特許第5933758号(P5933758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5933758潤滑油との混和性が改善された熱伝達組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933758
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】潤滑油との混和性が改善された熱伝達組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20160602BHJP
   C10M 105/18 20060101ALI20160602BHJP
   C10M 107/34 20060101ALI20160602BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20160602BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20160602BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20160602BHJP
【FI】
   C09K5/04 FZAB
   C10M105/18
   C10M107/34
   F25B1/00 396U
   C10N30:00 A
   C10N40:30
【請求項の数】23
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-553779(P2014-553779)
(86)(22)【出願日】2013年1月9日
(65)【公表番号】特表2015-506402(P2015-506402A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】FR2013050041
(87)【国際公開番号】WO2013110868
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2014年9月18日
(31)【優先権主張番号】1250718
(32)【優先日】2012年1月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ゲラン, ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ラシェッド, ウィサム
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−532520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/04
C10M101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 15%〜30%のアンモニア70%〜85%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物からなる熱伝達流体と、
− ポリアルキレングリコールを含む潤滑油と
を含む、組成物。
【請求項2】
前記熱伝達流体が、18%〜26%のアンモニア74%〜82%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記潤滑油がポリアルキレングリコールからなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記潤滑油が、前記組成物の1%〜99%を占める、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
熱伝達化合物、安定剤、界面活性剤、トレーサー、蛍光剤、着臭剤、および溶解剤、ならびにそれらの混合物から選択される1種以上の添加剤も含む、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
15%〜30%のアンモニアおよび70%〜85%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物からなる熱伝達流体と組み合わせた、蒸気圧縮回路での潤滑油としてのポリアルキレングリコールの使用。
【請求項7】
前記ポリアルキレングリコールが、前記ポリアルキレングリコールと前記熱伝達流体の総量に対して、1%〜99%の比率で使用される、請求項に記載の使用。
【請求項8】
前記熱伝達流体が、18%〜26%のアンモニア74%〜82%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物からなる、請求項またはに記載の使用。
【請求項9】
前記熱伝達流体が、アンモニアと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物からなる、請求項からのいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の組成物である熱伝達組成物を含む蒸気圧縮回路を備える熱伝達装置。
【請求項11】
可動型または固定型のヒートポンプ加熱装置、空調装置、冷蔵装置および冷凍装置、ならびにランキンサイクルから選択される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
自動車用空調装置である、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
