(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程S1の前に、研摩、油抜き、水を用いた第1洗浄、アルカリエッチング、水を用いた第2洗浄、中和、及び水を用いた第3洗浄を前記金属シェル体に施すことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態を詳細に述べる。本明細書に述べられている実施形態は説明及び例示のためのものであり、本開示を一般的に理解するために使用されている。本実施形態は、本開示を制限するためと解釈されてはならない。
【0014】
本開示の第1の態様によれば、シェルが提供される。本開示の実施形態によれば、シェルは、プラスチック部品と、金属シェル体と、金属シェル体及びプラスチック部品間に形成された酸化物層とを備えてもよい。本開示の実施形態によれば、プラスチック部品は樹脂から形成されてもよく、酸化物層はプラスチック部品を金属シェル体に接合してもよい。本開示の実施形態によれば、酸化物層は、プラスチック部品と接する表面に平均孔径が約200 nm〜約2000nmである腐食孔を有しており、金属シェル体と接する表面に孔径が約10〜100 nmである微小孔を有している。また、本開示の実施形態によれば、樹脂の一部が微小孔及び腐食孔に充填されている。そのため、金属シェル体及びプラスチック間の結合力は高められてより強くなり、ひいてはシェルは摩耗耐性、落下耐性及び腐食耐性を有することができる。
【0015】
本開示の実施形態によれば、腐食孔の平均孔径は約200 nm〜約1000nmであり、好ましくは約400 nm〜約1000nmであってもよく、微小孔の平均孔径は、約20nm〜約80nmであり、好ましくは約20nm〜約60nmであってもよい。そのため、二層の細孔構造が更に最適化されてもよく、成形の際に樹脂の直接注入に更に寄与し、樹脂の金属薄板体との結合を改善する。
【0016】
本開示の実施形態によれば、腐食孔の平均
的深さは、約0.5 μm〜約9.5 μmであってもよく、好ましくは0.5 μm〜5μmであってもよい。そのため、腐食孔の構造は更に最適化されてもよく、これは、注入される樹脂の浸透に寄与する。
【0017】
本開示の実施形態によれば、腐食孔は微小孔と連通してもよい。そのため、二層の細孔構造が更に最適化されてもよく、これは、樹脂の直接注入及び成形に更に寄与し、樹脂の金属薄板体との結合を改善する。
【0018】
本開示の実施形態によれば、酸化物層の厚さは、約1μm〜約10μmであってもよく、好ましくは約1μm〜約5μmであってもよい。そのため、酸化物層のアルミニウム合金体との結合が改善され、酸化物層は、腐食孔の構造を更に最適化して、ひいては最適化された腐食孔の生成を容易にする。
【0019】
本開示の実施形態によれば、微小孔の平均的深さは、約0.5 μm〜約9.5 μmであってもよく、好ましくは約0.5 μm〜約5μmであってもよい。そのため、微小孔の構造は更に最適化されてもよく、それ故、微小孔における溶融樹脂の充填度を改善し、樹脂のこのような深さの微小孔への浸透を確実にし、樹脂及び酸化物層間の結合領域を減少させ、微小孔に間隙がなく、ひいては結合力が更に高められる。
【0020】
本開示の実施形態によれば、プラスチック部品のタイプは、樹脂から形成され得る限り、特に制限されておらず、プラスチック部品は、シェルのあらゆる部分として使用され得る。
【0021】
本開示の実施形態によれば、
図5を参照すると、プラスチック部品は、金属シェル体と同様の形状を有するプラスチックシェル体2 を有してもよく、他の部品、例えば携帯電話の表示画面又はアンテナを収容するために、自由空間がプラスチックシェル体2 によって画定されてもよい。プラスチックシェル体2 は金属シェル体1 の端部に設けられてもよく、酸化物層は、プラスチックシェル体2 と金属シェル体1 の端部との間に形成されており、酸化物層は、プラスチックシェル体2 を金属シェル体1 の端部に接合してもよい。本開示の実施形態によれば、プラスチックシェル2 は、特定の望ましい必要性に応じて、金属シェル体1 の一端部又は2つの端部に設けられてもよい。本開示の実施形態によれば、プラスチックシェル体2 は金属シェル体1 と適合されてもよく、すなわち、プラスチックシェル体2 は金属シェル1 と共にシェル形状全体を形成してもよい。本開示の実施形態によれば、プラスチックシェル体2 は金属シェル体1 の一端部に接合されており、酸化物層が、金属シェル体1 及びプラスチックシェル体2 間に設けられてもよく、そのため、プラスチックシェル体2 は、金属酸化物から形成された酸化物層を介して金属シェル体1 に接合されてもよい。本開示の実施形態によれば、プラスチックシェル体を形成する樹脂の一部が、微小孔及び腐食孔に充填されてもよく、その結果、プラスチックシェル体及び金属シェル体が一体的に結合される。本開示の実施形態によれば、プラスチックシェル体を金属シェル体に接合する表面の大きさは制限されていない。本開示の一実施形態では、プラスチックシェル体及び金属シェル体を接合する表面の幅は、相対的に小さく、約0.5 mm〜約2mmであり、従って、より強い結合力が必要である。
【0022】
本開示の実施形態によれば、プラスチック部品は、樹脂から形成された補強リブ51を更に有してもよく、補強リブ51は金属シェル体の内面に沿って延びてもよく、金属シェル体の内面に接合されている。本開示の実施形態によれば、酸化物層は、補強リブと金属シェル体の内面との間に形成されてもよく、補強リブを形成する樹脂が、酸化物層の腐食孔及び
微小孔に充填されてもよい。従って、プラスチックシェル体及び金属シェル体間の結合力が更に高められ、そのため、得られたシェルの落下耐性が高められ得る。
【0023】
