(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整量決定部は、前記類似部品及び前記対象部品のヒストグラムデータについて、同じ区間に属する要素の面積比率同士を比較し、各区画の小さい方の面積比率を全区画について足し合わせた総和を類似度として算出し、該類似度が最大になるように前記調整量を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のプレス成形結果予測データ調整システム。
前記類似部品と前記対象部品を構成するブランク材料が異なる場合、前記調整量決定部によって前記類似部品及び前記対象部品のヒストグラムデータを比較する前に、前記類似部品データ取得部によって取得された前記類似部品のヒストグラムデータの各区画の上限値及び下限値を、前記類似部品を構成するブランク材料の破断伸び率に対する前記対象部品を構成するブランク材料の破断伸び率の比によって補正するヒストグラムデータ補正部を更に有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプレス成形結果予測データ調整システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、このプレス金型形状を自動作成する方法でも、プレス成形の影響が実際よりも過小又は過大に予測される場合があるので、衝突や落下時の衝撃解析の予測精度を更に向上させるためには、実際のプレス成形結果により近いプレス成形結果予測データを衝撃解析に用いることが望まれる。
【0010】
本発明は、衝撃解析に関する上述のような実情に鑑みてなされたもので、より予測精度の高い衝撃解析を行うために、各種手法によって得られたプレス成形結果予測データを実際のプレス成形結果により近付けるための調整を行って衝撃解析での初期条件として用いられる入力データを効率的に得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係るプレス成形結果予測データ調整システム及びプログラム、並びに衝撃解析システムは、次のように構成したことを特徴とする。
【0012】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
衝撃解析を行う対象部品のプレス成形結果予測データを調整するためのプレス成形結果予測データ調整システムであって、
完成部品毎に、
当該部品を実際にプレス成形した際に生じた前記部品を構成する各要素の板厚変化率又は塑性ひずみの少なくともいずれか一方に関するヒストグラムデータを含む部品データが記憶された部品データ記憶部と、
前記部品データ記憶部に記憶された前記部品データから、前記対象部品と類似する類似部品のヒストグラムデータを含む類似部品データを取得する類似部品データ取得部と、
前記対象部品を構成する各要素の板厚変化率又は塑性ひずみの少なくともいずれか一方に関する前記プレス成形結果予測データを含む対象部品データを取得する対象部品データ取得部と、
前記対象部品データ取得部によって取得された前記プレス成形結果予測データに基づいて、前記対象部品を構成する各要素の板厚変化率又は塑性ひずみの少なくともいずれか一方に関する前記対象部品のヒストグラムデータを作成する対象部品ヒストグラムデータ作成部と、
前記類似部品データ取得部によって取得された前記類似部品のヒストグラムデータと、前記対象部品ヒストグラムデータ作成部によって作成された前記対象部品のヒストグラムデータと、が最も類似するように、前記類似部品データと前記対象部品データに基づいて前記対象部品を構成する各要素の板厚変化率又は塑性ひずみの少なくともいずれか一方を調整するための調整量を決定する調整量決定部と、
前記調整量決定部によって決定された前記調整量に基づいて、前記プレス成形結果予測データを調整するプレス成形結果予測データ調整部と、を有する
ことを特徴とする。
【0013】
次に、本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のプレス成形結果予測データ調整システムにおいて、
前記調整量決定部は、前記類似部品及び前記対象部品のヒストグラムデータについて、同じ区間に属する要素の面積比率同士を比較し、各区画の小さい方の面積比率を全区画について足し合わせた総和を類似度として算出し、該類似度が最大になるように前記調整量を決定する
ことを特徴とする。
【0014】
次に、本願の請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載のプレス成形結果予測データ調整システムにおいて、
前記調整量決定部は、前記対象部品の全要素について等しい所定の調整量を決定する
ことを特徴とする。
【0015】
次に、本願の請求項4に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載のプレス成形結果予測データ調整システムにおいて、
前記類似部品と前記対象部品を構成するブランク材料が異なる場合、前記調整量決定部によって前記類似部品及び前記対象部品のヒストグラムデータを比較する前に、前記類似部品データ取得部によって取得された前記類似部品のヒストグラムデータの各区画の
上限値及び下限値を、前記類似部品を構成するブランク材料の破断伸び率に対する前記対象部品を構成するブランク材料の破断伸び率の比によって補正するヒストグラムデータ補正部を更に有する
ことを特徴とする。
【0016】
次に、本願の請求項5に記載の発明は、衝撃解析システムであって、
請求項1から4のいずれか1項において調整された前記プレス成形結果予測データを用いて前記対象部品の衝撃解析を行う