熱伝達流体を含む蒸気圧縮回路によって流体または物体を加熱または冷却する方法であって、前記熱伝達流体の少なくとも部分的な蒸発、前記熱伝達流体の圧縮、前記熱伝達流体の少なくとも部分的な凝縮、および前記熱伝達流体の減圧を連続して含み、前記熱伝達流体が潤滑油と組み合わされて熱伝達組成物を形成し、該熱伝達組成物が請求項1からのいずれか一項に記載の組成物である、方法。
【請求項14】
初期熱伝達流体を含む蒸気圧縮回路を備える熱伝達装置の環境影響を低減する方法であって、前記蒸気圧縮回路内の前記初期熱伝達流体を最終熱伝達流体で置換する工程を含み、前記最終熱伝達流体のGWPが前記初期熱伝達流体より低く、前記最終熱伝達流体が潤滑油と組み合わせて熱伝達組成物を形成し、該熱伝達組成物が請求項1からのいずれか一項に記載の組成物である、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物において、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの潤滑油との混和性を向上させるためのアンモニアの使用。
【請求項16】
アンモニアが、アンモニアと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの総量に対して、15%〜30%の比率で使用される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物において、アンモニアの潤滑油との混和性を向上させるための2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの使用。
【請求項18】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンが、アンモニアと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの総量に対して、70%〜85%の比率で使用される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記潤滑油が、ポリアルキレングリコールを含、請求項15から18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
− 一方の、15%〜30%のアンモニア70%〜85%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物からなる熱伝達流体、
− 他方の、ポリアルキレングリコールを含む潤滑油
を含み、蒸気圧縮回路を備える熱伝達装置で使用するための、キット。
【請求項21】
− アンモニア2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物
リアルキレングリコールを含む潤滑油
を含み、アンモニアと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの総量に対して、アンモニアの量が15%〜30%、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの量が70%〜85%であり、蒸気圧縮回路を備える熱伝達装置で使用するための、キット。
【請求項22】
前記潤滑油が、ポリアルキレングリコールからなる、請求項20または21に記載のキット。
【請求項23】
自動車用空調装置で使用するための、請求項20から22のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油との混和性が改善された2,3,3,3−テトラフルオロプロパン系の熱伝達組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ化炭素化合物系の流体は、蒸気圧縮による熱伝達システム、特に空調装置、ヒートポンプ装置、冷蔵装置または冷凍装置に広く使用されている。これらの装置の共通の特徴は、これらの装置が、低圧で流体を蒸発(流体が熱を吸収)し、蒸発した流体を高圧まで圧縮し、蒸発した流体を高圧で液体に凝縮(流体が熱を放出)し、流体を減圧し、サイクルを完了することを含む熱力学サイクルに基づくものである。
【0003】
熱伝達流体(純粋な化合物または化合物の混合物であってもよい)の選択は、一方では流体の熱力学的特性により決まり、他方ではさらなる制約により決まる。したがって、特に重要な基準は、検討中の流体の環境に対する影響である。特に、塩素化化合物(クロロフルオロカーボンおよびヒドロクロロフルオロカーボン)にはオゾン層を破壊するという欠点がある。したがって、ここでは、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、およびフルオロオレフィンなどの非塩素化化合物が通常好ましい。
【0004】
別の環境的制約は地球温暖化係数(GWP)である。したがって、GWPができるだけ小さく、エネルギー性能が良好な熱伝達組成物を開発することが必要である。
【0005】
さらに、蒸気圧縮システムの圧縮機(または複数の圧縮機)の可動部を滑らかにするために、熱伝達流体に潤滑油を添加する必要がある。油は、通常、鉱油でも合成油でもよい。
【0006】
潤滑油は、熱伝達流体自体およびシステム内に存在する他の成分と反応しないように、圧縮機の種類に応じて選択される。
【0007】
ある熱伝達システム(特に小型)については、潤滑油は、通常、回路全体を循環することができ、配管は、圧縮機への重力によって油が流れることができるように設計されている。他の熱伝達システム(特に大型)では、油分離器は油量を調整する装置であるため、圧縮機の直後に設けられ、圧縮機に油を戻す。油分離器がある場合でさえ、油分離器または圧縮機への重力によって油が戻ることができるように、システムの配管が設計される必要がある。
【0008】
