特許第5933861号(P5933861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5933861絶縁高電圧電力ケーブルを提供するための管状の絶縁装置、高電圧電力設備、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933861
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】絶縁高電圧電力ケーブルを提供するための管状の絶縁装置、高電圧電力設備、および方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 9/00 20060101AFI20160602BHJP
   H01B 7/04 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   H01B9/00 Z
   H01B7/04
【請求項の数】25
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-556504(P2015-556504)
(86)(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公表番号】特表2016-512017(P2016-512017A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】EP2014052390
(87)【国際公開番号】WO2014122244
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年10月29日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2013/052366
(32)【優先日】2013年2月7日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508254509
【氏名又は名称】エービービー テクノロジー エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ザント, ニコラウス
(72)【発明者】
【氏名】ロックス, イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ホー, チャウ−ホン
(72)【発明者】
【氏名】オウダロフ, アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】グレマウド, ロビン
(72)【発明者】
【氏名】コルンマン, グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン, ローレンツ
(72)【発明者】
【氏名】ロガキス, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー, マルコ
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−109935(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01585204(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00− 7/20
H01B 9/00
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気導体セグメント(104、306、406)を管状の電気絶縁装置(108、208、908)内に挿入して高電圧送電ケーブル設備を形成するための、管状の電気絶縁装置(108、208、908)であって、
当該管状の電気絶縁装置(108、208、908)は、
屈曲可能であるという意味において可撓であり、当該管状の電気絶縁装置(108、208、908)へと挿入された前記電気導体(104、306、406)への電気的接触を確立させるための内側周状導電層(110、210、810)を備えており、且つ
当該管状の電気絶縁装置(108、208、908)に挿入された当該複数の電気導体(104、306、406)を、当該管状の電気絶縁装置(108、208、908)の外部から電気的に絶縁するように構成される
ことを特徴とする管状の電気絶縁装置。
【請求項2】
当該電気絶縁装置(108、208、908)は、輸送のためのドラムに巻き付けることができるように可撓である、ことを特徴とする請求項1に記載の管状の電気絶縁装置(108、208、908)。
【請求項3】
前記内側周状導電層(110、210)は、前記輸送のためのドラムに巻き付けられたときに自身のリング状の断面が維持されるように寸法的に安定である、ことを特徴とする請求項2に記載の管状の電気絶縁装置(108、208、908)。
【請求項4】
当該電気絶縁装置(108、208、908)は、自身の曲げ半径が自身の外径の4〜20倍の範囲であるように可撓である、ことを特徴とする請求項2または3に記載の管状の電気絶縁装置(108、208、908)。
【請求項5】
前記曲げ半径は、当該管状の電気絶縁装置(108、208、908)の外径の4〜10倍の範囲である、ことを特徴とする請求項4に記載の管状の電気絶縁装置(108、208、908)。
【請求項6】
前記内側周状導電層(110、210)は、波状管または帯を巻いてなるホースである、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の管状の電気絶縁装置(108、208、908)。
【請求項7】
当該電気絶縁装置(108、208、908)は、前記導電内側層(110、210)の外側に位置して該導電内側層(110、210)を囲んでいる少なくとも1つの周状の電気絶縁体(112、212)と、該少なくとも1つの周状の電気絶縁体(112、212)の外側に位置して該少なくとも1つの周状の電気絶縁体(112、212)を囲んでいる周状の導電外側層(114、214)とを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の管状の電気絶縁装置(108、208、908)。
【請求項8】
前記導電内側層および導電外側層(110、114、210、214)の各々は、金属または金属組成物で作られ、あるいは導電ポリマーまたはポリマー組成物で作られている、ことを特徴とする請求項に記載の管状の電気絶縁装置(108、208、908)。
【請求項9】
前記導電内側層および導電外側層(110、114、210、214)は、前記少なくとも1つの周状の電気絶縁体(112、212)を水分および機械的な摩耗から保護する保護バリアを形成するように構成されている、ことを特徴とする請求項またはに記載の管状の電気絶縁装置(108、208、908)。
