(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重合および重合生成物の形成において、前記重合生成物が、前記イソ尿素官能性重合開始剤および前記触媒を含有しない同様の重合可能な組成物と比べて、低減された黄変を示す、請求項1に記載の重合可能な組成物。
前記チオグリシジルメタクリレートが、グリシジルメタクリレートおよびチオ尿素を含む反応組成物の反応生成物として、前記重合可能な組成物内において形成される、請求項3に記載の重合可能な組成物。
前記異なる重合可能なエチレン性不飽和モノマーが、スチレン、アルキルアクリレート、およびアルキルメタクリレートのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の重合可能な組成物。
前記イソ尿素官能性重合開始剤(c)が、O−ジアルキルアミノ−イソ尿素およびO−イミノ−イソ尿素のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の重合可能な組成物。
前記触媒(d)が、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、複素環を有するアミン、ホスフィン、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第三級スルホニウム塩、第二級ヨードニウム塩、三ハロゲン化ホウ素およびそれらの錯体、有機酸およびそれらのエステル、ならびに金属ハロゲン化物、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の重合可能な組成物。
付加重合によって製造される硫黄含有重合生成物の黄色度を低減する方法であって、イソ尿素官能性重合開始剤およびβ−エピチオプロピル官能基間の反応に作用する触媒の存在下において、
(a)β−エピチオプロピル官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含むモノマー組成物と、場合により、
(b)2つ以上のβ−エピチオプロピル官能基を有するが重合可能なエチレン性不飽和基は有しない化合物と
を含む重合可能な組成物を反応させる工程を含む、方法。
重合および重合生成物の形成において、前記重合生成物が、前記イソ尿素官能性重合開始剤および前記触媒を含有しない同様の重合可能な組成物と比べて、低減された黄変を示す、請求項12に記載の方法。
前記チオグリシジルメタクリレートが、グリシジルメタクリレートおよびチオ尿素を含む反応組成物の反応生成物として、前記重合可能な組成物内において形成される、請求項14に記載の方法。
2つ以上のβ−エピチオプロピル官能基を有するが重合可能なエチレン性不飽和基は有しない前記化合物(b)が、前記重合可能な組成物中に存在し、ならびに、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパンおよびチオ尿素を含む反応組成物の反応生成物として前記重合可能な組成物内において形成される、請求項12に記載の方法。
前記2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパンが、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよびエピクロロヒドリンを含む反応組成物の反応生成物である、請求項18に記載の方法。
前記触媒が、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、複素環を有するアミン、ホスフィン、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第三級スルホニウム塩、第二級ヨードニウム塩、三ハロゲン化ホウ素およびそれらの錯体、有機酸およびそれらのエステル、ならびに金属ハロゲン化物、のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において使用される場合、ポリマーの分子量値、例えば質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)、は、ポリスチレン標準物質を用いたゲル透過クロマトグラフィによって特定される。
【0010】
本明細書において使用される場合、多分散指数(PDI)値は、ポリマーの数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比(すなわち、Mw/Mn)を表す。
【0011】
本明細書において使用される場合、用語「ポリマー」は、ホモポリマー(例えば、単一のモノマー種から製造されるもの)、およびコポリマー(例えば、少なくとも2種のモノマー種から製造されるもの)を意味する。
【0012】
本明細書において使用される場合、用語「(メタ)アクリレート」および同様の用語、例えば(メタ)アクリロイルおよび(メタ)アクリル酸エステル、は、メタクリレートおよびアクリレートを意味する。組成物中にどちらか、または両方が存在し得る。
【0013】
本明細書において使用される場合、用語「チオ(メタ)アクリレート」および同様の用語、例えばチオ(メタ)アクリロイルおよびチオ(メタ)アクリル酸エステル、は、上記と同様、チオメタクリレートおよびチオアクリレートを意味する。
【0014】
本明細書において使用される場合、「直鎖状または分岐鎖状の」基、例えば直鎖状または分岐鎖状のアルキル、は、メチレン基またはメチル基;直鎖状の基、例えば直鎖状C
2〜C
25アルキル基;および適切に分岐した基、例えば分岐鎖状C
3〜C
25アルキル基、を包含すると理解される。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「ハロ」および同様の用語、例えば、ハロ基、ハロゲン、ハロゲン基、ハライド、およびハライド基、は、F、Cl、Br、および/またはI、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、および/またはヨードなど、を意味する。
【0016】