文献WO2004/037913には、フルオロオレフィン系、特にテトラフルオロプロペンまたはペンタフルオロプロペン系の組成物が記載されている。実施例2では、種々の潤滑油との1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)の混和性、さらに、種々の潤滑油との1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)の混和性が報告されている。実施例3では、ポリアルキレングリコールなどの潤滑油とのHFO−1234zeおよび3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)の相溶性が報告されている。
【0009】
文献WO2005/042663は、特に、フルオロオレフィンの混合物と潤滑油の混合物との混和性に関する。これらの混合物の例としては、文献WO2004/037913のものと本質的に同じである。
【0010】
文献WO2006/094303には、フルオロオレフィン、特に2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と追加の化合物を含む多数の熱伝達組成物が記載されている。さらに、本文献は、概して、多数の可能な冷却混合物のリストと潤滑油のリストを組み合わせることを教示している。
【0011】
文献WO2007/126414には、熱伝達化合物の多数の混合物、特に2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)とアンモニアを含む混合物が記載されている。本文献もまた、従来の潤滑剤のリストから選択される任意の潤滑剤の添加を教示している。
【0012】
文献WO2008/009928およびWO2008/009922には、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、およびアンモニアでもよい少なくとも1種の追加の化合物をベースとする熱伝達組成物が記載されている。
【0013】
文献US2006/0243945には、熱伝達化合物の多数の混合物、特に、HFO−1234yf、アンモニア、ジフルオロメタン(HFC−32)、およびトリフルオロヨードメタンをベースとする四成分組成物が記載されている。可能な潤滑剤の包括リストが挙げられている。
【0014】
熱伝達化合物と潤滑油の混和性が不十分な場合、この油は蒸発器に溜まり、圧縮機に戻らない傾向があり、システムの正常な機能が妨げられる。
【0015】
この点で、潤滑油との良好な混和性を示し、GWPが低い(エネルギー性能が優れた)熱伝達組成物の開発が必要とされ続けている。
【0016】
特に、HFO−1234yfは、特にGWPが低く、エネルギー性能が優れているため、非常に有利な熱伝達化合物である。一方、ポリアルキレングリコール油などの特定の潤滑油との混和性は不十分であり、その適用が限定される。したがって、HFO−1234yf系の組成物の一般的な潤滑油との混和性を改善することが望ましい。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、まず、
− 15%〜30%のアンモニアおよび70%〜85%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む熱伝達流体、ならびに
− ポリアルキレングリコールを含む潤滑油を含む、組成物に関する。
【0018】
一実施態様によれば、熱伝達流体は、アンモニアと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物からなる。
【0019】
一実施態様によれば、熱伝達流体は、18%〜26%のアンモニアおよび74%〜82%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、好ましくは21%〜23%のアンモニアおよび77%〜79%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む。
【0020】
一実施態様によれば、潤滑油はポリアルキレングリコールからなる。
【0021】
一実施態様によれば、潤滑油は、組成物の1%〜99%、好ましくは5%〜50%、さらに特に好ましくは10%〜40%、理想的には15%〜35%を占める。
【0022】
一実施態様によれば、組成物はまた、熱伝達化合物、安定剤、界面活性剤、トレーサー、蛍光剤、着臭剤、および溶解剤、ならびにそれらの混合物から選択される1種以上の添加剤も含む。
【0023】
本発明はまた、15%〜30%のアンモニアおよび70%〜85%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む熱伝達流体と組み合わせた、蒸気圧縮回路での潤滑油としてのポリアルキレングリコールの使用に関する。
【0024】
一実施態様によれば、ポリアルキレングリコールは、ポリアルキレングリコールと熱伝達流体の総量に対して、1%〜99%、好ましくは5%〜50%、さらに特に好ましくは10%〜40%、理想的には15%〜35%の比率で使用される。
【0025】
一実施態様によれば、熱伝達流体は、18%〜26%のアンモニアおよび74%〜82%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、好ましくは21%〜23%のアンモニアおよび77%〜79%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む。
【0026】
一実施態様によれば、熱伝達流体は、アンモニアと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合物からなる。
