特許第5933808号(P5933808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5933808メタ物質のコイル基盤人工原子、それを含むメタ物質及び素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933808
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】メタ物質のコイル基盤人工原子、それを含むメタ物質及び素子
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/00 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
   H01P1/00 Z
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-500364(P2015-500364)
(86)(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公表番号】特表2015-511794(P2015-511794A)
(43)【公表日】2015年4月20日
(86)【国際出願番号】KR2013002079
(87)【国際公開番号】WO2013137669
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2014年11月17日
(31)【優先権主張番号】61/611,672
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10-2013-0019372
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503447036
【氏名又は名称】サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】513171068
【氏名又は名称】シティー ユニバーシティ オブ ホンコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハン,スン−フン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジェンセン ツァン−ハン
(72)【発明者】
【氏名】リャン,ジシャン
【審査官】 岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/026907(WO,A1)
【文献】 特開2011−097334(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/026908(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00−1/219
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空間をコイリングする第1コイリング部と、
第2空間をコイリングし、前記第1コイリング部と連結された第2コイリング部と、を含み、
前記第1コイリング部及び第2コイリング部のうち少なくとも一つは、
波が進む複数個のチャネルが連続して連結されて形成されており、入射された前記波がジグザグに進んで出射するように構成される、メタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項2】
前記複数個のチャネル幅は、前記波の波長より小さいことを特徴とする請求項に記載のメタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項3】
前記波は、音波、電磁波及び弾性波のうち少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2に記載のメタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項4】
前記第1コイリング部及び第2コイリング部のうち少なくとも一つは、
空間を二次元及び三次元のうち少なくとも一つにコイリングすることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のメタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項5】
前記第1コイリング部と前記第2コイリング部とは、前記第1コイリング部と、前記第2コイリング部とが連結された地点を基準に回転対称であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のメタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項6】
第3空間をコイリングし、前記第1コイリング部及び第2コイリング部と連結された第3コイリング部と、
