(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁基板が前記転写部よりも上流側に延出して設けられ、該延出部の前記記録媒体と対向する面に前記記録媒体を加熱する発熱抵抗体が設けられてなる請求項1記載の定着装置。
前記加熱部に設けられる発熱抵抗体が、前記記録媒体の進行方向に沿って複数個並列して設けられ、それぞれの発熱抵抗体の間に温度測定用抵抗体が形成されてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の定着装置。
前記加熱部における前記絶縁基板上の表面に凹凸部が形成され、前記発熱抵抗体の部分の表面が凸部に形成され、かつ、前記絶縁基板およびその表面に連通して吸引用孔または吸引用溝が形成され、前記記録媒体が前記絶縁基板側に吸引され得る構造に形成されてなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の定着装置。
前記絶縁基板が前記転写部よりも上流側に延出され、該転写部よりも上流側の前記絶縁基板の延出部に発熱抵抗体を設けて、転写前に前記記録媒体を加熱する請求項8記載の定着方法。
前記加熱部に、前記記録媒体の進行方向に沿って複数個の発熱抵抗体を設け、前記転写部側が高く、前記加圧搬送部側が低くなるように温度勾配を形成して前記加熱部での加熱を行う請求項8または9記載の定着方法。
【背景技術】
【0002】
電子写真記録は複写装置、プリンタなどに広く使用されている。この電子写真の記録は次のように行われる。すなわち、感光体(感光ドラム、ベルト状感光体、板状感光体など)に、帯電、露光、現像をすることによりトナーを感光体に静電的に付着させ、静電引力で記録媒体にそのトナーを移動転写させる。そして、加熱加圧ローラにより加熱してトナーを流動化させることにより、粘着性が出てトナー同士を粘着させながら記録媒体に粘着させる。その結果、トナーは自由に動かなくなる。要するに、軟化、流動化、粘着が起こり、粘着した状態で加圧されることにより、記録媒体に画像を定着させる。
【0003】
この感光体から記録媒体にトナーを転写する方法は、例えばコロナ放電方式や、ローラ転写方式などが知られている(例えば非特許文献1参照)。コロナ放電方式は、
図5Aに示されるように、記録媒体80を挟んで感光体81に対向して配置される転写チャージャ82と分離チャージャ83とが設けられることにより構成される。この構成で、チャージユニット84により、感光体81の全面に均一に帯電させ、レーザビームやLEDなどの光源85で印刷データのパターンを帯電した感光体81に照射し、電気的潜在画像(逆像の不可視画像)を感光体81の表面に形成する。そして、ディベロッパーユニット86で、トナーを撹拌しながら感光体81の表面に形成された潜在画像に付着させることにより、感光体81の表面に可視画像が形成される(現像工程)。その後、転写チャージャ82のコロナ放電により記録媒体80の背面にトナーと逆極性の電荷を与えることで、感光体81上のトナーが記録媒体80上に転写される。分離チャージャ83は、記録媒体80が感光体81に吸引されて、感光体81に巻き付けられないように、転写チャージャ82よりも弱い電界が印加されている。すなわち、転写部は、感光体81と分離チャージャ82とがペアで独立して転写装置として形成されている。また、ローラ転写方式は、
図5Bに示されるように、感光体81と記録媒体80を挟んで対向して設けられる転写ローラ87を感光体81に適度な接触圧力で押圧し、記録媒体80を搬送すると共に、転写ローラ87を介して記録媒体80の背面にトナーと逆極性の電荷を与えることにより記録媒体80にトナー像を転写している。
【0004】
一方、加熱加圧部は、図示されていないが、トナーが転写された記録媒体を、例えば内部にハロゲンランプを内蔵して加熱された加熱加圧ローラと反対側の回転ローラとにより圧接しながら搬送する方式が知られている。すなわち、加熱と加圧とを同時に行っている。このように、加熱加圧ローラと回転ローラとを回転させながらトナーの転写された記録媒体を搬送することにより、トナーの表面は殆ど擦られることがない。しかし、トナーが加熱されながら加圧されるので、流動化した状態で加熱加圧ローラにより押し付けられることになる。しかも、トナーはその表面から加熱され、記録媒体側まで十分に加熱されない状態で加圧ローラにより押し付けられているため、加熱加圧ローラの表面に流動化したトナーが付着しやすい。その結果、トナーが記録媒体の表面から一部剥れる場合がある。また、ローラの内部にハロゲンランプを内蔵することが必要となる。そのため、電力の消耗が激しいと共に、スイッチを投入してから加熱加圧ローラの温度が上昇するのに時間がかかるという問題がある。この問題を解決するには、予め余熱をしておく必要がある。そのため、より一層電力を消耗し、省エネの要求に充分に応えることができない。