【請求項10】
前記導電内側層および導電外側層(110、114、210、214)のうちの少なくとも1つは、外側および/または内側において半導体材料で覆われている、ことを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の管状の電気絶縁装置(108、208、908)。
【請求項11】
前記内側層は、少なくとも80mm、好ましくは少なくとも120mmの内径を有する、ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の管状の電気絶縁装置。
【請求項12】
互いに平行に配置され、高電圧ケーブルの内部電気導体(104、306、406)を形成する複数の細長い電気導体セグメント(102、302、402、502、602)と、
前記内部電気導体を収容および包囲するように配置された細長い管状の電気絶縁装置(108、208、908)と
を備えている高電圧送電ケーブル設備であって、
前記管状の電気絶縁装置(108、208、908)は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の管状の電気絶縁装置である、ことを特徴とする高電圧送電ケーブル設備。
【請求項13】
前記導体(104、306、406、904)の少なくとも1つの導体セグメント(102、302、402、502、602、902)が、該導体(104、306、406、904)の少なくとも1つの別の平行に延びている導体セグメント(102、302、402、502、602、902)に電気的に接触している、ことを特徴とする請求項12に記載の高電圧送電ケーブル設備。
【請求項14】
前記個々の電気導体セグメント(102、302、402、502、602)が、ドラムに巻き付けることができるように可撓である、ことを特徴とする請求項12または13に記載の高電圧送電ケーブル設備。
【請求項15】
前記個々の電気導体セグメント(102、302、402、502、602)は、該導体セグメントが請求項4に記載の絶縁装置の曲げ性に適合するような曲げ半径を有するように可撓である、ことを特徴とする請求項14に記載の高電圧送電ケーブル設備。
【請求項16】
前記個々の電気導体セグメント(102、302、402、502、602)の曲げ半径は、該導体セグメントが請求項5に記載の絶縁装置の曲げ性に適合するような曲げ半径である、ことを特徴とする請求項15に記載の高電圧送電ケーブル設備。
【請求項17】
前記複数の細長い電気導体セグメント(102、302、402、502、602)は、当該高電圧電力ケーブル設備が曲げられるときに前記電気導体セグメント(102、302、402、502、602)が前記絶縁装置(108、208、908)に対して動くことができるように、前記絶縁装置(108、208、908)に対して少なくとも部分的に自由に配置されている、ことを特徴とする請求項1216のいずれか一項に記載の高電圧送電ケーブル設備。
【請求項18】
前記導体(104、306、406、904)の平行に延びている導体セグメント(102、302、402、502、602、902)の数は、少なくとも4である、ことを特徴とする請求項1217のいずれか一項に記載の高電圧送電ケーブル設備。
【請求項19】
前記導体(104、306、406、904)の導電断面積が、少なくとも3000mmである、ことを特徴とする請求項1218のいずれか一項に記載の高電圧送電ケーブル設備。
【請求項20】
前記絶縁装置(108、208、908)の内部断面積が、前記導体(104、306、406、904)の導電断面積と余分の断面積との和であり、該余分な断面積は、前記絶縁装置の前記内部断面積の少なくとも10%である、ことを特徴とする請求項1219のいずれか一項に記載の高電圧送電ケーブル設備。
【請求項21】
可撓絶縁高電圧送電ケーブルを提供するための方法であって、
複数の可撓な細長い電気導体セグメントを用意するステップ(701)と、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の可撓な細長い管状の電気絶縁装置を用意するステップ(702)と、
前記複数の細長い電気導体セグメントおよび前記電気絶縁装置を、組み立てられていない状態で、設置場所へと運ぶステップ(705)と、
前記複数の細長い電気導体セグメントからなる電気導体を形成し、さらに該電気導体と前記管状の電気絶縁装置とからなる可撓絶縁高電圧電力ケーブルを形成するために、前記複数の細長い電気導体セグメントおよび前記電気絶縁装置を現場で組み立てるステップ(706)と
を含んでおり、
前記複数の細長い電気導体セグメントおよび前記電気絶縁装置を組み立てるステップは、前記複数の細長い電気導体セグメントを前記管状の電気絶縁装置へと挿入することを含む方法。
【請求項22】
前記複数の細長い電気導体セグメントおよび前記電気絶縁装置を組み立てるステップ(706)は、前記複数の細長い電気導体セグメントを互いに平行かつ互いに電気的に接触させて配置して前記電気導体を形成することを含む、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記管状の電気絶縁装置への挿入に先立って前記複数の細長い電気導体セグメントを互いに平行かつ互いに電気的に接触させて配置して前記電気導体を形成する、ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記管状の電気絶縁装置の内部において前記複数の細長い電気導体セグメントを互いに平行かつ互いに電気的に接触させて配置して前記電気導体を形成する、ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の細長い電気導体セグメントおよび前記電気絶縁装置を運ぶステップ(705)は、前記複数の細長い電気導体セグメントおよび前記電気絶縁装置を組み立てられていない状態で少なくとも1つのドラムまたはロール(802)に個別に巻き付けるステップ(703、704)を含む、ことを特徴とする請求項2124のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様において、ケーブル用の細長い管状の電気絶縁装置に関する。
【0002】
第2の態様において、本発明は、互いに平行に配置されて高電圧電力ケーブルの内部電気導体を形成する複数の細長い導体セグメントと、内部電気導体を収容および包囲するように配置された細長い管状の電気絶縁装置とを備える高電圧電力ケーブル設備に関する。
【0003】
第3の態様において、本発明は、可撓絶縁高電圧ケーブルを供給するための方法に関する。
【0004】
