(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933739
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】基板処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/105 20060101AFI20160602BHJP
H01L 45/00 20060101ALI20160602BHJP
C23C 16/02 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
H01L27/10 448
H01L45/00 A
C23C16/02
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-539867(P2014-539867)
(86)(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公表番号】特表2015-505420(P2015-505420A)
(43)【公表日】2015年2月19日
(86)【国際出願番号】KR2012008969
(87)【国際公開番号】WO2013066015
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2014年5月2日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0112128
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512051952
【氏名又は名称】ウォニック アイピーエス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュファン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ドンホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ビョンチョル
【審査官】
小山 満
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−077526(JP,A)
【文献】
特開2008−288408(JP,A)
【文献】
特表2001−523043(JP,A)
【文献】
特開2009−021565(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0035061(KR,A)
【文献】
米国特許第06093645(US,A)
【文献】
国際公開第99/025012(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0308911(US,A1)
【文献】
特開2003−163285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/105
C23C 16/02
H01L 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化メモリを製造する基板処理方法において、
パターン付き基板に下部電極を形成する過程と、
H2含有ガスを用いたプラズマ処理である表面処理によって、前記下部電極の形成過程により基板の表面に生成又は残存する不純物を除去する表面処理過程と、
前記不純物が除去された基板の表面に対して、前記基板の表面に形成された水素ボンディングを除去する窒化処理を行う過程と、
前記下部電極の上に相変化膜及び上部電極をこの順に蒸着する過程と、
を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記下部電極を形成する過程は、
基 板に絶縁膜を蒸着した後、下部電極が形成される下部電極コンタクトホールを形成する過程と、
前記コンタクトホールが形成された基板の表面に窒化膜を蒸着する過程と、
前記下部電極コンタクトホールの窒化膜を残して残りの窒化膜を除去する過程と、
を含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記窒化処理は、窒素含有雰囲気下での熱処理又はプラズマ処理である請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記熱処理は、N2、N2O、NH3ガスのうちの少なくとも一種を流出しながら行う請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記熱処理は、8[Torr]以上の圧力、700[℃]以上の温度条件下で行う請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記熱処理は、N2、N2O、NH3ガスのうちの少なくとも一種を1000[sccm]流量で10分間流出しながら行う請求項4又は請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記プラズマ処理は、N2、N2O、NH3ガスのうちの少なくとも一種をプラズマ化して行う請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記プラズマ処理は、300[℃]以上の温度条件下で行う請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