第4空間をコイリングし、前記第1コイリング部、第2コイリング部及び第3コイリング部と連結された第4コイリング部と、を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のメタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項7】
前記第1コイリング部、第2コイリング部、第3コイリング部及び第4コイリング部は、前記人工原子の中心で相互連結されていることを特徴とする請求項に記載のメタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項8】
前記人工原子の屈折率は、前記人工原子を進む波の経路長に比例することを特徴とする請求項またはに記載のメタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項9】
前記人工原子は、
特定周波数帯域の波について、有効密度及び有効体積弾性率のうち少なくとも一つが負であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載のメタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項10】
前記人工原子は、
特定周波数帯域の波について、負の屈折率を有することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載のメタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項11】
前記人工原子の格子定数は、前記波の波長より小さいことを特徴とする請求項10のいずれか1項に記載のメタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項12】
前記第3コイリング部と前記第4コイリング部とは、前記第3コイリング部と、前記第4コイリング部とが連結された地点を基準に回転対称であることを特徴とする請求項11のいずれか1項に記載のメタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項13】
第3空間をコイリングし、前記第1コイリング部及び第2コイリング部と連結された第3コイリング部をさらに含み、
前記第1コイリング部、第2コイリング部及び第3コイリング部は、前記人工原子の中心を基準に互いに回転対称であり、前記第1コイリング部、第2コイリング部及び第3コイリング部それぞれでの波の有効進行方向は、1つの二次元上に存在しないことを特徴とする請求項1に記載のメタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のメタ物質のコイル基盤人工原子が複数個配列されたメタ物質。
【請求項15】
前記複数個の人工原子は、一次元、二次元及び三次元のうち少なくとも1つの形態で配列されたことを特徴とする請求項14に記載のメタ物質。
【請求項16】
波が入射される入射部と、
前記波が出力される出射部と、
空間をコイリングさせ、前記入射部で入射された波がジグザグに進み、前記出射部を介して出力させるコイリング部と、を含み、
前記コイリング部は、前記波が進む複数個のチャネルが連続して連結されて形成されている、メタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項17】
第1空間をコイリングする第1コイリング部と、
第2空間をコイリングし、前記第1コイリング部と連結された第2コイリング部と、を含み、
前記第1コイリング部と前記第2コイリング部とは、前記第1コイリング部と、前記第2コイリング部とが連結された地点を基準に回転対称である、メタ物質のコイル基盤人工原子。
【請求項18】
第1空間をコイリングする第1コイリング部と、
第2空間をコイリングし、前記第1コイリング部と連結された第2コイリング部と、
第3空間をコイリングし、前記第1コイリング部及び第2コイリング部と連結された第3コイリング部と、を含むメタ物質のコイル基盤人工原子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイリングされた人工的な原子、それを配列して作られたメタ物質、及びそれを含んだ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
メタ物質とは、波長より小さい任意の大きさ及び形態にパターニングされる少なくとも1つの人工的な原子単位を含み、それらを人工的に配列して構造化させた物質である。メタ物質に含まれる各人工原子は、メタ物質に印加された電磁波または音波に対する応答として所定の特性を示す。
【0003】
結果として、メタ物質は、電磁波または音波に対して、自然界に存在しない任意の有効屈折率及び有効物質係数を有するように設計及び製作される。その結果、かようなメタ物質は、サブ波長フォーカシング(subwavelength focusing)、負の屈折(negative refraction)、異常な伝送(extraordinary transmission)、透明マント(invisibility cloaking)のような新たな現象を発生させる。
【0004】