導体セグメントは、それぞれの端部において別の導体セグメントにつなぎ合わせられるとともに、平行に延びている他の導体セグメントと協働して導体を形成するセグメントとして理解されるべきである。電力ケーブルセグメントは、それぞれの端部において別のケーブルセグメントにつなぎ合わせられるセグメントとして理解されるべきである。
【背景技術】
【0005】
長距離の送電または配電のための技術の開発は、一般に、例えば大規模な太陽光発電場、いくつかの接続された風力発電場、または大型水力発電所などの遠方の再生可能な発電施設を大規模な負荷中心へと接続する必要性によって動機付けられている。加えて、異なる電力系統を互いに接続するという業界の趨勢が存在する。先行技術において、3GWを超える能力の送電は、一般に、唯一の経済的に無理がない選択肢として、架空送電線に限られている。しかしながら、高電圧または超高電圧の架空送電線は、人口密度の高い地域の近く/内部を通過する場合に、視覚的、電気的、および磁気的な公害を引き起こす。さらに、架空送電線は大規模なルートを必要とし、したがって設置のための土地が必要であり、これが土地の値段が高く、したがってコストが生じる人口密度の高い地域において問題となる。したがって、送電のために地下および海底の電力ケーブルを使用することが、ケーブルは鉄塔を必要とせず、地下ケーブルとして設置されて目につかないため、魅力的な代案である。しかしながら、送電を増やすように地下および海中の電力ケーブルを拡大することは、内部導体のサイズおよびケーブルの絶縁の厚さの限界に起因して制約される。大容量の送電システムにおいて送電される電力を、電圧を高め、あるいは電流を増やすことによって増やすことができる。より高い電圧は、電界を強めない場合、電力ケーブルの絶縁の厚さを増やすことを必要とする。より多くの電流の達成は、ケーブルの絶縁への熱的負荷を高めない場合、電力ケーブルの内部電気導体の断面積を増やすことを必要とし、あるいは内部電気導体についてより伝導度の高い材料を必要とする。
【0006】
本発明の発明者は、先行技術の電力ケーブル技術の拡大を制約する因子が、先行技術の電力ケーブルの断面積を電力ケーブルの全体としての柔軟性を犠牲にすることなく増やすことが不可能であり、断面積の大きい電力ケーブルの柔軟性の欠如は、長すぎる電力ケーブルセグメントの、製造場所から設置場所への輸送を過度に困難にし、あるいは妨げるがゆえに、結果として製造される電力ケーブルセグメントの長さを短くしなければならないという事実にあると特定した。一般に、電力ケーブルは、ケーブル押し出しラインにおける押し出しによって製造可能であり、設置の現場における継ぎ目の数を最小限に抑えるために、押し出しによる電力ケーブルセグメントを可能な限り長くなるように製造することが望ましい。電力ケーブルセグメントの長さが短くなると、送電線の全体を設置するために、電力ケーブルセグメントの接続のための継ぎ目の数が多くなる。したがって、継ぎ目の数が増えるにつれて、設置の時間が長くなり、稼働時の送電または配電系統の長期の電気的な信頼性が低下する。
【0007】
米国特許第5043538号明細書が、中央の電気導体と、プラスチックなどの絶縁材料からなる被覆層と、複数の個別の導体で形成され、半導体材料からなる層に埋め込まれている遮へい層と、重なり合った防湿金属箔材料の層と、絶縁材料からなるさらなる被覆層とを備える防水ケーブルの構造を記載している。
【0008】
国際公開第02/27734号パンフレットが、距離を隔てた送電のための電気ケーブルシステムを開示している。このケーブルシステムは、一式の押し出しによるアルミニウム管導体を含んでいる。米国特許第4298058号明細書が、3本の撚り合わせられた絶縁導体をゴム弾性内側スリーブで包んで備えており、この内側スリーブ上に内側の銅管と外側の鋼管とからなる波状二重管構造が位置している防湿電気ケーブルを記載している。
【0009】
米国特許第7999188(B2)号明細書が、電気導体を囲む電気絶縁層と、電気絶縁層を囲む鞘とを備える電気エネルギ(とくには、中または高電圧の電気エネルギ)の輸送または分配のためのケーブルを開示している。鞘が、機械的特性、とりわけ熱圧力への耐性を損なうことなく、柔軟性の改善を保証するように構成される旨が開示されている。
【0010】
欧州特許出願公開第1585204号明細書が、設置ダクトが3相のケーブルを収容しているAC送電のためのケーブル設備を開示している。各相のケーブルは、自身の絶縁を有している。設置ダクトは、接地を保証するために充分に厚い金属の内側スクリーンで構成されている。ケーブルは、現場において組み立てられ、設置ダクトは、平たい帯を相ケーブルの周囲において丸め、帯の辺を互いに溶接することで、円形の形状を得ている。ダクトの材料を帯として巻くことができるため、輸送が容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4298058号明細書
【特許文献2】米国特許第5043538号明細書
【特許文献3】米国特許第7999188(B2)号明細書
【特許文献4】国際公開第02/27734号パンフレット
【特許文献5】欧州特許出願公開第1585204号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、電力ケーブルの輸送の限界に関して製造される電力ケーブルセグメントの長さを短くすることなく、電力ケーブル(とくには、海底設置または地下ケーブルなどの陸上設置の電力ケーブル)によって送電される電力を大きくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上述の目的は、本発明の第1の態様によれば、ケーブル用の管状の電気絶縁装置に関する独立請求項の冒頭部分に記載の種類の管状の電気絶縁装置が、ケーブル用の管状の電気絶縁装置に関する独立請求項の特徴付け部分に記載の特定の特徴を備えることで達成される。すなわち、管状の電気絶縁装置が、複数の電気導体セグメントを挿入によって受け入れるように構成され、この管状の電気絶縁装置は、可撓であり、この管状の電気絶縁装置へと挿入された電気導体への電気的接触を確立させるための内側円周方向の導電層を備えている。
【0014】
可撓が、絶縁装置の中心線を通る任意の平面における可撓性を意味し、すなわち可撓性が絶縁装置を曲げることを可能にすることが、文脈から明らかであると思われる。一般に、本発明による絶縁装置は、1:6.25〜1:25程度、典型的には1:10〜1:15程度で曲げることができる。曲げ性は、絶縁装置の直径と可能な曲げ半径との間の関係として測定される。可能な曲げ半径は、顕著な変形、割れ、または他の欠陥を伴うことなくその半径で曲げるために過度の力を使用することなく絶縁装置を曲げることができる半径に相当する。
【0015】