本開示の実施形態によれば、プラスチック部品は、金属シェル体1 の内面に設けられたプラスチックパッチ3 を有してもよく、プラスチックパッチ3 は金属シェル体1 の内面に接合されている。本開示の実施形態によれば、酸化物層は、プラスチックパッチ3 と金属シェル体1 の内面との間に形成されており、プラスチックパッチ3 を金属シェル体1 の内面に接合してもよく、プラスチックパッチ3 を形成する樹脂が酸化物層の微小孔及び腐食孔に充填されている。本開示の実施形態によれば、プラスチックパッチの形状及び大きさは特に制限されておらず、例えば、プラスチックパッチはアンテナの支持体として使用されてもよい。また、空間を減らすために、プラスチックパッチは薄板状であってもよく、金属シェル体の内面に配置され、金属シェル体の表面に付着して該表面に接する。プラスチックパッチはWIFIアンテナを取り付けるために使用されてもよい。従って、信号通信の金属による遮蔽を回避するために、信号通信のための開口部が、プラスチックパッチを金属シェル体に接合する表面に設けられている。開口部の大きさ及び形状は、本開示では特に制限されておらず、例えば、開口部は、プラスチックパッチの一部が露出するように設けられた小さなスリットであってもよい。
【0024】
本開示の実施形態によれば、プラスチック部品は、金属シェル体の内面に設けられたプラスチック支持体を有してもよく、プラスチック支持体は金属シェル体の内面に接合されている。本開示の実施形態によれば、酸化物層は、プラスチック支持体と金属シェル体の内面との間に形成されており、プラスチック支持体を金属シェル体の内面に接合している。本開示の実施形態によれば、プラスチック支持体を形成する樹脂が酸化物層の微小孔及び腐食孔に充填されている。樹脂から形成されたプラスチック支持体の構造及び機能は、所望の必要性に応じて設計されてもよい。本開示の実施形態によれば、プラスチック支持体は取付部及び取付孔を有している。本開示の一実施形態では、取付孔は螺子孔であってもよい。本開示の実施形態によれば、プラスチック支持体は、他の部品、例えば携帯電話の部品を収容するため、及び構成要素をシェルの空間内に堅固に取り付けるために使用されてもよく、そのため、堅固な取付、磨耗耐性、落下耐性、美しい外観及び組立て易さの性能がもたらされる。
【0025】
本開示の実施形態によれば、プラスチック部品は、金属シェル体の端部に設けられたプラスチック基板を有している。本開示の実施形態によれば、プラスチック基板は金属シェル体に垂直であり、プラスチック基板の縁部が、金属シェル体の内面又は端部に接合されている。本開示の実施形態によれば、酸化物層は、プラスチック基板と金属シェル体の内面又は端部との間に形成されており、プラスチック基板を金属シェル体の内面又は端部に接合している。本開示の実施形態によれば、プラスチック基板を形成する樹脂が酸化物層の微小孔及び腐食孔に充填されている。本開示の実施形態によれば、プラスチック基板はGPRS、Bluetooth(登録商標)及び赤外線アンテナを取り付けるために使用されてもよい。
【0026】
本開示の実施形態によれば、プラスチック部品は、所望の必要性に応じてアンテナを取り付けるために、上述したプラスチックシェル体、プラスチック支持体及びプラスチックパッチの内の少なくとも1つを有してもよい。アンテナの組立は特に制限されておらず、当業者は、プラスチック部品に薄板状のアンテナを単に取り付けてもよく、又は、化学メッキ処理によりアンテナを形成してもよい。
【0027】
本開示の実施形態によれば、プラスチック部品は、プラスチックシェル体、プラスチック支持体、プラスチック支持体に設けられたプラスチックパッチ、及びプラスチック基板を有している。本開示の実施形態によれば、プラスチックシェル体はプラスチック支持体を介してプラスチック基板と連結されており、プラスチックシェル、プラスチック支持体、プラスチックパッチ及びプラスチック基板は、一体的に形成されている。
【0028】
本開示の第2の態様によれば、上述したアルミニウム合金を作製する方法が提供される。本方法は、
S1:金属シェル体の表面の少なくとも一部を陽極酸化処理して、微小孔を有する酸化物層を形成する工程
を有する。
【0029】
本開示の実施形態によれば、この工程では、任意には工程S1の前に前処理された金属シェル体の表面の少なくとも一部に陽極酸化処理を施してもよく、従って、酸化物層が、アルミニウム合金の表面の一部に形成されてもよく、酸化物層が微小孔を有して形成されてもよい。本開示の実施形態によれば、陽極酸化処理の方法は当業者によく知られている。本開示の実施形態によれば、工程S1、すなわち陽極酸化処理は、任意にはこの工程の前に前処理された金属シェル体の表面の一部を、濃度が約10重量%〜約30重量%であるH
2SO
4 溶液に陽極として置き、金属シェル体の表面の一部を約10℃〜約30℃の温度で約1分間〜約40分間約10V〜約100 Vの電圧で電気分解し、厚さが約1μm〜約10μmである酸化物層を形成することを有してもよい。本開示の実施形態によれば、陽極酸化処理でよく知られているあらゆる装置が本開示に適用されてもよく、例えば、本開示の実施形態によれば、陽極酸化処理タンクが適用されてもよい。本開示の実施形態によれば、陽極酸化処理によって形成された酸化物層の好ましい厚さは、約1μm〜約10μmであってもよく、好ましくは約1μm〜約5μmであってもよい。本開示の実施形態によれば、酸化物層の微小孔の平均孔径は、約10nm〜約100 nmであってもよく、好ましくは約20nm〜約80nmであってもよく、更に好ましくは約20nm〜約60nmであってもよい。本開示の実施形態によれば、微小孔の深さは、約0.5 μm〜約9.5 μmであってもよく、好ましくは0.5 μm〜約5μmであってもよい。驚いたことに、微小孔により、酸化物層と樹脂との結合力がより強くなることが本発明者らによって見出された。
【0030】
本開示の実施形態によれば、陽極酸化処理が施されるべき金属シェル体の表面の一部は、プラスチック部品に接合されるべきあらゆる部分であってもよい。本開示の実施形態によれば、プラスチック部品はプラスチックシェル体を有しており、陽極酸化処理が施されるべき金属シェル体の表面の一部は、金属シェル体の端部の少なくとも一部であってもよい。本開示の実施形態によれば、プラスチック部品はプラスチック支持体を有しており、陽極酸化処理が施されるべき金属シェル体の表面の一部は、金属シェル体の内面の少なくとも一部であってもよい。本開示の実施形態によれば、プラスチック部品はプラスチックパッチを有しており、陽極酸化処理が施されるべき金属シェル体の表面の一部は、金属シェル体の内面の少なくとも一部であってもよい。本開示の実施形態によれば、プラスチック部品はプラスチック基板を有しており、陽極酸化処理が施されるべき金属シェル体の表面の一部は、金属シェル体の内面又は端部の少なくとも一部とその周りの表面とであってもよい。本開示の一実施形態によれば、金属シェル体全体に陽極酸化処理が施されて、金属シェル体の表面に酸化物層を形成してもよく、形成された酸化物層は、平均孔径が約10nm〜約100 nmである微小孔を有してもよい。形成された微小孔は、例えば研磨処理により容易に除去され得るので、得られたシェルの外観に悪影響を及ぼさないことに注目すべきである。