特に明記されない限り、本明細書において開示される全ての範囲または比率は、その中に包括されるあらゆる部分範囲または部分比率を包含すると理解されるべきである。例えば、「1〜10」と言明された範囲または比率は、最小値1と最大値10との間(限界値を含む)のあらゆる部分範囲、すなわち、最小値1以上で始まり最大値10以下で終わる全ての部分範囲または部分比率、例えば、これらに限定されるわけではないが、1〜6.1、3.5〜7.8、および5.5〜10、を包含すると見なされるべきである。
【0017】
本明細書において使用される場合、冠詞「a」、「an」、および「the」は、明確にかつ明白に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を包含する。
【0018】
作業実施例を除いて、または特に明記されていない場合、本明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量および反応条件などを表現する全ての数は、すべての場合において用語「約」によって修飾されているものと理解されるべきである。
【0019】
本発明の重合可能な組成物は、(a)β−エピチオプロピル官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含むモノマー組成物、を含む。例えば、当該モノマー組成物(a)は、分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル、アリル、および/またはビニル基と1つ以上のβ−エピチオプロピル官能基とを有する化合物を含み得る。そのような化合物の混合物も使用することができる。好適なモノマーの例としては、これらに限定されるわけではないが、チオグリシジルメタクリレート(2,3−エピチオプロピルメタクリレート)、アリルチオグリシジルエーテル、などが挙げられる。
【0020】
β−エピチオプロピル官能基を有するエチレン性不飽和モノマーは、予め製造しておいてから重合可能な組成物に加えてもよく、あるいは、重合可能な組成物中に存在する「前駆体」反応剤から当該重合可能な組成物内において製造してもよい。例えば、チオグリシジルメタクリレートは、グリシジルメタクリレートおよびチオ尿素を含む反応組成物の反応生成物として重合可能な組成物内において形成され得る。
【0021】
β−エピチオプロピル官能基を有するエチレン性不飽和モノマーは、モノマー組成物中における樹脂固形物の総質量に対して、モノマー組成物(a)の質量の100パーセントまでを構成し得る。例えば、当該モノマーは、5〜100質量パーセント、例えば、25〜100質量パーセント、または25〜85質量パーセント、または25〜80質量パーセントなど、の範囲の量において存在し得る。
【0022】
本発明の重合可能な組成物において、モノマー組成物(a)はさらに、少なくとも1種の異なる重合可能なエチレン性不飽和モノマーを含んでいてもよい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル、アリル、および/またはビニル基が挙げられる。アクリル酸またはメタクリル酸の有用なアルキルエステルとしては、アルキル基中に1〜30個、好ましくは4〜18個の炭素原子を有する脂肪族アルキルエステルが挙げられ、これは、直鎖状、分岐鎖状、環状であっても、および/または置換されていてもよい。代表的なアルキル基としては、これらに限定されるわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、およびそれらの構造異性体が挙げられる。代表的なシクロアルキル基としては、これらに限定されるわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロオクチル置換基が挙げられる。代表的な重縮合環のシクロアルキル基としては、これらに限定されるわけではないが、デカヒドロナフタレニル、テトラデカヒドロアントラセニル、およびテトラデカヒドロフェナントレニルが挙げられる。代表的な多環式アルキル基としては、これらに限定されるわけではないが、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル(ノルボルニル)およびビシクロ[2.2.2]オクタニルが挙げられる。代表的なヘテロシクロアルキル基としては、これらに限定されるわけではないが、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ならびに、これらに限定されるわけではないがピペリジン−4−イルなどのピペリジニルが挙げられる。代表的な多環式ヘテロシクロアルキル基としては、これらに限定されるわけではないが、7−チアビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、および7−アザビシクロ[2.2,1]ヘプタニルが挙げられる。代表的なアラルキル基としては、これらに限定されるわけではないが、ベンジルおよびフェネチルが挙げられる。本発明の重合可能な組成物のモノマー組成物(a)中に存在し得る単一のエチレン性不飽和のラジカル重合可能な基を有するモノマーの例としては、これらに限定されるわけではないが、アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸のエステル、例えばメチルもしくはエチルアクリレートおよび2−ヒドロキシエチルアクリレート;メタクリル酸のエステル、例えばメチルもしくはエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、および2−ヒドロキシエチルメタクリレート;アリルエステル、例えばアリルベンゾエート;アリルカーボネート、例えばフェニルアリルカーボネート;ビニルエステル、例えば酢酸ビニル;スチレン;および塩化ビニルが挙げられる。いくつかの実施形態において、当該モノエチレン性不飽和モノマーは、メチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、スチレン、およびそれらの混合物を含む。2つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、例えばジビニルベンゼン、も、当該モノマー組成物(a)中において使用することができる。当該エチレン性不飽和モノマーは、使用時、重合可能な組成物の総モノマー質量に対して、1質量パーセント〜60質量パーセント、例えば、重合可能な組成物の総モノマー質量に対して、3質量パーセント〜55質量パーセント、または20〜45質量パーセント、の量において存在し得る。
