【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題及び別の課題は、本発明の提案に従い、独立請求項の特徴部分に記載の構成を備えている、コーティングされた基板を処理するためのシステム及び方法によって解決される。本発明の有利な実施の形態は、従属請求項の特徴部分に記載の構成から明らかになる。
【0013】
本発明によれば、一つ又は複数のプロセスボックスを有している、コーティングされた基板を処理するためのシステムが提供される。各プロセスボックスは、少なくとも一つの基板を収容するために設けられており、且つ、中空部を形成する、気密に閉鎖可能な(真空化可能な)ケーシングを有している。ケーシングは、自身に入射する電磁熱放射によって基板を熱処理できるように形成されている、少なくとも一つのケーシングセクションを有している。更にケーシングは、中空部に開口している、閉鎖可能な少なくとも一つのガス流路を有しており、このガス流路は中空部を真空化するため、またガスを中空部に導入するために使用される。
【0014】
システムは更に、プロセスボックスに基板を充填するため及び/又はプロセスボックスから基板を取り出すための少なくとも一つの充填/搬出ユニットと、プロセスボックス内の基板を加熱(熱処理)するための少なくとも一つの加熱ユニットと、プロセスボックス内の基板を冷却するための少なくとも一つの冷却ユニットと、プロセスボックスの中空部をポンピングするための少なくとも一つのポンプ装置と、少なくとも一種類のガス、特にパージガス及び/又はプロセスガスをプロセスボックスの中空部に供給するための少なくとも一つのガス供給装置とを有している。
【0015】
システムは更に、プロセスボックスと、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットとの間の相対運動を行うように構成されている少なくとも一つの搬送機構を有している。その場合、搬送可能なプロセスボックスを、固定されている加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットに相対的に移動させるために、搬送機構を構成することができる。択一的に、プロセスボックスが固定されており、加熱ユニット及び/又は冷却ユニット及び/又は充填/搬出ユニットを固定されているプロセスボックスに相対的に移動させるために、搬送機構を構成することもできる。その場合、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットの各ユニットを、他の各ユニットに依存せずに、個別に移動させることができる。しかしながら、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットを一緒に(同期させて)移動させることも可能である。
【0016】
従って、本発明によるシステムにおいては、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットを真空化可能なプロセスチャンバとして形成する必要はなく、システムを技術的に非常に簡潔に構成することができるので、設備投資費用及び保守費用は比較的少なくて済む。更に、気密に閉鎖可能なプロセスボックスによって、腐食性の物質による負荷を回避することができるので、各ユニットの摩耗が比較的少なくて済む。
【0017】
従って、本発明によるシステムの一つの有利な構成においては、充填/搬出ユニット、加熱ユニット及び冷却ユニットの各ユニットは真空化されないユニットとして構成されている。加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットを、特に排気装置に接続することができるが真空化可能なチャンバとしては構成されていない一つの共通の筐体によって包囲できること、又は、その種の筐体によって別個に各ユニットを包囲できることは除外されない。
【0018】
本発明によるシステムの一つの有利な構成においては、ポンプ装置及びガス供給装置が充填/搬出ユニットに統合されており、このことは基板の熱処理に関してプロセス技術的に有利であると考えられる。
【0019】