【0027】
本発明は、上記の組成物である熱伝達組成物を含む蒸気圧縮回路を備える熱伝達装置に関する。
【0028】
一実施態様によれば、装置は、可動型または固定型のヒートポンプ加熱装置、空調装置、冷蔵装置および冷凍装置、ならびにランキンサイクルから選択される。
【0029】
一実施態様によれば、装置は自動車用空調装置である。
【0030】
本発明はまた、熱伝達流体を含む蒸気圧縮回路によって、流体または物体を加熱または冷却する方法に関し、上記方法は、熱伝達流体の少なくとも部分的な蒸発、熱伝達流体の圧縮、熱伝達流体の少なくとも部分的な凝縮、および熱伝達流体の減圧を連続して含み、熱伝達流体は潤滑油と組み合わせて熱伝達組成物を形成し、上記熱伝達組成物は上述の組成物である。
【0031】
本発明はまた、初期熱伝達流体を含む蒸気圧縮回路を備える熱伝達装置の環境影響を低減する方法に関し、上記方法は、蒸気圧縮回路内の初期熱伝達流体を最終熱伝達流体で置換する工程を含み、最終熱伝達流体のGWPは初期熱伝達流体より低く、最終熱伝達流体は潤滑油と組み合わせて熱伝達組成物を形成し、上記熱伝達組成物は上述の組成物である。
【0032】
本発明は、潤滑油との2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混和性を向上させるためのアンモニアの使用に関する。
【0033】
一実施態様によれば、アンモニアは、アンモニアと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの総量に対して、15%〜30%、好ましくは18%〜26%、さらに特に好ましくは21%〜23%の比率で使用される。
【0034】
本発明はまた、潤滑油とのアンモニアの混和性を向上させるための2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの使用に関する。
【0035】
一実施態様によれば、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、アンモニアと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの総量に対して、70%〜85%、好ましくは74%〜82%、さらに特に好ましくは77%〜79%の比率で使用される。
【0036】
一実施態様によれば、潤滑油はポリアルキレングリコールを含み、好ましくは、ポリアルキレングリコールからなる。
【0037】
本発明は、
− 一方の、15%〜30%のアンモニアおよび70%〜85%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む熱伝達流体、ならびに
− 他方の、ポリアルキレングリコールを含む潤滑油を含み、
蒸気圧縮回路を備える熱伝達装置で使用するための、キットに関する。
【0038】
本発明はまた、
− アンモニア、
− 2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、
− ポリアルキレングリコールを含む潤滑油を含み、
アンモニアと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの総量に対して、アンモニアの量が15%〜30%、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの量が70%〜85%であり、蒸気圧縮回路を備える熱伝達装置で使用するための、キットに関する。
【0039】
一実施態様によれば、潤滑油はポリアルキレングリコールからなる。
【0040】
一実施態様によれば、上記のキットは、自動車用空調装置で使用するためのものである。
【0041】
本発明は、先行技術にあるニーズを満たすことができる。より詳細には、本発明は、熱伝達組成物が潤滑油との良好な混和性を示し、GWPが低く、エネルギー性能に優れた熱伝達組成物を提供する。
【0042】
特に、本発明は、ポリアルキレングリコール系の潤滑油との混和性が改善された、HFO−1234yf系の熱伝達組成物を提供する。
【0043】
これは、HFO−1234yfとアンモニア(NH)を混合することにより達成される。したがって、本発明者らは、アンモニアにより、特に25℃超の温度で、ポリアルキレングリコールとのHFO−1234yfの混和特性が向上することを確認した。
【0044】
ポリアルキレングリコール系の油は、潤滑能が良好で、流動点が低く、低温での流動性が良好で、かつ蒸気圧縮回路内に通常存在するエラストマーとの相溶性が優れている。さらに、そのような油は、他の潤滑油より比較的安価であり、特定の分野、特に自動車用空調の分野で現在非常に広く使用されている油である。したがって、特に、圧縮機に油を確実に戻す機械技術を必要とせずに、ポリアルキレングリコール系の潤滑油とのHFO−1234yfの混和性を改善し、この潤滑油と組み合わせて幅広くこの熱伝達化合物を使用できることが非常に有利である。
【0045】
相互的に、特に30℃未満の温度では、HFO−1234yfがポリアルキレングリコールとのアンモニアの混和特性を改善することが分かった。
【0046】
したがって、アンモニアとHFO−1234yfにはポリアルキレングリコールとの混和性についての相乗的な特性がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】HFO−1234yf中のポリアルキレングリコール油の相対的比率(%、x軸)の関数として、HFO−1234yfが油と非混和性となる閾値温度(℃、y軸)を示すグラフである。
図2】アンモニア中のポリアルキレングリコール油の相対的比率(%、x軸)の関数として、アンモニアが油と非混和性となる閾値温度(℃、y軸)を示すグラフである。