【0023】
モノマー組成物(a)は、重合可能な組成物中の樹脂固形物の総質量に対して、5〜100質量パーセント、例えば、25〜100質量パーセント、または25〜75質量パーセント、または50〜60質量パーセント、の範囲の量において、本発明の重合可能な組成物中に存在し得る。
【0024】
本発明の重合可能な組成物はさらに、2つ以上のβ−エピチオプロピル官能基を有するが重合可能なエチレン性不飽和基は有しない化合物(b)も含み得る。そのような化合物の例としては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、およびビス(β−エピチオプロピルオキシフェニル)プロパンが挙げられる。当該化合物(b)は、予め製造しておいてから重合可能な組成物に加えてもよく、あるいは、当該重合可能な組成物中に存在する「前駆体」反応剤から当該重合可能な組成物内において製造してもよい。例えば、ビス(β−エピチオプロピルオキシフェニル)プロパンは、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパンおよびチオ尿素を含む反応組成物の反応生成物として、当該重合可能な組成物内において形成され得る。当該2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパンは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)およびエピクロロヒドリンを含む反応組成物の反応生成物として形成され得る。
【0025】
化合物(b)は、使用時、重合可能な組成物中の樹脂固形物の総質量に対して、0.5〜75質量パーセント、例えば、25〜55質量パーセントまたは30〜55質量パーセントなど、の量において、本発明の重合可能な組成物中に存在し得る。
【0026】
本発明の重合可能な組成物中におけるモノマー組成物(a)と化合物(b)との質量比は、1:3〜3:1の範囲であり得る。(a)対(b)の比率は、概して、3:2である。
【0027】
本発明の重合可能な組成物はさらに、モノマーのエチレン性不飽和基の、およびそれらの間のフリーラジカル重合を開始することができるイソ尿素官能性重合開始剤(c)も含む。そのような開始剤は、熱的に活性化される。「熱的に活性化される」とは、本明細書においてさらに詳細に説明されるように、フリーラジカル開始剤が高温、例えば、周囲室温より高い温度、例えば25℃超、において活性になることを意味する。
【0028】
当該熱的に活性化されるフリーラジカル開始剤は、O−イミノ−イソ尿素化合物、O−ジアルキルアミノ−イソ尿素化合物、およびそれらの組み合わせから選択することができる。好適なO−ジアルキルアミノ−イソ尿素化合物は、国際公開第2010/079102(A1)号に開示されており、当該刊行物はその開示内容全体が参考として本明細書で援用される。そのようなO−ジアルキルアミノ−イソ尿素化合物は、一般式I:
【化1】
[式中、R
100およびR
101は、それぞれ、互いに独立して、C
1〜C
20アルキルまたはC
6〜C
10アリールであり;あるいはR
100およびR
101は、一緒に単環式または多環式複素環を形成し、当該複素環は、場合により、さらにヘテロ原子O、S、N、およびPを含有していてもよく;R
102およびR
103は、独立して、C
1〜C
19アルキル、C
5〜C
12シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、C
7〜C
10アラルキル、(CH
3)
3Si−であり、当該C
1〜C
19アルキル、C
5〜C
12シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、C
7〜C
10アラルキル基は、場合により、OもしくはNが導入されていてもよく、C
1〜C
19アルキル基で置換されていてもよく、C
1〜C
19アルキルアミノ、ビス(C
1〜C
19アルキル)アミノ、またはトリス(C
1〜C
19アルキル)アンモニウムから選択されるN含有基で置換されていてもよく;R
104は、H、C
1〜C
19アルキル、C
1〜C
12シクロアルキル、C
7〜C
10アラルキル、または、以下のアシル:C(=O)−H、−C(=O)−C
1〜C
19アルキル、−C(=O)−C
2〜C
19アルケニル、−C(=O)−C
6〜C
10アリール、−C(=O)−C
2〜C
19アルケニル−C
6〜C
10アリール、−C(=O)−O−C
1〜C
19アルキル、−C(=O)−O−C
6〜C
10アリール、−C(=O)−NH−C
1〜C
19アルキル、−C(=O)−NH−C
6〜C
10アリール、および−C(=O)−N(C
1〜C
19アルキル)
2からなる群より選択されるアシルである]を有する。
【0029】
(I)の構造は、当該分子(I)が2個以上、例えば2〜10個、のイソ尿素フラグメントを含有するようなもの(例えば、二量体、三量体、オリゴマー、またはポリマー)であってもよい。
【0030】
好適なO−イミノ−イソ尿素化合物は、国際公開第2010/128062(A1)号において開示されており、当該刊行物は開示内容全体が参考として本明細書で援用される。そのようなO−イミノ−イソ尿素化合物は、一般式II:
【化2】
[式中、nは、1、2、3、または4であり、
R
200およびR
201は、独立して、H、C
1〜18アルキル、C
3〜C
12シクロアルキル、C
6〜C
14アリール、C
1〜C
14ヘテロアリール、C
7〜C
15アラルキル、C
2〜C
14ヘテロアラルキル、シアノであり、あるいはR
200およびR
201は、それらが結合している炭素と一緒に、単環式もしくは多環式C
3〜C
18炭素環または単環式もしくは多環式C
1〜C
18複素環を形成し;
R
202およびR
203は、独立して、C
1〜C
18アルキル、C
3〜C
12シクロアルキル、C
6〜C
14アリール、C
1〜C
18アルキルで1回もしくは2回以上置換されているC
6〜C
14アリール;C
7〜C
15アラルキル、(CH
3)
3Si−であり;あるいはR
202およびR
203は、C
1〜C