本発明によるシステムの別の有利な構成では、ケーシングを温度調整又は能動的に冷却するための温度調整乃至冷却装置と(熱技術的に)結合可能又は結合されている少なくとも一つの(第1の)ケーシングセクションと、特に温度調整不可能又は冷却不可能な、即ち冷却装置と熱的に結合されていない少なくとも一つの(第2の)ケーシングセクションとを備えているケーシングを有している、一つ又は複数のプロセスボックスが設けられている。第1のケーシングセクションは例えば冷却装置に(流体)接続されているか又は(流体)接続可能であり、従って第1のケーシングセクションを冷却することができる。これに対し、第2のケーシングセクションは冷却装置に接続されておらず、従って第2のケーシングセクションを冷却することはできない。第1のケーシングセクションは第2のケーシングセクションとは異なる。冷却されない第2のケーシングセクションは、特に、ケーシングセクションに入射する電磁熱放射によって基板を熱処理できるように形成されているケーシングセクションである。第1のケーシングの温度調整又は冷却によって、プロセスボックスの真空対応コンポーネントの著しい摩耗を回避することができる。
【0020】
更に、プロセスボックスの中空部は、少なくとも一つの離隔壁によって、基板を収容するためのプロセス空間と中間空間とに分けられている。離隔壁は、一つ又は複数の開口部を有しており、また、基板と、冷却装置によって温度調整可能な第1のケーシングセクションとの間に配置されている。離隔壁によって、熱処理中にプロセス空間において生じるガス状物質の、第1のケーシングセクションにおける凝縮を回避することができる。
【0021】
本発明によるシステムは更に、プロセスボックスの第1のケーシングセクションを温度調整又は能動的に冷却するための温度調整乃至冷却装置を有している。
【0022】
本発明によるシステムの一つの有利な構成においては、充填/搬出ユニット、加熱ユニット及び冷却ユニットの各ユニットが、プロセスボックスのための循環搬送区間に沿って固定されて配置されており、しかもその搬送区間においては、基板を処理するために、プロセスボックスを単方向で移動させることができる。この場合、搬送機構はプロセスボックスを単方向で搬送するために構成されている。
【0023】
本発明によるシステムの一つの別の有利な構成では、加熱ユニットと、その加熱ユニットの両側に設けられている二つの冷却ユニットと、加熱ユニット及び冷却ユニットを挟むように設けられている、プロセスボックスを充填及び/又は搬出するための二つの充填/搬出ユニットとを含む、固定されている一連の複数のユニットが列を成して配置されており、この場合には、プロセスボックスを搬送することができ、また搬送機構はプロセスボックスを双方向に搬送するために構成されている。システムをそのように構成する代わりに、上述のように配置されている複数のユニットを搬送できるようにし、且つ、プロセスボックスを固定することもでき、この場合には、搬送機構はユニットを双方向に搬送するために構成されている。
【0024】
本発明によるシステムの一つの別の有利な構成では、それぞれが、一つの冷却ユニットと、一つの加熱ユニットと、一つの冷却ユニットと、一つの充填/搬出ユニットとから成り、特に記載の順序で設けられている、固定されている複数のユニットグループが列を成して配置されており、この場合には、プロセスボックスを搬送することができ、また搬送機構はプロセスボックスを双方向に搬送するために構成されている。それとは異なり、各ユニットを搬送できるようにし、且つ、プロセスボックスを固定することもでき、この場合には、搬送機構はユニットを双方向に搬送するために構成されている。
【0025】
本発明によるシステムの一つの別の有利な構成では、それぞれが、一つの冷却ユニットと、一つの加熱ユニットと、一つの充填/搬出ユニットとから成り、特に記載の順序で設けられている、固定されている複数のユニットグループが列を成して配置されており、この場合には、プロセスボックスを搬送することができ、また搬送機構はプロセスボックスを双方向に搬送するために構成されている。それとは異なり、各ユニットを搬送できるようにし、且つ、プロセスボックスを固定することもでき、この場合には、搬送機構はユニットを双方向に搬送するために構成されている。
【0026】