記相変化膜は、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)及びテルル(Te)のうちの少なくとも一種を含む化合物である請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記相変化膜は、GaSb、InSb、InSe、Sb2Te3、GeTeのうちのいずれか一種の2元素化合物と、GeSbTe、GaSbTe、InSbTe、SnSb2Te4、InSbTeのうちのいずれか一種の3元素化合物及びAgInSbTe、(GeSn)SbTe、GeSb(SeTe)、Te81Ge15Sb2S2のうちのいずれか一種の4元素化合物のうちの少なくとも一種から構成される化合物である請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記下部電極及び前記上部電極は、窒素(N)を含む化合物である請求項1又は請求項9に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相変化メモリ(PRAM)の相変化膜を蒸着する基板処理装置及びその処理方法に係り、蒸着特性に優れた相変化膜を製造する基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動的RAM(DRAM)、静的RAM(SRAM)、フラッシュメモリなどの既存の不揮発性メモリの欠点を補った次世代不揮発性メモリが提案されている。次世代不揮発性メモリとしては、強誘電体メモリ(FRAM:Ferroelectrics Random Access Memory)、磁気抵抗メモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)、相変化メモリ(PRAM:Phase-change Random Access Memory)などが既存の不揮発性メモリの欠点を補う可能性があると認められている。
【0003】
特に、最近、次世代不揮発性メモリ技術の一つとして高い関心が寄せられている相変化メモリ(PRAM)は、ゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST:Ge
2Sb
2Te
5)薄膜を主成分とし、結晶状態から膜物質の抵抗性変化と関連する非晶質状態への可逆的な遷移を用いて非晶質と結晶質との間の光学的・電気的なスイッチングを行う技術である。すなわち、電気的信号に基づく非晶質と結晶質との間の抵抗差若しくは電流差をメモリの概念として取り入れたものである。ゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST)薄膜の場合、物理的な気相蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)により蒸着可能であるが、最近には商業的な高速製造及び性能を理由に、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)及び原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)などの方法を用いてゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST)薄膜を蒸着して形成することもある。
【0004】
ところが、低温下でCVD及びALDにより高品質のゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST)薄膜である相変化膜を成長させるのに種々の難点があるが、特に、下部電極を形成した後に相変化膜を蒸着するときに下記の問題が発生する。
【0005】
このような問題について、相変化膜を有する相変化メモリの断面を示す
図1に基づいて説明する。
【0006】
先ず、基板の上に相変化メモリを蒸着する過程について述べると、基板100の上に絶縁膜200を蒸着する。絶縁膜200の上にマスクパターンを用いて下部電極コンタクトホールを形成した後、TiN、TiSiNなどの窒化膜を蒸着する。次いで、下部電極が形成されるコンタクトホールを除く残りの不要な部分をエッチングにより除去することにより、下部電極300を形成する。次いで、下部電極300及び絶縁膜200の上に物理的気相蒸着(PVD)や化学的気相蒸着(CVD)を用いて相変化膜400及び上部電極500をこの順に成長させる。
【0007】
上述したように窒化膜の上に相変化膜を蒸着する前にエッチングを施すが、このようなエッチング後に発生する酸化膜と残存物質が相変化メモリ(PRAM)のスイッチング速度を低下させる原因となる。これを改善するために、エッチング後にH
2プラズマを用いた基板表面処理が施される。
【0008】
ところが、上述したようにH
2プラズマ表面処理が施されれば、下部電極300及び絶縁膜200の薄膜の表面に水素(H)ボンディングが発生するという問題がある。物理的気相蒸着(PVD)方式により相変化膜400を蒸着する場合には、相変化膜の蒸着に際して薄膜表面の水素(H)ボンディングによる影響を大きく受けないため問題にならないが、化学的気相蒸着(CVD)方式により相変化膜400を蒸着する場合には、薄膜表面の水素(H)ボンディングにより蒸着特性が変化してしまうという問題が発生する。すなわち、薄膜表面の水素(H)ボンディングにより相変化膜400の蒸着特性が変化して成長時間(incubation time)、方向性などに大きな影響を与えて量産性に悪影響を及ぼしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