ことを特徴とする。
【0017】
次に、本願の請求項6に記載の発明は、
衝撃解析を行う対象部品のプレス成形結果予測データを調整するプレス成形結果予測データ調整プログラムであって、
コンピュータを
完成部品毎に、
当該部品を実際にプレス成形した際に生じた前記部品を構成する各要素の板厚変化率又は塑性ひずみの少なくともいずれか一方に関するヒストグラムデータを含む部品データが記憶された部品データ記憶部と、
前記部品データ記憶部に記憶された前記部品データから、前記対象部品と類似する類似部品のヒストグラムデータを含む類似部品データを取得する類似部品データ取得部と、
前記対象部品を構成する各要素の板厚変化率又は塑性ひずみの少なくともいずれか一方に関する前記プレス成形結果予測データを含む対象部品データを取得する対象部品データ取得部と、
前記対象部品データ取得部によって取得された前記プレス成形結果予測データに基づいて、前記対象部品を構成する各要素の板厚変化率又は塑性ひずみの少なくともいずれか一方に関する前記対象部品のヒストグラムデータを作成する対象部品ヒストグラムデータ作成部と、
前記類似部品データ取得部によって取得された前記類似部品のヒストグラムデータと、前記対象部品ヒストグラムデータ作成部によって作成された前記対象部品のヒストグラムデータと、が最も類似するように、前記類似部品データと前記対象部品データに基づいて前記対象部品を構成する各要素の板厚変化率又は塑性ひずみの少なくともいずれか一方を調整するための調整量を決定する調整量決定部と、
前記調整量決定部によって決定された前記調整量に基づいて、前記プレス成形結果予測データを調整するプレス成形結果予測データ調整部として機能させる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上の構成により、本願各請求項に係る発明によれば、次の効果が得られる。
【0019】
請求項1に係る発明によれば、対象部品のプレス成形結果予測データに基づいて、対象部品を構成する各要素の板厚変化率又は塑性ひずみに関する統計情報であるヒストグラムデータを作成し、類似部品と対象部品のヒストグラムデータが最も類似するように、対象部品を構成する各要素の板厚変化率又は塑性ひずみを調整するための調整量を決定し、該調整量に基づいて、プレス成形結果予測データを調整する。そのため、類似部品のヒストグラムデータとして、成形条件を最適化して実際にプレス成形装置でプレス成形を行って得られた完成プレス部品であって、割れ、しわ等の成形不具合が発生せず、スプリングバック等による寸法誤差が許容値以内であった類似部品に関するヒストグラムデータを用いた場合、上述のようなデータ調整によって、各種手法によって得られた対象部品のプレス成形結果予測データをより実際のプレス成形結果へ容易に近付けることができる。したがって、金型設計のノウハウの無い部品設計技術者であっても、より予測精度の高い衝撃解析を行うために必要な衝撃解析での初期条件として用いられる入力データを効率的に得ることができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、対象部品及び類似部品のヒストグラムデータ間の類似度を算出するために、同じ区間に属する要素の面積比率同士を比較している。これに対して、例えば、同じ区画に属する要素の個数を比較する場合には、要素間での面積の大小関係が無視されてしまうので、衝撃解析の予測精度が低下してしまう。また、同じ区画に属する要素の合計面積を比較する場合には、類似部品が対象部品の相似形であって全体のサイズが大きく異なると、類似度が低く評価されるので、プレス成形の影響を予測するのに有効な類似部品のデータを利用できないおそれがある。したがって、本発明によれば、衝撃解析の予測精度の低下や類似部品データの利用可能性の低下を防止することができる。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、対象部品の全要素について一律に同じ調整量で調整することができるため、要素毎に調整量が異なる場合よりも、より効率的に対象部品データの調整が可能である。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、対象部品と類似部品が材料特性の異なるブランク材料から構成されていても、各ブランク材料の破断伸び率に基づいて類似部品のヒストグラムデータを補正することで、同様の材料特性を有するブランク材料から構成された類似部品として対象部品と比較することができるので、類似部品としてプレス成形結果予測データを利用可能な部品の範囲が拡張される。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、調整後プレス成形結果予測データを用いて、効率的により予測精度の高い衝撃解析を行うことができる。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、請求項1に係るシステムの発明と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るプレス成形結果予測データ調整システム及びプログラムの実施形態について説明する。
【0027】
(1)プレス成形結果予測データ調整システムの概要
図1は、プレス成形結果予測データ調整システム1の中心となるコンピュータ10の構成を示す図である。このコンピュータ10は、CPU等の処理装置11と、メモリ又はハードディスク等の記憶装置12と、キーボード、マウス又はCD−ROMドライブ等の入力装置13と、液晶ディスプレイ又はプリンタ等の出力装置14と、を有する。
【0028】
(1−1)処理装置