かようなメタ物質によって生じる現象は、光子(photonic)結晶あるいは音響量子(phononic)結晶でも生じる。しかし、その場合、動作周波数が高い回折領域の近辺でのみかような現象が生じる。前記有効物質係数を利用した応用を期待し難いという問題がある。すなわち、人工原子の大きさが波長より十分に小さくならないように制約されるのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、コイリングされた人工原子を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題はまた、前記人工原子を含むメタ物質を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題はまた、前記メタ物質を含む素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一類型によるメタ物質のコイル基盤人工原子は、第1空間をコイリングする第1コイリング部と、第2空間をコイリングし、前記第1コイリング部と連結された第2コイリング部と、を含む。
【0009】
そして、前記第1コイリング部及び第2コイリング部のうち少なくとも一つは、入射された波がジグザグに進んで出射される。
【0010】
また、前記第1コイリング部及び第2コイリング部のうち少なくとも一つは、前記波が進む複数個のチャネルが連続的に連結されて形成されてもよい。
【0011】
そして、前記複数個のチャネルのうち隣接するチャネル間の波の進行方向は、互いに異なってもよい。
【0012】
また、前記複数個のチャネルのうち隣接するチャネルは、1枚のプレートによって分離されてもよい。
【0013】
そして、前記複数個のチャネルの幅は、前記波の波長より小さくともよい。
【0014】
また、前記第1コイリング部のチャネルと、前記第2コイリング部のチャネルは、連続的連結されもする。
【0015】
そして、前記波は、音波、電磁波及び弾性波のうち少なくとも一つでもある。
【0016】
また、前記第1コイリング部及び第2コイリング部のうち少なくとも一つは、空間を二次元及び三次元のうち少なくとも一つにコイリングすることができる。
【0017】
そして、前記第1コイリング部と、前記第2コイリング部は、前記第1コイリング部と、前記第2コイリング部とが連結された地点を基準に回転対称でもある。
【0018】
また、前記第1コイリング部と、前記第2コイリング部は、非等方性でもある。
【0019】
そして、前記第1コイリング部と、前記第2コイリング部は、等方性でもある。
【0020】
また、第3空間をコイリングし、前記第1コイリング部及び第2コイリング部と連結された第3コイリング部と、第4空間をコイリングし、前記第1コイリング部、第2コイリング部及び第3コイリング部と連結された第4コイリング部と、を含んでもよい。
【0021】
そして、前記第1コイリング部、第2コイリング部、第3コイリング部及び第4コイリング部は、前記人工原子の中心で相互連結されもする。
【0022】
また、前記人工原子は、等方性でもある。
【0023】
そして、前記人工原子の屈折率は、前記人工原子を進む波の経路長に比例する。
【0024】
また、前記人工原子の屈折率は、4以上でもある。
【0025】
そして、前記人工原子は、特定周波数帯域の波について、有効密度及び有効体積弾性率のうち少なくとも一つが負でもある。
【0026】
また、前記人工原子は、特定周波数帯域の波について、負の屈折率を有することができる。
【0027】
そして、前記人工原子の格子定数は、前記波の波長より小さくともよい。
【0028】
また、前記第3コイリング部と、前記第4コイリング部は、前記第3コイリング部と、前記第4コイリング部とが連結された地点を基準に回転対称でもある。
【0029】
そして、第3空間をコイリングし、前記第1コイリング部及び第2コイリング部と連結された第3コイリング部をさらに含み、前記第1コイリング部、第2コイリング部及び第3コイリング部は、前記人工原子の中心を基準に互いに回転対称であり、前記第1コイリング部、第2コイリング部及び第3コイリング部それぞれでの波の有効進行方向は、1つの二次元上に存在しない。
【0030】
一方、本発明の一実施形態によるメタ物質は、前述のコイル基盤人工原子が複数個配列され、前記メタ物質は、複数個の人工原子は、一次元、二次元及び三次元のうち少なくとも1つの形態で配列されてもよい。
【0031】
一方、本発明の一実施形態による素子は、前述のメタ物質を含み、前記メタ物質によって入射された波の特性を変換させる。
【0032】
一方、本発明の他の実施形態によるメタ物質のコイル基盤人工原子は、波が入射される入射部と、前記波が出力される出射部と、空間をコイリングさせ、前記入射部で入射された波がジグザグに進み、前記出射部を介して出力させるコイリング部と、を含む。
【0033】
そして、コイリング部は、前記波が進む複数個のチャネルが連続して連結されて形成されてもよい。
【0034】
また、前記複数個のチャネルを進む波の進行方向に係わる総計は、前記入射部から前記出射部への方向と同一である。
【0035】
そして、前記メタ物質構造体の屈折率は、前記コイリング部を進む波の経路長に比例する。
【0036】