このように、本発明によれば、絶縁装置は、導体とは別の存在であり、絶縁装置へと導体を挿入することでケーブルを形成することができる。これにより、本発明の絶縁装置は、好都合なやり方で、きわめて大きな電力を送電するための高電圧電力ケーブルを得るための必須の構成要素を提供する。
【0016】
本発明の絶縁装置によれば、ケーブルセグメントを過度に短くすることなく伝統的なケーブルにおいて達成できるよりもはるかに大きな電力を可能にするケーブルを得ることができると考えられる。伝統的なケーブル技術において1GWを上回る大きさの電力を送電するためには、電圧を上述の種類の問題を引き起こす水準まで高めるか、あるいは複数のケーブルを並列に使用する必要がある。320kVなどの「控え目な」高電圧およびただ1本のケーブルを使用する選択肢は、伝統的なケーブルではドラムにて輸送されるように曲げることが不可能な大きな導体の面積になると考えられる。結果として、ケーブルセグメントがきわめて短くなり、継ぎ目の数が多くなると考えられる。これが、本発明による絶縁装置を備えるケーブルによれば、回避される。
【0017】
本発明の原理を、
・導電の断面積を大きくし、高電圧を「控え目に」保つことによって電流を増やし、
・固体絶縁管を導体ストランドから分離し、
・これによって長いセグメントを実現し、
・もって送電GW/km当たりの継ぎ目の数を少なくする
と要約することができる。
【0018】
この絶縁装置を使用して形成されるケーブルの曲げ性は、数百メートルのセグメント長を有する組み立てられたケーブルをドラムに巻き付けて輸送することを可能にする。
【0019】
代案として、絶縁装置の特定の構成は、導体セグメントおよび絶縁装置が個別に運ばれる現場でケーブルを組み立てることも可能にしうる。これにより、個々の未組み立ての部品の輸送がより軽量になり、はるかに長いセグメント長で輸送の重量制限(例えば、道路輸送において32トン)に達するようになる。
【0020】
例えば、3GWの電力を従来からのケーブル技術によって320kVの電圧で送電すべき場合、ケーブルを輸送のための曲げに関して過度に剛直にすることなく充分な導電面積を得るために、並列な5本のケーブルが必要になると考えられる。
【0021】
本発明による絶縁装置を有するケーブルにおいては、必要なケーブルはたった1本であり、300メートルを超えるケーブルセグメント長にて組み立てられた状態で輸送することが可能である。そのようなセクタの総重量は、約32tになり、1台のトラックで輸送可能である。
【0022】
本発明による絶縁装置が、挿入されるべき導体セグメントとは別に輸送される場合、絶縁装置の重量だけを重量制限に適合させればよいため、ケーブルセグメントを、この例においてはほぼ700メートルへと長くすることができる。
【0023】
本発明の絶縁装置を備えることができるケーブルは、この例においては、5本の従来型のケーブルを置き換える。結果として、製造コストが低くなり、ケーブル溝に必要な空間も小さくなると考えられる。
【0024】
本発明の絶縁装置の好ましい実施形態によれば、絶縁装置は、輸送のためのドラムに巻き付けることができるように可撓である。
【0025】
この尺度は、標準的なケーブル輸送ドラムの伝統的な最大サイズに関して適切に定められた可撓性の程度を表す。この可撓性の程度は、本発明の絶縁装置の有益な効果が基本的な態様に関して利用されることを保証する。
【0026】
さらなる好ましい実施形態によれば、内側円周方向の導電層は、輸送のためのドラムに巻き付けられたときに自身のリング状の断面が維持されるように寸法的に安定である。
【0027】
このやり方で輸送時の絶縁装置の断面の変形を避けることで、絶縁装置が組み立て場所において組み立てられる場合に適切な状態に保たれ、導体セグメントの挿入を容易にするために現場において再形成の絞りを行う必要がなくなる。さらなる好ましい実施形態によれば、管状の電気絶縁装置は、自身の曲げ半径が自身の外径の4〜20倍の範囲であるように可撓である。
【0028】
好ましくは、この範囲が4〜10倍である。
【0029】
上記指定の曲げ半径の範囲(とくには、狭い範囲)は、一方では輸送の態様を考慮し、他方では安定性などの他の実際的な態様を考慮した本発明の目的に最適化された曲げ性を表す。この文脈において、用語「曲げ半径」が、過度の力を使用せず、あるいは絶縁装置を傷めることなく、絶縁装置を曲げることができる半径を意味することを、理解すべきである。
【0030】
さらなる好ましい実施形態によれば、管状の電気絶縁装置の内側円周方向の導電層は、波状管または帯を巻いてなるホースである。
【0031】
これは、内側層の可撓性を得るためのきわめて好適かつ便利なやり方である。
【0032】
さらなる好ましい実施形態によれば、管状の電気絶縁装置は、押し出しによって製造される。したがって、典型的には、管状の電気絶縁装置は、管状の電気絶縁装置の管状の全体形状によって定められる長手方向において継ぎ目を有さない。
【0033】
さらなる好ましい実施形態によれば、電気絶縁装置は、導電内側層の外側に位置して導電内側層を囲んでいる少なくとも1つの円周方向の電気絶縁体と、少なくとも1つの円周方向の電気絶縁体の外側に位置して少なくとも1つの円周方向の電気絶縁体を囲んでいる円周方向の導電外側層とを備える。
【0034】
この実施形態によって、本発明によってもたらされる進歩的な考え方、すなわち未組み立ての状態でのケーブル部材の運搬および現場でのケーブル部材の組み立てに適した可撓かつ効率的なケーブル絶縁システムがもたらされる。この実施形態によれば、電流を運ぶ内部電気導体が生じさせる電界を、効率的に制御し、良好に規定することができる。少なくとも1つの円周方向の電気絶縁体は、1つまたは複数の円周方向の電気絶縁体を含むことができる。導電内側層および導電外側層の少なくとも一方は、半導体であってよい。外側導電層の外側に、別の円周方向の層を、例えば環境からの保護として追加することができる。さらなる好ましい実施形態によれば、導電内側層および導電外側層の各々は、金属または金属組成物で作られ、あるいは導電ポリマーまたはポリマー組成物で作られる。
【0035】
さらなる好ましい実施形態によれば、導電内側および導電外側層は、少なくとも1つの円周方向の電気絶縁体を水分および機械的な摩耗から保護する保護バリアを形成するように構成される。
【0036】
この実施形態は、電気絶縁装置および複数の細長い電気導体セグメントの未組み立ての状態での輸送の際に、電気絶縁装置の電気絶縁体が内側および外側の両方において保護されるがゆえに、電力ケーブルを現場で組み立てる本発明によってもたらされる進歩的な考え方に適する。さらに、電気絶縁装置および複数の細長い電気導体セグメントの組み立ての際に、電気絶縁装置の電気絶縁体が、複数の細長い電気導体セグメントによってもたらされる機械的な摩耗からも保護される。この実施形態によって、可撓かつ効率的なケーブル絶縁システムがもたらされる。