【0005】
さらに、ハロゲンランプを用いないで、セラミック基板の表面に発熱抵抗体を形成した、いわゆるセラミックヒータを用いる方法も提案されている。しかし、この方法は、セラミックヒータの熱を有効に利用するため、ヒータ面側に記録媒体のトナーの転写された部分を接触させて加熱加圧することが試みられており、セラミックヒータをローラのように回転させることができないため、セラミックヒータの面とトナーが転写された記録媒体の面とが擦られないようにする必要がある。そのため、セラミックヒータと記録媒体との間にポリイミドなどからなる耐熱性フィルム(シート)を介在させ、その耐熱性フィルムを記録媒体の搬送速度と同期させて搬送させるという方法がとられている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、転写部と加熱加圧部とが、別々に独立して形成されていると、転写部でトナーが転写された後に、加熱加圧ローラに至るまでは、記録媒体の上にトナーの粉末が弱い静電力で付着しているだけで進行する。また、トナーの粉末は外添剤で被覆されている。そのため、加熱加圧ローラに至るまでの間にトナーや外添剤の微粉末が飛散しやすく、粉塵が空中に浮遊して公害の原因ともなりやすいという問題がある。
【0009】
また、加
熱と加
圧とが同じところで同時に行われると、流動状態になったトナーが加圧ローラにより圧接されるため、加圧ローラにトナーが付着しやすく、トナー画像を毀損しやすいという問題がある。
【0010】
さらに、加熱と加圧が同時に行われると、加熱加圧用のローラと回転ローラとの接触部の幅(ニップ幅)の間に加熱と加圧が行われなければならないため、記録媒体の搬送スピードを速くすると十分な定着をすることができず、印刷スピードに制約を受ける。
【0011】
さらに、転写されたトナーの表面側から加熱されると、トナーの表面側が流動状態になっても、記録媒体との接触面側の流動化はそれより遅れるため、記録媒体への粘着性が不充分になりやすい。さらに、記録媒体が紙などの吸湿性を有する場合、記録媒体の温度上昇が一番遅くなるため、その水分が蒸発し難く、トナーが流動状態になった後に水分が蒸発する。その結果、トナーの表面に、いわゆるブリスターと呼ばれる凹部が形成され、トナーの表面に凹凸が形成されやすく、印刷表面の仕上がり状態が不鮮明になるという問題がある。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、加熱部と加圧部とを分離し、トナーの転写後直ちにトナーを加熱できるようにすることにより、トナーの飛散を防止することができる定着装置および定着方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の他の目的は、トナーの表面を損傷させることなく、高スピードで、記録媒体にトナーを定着させることができる定着装置および定着方法を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、記録媒体が紙などの吸湿性の記録媒体の場合でも、その水分の蒸発によりトナー画像が不鮮明になることを防止し得る定着装置および定着方法を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、転写されたトナーを直ちに加熱して微粉末の飛散を防止しながら、加圧搬送部ではトナーが流動状態(融解状態)にならないで、記録媒体に粘着できるようにトナーの温度を下げることができる定着装置および定着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の定着装置は、感光体に形成された静電潜像を現像して付着したトナーを記録媒体に転写する転写部と、前記記録媒体の前記転写部より下流側に設けられ、前記転写部で転写されたトナーを加熱する加熱部と、前記記録媒体の前記加熱部より下流側に設けられ、前記記録媒体の前記トナーが設けられた面側を加圧ローラにより加圧しながら前記記録媒体を搬送する加圧搬送部と、前記記録媒体の前記トナーが転写される面と反対面に接触するように、前記転写部と、前記加熱部と、前記加圧搬送部との全体に亘って連続して設けられる絶縁基板と、を具備し、前記絶縁基板の前記記録媒体と対向する面であって、前記転写部に対応する部分に転写用の電極が設けられ、前記加熱部に対応する部分に加熱用の発熱抵抗体が設けられ、前記加圧搬送部に対応する部分は前記加圧ローラの圧力を受け止め得る受け台として形成されている。
