特許第5933770号(P5933770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933770
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】締結具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/12 20060101AFI20160602BHJP
   F16B 39/16 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   F16B39/12 Z
   F16B39/16
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-2431(P2015-2431)
(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公開番号】特開2016-84929(P2016-84929A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2015年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-217947(P2014-217947)
(32)【優先日】2014年10月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392014195
【氏名又は名称】岡田 好司
(73)【特許権者】
【識別番号】507384766
【氏名又は名称】岡田 圭亮
(73)【特許権者】
【識別番号】507384777
【氏名又は名称】岡田 一希
(74)【代理人】
【識別番号】100094547
【弁理士】
【氏名又は名称】岩根 正敏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 好司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一希
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3179874(JP,U)
【文献】 特開2004−204867(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3153130(JP,U)
【文献】 国際公開第2012/102401(WO,A1)
【文献】 特開平10−061645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトの軸部を本体軸部とその先端側に存在する細径軸部とし、前記本体軸部に雄ネジを形成し、前記細径軸部に前記本体軸部に形成した雄ネジよりピッチの狭い雄ネジを形成するとともに、前記本体軸部に形成した雄ネジに螺合する雌ネジを締め付けナットに形成し、前記細径軸部に形成した雄ネジに螺合する雌ネジを緩み止めナットに形成することにより、前記本体軸部に締め付けナットを螺合させ、前記細径軸部に緩み止めナットを螺合させるようにしたボルトとナットとからなる締結具において、上記締め付けナットと上記緩み止めナットの当接面に、両ナットの相対的な回転を阻止する係合手段を有するボルトとナットとからなる締結具の製造方法であって、上記係合手段が、上記締め付けナット或いは上記緩み止めナットの当接面の一方に予め形成された鋸刃状突起と、上記緩み止めナットの上記締め付けナットへの締め付け時に、前記鋸刃状突起により上記締め付けナット或いは上記緩み止めナットの当接面の他方に掘り起こされた突起部とで形成されることを特徴とする、ボルトとナットとからなる締結具の製造方法
【請求項2】
上記緩み止めナットの上記締め付けナットとの当接面に鋸刃状突起が形成されており、上記締め付けナットが20HRC以下の硬度の材料で製造されていることを特徴とする、請求項1に記載のボルトとナットとからなる締結具の製造方法
【請求項3】
上記鋸刃状突起が、緩み止めナットの締め付け回転方向と同一の方向に刃先を向けて、緩み止めナットの当接面に環状に形成されており、上記締め付けナットの緩み止めナットとの当接面に環状突起が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のボルトとナットとからなる締結具の製造方法
【請求項4】
上記本体軸部に形成した雄ネジが並目ネジであり、上記細径軸部に形成した雄ネジが細目ネジであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のボルトとナットとからなる締結具の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結具の製造方法に関するもので、特にボルトとナットとからなる締結具の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、締結具の緩み止め構造として、一本のボルトに二つのナットを螺合した緩み