【0031】
S2:工程S1で得られた金属シェル体をエッチング溶液に浸して、酸化物層の外面の少なくとも一部に腐食孔を形成する工程
【0032】
本開示の実施形態によれば、この工程では、工程S1で得られた金属シェル体は、エッチング溶液に浸されてもよく、そのため、孔径が約200 nm〜約2000nmである腐食孔が、工程S1でアルミニウム合金基板上に形成された酸化物層の外面に形成されてもよい。
【0033】
この工程では、エッチング溶液が工程S1で得られたアルミニウム合金基板を処理するために使用されており、そのため、腐食孔が酸化物層の外面に形成されてもよく、腐食孔の大きさは微小孔の大きさより通常大きい。エッチング溶液が酸化物層に対して腐食性を有する溶液である限り、エッチング溶液の種類及び濃度は特に制限されない。本開示の実施形態によれば、エッチング溶液は、pHが約10〜約13である酸/アルカリエッチング溶液である。本開示の実施形態によれば、エッチング溶液は、pHが約10〜約13である単一のアルカリ又は複数のアルカリの混合物のアルカリ性溶液であってもよい。本開示の実施形態によれば、エッチング溶液は、Na
2CO
3、NaHCO
3、NaOH、NaH
2PO
4 、Na
2HPO
4 、Na
3PO
4、Na
2SO
3又はNa
2B
4O
7 からなる群から選択された少なくとも1つを含有する水溶液を有してもよい。本開示の実施形態によれば、アルカリ性溶液は、Na
2CO
3及び/又はNaHCO
3を含有する水溶液である。本開示の実施形態によれば、アルカリ性溶液では、Na
2CO
3及び/又はNaHCO
3の重量パーセント濃度は夫々、約0.1 重量%〜15重量%である。本開示の実施形態によれば、アルカリ性溶液では、Na
2CO
3及び/又はNaHCO
3の重量パーセント濃度は夫々約0.1 重量%〜10重量%である。本開示の実施形態によれば、エッチング溶液は、可溶性アルカリと可溶性のヒドロリン酸塩又は二水素リン酸塩との混合物であってもよい。本開示の実施形態によれば、可溶性アルカリは強アルカリであってもよい。本開示の実施形態によれば、二水素リン酸塩は、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アンモニウム及びリン酸二水素アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1つであり、可溶性アルカリは、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択された少なくとも1つである。従って、二水素リン酸塩及びアルカリの好ましい組み合わせにより、形成された腐食孔は、一定の孔径を有して酸化物層の表面に均一に分散され、優れた細孔構造ができるので、樹脂層のアルミニウム合金基板とのより強い結合力の性能が可能になり、その結果、アルミニウム合金−樹脂複合体のより高い引張強度及び更に優れた一体接合が可能になる。本開示の実施形態によれば、二水素リン酸塩の濃度は、約50重量%〜約99重量%であり、可溶性アルカリの濃度は、約1重量%〜約50重量%であり、更に好ましくは、二水素リン酸塩の濃度は、約60重量%〜約99重量%であり、可溶性アルカリの濃度は、約1重量%〜約40重量%である。更に、エッチング溶液は、アンモニア溶液、ヒドラジン水溶液、ヒドラジン誘導体水溶液、水溶性アミン化合物水溶液、及びNH
3 −NH
4Cl 水溶液などの内の少なくとも1つであってもよい。本開示の実施形態によれば、工程S2は、工程S1で得られたアルミニウム合金をpHが約10〜約13であるアルカリ性溶液に複数回、つまり2回以上、例えば約2〜10回繰り返し浸す浸漬工程を有してもよく、各浸漬工程は、約1分間〜約60分間続いてもよく、工程S2は、各浸漬工程の後にアルミニウム合金を水で清浄化する清浄化工程、例えば脱イオン水でアルミニウム合金を洗浄する工程を更に有してもよい。本開示の実施形態によれば、清浄化工程は、清浄化されるべき部分を洗浄槽内に単に置いて約1分間〜5分間放置することを有してもよく、清浄化されるべき部分を洗浄槽で約1分間〜5分間洗浄することを有してもよい。
【0034】
S3:工程S2で得られた金属シェル体の少なくとも一部に樹脂を射出して、樹脂がプラスチック部品に成形されているシェルを得る工程
【0035】
本開示の実施形態によれば、この工程では、工程S1及び工程S2の処理後に得られた金属シェル体が型に置かれてもよく、樹脂組成物が型に注入されて金属シェル体と結合してもよく、このようにして、成形処理後にシェルが作製される。
【0036】
本開示の実施形態によれば、射出成形後に得られたシェルに、約50℃〜約200 ℃の温度下で焼きなまし処理が更に施されてもよい。本開示の実施形態によれば、焼きなまし処理は、射出成形後に得られたシェルを約50℃〜約200 ℃の温度下で約1〜2時間維持し、その後、温度を低下させることを有してもよい。例えば、得られたシェルを約70℃〜180 ℃で約1〜1.5 時間維持し、その後、温度を低下させてもよい。焼きなまし装置は、当業者によってよく知られているあらゆる装置であってもよい。例えば、得られたシェルは、サーモスタット式電気乾燥器で維持されてもよく、多段式加熱炉が採用されてもよい。本開示の実施形態によれば、得られたシェルは、約50℃〜約200 ℃の温度下で焼きなまし装置に直接置かれてもよく、又は、約50℃〜約200 ℃の温度に徐々に、例えば1〜10℃/分の割合で達してもよい。温度は、室温、例えば15〜28℃に低下してもよく、このような温度に自然に又は徐々に、例えば約1〜10℃/分の割合で達してもよく、3〜8℃/分が好ましい。従って、固体樹脂が液相に変態され、微小孔に浸透してもよく、このようにして、金属シェル体及びプラスチック部品間の結合力が更に高められる。
【0037】
