【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は請求項1及び4に記載の注射デバイスにより達成される。
【0007】
本発明の好ましい実施態様は従属請求項に示される。
【0008】
この明細書の状況において、用語遠位及び近位は、注射を行う人物の視点から定義される。それ故、遠位方向は注射を受ける患者の身体の方を指す方向を言い、そして遠位端は患者の身体の方に向けられた要素の端部を定義する。
それぞれ、要素の近位端又は近位方向は、注射を受ける患者の身体から離れた方、かつ遠位端又は遠位方向と反対の方向を向く。
【0009】
本発明の実施態様によれば、液体を投与するための注射デバイスは、充てん済みシリンジ及び充てん済みシリンジの注射針に針安全性を提供するための安全機構を含む。充てん済みシリンジは、
− 液体を収容したバレル、
− バレル内で並進可能に配列されるストッパ、
− バレルの遠位端に取り付けられた注射針
を含む。
【0010】
安全機構は、
− 充てん済みシリンジを収容するように適合された実質的に円筒形のハウジング、
− 充てん済みシリンジのストッパに連結可能であり、かつ注射針を通して液体を放出するために遠位方向に並進されるよう適合されたプランジャ、
− ハウジングと充てん済みシリンジとの間に配置されたエネルギ付与可能な付勢手段[ここで、エネルギ付与された付勢手段は、充てん済みシリンジをハウジングに対して近位方向に付勢することができる]、並びに
− 充てん済みシリンジをハウジングに対して第一の後退位置、前進位置及び第二の後退位置に保持するための保持機構
を含む。
【0011】
注射針は第一及び第二の後退位置においてハウジングで覆われ、かつ前進位置においてハウジングから遠位方向に突出する。付勢手段は、充てん済みシリンジが第一の後退位置にある場合はエネルギ付与されていない状態で配置される。付勢手段は、シリンジを前進位置から第二の後退位置に向かって付勢するように、第一の後退位置から前進位置へ充てん済みシリンジが並進する際にエネルギ付与されるように適合される。
【0012】
注射デバイスは、注射が行われた後の偶発的な針刺し傷の危険性を最小にする単回使用デバイスとして設計される。特に、使用済み注射針との不注意による接触により引き起こされる感染が回避され得る。
【0013】
注射デバイスの付勢手段は、注射後にハウジング中に注射針を引き込むように配置される。付勢手段は、使用前にはエネルギ付与されていない弛緩した状態で配列され、そして注射が行われる直前にエネルギ付与されて応力をかけられる。使用前の付勢手段の弛緩した状態での配置は、材料疲労を低減して注射デバイスの寿命を延長させる。さらに、付勢手段は、例えばプラスチック材料のような、長期間応力をかけられた状態で貯蔵されることに耐性のない代替の材料から製造されてもよい。これらの材料は典型的には安価であるので、注射デバイスの製造費用は有意に低減される。
【0014】
注射デバイスは少数の部材しか含まず、製造費用をさらに低減させる。従って、注射デバイスは、低費用で大量に製造され得るので、単回使用デバイスとして使用するためによく適している。
【0015】
好ましくは、バレルの遠位端に解除可能に連結されるブートは、注射前に注射針を覆い、そして注射針を使用前に無菌環境に保持する。さらに、ブートは、充てん済みシリンジを第一の後退位置から前進位置へと手動で並進させるための手段を提供する。注射デバイスの使用者は、注射が行われる前に遠位方向にブートを単に引くだけで、それにより充てん済みシリンジは前進位置に向かって前進され、そして付勢手段はチャージされてエネルギ付与される。充てん済みシリンジが前進位置に達した後に、遠位方向へ力を継続的に加えることによりブートは取り外され、注射針の覆いが外れ得る。
【0016】
本発明の可能な実施態様によれば、保持機構は、ハウジングに対してピボット点の周りで枢動するようにハウジング上に配置される少なくとも1つのラッチアームを含む。ラッチアームの枢動運動は、充てん済みシリンジを少なくとも第一の後退位置及び前進位置に一時的に取り付けるように、シリンジのバレル又はカラーの摩擦係合及び係合解除を可能にする。