止め構造、いわゆるダブルナットとした緩み止め構造が存在する。これは、ボルトに螺合
した締め付けナットに続いて緩み止めナットを螺合して締め付け、振動等によって締め付
けナットが緩む方向に回転するのを緩み止めナットによって阻止するものである。
【0003】
この緩み止め構造は、締め付けナットと緩み止めナットの双方に同一ピッチの雌ネジを
形成し、それと同一ピッチの雄ネジを軸部に形成したボルトに螺合し、締め付けた両ナッ
ト間に生じる摩擦力によって締め付けナットの緩みを防止するものである。
【0004】
従来のこうした構造に係る締結具は、締め付けナットの緩みをある程度防止することが
できるものの、大きな振動が長時間加わると、締め付けナットと緩み止めナットがいわゆ
る供回りを起こし、緩んでしまうといった問題があった。
【0005】
そこで、本件出願人等は、先に振動などによりナットが供回りを起こすことがなく、有
効にナットの緩みを防止し得る締結具を考案し、実用新案登録出願を行った(特許文献1
)。
この実用新案登録出願を行った締結具は、ボルトの軸部を本体軸部とその先端側に存在
する細径軸部とし、前記本体軸部に並目ネジの雄ネジを形成し、前記細径軸部に細目ネジ
の雄ネジを形成するとともに、前記並目ネジに螺合する雌ネジを締め付けナットに形成し
、前記細目ネジに螺合する雌ネジを緩み止めナットに形成することにより、前記本体軸部
に締め付けナットを螺合させ、前記細径軸部に緩み止めナットを螺合させるようにした、
ボルトとナットとからなる締結具である。
【0006】
上記したボルトとナットとからなる締結具によれば、締め付けナットと緩み止めナット
のピッチが異なるので、両ナットが供回りを起こすことがなく、よって締め付けナットの
緩みを効果的に防止することができるものであった。また、並目ネジと細目ネジとが重複
して形成されていないため、並目ネジに欠損部分がなく、該並目ネジに螺合させる締め付
けナットを強く締め付けることができると共に、緩み止めナットを螺合させる細目ネジは
、ボルトの先端側の細径軸部に形成されているため、締め付けナットを螺合させる場合に
該細目ネジが邪魔となることもないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3179874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に開示された締結具は、ナット間の摩擦力により締
め付けナットと緩み止めナットとが独立して動くことができず、一体となって動く状態で
ある場合には、両ナットはピッチが異なるために供回りすることはできず、有効に締め付
けナットの緩みを防止できるものではあったが、何らかの要因で細目ネジに螺合した緩み
止めナットが先に独立して緩んでしまった場合には、その後はもはや両ナットを一体とし
て供回りさせるナット間の摩擦力は働かず、それぞれのナットが独立して緩んでしまうこ
とが起こり得ることから、締め付けナットの緩み、およびその脱落が懸念されるものであ
った。
【0009】
本発明は、上述した先行技術が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、何ら締結作業性を変えることなく、螺合した締め付けナットと緩み止めナットとを一体化させ、締め付けナットの緩み、しいては締結具の緩み確実に防止し得るボルトとナットとからなる締結具の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明は、次の(1)〜(4)に記載の締結具の製造方法とした。
(1)ボルトの軸部を本体軸部とその先端側に存在する細径軸部とし、前記本体軸部に雄ネジを形成し、前記細径軸部に前記本体軸部に形成した雄ネジよりピッチの狭い雄ネジを形成するとともに、前記本体軸部に形成した雄ネジに螺合する雌ネジを締め付けナットに形成し、前記細径軸部に形成した雄ネジに螺合する雌ネジを緩み止めナットに形成することにより、前記本体軸部に締め付けナットを螺合させ、前記細径軸部に緩み止めナットを螺合させるようにしたボルトとナットとからなる締結具において、上記締め付けナットと上記緩み止めナットの当接面に、両ナットの相対的な回転を阻止する係合手段を有するボルトとナットとからなる締結具の製造方法であって、上記係合手段が、上記締め付けナット或いは上記緩み止めナットの当接面の一方に予め形成された鋸刃状突起と、上記緩み止めナットの上記締め付けナットへの締め付け時に、前記鋸刃状突起により上記締め付けナット或いは上記緩み止めナットの当接面の他方に掘り起こされた突起部とで形成されることを特徴とする、ボルトとナットとからなる締結具の製造方法