上述したように、工程S1の処理の前に、金属シェル体に前処理が施されてもよく、前処理は、機械的なバニシ仕上げ又は機械的なラップ仕上げを施して目に見える異物を表面から取り除くこと、及び、金属シェル体を脱脂して洗浄し、金属表面に付着したプロセスオイルを除去することを一般に有する。好ましくは前処理は、金属シェル体の表面にバニシ仕上げを施すこと、例えば、約100 メッシュ〜約400 メッシュの紙やすりを使用するか又は研磨機を使用して金属シェル体の表面にバニシ仕上げを施し、ミクロンの小さな細孔を形成することを有する。本開示の実施形態によれば、バニシ仕上げが施された金属シェル体に、油抜き、水を用いた第1洗浄、アルカリエッチング、水を用いた第2洗浄、中和、及び水を用いた第3洗浄を順次施してもよい。本開示の実施形態によれば、金属シェル体は、あらゆる周知の溶媒を用いた超音波処理により約0.5 時間〜約2時間清浄化されて金属シェル体の表面から油性汚れを取り除き、その後、金属シェル体を酸/アルカリ水溶液に置いて、超音波処理により金属シェル体の表面を再度洗浄してもよい。溶媒及び酸/アルカリ水溶液のタイプは制限されておらず、使用される溶媒はエタノールであってもアセトンであってもよく、酸/アルカリ水溶液は、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどからなる群から選択された少なくとも1つであってもよい。本開示の実施形態によれば、無水エタノールを用いた油抜き処理が金属シェル体に施されて金属シェル体の表面から油を除去し、次に金属シェル体を水で洗浄する。その後、洗浄された金属シェル体を、濃度が約30〜70g/Lである水酸化ナトリウム溶液に約40℃〜約80℃の温度で浸し、アルミニウム合金にアルカリエッチングを約1〜5分間施し、脱イオン水を用いて洗浄する。その後、10〜30重量%のHNO
3を使用して金属シェル体を中和して、微量のアルカリ溶液を除去し、脱イオン水を用いて洗浄する。従って、孔径がミクロンの細孔が金属シェル体の表面に形成されてもよい。本開示の実施形態によれば、孔径が約1〜10μmであってもよい。
【0038】
本開示に使用される金属シェル体に特に制限はなく、例として、金属シェル体は、業界標準1000〜7000系のアルミニウム合金、又は様々な成形された金属シェル体であってもよい。本開示における金属シェル体は、様々な形状及び構造を有する一般に使用される金属シェル体であってもよく、本開示では制限されていない。金属シェル体の様々な形状及び構造は、機械的な処理によって達成されてもよい。
【0039】
本開示の実施形態によれば、本開示で使用される樹脂は、主樹脂及びポリオレフィン樹脂を混合することにより準備されてもよい。例えば、樹脂は、主樹脂及びポリオレフィン樹脂を均一に混合し、その後二軸押出機を用いて粒状にすることにより準備される。本開示の実施形態によれば、流動性向上剤及び充填材が主樹脂に加えられ、均一に混合されてもよく、このようにして得られた樹脂は、アルミニウム合金と同様の線膨張係数を水平方向及び垂直方向の両方に有する。
【0040】
本開示の実施形態によれば、射出成形を行う条件は制限されていない。例えば、本開示の一実施形態によれば、射出成形の条件は、50〜300 ℃の成形温度、200 〜450 ℃のノズル温度、1〜50秒の圧力維持時間、50〜300MPaの射出圧力、1〜30秒の射出時間、1〜30秒の遅延時間及び1〜60秒の冷却時間であってもよい。本開示の一実施形態によれば、射出成形の条件は、80〜200 ℃の成形温度、200 〜350 ℃のノズル温度、1〜10秒の圧力維持時間、90〜140MPaの射出圧力、3〜10秒の射出時間、15〜30秒の遅延時間及び15〜25秒の冷却時間であってもよい。そのため、作製された複合体の表面は、深さが0.5 〜10mmである樹脂層を有してもよい。
【0041】
本開示の作製方法は簡単であり、既存の接着剤技術と比較すると製造工程を著しく簡略化し、既存のアミン物質と比較すると腐食時間を短くし、ひいては製造時間を短くして工程の複雑さを著しく低減している。上記の全ては、本開示の処理方法を使用した後に射出成形を直接行うことによってのみ達成され得る。同時に、本開示の作製方法により作製されたアルミニウム合金及び樹脂の複合体は、樹脂層及びアルミニウム合金基板間に結合力を有し、より高い引張り剪断強度を有している。
【0042】
本発明で使用される樹脂に特に制限はなく、樹脂は、アルミニウム合金と接合することができるあらゆる樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂が好ましい。本開示の実施形態によれば、熱可塑性樹脂は主樹脂及びポリオレフィン樹脂の混合物である。本開示の実施形態によれば、主樹脂は、先行技術における高結晶性樹脂より優れた表面光沢及び靭性の両方を有して、射出成形材料として使用される非結晶性樹脂であってもよく、融点が約65℃〜約105 ℃であるポリオレフィン樹脂が更に使用されている。従って、特定の成形温度での射出成形を成形中に必要としなくてもよく、以降の焼きなまし処理も必要としなくてもよく、成形過程が簡略化されてもよく、得られた金属−樹脂複合体構造が高い機械的強度及び優れた表面処理特性を確実に有してもよく、このようにして、プラスチック部品の表面装飾の問題を解決し、顧客の種々の要件を満たす。
【0043】
本開示の実施形態によれば、本開示では、融点が約65℃〜約105 ℃であるポリオレフィン樹脂を非結晶性主樹脂に使用することにより、金属薄板の表面のナノスケールの微小孔への樹脂の流動性が高められてもよく、このようにして、金属及びプラスチック間の強い接着力、並びに金属−樹脂複合体構造の高い機械的強度が確保されることが、多くの実験を通して本発明者らによって見出された。好ましくは、100 重量部の熱可塑性樹脂に基づいて、主樹脂の量は約70重量部〜約95重量部であり、ポリオレフィン樹脂の量は約5重量部〜約30重量部である。
【0044】
更に、樹脂の流動性が、熱可塑性樹脂に流動性向上剤を使用することにより高められてもよく、従って、金属及びプラスチック間の接着力、並びに樹脂を射出成形する性能が更に高められることが本発明者らによって見出された。100 重量部の熱可塑性樹脂に基づいて、熱可塑性樹脂は、約1重量部〜約5重量部の流動性向上剤を更に含有していることが好ましい。流動性向上剤は環状ポリカーボネートであることが好ましい。