【0017】
ここに「下流側」とは、記録媒体の進行方向の前方、すなわち記録媒体の場合にはその排紙側を意味し、逆に「上流側」とは、記録媒体の場合にはその供給側を意味する。また、「連続して」とは、完全に一体でなくても、記録媒体41の進行方向に沿って、熱伝導が良好に行われやすいように接着剤などにより接続されていてもよい意味である。記録媒体の進行方向と垂直方向には、離間して複数個設けられる構造でもよい。
【0018】
前記加熱部に設けられる発熱抵抗体が、前記記録媒体の進行方向に沿って複数個並列して設けられ、前記転写部側と前記加圧搬送部側とで前記転写部側の温度が高くなるように発熱抵抗体、または印加電圧が異なるように形成されることが好ましい。
【0019】
本発明の定着方法は、電子写真プロセスにより画像に合せたトナーを記録媒体の一面に転写する転写部を設け、前記記録媒体を搬送しながら前記記録媒体の一面と反対面である他面側から前記転写されたトナーを加熱する加熱部を設け、前記記録媒体の前記一面側からの加圧ローラと、前記他面側の受け台とにより前記記録媒体を加圧しながら搬送する加圧搬送部を設け、前記記録媒体の前記他面側に、少なくとも前記記録媒体と対向する表面が電気絶縁性に形成された1枚の絶縁基板を設け、該絶縁基板の表面に、前記転写部で転写するための転写用電極と、前記加熱部で加熱をするための発熱抵抗体とをそれぞれ設け、前記加圧搬送部の受け台を前記絶縁基板の延長部分で形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の定着装置および定着方法によれば、表面に発熱抵抗体が設けられる絶縁基板が少なくとも転写部から加圧搬送部まで連続して形成されている。そのため、絶縁基板に発熱抵抗体が設けられていない転写部でも、絶縁基板、ひいては記録媒体の温度が僅かながら上昇しており、転写された時点からトナーはある程度加熱される。しかし、感熱体は、寿命の観点から余り温度を上昇させない方がよいので、その上流に設けられる発熱抵抗体の発熱を抑え、温度上昇は抑制されるように設計される。さらに、転写用電極に近接して発熱抵抗体が形成され得るので、転写後直ちにトナーは本格的に加熱されることになる。その結果、トナーが軟化状態または流動状態(融解状態)になるまでの時間を短くすることができると共に、トナーの飛散を確実に抑制することができる。しかも、この絶縁基板は記録媒体のトナーが転写される面と反対面(裏面)側に設けられ、絶縁基板の表面には発熱抵抗体が形成されているので、記録媒体の裏面側から加熱されることになる。その結果、トナーも記録媒体側から軟化して流動状態になる。すなわち、記録媒体とトナーとの粘着性が非常によくなる。これにより、加圧搬送部で加圧された場合に、温度が低下してトナーの表面が流動状態でなくなっても、トナーを記録媒体に粘着させやすくなる。
【0021】
なお、軟化状態とは、トナーの粘弾性特性で、ゴム領域の温度範囲で、固体領域よりも粘弾性が下がり、外力を加えると容易に変形するが弾力性を有する状態を意味し、流動状態とは、トナーが液状で流れ得る状態を意味する。勿論、ゴム領域でも、温度が高いほど粘弾性が低下し、流動状態に近くなり、同じ流動状態と言っても、温度が高いほど、流動性が大きくなる。
【0022】