一方、本発明のさらに他の実施形態によるメタ物質のコイル基盤人工原子は、波が入射される入射部と、前記波が出力される出射部と、前記入射部から前記出射部まで連結され、前記波の移動をガイドするコイリング部と、を含み、前記コイリング部を進む波の経路長は、前記入射部と前記出射部との直線距離より長い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】一実施形態によるコイリングされた人工原子を示す図面である。
図2A】本発明の一実施形態による二次元の人工原子を図示した図面である。
図2B図2Aに図示された二次元人工原子のコイリング効果を簡素化して表現した図面である。
図3A図2Aの二次元人工原子のバンド構造(周波数と波ベクトルとの関係)を示す図面である。
図3B図3Aの第1バンドのEFCs(equi−frequency contours)を示す図面である。
図3C図3Aの第2バンドのEFCs(equi−frequency contours)を示す図面である。
図3D図3Aの第3バンドのEFCs(equi−frequency contours)を示す図面である。
図4A図2Aの二次元人工原子の周波数による相対有効屈折率(実線)と、相対有効インピーダンス(点線)とを示したグラフである。
図4B図2Aの二次元人工原子の周波数による有効密度(実線)と、有効体積弾性率(点線)とを示したグラフである。
図5】一実施形態による三次元人工原子を概略的に図示した図面である。
図6図1に図示された一次元人工原子と、図2に図示された二次元人工原子との組み合わせによって生成されたプリズムを図示した図面である。
図7A】導波路上において、導波路の幅の半分以上を塞ぐ固体プレートが挿入された場合の波の圧力場パターンをシミュレーションした結果である。
図7B図7Aに図示された固体プレートの周辺に、一実施形態のメタ物質が配置されている場合の波の圧力場パターンをシミュレーションした結果である。
図8】一実施形態によるメタ物質で構成されたレンズを図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付された図面を参照し、開示されたコイリングされた人工原子、それを含んだメタ物質及び素子について詳細に説明する。
【0039】
図1は、一実施形態によるコイリングされた人工原子を示す図面である。図1を参照すれば、該人工原子は、波が入射される入射部120、前記波が出力される出射部140、及び空間をコイリングさせ、入射部120で入射された波がジグザグに進み、出射部140を介して外部に出力されるコイリング部130を含む。
【0040】
該人工原子100に入射される波は、音波でもある。音波は、遮断周波数なしに、サブ波長断面積のパーフォレーション(perforation)を進んでいく。また、音波は、スカラ場であるために、かようなパーフォレーションは、コイリングされているとしても、波は、くねくねした空間(curled space)で自由に進むことができる。
【0041】
かようなコイリング部130は、複数個のチャネル150,160,170が連続して連結され、空間をコイリングすることができる。隣接するチャネル間の波の進行方向は、互いに異なり、全体チャネルを進む波の進行方向に対するベクトル和は、入射部120から出射部140への方向と一致する。そして、コイリング部130は、前記複数個のチャネルで、空間を二次元または三次元にコイリングすることができる。
【0042】
例えば、コイリング部130が2つのチャネル150,160によって形成された場合、コイリング部130は、一端が入射部120と連結されており、波が第1方向に進むようにガイドする入射チャネル150、及び一端が出射部140と連結されており、波が第2方向に進むようにガイドする出射チャネル160を含んでもよい。また、コイリング部130は、入射チャネル150と、出射チャネル160との間に配置されながら、波が第3方向に進むようにガイドする少なくとも1つの中間チャネル170をさらに含んでもよい。
【0043】
隣接するチャネル間の波の進行方向は、互いに異なりもするが、全体チャネルを進む波の進行方向に対するベクトル和は、前記入射部120から出射部140への方向と同一である。ここで、前記入射部120と出射部140への方向を人工原子100に入射された波の有効進行方向とする。特に、コイリング部130が二次元で空間をコイリングする場合、入射部120を基準に、奇数番目のチャネルと、偶数番目のチャネルとの波の進行方向は、互いに異なるが、奇数番目のチャネル間の波の進行方向は、互いに同一であり、偶数番目のチャネル間の波の進行方向も互いに同一である。
【0044】