図2は、
図1の処理装置11の構成を示すブロック図である。
【0029】
処理装置11は、衝撃解析を行う対象部品に関するプレス成形結果予測データと、対象部品と類似する類似部品に関する類似部品データと、を記憶装置12から取得するデータ取得部100と、該データ取得部100によって取得されたプレス成形結果予測データを調整するプレス成形結果予測データ調整部200と、該プレス成形結果予測データ調整部200によって調整された調整後プレス成形結果予測データに基づいて衝撃解析を行う衝撃解析部300と、該衝撃解析部300によって得られた衝撃解析結果を表示する結果表示部400と、を備えている。
【0030】
プレス成形結果予測データ調整部200は、類似部品ヒストグラムデータ補正部220対象部品と類似部品の比較対象となるデータを選択する比較対象データ選択部210と、データ取得部100により取得されたプレス成形結果予測データ等に基づいて類似部品データに含まれる類似部品ヒストグラムデータを補正する類似部品ヒストグラムデータ補正部220と、該比較対象データ選択部210によって選択された対象部品のプレス成形結果予測データに基づいて対象部品のヒストグラムデータを作成する対象部品ヒストグラムデータ作成部230と、類似部品ヒストグラムデータ補正部220によって補正された類似部品の板厚変化率のヒストグラムデータと対象部品ヒストグラムデータ作成部230によって作成された対象部品の板厚変化率のヒストグラムデータとを比較してこれらのヒストグラムデータの類似度が最大となるように板厚変化率の調整量を決定する板厚変化率調整量決定部240と、類似部品ヒストグラムデータ補正部220によって補正された類似部品の塑性ひずみのヒストグラムデータと対象部品ヒストグラムデータ作成部230によって作成された対象部品の塑性ひずみのヒストグラムデータとを比較して類似度が最大となるように塑性ひずみの調整量を決定する塑性ひずみ調整量決定部250と、これら板厚変化率調整量決定部240及び塑性ひずみ調整量決定部250によって決定された板厚変化率及び塑性ひずみの調整量に基づいてプレス成形結果予測データを調整するプレス成形結果予測データ調整部260と、を備えている。
【0031】
なお、処理装置11は、対象部品のプレス成形解析を行い、プレス成形結果予測データを出力するプレス成形解析部(図示しない)を備えてもよい。
【0032】
(1−2)記憶装置
図3は、
図1の記憶装置12の構成を概略的に示すブロック図である。記憶装置12はプログラム記憶部12Aと対象部品データ記憶部12Bと部品工法データ記憶部12Cとから主に構成されている。
【0033】
プログラム記憶部12Aは、
図4に示すように、対象部品データ取得プログラムPR1、類似部品データ検索プログラムPR2、プレス成形結果予測データ調整プログラムPR3、衝撃解析プログラムPR4、結果表示プログラムPR5をそれぞれ格納するプログラム格納部12A
1〜12A
5を有している。プログラムPR1及びPR2は、上述の処理装置11におけるデータ取得部100によって実行され、他の各プログラムPR3〜PR5は、上述の処理装置11におけるプレス成形結果予測データ調整部200、衝撃解析部300及び結果表示部400によってそれぞれ実行される。
【0034】
対象部品データ記憶部12Bは、
図5に示すように、ブランク材料情報データDT101、プレス成形結果予測データDT102、調整後プレス成形結果予測データDT103をそれぞれ格納するデータ格納部12B
1〜12B
3を有している。
【0035】
部品工法データ記憶部12Cは、実際にプレス成形装置でプレス成形を行って得られた完成プレス部品であって、割れ、しわ等の成形性不具合が発生せず、スプリングバック等による寸法誤差が許容値以内であったもののプレス成形に関するデータを部品毎に複数記憶するデータベースである。
図6に示すように、部品工法データ記憶部12Cは、登録キーデータDT201、プレス方向設定データDT202、特徴形状認識判定データDT203、プレス工法データDT204、プレス成形条件データDT205、ビード情報データDT206、金型形状作成パラメータデータDT207、ブランクライン作成パラメータデータDT208及び調整条件データDT209をそれぞれ格納するデータ格納部12C
1〜12C
9を有している。
【0036】
ここで、
図7を参照しながら、対象部品データ記憶部12Bに記憶された上述のデータDT101〜DT103について詳細に説明する。
【0037】
(1−2−1)ブランク材料情報データ
ブランク材料情報データDT101は、
図7(a)に示すように、対象部品のプレス成形において素材として用いられるブランクに関する材料情報、すなわち材料名称、降伏点、引っ張り強さ及び破断伸び率等のデータから構成されている。
【0038】
(1−2−2)プレス成形結果予測データ
プレス成形結果予測データDT102は、
図7(b)に示すように、プレス成形解析等の各種手法によって得られた対象部品のプレス成形の影響を示す板厚分布及びたわみ分布を表す調整前のデータ、すなわち要素番号、各要素の板厚変化率、塑性ひずみ及び要素面積等のデータから構成されている。なお、このプレス成形結果予測データDT102には、対象部品のトリム前ドロー成形品及び最終製品の少なくとも一方に関するデータが含まれている。
【0039】
(1−2−3)調整後プレス成形結果予測データ
調整後プレス成形結果予測データDT103は、実際のプレス成形結果により近付けるための調整を行ったプレス成形結果予測データであって、
図7(c)に示すように、プレス成形結果予測データDT102と同様に、要素番号、各要素の板厚変化率、塑性ひずみ及び要素面積等のデータから構成されている。