大韓民国公開特許第10−2009−0091107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の技術的課題は、相変化メモリを蒸着する基板処理装置及び方法を提供するところにある。また、本発明の他の技術的課題は、下部電極に対するプラズマクリーニングによる相変化メモリの相変化膜の蒸着特性が変化しない基板処理装置及び方法を提供するところにある。さらに、本発明のさらに他の技術的課題は、下部電極に対するプラズマクリーニングによる相変化膜の成長時間、方向性に影響を及ぼさない基板処理装置及び方法を提供するところにある。さらにまた、本発明のさらに他の技術的課題は、相変化メモリの量産性を向上させる基板処理装置及び方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、相変化メモリを製造する基板処理方法において、パターン付き基板に下部電極を形成する過程と、前記下部電極の形成過程により基板の表面に生成又は残存する不純物を除去する表面処理過程と、前記不純物が除去された基板の表面に対して窒化処理を行う過程と、前記下部電極の上に相変化膜及び上部電極をこの順に蒸着する過程と、を含む。
【0012】
また、好ましくは、前記下部電極を形成する過程は、基板に絶縁膜を蒸着した後、下部電極が形成される下部電極コンタクトホールを形成する過程と、前記コンタクトホールが形成された基板の表面に窒化膜を蒸着する過程と、前記下部電極コンタクトホールの窒化膜を残して残りの窒化膜を除去する過程と、を含む。
【0013】
さらに、好ましくは、前記表面処理は、H
2含有ガスを用いたプラズマ処理であり、前記窒化処理は、窒素含有雰囲気下での熱処理又はプラズマ処理である。
【0014】
さらに、好ましくは、前記熱処理は、N
2、N
2O、NH
3ガスのうちの少なくとも一種を流出しながら行い、8[Torr]以上の圧力条件、700[℃]以上の温度条件下で行う。なお、前記熱処理は、N
2、N
2O、NH
3ガスのうちの少なくとも一種を1000[sccm]流量で10分間流出しながら行う。
【0015】
さらに、好ましくは、前記プラズマ処理は、N
2、N
2O、NH
3ガスのうちの少なくとも一種をプラズマ化して行い、前記プラズマ処理は、300[℃]以上の温度条件下で行う。なお、前記相変化膜は、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)及びテルル(Te)のうちの少なくとも一種を含む化合物である。
【0016】
さらに、好ましくは、本発明の実施形態は、相変化メモリを製造する基板処理装置において、複数の基板が搬入及び搬出され、大気状態と真空状態との間で切り換えられるロードロックチャンバと、内部が真空状態に保たれて多角面状を呈し、複数の面のうちの一つの面に前記ロードロックチャンバが取り付けられ、基板を搬送するための基板搬送ロボットを有する真空搬送チャンバと、前記真空搬送チャンバの複数の面のうちの一つの面に取り付けられ、表面処理された下部電極が形成された基板の表面を窒化処理し、窒化処理された面に相変化膜を蒸着し、このような窒化処理及び蒸着が同じチャンバにおいて連続した工程により行われるプラズマプロセスチャンバと、を備える。
【0017】
また、好ましくは、本発明の実施形態による基板処理装置は、複数の基板が搬入及び搬出され、大気状態と真空状態との間で切り換えられるロードロックチャンバと、内部が真空状態に保たれて多角面状を呈し、複数の面のうちの一つの面に前記ロードロックチャンバが取り付けられ、基板を搬送するための基板搬送ロボットを有する真空搬送チャンバと、前記真空搬送チャンバの複数の面のうちの一つの面に取り付けられ、下部電極が形成された基板の表面を窒化処理を施す窒化処理チャンバと、前記真空搬送チャンバの複数の面のうちの一つの面に取り付けられ、前記窒化処理チャンバにより窒化処理された基板の面に相変化膜を蒸着するプロセスチャンバと、を備える。
【0018】
さらに、好ましくは、前記窒化処理チャンバは、N
2、N
2O、NH
3ガスのうちの少なくとも一種をプラズマとして窒化処理を施すプラズマチャンバであるか、あるいは、N
2、N
2O、NH
3ガスのうちの少なくとも一種を流出しながらチャンバの内部温度を特定の温度以上に保ちながら窒化処理を施す熱処理チャンバである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態によれば、下部電極に対するプラズマクリーニングによる相変化メモリの相変化膜の蒸着特性が変化することを極力抑えることができる。また、本発明の実施形態によれば、下部電極に対するプラズマクリーニングが行われても相変化膜の成長時間、方向性に影響を及ぼさないので、相変化メモリの量産性を向上させることができる。さらに、本発明の実施形態によれば、窒化処理及び相変化膜蒸着が単一の工程により行われて自然酸化膜の形成が防がれるので、相変化メモリの特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】相変化膜を有する相変化メモリの断面を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態によるPRAM物質蒸着過程を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態によるPRAM物質が蒸着される工程を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による熱処理条件に伴う相変化膜の蒸着厚さを示すグラフである。