図3】HFO−1234yf/アンモニア混合物中のポリアルキレングリコール油の相対的比率(%、x軸)の関数として、HFO−1234yf/アンモニア混合物が油と非混和性となる閾値温度(上限および下限)を示すグラフである。 これらのグラフでは、混和域をMと表し、非混和域をNMと表す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
ここで、本発明を、以下の説明で、より詳細にかつ非限定的に記載する。
【0049】
別段の断りがない限り、本出願全体を通して、示した化合物の比率は質量百分率とする。
【0050】
本出願によれば、地球温暖化係数(GWP)は、「The scientific assessment of ozone depletion, 2002, a report of the World Meteorological Association’s Global Ozone Research and Monitoring Project」に記載の方法にしたがい、二酸化炭素に対して、100年の期間を基準に定義付けられる。
【0051】
用語「熱伝達化合物」または「熱伝達流体」(または冷却流体)はそれぞれ、蒸気圧縮回路で、低温かつ低圧での蒸発により熱を吸収することができ、高温かつ高圧での凝縮により熱を放出することができる化合物または流体を意味する。一般に、熱伝達流体は、1種、2種、または3種以上の熱伝達化合物を含んでもよい。
【0052】
用語「熱伝達組成物」とは、熱伝達流体、および必要に応じて目的の用途の熱伝達化合物ではない1種以上の添加剤を含む組成物を意味する。
【0053】
本発明は、熱伝達組成物を形成するために、2種の熱伝達化合物(すなわちHFO−1234yfおよびアンモニア)と潤滑油の使用に基づく。
【0054】
熱伝達組成物は、蒸気圧縮回路にそのままの形態で導入されてもよい。あるいは、一方の熱伝達流体(HFO−1234yfおよびアンモニアを含む)および他方の潤滑油が、回路に別々に、そうでなければ同時に導入されてもよい。個々の熱伝達化合物(HFO−1234yfおよびアンモニア)も別々に導入されてもよい。
【0055】
潤滑油は、好ましくはポリアルキレングリコール系である。
【0056】
本発明の目的のために、ポリアルキレングリコールは、様々な式のポリアルキレングリコールを混合物として含んでもよい。
【0057】
一般に、本発明の文脈での使用に適したポリアルキレングリコールは、5〜50個のオキシアルキレン繰り返し単位を含み、各繰り返し単位は1〜5個の炭素原子を含む。
【0058】
ポリアルキレングリコールは直鎖でも分岐鎖でもよい。ポリアルキレングリコールは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、およびオキシペンチレン基、ならびにそれらの組合せから選択されるホモポリマーもしくは2個または3個以上の基のコポリマーであってもよい。
【0059】
好ましいポリアルキレングリコールは、少なくとも50%のオキシプロピレン基を含む。
【0060】
適切なポリアルキレングリコールは文献US4971712に記載されている。文献US4755316に記載されるように、別の適切なポリアルキレングリコールは、各端末にヒドロキシル基を含むポリアルキレングリコールである。別の適切なポリアルキレングリコールは、キャップされたヒドロキシル端末を有するポリアルキレングリコールである。ヒドロキシル基は、1〜10個の炭素原子を含む(必要に応じて1種以上の窒素などのヘテロ原子を含む)アルキル基、または窒素などのヘテロ原子を含むフルオロアルキル基、または文献US4975212に記載のフルオロアルキル基、または他の類似の基でキャップされていてもよい。
【0061】
ポリアルキレングリコールの2つのヒドロキシル端末がキャップされている場合、同一の末端基が使用されても、2つの異なる基の組合せが使用されてもよい。
【0062】
文献US5008028に記載されるように、ヒドロキシル末端基は、カルボン酸と一緒にエステルを形成することでキャップされてもよい。カルボン酸はフッ素化されていてもよい。
【0063】
ポリアルキレングリコールの2つの端末がキャップされている場合、一端または他端がエステルでキャップされていてもよく、あるいは、一端がエステルでキャップされ、他端が遊離していても、上述のアルキル基、ヘテロアルキル基またはフルオロアルキル基のうちの1つでキャップされていてもよい。
【0064】
潤滑油として使用されてもよい市販のポリアルキレングリコールとして、例えば、ゼネラルモーターズ社製の油Goodwrench、ダイムラー・クライスラー社製のMOPAR−56、シュリーブ・ケミカル・プロダクツ(Shrieve Chemical Products)社製のZerol、トータル(Total)社製のPlanetelf PAG、および出光社製のDaphne Hermetic PAGがある。他の適切なポリアルキレングリコールはダウ・ケミカル製およびデンソー製である。フックス(Fuchs)社製の油、特にRENISO PG68/NH3油も挙げることができる。
【0065】
ポリアルキレングリコールの粘度は、例えば、40℃で1〜1000センチストーク、好ましくは40℃で10〜200センチストーク、さらに特に好ましくは40℃で30〜80センチストークであってもよい。
【0066】
粘度は、規格ASTM D2422にしたがい、ISO粘度等級により判定される。
【0067】
ND8の商品名でデンソーにより販売されている、46センチストークの粘度の油が特に好適である。
【0068】