さらに、加熱部が加圧部と分離されることにより、加圧搬送部では、流動状態(融解状態)にする必要がなく、加圧ローラ側の温度を低下させることができるので、加圧ローラにより圧接しても、加圧ローラにトナーが付着しにくい。そのため、トナー画像を損傷する危険性が低下し、鮮明なトナー画像が得られる。また、従来の加熱と加圧を同時に行う方法では、加熱加圧ローラと回転ローラとの接触部(ニップ部)のみでトナーの流動化と圧接が行われる。そのため、そのニップ部の通過時間が短く、温度、加圧の圧力に微妙な調整が必要であり、それでも毎分40枚の従来の装置では、毎秒200mmの速度で、ニップ部5mmの通過時間は25ms程度となっている。しかし、本発明は加熱部と加圧部とを分離することにより、加圧ローラは圧接だけすればよいため、非常に短時間、例えば10ms程度で記録媒体を搬送することができ、2.5倍の速度アップを図れる。すなわち、印刷スピードを大幅に向上させることができる。なお、加熱部によるトナーの流動化に対しては、記録媒体の搬送速度が速くても、その距離を稼ぐことにより、印刷スピードを向上させることができる。
【0023】
また、絶縁基板が転写部よりも上流側に延出していることにより、記録媒体が転写前から予熱され、さらに、その延出部にも発熱抵抗体が設けられることにより、転写前から記録媒体が加熱されることにより、転写されたトナーが直ちに軟化状態になりやすく、また、転写前に記録媒体に含まれている水分が蒸発し、または完全に蒸発していなくても次の加熱部で容易に追い出され得る。そのため、従来のトナーを流動状態にするための加熱と同時に記録媒体の温度を上昇させることによる、トナーの表面での気泡による凹凸を防止することができる。その結果、非常に光沢のあるきれいな画像で定着され得る。しかし、前述のように、感熱体の温度上昇を抑制する観点から、転写前には、余り記録媒体の温度が上昇しないようにすることが好ましい。さらに、転写の時点で記録媒体の温度がある程度上昇しているため、転写と同時にトナーが軟化状態になりやすく、より一層トナーや外添剤の微粉末の飛散が防止され得る。特に、カラー印刷の場合、例えば4色トナー像がベルト状に重ねて転写され、最後に定着される場合が多く、このような場合、異なる色のトナーを重ねて転写することになるが、記録媒体の温度が上昇していると、その飛散や画像の劣化が防止されやすく、非常に効果が大きい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、図面を参照しながら本発明の定着装置および定着方法が説明される。
図1に、本発明の一実施形態による定着装置の概要図が示されるように、本発明の定着装置は、感光体31に形成された静電潜像を現像して付着したトナー42aを記録媒体41に転写する転写部3と、記録媒体41の転写部3より下流側に設けられ、転写部3で転写されたトナー42を加熱する加熱部1と、記録媒体41の加熱部1より下流側に設けられ、記録媒体41のトナー42が設けられた面側を加圧ローラ21により加圧しながら記録媒体41を搬送する加圧搬送部2と、記録媒体41のトナー42が転写される面と反対面に接触するように、転写部3と、加熱部1と、加圧搬送部2との全体に亘って連続して設けられる絶縁基板5と、を具備している。そして、絶縁基板5の記録媒体41と対向する面であって、転写部3に対応する部分に転写用電極37が設けられ、加熱部1に対応する部分に加熱用の発熱抵抗体12が設けられ、加圧搬送部2に対応する部分は加圧ローラ21の圧力を受け止め得る受け台22として形成されている。
【0026】
すなわち、本発明は、加熱部1と加圧搬送部2とが分離されて加熱は加熱部1で、加圧は加圧搬送部2で行うと共に、転写部3が、従来の感光体と分離チャージャまたは転写ローラなどとを有する転写装置として独立しているのではなく、加熱部1で加熱する発熱抵抗体が形成される絶縁基板5(この部分は加熱基板ともいえる)を転写部3まで連続して形成され、その絶縁基板5の表面に転写用電極37が設けられることにより転写部3が形成されている。そして、その転写用電極37に印加された高電界により感光体31に現像されたトナー42aが記録媒体41側に引き付けられて記録媒体41に転写される。換言すると、転写装置が独立して設けられるのではなく、加熱基板とする絶縁基板5の延長部(接続される場合も含む)の表面に転写用電極37が形成されていることを特徴としている。
【0027】