【0045】
上述したように、本開示で使用される樹脂は非結晶性樹脂であってもよい。本開示の実施形態によれば、主樹脂はポリフェニレンエーテル(PPO)及びポリフェニレンスルフィド(PPS)の混合物である。本開示の一実施形態によれば、主樹脂では、ポリフェニレンエーテル対ポリフェニレンスルフィドの重量比が約3:1〜約1:3であり、好ましくは約2:1〜約1:1である。本開示の実施形態によれば、主樹脂はポリフェニレンオキシド及びポリアミドの混合物である。本開示の一実施形態によれば、主樹脂では、ポリフェニレンオキシド対ポリアミドの重量比が約3:1〜約1:3であり、好ましくは約2:1〜約1:1である。本開示の実施形態によれば、主樹脂では、主樹脂はポリカーボネートであり、ポリカーボネートは直鎖ポリカーボネートであっても分岐ポリカーボネートであってもよい。
【0046】
本開示の実施形態によれば、ポリオレフィン樹脂の融点は約65℃〜約105 ℃であり、好ましくは、ポリオレフィン樹脂はグラフトポリエチレンであってもよい。好ましくは、融点が約100 ℃〜約105 ℃であるグラフトポリエチレンがポリオレフィン樹脂として使用されてもよい。
【0047】
本開示で使用される樹脂は、他の修飾添加剤を更に含有してもよく、修飾添加剤に特に制限はなく、例えば、樹脂は充填材を含有してもよい。また、充填材に特に制限はなく、非制限例として充填材は繊維状充填材又は粉末充填材である。繊維状充填材は、繊維ガラス、炭素繊維及び芳香族ポリアミド繊維からなる群から選択された少なくとも1つであってもよい。また、粉末充填材は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、重硫酸バリウム、タルカムパウダカー、ガラス及び粘土からなる群から選択された少なくとも1つであってもよい。本開示の実施形態によれば、100 重量部の主樹脂に基づいて、繊維状充填材の含有量は50〜150 重量部であり、粉末充填材の含有量は50〜150 重量部である。そのため、樹脂は、アルミニウム合金と同様の線膨張係数を水平方向及び垂直方向の両方に有している。
【0048】
本開示の実施形態によれば、本開示で使用される樹脂は、主樹脂及びポリオレフィン樹脂を混合することにより準備されてもよい。例えば、樹脂は、主樹脂及びポリオレフィン樹脂を均一に混合し、その後二軸押出機を用いて粒状にすることにより準備される。本開示の実施形態によれば、流動性向上剤及び充填材は主樹脂に加えられて、均一に混合されてもよく、このようにして得られた樹脂は金属シェル体と同様の線膨張係数を水平方向及び垂直方向の両方に有している。
【0049】
本開示の実施形態によれば、射出成形を実行する条件は制限されていない。例えば、本開示の一実施形態によれば、射出成形の条件は、50〜300 ℃の成形温度、200 〜450 ℃のノズル温度、1〜50秒の圧力維持時間、50〜300MPaの射出圧力、1〜30秒の射出時間、1〜30秒の遅延時間及び1〜60秒の冷却時間であってもよい。本開示の一実施形態によれば、射出成形の条件は、80〜200 ℃の成形温度、200 〜350 ℃のノズル温度、1〜10秒の圧力維持時間、90〜140MPaの射出圧力、3〜10秒の射出時間、15〜30秒の遅延時間及び15〜25秒の冷却時間であってもよい。そのため、作製されたシェルの表面は、深さが0.5 〜10mmである樹脂層を有してもよい。
【0050】
本開示の作製方法は簡単であり、既存の接着剤技術と比較すると製造工程を著しく簡略化し、既存のアミン物質と比較すると腐食時間を短くし、ひいては製造時間を短くして工程の複雑さを著しく低減している。上記の全ては、本開示の処理方法を使用した後に射出成形を直接行うことによってのみ達成されてもよい。同時に、本開示の作製方法により作製されたシェルは、樹脂層及び金属シェル体間により強い結合力を有し、より高い引張り剪断強度を有している。
【0051】
本発明で使用される樹脂に特に制限はなく、樹脂は、金属シェル体と接合することができるあらゆる樹脂を含有してもよく、熱可塑性樹脂が好ましい。本開示の実施形態によれば、熱可塑性樹脂は主樹脂及びポリオレフィン樹脂の混合物を含有している。本開示の実施形態によれば、主樹脂は、先行技術における高結晶性樹脂より優れた表面光沢及び靭性の両方を有して、射出成形材料として使用される非結晶性樹脂を含有してもよく、融点が約65℃〜約105 ℃であるポリオレフィン樹脂が更に使用されている。従って、特定の成形温度での射出成形を成形中に必要としなくてもよく、以降の焼きなまし処理も必要としなくてもよく、成形過程が簡略化されてもよく、得られた金属−樹脂複合体構造が高い機械的強度及び優れた表面処理特性を確実に有してもよく、このようにして、プラスチック部品の表面装飾の問題を解決し、顧客の種々の要件を満たす。
【0052】
本開示の実施形態によれば、本開示では、融点が約65℃〜約105 ℃であるポリオレフィン樹脂を非結晶性主樹脂に使用することにより、金属薄板の表面の微小孔への樹脂の流動性が高められてもよく、このようにして、金属及びプラスチック間の強い接着力、並びに金属−樹脂複合体構造の高い機械的強度が確保されることが、多くの実験を通して本発明者らによって見出された。100 重量部の熱可塑性樹脂に基づいて、主樹脂の量は約70重量部〜約95重量部であり、ポリオレフィン樹脂の量は約5重量部〜約30重量部であることが好ましい。
【0053】
更に、熱可塑性樹脂に流動性向上剤を使用することにより、樹脂の流動性が高められてもよく、金属及びプラスチック間の接着力、並びに樹脂を射出成形する性能が更に高められることが、本発明者らによって見出された。100 重量部の熱可塑性樹脂に基づいて、熱可塑性樹脂は、約1重量部〜約5重量部の流動性向上剤を更に含有していることが好ましい。流動性向上剤は環状ポリカーボネートであることが好ましい。
【0054】
上述したように、本開示で使用される樹脂は非結晶性樹脂であってもよい。本開示の実施形態によれば、主樹脂はポリフェニレンエーテル(PPO)及びポリフェニレンスルフィド(PPS)の混合物である。本開示の一実施形態によれば、主樹脂では、ポリフェニレンエーテル対ポリフェニレンスルフィドの重量比が約3:1〜約1:3であり、好ましくは約2:1〜約1:1である。本開示の実施形態によれば、主樹脂はポリフェニレンオキシド及びポリアミドの混合物である。本開示の一実施形態によれば、主樹脂では、ポリフェニレンオキシド対ポリアミドの重量比が約3:1〜約1:3であり、好ましくは約2:1〜約1:1である。本開示の実施形態によれば、主樹脂では、主樹脂はポリカーボネートであり、ポリカーボネートは直鎖ポリカーボネートであっても分岐ポリカーボネートであってもよい。