熱伝達流体と組み合わせて使用される潤滑油の比率は、主に検討の装置の種類によって変わる。具体的には、装置での潤滑油の総量は、主に圧縮機の性質によって変わるが、装置での熱伝達流体の総量は、主に交換器および配管によって変わる。
【0069】
一般に、熱伝達組成物中の、言いかえれば潤滑油と熱伝達流体の総量に対する、潤滑油の比率は、1%〜99%、好ましくは5%〜50%、例えば10%〜40%、または15%〜35%である。
【0070】
1つの特定の実施態様によれば、使用する潤滑油は、上記のポリアルキレングリコールからなり、他のいかなる潤滑化合物も除く。
【0071】
別の実施態様によれば、別の潤滑油はポリアルキレングリコールと組み合わせて使用される。別の潤滑油は、特に、鉱物由来の油、シリコーン油、天然由来のパラフィン、ナフテン、合成パラフィン、アルキルベンゼン、ポリ−α−オレフィン、ポリオールエステル、および/またはポリビニルエーテルから選択されてもよい。ポリオールエステルおよびポリビニルエーテルが好ましい。別の潤滑油がポリアルキレングリコールと組み合わせて使用される場合、この油とHFO−1234yfの混和性および/またはアンモニアの混和性はそれぞれ、ポリアルキレングリコールとHFO−1234yfの混和性および/またはアンモニアの混和性より大きいことが望ましい。
【0072】
本発明の文脈で主に使用される熱伝達化合物は、HFO−1234yfおよびアンモニアである。
【0073】
しかし、本発明の熱伝達組成物は、HFO−1234yfおよびアンモニアの他に、必要に応じて1種以上の追加の熱伝達化合物を含んでもよい。これらの追加の熱伝達化合物は、特に、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、エーテル、ヒドロフルオロエーテル、およびフルオロオレフィンから選択されてもよい。
【0074】
特定の実施態様によれば、本発明の熱伝達流体は、潤滑油と組み合わせて本発明の熱伝達組成物を形成する、三成分組成物(3種の熱伝達化合物からなる)または四成分組成物(4種の熱伝達化合物からなる)であり得る。
【0075】
しかし、二成分熱伝達流体が好ましい。
【0076】
用語「二成分流体」とは、HFO−1234yfとアンモニアの混合物からなる流体か、HFO−1234yfとアンモニアの混合物から本質的になる流体であるが、1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.01%未満の比率で不純物を含んでもよい流体のいずれかを意味する。
【0077】
特定の実施態様によれば、熱伝達流体中のHFO−1234yfの比率は、0.1%〜5%、5%〜10%、10%〜15%、15%〜20%、20%〜25%、25%〜30%、30%〜35%、35%〜40%、40%〜45%、45%〜50%、50%〜55%、55%〜60%、60%〜65%、65%〜70%、70%〜75%、75%〜80%、80%〜85%、85%〜90%、90%〜95%、または95%〜99.9%であってもよい。
【0078】
特定の実施態様によれば、熱伝達流体中のアンモニアの比率は、0.1%〜5%、5%〜10%、10%〜15%、15%〜20%、20%〜25%、25%〜30%、30%〜35%、35%〜40%、40%〜45%、45%〜50%、50%〜55%、55%〜60%、60%〜65%、65%〜70%、70%〜75%、75%〜80%、80%〜85%、85%〜90%、90%〜95%、または95%〜99.9%であってもよい。
【0079】
前の三段落で示した値は、潤滑油を含まない熱伝達流体に当てはまり、熱伝達流体、潤滑油、および任意の他の添加剤を含む熱伝達組成物には当てはまらない。
【0080】
圧縮機出口で過度に高い温度上昇を避けるために、熱伝達流体としての使用の文脈で、混合物中のNHの比率があまり高くないことが好ましいこともある。
【0081】
上記の熱伝達流体の中には、共沸性または疑似共沸性であるという利点がある流体もある。例えば、5℃(±1℃)の温度かつ7.3バール(±1バール)の圧力で、NHの比率が約23%(±2%)のHFO−1234yf/NH二成分混合物の共沸物が得られることが分かった。
【0082】
用語「疑似共沸性」とは、一定温度で、液体飽和圧力と蒸気飽和圧力が実質的には同一である(最大圧力差が、液体飽和圧力に対して10%であるか、さらに有利には5%である)組成物を指す。
【0083】
「共沸性」組成物の場合、一定温度では、最大圧力差は0%の領域にある。
【0084】
これらの熱伝達流体には、使いやすいという利点がある。著しい温度変化がなければ、循環する組成物に顕著な変化はなく、漏出した場合にも組成物の顕著な変化はない。
【0085】
さらに、本発明の特定の組成物は、特に中温での冷却プロセスで、すなわち、冷却された流体または物体の温度が−15℃〜15℃、好ましくは−10℃〜10℃、さらに特に好ましくは−5℃〜5℃(理想的には約0℃)である冷却プロセスで、R404A(52%の1,1,1−トリフルオロエタン、44%のペンタフルオロエタン、および4%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンの混合物)に比べて、かつ/またはR410A(50%のジフルオロメタンと50%のペンタフルオロエタンの混合物)に比べて性能が改善されることが分かった。この点で、NHの比率が15%以上の組成物、特に、NHの比率が15%〜30%、好ましくは18%〜26%の組成物が特に好ましい。
【0086】
また、本発明の特定の組成物は、特に、中温での加熱プロセスで、すなわち、加熱された流体または物体の温度が、30℃〜80℃、好ましくは35℃〜55℃、さらに特に好ましくは40℃〜50℃(理想的には約45℃)である加熱プロセスで、R410Aより良好な性能を示すことが分かった。この点で、NHの比率が15%以上の組成物、特に、NHの比率が20%〜30%の組成物が特に好ましい。