【0037】
さらなる好ましい実施形態によれば、導電内側および導電外側層のうちの少なくとも一方が、外側および/または内側において、半導体材料で覆われる。
【0038】
好ましくは、両方の層が覆われる。この文脈において、半導体材料は、低い導電率を有するが、他方では絶縁材料よりは良好に電気を導くという定義に従う半導体材料を意味する。
【0039】
さらなる好ましい実施形態によれば、電気絶縁性能が、高電圧電力ケーブルにおいて使用することができるような電気絶縁性能である。
【0040】
この実施形態は、本発明の利点がこのような用途ににとりわけ該当することを反映している。本発明は、320kVまたはそれ以上の電圧レベルなどの超高圧においてとくに興味深い。好ましくは、絶縁層の厚さは、30mmよりも大きい。とくには、層が、超高圧の用途に適した少なくとも60mmの厚さである。
【0041】
さらなる好ましい実施形態によれば、内側層は、少なくとも80mm、好ましくは少なくとも120mmの内径を有する。
【0042】
この大きな内径は、90%の充てん比にてほぼ5000mmの総導電断面積の導体セグメントを収容することを可能にする。しかしながら、本発明の適用時には、はるかに大きい導電断面積が求められ、充てん比はより小さいことが多いと考えられる。例えば、3GWの送電において、導電断面積は21000mmであってよく、充てん比は50%であってよい。これは、内径が約230mmであることを必要とする。好ましい内径の範囲は、80〜400mm、好ましくは120〜250mmである。内径は、例えば内側層が波状管である場合に、長手方向において変化してもよい。その場合、用語「内径」は、現れる最小の内径に関する。用語「充てん比」は、さらに後に定義される。
【0043】
本発明の管状の電気絶縁装置の上述の好ましい実施形態は、ケーブル用の管状の電気絶縁装置に関する独立請求項に従属する請求項に記載される。
【0044】
本発明の第2の態様によれば、上述の目的が、高電圧電力ケーブル設備に関する独立請求項の冒頭部分に記載の種類の高電圧電力ケーブル設備が、高電圧電力ケーブル設備に関する独立請求項の特徴付け部分に記載の特定の特徴を備えることで達成される。すなわち、本発明による管状の電気絶縁装置を備え、とくには本発明の好ましい実施形態のいずれかによる管状の電気絶縁装置を備えるケーブル設備が提供される。
【0045】
本発明の高電圧電力設備は、上述した本発明の絶縁装置および本発明の絶縁装置の好ましい実施形態の利点と同種の利点を有する。
【0046】
導体セグメントの絶縁装置への挿入を簡単にするために、複数の導体セグメントを例えばテープまたはワイヤなどによって一体に束ねてもよいことを、理解すべきである。
【0047】
本発明の高電圧電力ケーブル設備の好ましい実施形態によれば、導体の少なくとも1つの導体セグメントが、導体の少なくとも1つの別の平行に延びている導体セグメントに電気的に接触している。
【0048】
本発明は、ケーブルが互いに絶縁された導体セグメントを含む場合にも適用可能であるが、本発明の利点は、導体セグメントが互いに電気的に接触して共通の導体を形成しており、とくにはすべての導体セグメントが互いに電気的に接触している場合に主に関係する。
【0049】
さらなる好ましい実施形態によれば、個々の電気導体セグメントは、ドラムに巻き付けることができるように可撓である。さらなる好ましい実施形態によれば、個々の電気導体セグメントは、絶縁装置の曲げ性について上記広い範囲を指定する上述の実施形態による絶縁装置の曲げ性に適合するような曲げ半径を有するように可撓である。
【0050】
さらなる好ましい実施形態によれば、個々の電気導体セグメントの曲げ半径は、絶縁装置の曲げ性について上記狭い方の範囲を指定する上述の実施形態による絶縁装置の曲げ性に導体セグメントが適合するような曲げ半径である。
【0051】
上述の実施形態は、曲げ性に関して本発明の管状の電気絶縁装置の実施形態と同様の種類の利点を有する。可撓性および曲げ半径の意味する内容に関する明確化は、絶縁装置に関してすでに提示されており、これらはケーブルにも該当する。典型的には、導体セグメントの曲げ半径は、管状の電気絶縁装置の外径の約5〜25倍、および5〜12.5倍の範囲内であると考えられる。
【0052】
さらなる好ましい実施形態によれば、複数の細長い電気導体セグメントは、高電圧電力ケーブル設備が曲げられるときに電気導体セグメントが絶縁装置に対して動くことができるように、絶縁装置に対して少なくとも部分的に自由に配置される。
【0053】
自由に配置するは、導体セグメントが、伝統的な押し出しによるケーブルの場合と異なり、絶縁装置の内周に固定されず、あるいは取り付けられないことを意味する。しかしながら、これは、導体セグメントが絶縁装置の内周に接触することを排除するものではない。導体部分を全長にわたって自由に配置することができるが、代案として、ケーブルに沿った特定の地点において絶縁装置の内周に取り付けることも可能である。
【0054】
さらなる好ましい実施形態によれば、導体の平行に延びる導体セグメントの数は、少なくとも4つである。
【0055】
導体セグメントの数が多いほど、所与の総導体断面積において高い曲げ性を実現するうえで、より有利である。したがって、この観点から、4つまたはそれ以上など、多数の導体セグメントを有することが好都合である。他の考慮事項が、導体セグメントの数を抑える理由をもたらすかもしれない。実際には、導体セグメントの数は、100を超えないと考えられる。しかしながら、大部分の場合に、絶縁装置の曲げ性が制限因子であり、通常は、曲げ性の基準に関して、少数の導体セクタで充分である。
【0056】
さらなる好ましい実施形態によれば、導体の導電断面積は、少なくとも3000mm、好ましくは少なくとも5000mmである。
【0057】
これは、導体セグメントの導電断面積の和である。理解できるとおり、所与の電圧において電力が大きいほど、したがって導電断面積が大きいほど、本発明の利益も大である。これが、本発明を上記の指定を上回る断面に適用することが好ましい理由である。上記利点は、導電断面積が10000mmを上回り、とくには20000mmを上回る場合に最も該当する。本発明は、この数字の最大2倍、さらには5倍もの導電断面積にも適用可能である。
【0058】
さらなる好ましい実施形態によれば、絶縁装置の内部断面積が、導体の導電断面積と余分の断面積との和であり、余分な断面積は、絶縁装置の前記内部断面積の少なくとも10%である。
【0059】
余分な断面積は、完全に空所によって形成されてよいが、導体セグメントのうちの1つ以上の導体セグメントの周囲の絶縁など、電気絶縁装置の内部に収容された非導電性の構成要素を含んでもよい。
【0060】