本発明によるシステムの一つの別の有利な構成では、プロセスボックスと、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットとの間の相対運動が行われている間は、ポンプ装置及び/又はガス供給装置及び/又は温度調整乃至冷却装置がプロセスボックスに常時結合されている。
【0027】
更に本発明は、コーティングされた基板を処理するための方法に関し、この方法は以下のステップを備えている:
−真空化可能なプロセスボックスの中空部に、少なくとも一つのコーティングされた基板を充填するステップ、
−プロセスボックスの中空部を気密に閉鎖するステップ、
−プロセスボックスの中空部をポンピングするステップ、
−特に中空部を少なくとも一種類の不活性ガスによってパージするために、及び/又は、中空部に少なくとも一種類のプロセスガスを充填するために、プロセスボックスの中空部に少なくとも一種類のガスを負圧又は正圧によって充填するステップ、
−プロセスボックスの外側に配置されている放射加熱器によって形成され、プロセスボックスの、熱処理に使用される少なくとも一つのケーシングセクションに入射する電磁熱放射によって基板を熱処理するステップ、
−高温の基板を冷却するステップ、
−プロセスボックスから基板を取り出すステップ。
【0028】
プロセスボックスが閉じられた搬送区間に沿って単方向に循環する、本発明による方法の一つの有利な構成では、プロセスボックスに基板を充填するための充填ユニットと、基板を熱処理するための少なくとも一つの加熱ユニットと、基板を冷却するための少なくとも一つの冷却ユニットと、プロセスボックスから基板を取り出すための搬出ユニットとにプロセスボックスが順次連続して搬送される。
【0029】
本発明による方法の一つの別の有利な構成は以下のステップを備えている:
−固定されている充填/搬出ユニットによって、搬送可能なプロセスボックスに基板を充填するステップ、
−プロセスボックスを、特に一方向において、固定されている加熱ユニットに搬送し、基板を熱処理するステップ、
−プロセスボックスを、特に前述の一方向において、又はその方向の逆方向において、固定されている冷却ユニットに搬送し、基板を冷却するステップ、
−プロセスボックスを、特に前述の逆方向において、充填/搬出ユニットに搬送し、基板を取り出すステップ。
【0030】
本発明による方法の一つの代替的な構成は以下のステップを備えている:
−搬送可能な充填/搬出ユニットによって、固定されているプロセスボックスに基板を充填するステップ、
−充填/搬出ユニットを、特に一方向において、プロセスボックスから離すステップ、
−加熱ユニットを、特に前述の一方向において、プロセスボックスに搬送し、基板を熱処理するステップ、
−加熱ユニットを、特に前述の方向とは異なる方向において、プロセスボックスから離すステップ、
−冷却ユニットを、特に前述の一方向において、又はその方向の逆方向において、プロセスボックスに搬送し、基板を冷却するステップ、
−冷却ユニットを、特に前述の一方向において、又は前述の逆方向において、プロセスボックスから離すステップ、
−充填/搬出ユニットを、特に前述の逆方向において、プロセスボックスに搬送し、基板を取り出すステップ。
【0031】
本発明による方法の一つの別の有利な構成は以下のステップを備えている:
−固定されている第1の充填/搬出ユニットによって、搬送可能な第1のプロセスボックスに第1の基板を充填するステップ、
−固定されている第2の充填/搬出ユニットによって、搬送可能な第2のプロセスボックスに第2の基板を充填するステップ、
−第1のプロセスボックスを、特に一方向において、固定されている加熱ユニットに搬送し、第1の基板を熱処理するステップ、
−第1のプロセスボックスを、特に前述の方向の逆方向において、固定されている第1の冷却ユニットに搬送し、第1の基板を冷却するステップ、
−第2のプロセスボックスを、特に前述の逆方向において、加熱ユニットに搬送し、第2の基板を熱処理するステップ、
−第2のプロセスボックスを、特に前述の一方向において、固定されている第2の冷却ユニットに搬送し、第2の基板を冷却するステップ、
−第1のプロセスボックスを、特に前述の逆方向において、第1の充填/搬出ユニットに搬送し、第1の基板を取り出すステップ、
−第2のプロセスボックスを、特に前述の一方向において、第2の充填/搬出ユニットに搬送し、第2の基板を取り出すステップ。