図1において、コイリング部130は、7個のチャネルで空間をコイリングした状態を図示している。具体的には、コイリング部130は、一端が入射部120と連結されており、波が第1方向に進むようにガイドする入射チャネル150、一端が入射チャネルと連結されており、波が第2方向に進むようにガイドする第1中間チャネル170a、一端が第1中間チャネル170aと連結されており、波が第3方向に進むようにガイドする第2中間チャネル170b、一端が第2中間チャネル170bと連結されており、波が第4方向に進むようにガイドする第3中間チャネル170c、一端が第3中間チャネル170cと連結されており、波が第5方向に進むようにガイドする第4中間チャネル170d、一端が第4中間チャネル170dと連結されており、波が第6方向に進むようにガイドする第5中間チャネル170e、及び一端が第5中間チャネル170eと連結され、他端が出射部140と連結されており、波が第7方向に進むようにガイドする出射チャネル160を含んでもよい。奇数番目のチャネル、すなわち、入射チャネル150、第2中間チャネル170b、第4中間チャネル170d及び出射チャネル160の波の進行方向は、互いに同じであり、偶数番目のチャネル、すなわち、第1中間チャネル170a、第3中間チャネル170c及び第5中間チャネル170eの波の進行方向も、互いに同じである。しかし、奇数番目のチャネルと、偶数番目のチャネルとの波の進行方向は、互いに異なるが、全体チャネルの波の進行方向に対するベクトルの和は、波の有効進行方向と一致する。図1でのチャネルは、一例示に過ぎず、チャネルの数及びチャネル内の波の進行方向は、人工原子100の特性によって変更されてもよい。すなわち、コイリング部のコイリング程度などは、波の特性を変更させる目的によって異なりうる。ここで、コイリング程度は、波の進行方向を変更させるチャネルの数、すなわち、波の進行方向の変更回数、コイリング内での波の全体移動距離などと定義されてもよい。
【0045】
人工原子100において、入射部120から出射部140までの直線距離を格子定数aとするとき、チャネルの幅dは、格子定数aより小さく、チャネルを進む波の波長より小さい。例えば、チャネルの幅dは、格子定数aの0.081倍でもある。
【0046】
それにより、コイリング部130を進む波は、ジグザグ方式で進む。波は、コイリング部130をジグザグ方式で進むために、人工原子100に入射された波は、格子定数aより長い距離を進むことができる。例えば、コイリング部130によって形成された波の経路長は、格子定数の4.2以上でもある。
【0047】
また、人工原子100の体積を最小化するために、1枚のプレート180によって、隣接するチャネルが分離される。プレート180は、幅wが狭い薄膜形態でもあり、黄銅(brass)のような金属、またはポリマーなどの固体物質から形成されてもよい。前記プレート180の長さLは、格子定数aの長さより短くともよい。例えば、プレート180の長さは、格子定数aの0.61倍でもある。それだけではなく、プレート180の幅は、格子定数aに比べて相当に小さいことが望ましい。例えば、プレートの幅は、格子定数の0.02倍でもある。
【0048】
一方、図1に図示された人工原子は、1つのコイリング部を含み、波、例えば、音波あるいは電磁波は、人工原子を介して、1つの有効進行方向に進む。そのために、図1に図示された人工原子は、一次元人工原子といえる。前記一次元人工原子が配列され、メタ物質を形成することができる。一次元人工原子は、一次元、二次元または三次元に配列されてもよい。一次元人工原子の配列形態によって、メタ物質は、入射された波の特性を変形させて出射させる。
【0049】
また、メタ物質の人工原子は、波の有効進行方向が異なる複数個のコイリング部を含むことができ、図2Aは、本発明の一実施形態による二次元の人工原子を図示した図面である。図2Aに図示されているように、二次元人工原子200は、波の有効進行方向が互いに異なる複数個のコイリング部が結合して形成されてもよい。複数個のコイリング部を進む波の有効進行方向は、二次元平面上に存在する。
【0050】
図2Aでは説明の便宜を図るために、4個のコイリング部210,220,230,240が結合された状態が図示されている。しかし、それに限定されるものではなく、二つ以上のコイリング部が結合して二次元人工原子200を形成することもできる。説明の便宜を図るために、4個のコイリング部210,220,230,240が結合された場合の波の特性変化について説明する。
【0051】
各コイリング部210,220,230,240は、前述のように、空間をコイリングして入射された波がジグザグに進む。コイリング部は、空間を、二次元または三次元にコイリングすることができる。
【0052】
第1コイリング部210、第2コイリング部220、第3コイリング部230及び第4コイリング部240それぞれの一端は、二次元人工原子200の中心地点Cに配置されて相互連結されている。各コイリング部210,220,230,240は、中心地点Cを基準に、他のコイリング部210,220,230,240と回転対称になるように配置されてもよい。
【0053】
例えば、第1コイリング部210を、中心地点Cを基準に90°回転させれば、第2コイリング部220と一致し、第2コイリング部220を、中心地点Cを基準に90°回転させれば、第3コイリング部230と一致し、第3コイリング部230を、中心地点Cを基準に90°回転させれば、第4コイリング部240と一致し、第4コイリング部240を、中心地点Cを基準に90°回転させれば、第1コイリング部210と一致するように、第1コイリング部210、第2コイリング部220、第3コイリング部230及び第4コイリング部240が配置されてもよい。すなわち、第1コイリング部210と、第3コイリング部230は、中心地点Cを基準に対称になるように配置され、第2コイリング部220と、第4コイリング部240は、中心地点Cを基準に対称になるように配置されてもよい。