換言すると、加熱部1の加熱用として用いられる加熱基板の絶縁基板5を転写部3まで延長してその絶縁基板5の表面に転写用電極37が形成されている。そして、その絶縁基板5の他端部が加圧搬送部2まで連続して(接続される場合も含む)形成され、加圧ローラ21の受け部22にされている。この絶縁基板5が加熱部1から転写部3および加圧搬送部2の両方に連続して形成されていることにより、加熱部1で加熱されて発生する熱が絶縁基板5を伝導して転写部3および加圧搬送部2にも伝わり、転写用の電極37上の記録媒体41および加圧搬送部2の受け部22上の記録媒体42をも加熱することになる。その結果、転写されたトナー42は、直ちに加熱のための予熱がされ、加熱されて流動状態になったトナー42の温度を急激に低下させることなく、加圧して記録媒体42に粘着させることができる。すなわち、加熱部1で加熱される前から加熱されることになり、たとえ加熱部1の前で軟化状態に至らなくても、充分に予熱されることになり、加熱部1で加熱されることにより、直ちに軟化状態または流動状態になる。さらに加圧搬送部2では、急激にトナー42の温度が下がることなく、軟化状態で加圧され、加圧ローラ21などにトナー42の一部が付着することなく、すなわちトナー42を損傷させることなく、記録媒体42に粘着される。
【0028】
絶縁基板5は、このように、加熱部1から連続して形成されていることが必要である。「連続して」とは、前述のように、必ずしも一体である必要はなく、加熱部1および転写部3や加圧搬送部2で別々に形成されて、その後に接着剤などにより連結されていてもよい。すなわち、熱伝導が充分得られるように連結していればよい。また、絶縁基板5は、基板の全体が絶縁体でできている必要はなく、少なくとも発熱抵抗体12や転写用電極37が設けられる表面が絶縁体になっていればよい。従って、金属板の表面に絶縁膜が形成されているものでもよい。そのような構成であれば、絶縁基板5は熱伝導に優れる。
【0029】
しかし、この絶縁基板5は、加熱部1で用いられる加熱基板の絶縁基板として用いられるものでよい。すなわち例えば、アルミナなどからなる熱伝導率の優れた絶縁性の基板が用いられ得る。しかし、これには限定されない。形状は矩形状が好ましいが、これに限定されるものではない。幅W(
図1B参照;
図1Aの紙面と垂直方向の長さ)は、記録媒体41の幅と等しいことが好ましいが、それより小さくても、複数個の絶縁基板5が幅Wの方向に並べられることにより支障はない。絶縁基板5の長さL(
図1B参照;
図1Aの記録媒体の進行方向の長さ)は、例えば3cm程度の大きさに形成される。厚さは、例えば0.6mm程度のアルミナ基板が用いられ得る。この絶縁基板5は、加熱部1から転写部3および加圧搬送部2まで延びるように形成されると共に、記録媒体41の裏面側に設けられている。しかし、前述のように、完全に一体である必要はなく、例えば加熱部1と転写部3と加圧搬送部2とで別々に形成され、それぞれが接着剤などにより接続された構造でもよい。要は連続していて、熱伝導が充分になされればよい。
【0030】
この絶縁基板5の表面には、後述されるように、発熱抵抗体12などが形成され、その表面にカバー基板などの保護膜が形成されるが、その表面に凹凸が形成され、さらに、絶縁基板5およびその表面の保護膜に吸引孔や吸引溝が形成されて、記録媒体42が吸引されることにより、凸部のところでの接触圧力が強まり、より一層発熱抵抗体12からの熱の伝導を良くすることができる。
【0031】
転写部3では、この絶縁基板5の表面に転写用電極37が形成されている。この転写用電極37は、例えばステンレス合金を弾性接着剤により接着したものからなり、30〜50μm程度の厚さで、8mm程度の幅の金属膜で表面およびコーナ部が滑らかに仕上げされた部品で形成され、図示しない電極を介して、帯電トナー42aとは逆の電圧、例えば500〜1000V程度の電圧が印加して、記録媒体41を帯電させて感光体31の表面から帯電トナー42aを転写させる。この転写用電極37の電位があまり高いと、転写されたトナー42が逆の電位に帯電して、転写部3を離れる際に感光体31の電位に引き付けられ、記録媒体41がA4やB5などの切断紙で、連続紙でない場合には、感光体31に記録媒体41が巻きつけられてしまうので、感光体31からトナー42を引き離しながら、記録媒体41が感光体に巻きつけられないような電位に設定する必要がある。この転写用電極37は、幅を広げて転写部3の上流側に延出して、または接続して絶縁基板5の表面に固定することもできる。後述される第5発熱抵抗体12eが設けられている場合には、その表面に絶縁層を介して設けることができる。
【0032】