【0017】
保持手段の少なくとも1つのラッチアームはプランジャのガイドレールと相互作用するように配置される。注射針を通して中に収容されている液体薬剤を放出するためにプランジャがバレル中まで押される場合に、ガイドレールは、ハウジングの外面に形成されたガイドトラックに沿って動く。プランジャがバレル内の底に達する場合、ガイドレールはラッチアームに衝合して弾力的にラッチアームを半径方向外側へ偏向させる。ラッチアームはピボット点の周りを枢動し、それにより前進位置で保持されるシリンジは、プランジャが実質的にバレル内へ押された場合に係合解除され、そして解除される。
【0018】
本発明の別の実施態様によれば、液体を投与するための注射デバイスは、充てん済みシリンジ、及び充てん済みシリンジの注射針に針安全性を提供するための安全機構を含む。充てん済みシリンジは、
− 液体を収容したバレル、
− バレル内で並進可能に配列されるストッパ、
− バレルの遠位端に取り付けられた注射針
を含む。
【0019】
安全機構は、
− 充てん済みシリンジを収容するように適合された実質的に円筒形のハウジング、
− 充てん済みシリンジのストッパに連結可能であり、かつ注射針を通して液体を放出するために遠位方向に並進されるよう適合されたプランジャ、
− ハウジングに対して並進可能に配列されたニードルシールド、
− ハウジングとニードルシールドとの間に配置されたエネルギ付与可能な付勢手段[ここで、エネルギ付与された付勢手段は、ニードルシールドをハウジングに対して遠位方向に付勢することができる]、
− ハウジングに対して近位位置から遠位位置へ並進されるように適合された起動要素、並びに
− ニードルシールドをハウジングに対して第一の位置及び第二の位置に保持するための保持機構を含む。
【0020】
注射針は、第一の位置においてニードルシールドから遠位方向に突出し、そして第二の位置においてニードルシールドにより覆われる。付勢手段は、起動要素が近位位置にある場合、エネルギ付与されていない状態で配置される。付勢手段は、ニードルシールドを第一の位置から第二の位置に向かって付勢するように、起動要素が近位位置から遠位位置へと並進された際にエネルギ付与されるように適合される。
【0021】
注射デバイスの付勢手段は、ニードルシールドを前進させて注射後に注射針を覆うように配置される。付勢手段は、使用前はエネルギ付与されていない弛緩した状態で配列され、そして注射が行われる直前にエネルギ付与されて応力を掛けられる。使用前に付勢手段を弛緩した状態で配置することは、材料疲労を低減し、注射デバイスの寿命を延長する。さらに、付勢手段は、例えばプラスチック材料のような、長期間応力をかけられた状態で貯蔵されることに耐性のない代替の材料から製造されてもよい。これらの材料は典型的には安価であるので、注射デバイスの製造費用は有意に低減され得る。
【0022】
あるいは、付勢手段は金属から製造された圧縮スプリングとして配置され得る。
【0023】
好ましくは、カバー要素はハウジングの遠位端に取り外し可能に連結される。カバー要素は注射前に注射針を囲み、そしてそれらとの不注意による接触から保護する。さらに、カバー要素は起動要素に解除可能に連結されて、起動要素を近位位置から遠位位置に並進させ、それにより付勢手段がエネルギ付与され、かつ張力を掛けられる。
【0024】
ブートは使用前に注射針を覆うように配置され得る。ブートは、感染の危険性を最小にするように注射針を無菌環境に保持する。有利に、ブートはカバー要素に一体化される。
【0025】
カバー要素は、起動要素を掛止してカバー要素を起動要素に解除可能に連結するように適合される少なくとも1つのクランプアームを含み得る。カバー要素は、単にカバー要素を遠位方向に引くことによりハウジングから取り外され、それにより起動要素は近位位置から遠位位置へ並進されて付勢手段をチャージしエネルギ付与する。