【0054】
それにより、第1コイリング部210と、第3コイリング部230とでの波の有効進行方向と、第2コイリング部220と、第4コイリング部240とでの波の有効進行方向は、一致することになる。
【0055】
それにより、二次元人工原子200に入射された波は、第1コイリング部210、第2コイリング部220、第3コイリング部230及び第4コイリング部240のうち少なくとも一つを進んで外部に出射される。例えば、第1コイリング部210を介して外部に入射された波は、第1コイリング部210を進んだ後、二次元人工原子200の中心Cにおいて、第2コイリング部220、第3コイリング部230及び第4コイリング部240に分散される。そして、噴射された各波は、第2コイリング部220、第3コイリング部230及び第4コイリング部240をそれぞれ進んで外部に出射されてもよい。入射された波の特性によって、波は、第2コイリング部220、第3コイリング部及び第4コイリング部240いずれにも分散され、一部コイリング部にのみ分散されもする。
【0056】
図2Bは、図2Aに図示された二次元人工原子200のコイリング効果を説明するために、チャネル形態を均等に簡素化した図面である。すなわち、図2Bに図示された「X」字形は、図2Aのコイリングチャネルと均等な(equivalent)チャネルの領域を示す。そして、残りの領域は、チャネルを形成するプレートを示す。その場合、「X」字形で示したチャネル領域の屈折率n0rは、チャネルがないとき、入射部120から出射部140に通過する波の速度を、コイリング部130を介して、入射部120から出射部140に通過する波の速度で割った値と定義することができる。例えば、コイリング部130によって、波の経路長が、入射部120から出射部140までの直線距離の4.2であるならば、チャネルの屈折率n0rは4.2になる。そのように、高屈折率及びそれに該当する波の位相遅延をなすことは、チャネルに所望通りに屈曲を与えることにより具現される。かようなコイリングされた人工原子単位に基づいたメタ物質は、低周波数の音波についても、回折効果なしに有効に動作し、それは、当該メタ物質を使用して音波を制御する素子の大きさを低減させることができる。
【0057】
以下では、二次元人工原子200での分散関係(例えば、周波数と波数ベクトルとの関係)について説明する。フロケ−ブロッホ(Floquet−Bloch)理論を適用し、二次元人工原子200での分散関係(dispersion relation)は、下記数式(1)のように、近似的に得られる。
【0058】
【数1】
【0059】
ここで、ΦC’A’及びΦC’B’のそれぞれは、図2BのC’A’方向及びC’B’方向でのブロッホ波の遅延位相を示し、k0は、チャネル内での波の波数を示し、nOr2は、第1コイリング210部及び第2コイリング部220の屈折率を示す。図2Aで、二次元人工原子200において、各コイリング部は、他のコイリング部と回転対称になる。従って、各コイリング部の屈折率は、同一である。
【0060】
数式(1)は、分散関係及びband foldingを示す。二次元人工原子は、C’A’方向及びC’B’方向いずれにおいても、同一の屈折率n0r2成分で空間をコイリングするために、EFCs(equifrequency contours)は、Γ地点(すなわち、cosΦC’A’=cosΦC’B’)において、ほぼ円に近い。それは、図2Aの二次元人工原子200が等方性屈折率を生成するということを意味する。Γ地点近辺に存在する音波の場合、その正規化された周波数(ωa/(2πc):ωは、音波の角周波数、cは、音波の空気中での速度)が1/n0r2の定数倍になる。
【0061】
それにより、バンドの周波数領域での位置は、n0r2、またはコイリング部内の波経路長によって調整される。経路長が長いほど、屈折率n0r2も大きい。従って、十分に低い周波数でも、band foldingが生ずるように、二次元人工原子200を作ることができ、かような二次元人工原子200で構成されたメタ物質は、Γ地点近辺において、依然として有効密度及び有効体積弾性率を有すると記述される。
【0062】
図3Aは、図2Aの二次元人工原子200のバンド構造(周波数と波数ベクトルとの関係)を示す図面であり、図3Bないし図3Dは、それぞれ図3Aの第1バンド、第2バンド及び第3バンドのEFCsを示す図面である。
【0063】
第1実線L1は、空気中で波のバンド特性を示し、第2実線L2は、数式(1)による二次元人工原子200のバンド構造を示す。そして、点線によってなる曲線L3ないしL7は、DMS数値解釈シミュレーションを介して獲得された結果を示す。低周波数から高周波数に、第1バンドL3ないし第5バンドL7が形成されている。周波数0.11近辺及び0.22近辺の第2バンドL4及び第4バンドL6は、傾度がほぼ0であり、平坦に形成されている。
【0064】