【0032】
本発明による方法の一つの代替的な構成は以下のステップを備えている:
−第1の充填/搬出ユニットによって、固定されている第1のプロセスボックスに第1の基板を充填するステップ、
−第1の充填/搬出ユニットを、特に一方向において、第1のプロセスボックスから離すステップ、
−第2の充填/搬出ユニットによって、固定されている第2のプロセスボックスに第2の基板を充填するステップ、
−第2の充填/搬出ユニットを、特に前述の方向の逆方向において、第2のプロセスボックスから離すステップ、
−加熱ユニットを、特に前述の一方向において、第1のプロセスボックスに搬送し、第1の基板を熱処理するステップ、
−加熱ユニットを、特に前述の逆方向において、第1のプロセスボックスから離すステップ、
−第1の冷却ユニットを、特に前述の一方向において、第1のプロセスボックスに搬送し、第1の基板を冷却するステップ、
−第1の冷却ユニットを、特に前述の逆方向において、第1のプロセスボックスから離すステップ、
−加熱ユニットを、特に前述の逆方向において、第2のプロセスボックスに搬送し、第2の基板を熱処理するステップ、
−加熱ユニットを、特に前述の一方向において、第2のプロセスボックスから離し、第2の基板を熱処理するステップ、
−第2の冷却ユニットを、特に前述の逆方向において、第2のプロセスボックスに搬送し、第2の基板を冷却するステップ、
−第2の冷却ユニットを、特に前述の一方向において、第2のプロセスボックスから離すステップ、
−第1の充填/搬出ユニットを、特に前述の逆方向において、第1のプロセスボックスに搬送し、第1の基板を取り出すステップ、
−第2の充填/搬出ユニットを、特に前述の一方向において、第2のプロセスボックスに搬送し、第2の基板を取り出すステップ。
【0033】
基板の熱処理中に少なくとも一種類のガス状物質がコーティングされた基板から生じる、本発明による方法の一つの別の有利な構成は以下のステップを備えている:
−熱処理中に、また必要に応じて熱処理後に、プロセスボックスの少なくとも一つの(第1の)ケーシングセクションを温度調整又は能動的に冷却するステップ、
−基板の熱処理中に生じるガス状物質の、温度調整又は冷却された(第1の)ケーシングセクションへの拡散を、コーティングされた基板と温度調整又は冷却された(第1の)ケーシングセクションとの間に配置されており、且つ、一つ又は複数の開口部が設けられている離隔壁によって抑制するステップ。
【0034】
本発明による方法においては、プロセスボックスの、熱放射が入射することによって熱処理に使用される少なくとも一つのケーシングセクションは温度調整又は冷却されない。
【0035】
本発明による方法の一つの別の有利な実施の形態においては、離隔壁と温度調整又は冷却される(第1の)ケーシングセクションとの間に設けられている中間空間が少なくとも部分的に、又は完全に、電磁熱放射によって照射されない。
【0036】
本発明による方法の一つの別の有利な実施の形態においては、離隔壁の一つ又は複数の開口部の(総)開口部面積が熱処理中に、離隔壁の加熱によって、初期値(熱処理前の総開口部面積)の最大で50%まで、有利には最大で30%まで、更に有利には最大で10%まで減少する。
【0037】
本発明による方法の一つの別の有利な実施の形態においては、プロセスボックスの中空部がコーティングされた基板の熱処理前に真空化される、及び/又は、プロセスボックスの中空部にプロセスガスが(負圧又は正圧を用いて)充填される。
【0038】
プロセスボックスが固定されており、且つ、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットがその固定されているプロセスボックスに相対的に搬送される、本発明による方法の種々の構成においては、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットの各ユニットを、他の各ユニットに依存せずに、個別に移動させることができる。しかしながら、加熱ユニット、冷却ユニット及び充填/搬出ユニットを一緒に(同期させて)移動させることも可能である。
【0039】
上記において述べたように、コーティングされた基板を処理するためのプロセスボックスを、選択的に搬送可能なプロセスボックス又は固定のプロセスボックスとして使用することができる。
