヤ材料が、該部分伝導性材料よりも少ない密度を有する。
【0009】
それゆえ、部分的には、密度のより少ないキャリヤ材料と、部分的には、密度のより高い部分伝導性材料とから構成される、該フィラーの個々の粒子は、それゆえ全体として、該部分伝導性材料単独、特に金属酸化物単独よりも少ない平均密度を有し、その結果、該ポリマーマトリックス内部でより少ない程度で沈降する(改善された沈降挙動)。それにより、該組成物は、高いフィラー含量で、これまでよりも均一に施すことができる。より高いフィラー含量により、該組成物が劣化する前に、明らかにより高い電流密度に耐えることができる。また、目下、塗料として使用するための及び/又はプリプレグを用いる組成物を提供することができ、該組成物は、十分に分散された高いフィラー含量を、実際の使用のために十分に長い時間にわたって維持する。
【0010】
該ポリマーマトリックスは、特に硬化等の後に、特に不導電性又は絶縁性であってよい。
【0011】
部分導電性(バリスタ特性)を提供するために、該電圧制限組成物の該フィラーの粒子は特に、該電圧制限組成物を通り抜ける少なくとも1つの伝導路を形成することができ、そのために複数の粒子が機械的かつ電気的に接触し、そして導電性クラスターを形成する。通常、そのような伝導路は、不伝導性マトリックス中の伝導性フィラーの少ない割合では形成することにはならず、かつ該組成物の比抵抗は事実上、無限に高くなる。フィラー割合が増加するにつれて、該比抵抗(該フィラーの伝導性状態での)は、いわゆるパーコレーション限界又はパーコレーションしきい値から、本質的に一定になるまで、低下する(該組成物は、そうなると"パーコレーション飽和"されている)。該パーコレーションしきい値を超える該フィラー割合の増加は、もはや該比抵抗の有意な変化をもたらさず、かつ該マトリックス中での導電路もしくはクラスターの極めて著しい形成を示唆する。当該電圧制限組成物(それゆえ、特にパーコレーション飽和されている、すなわち、該パーコレーションしきい値での又はパーコレーションしきい値を超えるフィラー割合を有する)の場合に、該組成物が該フィラーの約25質量%〜約50質量%のパーコレーションしきい値を有することが好ましい。しかしながら、該電圧制限組成物は、該パーコレーションしきい値を下回るフィラー割合を有してもよい。
【0012】
更なる一形態は、該部分伝導性材料が、不導電性キャリヤ材料上に全ての面に施されていることである。それにより、電気的接触は機械的接触の際に保証され、かつ導電路の形成が支持される。その結果、こうしてパーコレーションしきい値も低く維持することができる。
【0013】
該フィラーの部分伝導性材料は、特に1種以上の化合物半導体、特にドープされた化合物半導体を含んでよい。
【0014】
一態様は、該部分伝導性材料が、少なくとも1種のドープされた金属酸化物を有することである。ドーピングとして、特にBi、Sb、Mn、Co、Al及び/又は他の金属、それらの酸化物が、又は例えばフッ素(F)も、設けられていてよい。選択的に又は付加的に、該部分伝導性材料は、例えばIII−IV化合物半導体、他のII−VI化合物半導体、III−VI化合物半導体、I−III−VI化合物半導体、IV−IV化合物半導体(例えばSiC)、有機半導体等を有してもよい。
【0015】
更に、一態様は、該ドープされた金属酸化物が、ドープされた酸化スズ及び/又はドープされた酸化亜鉛を含むことである。これらの金属酸化物は、良好な電圧制限特性又はバリスタ特性を有する。酸化スズ及び酸化亜鉛は、約6.9kg・m-3もしくは約5.6kg・m-3の比較的高い密度を有する。
【0016】
なお、一態様は、該キャリヤ材料が、3.5kg・m-3未満、特に3.0kg・m-3未満の密度を有することである。こうして、該部分伝導性材料、特に金属酸化物に比べて高い密度差を保証することができる。そのようなキャリヤ材料は、例えば窒化ホウ素、石英、炭化ケイ素、窒化ケイ素又は層状ケイ酸塩を含む。
【0017】
更になお、一態様は、該キャリヤ材料が、層状ケイ酸塩であることである。層状ケイ酸塩、特に雲母は、それらの少ない密度以外に、典型的には単に少ない導電率を有するという利点を有する。
【0018】