図3AのΓX方向は、図2AのCB方向と対応する。Γ地点、M地点での円a1,a2,a3を示す領域、及び二次元人工原子200の各コイリング部内のチャネル幅サイズが有限であることにより、小さい周波数移動を除き、シミュレーションのバンド構造と、数式(1)のバンド構造は、ほぼ類似する。波の周波数が低いほど、チャネル幅は、波の波長よりはるかに小さい。それにより、シミュレーション結果によるバンド構造と、数式(1)によるバンド構造は、互いに一致するということを確認することができる。Γ地点近辺で、ΓX方向及びΓM方向に分散関係の勾配は、band foldingにより、第1バンドL3、第3バンドL5及び第5バンドL7でほぼ同一である。それは、二次元人工原子200の屈折率が等方性であるということ示す。それにより、図3Bないし図3Dに図示されているように、3つのバンド、すなわち、周波数(ωa/(2πc))が0から0.04まで、0.18から0.218まで、0.22から0.26までのバンドは、半径が5%以内で変わる円に近いということを確認することができる。相対屈折率は、EFCsの大きさを、空気中での分散関係(黒色点線)と比較することによって抽出される。
【0065】
第3バンドL5で、0と−1との間の負の屈折率を得ることができ、第5バンドL7では、1より小さい正の屈折率を得ることができる。バンドギャップのエッジ周波数(ωa/(2πc))0.219近辺に、平坦な勾配のバンドがある。そのバンドでの音波のモードは、本質的に横波(transverse)である。それにより、かようなモードは、縦波(longitudinal)特性を有する入射平面波によって励起されない。
【0066】
また、二次元人工原子200の複素反射係数及び伝送係数を算出することにより、前述のバンドの相対有効屈折率n及び相対有効インピーダンスZを算出することができる。局所領域において、共振が存在しないために、媒質の吸収損失は、共振周波数近辺で増幅されない。
【0067】
図4Aは、図2Aの二次元人工原子200の周波数による相対有効屈折率(実線)と、相対有効インピーダンス(点線)とを示した図面であり、図4Bは、図2Aの二次元人工原子200の周波数による有効密度(実線)と、有効体積弾性率(点線)とを示した図面である。図4Aに図示された相対有効屈折率は、図3Aに図示された相対有効屈折率と同一である。図4Bに図示された有効密度及び有効体積弾性率は、それぞれはρ=n、B=Z/nから獲得される。
【0068】
人工原子の格子定数aに比べて波の波長が長い低周波数領域において、ρ及びBは、定数であって一定である。例えば、FR(filling ratio) f=0.19であるとき、B=1/(1−f)=1.23でもある。そして、相対有効屈折率n=6において、相対有効密度は、ρ=nr2=44.3になる。該二次元人工原子200は、自然界にほぼ存在しない高屈折率を得るのに効率的である。例えば、周波数範囲が0.18ないし0.26において、ρは、負から正に変わる。特に、バンドギャップの下端エッジである周波数(a/(2πc))が0.218である地点において、ρは、0になる。一方、1/Bも負から正に変わり、バンドギャップの上端エッジである周波数(a/(2πc))0.22近辺において、1/Bは、0になる。バンドギャップ下では、ρ、B、nが同時に負になる周波数領域が存在する。ρ、Bが同時に負数になるため(ダブルネガティブ)、互いに異なる種類の共振をオーバーラップする既存アプローチとは異なり、空間をコイリングし、十分に大きいn0rを具現することにより、ダブルネガティブを生成することができる。
【0069】
図2Aでは、二次元人工原子200は、4個の回転対称になるコイリング部から形成されるとしているが、それに限定されるものではない。2個の回転対称になるコイリング部の結合によっても、二次元人工原子200が形成されるということは言うまでもない。それだけではない、互いに対称にならない複数個のコイリング部の結合によっても、二次元人工原子200が形成されもし、コイリング程度が異なる複数個のコイリング部が結合し、二次元人工原子200が形成されもする。すなわち、非等方性のコイリング部が結合し、二次元人工原子200が形成されもする。コイリング部の配置関係、各コイリング部のコイリング程度などは、波の特性を変更させる目的によって異なりうる。すなわち、コイリング部などの配置関係、各コイリング部のコイリング程度によって、人工原子の物質係数(例えば、屈折率、インピーダンス、弾性率、密度)が多様に変更される。
【0070】
図5は、一実施形態による三次元人工原子300を概略的に図示した図面である。
【0071】
該三次元人工原子300は、波の有効進行方向が互いに異なる複数個のコイリング部が三次元的に結合されて形成される。図5において、曲線は、コイリング部を示す。例えば、6個のコイリング部310が結合し、三次元人工原子300が形成されもする。コイリング部310は、空間を二次元または三次元にコイリングすることができる。
【0072】
三次元人工原子300の中心には、各コイリング部310が連結されており、三次元人工原子300の中心を基準に、各コイリング部310を90°回転させれば、隣接するコイリング部310と一致する。そして、各コイリング部310での波の有効進行方向は、1つの二次元上に存在しないこともある。コイリング部310の配置関係、各コイリング部310のコイリング程度などは、波の特性を変更させる目的によって異なる。