【0040】
次に、
図8、
図9を参照しながら、部品工法データ記憶部12Cに記憶された上述のデータDT201〜DT209について詳細に説明する。
【0041】
(1−3−1)登録キーデータ
図8に示すように、登録キーデータDT201は、各部品の部品名、サイズ、材質、板厚等のパラメータから構成されている。
【0042】
(1−3−2)プレス方向設定データ
プレス方向設定データDT202は、プレス金型のプレス方向を設定するためのデータである。具体的には、
図7に示すように、決定タイプ、プレス振り角度の原点移動量、X・Y・Z軸ベクトル等のパラメータから構成されている。
【0043】
(1−3−3)特徴形状認識判定データ
特徴形状認識判定データDT203は、特徴形状を認識するためのデータであり、具体的には、参照部位、パンチ肩R判定許容値、ダイR判定許容値、エンボス深さ判定値等のパラメータから構成されている。
【0044】
(1−3−4)プレス工法データ
プレス工法データDT204は、フォーム成形又はドロー成形のタイプ、パッドの有無等のパラメータから構成されている。
【0045】
(1−3−5)プレス成形条件データ
プレス成形条件データDT205は、プレス成形時の成形条件であるホルダ荷重、パッド荷重等のパラメータから構成されている。
【0046】
(1−3−6)ビード情報データ
ビード情報データDT206は、ビードの有無、パンチ開口線からのオフセット距離、最小ビード長、ビード指定グループ数等のパラメータから構成されている。ビード指定グループ情報は、グループ情報(グループ番号、グループ名称、グループ判定タイプ、グループ判定許容値)、ビード配置位置情報(平均方向ベクトル、中心位置座標)、ビード配置方法(ON又はOFF)、ビードタイプ(丸、角又はステップ)、断面形状パラメータ(基準位置、エッジ半径、中心半径、深さ)、ビード最大荷重、総ビード長さ等のパラメータから構成されている。
【0047】
(1−3−7)金型形状作成パラメータデータ
金型形状作成パラメータデータDT207は、金型形状タイプ、しわ押さえ面パラメータ(しわ押さえ面タイプ(平面又は曲面又は参照部位(天板部又はフランジ部))、作成位置差分指定量、曲面タイプ(円柱又は円錐)、曲面定義パラメータ1、2)及び余肉形状パラメータ(二次元パンチ開口線オフセット距離、パッド部・フランジ部・縦壁部の余肉断面パラメータ)等のパラメータから構成されている。
【0048】
(1−3−8)ブランクライン作成パラメータデータ
ブランクライン作成パラメータデータDT208は、ブランクタイプ、オフセット量、矩形サイズ最小値、カットポイント移動許容値、カットライン作成許容値等のパラメータから構成されている。
【0049】
(1−3−9)調整条件データ
図9に示すように、調整条件データDT209は、ブランク材料情報、板厚変化率情報及び塑性ひずみ情報から構成されている。ブランク材料情報は、材料名称、降伏点、引っ張り強さ及び破断伸び率等のパラメータから構成されている。また、板厚変化率情報は、初期値、最小値、最大値、平均値、標準偏差及びヒストグラムデータ等のパラメータから構成されている。更に、塑性ひずみ情報は、最大値、平均値、標準偏差及びヒストグラムデータ等のパラメータから構成されている。なお、この調整条件データDT209には、各部品のトリム前ドロー成形品及びトリム後ドロー成形品及び最終製品に関する上述の板厚変化率情報と塑性ひずみ情報がそれぞれ含まれている。
【0050】
なお、上述の部品工法データ記憶部12Cに記憶されたデータベースのうち、データDT201〜DT208は、本出願人が先の出願(特願2015−072828号)で提案する方法において、簡易的なプレス成形解析に用いられるプレス金型形状を自動作成するのに必要なデータを含んでおり、上述のデータ構造に限るものではない。
【0051】
図10に示すように、上述の板厚変化率情報及び塑性ひずみ情報のヒストグラムデータは、区間番号、各区間の下限値と上限値、及び各区間に含まれる要素の面積比率等のパラメータから構成されている。
図11(a)、
図11(b)は、
図10の板厚変化率と塑性ひずみのヒストグラムデータをそれぞれグラフ化したヒストグラムである。
【0052】
なお、ヒストグラムデータの区画数は、例えば、20程度にすればよい。区画数が過多の場合、調整の刻み量が小さくなり、調整効果が出にくく、また、最適な調整量を探索するのに要する時間が長くなる。区画数が過少の場合、ヒストグラムの分布形状を表現できず、また、調整効果が極端に出てしまうおそれがある。
【0053】
(1−3)入力装置
入力装置13は、上述の各種データの入力、データ調整や衝撃解析時の各種条件の設定等に用いられる。
【0054】
(1−4)出力装置
出力装置14には、入力設定画面、板厚分布、ひずみ分布、衝撃解析結果等が表示される。例えば、出力装置14には、
図12に示すように、板厚に応じて色分けされたプレス成形品の板厚分布がグラフィック表示される。
【0055】
(3)プレス成形品の製造工程
対象部品であるプレス成形品は、複数の製造工程を経て最終製品となる。この製造工程ついて、
図13〜
図14を参照しながら説明する。なお、当該実施形態では、自動車のリアフェンダーパネルをプレス成形品の例としている。
【0056】
まず、複数の製造工程のうちの第1工程であるドロー成形(絞り成形)について説明する。