【0040】
本発明において、「基板」という用語は、相互に背中合わせの二つの表面を備えており、且つ、それら二つの表面の内の一方には一般的に複数の層から成る層構造が設けられている、平坦な物体を意味している。通常の場合、基板の他方の表面はコーティングされていない。例えば、そのような基板は、薄膜ソーラーモジュールを製造するための、RTP熱処理を実施する必要がある、化合物半導体(例えばカルコパイライト化合物又はケステライト化合物)の前駆体層でコーティングされた基板である。
【0041】
プロセスボックスは、気密に閉鎖可能な(真空化可能な)中空部を形成又は画定しているケーシングを有している。中空部の内のりの高さは、有利には、可能な限り短時間でガスが排気され、且つ、RTP熱処理時の酸素含有量及び水分圧に関する高い要求を満たすことができるように決定されている。基本的には、ケーシングを意図する用途に適したあらゆる材料から、例えば金属、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、カーボンファイバで補強された炭素材料又はグラファイトから作成することができる。
【0042】
その際、プロセスボックスのケーシングが一つ又は複数のケーシングセクションを有しており、各ケーシングセクションは、そのケーシングセクションに入射する電磁熱放射によって熱処理することができるように構成されていることが重要である。このために、熱処理に使用されるケーシングセクションは、基板を処理するための電磁熱放射に対して透明、半透明、又は不透明で良い。例えば、熱処理に使用されるケーシングセクションはガラスセラミックから形成されている。熱処理に使用されるケーシングセクションは特に、放射加熱器の電磁熱放射を少なくとも部分的に、とりわけ完全に吸収することに適している材料(例えばグラファイト)も含有することができるか、又はその種の材料から形成することもできる。加熱されたケーシングセクションは、基板を加熱するための二次熱源として使用することができ、これによって特に熱分布を均一にすることができる。
【0043】
プロセスボックスのケーシングは更に一つ又は複数の温度調整可能又は能動的に冷却可能な(第1の)ケーシングセクションを有しており、その(第1の)ケーシングセクションの温度を所定の温度値に調整することができるか、又は(第1の)ケーシングセクションを能動的に冷却することができる。このために、各ケーシングセクションは(外部の)温度調整乃至冷却装置と熱技術的に結合可能であるか又は結合されている。更に、ケーシングは一つ又は複数の、温度調整不可能な、即ち温度調整乃至冷却装置に結合不可能であるか又は結合されていない(第2の)ケーシングセクションを有しており、この(第2の)ケーシングセクションは特に、そのケーシングセクションに入射する電磁熱放射によって熱処理することができる、つまり放射加熱器の放射場内に位置しているケーシングセクションである。
【0044】
温度調整可能又は冷却可能なケーシングセクションを、基板の温度に関連させて、また、入射する電磁熱放射によって熱処理することができ、且つ、放射加熱器の放射場内に位置しているケーシングセクションの温度に関連させて能動的に冷却することができる。プロセスボックスの温度調整可能又は冷却可能なケーシングセクションを、コーティングされた基板の熱処理前、熱処理中及び/又は熱処理後に温度調整する(能動的に冷却する)ことができる。
【0045】
上記において使用したように、また下記においても使用するように、「冷却可能」という用語は、熱処理時の基板の温度、又は、入射する電磁熱放射によって熱処理することができ、且つ、放射加熱器の放射場内に位置しているケーシングセクションの温度よりも低い温度に(第1の)ケーシングセクションの温度を調整すること、又は、(第1の)ケーシングセクションを冷却することを意味している。例えば、ケーシングセクションは20℃から200℃までの範囲の温度に調整される又は冷却される。この温度調整によって、真空技術においては一般的に使用されているが、200℃を超える温度には長時間耐えることができない、プラスチック製シール(エラストマ、フルオロエラストマ)及び他の比較的廉価な標準的な構成要素をプロセスボックスの真空密閉に使用することができる。