【0073】
前述の人工原子を配列し、メタ物質を形成することができる。一次元人工原子を一次元、二次元または三次元に配列させ、メタ物質を形成することもでき、二次元人工原子を、一次元、二次元または三次元に配列させ、メタ物質を形成することもできる。そして、三次元人工原子を、一次元、二次元または三次元に配列させ、メタ物質を形成することもできる。それだけではなく、一次元人工原子、二次元人工原子及び三次元人工原子のうち少なくとも二つを組み合わせ、一次元、二次元または三次元に配列させ、メタ物質を形成することもできる。
【0074】
人工原子に含まれたコイリング部のコイリング程度を調節し、メタ物質は、等方性または非等方性の特性を有する。空間をコイリングすることにより、メタ物質が高屈折率を有すれば、有効密度及び体積弾性率が低周波数においても、動作することができる。それにより、ダブルネガティブ、0に近い有効密度及び正の屈折率を獲得するために、局所共振を利用した既存メタ物質に比べ、波の損失を減少させることができる。そして、前記メタ物質により、波の特性を変形させる素子を生成することもできる。
【0075】
例えば、メタ物質を利用して、負の有効密度及び負の有効体積弾性率を有する音波プリズムを生成することができる。図6は、図1に図示された一次元人工原子と、図2に図示された二次元人工原子との組み合わせによって生成されたプリズムを図示した図面である。図6に図示されているように、一次元人工原子及び二次元人工原子を二次元に配列し、傾斜角度が45°であるプリズムを形成することができる。そして、幅が15.4aであり、真空状態において正規化された周波数(ωa/(2πc))が0.191であるガウス形態の振幅分布を有する音波ビームがプリズムの底から入り込む。前記周波数において、二次元人工原子の相対有効屈折率n=−1である。そして、ビームは、プリズムを通過して出ていきながら負の方向に屈折される。
【0076】
他の例で、前述のように、人工原子は、非常に低周波数で0に近い密度を有する。それにより、人工原子で構成されたメタ物質を導波路上に配置させる場合、前記導波路内において波は、トンネリング現象を起こす。
【0077】
図7Aは、導波路上において、導波路の幅の半分以上を塞ぐ固体プレートが挿入された場合の波の圧力場パターンをシミュレーションした結果である。図7Aに図示されているように、導波路710の中間領域に、固体プレート720が挿入されており、平面波の音波730が導波路の左側から右側に進入する。固体プレート730が導波路710の幅の半分以上を塞いでいるために、平面波ははなはだしく散乱する。
【0078】
一方、図7Bは、図7Aに図示された固体プレート720の周辺に、一実施形態のメタ物質が配置されている場合の波の圧力場パターンをシミュレーションした結果である。図7Bに配置されたメタ物質は、図2Aの二次元人工原子を二次元に配列して形成されてもよい。
【0079】
図7Bに図示されているように、散乱体である固体プレート720は、メタ物質740で包まれている。両シミュレーションから、導波路710に入射された波730の周波数は、相対有効密度が0であるバンドギャップの下端エッジの周波数より小さい周波数ωa/(2πc)=214が選択された。相対体積弾性率B=−33と大きく、相対有効密度ρ=−0.1と小さいということは、トンネリングの発生を意味する。図7Bにおいて、平面波730は、メタ物質740で覆い包まれた固体プレートを通過しても散乱されず、平面波を維持するということを確認することができる。
【0080】
図8は、一実施形態によるメタ物質から構成されたレンズを図示した図面である。
【0081】
図8に図示されているように、レンズ800は、複数個の二次元の人工原子810,820,830が二次元に配列されて形成されている。レンズ800の中央には、コイリング程度が大きい二次元の人工原子810が配置され、レンズのエッジに行くほど、コイリング程度が小さくなる二次元の人工原子820,830が配置されている。すなわち、レンズ800の中央からエッジに行くほど、コイリング程度が漸進的に変わる複数個の二次元人工原子が配列されて形成されている。かようなレンズは、中央からエッジに行くほど漸進的に変わる屈折率を有することができる。
【0082】
前述のメタ物質は、音波を制御するだけではなく、弾性波または電磁波を制御することもできる。従って、弾性波または電磁波の特性を変形させる素子も、前記メタ物質から作られる。
【0083】
前述の実施形態以外の多くの実施形態が、本発明の特許請求の範囲内に存在する。本発明は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施形態を有することができるが、特定実施形態を図面に例示し、詳細な説明で詳細に説明した。しかし、それらは、本発明を特定の実施形態について限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むものであると理解されなければならない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8