【0026】
ハウジングは、近位位置から遠位位置への起動要素の並進運動を可能にするように配置された少なくとも1つの傾斜した第一の突出部を含み得る。ニードルシールドと起動要素との間に配置された付勢手段はニードルシールドが第一の位置にあり、かつ起動要素が遠位位置にある場合に十分に圧縮され、従ってエネルギ付与される。起動要素は、第一の突出部により遠位位置にしっかりと固定され、そして解除の際の付勢手段の負荷下でのニードルシールドの第一の位置から第二の位置への並進運動を可能にする軸受を提供する。
【0027】
別の可能な実施態様によれば、保持機構は、ニードルシールド上に配置され、かつハウジングを係合してニードルシールドを第一の位置及び第二の位置に係合するように適合された、少なくとも1つの傾斜した第一のクリップ及び少なくとも1つの第二のクリップを含む。第一のクリップは、ニードルシールドを第一の位置に解除可能に保持するように適合され、そして第二のクリップは、ニードルシールドを第二の位置にしっかりと保持し、かつロックして、注射後の注射針の不注意による露出を防止するように適合される。ニードルシールドは、注射デバイスの再使用を防止するために、ニードルシールドを前進した第二の位置へ不可逆的にロックするよう設計され得る。これは特に体液との接触を介して伝染される疾患の感染の危険性を最小にする。
【0028】
保持機構は、第一の位置に保持されているニードルシールドを解除するように適合された解除要素をさらに含み得、その結果、ニードルシールドは付勢手段の負荷下で遠位方向に並進されて注射後の注射針を覆い得る。解除要素はハウジングに対して遠位方向に並進されるように適合され、ここで解除要素の遠位方向の並進運動は、第一のクリップの傾斜面を係合し、かつ衝合する。第一のクリップは、弾力的に偏向されてニードルシールドを第一の位置における保持から解除する。
【0029】
好ましくは、解除要素はプランジャの運動と連結され得る。解除要素はハウジングから近位方向に突出し得、その結果、プランジャの遠位端上に配置される親指台は、プランジャが実質的にバレル中まで押された場合に解除要素に衝合し得る。解除要素は、プランジャを遠位方向に押し、そして完全にバレル中へとプランジャを押すことにより遠位方向に並進されて、充てん済みシリンジに収容されている残りの薬剤を実質的に放出する。従って、ニードルシールドは、患者の皮膚下へ薬剤を送達する注射ストロークの終わりに解除される。
【0030】
解除要素はさらに第一のショルダを含み得、そしてハウジングは対応する第二のショルダをさらに含み得る。ショルダはガイダンス及びストッパとして作動する。第一のショルダは、解除要素の遠位方向の並進運動を制限するように第二のショルダに衝合するように配置される。
【0031】
本発明の別の可能な実施態様によれば、付勢手段はゴム又はエラストマーのような形状記憶プラスチック材料から製造される。プラスチック材料は安価であり、従って注射デバイスの製造費用を低減するために役立つ。
【0032】
好ましくは、エネルギ付与可能な付勢手段は、ポリウレタンのような圧縮可能でかつ弾力的なフォーム材料から製造され、これは注射が行われる直前に圧縮され、従ってエネルギ付与される。
【0033】
注射デバイスは、自己投与される注射に特に適している。従って、用語患者又は使用者は、1人の同じ人物のことを指し得る。
【0034】
本発明の適用性のさらなる範囲は、本明細書以後に示される詳細な説明から明らかとなるだろう。しかし、当然のことながら、本発明の精神及び範囲内で様々な変形及び改変がこの詳細な説明から当業者に明らかとなるので、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の好ましい実施態様を示すが、説明としてのみ示される。
【0035】
図面の簡単な説明
説明としてのみ示され、かつ従って本発明を限定するものではない、本明細書以後に示される詳細な説明及び添付の図面から、本発明はより十分に理解されるようになるだろう。