図13に示すように、ドロー成形は、ダイD、しわ押さえ(ホルダ)F及びパンチPを備えるプレス成形装置によって行われる。上型となるダイDは、その下面に成形品の形状に合わせた形状のキャビティCを有する。下型となるしわ押さえFは、その中央にダイDのキャビティCの輪郭にほぼ沿った形状の開口を有し、その周囲の上面にダイDのキャビティCの周囲の面に合わせた形状のしわ押さえ面を有する。同じく下型となるパンチPは、その外形はしわ押さえFの開口の形状に合わせた形状で若干小さく形成されており、その上面はダイDのキャビティCの形状に合わせた凸形状を有する。なお、ダイDとしわ押さえFには、必要に応じて図示しないビードを設けてもよい。
【0057】
このプレス成形装置を用いて、素材となる平板状のブランクBの周囲をダイDのキャビティCの周囲の下面としわ押さえFの上面との間で所定の圧力で挟んでしわ押さえを行う。次に、パンチPを上昇させ、ブランクBをダイDのキャビティC内に押し込み、ブランクBをダイDとパンチPとの間に挟んで押圧する。
【0058】
このプレス成形装置によれば、
図14(a)に示すようなドロー成形品D
1が得られる。この成形品D
1は、製品面部a、余肉面部b及びしわ押さえ面部cから構成されており、製品面部aと余肉面部bは、上述のプレス成形装置のパンチPとダイDとの間のキャビティC内で成形され、しわ押さえ面部cは、しわ押さえFとダイDとの間で成形される。余肉面部bとしわ押さえ面部cの境界線であるパンチ開口線L
Aは、パンチPの上面周縁部とダイDのキャビティCの開口端部との間で成形される。
【0059】
なお、ドロー成形品D
1は、金型形状、しわ押さえ力、ビードの有無や形状等の成形条件が適切でないと、余肉面部bに割れやしわ等の成形不具合が生じるおそれがある。
【0060】
次に、第2工程として、このドロー成形品D
1を製品面部aの外形線である製品形状外形線L
Sに沿って打ち抜くと、
図14(b)に示すようなトリム後ドロー成形品D
2を得ることができる。
【0061】
更に、トリム後ドロー成形品D
2に対して、第3工程から第n工程として、例えば、フォーム成形、穴開け加工等の工程を実施することによって、
図14(c)に示すような最終製品Sが得られる。
【0062】
(4)プレス成形結果予測データ調整システムによるプレス成形結果予測データの調整方法
プレス成形結果予測データ調整システムによる対象部品の調整後プレス成形結果予測データの調整方法について以下に説明する。
【0063】
(4−1)プレス成形結果予測データ調整方法の全体的な流れ
図15のフローチャートに示されたメインルーチンの処理手順に従って、プレス金型形状のプレス成形結果予測データ調整方法の全体的な流れについて説明する。
【0064】
なお、
図15のプレス成形結果予測データ調整方法を実行するにあたり、対象部品データ記憶部12Bには、対象部品データDT101〜DT102が予め格納されており、部品工法データ記憶部12Cには、部品工法データDT201〜DT209が予め格納されている。
【0065】
まず、データ取得部100によって、衝撃解析の対象部品に類似する類似部品に関する類似部品データを部品工法データ記憶部12Cから取得する(ステップS1)。
【0066】
このとき、対象部品に類似する類似部品は、例えば、部品名、サイズ、材質(ブランク材料)等の属性をキーとして部品工法データ記憶部12Cに記憶された部品工法データを検索する。例えば、まず、同じ部品名の部品を検索し、次に、形状とサイズが似ている部品に絞り検索を行い、更に同種類の材質の部品を選択する。絞り検索の結果、形状とサイズが似ている部品として、同種類の材質の部品が無く、異なる材質の部品しかなければ、材料特性カーブの形状がより似ている材質の部品を選ぶのがよい。
【0067】
次に、データ取得部100によって、対象部品のプレス成形結果予測データを含む対象部品データを対象部品データ記憶部12Bから取得する(ステップS2)。
【0068】
最後に、プレス成形結果予測データ調整部200によって、取得された類似部品データ及び対象部品データに基づいて対象部品のプレス成形結果予測データを調整する(ステップS3)。
【0069】
以上により、各種手法で得られたプレス成形結果予測データに基づいて衝撃解析で利用可能なプレス成形結果予測データを調整することができる。
【0070】
(4−2)プレス成形結果予測データの調整方法
次に、上述のフローチャートのサブルーチンであるプレス成形結果予測データ調整(ステップS3)について、
図16のフローチャートに従って説明する。
【0071】
まず、対象部品データ及び類似部品データに実際に含まれているデータが複数の製造工程のどの段階におけるもの(トリム前ドロー成形品、トリム後ドロー成形品又は最終製品)のデータであるかに応じて、対象部品及び類似部品の比較対象となる板厚変化率及び塑性ひずみのヒストグラムデータをそれぞれ選択する(ステップS11)。
【0072】
次に、対象部品と類似部品のブランクの材料が異なる場合、類似部品のヒストグラムデータを類似部品が対象部品とブランクの材料が同じものとして扱えるように、データ取得部100により取得された対象部品と類似部品のブランク材料情報に基づいて、類似部品の板厚変化率及び塑性ひずみのヒストグラムデータを補正する(ステップS12)。
【0073】
次に、データ取得部100により取得された対象部品のプレス成形結果予測データに基づいて、対象部品の板厚変化率及び塑性ひずみのヒストグラムデータをそれぞれ作成する(ステップS13)。
【0074】
次に、ステップS12で選択された類似部品の板厚変化率ヒストグラムデータと、ステップS13で作成された対象部品の板厚変化率ヒストグラムデータとを比較して、対象部品の板厚変化率の調整量を決定する(ステップS14)。
【0075】
次に、ステップS12で選択された類似部品の塑性ひずみヒストグラムデータと、ステップS13で作成された対象部品の塑性ひずみヒストグラムデータとを比較して、対象部品の塑性ひずみの調整量を決定する(ステップS15)。