(2)上記緩み止めナットの上記締め付けナットとの当接面に鋸刃状突起が形成されており、上記締め付けナットが20HRC以下の硬度の材料で製造されていることを特徴とする、上記(1)に記載のボルトとナットとからなる締結具の製造方法
(3)上記鋸刃状突起が、緩み止めナットの締め付け回転方向と同一の方向に刃先を向けて、緩み止めナットの当接面に環状に形成されており、上記締め付けナットの緩み止めナットとの当接面に環状突起が形成されていることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載のボルトとナットとからなる締結具の製造方法
(4)上記本体軸部に形成した雄ネジが並目ネジであり、上記細径軸部に形成した雄ネジが細目ネジであることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のボルトとナットとからなる締結具の製造方法
【発明の効果】
【0011】
上記した本発明に係るボルトとナットとからなる締結具の製造方法によれば、締め付けナットと緩み止めナットの当接面に、両ナットの相対的な回転を阻止する係合手段を有する締結具を製造できるため、締め付けナットと緩み止めナットとは一体となり、独立して回ることができない状態となる。一方、本発明が対象としているボルトとナットとからなる締結具は、本体軸部に形成した雄ネジに螺合する締め付けナットと、細径軸部に形成した前記本体軸部の雄ネジよりピッチの狭い雄ネジに螺合する緩み止めナットとからなるものであるため、両ナットの回転による進度が異なり、締め付けナットと緩み止めナットとは供回りを起こすことができない状態のものである。上記した本発明の締結具の両作用、即ち、係合手段により締め付けナットと緩み止めナットとを一体化させる作用と、ピッチ差を設けて締め付けナットと緩み止めナットとの供回りを阻止する作用とが相俟って、ナットの緩みを確実に防止し得る締結具を製造することができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明において使用するボルトの一実施形態を示した側面図である。
図2】本発明において使用する締め付けナットの一実施形態を示した図であって、(a)は上方から観た斜視図、(b)は半断面側面図である。
図3】本発明において使用する緩み止めナットの一実施形態を示した図であって、(a)は下方から観た斜視図、(b)は前記(a)図のA部を拡大して示した概念的な部分拡大側面図、(c)は底面図である。
図4図1図2そして図3に示したボルト、締め付けナットおよび緩み止めナットを使用した締結構造の一実施形態を示した図であって、ボルトに締め付けナットおよび緩み止めナットを螺合させる前の状態を示した概念的な半断面側面図である。
図5図4に示した締結構造において、ボルトに締め付けナットを螺合させた状態を示した概念的な半断面側面図である。
図6図4に示した締結構造において、(a)はボルトに締め付けナットおよび緩み止めナットを螺合させた状態を示した概念的な半断面側面図、(b)は前記(a)図のB部を拡大して示した概念的な部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、上記した本発明に係るボルトとナットとからなる締結具の製造方法の一実施形態を、図面を示して詳細に説明する。
【0014】
本発明において使用するボルト1は、図1に示したように、頭部2と、軸部3とを有す
る。頭部2は、略六角柱の形状をなし、スパナ、六角レンチなどの工具により締め付ける
のに適した形状とされている。また、軸部3は、本体軸部3aと、その先端側に存在する
細径軸部3bとから構成され、前記本体軸部3aに並目ネジ4aの雄ネジが形成され、前
記細径軸部3bに細目ネジ4bの雄ネジが形成されている。なお、本体軸部3aは細径軸部3bより軸径が小さいため、両者に並目ネジの雄ネジを形成した場合にも、細径軸部側の雄ネジは本体軸部側の雄ネジより狭いピッチのものとなるため、それでもよい。要は、細径軸部3bに本体軸部3aに形成した雄ネジよりピッチの狭い雄ネジが形成されていればよい。但し、実施形態の如く、本体軸部3aに並目ネジ4aの雄ネジを形成し、細径軸部3bに細目ネジ4bの雄ネジを形成した場合には、そのピッチが大きく異なるものとなるために好ましいため、以下、この実施形態で説明する。
【0015】
上記細径軸部3bは、上記本体軸部3aの軸径の60〜90%の軸径に形成されている
ことが好ましく、70〜85%の軸径に形成されていることが更に好ましい。これは、6