ケーブルの組み立てを可能にするために、輸送前または現場のいずれかにおいて、導体セグメントを挿入できるように絶縁装置の内側に特定の余分な空間が存在しなければならない。余分な空間が多いほど、挿入がより容易になると考えられる。他方で、所与の導電断面積において絶縁装置の直径を最小限にするために充分な充てん比を達成したい。余分な断面積の上記指定の最小値は、大部分の場合に、導体セグメントの挿入を容易にする。種々の理由で、充てん比は、通常は余分な断面積の上記指定の最小値に相当する90%よりも低いと考えられる。30%の充てん比、あるいは20%の充てん比でさえも、適用可能であり、余分な断面積の数字は相応に大きくなる。好ましくは、種々の態様を考慮したとき、余分な断面積は、20〜50%の範囲である。充てん比は、導体の断面積と絶縁装置の内部断面積との間の比である。したがって、例えば30%の充てん比は、余分な断面積が70%であることを意味する。波状管の場合など、内側層が長手方向において変化する直径を有する場合、絶縁装置の内部断面積は、現れる最小の直径に関係する。
【0061】
高電圧電力ケーブル設備の上述の好ましい実施形態は、高電圧電力ケーブル設備に関する独立請求項に従属する請求項に記載される。
【0062】
本発明の上述の目的は、本発明の第3の態様によれば、絶縁高電圧電力ケーブルを提供するための方法であって、
複数の細長い電気導体セグメントを用意するステップと、
細長い管状の電気絶縁装置を用意するステップと、
複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を、組み立てられていない状態で、設置場所へと運ぶステップと、
複数の細長い電気導体セグメントからなる電気導体を形成し、さらに電気導体と管状の電気絶縁装置とからなる可撓絶縁高電圧電力ケーブルを形成するために、複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を現場で組み立てるステップと
を含んでおり、
複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を組み立てるステップは、複数の細長い電気導体セグメントをあらかじめ作製された管状の電気絶縁装置へと挿入することを含む方法を提供することによって達成される。
【0063】
設置場所は、ケーブルを設置すべき実際の場所ならびに指定の輸送後のケーブルが設置に備えて準備される中間組み立て場所であってよい。
【0064】
本発明の発明者は、個々の細長い電気導体セグメントおよびケーブル絶縁システムが、組み立てられていない場合に、内部電気導体およびケーブル絶縁システムを含む組み立て済みの絶縁高電圧電力ケーブルセグメントに関して輸送に向けてより可撓であることを確認した。電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を、別々に輸送することができ、したがって(例えば、トラックにおける)輸送に関する潜在的な重量の制限を回避することができる。さらに、類似の寸法の組み立て済みの高電圧電力ケーブルセグメントと比べて、より長い長さの個々の細長い電気導体セグメントおよび管状の電気絶縁装置を運ぶことができる。
【0065】
本発明による方法によれば、絶縁高電圧電力ケーブルまたはケーブルセグメントの輸送が促進され、とくには内部電気導体の大きな断面積およびケーブルセグメントの長い連続長の両方をもたらす高電圧電力ケーブルまたはケーブルセグメントの輸送が促進される。このように、本発明による方法によれば、電力ケーブル(とくには、例えば地下ケーブルなどの陸上または海底に設置される電力ケーブル)によって送電される電力の増大または電力ケーブルの通電容量の増大が、内部電気導体の断面積の増加によって、輸送時の高電圧電力ケーブルの可撓性をほとんど損なうことなく達成される。このように、本発明による方法によって達成される内部電気導体の断面積の増加は、輸送のためのケーブルセグメント長の減少をわずかしか必要とせず、したがって継ぎ目の増加をほとんど必要としない。それどころか、より長い長さの電力ケーブルセグメントを、本発明の方法によって効率的なやり方で運ぶことができる。本発明による方法によれば、継ぎ目の数を最小限に保つことができ、設置がより効率的にされ、設置コストが削減され、稼働時の送電または配電系統の信頼性を向上させることができる。
【0066】
本発明による方法の好都合な実施形態によれば、複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を組み立てるステップは、複数の細長い電気導体セグメントを互いに平行かつ互いに電気的に接触させて配置して電気導体を形成することを含む。この実施形態によれば、大きな断面積を有する内部電気導体が、効率的なやり方でもたらされる。
【0067】
本発明による方法のさらなる好都合な実施形態によれば、本方法は、管状の電気絶縁装置への挿入に先立って複数の細長い電気導体セグメントを互いに平行かつ互いに電気的に接触させて配置して電気導体を形成することを特徴とする。この実施形態によって、現場における絶縁高電圧電力ケーブルの効率的な組み立てがもたらされる。本発明による方法の別の好都合な実施形態によれば、本方法は、管状の電気絶縁装置の内部において複数の細長い電気導体セグメントを互いに平行かつ互いに電気的に接触させて配置して電気導体を形成することを特徴とする。この実施形態によって、現場における絶縁高電圧電力ケーブルの効率的な組み立てがもたらされる。
【0068】
本発明による方法のさらに別の好都合な実施形態によれば、複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を運ぶステップは、複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を組み立てられていない状態で少なくとも1つのドラムまたはロールに個別に巻き付けることを含む。この実施形態によって、効率的な輸送がもたらされる。しかしながら、複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を、例えば前記ドラムまたはロールを使用せずに巻くなど、他のやり方で組み立てられていない状態で運ぶこともできる。
【0069】
本発明による方法のさらなる好都合な実施形態によれば、細長い管状の電気絶縁装置は、本発明による管状の電気絶縁装置であり、とくには本発明の好ましい実施形態のいずれかによる管状の電気絶縁装置である。
【0070】
本発明の方法の上述の好ましい実施形態は、可撓絶縁高電圧電力ケーブルを提供するための方法に関する独立請求項に従属する請求項に記載される。
【0071】
本発明による方法、高電圧電力ケーブル設備、および管状の電気絶縁装置のそれぞれのさらなる好都合な実施形態、ならびに本発明によるさらなる利点が、従属請求項および実施形態の詳細な説明から明らかになる。