【0076】
次に、ステップS14及びステップS15で決定された板厚変化率及び塑性ひずみの調整量に基づいて、対象部品のプレス成形結果予測データを調整し、当該サブルーチンを終了して上述のメインルーチンに戻る(ステップS16)。
【0077】
以上により、対象部品のプレス成形結果予測データを調整することができた。
【0078】
(4−3)比較対象データ選択
図17のフローチャートに従って、比較対象データ選択部210による比較対象データの選択方法(ステップS11)について、
図35〜
図39を参照しながら説明する。
【0079】
まず、対象部品データに対象部品の最終製品に関するプレス成形結果予測データがあるか否かを判定する(ステップS21)。
【0080】
ステップS21において、対象部品データに対象部品の最終製品に関するプレス成形結果予測データがあると判定されると、対象部品のヒストグラムデータを作成するためのデータとして、この対象部品の最終製品に関するプレス成形結果予測データを選択する(ステップS22)。
【0081】
次に、類似部品データに類似部品の最終製品(
図35参照)のヒストグラムデータがあるか否かを判定する(ステップS23)。
【0082】
ステップS23において、類似部品データに最終製品のヒストグラムデータがあると判定されると、対象部品のヒストグラムデータとの比較対象として、この類似部品の最終製品に関するヒストグラムデータを選択する(ステップS24)。
【0083】
また、ステップS23において、類似部品データに最終製品のヒストグラムデータが無いと判定されると、対象部品のヒストグラムデータとの比較対象として、類似部品のトリム後のドロー成形品に関するヒストグラムデータを選択する(ステップS25)。
【0084】
一方で、ステップS21において、対象部品データに対象部品の最終製品に関するプレス成形結果予測データが無いと判定されると、対象部品のヒストグラムデータとして、対象部品のトリム前のドロー成形品に関するプレス成形結果予測データを選択する(ステップS26)。
【0085】
次に、類似部品データに類似部品のトリム前ドロー成形品に関するヒストグラムデータがあるか否かを判定する(ステップS27)。
【0086】
ステップS27において、類似部品データに類似部品のトリム前ドロー成形品に関するヒストグラムデータがあると判定されると、対象部品のヒストグラムデータとの比較対象として、この類似部品のトリム前ドロー成形品に関するヒストグラムデータを選択する(ステップS28)。
【0087】
また、ステップS27において、類似部品データに類似部品のトリム前ドロー成形品(
図36参照)に関するヒストグラムデータが無いと判定されると、対象部品のヒストグラムデータとして、対象部品データのトリム前ドロー成形品(
図37参照)の製品部に含まれる要素のみ(
図38参照)に関するプレス成形結果予測データを選択する(ステップS29)。
【0088】
次に、対象部品のヒストグラムデータの比較対象として、類似部品の最終製品(
図35参照)に関するヒストグラムデータを選択する(ステップS40)。
【0089】
そして、ステップS24、ステップS25、ステップS28又はステップS30において対象部品のヒストグラムデータの比較対象として、いずれかの類似部品のヒストグラムデータを選択した後、当該サブルーチンを終了して上述のメインルーチンに戻る。
【0090】
以上により、比較対象データ選択部210によって比較対象となる対象部品と類似部品のヒストグラムデータをそれぞれ選択することができる。
【0091】
(4−4)類似部品ヒストグラムデータ補正方法
上述のように比較対象データ選択部210によって選択された類似部品のヒストグラムデータを、
図18のフローチャートに従って、類似部品ヒストグラムデータ補正部220によって補正する方法(ステップS12)について、
図21〜
図22を参照しながら説明する。
【0092】
まず、次式(1)によって、類似部品のヒストグラムデータを補正するための調整スケールSを算出する(ステップS31)。
【0094】
例えば、対象部品のブランク材料が軟鋼板(破断伸び率=0.460)であり、類似部品のブランク材料が高張力鋼板(ハイテン)(破断伸び率=0.255)である場合、調整スケールS=0.255/0.460=0.554となる。
【0095】
次に、
図21に示すように、算出された調整スケールに基づいて類似部品のヒストグラムデータの各区間の上限値A
max及び下限値A
minを次式(2)によってそれぞれ補正する(ステップS32)。A’
max、A’
minは、補正後の上限値と下限値をそれぞれ表す。なお、
図21には、板厚変化率のヒストグラムデータについて補正を行う例が示されているが、塑性ひずみのヒストグラムデータについても同様に補正を行うことができる。但し、塑性ひずみのヒストグラムデータを補正する場合、実際には下限値A
minはゼロであるため、上限値A
maxのみを補正することとなる。
【0097】
図21の補正前後のヒストグラムデータをグラフ化したヒスグラムは、
図22(a)、(b)に示すように、縦軸は変わらずに、横軸のみが補正される。
【0098】
以上により、類似部品ヒストグラムデータ補正部220によって、類似部品のヒストグラムデータを補正することができる。
【0099】
(4−5)板厚変化率調整量決定方法
図19のフローチャートに従って、板厚変化率調整部240による板厚変化率の調整量の決定方法(ステップS14)について、
図23〜
図28を参照しながら説明する。
【0100】
まず、次式(3)によって、対象部品を構成する各要素iの板厚t
iを板厚変化率β
iへ変換する(ステップS41)。なお、t