18アルキル、C
3〜C
12シクロアルキル、C
6〜C
14アリール、C
7〜C
15アラルキルであり、あるいは、
R
202およびR
203は、C
1〜C
18アルキル、(C
1〜C
18アルキルアミノ、ビス(C
1〜C
18アルキル)アミノ、トリス(C
1〜C
11アルキル)アンモニウムから選択されるOもしくはN含有基が導入または該OもしくはN含有基で置換されている)C
3〜C
12シクロアルキルであり、
nが1の場合、R
204は、H、C
1〜C
18アルキル、C
3〜C
12シクロアルキル、C
7〜C
14アラルキル、C
6〜C
14アリール、または以下のアシル:
−C(=O)−H、−C(=O)−C
1〜C
18アルキル、−C(=O)−C
2〜C
18アルケニル、−C(=O)−C
8〜C
14アリール、−C(=O)−C
2〜C
18アルケニル−C
6〜C
14アリール、−C(=O)−O−C
1〜C
18アルキル、−C(=O)−O−C
6〜C
14アリール、−C(=O)−NH−C
1〜C
18アルキル、−C(=O)−NH−C
6〜C
14アリール、および−C(=O)−N(C
1〜C
18アルキル)
2;
からなる群より選択されるアシルであり;あるいは、
nが1の場合、R
202およびR
204は、それらが結合している窒素原子と一緒に、さらなるヘテロ原子を含有していてもよい5〜12員環を形成し、
nが1を超える場合、R
204は、ジ−、トリ−、テトラ−C−i−C−isアルキリデン、ジアシル、トリアシル、またはテトラアシル、およびそれらの塩である]を有する。
【0031】
かかる環R
202〜R
204の例は、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、N−メチル−ピペラジン、ヘキサメチレンイミンである。
【0032】
(II)の構造は、当該分子(II)が2個以上、例えば、2〜10個など、のイソ尿素断片を含有するようなもの(例えば、二量体、三量体、オリゴマー、またはポリマー)であってもよい。単量体構造(nが1)、二量体構造(n=2)、または三量体構造n=3が好ましい。
【0033】
当該イソ尿素官能性重合開始剤は、少なくとも、モノマー組成物(a)中の成分の重合を開始するのに十分な量において存在する。典型的には、重合反応の開始および維持に必要な量のみが必要であり、これは、「開始量」ともよばれ得る。いくつかの実施形態により、当該開始剤は、0.01〜7部、または0.1〜3.5部、または0.5〜2.5部の量において存在し、いずれの場合も、開始剤の当該部数は、重合可能な組成物中に存在するモノマー100部あたりの部数(phm)である。
【0034】
本発明の重合可能な組成物はさらに、β−エピチオプロピル官能基間の反応に作用するまたは反応を促進する触媒(d)を含む。当該触媒は、少なくとも、重合可能な組成物中のβ−エピチオプロピル官能基間の反応に作用するのに十分な量において存在し、当該β−エピチオプロピル官能基は、化学反応、例えば重合反応、において反応する。
【0035】
触媒(d)としての使用に好適な触媒は、これらに限定されるわけではないが、ホスフィン;第四級ホスホニウム塩;1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンまたはトリエチレンジアミンとしても知られる);他のアミン触媒、例えば複素環を有するアミン;第四級アンモニウム塩;第三級スルホニウム塩;第二級ヨードニウム塩;三ハロゲン化ホウ素およびそれらの錯体;有機酸およびそれらのエステル;ならびに金属ハロゲン化物、の1つ以上を含み得る。
【0036】
複素環を有する好適なアミンの非限定的な例は、イミダゾール、例えば、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−メチル−2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、N−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、N−ウンデシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、N−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−ベンジルイミダゾール、2−ベンジルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、N−(2’−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、N−(2’−シアノエチル)−2−ウンデシルイミダゾール、N−(2’−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、3,3−ビス(2−エチル−4−メチルイミダゾリル)メタン、アルキルイミダゾールおよびイソシアヌル酸の付加体、アルキルイミダゾールおよびホルムアルデヒドの縮合物;ならびにアミジン、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、を含み得る。
【0037】
好適なホスフィンの特定の非限定的な例は、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、クロロジフェニルホスフィン、を含み得る。
【0038】