【0055】
本開示の実施形態によれば、ポリオレフィン樹脂の融点は約65℃〜約105 ℃であり、好ましくは、ポリオレフィン樹脂はグラフトポリエチレンを含有してもよい。好ましくは、融点が約100 ℃〜約105 ℃であるグラフトポリエチレンがポリオレフィン樹脂として使用されてもよい。
【0056】
本開示で使用される樹脂は、他の修飾添加剤を更に含有してもよく、修飾添加剤に特に制限はなく、例えば、樹脂は充填材を含有してもよい。また、充填材に特に制限はなく、非制限例として充填材は繊維状充填材又は粉末充填材である。繊維状充填材は、繊維ガラス、炭素繊維及び芳香族ポリアミド繊維からなる群から選択された少なくとも1つであってもよい。また、粉末充填材は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、重硫酸バリウム、タルカムパウダー、ガラス及び粘土からなる群から選択された少なくとも1つであってもよい。本開示の実施形態によれば、100 重量部の主樹脂に基づいて、繊維状充填材の含有量は50〜150 重量部であり、粉末充填材の含有量は50〜150 重量部である。そのため、樹脂は、金属シェル体と同様の線膨張係数を水平方向及び垂直方向の両方に有している。
【0057】
本開示の実施形態によれば、射出成形後に得られたシェルに、仕上げ処理が更に施されてもよい。例えば、得られたシェルに表面バニシ仕上げ及びブラスト研磨が施されて、鋳ばりを除去し、シェルを輝かせて美的感覚を改善してもよい。バニシ仕上げの処理は、約100 メッシュ〜約400 メッシュの紙やすりを使用するか又は研磨機を使用して行われてもよい。ブラスト研磨は、シェルの砂のような外観を形成するために、約100 〜約600 のメッシュのセラミックビーズ又は鉄ビーズを使用して行われてもよい。
【0058】
本開示の実施形態によれば、表面バニシ仕上げ及びブラスト研磨の後、様々な色の装飾効果をもたらして、耐腐食性及び耐摩耗性の特性を改善するように、得られたシェルに陽極酸化及び染色の表面処理が施されてもよい。噴霧、電気泳動、PVD、めっきなどのような、シェル表面に他の表面装飾処理が更に施されてもよい。
【0059】
本開示の第3の態様によれば、上述したシェルを備えた電子製品が提供される。電子製品の例として、携帯電話、PDA、コンピュータなどが含まれてもよい。
【0060】
本開示の技術的問題、技術的解決法及び有利な効果を更に明瞭にするために、本開示は、本開示の実施例を参照して以下に詳細に更に述べる。本明細書に記載されている特定の実施例は、本開示を理解するために単に使用されていることを認識すべきである。本実施例は、本開示を制限するためには解釈されないものとする。本実施例及び比較例に使用されている原材料は全て、特に制限することなく市販されている。
【0061】
実施例1
1.前処理
厚さが1mmである市販のA5052 アルミニウム合金シェル体が、(
図4に示されているように)15mm×80mmの矩形状の複数のシェルに切断され、次に研磨機で磨かれて無水エタノールで清浄化され、その後、40g/LのNaOH水溶液に浸された。2分後、矩形状のシェルは水で洗浄されて乾燥され、前処理されたアルミニウム合金シェルが得られた。
【0062】
2.表面処理1
陽極としての各アルミニウム合金シェルは、20重量%のH
2SO
4 溶液を含んでいる陽極酸化処理槽内に置かれ、アルミニウム合金シェルは、18℃で10分間20Vの電圧で電気分解され、その後、アルミニウム合金シェルはブロー乾燥された。
【0063】
表面処理1の後に得られたアルミニウム合金シェルの断面を金属顕微鏡によって観察し、厚さが5μmの酸化アルミニウム層が、電気分解されたアルミニウム合金シェルの表面に形成されていることが分かった。表面処理1の後に得られたアルミニウム合金シェルの表面を電子顕微鏡によって観察し(
図2参照)、平均孔径が約40nm〜約60nmであり深さが1μmである微小孔が酸化アルミニウム層に形成されていることが分かった。
【0064】
3.表面処理2
10重量%のNa
2CO
3(pH=12.2)を含有している500 mlの水溶液がビーカーに準備された。工程(2)
(表面処理1)の後に得られたアルミニウム合金薄板が20℃で炭酸ナトリウム溶液に浸され、5分後に取り出され、水を含んでいるビーカー内に置かれて1分間浸された。5サイクル後、最後に水に浸された後、アルミニウム合金シェルはブロー乾燥された。
【0065】
表面処理2の後に得られたアルミニウム合金シェルの表面を電子顕微鏡によって観察し(
図3a及び
図3b参照)、平均孔径が300 nm〜1000nmであり深さが4μmである腐食孔が、浸されたアルミニウム合金シェルの表面に形成されていることが分かった。
図1に示されている構造と同様の二層三次元細孔構造が酸化アルミニウム層に存在し、腐食孔が微小孔と連通していることが更に観察される場合もある。
【0066】
4.成形
乾燥したアルミニウム合金シェルは、
図5に示されているパターンを有する射出成形用金型に挿入された。ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂及び30重量%の繊維ガラスを含有している樹脂組成物が射出成形された。
図6に示されているような、アルミニウム合金及び樹脂の複合体が堅固に結合された携帯電話用のシェルが、金型から外されて冷却された後に得られた。
【0067】