【
図5】本発明の実施形態によるプラズマ条件に伴う相変化膜の蒸着厚さを示すグラフである。
【
図6】表面窒化処理後から相変化膜の蒸着前までのタイムディレイ及びこれにより自然酸化膜が発生する区間を示す経時グラフである。
【
図7】本発明の実施形態により表面窒化処理及び相変化膜蒸着を単一の工程により行うときの経時グラフである。
【
図8】本発明の実施形態により相変化膜の蒸着及びプラズマ表面窒化処理をプロセスチャンバ内で同時に行う基板処理装置を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態により表面窒化処理を施すプラズマチャンバを別設した基板処理装置を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態により表面窒化処理を施す熱処理チャンバを別設した基板処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態を詳述する。しかしながら、本発明は後述する実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる態様で実現され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、且つ、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。図中、各種の層及び各領域を明確に表現するために厚さを拡大して表現し、同じ参照符号は同じ構成要素を示す。
【0022】
図2は、本発明の実施形態によるPRAM物質蒸着過程を示すフローチャートであり、
図3は、本発明の実施形態によるPRAM物質が蒸着される工程を示す図である。
【0023】
相変化メモリ(PRAM)は、印加される電流から発生する熱によりその結晶状態が変化する相変化膜を有する。現在相変化メモリに適用される相変化膜としては、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)及びテルル(Te)から構成されたカルコゲナイド化合物(Ge−Sb−Te:GST)が主として用いられている。ゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST)薄膜などの相変化膜は、供給される電流の大きさ及び経時的に発生する熱によりその結晶状態が変化される。このような相変化膜は非晶質状態で高い比抵抗を有するのに対し、結晶状態では低い比抵抗を有するので、メモリ装置のデータ記憶媒体として使用可能である。前記相変化メモリ(PRAM)に相変化膜を形成するために、先ず、基板が用意される(S210)。前記基板は、200mm、300mmなどの大きさを有していてもよい。次いで、パターン付き基板の上に下部電極を形成する(S220)。
【0024】
前記下部電極を形成(S220)するために、先ず、
図3(a)に示すように、基板100の上部にSiN絶縁膜200を形成する(S221)。図示はしないが、基板100と絶縁膜200との間にアクセス素子が介装されてもよく、前記アクセス素子は、例えば、PNダイオードであってもよい。前記アクセス素子と選択的に接続されるように前記絶縁膜200内に下部電極(BE:Bottom Electrode)を形成する。
【0025】
下部電極を形成するために、
図3(b)に示すように、前記絶縁膜200内における下部電極が形成される個所にマスクパターンを用いて下部電極コンタクトホール301を形成する(S222)。次いで、
図3(c)に示すように、TiN、TiSiNの窒化膜300aよりなる導電膜を蒸着(S223)した後、
図3(d)に示すように、下部電極コンタクトホール301の窒化膜を残して残りの窒化膜を除去するエッチングを施す(S224)ことにより、下部電極300が形成される。すなわち、TiN、TiSiNの窒化膜を蒸着した後、化学エッチング(chemical etching)により下部電極が形成される領域のみを残して残りの窒化膜を除去することにより、下部電極コンタクトホールの形成個所に窒化膜よりなる下部電極が形成される。
【0026】
一方、前記化学エッチングにより下部電極300を形成した後には、
図3(e)に示すように、H
2含有ガスを用いたプラズマクリーニング(Plasma cleaning)などの表面処理を行う。下部電極の形成過程により基板の表面に生成又は残存する不純物(例えば、自然酸化膜又はカーボン)を除去する表面処理を行うのである。このような表面処理は、酸化膜などの不純物を除去するために、H
2プラズマクリーニングなどにより行われるが、エッチング後に残った不純物によりPRAMのスイッチング速度が低下される虞があるため、H
2プラズマクリーニングを行って不純物を除去する。
【0027】
ところが、H
2プラズマクリーニングの表面処理が行われると、
図3(f)に示すように、薄膜の表面に水素(H)ボンディング350が発生するという問題がある。物理的な気相蒸着(PVD)方式によりゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST)薄膜よりなる相変化膜を蒸着する場合には、薄膜表面の水素(H)ボンディングによる影響を大きく受けないため問題にならないが、化学的気相蒸着(CVD)方式により相変化膜を蒸着する場合には薄膜表面の水素(H)ボンディングにより薄膜蒸着特性が変化するという問題が発生する。すなわち、薄膜表面の水素(H)ボンディングにより蒸着特性が変化して成長時間、方向性に大きな影響を及ぼして量産性に悪影響を及ぼしてしまう。