0%に満たない細い細径軸部を形成した場合には、該細径軸部の強度が弱くなるとともに
、該細径軸部に形成された細目ネジ4bに螺合する緩み止めナットと、本体軸部に形成さ
れた並目ネジ4aに螺合する締め付けナットとの十分な当接面を確保することが困難とな
るために好ましくない。逆に90%を超える細径軸部を形成した場合には、本体軸部に形
成された並目ネジ4aへの締め付けナットの挿入・螺合に際して、該細径軸部に形成され
た細目ネジ4bが邪魔となるおそれがあるために好ましくない。
【0016】
また、上記細径軸部3bに形成された雄ネジのピッチは、本体軸部に形成された雄ネジのピッチの30〜70%に形成されていることが好ましく、45〜60%に形成されていることが更に好ましい。これは、30%に満たない狭いピッチの雄ネジを細径軸部3bに形成した場合には、該雄ネジに螺合する緩み止めナットの進度が遅く、締結作業上好ましくない。一方、70%を超え、本体軸部に形成された雄ネジのピッチとさほど差のない雄ネジを細径軸部3bに形成した場合には、締め付けナットと緩み止めナットが供回りを起こすおそれがあるために好ましくない。
【0017】
なお、上記並目ネジ4aは、本体軸部の全長に亘り形成されている必要は必ずしもなく
、図示したように本体軸部3aの上方のみに形成されていてもよい。
【0018】
本発明において使用する締め付けナット5は、図2に示したように、外形が略六角柱の
形状をなし、スパナ、六角レンチなどの工具により締め付けるのに適した形状とされてい
る。また、内周壁面には、上記ボルト1の本体軸部3aに形成された並目ネジ4aに螺合
する雌ネジ6が形成されている。
【0019】
また、締め付けナット5の上面(後記する緩み止めナットとの当接面)には、環状突起
7が形成されている。この環状突起7は、後記する緩み止めナットの当接面に形成された
鋸刃状突起によって刻まれ易いよう、接触面積を小さいものとして刻み力が集中して掛か
るように形成したものである。かかる観点から、該環状突起7の幅wは、ナットの最大厚
みWの15〜65%、高さhは、ナットの高さHの5〜15%程度とすることが好ましい
。例えば、JIS規格のM16のナットであれば、幅3mm、高さ1.5mm程度の環状
突起を設けることが好ましい。
【0020】
なお、上記環状突起7は、必ずしも設ける必要はなく、特に締め付けナット5の材質を柔らかいもの、例えば20HRC以下の硬度のもので作製した場合には、鋸刃状突起による刻み痕は形成され易いため、あえて環状突起を設ける必要はない。
【0021】
本発明において使用する緩み止めナット8は、図3に示したように、やはり外形が略六
角柱の形状をなし、スパナ、六角レンチなどの工具により締め付けるのに適した形状とさ
れている。内周壁面には、上記ボルト1の細径軸部3bに形成された細目ネジ4bに螺合
する雌ネジ9が形成されている。
【0022】
また、緩み止めナット8の下面(上記締め付けナットとの当接面)には、鋸刃状突起1
0が、緩み止めナットの締め付け回転方向と同一の方向に刃先を向けて環状に形成されて
いる。即ち、雌ネジ9を中心として円周を18等分する18個の放射状の半径線で直立す
る立面Pと、この立面Pの頂部(刃先)から隣接する半径線まで下る傾斜面Sとで形成さ
れる鋸刃状の18個の突起10が、刃先を右回転方向に向けて連続して形成されている。
該鋸刃状突起10は、高周波焼入れ等にて硬度が上げられていることは好ましい。
【0023】
なお、この実施形態においては、雌ネジを中心として放射状に複数の鋸刃状突起10を連続して設けた構造になっているが、これに限定されることなく不連続であってもよい。また鋸刃状突起の数は、何ら18個に限定されるものではない。
【0024】
上記鋸刃状突起10の立面Pの高さtは、細目ネジ4bのピッチ間距離より大きく形成
され、また鋸刃状突起10の傾斜面Sの傾斜角度αは、細目ネジ4bのネジ切り角度より
大きく形成されている。これにより、後述するように緩み止めナットと締め付けナットと
の一体化が強固になされ、ナットの緩みを確実に防止することができる。かかる観点から
、前記鋸刃状突起10の垂直面Pの高さtおよび鋸刃状突起10の傾斜面Sの傾斜角度α
は、細目ネジ4bのピッチ間距離或いは細目ネジ4bのネジ切り角度より、共に1.5〜
2.5倍程度の大きさとすることが好ましい。
【0025】
上記したボルト1、締め付けナット5、そして緩み止めナット8を使用し、被締結物を
締結するに際しては、従来と同様に行えばよい。
即ち、図4に示したように、先ず締結すべき部材11,12のそれぞれに形成された貫通孔11aおよび12aに、ボルト1の軸部3を挿入する。この際、必要に応じて座金13を介在させる。
【0026】
続いて、図5に示したように、ボルト1の本体軸部3aに形成された並目ネジ4aに、