触媒として使用可能な第四級アンモニウム塩の好適な非限定的な例は、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヨージド、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート、テトラ−n−ブチルアンモニウムボロヒドリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフィット、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロゲンサルファイト、テトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムパラトルエンスルホネート、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムアセテート、テトラ−n−オクチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−オクチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−オクチルアンモニウムアセテート、トリメチル−n−オクチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムブロミド、トリエチル−n−オクチルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムブロミド、トリ−n−ブチル−n−オクチルアンモニウムクロリド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムフルオリド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムクロリド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムブロミド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムヨージド、メチルトリフェニルアンモニウムクロリド、メチルトリフェニルアンモニウムブロミド、エチルトリフェニルアンモニウムクロリド、エチルトリフェニルアンモニウムブロミド、n−ブチルトリフェニルアンモニウムクロリド、n−ブチルトリフェニルアンモニウムブロミド、1−メチルピリジニウムブロミド、1−エチルピリジニウムブロミド、1−n−ブチルピリジニウムブロミド、1−n−ヘキシルピリジニウムブロミド、1−n−オクチルピリジニウムブロミド、1−n−ドデシルピリジニウムブロミド、1−フェニルピリジニウムブロミド、1−メチルピコリニウムブロミド、1−エチルピコリニウムブロミド、1−n−ブチルピコリニウムブロミド、1−n−ヘキシルピコリニウムブロミド、1−n−オクチルピコリニウムブロミド、1−n−ドデシルピコリニウムブロミド、1−フェニルピコリニウムブロミド、を含み得る。
【0039】
好適な第四級ホスホニウム塩の特定の非限定的な例としては、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラエチルホスホニウムクロリド、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド、テトラ−n−ブチルホスホニウムヨージド、テトラ−n−ヘキシルホスホニウムブロミド、テトラ−n−オクチルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムヨージド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムヨージド、n−ヘキシルトリフェニルホスホニウムブロミド、n−オクチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロリド、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムブロミド、テトラキスヒドロキシエチルホスホニウムクロリド、テトラキスヒドロキシブチルホスホニウムクロリドが挙げられる。
【0040】
第三級スルホニウム塩の特定の非限定的な例としては、トリメチルスルホニウムブロミド、トリエチルスルホニウムブロミド、トリ−n−ブチルスルホニウムクロリド、トリ−n−ブチルスルホニウムブロミド、トリ−n−ブチルスルホニウムヨージド、トリ−n−ブチルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリ−n−ヘキシルスルホニウムブロミド、トリ−n−オクチルスルホニウムブロミド、トリフェニルスルホニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリフェニルスルホニオウヨージドが挙げられる。
【0041】
好適な第二級ヨードニウム塩は、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムヨージドなどを含み得る。
【0042】
三ハロゲン化ホウ素およびそれらの錯体の特定の例は、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素−エチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素−n−ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素−フェノール錯体、三フッ化ホウ素−エチルアミン錯体、三フッ化ホウ素−ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素−酢酸錯体、三フッ化ホウ素−トリエタノールアミン錯体、三フッ化ホウ素−アンモニア錯体を含み得る。
【0043】
触媒有機酸およびそれらのエステルの例は、スルホン酸、カルボン酸、およびそれらのエステルを含み得る。それらの特定の例としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、10−カンファースルホン酸、ならびにそれらのメチルおよびエチルエステルが挙げられる。
【0044】
金属ハロゲン化物の特定の例は、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化アルミニウム、塩化スズ、塩化チタン、二塩化メチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、および塩化ジエチルアルミニウムを含み得る。
【0045】
当該重合可能な組成物中に存在する触媒(d)の量は、当該重合可能な組成物中のβ−エピチオプロピル官能基間の反応に影響を及ぼすのに十分な量である。当該触媒の量は、例えば、当該重合可能な組成物中の樹脂固形物の総質量に対して、0.001〜3質量%、例えば0.005〜2質量%、の範囲であり得る。
【0046】
当該重合可能な組成物は、硫黄および/またはセレン原子を有する無機化合物を実質的に含有し得ない。「実質的に含有しない」とは、当該組成物が、これらの化合物が任意の化学反応に認識可能な(測定可能な)程度まで関与し得る任意の必要量においてはこれらの化合物を含有しないことを意味する。少しでも存在している場合、痕跡量においてのみである。