【0072】
次に、本発明を、例示の目的で、添付の図面を参照しつつ実施形態によってさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】本発明による高電圧電力ケーブル設備の実施形態の概略の斜視図である。
図2】本発明による高電圧電力ケーブル設備の実施形態の管状の電気絶縁装置の実施形態の一部分の概略の斜視図である。
図3a】本発明による高電圧電力ケーブル設備の実施形態の複数の細長い電気導体セグメントの実施形態の概略の断面図である。
図3b】本発明による高電圧電力ケーブル設備の実施形態の複数の細長い電気導体セグメントの別の実施形態の概略の断面図である。
図4a】組み立て前の複数の細長い電気導体セグメントの実施形態を示す概略の断面図である。
図4b】組み立て前の複数の細長い電気導体セグメントの別の実施形態を示す概略の断面図である。
図5】本発明による方法の実施形態の態様を示すフロー図である。
図6】輸送時に複数の細長い電気導体セグメントおよび管状の電気絶縁装置をどのように格納できるのかを示す概略図である。
図7】本発明の一例による電気絶縁装置の細部の断面図である。
図8】本発明のさらなる例によるケーブルの概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1は、本発明による高電圧電力ケーブル設備の実施形態の一態様を概略的に示している。説明の目的のための切断図である図1において、高電圧電力ケーブル設備は、組み立てられており、したがって組み立てられた状態にある。高電圧電力ケーブル設備は、互いに平行かつ互いに電気的に接触して位置し、高電圧電力ケーブル106の内部電気導体104を形成するように配置された複数の細長い電気導体セグメント102を備える。高電圧電力ケーブル106は、高電圧直流(HVDC)ケーブルまたは高電圧交流(HVAC)ケーブルであってよい。高電圧電力ケーブル設備は、電気導体セグメント102から形成された内部電気導体104を収容および包囲するように配置された細長い管状の電気絶縁装置108を備える。
【0075】
図2は、図1の電気絶縁装置108に基本的に相当できる細長い管状の電気絶縁装置208の別の実施形態の一部分を示している。図2の電気絶縁装置208が、図2に示されているよりも長い長さを有することを、理解すべきである。複数の細長い電気導体セグメント102を、管状の電気絶縁装置108;208へと挿入することができる。複数の細長い電気導体セグメント102および電気絶縁装置108;208は、組み立てられていない状態で設置場所まで運ばれるように構成されている。複数の細長い電気導体セグメント102および電気絶縁装置108;208は、現場において組み立てられて、複数の細長い電気導体セグメント102からなる内部電気導体104を形成し、内部電気導体104および電気絶縁装置108;208からなる絶縁高電圧電力ケーブル106を形成するように構成されている。設置の現場は、例えば地中などの陸上など、高電圧電力ケーブル106を設置すべき場所である。好都合には、個々の電気導体セグメント102および電気絶縁装置108;208が、輸送のために可撓である。
【0076】
各々の電気絶縁装置108;208は、複数の細長い電気導体セグメント102を収容および包囲するように配置された円周方向の導電内側層110;210と、導電内側層110;210の外側に位置して導電内側層110;210を囲んでいる少なくとも1つの円周方向の電気絶縁体112;212と、少なくとも1つの円周方向の電気絶縁体112;212の外側に位置して少なくとも1つの円周方向の電気絶縁体112;212を囲んでいる円周方向の導電外側層114;214とを備えることができる。内側層110;210は、波状であってよい。外側層114;214は、波状であってよい。導電内側層および導電外側層110、114;210、214の各々を、外側および/または内側において、半導体材料で覆うことができる。少なくとも1つの円周方向の電気絶縁体112;212は、例えば電気絶縁性の液体あるいは電気絶縁性の気体または気体混合物(例えば、SFあるいは任意の他の適切な絶縁性の気体または気体混合物)など、少なくとも1つの固体または流体絶縁体を含むことができる。少なくとも1つの円周方向の電気絶縁体112;212は、例えば電気絶縁材料(例えば、誘電体)で作られた1つまたは複数の固体層など、少なくとも1つの円周方向の電気絶縁層を含むことができる。少なくとも1つの円周方向の電気絶縁体112;212は、例えば固体絶縁による囲いの内側の加圧された絶縁性の気体など、上述の選択肢の混合を含むことができる。電気絶縁装置108;208は、例えば少なくとも1つの円周方向の半導体層など、複数の細長い電気導体セグメントを包囲するように構成された1つ以上の追加の円周方向の層を含むことができる。導電内側層および導電外側層の各々を、金属または金属複合材料で作製することができ、あるいは導電性ポリマーまたはポリマー複合材料(例えば、導電性の熱可塑性プラスチック)など、任意の他の導電性の材料で作製することができる。一般に、導電内側層および導電外側層110、114;210、214は、少なくとも1つの円周方向の電気絶縁体112;212を水分および機械的な摩耗から保護する保護バリアを形成するように配置される。一般に、電気絶縁装置108;208は、内側に収容された内部電気導体104を外部から電気的に絶縁するように配置される。
【0077】
図3aおよび3bならびに図4aおよび4bを参照すると、複数の細長い電気導体セグメントの複数の実施形態が、断面にて概略的に示されている。図3aおよび3bを参照すると、各々の電気導体セグメント302;402は、ただ1つの導電ストランド304またはただ1つの導電異形ワイヤ404、あるいは複数の導電ストランド304または複数の導電異形ワイヤ404を備えることができる。図3aおよび3bは、互いに平行かつ互いに電気的に接触させて配置されて電気導体306;406へと組み立てられたときの電気導体セグメント302;402を、概略的に示している。ストランド304またはワイヤ404を、銅またはアルミニウムで作製することができ、あるいは任意の他の適切な導電性の材料または材料組成で作製することができる。
【0078】
図4aおよび4bは、複数の細長い電気導体セグメントのさらなる実施形態を概略的に示している。
【0079】