【0028】
このようなH
2プラズマクリーニングにより発生するHボンディングにより蒸着特性が変化することを防ぐために、本発明の実施形態では、
図3(f)に示すように、H
2プラズマクリーニングを終えた後に水素(H)ボンディングを除去する表面窒化処理工程をさらに行う(S240)。
【0029】
前記表面窒化処理は、
図3(g)に示すように、H
2プラズマクリーニングにより上部面にくっつく水素(H)ボンディング350を窒素(N)ボンディングに置き換える前処理工程であり、これにより成長時間の短縮及び量産性の増大という効果が奏される。
【0030】
前記表面窒化処理は2種類の方式により行われるが、窒素含有雰囲気下での熱処理(アニール)方式又はプラズマ処理方式により行われる。
【0031】
前記熱処理方式による表面窒化処理は、NH
3などの窒素(N)を含むガスを上部面に流出しながら熱処理を施すことにより表面窒化処理が行われる。このような熱処理方式による表面窒化処理は、熱処理の温度、時間及び圧力が増大するにつれて、後続して蒸着されるゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST)薄膜よりなる相変化膜の厚さが増大される。
図4は、1000[sccm]流量のNH
3を基板の上部に流出しながら、熱処理の温度、時間、圧力を増大させていくときの相変化膜の厚さを測定した結果を示すグラフであり、500[℃]の温度、5[Torr]の圧力、5分の時間という条件下での熱処理において相変化膜が蒸着され始め、700[℃]の温度、8[Torr]の圧力、10分の時間という条件下での熱処理において相変化膜が有意的な60Åの厚さを有することが分かる。
【0032】
一方、プラズマ方式による表面窒化処理では、NH
3などの窒素(N)を含むガスをプラズマガスとして表面処理を施す。300[℃]の温度条件下で窒素(N)を含むガスをプラズマガスとしてプラズマ処理を施す場合、
図5に示すように、相変化膜の厚さが120Åとなり、700[℃]の温度、8[Torr]の圧力、10分の時間という条件下で熱処理を施すときよりも2倍ほど厚い相変化膜が形成されることが分かる。これは、表面窒化処理において、プラズマ処理が熱処理よりも低い温度で行われることを示唆する。
【0033】
熱処理は、500〜900℃の温度、1〜100Torrの圧力の条件下で行われるが、熱処理がこの条件以下で行われるときには窒化への反応性が低下して窒化効率性が低下し、逆に、900℃以上に温度条件下では下部膜がリフティングしてしまう。
【0034】
プラズマ処理は、常温〜500℃の温度、1〜10Torrの圧力、1〜30分の時間の条件下で行われるが、プラズマ処理時間がその以上に延びる場合に下部膜にダメージが発生してしまう。
【0035】
このようにして表面窒化処理(S240)終わった後には、
図3(h)に示すように、下部電極を有する絶縁膜200の上部に純粋な相変化成分、例えば、Ge、Sb及びTe成分のうちの少なくとも一種を有する相変化膜400を蒸着する(S250)。
【0036】
前記相変化膜400は、GaSb、InSb、InSe、Sb
2Te
3、GeTeなどの2元素化合物と、GeSbTe、GaSbTe、InSbTe、SnSb
2Te
4、InSbTeなどの3元素化合物及びAgInSbTe、(GeSn)SbTe、GeSb(SeTe)、Te
81Ge
15Sb2S
2などの4元素化合物のうちのいずれか一種から構成されてもよく、この実施形態では、Ge、Sb及び/又はTe成分を含むゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST)薄膜を形成している。
【0037】
このような相変化膜400は、例えば、化学気相蒸着(CVD)、原子層蒸着(ALD)又は物理的気相蒸着(PVD)方式により特定の温度条件下で約1000Å〜2000Åの厚さに形成される。例えば、相変化膜がCVD又はALD方式により形成される場合、前記相変化膜は約150[℃]〜300[℃]の温度条件下で形成され、相変化膜がPVD方式により形成される場合、前記CVD又はALD方式よりも低い温度で形成される。
【0038】
また、前記相変化膜400は、蒸着当時に非晶質状態を有するように100[℃]〜210[℃]の温度条件下で蒸着される。この場合、相変化膜の蒸着後に連続して熱処理工程を行ってもよい。熱処理工程は、前記相変化膜の結晶が安定した状態になるように、例えば、200[℃]〜300[℃]の温度条件下で行われる。
【0039】
このようにして相変化膜400が形成された後には、
図3(i)に示すように、相変化膜230aの上に上部電極を形成する(S260)。好ましくは、上部電極はTi/TiN層から形成されてもよく、前記Ti/TiN層は、例えば、CVD方式により形成されてもよい。
【0040】
一方、上述したように、表面窒化処理後にゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST)薄膜などの相変化膜が蒸着されるが、既存の相変化膜(GST薄膜)蒸着設備の場合、表面窒化処理のための熱処理装置やプラズマ発生装置が相変化膜(GST薄膜)蒸着設備に設けられていなかった。もし、別途の熱処理装置やプラズマ発生装置を用いて別途の単一の工程により表面窒化処理を行う場合、