【0046】
更にプロセスボックスのケーシングは、中空部に開口している、(例えば弁によって)閉鎖可能な少なくとも一つのガス流路を有しており、このガス流路は中空部を真空化するため、またプロセスガスを中空部に導入するために使用される。このためにガス流路を特に中間空間に開口させることができる。プロセスガスは例えば、反応性ガス、例えばH
2S、H
2Se、S蒸気、Se蒸気又はH
2、並びに、不活性ガス、例えばN
2、He又はArを含むことができる。
【0047】
プロセスボックスにおいては、ケーシングによって形成されている中空部が、少なくとも一つの離隔壁によって、コーティングされた基板を収容するためのプロセス空間と中間空間とに分けられている。離隔壁は、コーティングされた基板と、温度調整(能動的に冷却)される、即ち冷却装置に結合可能な又は結合されているケーシングセクションとの間に配置されている。プロセス空間は、少なくとも一つの離隔壁と、温度調整不可能な、即ち冷却装置と結合されていない、プロセスボックスの一つ又は複数のケーシングセクションとだけによって画定される。
【0048】
離隔壁は、熱処理中にはプロセス空間と中間空間との間のガス交換に関する拡散バリア(蒸気バリア)として使用されるが、しかしながら熱処理前及び熱処理後には少なくとも一時的にプロセス空間と中間空間との間のガス交換を実現し、それによって、離隔壁を介したプロセス空間からのガス状物質の排気、パージガスによるパージ並びにプロセスガスの充填が行われることが重要である。このために、離隔壁は一つ又は複数の開口部又は貫通部を有しており、それらによって、プロセス空間及び中間空間は相互に流体接続されている。一般的に、開口部はあらゆる任意の形状、例えばスリット又は円孔の形状を有することができ、また周縁部に配置することもできる。
【0049】
一つの有利な実施の形態においては、離隔壁がケーシング壁までは達していないので、離隔壁とケーシング壁との間には開口部、特に間隙が残存している。
【0050】
特に、離隔壁を多孔性の材料から形成することができるか、又は複数の筒状部(直線状、斜め又は角度付きの複数の筒状部)が設けられている材料から形成することができるか、若しくは、離隔壁はその種の材料を含有することができる。
【0051】
例えば、離隔壁の各開口部の最小寸法、例えば半径又は直径はプロセス空間における気体粒子の平均自由行程の長さよりも大きいが、これは必ずしも必要ではない。
【0052】
従って、コーティングされた基板を処理するためのプロセス空間は離隔壁によって形成され、またプロセス空間はその離隔壁によって中間空間から準気密に仕切られている。プロセス空間と外部環境との間で自由にガス交換を行うことができる開放型のプロセス空間とは異なり、また、プロセス空間と外部環境との間のその種のガス交換が完全に阻止されている気密なプロセス空間とは異なり、プロセス空間と中間空間との間のガス交換が離隔壁によって抑制される。この蒸気バリアは、自由行程の長さの圧力依存性を基礎としている。つまり、ほぼ常圧(700mbarから1000mbar)では、比較的小さい開口部を介して拡散が抑制される。これに対して、中間空間がプレ真空領域の圧力(10μbarから1000μbar)にポンピングされると、自由行程の長さは大きく上昇し、離隔壁はガス交換に対して弱い拡散バリアでしかなくなる。離隔壁を介してプロセス空間をポンピングすることができ、またポンピング後にプロセスガスをプロセスボックスに流入させ、更にプロセス空間にも流入させることができる。特に、準気密な離隔壁によって、易揮発性のカルコゲン成分、例えばセレン又は硫黄の分圧を、熱処理中にプロセス空間において少なくとも十分に一定に維持することができる。
【0053】
一般的に、プロセスボックスは、コーティングされた基板を充填し、また処理された基板を取り出すために開放又は閉鎖することができるように、若しくは組み立て及び(非破壊的に)再び解体することができるように構成されている。
【0054】