図4aの実施形態において、複数の細長い電気導体セグメント502は、互いに平行かつ互いに電気的に接触して位置し、高電圧電力ケーブルの内部電気導体を形成するように配置された2つのセグメント502を備える。図4bの実施形態において、複数の細長い電気導体セグメント602は、互いに平行かつ互いに電気的に接触して位置し、高電圧電力ケーブルの内部電気導体を形成するように配置された4つのセグメント602を備える。しかしながら、導体セグメントについて、他の形状および数も可能である。複数の細長い電気導体セグメントを、例えば、長手方向の延長を有しているテープによって一体に保持することができる。しかしながら、電気絶縁装置108;208の内側に配置される場合、電気導体セグメントを、そのようなテープを必要とせずに一体に保持することができる。内部電気導体の形成時に、複数の細長い電気導体セグメントを、電気導体セグメントを径方向に互いに機械的に圧縮させることなく、軸方向において互いに平行かつ互いに電気的に接触させて、一体に配置することができる。あるいは、電気導体セグメントを、内部電気導体の形成時に、径方向に機械的に圧縮させることができる。
【0080】
図5および6を参照すると、本発明による絶縁高電圧電力ケーブルを提供するための方法の実施形態の態様が、概略的に示されている。本方法の実施形態は、複数の細長い電気導体セグメントを用意するステップ(ステップ701)と、細長い管状の電気絶縁装置を用意するステップ(ステップ702)とを含む。電気導体セグメント102;302;402;502;602および電気絶縁装置108;208は、上記開示の実施形態に相当してよい。複数の細長い電気導体セグメントを、ステップ703において、未組み立ての状態で、少なくとも1つのドラムまたはロールへと個別に巻き付けることができる。電気絶縁装置108;208を、ステップ704において、未組み立ての状態で、少なくとも1つのドラムまたはロール802へと個別に巻き付けることができる(図6を参照)。
【0081】
図6は、ドラムまたはロール802の半径方向および長手方向の両方に複数の層にてドラムまたはロール802へと巻き付けられた絶縁装置108;208を概略的に示している。各々の電気導体セグメント102;302;402;502;602を類似のやり方で巻き付けることができることを、理解すべきである。複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置は、ステップ705において、組み立てられていない状態で設置場所まで運ばれる。このように、複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を、上述のように、組み立てられていない状態でドラムまたはロール802へと巻き付けて運ぶことができる。しかしながら、複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を、組み立てられていない状態で、ドラムまたはロール802へと巻き付けずに運ぶこともできる。本方法の実施形態は、ステップ706において、複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を現場において組み立て、複数の細長い電気導体セグメントからなる電気導体を形成し、電気導体および管状の電気絶縁装置からなる絶縁高電圧電力ケーブルを形成するステップを含む。複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を組み立てるステップは、複数の細長い電気導体セグメントを管状の電気絶縁装置へと挿入するステップを含む。複数の細長い電気導体セグメントおよび電気絶縁装置を組み立てるステップは、複数の細長い電気導体セグメントを互いに平行かつ互いに電気的に接触させて配置することで電気導体を形成するステップを含むことができる。複数の細長い電気導体セグメントを、管状の電気絶縁装置へと挿入する前に、互いに平行かつ互いに電気的に接触させて配置し、電気導体を組み立てることができる。あるいは、複数の細長い電気導体セグメントを、管状の電気絶縁装置の内部において、互いに平行かつ互いに電気的に接触させて配置し、電気導体を組み立てることができる。
【0082】
電気絶縁装置の内側金属層を図2に示されるとおりの波状の形状として設ける代わりに、内側層は、帯を巻いてなる金属ホースであってよい。図7が、そのようなホース810の例を示している。
【0083】
本発明の絶縁高電圧電力ケーブルの別の例が、図8に示されている。この例において、ケーブルによって運ばれる電力は、3GWである。外側金属層914は、外装、遮へい、および防湿層であるが、分かりやすくするために簡略化して示されている。実際には波状であり、あるいは帯を巻いてなる絶縁装置の内側層910も、同様である。両者の間に、内側層910を押し出しのための基礎として使用する三重押し出しによって適用される絶縁層912が位置している。
【0084】
絶縁装置908の内部に収容された導体装置904は、この例では、各々が52mmの直径を有するアルミニウムストランドである10本の導体部分902で構成されている。内側層の内径は、231mmであり、絶縁装置の外径は、307mmである。充てん係数は、約50%である。導体装置904の導電面積は、約21000mmであり、0.45A/mmの電流密度において、電流は9.4kAになる。したがって、320kVの電圧での送電は、3GWをもたらす。
【0085】
ケーブルが工場において組み立てられる場合、ケーブルは、309mのセグメントにて運ばれると考えられる。ケーブルは、1:10.4の曲げ比でドラムに巻き付けられる。アルミニウムストランドの重量は、58kg/mであり、絶縁装置の重量は、47kg/mである。したがって、セグメントの全体は、約32tの重量を有する。
【0086】
ケーブルが現場で組み立てられる場合、導体セグメントおよび絶縁装置は、別々のドラムにて運ばれ、曲げ比は1:9.4である。
【0087】
この場合、セグメントは、より強い曲げ比ゆえにより長くてよく、セグメントの長さは、この場合には681mである。したがって、継ぎ目の数が、2分の1未満に減少する。
【0088】
図8において、導体セグメントは、すべてが同じ直径を有しているが、ケーブルは、異なる直径の導体セグメントを含んでもよい。
【0089】
一般に、ACにおける高電圧は、約1〜1.5kVおよびそれ以上である。しかしながら、HVDCの用途および系統において、高電圧は、約72kVおよびそれ以上であってよく、例えば320kV、500kV、800kV、あるいは1000kV、およびそれ以上であってよい。HVDC送電は、送電線の送電端と受電端との間の電圧低下および電気的安定性の限界ゆえに、100kmを超える距離においてHVAC送電に対して利点を有する。
【0090】
上記開示の装置の種々の実施形態の特徴を、種々の可能なやり方にて組み合わせ、さらなる好都合な実施形態をもたらすことができる。本発明を、例示された実施形態に限られると考えてはならず、本発明を、当業者であれば、添付の特許請求の範囲の技術的範囲から離れることなく、多数のやり方で改良および変更することができる。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8