殊に、雲母は、その底面に平行に完全なへき開性を有し、かつ更に、特に少ない導電率を有する。雲母は、約2.7kg・m-3の特に少ない密度も有する。該雲母は、例えば白雲母又は黒雲母であってよい。特に該層状ケイ酸塩、その中でも特に雲母は、小さい粒子又はパーティクル(Teilchen oder Partikel)としても、例えば粉末形でも、平らな基本形を有するという更なる利点を有する。層状ケイ酸塩上に(特に全ての面に)施された部分伝導性材料を有する小さな粒子又はパーティクルは、その結果、球形ではなくて、むしろ小板状である。この小板形状は、沈降を更に遅らせる、それというのも、該ポリマーマトリックス中での運動に抵抗する、球状粒子よりも高い流れ抵抗を有するからである。
【0019】
なお、更なる一態様は、該キャリヤ材料が、セラミックキャリヤ材料、例えば雲母であることである。該セラミックキャリヤ材料は、機械的に高強度であり、かつ化学的に大いに不活性であり、そのうえ電気絶縁体として選択することができるという利点を有する。
【0020】
更に、一態様は、該粒子状フィラーが、特に該セラミックキャリヤ材料と共に、強熱(Gluehen)により製造されていることである。該セラミックキャリヤ材料はその際に、耐高温性であり、かつ該強熱を、損傷なしに克服できるという利点を有する。
【0021】
更なる一形態は、該部分伝導性材料、特に金属酸化物が、それ自体として又はプリフォーム中で(例えばまだ酸化されていないプリフォーム中で及び/又は強熱の際に除去される助剤の添加を伴い)、該キャリヤ材料上に堆積され、次いで該キャリヤ材料と共に強熱されていることである。該キャリヤ材料は、例えば粉末として存在してよい。こうして、堅固に結合される粒子を製造することができ、その際に、該セラミックキャリヤ材料は、強熱のために十分に高い温度安定性を有する。例えば、該部分伝導性材料、特にドープされた金属酸化物は、それ自体として又は該プリフォーム中で、特に湿式化学的方法を用いて、該キャリヤ材料上に堆積されていてよい。特に、例えばスズ又は亜鉛もしくはそれらの化合物は、Bi、Sb、Mn、Co、Al等と一緒に及び場合により助剤と共に、湿式化学的に雲母上に堆積され、かつ該強熱により酸化されてもよい。該助剤は、その際に焼尽される。
【0022】
なお、更なる一態様は、該ポリマーマトリックスが、射出成形できるポリマーを有することである。こうして、該組成物を用いて、単純な方法で、バリスタ特性を有する電圧制限プラスチック体、特に中実体(Vollkoerper)を提供することができる。
【0023】
なお、更なる一形態は、該組成物が、例えば溶剤の添加により、流動性であることである。該組成物はこうして、バリスタ特性を有する塗料等として特に使用することができる。
【0024】
そのうえ、一態様は、該ポリマーマトリックスが、熱硬化性プラスチック及び/又は熱可塑性プラスチックを有することである。これらのポリマーは、特に射出成形法により、プラスチック体の製造に特に良好に使用することができる。
【0025】
該粒子状フィラーの個々の粒子又はパーティクルは特に、5μm〜70μmの最長径(haeufigste Breite)を有してよい。該最長径の偏差(d95)は±5μmであることが特に好ましい。
【0026】
該粒子の厚さは、特に300nm〜600nmであってよい。特に、該キャリヤの厚さは、200nm〜300nmであってよい。該ドープされた金属酸化物は、好ましくはそれぞれ100nm〜150nmの厚さで存在してよい。
【0027】
前記課題は、前記のような電圧制限組成物を有する物体によっても解決される。
【0028】
この物体は、完全にか又は部分的に、従来の電圧制限組成物よりも、部分伝導性材料、特にドープされた金属酸化物の、より高い及び/又はより均一に分散されたフィラー割合を有する、該電圧制限組成物を有するという利点を有する。それにより、より均一なバリスタ挙動が可能になる。そのうえ、こうして、バリスタとしてのその機能において劣化する前に、明らかにより高い電流密度に耐えることができる物体が提供される。このことは、電流の流れに関して特に長寿命で操作上信頼できるバリスタ体を可能にする。
【0029】
一態様は、該物体が、前述の請求項のいずれか1項記載の電圧制限組成物からなる、少なくとも1つの層を有することである。そのような物体は特に、該層を有するその基本形が従来、製造可能であり、次いで該電圧制限組成物からなる又は該電圧制限組成物を有する少なくとも1つの層を施すことが可能であるという利点を有する。その際に、該電圧制限組成物を用いて初めて、該電圧制限組成物を有する塗料もしくは該電圧制限組成物を塗料等として実際に使用することも可能になる。該粒子は十分にゆっくりと沈降するので、高くかつ十分に均一なフィラー割合を有する該塗料が(例えば前もって行われた振とう後に)、従来の方法(刷毛塗り、噴霧等)を用いて施すことができる。塗料の場合に、該電圧制限組成物を用いて、90質量%までのフィラー割合を達成することができる。