【0087】
本発明の文脈で使用されてもよい他の添加剤は、特に、安定剤、界面活性剤、トレーサー、蛍光剤、着臭剤、および溶解剤から選択されてもよい。
【0088】
安定剤は、存在する場合、好ましくは、熱伝達組成物中で5質量%以下を占める。安定剤の中では特に、ニトロメタン;アスコルビン酸;テレフタル酸;トルトリアゾール(tolutriazole)またはベンゾトリアゾールなどのアゾール;トコフェロール、ヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのフェノール化合物;n−ブチルグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルまたはブチルフェニルグリシジルエーテルなどのエポキシド(必要に応じてフッ素化またはペルフルオロ化されたアルキルエポキシドまたはアルケニルエポキシドまたは芳香族エポキシド);ホスファイト;ホスホネート;チオール;およびラクトンを挙げることができる。
【0089】
トレーサー(検出可能)としては、重水素化または非重水素化ヒドロフルオロカーボン、重水素化炭化水素、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素、およびそれらの組合せを挙げることができる。トレーサーは、熱伝達流体を構成する熱伝達化合物とは異なる。
【0090】
溶解剤としては、炭化水素、ジメチルエーテル、ポリオキシアルキレンエーテル、アミド、ケトン、ニトリル、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリルエーテル、フルオロエーテル、および1,1,1−トリフルオロアルカンを挙げることができる。溶解剤は、熱伝達流体を構成する熱伝達化合物とは異なる。
【0091】
蛍光剤としては、ナフタルイミド、ペリレン、クマリン、アントラセン、フェナントラセン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン、フルオレセイン、ならびにそれらの誘導体および組合せを挙げることができる。
【0092】
着臭剤としては、アルキルアクリレート、アリルアクリレート、アクリル酸、アクリル酸エステル、アルキルエーテル、アルキルエステル、アルキン、アルデヒド、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、アリルイソチオシアネート、アルカン酸、アミン、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、シクロヘキセン、ヘテロ環芳香族化合物、アスカリドール、o−メトキシ(メチル)フェノール、およびそれらの組合せを挙げることができる。
【0093】
本発明の熱伝達プロセスは、熱伝達組成物(すなわち、熱伝達流体と少なくとも1種の潤滑油)を含む蒸気圧縮回路を備える装置の使用に基づく。熱伝達プロセスは流体または物体を加熱または冷却するプロセスであってもよい。
【0094】
蒸気圧縮回路は、少なくとも1つの蒸発器、圧縮機、凝縮器、および減圧器、ならびにこれらの構成要素間に流体を輸送するためのラインをも備える。蒸発器および凝縮器は、熱伝達流体と他の流体または物体との間で熱交換を可能にする熱交換器を備える。
【0095】
特に使用され得る圧縮機は、単段式もしくは多段式の遠心圧縮機、または遠心小型圧縮機である。ピストンまたはスクリューを備えた回転圧縮機を使用してもよい。圧縮機は、電気モーターによって、またはガスタービン(例えば、移動用途として、車両の排気ガスを供給)によって、または伝動装置によって駆動されてもよい。
【0096】
上記装置は、電気を発生させるタービンを備えてもよい(ランキンサイクル)。
【0097】
上記装置はまた、加熱または冷却される流体または物体と熱伝達流体回路との間で(状態変化があってもなくても)熱を伝達するために使用される少なくとも1つの熱交換流体回路を必要に応じて備えてもよい。
【0098】
上記装置はまた、同一または異なる熱伝達流体を含む2つ(以上)の蒸気圧縮回路を必要に応じて備えてもよい。例えば、蒸気圧縮回路同士が連結していてもよい。
【0099】
蒸気圧縮回路は標準蒸気圧縮サイクルにしたがって作動する。このサイクルでは、比較的低圧で熱伝達流体を液相(または液体/蒸気の二相状態)から気相に状態変化させ、その後気相の流体を比較的高圧まで圧縮し、比較的高圧で熱伝達流体を気相から液相に状態変化(凝縮)させ、減圧してサイクルを再び始める。
【0100】
冷却プロセスの場合には、(直接的に、または熱交換流体を介して間接的に)冷却される流体または物体からの熱が、熱伝達流体が蒸発する際に熱伝達流体に吸収され、これは、周囲に比べて比較的低温で生じる。冷却プロセスには、(例えば車両での移動装置、または固定装置による)空調プロセス、冷蔵プロセス、および冷凍プロセスまたは低温プロセスが含まれる。
【0101】
加熱プロセスの場合には、熱伝達流体が凝縮する際に、熱伝達流体からの熱が、加熱される流動性または物体に(直接的に、または熱交換流体を介して間接的に)与えられ、これは、周囲に比べて比較的高温で生じる。熱伝達を行うための装置はこの場合「ヒートポンプ」と呼ばれる。
【0102】
本発明の熱伝達流体の使用には、任意のタイプの熱交換器、特に並流熱交換器または好ましくは向流熱交換器を使用することができる。また、マイクロチャネル交換器を使用することもできる。
【0103】
本発明は、特に、中温での冷却プロセス、すなわち、冷却された流体または物体の温度が、−15℃〜15℃、好ましくは−10℃〜10℃、さらに特に好ましくは−5℃〜5℃(理想的には約0℃)である冷却プロセスを行うことができる。