締め付けナット5を挿入・螺合し、強く締め付けることにより部材11,12を締結する
。この際、ボルト1の先端部に存在する細目ネジ4bは、径が細い細径軸部3bに形成さ
れているため、締め付けナット5を並目ネジ4aに螺合させる場合に、何ら邪魔となるこ
とがない。また、本体軸部3aに形成された並目ネジ4aは、何ら欠損部分がないもので
あるために変形し難く、締め付けナット5を強く締め付けることが可能となる。
【0027】
続いて、図6に示したように、ボルト1の細径軸部3bに形成された細目ネジ4bに、
緩み止めナット8を挿入・螺合し、先に螺合した締め付けナット5の上面に強く圧接させ
る。この際、緩み止めナット8の下面(締め付けナットとの当接面)に形成された鋸刃状
突起10が、締め付けナット5の上面(緩み止めナットとの当接面)に形成された環状突
起7を掘り起こし、図6(b)に示したように、環状突起7の表面に、鋸刃状突起10の
傾斜面Sに接する突起部20が形成される。
【0028】
そして、緩み止めナット8の締め付け後においては、上記した緩み止めナット側の鋸刃
状突起10と、該鋸刃状突起により締め付けナット側に形成された突起部20とが噛み合
い、両ナットの相対的な回転を阻止する係合手段となり、締め付けナット5と緩み止めナ
ット8とは一体となり、独立して回ることができない状態となる。一方、ボルト1の並目
ネジ4aに螺合させた締め付けナット5と、ボルト1の細目ネジ4bに螺合させた緩み止
めナット8とは、回転による進度が異なり、締め付けナット5と緩み止めナット8とは供
回りを起こすことができない状態となる。上記した両作用、即ち、鋸刃状突起10と掘り
起こされた突起部20とからなる係合手段により締め付けナット5と緩み止めナット8と
を一体化させる作用、およびピッチ差を設けて締め付けナット5と緩み止めナット8との
供回りを阻止する作用が相俟って、両ナットの緩みを確実に防止することができる。特に
、上記した実施形態においては、鋸刃状突起10の立面Pの高さtは、細目ネジ4bのピ
ッチ間距離より大きく形成され、また鋸刃状突起10の傾斜面Sの傾斜角度αは、細目ネ
ジ4bのネジ切り角度より大きく形成されているので、該鋸刃状突起10と、該鋸刃状突
起により掘り起こされた突起部20との係合状態は、強固な信頼性の高いものとなり、緩
み止め効果が格段に向上したものとなる。
【0029】
以上、本発明に係るボルトとナットとからなる締結具の製造方法の一実施形態を説明したが、本発明は、何ら既述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変形および変更が可能であることは当然である。
【0030】
例えば、上記実施形態においては、ボルトとして、頭部2が略六角柱の所謂六角ボルト
を示したが、六角穴付きボルト、アイボルト、蝶ボルト、スタッドボルトなどであっても
よい。また、上記実施形態においては、締め付けナット5と緩み止めナット8の相対的な
回転を阻止する係合手段として、緩み止めナット側に設けた鋸刃状突起10と、該鋸刃状
突起により締め付けナット側に掘り起こされた突起部20としたが、鋸刃状突起と掘り起
こされた突起部とがそれぞれ逆のナットに形成されたものとしてもよい。更には、係合手
段の構成は、上記実施形態において示した鋸刃状突起10と、該鋸刃状突起により掘り起
こされた突起部20に限らず、締め付け力によって締め付けナット5と緩み止めナット8
とが一体となり、供回りをせざるを得ない状態にすることができる構成であれば、公知の
種々の係合手段を採用することができる。また、本体軸部3aに並目ネジ4aの雄ネジを形成し、細径軸部3bに細目ネジ4bの雄ネジを形成した実施形態を説明したが、本体軸部3aは細径軸部3bより軸径が小さいため、両者に並目ネジの雄ネジを形成した場合にも、細径軸部側の雄ネジは本体軸部側の雄ネジより狭いピッチのものとなるため、それでもよく、要は、細径軸部3bに本体軸部3aに形成した雄ネジよりピッチの狭い雄ネジが形成されていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上、説明した本発明に係るボルトとナットとからなる締結具の製造方法は、振動が加えられる環境下において使用される部品の締結、例えば、自動車、船舶、航空機、さらにはモータを搭載した洗濯機等の家電製品の部品の締結に、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ボルト
2 頭部
3 軸部
3a 本体軸部
3b 細径軸部
4a 並目ネジ
4b 細目ネジ
5 締め付けナット
6 雌ネジ
7 環状突起
8 緩み止めナット
9 雌ネジ
10 鋸刃状突起
11,12 締結すべき部材
11a,12a 貫通孔
13 座金
図1
図2
図3
図4
図5
図6