図5に示されているように、形成されたプラスチック部品は、プラスチックシェル体2 、プラスチックパッチ3 、プラスチック支持体4 及びプラスチック基板5 を有しており、これらは一体的に形成されている。プラスチックシェル体2 はアルミニウム合金シェル1 の一端部に設けられ、プラスチックシェル体2 はアルミニウム合金シェル1 と非常に適合しており、プラスチックシェル体2 とアルミニウム合金シェル1 の端部との界面が第1の結合面22を形成し、アルミニウム合金シェル1 とプラスチックシェル体2 との結合力が第1の結合面22によって形成されている。プラスチック基板5 はアルミニウム合金シェル1 の他端部に設けられており、アルミニウム合金シェル1 に垂直であり、第2の結合面52が、プラスチック基板5 とアルミニウム合金シェル1 との界面によって形成され、アルミニウム合金シェル1 とプラスチック基板との結合力が第2の結合面52によって形成されている。プラスチック基板5 からアルミニウム合金シェル1 の内面に沿って延びる補強リブ51が形成されており、補強リブ51は、プラスチック部品と金属シェル体との結合力を高めるアルミニウム合金シェル1 の内面に接合されている。プラスチックシェル体2 は、金属シェル体1 の内面に設けられたプラスチック支持体4 を介してプラスチック基板5 と連結されている。プラスチック支持体4 は枠組み構成であり、支持棒体42が枠組みの中途部に設けられ、複数の螺子孔が支持棒体42に形成されており、支持棒体42は、アルミニウム合金シェル体1 の内面の中途領域に接合されている。プラスチック支持体4 はプラスチック基板5 に垂直であり、取付部43を有する枠組み44が、金属シェル体1 の縁部に接合されている。
プラスチック支持体4 に配置された螺子孔41及び取付部43は、携帯電話内に複数の部品を取り付けるために使用される。プラスチックパッチ3 は、プラスチック支持体4 上に設けられており、支持棒体42に垂直であり、支持棒体42と共に十字形を形成しており、プラスチックパッチ3 の端部が枠組み44に更に係合されてもよい。開口部11が、シェルの外面に、つまりプラスチックパッチ3 の表面の下に形成され、プラスチックパッチ3 の一部を露出し、金属による遮蔽を回避している(
図4参照)。プラスチックシェル体2 、プラスチックパッチ3 、プラスチック支持体4 及びプラスチック基板は、射出成形によって一体的に形成されている。補強リブ21がプラスチックシェル体2 の内面から延びており、補強リブ21は金属シェル体1 に接合されて、プラスチック部品とアルミニウムシェル体との結合力を高める。プラスチックシェル体2 は、アンテナ、表示画面のような複数の部品を取り付けるために使用されてもよく、プラスチックパッチ3 はWIFIアンテナを取り付けるために使用されてもよく、プラスチック基板5 は、GPRS、Bluetooth(登録商標)及び赤外線のためのアンテナを取り付けるために使用されてもよい。
【0068】
5.表面バニシ仕上げ、及びブラスト研磨
射出成形後に得られたシェルに、400 メッシュの紙やすりを使用した表面バニシ仕上げ、及び500 メッシュのセラミックビーズを使用したブラスト研磨が施された。
【0069】
6.陽極酸化処理
得られたシェルは、20重量%のH
2SO
4 溶液を含んでいる陽極酸化処理槽内に陽極として置かれ、シェルは、20℃で140 分間20Vの電圧で電気分解され、その後、洗浄後に染色された。
【0070】
実施例2
本実施例では、携帯電話用のシェルが、以下の例外を除いて実施例1における方法と略同一の方法によって作製された。
【0071】
表面処理1の工程で、陽極としての各アルミニウム合金シェル体が、20重量%のH
2SO
4 溶液を含んでいる陽極酸化処理槽内に置かれ、アルミニウム合金は18℃で10分間15Vの電圧で電気分解され、その後、アルミニウム合金シェル体はブロー乾燥された。
【0072】
厚さが約5μmである酸化アルミニウム膜の層が電気分解の後に形成され、孔径が20〜40nmである微小孔が酸化アルミニウム層に形成されていることが観察された。表面処理2の後、孔径が300 〜1000nmであり深さが4μmである腐食孔が、浸されたアルミニウム合金薄板の表面に形成されていることが観察された。
図1に示されている構造と同様の二層三次元細孔構造が酸化アルミニウム層に存在し、腐食孔が微小孔と連通していることが更に観察される場合もある。このようにして、携帯電話用のシェルが作製された。
【0073】
実施例3
本実施例では、携帯電話用のシェルが、以下の例外を除いて実施例1における方法と略同一の方法によって作製された。
【0074】
表面処理1の工程で、陽極としての各アルミニウム合金シェル体が、20重量%のH
2SO
4 溶液を含んでいる陽極酸化処理槽内に置かれ、アルミニウム合金は18℃で10分間40Vの電圧で電気分解され、その後、アルミニウム合金シェル体がブロー乾燥された。
【0075】
厚さが約5μmである酸化アルミニウム膜の層が電気分解の後に形成され、孔径が60〜80nmであり深さが1μmである微小孔が酸化アルミニウム層に形成されていることが観察された。表面処理2の後、孔径が300 〜1000nmであり深さが4μmである腐食孔が、浸されたアルミニウム合金薄板の表面に形成されていることが観察された。
図1に示されている構造と同様の二層三次元細孔構造が酸化アルミニウム層に存在し、腐食孔が微小孔と連通していることが更に観察される場合もある。このようにして、携帯電話用のシェルが作製された。
【0076】
実施例4
本実施例では、携帯電話用のシェルが、以下の例外を除いて実施例1における方法と略同一の方法によって作製された。
【0077】
表面処理1の工程で、陽極としての各アルミニウム合金シェル体が、20重量%のH
2SO
4 溶液を含んでいる陽極酸化処理槽内に置かれ、アルミニウム合金は18℃で15分間20Vの電圧で電気分解され、その後、アルミニウム合金シェル体がブロー乾燥された。
【0078】
厚さが約7μmである酸化アルミニウム膜の層が電気分解の後に形成され、孔径が40〜60nmであり深さが3μmである微小孔が酸化アルミニウム層に形成されていることが観察された。表面処理2の後、孔径が300 〜1000nmであり深さが4μmである腐食孔が、浸されたアルミニウム合金薄板の表面に形成されていることが観察された。
図1に示されている構造と同様の二層三次元細孔構造が酸化アルミニウム層に存在し、腐食孔が微小孔と連通していることが更に観察される場合もある。このようにして、携帯電話用のシェルが作製された。
【0079】
実施例5
本実施例では、携帯電話用のシェルが、以下の例外を除いて実施例1における方法と略同一の方法によって作製された。
【0080】
表面処理1の工程で、陽極としての各アルミニウム合金シェル体が、20重量%のH
2SO