0は、板厚の初期値、すなわち、ドロー成形前のブランク材料の板厚を表す。
【0102】
ここで、板厚変化率βの平均値と標準偏差は、次式(4)、(5)によってそれぞれ算出される。なお、Neは、対象部品を構成する全要素数を表す。
【0105】
次に、板厚変化率のヒストグラムデータの全区間のうち、−標準偏差から+標準偏差までの区間を板厚変化率の調整範囲として設定する(ステップS42)。
【0106】
次に、対象部品と類似部品のヒストグラムデータの類似度が最大となる調整量の探索を開始する。まず、カウンタjに0を設定し、次式(6)で求まる刻み量Δbによって、各要素iの調整前の板厚変化率β
isimを次式(7)に従って調整後の板厚変化率β
iに調整する(ステップS43)。ここで、Aは、設定された調整範囲の刻み数を表し、ヒストグラムデータの区画数B以上、例えば、B=20のとき、A=20〜50程度に設定すればよい。
【0109】
次に、次式(8)に基づいて、区画数Bから区画の幅wを設定し、対象部品の調整後の板厚変化率ヒストグラムデータH
1[i]を作成する(ステップS44)。
【0111】
次に、対象部品の調整後の板厚変化率ヒストグラムデータH
1[i]と、類似部品の板厚変化率ヒストグラムデータH
2[i]とを比較する(ステップS45)。
【0112】
次に、次式(9)に基づいて、これらヒストグラムデータH
1[i]、H
2[i]の類似度S
jを算出する(ステップS46)。なお、ヒストグラムデータH
1[i]、H
2[i]が完全一致のとき、類似度S
j=1.0となる。
【0114】
次に、類似度S
jが最大値S
maxよりも大きい場合、最大値S
maxの値をS
jに更新する(ステップS47)。また、カウンタj
maxの値をこのときのカウンタjに更新する。なお、カウンタj=0のとき、最大値S
max=0に設定されている。
【0115】
次に、板厚変化率の調整が完了したか否か、すなわちカウンタjが刻み数Aより大きいか否かを判定する(ステップS48)。
【0116】
ステップS48で調整が完了していない(j≦A)と判定されると、カウンタjに1を加算(j=j+1)してステップS43に戻る。
【0117】
また、ステップS48で調整が完了したと判定されると、類似度S
jが最大値S
maxとなったときのカウンタj
maxに基づいて、次式(10)により、板厚変化率の調整量Δβ
maxを決定する(ステップS49)。その後、当該サブルーチンを終了して上述のメインルーチンに戻る。
【0119】
以上により、板厚変化率調整量決定部240によって板厚変化率の調整量を決定することができる。
【0120】
例えば、
図23に示すような板厚分布を有する類似部品と、
図24に示すような調整前の板厚分布を有する対象部品とに関する板厚変化率のヒストグラムデータをグラフ化して比較すると、
図26に示すようになる。ここで、区画数B=20、標準偏差(シグマ)=0.033、刻み数A=50、刻み量Δb=0.00132として類似度を探索すると、
図28に示すように、カウンタj
max=12で類似度S
jが最大値S
max=0.42となり、このとき、調整量Δβ
max=−0.0185に決定される。この調整量Δβ
maxによって調整された類似部品と対象部品のヒストグラムデータをグラフ化して比較すると、
図27に示すようになる。また、調整後の対象部品の板厚分布は、
図25に示すようになる。
【0121】
(4−6)塑性ひずみ調整量決定方法
図20のフローチャートに従って、塑性ひずみ調整量決定部250による塑性ひずみの調整量の決定方法(ステップS15)について、
図29〜
図34を参照しながら説明する。
【0122】
ここで、各要素iの塑性ひずみep
iに基づいて、塑性ひずみepの平均値と標準偏差は、次式(11)、(12)によってそれぞれ算出される。なお、Neは、対象部品を構成する全要素数を表す。
【0125】
まず、塑性ひずみのヒストグラムデータの全区間のうち、−標準偏差から+標準偏差までの区間を塑性ひずみの調整範囲として設定する(ステップS51)。
【0126】
次に、対象部品と類似部品の塑性ひずみヒストグラムデータの類似度が最大となる調整量の探索を開始する。まずは、カウンタjに0を設定し、次式(13)で求まる刻み量Δbによって、各要素iの調整前の塑性ひずみep
isimを次式(14)に従って調整後の塑性ひずみep
iに調整する(ステップS52)。ここで、Aは、設定された調整範囲の刻み数を表し、ヒストグラムデータの区画数B以上、例えば、B=20のとき、A=20〜50程度に設定されている。
【0129】
次に、次式(15)に基づいて、区画数Bから区画の幅wを設定して対象部品の調整後の塑性ひずみヒストグラムデータH
3[i]を作成する(ステップS53)。
【0131】
次に、対象部品の調整後の塑性ひずみヒストグラムデータH
3[i]と、類似部品の塑性ひずみヒストグラムデータH
4[i]とを比較する(ステップS54)。
【0132】
次に、次式(16)に基づいて、これらヒストグラムデータH
3[i]、H
4[i]の類似度S
jを算出する(ステップS55)。なお、ヒストグラムデータH
3[i]、H
4[i]が完全一致のとき、類似度S
j=1.0となる。
【0134】
次に、類似度S
jが最大値S
maxよりも大きい場合、最大値S
maxの値をS
jに更新する(ステップS56)。また、カウンタj
maxの値をこのときのカウンタjに更新する。なお、カウンタj=0のとき、最大値S
max=0に設定されている。
【0135】
次に、塑性ひずみの調整が完了したか否か、すなわちカウンタjが刻み数Aより大きいか否かを判定する(ステップS57)。
【0136】