【0104】
本発明はまた、中温での加熱プロセス、すなわち、加熱された流体または物体の温度が、30℃〜70℃、好ましくは35℃〜55℃、さらに好ましくは40℃〜50℃(理想的には約45℃)である加熱プロセスを行うことができる。
【0105】
上述の「中温での冷却または加熱」のプロセスでは、蒸発器への熱伝達流体の入口温度は、好ましくは−20℃〜10℃、特に−15℃〜5℃、さらに特に好ましくは−10℃〜0℃、例えば約−5℃であり、凝縮器内の熱伝達流体の凝縮開始温度は、好ましくは25℃〜80℃、特に30℃〜70℃、さらに特に好ましくは35℃〜55℃、例えば約50℃である。これらのプロセスは、冷蔵プロセス、空調プロセスまたは加熱プロセスであってもよい。
【0106】
1つの好ましい実施態様によれば、熱伝達流体は、サイクル全体を通して、潤滑油と混和する温度である。例えば、熱伝達流体は、サイクル全体を通して、−20℃から70℃の間の温度である。
【0107】
反対に、非混和域が生じる閾値温度(HFO−1234yfの場合、液相の化合物がエマルションを形成する温度よりも高い温度として定義される)を上昇させるという点で、HFO−1234yfからなる(またはHFO−1234yfを含む)熱伝達流体にアンモニアを添加することで潤滑油との熱伝達流体の混和性が改善され、例えばより高い凝縮温度での使用で、熱伝達流体の使用の可能性を増加させることができる。
【0108】
なお、アンモニアからなる(またはアンモニアを含む)熱伝達流体にHFO−1234yfを添加することで潤滑油との熱伝達流体の混和性が改善され、すなわち非混和域が生じる閾値温度(アンモニアの場合、液相の化合物がエマルションを形成する温度よりも低い温度として定義される)が低下し、例えばより低い蒸発温度での使用で、熱伝達流体の使用の可能性を増加させることができる。
【0109】
より一般的には、本発明は、全ての熱伝達用途での、例えば自動車用空調でのあらゆる熱伝達流体を置き換えることができる。例えば、本発明の熱伝達流体および熱伝達組成物は、
− 1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)、
− 1,1−ジフルオロエタン(R152a)、
− 1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(R245fa)、
− ペンタフルオロエタン(R125)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)、およびイソブタン(R600a)の混合物、すなわちR422、
− クロロジフルオロメタン(R22)、
− 51.2%のクロロペンタフルオロエタン(R115)と48.8%のクロロジフルオロメタン(R22)の混合物、すなわちR502、
− 任意の炭化水素、
− 20%のジフルオロメタン(R32)、40%のペンタフルオロエタン(R125)、および40%の1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)の混合物、すなわちR407A、
− 23%のジフルオロメタン(R32)、25%のペンタフルオロエタン(R125)、および52%の1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)の混合物、すなわちR407C、
− 30%のジフルオロメタン(R32)、30%のペンタフルオロエタン(R125)、および40%の1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)の混合物、すなわちR407F、
− R1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)、
− R1234ze(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)を置き換える働きをし得る。
【実施例】
【0110】
以下の実施例は本発明を限定することなく本発明を例示する。
【0111】
本実施例では、ポリアルキレングリコール系(PAG)ND8の潤滑油に対する、HFO−1234yf、アンモニア、およびHFO−1234yfとアンモニアの共沸混合物の混和性を調べる。
【0112】
−30℃〜+80℃の試験温度にしたがって温度調節した槽の水またはグリコール−水が供給されるガラスタンクにオートクレーブを入れる。
【0113】
各実験では、熱伝達流体をオートクレーブに導入する。次に、所定の初期量の潤滑油を添加し、混合物を撹拌する。エマルションが得られ、混合物が非混和性を示すまで、オートクレーブの温度を上昇させる。次に、混合物を冷却し、追加量の油を混合物に導入し、このプロセスを繰り返す。
【0114】
この手順により、各伝達流体について、温度の関数として、混合物とPAG油の非混和域を示す曲線をプロットすることができる。
【0115】
純粋なHFO−1234yfについては図1、純粋なアンモニアについては図2、78%のHFO−1234yfと22%のアンモニアを含む共沸混合物については図3に結果を示す。
【0116】
HFO−1234yf中の油の良好な混和性は低温で確認されるが、他方で、25℃より高温では広い非混和域が確認される。
【0117】
アンモニア中の油の良好な混和性は高温で確認されるが、他方で、30℃より低温では広い非混和域が確認される。
【0118】
HFO−1234yf/NHの共沸混合物では、70℃より高い温度まで油との混和性が改善されている。非常に低温(約−20℃未満)では、HFO−1234yf/NHの混合物は、油の有無に関わらず、非混合および相分離を生じる。
図1
図2
図3