【0047】
本発明の重合可能な組成物の硬化に使用される熱硬化サイクルは、概して、開始剤の存在下において、2時間〜48時間室温(例えば、25℃)から50℃〜150℃のある温度まで、または12〜24時間55℃〜90℃もしくは100℃のある温度まで、または12〜24時間65℃〜115℃もしくは125℃のある温度まで、当該重合可能な組成物を加熱する工程を伴う。
【0048】
本発明の重合可能な組成物の重合により重合生成物が形成され、当該重合生成物は、成形された物品の形態であってもよい。本発明の重合可能な組成物の重合から得られる重合生成物は、固体であり、また、いくつかの実施形態では透明である。本発明の重合可能な組成物から製造された透明な重合生成物は、光学用途もしくは眼科用途に使用することができ、例えば、レンズの製造に使用することができる。
【0049】
本発明の組成物の重合および重合生成物の形成において、当該重合生成物は、イソ尿素官能性重合開始剤および上記において説明したβ−エピチオプロピル官能基の反応のための触媒を含有しない同様の重合可能な組成物と比べて、低減された黄変を示す。本発明の組成物を使用して製造された重合生成物は、従来の開始剤、例えば、過酸化物またはアゾ化合物、を使用して重合された同様の重合可能な組成物と比べて、かなり低い黄色度を示す。そのため、本発明はさらに、付加重合によって製造された硫黄含有重合生成物の黄色度を低減する方法であって、イソ尿素官能性重合開始剤およびβ−エピチオプロピル官能基間の反応に作用する触媒の存在下において、(a)β−エピチオプロピル官能基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを含むモノマー組成物;および、場合により(b)2つ以上のβ−エピチオプロピル官能基を有するが重合可能なエチレン性不飽和基は有しない化合物、を反応させる工程を含む方法も提供する。β−エピチオプロピル官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)、および2つ以上のβ−エピチオプロピル官能基を有するが重合可能なエチレン性不飽和基は有しない化合物(b)は、それぞれ、前述したもののいずれかである。
【0050】
本発明の目的のため、下記の実施例において説明されるように、ASTM E313−10に従って黄色度を測定する。
【0051】
さらに、本発明の組成物でのイソ尿素官能性重合開始剤および触媒の使用は、従来の開始剤、例えば、過酸化物など、と比べて、重合の際のガスの発生を低減することができる。多くの場合において過酸化物開始剤の使用に関連する、発火および燃焼の危険性は、上述のイソ尿素官能性重合開始剤および触媒を使用することにより、避けることができる。
【0052】
本発明の重合可能な組成物から製造された重合生成物は、典型的には、少なくとも1.57、または少なくとも1.58、または少なくとも1.59の屈折率;少なくとも30、または少なくとも33、または少なくとも35のアッベ数;少なくとも50N/mm
2、または少なくとも70N/mm
2、または少なくとも90N/mm
2のフィッシャー微小硬度値を有する。いくつかの実施形態により、本発明の重合可能な組成物から製造した重合生成物は、少なくとも1、または少なくとも10、または少なくとも20の初期(ゼロ秒)バーコル硬度を有する。当該屈折率、アッベ数、およびフィッシャー硬度値は、当該技術分野において認められている方法に従って特定することができる。屈折率値(n
D20)およびアッベ数は、製造元によるOperation and Maintenance Guideに従い、Metricon Model 2010 Prism Coupler、Thin Film Thickness/Refractive Index Measurement Systemを使用して特定することができ、フィッシャー硬度値は、Fischer Technologies H100C Microhardness Measurement Systemを使用してISO 14577に従い特定される。
【0053】
本発明の重合可能な組成物から製造される重合生成物は、固体物品、例えば、光学素子または光学装置、の形成に使用することができる。本明細書において使用される場合、用語「光学」は、光および/または視覚に付随もしくは関連することを意味する。例えば、光学素子または光学装置は、眼科用素子および装置、表示素子および装置、窓、鏡、ならびに/またはアクティブ型およびパッシブ型液晶セル素子および装置を含み得る。本明細書において使用される場合、用語「眼科用」は、目および視覚に付随または関連することを意味する。眼科用素子の非限定的な例としては、矯正および非矯正レンズ、例えば、シングルビジョンまたはマルチビジョンレンズ(これは、セグメント化または非セグメント化マルチビジョンレンズ(例えば、これらに限定されるわけではないが、二重焦点レンズ、三重焦点レンズ、およびプログレッシブレンズ)のどちらかであり得る、ならびに(美容上または別の理由のために)視覚を矯正、保護、強化するために使用される他の素子、例えば、これらに限定されるわけではないが、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、および保護レンズまたはバイザー、が挙げられる。本明細書において使用される場合、用語「表示(display)」は、言葉、数字、記号、デザイン、または図での、視認可能なまたは機械により読み取り可能な情報の表現を意味する。表示素子の非限定的な例としては、スクリーン、モニター、およびセキュリティ素子、例えばセキュリティマーク、が挙げられる。本明細書において使用される場合、用語「窓」は、放射線がそこを通過して透過することを可能にするのに適した開口部を意味する。窓の非限定的な例としては、自動車および航空機の透明材、フィルター、シャッター、ならびに光学スイッチが挙げられる。本明細書において使用される場合、用語「鏡」は、入射光の大部分を鏡面的に反射する表面を意味する。
【0054】