ステップS57で調整が完了していない(j≦A)と判定されると、カウンタjに1を加算(j=j+1)してステップS52に戻る。
【0137】
また、ステップS57で調整が完了したと判定されると、類似度S
jが最大値S
maxとなったときのカウンタj
maxに基づいて、次式(17)により、塑性ひずみの調整量Δep
maxを決定する(ステップS58)。その後、当該サブルーチンを終了して上述のメインルーチンに戻る。
【0139】
以上により、塑性ひずみ調整量決定部250によって塑性ひずみの調整量を決定することができる。
【0140】
例えば、
図29に示すようなひずみ分布を有する類似部品と、
図30に示すような調整前のひずみ分布を有する対象部品とに関する塑性ひずみのヒストグラムデータをグラフ化して比較すると、
図32に示すようになる。ここで、区画数B=20、標準偏差(シグマ)=0.0527、刻み数A=50、刻み量Δb=0.0021として類似度を探索すると、
図34に示すように、カウンタj
max=35で類似度S
jが最大値S
max=0.43となり、このとき、調整量Δep
max=+0.019に決定される。この調整量Δep
maxによって調整された類似部品と対象部品のヒストグラムデータをグラフ化して比較すると、
図33に示すようになる。また、調整後の対象部品のひずみ分布は、
図31に示すようになる。
【0141】
(5)プレス成形結果予測データ調整システムの特徴
プレス成形結果予測データ調整システム1によれば、対象部品のプレス成形結果予測データに基づいて、対象部品を構成する各要素の板厚変化率又は塑性ひずみに関する統計情報であるヒストグラムデータを作成し、類似部品と対象部品のヒストグラムデータが最も類似するように、対象部品を構成する各要素の板厚変化率又は塑性ひずみを調整するための調整量を決定し、該調整量に基づいて、プレス成形結果予測データを調整する。そのため、類似部品のヒストグラムデータとして、成形条件を最適化して実際にプレス成形装置でプレス成形を行って得られた完成プレス部品であって、割れ、しわ等の成形不具合が発生せず、スプリングバック等による寸法誤差が許容値以内であった類似部品に関するヒストグラムデータを用いた場合、上述のようなデータ調整によって、各種手法によって得られた対象部品のプレス成形結果予測データをより実際のプレス成形結果へ容易に近付けることができる。したがって、金型設計のノウハウの無い部品設計技術者であっても、より予測精度の高い衝撃解析を行うために必要な衝撃解析での初期条件として用いられる入力データを効率的に得ることができる。
【0142】
また、プレス成形結果予測データ調整システム1によれば、対象部品及び類似部品のヒストグラムデータ間の類似度を算出するために、同じ区間に属する要素の面積比率同士を比較している。これに対して、例えば、同じ区画に属する要素の個数を比較する場合には、要素間での面積の大小関係が無視されてしまうので、衝撃解析の予測精度が低下してしまう。また、同じ区画に属する要素の合計面積を比較する場合には、類似部品が対象部品の相似形であって全体のサイズが大きく異なると、類似度が低く評価されるので、プレス成形の影響を予測するのに有効な類似部品のデータを利用できないおそれがある。したがって、本発明によれば、衝撃解析の予測精度の低下や類似部品データの利用可能性の低下を防止することができる。
【0143】
また、プレス成形結果予測データ調整システム1によれば、対象部品の全要素について一律に同じ調整量で調整することができるため、要素毎に調整量が異なる場合よりも、より効率的に対象部品データの調整が可能である。
【0144】
更に、プレス成形結果予測データ調整システム1によれば、対象部品と類似部品が材料特性の異なるブランク材料から構成されていても、各ブランク材料の破断伸び率に基づいて類似部品のヒストグラムデータを補正することで、同様の材料特性を有するブランク材料から構成された類似部品として対象部品と比較することができるので、類似部品としてプレス成形結果予測データを利用可能な部品の範囲が拡張される。
【0145】
なお、本発明は例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【0146】
例えば、対象部品と類似部品のヒストグラムデータについて、同じ区間に属する要素の面積比率同士を比較し、各区画の小さい方の面積比率を全区画について足し合わせた総和を類似度として算出し、この類似度が最大となるように対象部品の板厚変化率又は塑性ひずみの調整量を決定したが、この調整量の決定方法はこれに限るものではない。例えば、ヒストグラムデータを比較して各区間の誤差を算出し、算出された誤差の二乗和平均が最小となるように、対象部品の板厚変化率又は塑性ひずみの調整量を決定してもよい。
【0147】
また、部品データに含まれる板厚変化率等のヒストグラムデータは、例えば、3次元測定器等の測定器によって測定された板厚等の実測値に基づくものであってもよい。
【解決手段】部品毎に板厚変化率又は塑性ひずみに関するヒストグラムデータを含む部品データが記憶された部品データ記憶部12と、類似部品のヒストグラムデータを含む類似部品データ及び対象部品の板厚変化率又は塑性ひずみに関するプレス成形結果予測データを含む対象部品データを取得するデータ取得部100と、対象部品のヒストグラムデータを作成する対象部品ヒストグラムデータ作成部230と、類似部品及び対象部品のヒストグラムデータが最も類似するように、対象部品の各要素の板厚変化率又は塑性ひずみの調整量を決定する板厚変化率調整量決定部240及び塑性ひずみ調整量決定部250と、調整量に基づいてプレス成形結果予測データを調整するプレス成形結果予測データ調整部260と、を有する。