【0030】
なお、一態様は、該物体が、該電圧制限組成物から製造される基体を有するか又は該基体であることである。該物体は、特に該基体のみからなっていてよい。こうして、特に長寿命で操作上信頼できるバリスタ中実体も提供することもできる。
【0031】
なお、一態様は、該物体が、繊維強化された組成物を有するか又は繊維強化された組成物であることである。特に、該物体が、該繊維強化された組成物を、プリプレグ半製品として又は該組成物からなるマトリックスと繊維とをそれらの補強のために有する他の半製品として存在してよい。それゆえ、該電圧制限組成物を用いて初めて、プリプレグ等も、該電圧制限組成物、特に該プリプレグの該マトリックス材料として該電圧制限組成物を備えることが、可能である。特に、目下、該プリプレグの繊維は、高くかつ十分に均一なフィラー割合を有する電圧制限組成物に浸漬されてよく、もしくはそれと結合されてよい。プリプレグは特に、長繊維強化された熱硬化性半製品であると理解されてよい。しかしながら、本発明は、長繊維の使用に限定されているのではなくて、例えば、短繊維のみを有する熱硬化性繊維−マトリックス半製品、例えばBMC(バルクモールディングコンパウンド)又はSMC(シートモールディングコンパウンド)と共に、使用してもよい。該プリプレグ又は他の繊維−マトリックス半製品の熱硬化性プラスチックはその結果、熱硬化性ポリマーマトリックスを有する電圧制限組成物であってよい。プリプレグ又は他の繊維−マトリックス半製品のためには、該電圧制限組成物中で70質量%までのフィラー割合に達してよい。該態様は、しかしながら熱硬化性プラスチックに限定されていない。
【0032】
前記課題は、そのうえ、ポリマーマトリックスと、部分伝導性材料を含有する粒子状フィラーとからなる電圧制限組成物の製造方法により解決され、その際に、該方法は、より軽量で不導電性の、特にセラミックの、キャリヤ材料上に施される該部分伝導性材料を有する該粒子状フィラーを製造するための強熱を含む。本方法は、前記の組成物と同じ利点をもたらし、かつ類似した態様のものであってもよい。
【0033】
本発明の前記の特性、特徴及び利点並びにこれらを達成する手法は、図面に関連してより詳細に説明される実施例の次の図式的な説明に関連して、より明確かつよりはっきりと理解できるようになる。その際に、分かりやすさのために、同じか又は同じく作用する要素に同じ参照符号が設けられていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明による電圧制限組成物を示す図。
図2】該電圧制限組成物からなる層を有する物体を示す図。
図3】該電圧制限組成物から製造される基体を有する物体を示す図。
図4】繊維強化された電圧制限組成物を有するプリプレグ半製品の形の物体を示す図。
【0035】
図1は、本発明による電圧制限組成物1を示す。電圧制限組成物1は、1種以上の不導電性の熱硬化性ポリマーを有する不導電性ポリマーマトリックス2を有する。ポリマーマトリックス2は、なお、更なる材料又は物質、例えば溶剤又は希釈剤を有してもよい。
【0036】
ポリマーマトリックス2は、粉末状の部分伝導性粒子4を有する粒子状フィラーと、混合されている。この電圧制限組成物1は、バリスタとして作用するか、もしくはバリスタ機能又はバリスタ特性を有する、すなわち、電圧制限組成物1が、それに印加されたしきい電圧まで、本質的に不導電性であり、かつ該しきい電圧に達するか又は超えると共に、本質的に急激に伝導する。電圧制限組成物1はそれゆえ、例えば過電圧保護に使用することができる。
【0037】
粒子4は、ドープされた金属酸化物5の形の部分伝導性材料が、雲母、例えば白雲母からなるキャリヤ又はキャリヤ材料6上に載るようにして、複合材料("複合粒子")として存在する。ドープされた金属酸化物5は、ここでは、Bi、Sb、Mn、Co及び/又はAlの酸化物でドープされた酸化スズ又は酸化亜鉛である。酸化スズ及び酸化亜鉛が、約6.9kg・m-3もしくは約5.6kg・m-3の高い密度を有するのに対し、雲母は、約2.7kg・m-3の比較的少ない密度を有する。雲母は、そのうえ、際立って不導電性である。粒子4はそれゆえ、ドープされた金属酸化物5と、雲母からなるキャリヤ6との密度の重み付きの平均から得られる、有効平均密度を有する。粒子4は、その結果、純粋なドープされた金属酸化物よりも軽く、かつポリマーマトリックス2中でかなりよりゆっくりと底部に沈む。キャリヤ6はそれゆえ、該金属酸化物のための"浮き"として作用する。