下記実施例において本発明をより詳しく説明するが、それらにおける多くの変更形態および変形形態が当業者に明らかであるため、それらの実施例は、単なる例示であることが意図される。特に明記しない限り、全ての部およびパーセンテージは、質量に基づくものである。
【実施例】
【0055】
実施例1〜6および比較例(CE)1〜13の調製について、パート1で説明する。パートIIでは、実施例1〜6およびCE1〜7の重合生成物シートおよびCE8〜13の粘性液体重合生成物の調製について説明する。第1表の結果は、実施例1〜6がCE1〜7よりも低い黄色度を示すことを示した。第2表の結果は、チイランが存在しないCE9、11、13のモノマー組成物の場合、イソ尿素官能性重合開始剤は、CE8、10、および12のモノマー組成物のペルオキシ官能性開始剤と比べて、低減された黄色度の予想外の結果を示さないことを示した。
【0056】
パートI−実施例1〜6および比較例(CE)1〜13の重合生成物の調製
実施例1
工程A
N
2下における50mLの丸底フラスコに、シクロヘキサノンオキシム(2.87g、25.3mmol)およびテトラヒドロフラン(THF)(15mL)を加えた。発熱を調節するためにフラスコの丸底を室温の水浴に浸け(しかし、発熱は認められなかった)、ジイソプロピルカルボジイミド(3.8g、30.1mmol)を加え、すぐに、砕いたNaOH(0.1g、2.5mmol)を加えた。結果として得られる溶液を、室温の水浴において、マグネチックスターラーを用いて6時間撹拌したところ、いくつかの部分において濁りが生じた。当該混合物を、ブフナー漏斗とワットマン#4ろ紙を用いてろ過した。結果として得られる混合物を4℃に冷却した後、ろ過し、減圧下で濃縮して、淡黄色の固体(3.27g)を得た。NMRは、当該生成物が1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素に一致する構造を有することを示した。
【0057】
工程B
20mLのガラス製シンチレーションバイアルに、0.45μmシリンジフィルターを通してろ過したチオグリシジルメタクリレート100質量部、N−メチルイミダゾール1部、および工程Aの生成物1部を加えた。当該成分を、均一な溶液が得られるまで、室温で混合しおよび/または超音波浴に入れた。当該混合物を、3mm厚の注入量に対して適切な直径を有するガラスシート鋳型に注入した。鋳型中の混合物を、オーブンにおいて22時間かけて一定の速度で30℃から110℃まで昇温して硬化させ、続いて2時間かけて一定の速度で85℃まで冷却し、脱型した。
【0058】
比較例1(CE−1)
1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素1部の代わりに、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートであることが報告されているTRIGONOX(登録商標)421重合開始剤1部を使用することを除いて、実施例1の工程Bの手順に従った。
【0059】
実施例2
N−メチルイミダゾール1部の代わりにテトラブチルホスホニウムブロミド1部を使用し、1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素を1.0部ではなく1.5部使用することを除いて、実施例1の工程Bの手順に従った。
【0060】
比較例2(CE−2)
1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素1.5部の代わりにTRIGONOX(登録商標)421を0.8部使用することを除いて、実施例2の手順に従った。
【0061】
実施例3
ろ過済みのチオグリシジルメタクリレート90部、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド10部、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル1部、および1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素1部を使用したことを除いて、実施例1の工程Bの手順に従った。
【0062】
比較例3(CE−3)
1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素1部の代わりにTRIGONOX(登録商標)421を1部使用したことを除いて、実施例3の手順に従った。
【0063】
実施例4
ろ過済みチオグリシジルメタクリレート41.7部、4,4−イソプロピリデンジフェノール−ジ(2,3−エピチオプロピル)エーテル41.7部、メチルメタクリレート12.5部、ブチルアクリレート4.17部、および1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素1部を使用したことを除いて、実施例1の工程Bの手順に従った。
【0064】
比較例4(CE−4)
1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素1部の代わりにTRIGONOX(登録商標)421を1部使用したことを除いて、実施例4の手順に従った。
【0065】
実施例5
ろ過済みチオグリシジルメタクリレート46.5部、4,4−イソプロピリデンジフェノール−ジ(2,3−エピチオプロピル)エーテル46.5部、メチルメタクリレート4.7部、ブチルアクリレート2.3部、テトラブチルホスホニウムブロミド1部、および1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素1部を使用したことを除いて、実施例1の工程Bの手順に従った。
【0066】
比較例5(CE−5)
1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素1部の代わりにTRIGONOX(登録商標)421を0.6部使用したことを除いて、実施例5の手順に従った。
【0067】
実施例6
1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素を1部ではなく1.25部使用したことを除いて、実施例5の手順に従った。
【0068】
比較例6(CE−6)
1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素1部の代わりにTRIGONOX(登録商標)421を0.8部使用したことを除いて、実施例5の手順に従った。