プロセスボックスによって多くの利点を達成することができる。つまり、中空部に開口している少なくとも一つの閉鎖可能なガス流路を用いて中空部を気密に形成することによって、特に腐食性のプロセスガスを排気し、且つ、酸素含有量及び水分圧を低減するためのプロセス空間の真空化、並びに、不活性ガスによるパージ及びプロセスガスの充填が実現される。従って、基板を熱処理するためにロック室及びプロセスユニットを気密に又は真空化可能に構成する必要はないので、システムを技術的に非常に簡略化することができ、またシステムの製造及びメンテナンスに関する費用を大幅に低減することができる。しかしながらまた、充填/搬出ユニット、加熱ユニット及び冷却ユニットを、特に排気装置に接続されているが真空化可能なチャンバとしては構成されていない一つの共通の筐体によって包囲できること、又は、その種の筐体によって別個に各ユニットを包囲できることは除外されない。腐食性のプロセスガスはプロセスボックスの中空部にしか存在しないので、システムのコンポーネント、例えばプロセスボックスを搬送するための搬送ローラ又はコーティングされた基板を熱処理するための放射加熱器の摩耗が高まることを回避することができる。更に有利には、システムの真空対応領域(プロセスボックス)において可動部を省略することができる。プロセスボックスの中空部の真空化を高速且つ効果的に達成することができる。このことはプロセスガスの充填にも同様に当てはまり、プロセスガスを費用効果的に最小量で使用することができる。プロセスボックスの少なくとも一つのケーシングセクションの温度調整(能動的な冷却)によって、熱処理中のプロセスボックスの特に真空対応コンポーネントの摩耗を低減することができ、また必要に応じて、熱処理後のコーティングされた基板の能動的な冷却を支援することができる。拡散バリア又は蒸気バリアとして機能する離隔壁によって、熱処理中に生じる揮発性の成分、例えばカルコゲン元素である硫黄及びセレンの、温度調整された(能動的に冷却された)ケーシングセクションにおける凝集を阻止することができ、それによってプロセス雰囲気における揮発性の成分の損失は最小になり、またプロセス雰囲気における揮発性の成分の分圧は少なくとも十分に一定に維持される。従って、揮発性のカルコゲン元素の消費量を最小にすることができ、また、作成される化合物半導体の品質も改善することができる。更に、離隔壁によって、プロセス空間をプロセスボックスの中空部に比べてより一層縮小することができる。気密なプロセスボックスによって、プロセスボックスに充填された基板は周囲の影響から適切に保護されている。製造システムにおいて、コーティングされた基板が充填されたプロセスボックスを、そのコーティングされた基板をプロセスボックスから取り出すことなく、種々のプロセスユニット間で移動させることができる。プロセスボックスには選択的に一つ又は複数のコーティングされた基板を充填することができる。
【0055】
上記において既に述べたように、離隔壁によって中空部がプロセス空間と中間空間に準気密に分けられ、そのために離隔壁には一つ又は複数の開口部が設けられている。有利には、コーティングされた基板の熱処理中に、その熱処理によって生じるガス状物質のプロセス空間からの質量損失が、その熱処理中に生じるガス状物質の質量の50%未満、有利には20%未満、特に有利には10%未満であるように、離隔壁は形成されている。このために有利には、一つ又は複数の開口部の(総)開口部面積を、プロセス空間の内側の表面(内面)の面積で除算することにより得られる面積比が5×10
-5から5×10
-4までの範囲にあるように、離隔壁は形成されている。これによって有利には、離隔壁の一つ又は複数の開口部の(総)開口部面積は、一方では、プロセス空間の高速な真空化並びにパージガス又はプロセスガスの充填を実現するためには十分に大きいこと、他方では、熱処理中にプロセス空間において生じる揮発性の成分に対する効果的な蒸気バリア又は拡散バリアとして離隔壁を使用するためには十分に小さいことが達成される。
【0056】
プロセスボックスの特に有利な一つの実施の形態において、離隔壁は、一つ又は複数の開口部の(総)開口部面積を熱処理中の離隔壁の加熱によって、初期値(熱処理前の総開口部面積)の最大で50%まで、有利には最大で30%まで、更に有利には最大で10%まで減少させる熱膨張率を有する材料を含有しているか、又はその種の材料から形成されている。このために有利には、離隔壁は5×10
-6K