【0038】
粒子4の下降は、粒子4が、雲母からなる本質的に平面のキャリヤ6に基づき、球状の形ではなくて、小板形状を有することにより、更になお遅れるか又はそれどころか阻止される。該小板形状は、流れ抵抗を大きくし、それゆえ下降速度を低下させる。こうして、粒子4は、十分に高いフィラー含量を有する電圧制限組成物1を施すことを可能にするために、比較的液状のポリマーマトリックス2中でも十分に長く分散されうる。電圧制限組成物1は、その結果、塗料又は繊維強化プラスチックの樹脂としても、使用可能である。
【0039】
粒子4は特に、Bi、Sb、Mn、Co及び/又はAlでドープされたスズ又は亜鉛が粉末状雲母上に湿式化学的に堆積され、次いで該雲母と共に強熱されるようにして製造されていてよく、その際に、該強熱中に該酸化物が形成される。該粒子4は、特に5μm〜15μm、特に7μm〜9μmの最長径を有してよい。粒子4の厚さは、特に300nm〜600nmであってよい。特に、キャリヤ又はキャリヤ材料6の厚さは、200nm〜300nmであってよく、かつ両面に、ドープされた金属酸化物5は、それぞれ100nm〜150nmの厚さで存在してよい。
【0040】
粒子4が、よく分かりやすいように、これらが触れないように描写されているにもかかわらず、電圧制限組成物1は、切り抜きA中に拡大されて略示されるように、実際にはパーコレーション飽和されている。粒子4は、ここでは、局所的に本質的には同じ方向で配置されており、かつ粒子4の最も近くで隣接するものは通例、接している(クラスター形成)。それにより、導電路の極めて信頼できる形成、ひいては信頼できるバリスタ機能が可能になる。該金属酸化物5は、そのためにキャリヤ6を特に全ての面で包囲する。
【0041】
図2は、電圧制限組成物1からなる層を有する物体K1を示す。物体K1は、不導電性材料(例えばプラスチック又はセラミック)からなる基体11を有し、その際に、基体11はその表面上で、電圧制限組成物1からなる層12で覆われている。この物体K1に電圧が印加される場合には、該物体は、ドープされた金属酸化物5のしきい電圧に達するまで、不導体として作用する。該しきい電圧に達するか又は超えると共に、該ドープされた金属酸化物5が伝導する。物体K1はその結果、バリスタのように作用する。電圧制限組成物1は、例えば塗料として、基体11上に刷毛塗りされていてよく、又は噴霧されていてよい。この際に、フィラー4の質量割合は約90質量%までであってよい。
【0042】
図3は、電圧制限組成物1から製造される基体13を有する物体K2を示す。ここでは、それゆえ基体13は、バリスタとして作用する。電圧制限組成物1は、基体13の製造のために、例えば射出成形されていてよい。ポリマーマトリックス2もしくは少なくとも1種の付随する該ポリマーはそれゆえ、同様に射出成形できる。
【0043】
図4は、繊維強化された電圧制限組成物1を有するプリプレグ層K3の形の物体を示す。電圧制限組成物1に浸漬される付随する長繊維14は、導電性又は不導電性であってよい。ここでは、それゆえプリプレグ層K3は、バリスタ又はバリスタ出発物質として作用する。プリプレグ層K3は、約70質量%までのフィラー4の質量割合を有してよい。そのようなプリプレグ層K3は、例えば基体の周囲に巻かれてよく、又は巻かれていてよい。
【0044】
本発明は詳細に、示された実施例によってより詳しく説明され、かつ記載されているにもかかわらず、本発明は、それらに限定されるものではなく、かつ他の変更は、本発明の保護範囲を逸脱することなく、当業者によりこれらから導き出すことができるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 電圧制限組成物、 2 ポリマーマトリックス、 4 粒子、 5 ドープされた金属酸化物、 6 キャリヤ、 11 基体、 12 層、 13 基体、 14 長繊維、 A 切り抜き、 K1 物体、 K2 物体、 K3 プリプレグ層
図1
図2
図3
図4