図6に示すように、工程間にタイムディレイ及び自然酸化膜が生じる可能性が高い。
【0041】
このような自然酸化膜の形成を極力抑えるためには、
図7に示すように、表面窒化処理工程と相変化膜の蒸着工程が連続して行われる必要がある。このために、本発明の実施形態においては、表面窒化処理工程と相変化膜の蒸着工程が同時に行われる基板処理装置について
図8及び
図9に基づいて詳述する。
【0042】
図8は、本発明の実施形態により相変化膜の蒸着及びプラズマ表面窒化処理を同時に行うPRAM基板処理装置を示す図である。
【0043】
本発明の実施形態による基板処理装置は、積載箱10と、待機搬送チャンバ20と、ロードロックチャンバ30(L/C)と、真空搬送チャンバ40(T/C)と、プラズマプロセスチャンバ50(P/C)と、を備える。積載箱10には複数の基板が収納されるカセット(図示せず)が設けられている。待機搬送チャンバ20には、基板を搬送するための搬送アーム21と、基板がしばらくの間待ち受けるバッファ用カセット22と、が設けられている。ロードロックチャンバ30は、待機搬送チャンバ20と真空搬送チャンバ40を互いに分離するためのものであり、このロードロックチャンバ30にはバッファ用カセット22内の複数枚の基板が搬入及び搬出され、大気状態と真空状態との間で切り換えられる。真空搬送チャンバ40は、正方形などの多角面状に形成され、内部に基板の搬送のための基板搬送ロボット41が設けられている。複数の面のうちいずれか一つの面に前記ロードロックチャンバ30が取り付けられる。そして、真空搬送チャンバ40の内部は、セッティングやメンテナンスに必要な場合を除いては、常に真空状態に保たれる。
【0044】
プラズマプロセスチャンバ50は、CVD又はALD方式により基板にゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST)薄膜の相変化膜を蒸着するプロセスチャンバであり、真空搬送チャンバから搬送されてきた基板に対して、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)をソースガスとしてCVD又はALD方式により相変化膜の蒸着を行う。プラズマプロセスチャンバ50もまた、特別な場合を除いては、真空状態に保たれる。
【0045】
一方、前記プラズマプロセスチャンバ50は、下部電極が形成された基板の表面に相変化膜の蒸着を行うに先立って、前処理工程として、先ず、下部電極が形成された基板の表面に対してプラズマ表面窒化処理を行う。このために、窒素(N)を含むプラズマガスがサセプタとガス噴射手段(例えば、シャワーヘッド)との間の基板処理空間で直接的に励起されて提供されてもよい。なお、前記プラズマガスはチャンバの外部で励起されて基板処理空間に取り込まれる遠隔プラズマ発生器(RPG:Remote Plasma Generator)により提供されてもよい。
【0046】
上述したように、プラズマプロセスチャンバ50という同じチャンバ内で、基板を搬送することなく、表面窒化処理及び相変化膜の蒸着をインサイチュで行うことにより、窒化処理後から相変化膜の蒸着前までにタイムディレイが発生しないので、表面に自然酸化膜が形成されることを防ぐことができる。
【0047】
一方、表面窒化処理のためのプラズマ処理がプロセスチャンバで行われることなく、別途のチャンバで行われる場合には、
図9に示すように、真空搬送チャンバの周りに表面窒化処理のための窒化処理チャンバとしてのプラズマチャンバ70が別設されてもよい。
【0048】
図9に示す構造を有する場合、プロセスチャンバ60に基板が搬送される前に、プラズマチャンバ70に基板が搬送されて前処理工程としての窒化プラズマを用いた表面窒化が先に行われた後に、真空搬送チャンバ40を経てプロセスチャンバ60に基板が搬送されて相変化膜が蒸着される。
【0049】
一方、表面窒化処理に際して、プラズマ処理方式に加えて、熱処理により表面窒化処理が行われてもよい。熱処理のために、前記
図4に基づいて説明したように、700[℃]以上の温度に加熱することが好ましい。ところが、CVD又はALD方式のプロセスチャンバは、ソースガス及び反応ガスの蒸着に際して、一般に、サセプタの加熱手段は300[℃]にしか温度を昇温させることができない。このため、既存のプロセスチャンバは、熱処理方式による表面窒化処理を行うことができない。
【0050】
このため、プロセスチャンバにおいて相変化膜を蒸着する前に行われる熱処理方式による表面窒化処理のために、
図10に示すように、窒化処理チャンバとして別途の熱処理チャンバ80を備える。前記熱処理チャンバ80は表面窒化処理に見合う温度(例えば、700[℃])を有するチャンバであり、真空搬送チャンバ40の複数の面のうちのいずれか一つの面に取り付けられる。
【0051】
図10に示す構造を有する場合、プロセスチャンバ60に基板が搬送される前に、熱処理チャンバ80に基板が搬送されて前処理工程としての熱処理方式による表面窒化処理が先に行われた後、真空搬送チャンバ40を経てプロセスチャンバ60に基板が搬送される。
【0052】
本発明を添付図面及び上述した好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲により限定される。よって、この技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲の技術的思想から逸脱しない範囲内で本発明を種々に変形及び修正することができる。