-1よりも高い熱膨張率を有する材料を含有しているか、又はその種の材料から形成されている。このようにして、一方では、比較的温度が低い状態においては比較的大きい(総)開口部面積によって、プロセス空間の非常に効率的な排気並びにプロセス空間へのパージガス又はプロセスガスの充填が達成され、他方では、熱処理中の比較的温度が高い状態での熱膨張により生じる比較的小さい(総)開口部面積によって、熱処理中に生じるガス状物質のプロセス空間から中間空間への拡散の非常に効果的な抑制が達成される、温度制御型の離隔壁が得られる。特に、熱処理中に(総)開口部面積が少なくともほぼゼロに低減され、その結果、熱処理中のプロセス空間と中間空間との間のガス交換が実質的に完全に阻止されるように、離隔壁を形成することができる。
【0057】
プロセスボックスの一つの有利な実施の形態においては、プロセスボックスのケーシングが底面、カバー、並びに、それらの底面とカバーを相互に接続するフレームを有している。底面及びカバーは例えばそれぞれがプレートとして実現されており、その場合、底面及び/又はカバーは、底面の下面及び/又はカバーの上面に供給された熱放射の放射エネルギによって、コーティングされた基板を熱処理できる材料(例えばガラスセラミック)から形成されている。温度調整可能な(能動的に冷却可能な)ケーシングセクションは、少なくとも一つのフレームセクションによって形成される。同様に、中空部に開口している閉鎖可能な少なくとも一つのガス流路をフレームに設け、中空部を真空化し、所定のプロセスステップ中に、プロセス空間に所期のように所定のガス雰囲気を設定することができる。
【0058】
プロセスボックスが組み立てられた状態では中空部が気密に形成されているが、例えばカバーをフレームから取り外し可能に形成することができるので、コーティングされた基板をプロセス空間に充填すること、又は処理された基板をプロセス空間から取り出すことを容易に実現することができる。プロセスボックスの特に有利な一つの実施の形態においては、フレームが、底部に固定されている第1のフレーム部と、カバーに固定されている第2のフレーム部とを有しており、中空部を形成するためにそれら二つのフレーム部を相互に気密に接合させることができる。
【0059】
これに代わる一つの実施の形態では、プロセスボックスが、有利には温度調整可能な(能動的に冷却可能な)閉鎖部によって例えば側面において気密に閉鎖することができる一つのケーシング開口部が設けられているワンピースのケーシングセクションを備えたケーシングを有している。離隔壁は例えば閉鎖部に平行に設けられている。
【0060】
更に本発明は、上述のように構成されているプロセスボックスと、そのプロセスボックスの熱処理に使用される少なくとも一つのケーシングセクションに隣接して配置されている、電磁熱放射を形成するための一つ又は複数の放射加熱器と、少なくとも一つの温度調整可能な(能動的に冷却可能な)ケーシングセクションを温度調整するために(能動的に冷却するために)、ケーシングセクションに熱技術的に結合されている、温度調整乃至冷却装置とを備えている、コーティングされた基板を処理するための装置に関する。
【0061】
上述の装置において特に有利には、放射加熱器は、中間空間が少なくとも部分的に、特に完全に、放射加熱器の共通の放射場外に位置するように配置されている。この措置によって、離隔壁とプロセスボックスの温度調整可能な(能動的に冷却される)ケーシングセクションとの間に温度勾配(温度バリア)を生じさせることができる。コーティングされた基板を熱処理するためのプロセス温度が離隔壁において達成されている温度勾配が有利である。このために、放射加熱器を例えばプロセス空間の上方及び/又は下方にのみ配置することができる。
【0062】
本発明の種々の構成は単独で、又は任意の組み合わせで実現できるものと解される。特に、上述の種々の特徴及び下記において説明する種々の特徴は、記述した組み合わせでのみ使用できるのではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、別の組み合わせでも使用することができるか、又は単独で使用することができる。
【0063】
以下では、添付の図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。図面は簡略化されたものであり、縮尺通りに描かれたものではない。