【0069】
比較例7(CE−7)
1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素1部の代わりに、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンであることが報告されているLUPEROX(登録商標)256重合開始剤0.8部を使用したことを除いて、実施例5の手順に従った。
【0070】
比較例8(CE−8)
窒素雰囲気下に置かれた、マグネチックスターラーを備える50mLの三ツ口丸底フラスコに、n−ブチルメタクリレート12.85g(100mmol)およびLUPEROX(登録商標)256を444mg(1mmol)加えた。当該フラスコを、平衡状態で80℃に維持された水浴に浸した。5時間後、粘性となった当該混合物を酢酸n−ブチルに溶解させた。固形物濃度を、26.5質量%に調節した。本明細書に記載されるパーセント固形物は、110℃での1時間の加熱の前後に試料を秤量して特定し、加熱前に測定した初期質量の百分率として残留質量を報告した。
【0071】
比較例9(CE−9)
工程A
N
2下の50mL丸底フラスコに、シクロヘキサノンオキシム(6.56g、49.9mmol)およびTHF(30mL)を加えた。ジシクロヘキシルカルボジイミド(11.34g、55.0mmol)を加え、すぐに粉砕したNaOH(0.2g、5mmol)を加えた。結果として得られる溶液を、室温で4時間撹拌したところ、赤褐色になり、いくつかの部分において濁りが生じた。ジクロロメタン(25mL)を加え、その結果として得られる混合物をろ過し、濃縮した。結果として得られる液体残留物にアセトニトリル(25mL)を加え、当該懸濁液を30分間激しく撹拌した。結果として得られる上層をデカントして廃棄し、残留物をジクロロメタンで希釈し、ろ過し、濃縮し、オレンジ色の油(8.73g)を得た。NMRは、当該生成物が1,3−ジシクロヘキシル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素に一致する構造を有することを示した。
【0072】
工程B
LUPEROX(登録商標)256の代わりに工程Aの生成物(319mg(1mmol))を使用したことを除いて、CE−8の手順に従った。
【0073】
比較例10(CE−10)
重合後に、結果として得られる材料をn−酢酸ブチルおよびテトラヒドロフラン(THF)の1:1(質量ベース)混合物に溶解させて22.2%固形物に調節したことを除き、CE−8の手順に従った。
【0074】
比較例11(CE−11)
LUPEROX(登録商標)256の代わりに1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素240mg(1mmol)を使用し、結果として得られる材料を、重合後にCE−10の手順に従って処理したことを除き、CE−8の手順に従った。
【0075】
比較例12(CE−12)
LUPEROX(登録商標)256の代わりにTRIGONOX(登録商標)421を222mg(0.5mmol)使用し、重合後、結果として得られる材料をTHFに溶解させて、20%固形物に調節したことを除き、CE−8の手順に従った。
【0076】
比較例13(CE−13)
LUPEROX(登録商標)256の代わりに1,3−ジイソプロピル−O−(N−シクロヘキシリデンアミノ)−イソ尿素120mg(0.5mmol)を使用し、結果として得られた材料を、重合後、CE−12の手順に従って処理したことを除き、CE−8の手順に従った。
【0077】
パートII−重合生成物の特性
実施例1〜6およびCE1〜7の重合生成物シート試料を、フィッシャー微小硬度(FMH)、屈折率、および黄色度について試験し、その結果を第1表に報告する。CE−8〜13の粘性液体重合生成物試料を、分子量および黄色度について試験し、その結果を第2表に報告する。
【0078】
当該試験は、以下の手順に従って実施した。フィッシャー微小硬度は、ISO 14577−07に従って試験し、FischerTechnology,Inc.から入手可能なFISCHERSCOPE(登録商標)H−100SMCを使用して測定した。重合生成物のフィッシャー微小硬度(FMH)(±3ニュートン/mm
2)は、300ミリニュートン(mN)の荷重、続いて15秒間で0〜300mNの荷重適用において測定した。当該結果は、5回の計測の算術平均である。
【0079】
実施例1〜6およびCE1〜7の固体試料の屈折率を、ASTM C1648−06に従って、METRICON(登録商標)Model 2010Mプリズムカプラーを使用して、546nm(水銀電子線)および23℃において測定した。
【0080】
黄色度は、ASTM E313−10に従い、HunterLab ULTRASCAN(登録商標)PROを使用して測定した。実施例1〜6およびCE1〜7のシート試料の通過長は、試料厚さ(3mm)に等しく、CE−8〜13の液体試料の通過長は2cmであった。
【0081】
CE−8〜13の粘性重合生成物をテトラヒドロフランに溶解させ、適切なポリスチレン標準物質を使用してゲル透過クロマトグラフィ(サイズ排除クロマトグラフィとも呼ばれる)により質量平均分子量(Mw)を測定した。
【表1】
【表2】
【0082】
表1の結果は、実施例1〜6の黄色度が比較例1〜7の黄色度より低いという予想外の結果を示した。ほとんどの場合、比較例は、同等のフィッシャー微小硬度および屈折率の試験結果を示した。
【0083】
表2に報告される黄色度は、チイランが存在しない比較例(CE)8〜13のモノマー組成物の場合、CE−9およびCE−11におけるイソ尿素官能性重合開始剤の結果は、CE−8およびCE−10のペルオキシエステルより高い黄色レベルを示し、CE−12およびCE−13を比較した場合は同様の結果を示すことを示した。報告される質量平均分子量に基づいて、CE−8〜C−11およびCE−13の重合度が同程度であることが示された。
【0084】
本発明について、それらの特定の実施形態の詳細を参照しながら説明してきた。そのような詳細は、それらが添付の請求項に含まれる範囲および程度を除いて、本発明の範囲に対する制限として見なされることを意図しない。