4 溶液を含んでいる陽極酸化処理槽内に置かれ、アルミニウム合金は18℃で15分間15Vの電圧で電気分解され、その後、アルミニウム合金シェル体がブロー乾燥された。
【0081】
厚さが約7μmである酸化アルミニウム膜の層が電気分解の後に形成され、孔径が20〜40nmであり深さが3μmである微小孔が酸化アルミニウム層に形成されていることが観察された。表面処理2の後、孔径が300 〜1000nmであり深さが4μmである腐食孔が、浸されたアルミニウム合金薄板の表面に形成されていることが観察された。
図1に示されている構造と同様の二層三次元細孔構造が酸化アルミニウム層に存在し、腐食孔が微小孔と連通していることが更に観察される場合もある。このようにして、携帯電話用のシェルが作製された。
【0082】
実施例6
本実施例では、携帯電話用のシェルが、以下の例外を除いて実施例1における方法と略同一の方法によって作製された。
【0083】
表面処理1の工程で、陽極としての各アルミニウム合金シェル体が、20重量%のH
2SO
4 溶液を含んでいる陽極酸化処理槽内に置かれ、アルミニウム合金は18℃で15分間40Vの電圧で電気分解され、その後、アルミニウム合金シェル体がブロー乾燥された。
【0084】
厚さが約7μmである酸化アルミニウム膜の層が電気分解の後に形成され、孔径が60〜80nmであり深さが3μmである微小孔が酸化アルミニウム層に形成されていることが観察された。表面処理2の後、孔径が300 〜1000nmであり深さが4μmである腐食孔が、浸されたアルミニウム合金薄板の表面に形成されていることが観察された。
図1に示されている構造と同様の二層三次元細孔構造が酸化アルミニウム層に存在し、腐食孔が微小孔と連通していることが更に観察される場合もある。このようにして、携帯電話用のシェルが作製された。
【0085】
実施例7
本実施例では、携帯電話用のシェルが、以下の例外を除いて実施例2における方法と略同一の方法によって作製された。
【0086】
pHが11.9であり5重量%のNa
2CO
3を含有している100 mlの水溶液がビーカーに準備された。工程(2)
(表面処理1)の後に得られたアルミニウム合金シェル体が炭酸ナトリウム溶液に浸され、5分後に取り出され、水を含んでいるビーカー内に置かれて1分間浸された。5サイクル後、最後に水に浸された後、アルミニウム合金シェル体はブロー乾燥された。
【0087】
厚さが約5μmである酸化アルミニウム膜の層が、電気分解の後に形成され、孔径が20〜40nmであり深さが3μmである微小孔が酸化アルミニウム層に形成されていることが観察された。表面処理2の後、孔径が300 〜600 nmであり深さが2μmである腐食孔が、浸されたアルミニウム合金薄板の表面に形成されていることが観察された。
図1に示されている構造と同様の二層三次元細孔構造が酸化アルミニウム層に存在し、腐食孔が微小孔と連通していることが更に観察される場合もある。このようにして、携帯電話用のシェルが作製された。
【0088】
実施例8
本実施例では、携帯電話用のシェルが、以下の例外を除いて実施例2における方法と略同一の方法によって作製された。
【0089】
pHが10であり15重量%のNaHCO
3を含有している100 mlの水溶液がビーカーに準備された。工程(2)
(表面処理1)の後に得られたアルミニウム合金シェル体が炭酸ナトリウム溶液に浸され、5分後に取り出され、水を含んでいるビーカー内に置かれて1分間浸された。5サイクル後、最後に水に浸された後、アルミニウム合金シェル体はブロー乾燥された。
【0090】
厚さが約5μmである酸化アルミニウム膜の層が、電気分解の後に形成され、孔径が20〜40nmであり深さが3μmである微小孔が酸化アルミニウム層に形成されていることが観察された。表面処理2の後、孔径が300 〜600 nmであり深さが2μmである腐食孔が、浸されたアルミニウム合金薄板の表面に形成されていることが観察された。
図1に示されている構造と同様の二層三次元細孔構造が酸化アルミニウム層に存在し、腐食孔が微小孔と連通していることが更に観察される場合もある。このようにして、携帯電話用のシェルが作製された。
【0091】
比較例1
1.前処理
厚さが1mmである市販のA5052 アルミニウム合金シェル体が、15mm×80mmの矩形状の複数のシェルに切断され、次に研磨機で磨かれて無水エタノールで清浄化され、その後、2重量%のNaOH水溶液に浸された。2分後、矩形状の薄板は水で洗浄されて乾燥され、前処理されたアルミニウム合金薄板が得られた。
【0092】
2.付着
3M製のホットメルト接着剤を、金属及びプラスチック部品間の結合面に塗布し、ホットプレス処理によって2つの部品を接合した。
【0093】
性能試験
アルミニウム合金と樹脂との結合力に関して、実施例1〜8及び比較例1で作製された携帯電話用のシェルが一般的な材料試験機に固定されて、引張試験が行われた。最大荷重下の試験結果は、アルミニウム合金と樹脂との結合力の値としてみなされることができ、試験結果は表1に要約された。
【0095】
本開示のシェルにおける樹脂と金属シェル体との結合力は1211Nにまで達することができ、そのため、結合が優れていることが表1から分かる。他方、既存のシェルの樹脂と金属シェル体との結合力は数十又は数百ニュートンに過ぎない。本開示のシェルの性能は、既存のシェルと比較して著しく改善されており、樹脂成形が更に容易である。本開示の金属シェル体は、樹脂とより高い強度で堅固に結合するために追加の部分を必要とせず、金属基板の大きさ及びアルミニウム合金の外観に影響をほとんど及ぼさない。同時に、表面がより大きい腐食孔に成形用樹脂を直接注入することがより容易である。また、合成樹脂に特定の要件はなく、従って、適用範囲がより広い。更に、環境汚染はなく、これは大量生産により適している。
【0096】
説明的な実施形態が示され述べられているが、上記の実施形態は本開示を制限すると解釈され得ないことが当業者によって認識され、変更、代替及び調整は、本開示の趣旨、本質及び範囲から逸脱することなく本実施形態になされ得る。
【0097】
本出願は、中華人民共和国の知識産権局に2012年2月24日付で提出された中国特許出願第201210043628.0号明細書の優先権及び利得を主張しており、その内容全体が参照して本明細書に組み込まれる。