本発明では、この転写部3の転写用電極37が形成される基板が加熱部1の発熱抵抗体12が形成される絶縁基板5を延出して、または加熱部1の絶縁基板と接続して形成されている。そのため、転写部3でも絶縁基板5の温度は上昇しており、記録媒体41も加熱される。その結果、転写されたトナー41が直ちに加熱されるので、トナー42は記録媒体41に付着しやすくトナー42の微粉末の飛散、画像劣化、および感光体31への巻き付きが抑制されると共に、トナー42の軟化状態または流動状態にする時間が短縮される。この転写部3の転写電極37は、その表面に弾性体が設けられることが好ましい。または絶縁基板5の上流側端部をバネで釣り上げ、加圧搬送部2側を支点として回転できるようにすることにより、感光体31に軽く接触し得るようにすることもできる。
【0033】
転写部3の感光体31側の構造は、通常の電子写真方式プリンタの場合と同様であるが、清掃部32、除電部33、帯電部34、露光(光書込み)部35、現像部36を通るように感光体の一例である感光ドラム31を回転させながら露光部35でレーザ光またはLED光を用いて光書込みをして感光ドラム31上に静電潜像を形成し、これに現像部36でトナー43aを感光ドラム31に付着させて現像し、可視像化する。そして、転写具37で電気力によりトナー42aを感光ドラム31から記録媒体41に転写することにより、記録媒体41に写真画像が形成される。トナー42aは、樹脂に種々の顔料を混合したものである。この記録媒体41が順次搬送されて加熱部1、加圧搬送部2を経由することにより、転写されたトナー42の画像が定着される。なお、カラープリントの場合は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のある色のトナー42が順次転写され、複数色のトナーが転写されているが、転写工程も長く、飛散や画像劣化の可能性もあり、各々の転写直後に仮定着をすることも考えられている。
【0034】
本発明の加熱部1は、
図1A〜1Bに示されるように、絶縁基板5の記録媒体41と対向する表面に発熱抵抗体12が設けられることにより形成されている。すなわち、記録媒体41の裏面側から加熱されるように発熱抵抗体12が形成されている。しかし、記録媒体41の裏面側から加熱される場合のみに限定されず、図示されていないが、記録媒体41のトナー42が転写された面(表面)側からの加熱を併用することもできる。この場合、記録媒体41のトナー42が転写された面と数mm程度離間して設けられる。しかし、加熱部1は、絶縁基板5の表面に形成される発熱抵抗体12により記録媒体41を加熱する。
図1A〜1Bに示される例では、第1〜第3の発熱抵抗体12a〜12cが加熱部1に形成され、加圧搬送部2に第4の発熱抵抗体12dが、転写部3の上流側に第5の発熱抵抗体12eが設けられている。しかし、発熱抵抗体12(共通の発熱抵抗体として説明をする場合は12の符号を付す)の数は限定されない。この発熱抵抗体12の近傍には、その発熱抵抗体12により絶縁基板5の温度がどの程度上昇しているかを確認するための温度測定用抵抗体13が設けられている。本発明の加熱部1は、従来の加熱基板より時間を長くして加熱をすることができるので、温度制御時の電流を少なくすることができ、ノイズの影響も従来の加熱基板より少なくすることができる。しかし、商用交流電源を使用する場合は、ゼロクロススイッチ回路などの外部回路へのノイズの影響を少なくすることができる。
【0035】
記録媒体41の表面側(トナー42側)に設けられる加熱基板は、加熱部1の記録媒体41のトナー42が設けられた面側に、記録媒体41と離間して設けられている。すなわち、記録媒体41に転写されたトナー42には接触しないでトナー42を加熱できるようになっている。すなわち、この第2加熱基板10bは、記録媒体41と接触させて加熱するのではなく、第2加熱基板10bからの放射熱(輻射熱)により加熱するようになっている。従って、第2加熱基板10bにより記録媒体41のトナー42が転写された面が擦られることはなく、未定着のトナー42の一部が剥がれることはない。この観点から、第2加熱基板10bは、その表面から熱を放射しやすい構造のものが好ましい。例えば、表面に熱放射に優れた材料、例えば黒色アルマイト、ガラス、ゴムなど(熱放射率:0.9)、黒ラッカー(0.9)、黒色塗装(0.85)、エポキシガラス、紙フェノール、ポリテトラフルオロエチレンガラス(0.8)などの熱放射層が形成されたり、その表面に、10〜50μm程度の幅で、10〜50μm程度の深さの凹凸が形成されたりすることにより、熱放射をしやすい構造であることが好ましい。
【0036】
図1Bに示される例では、発熱抵抗体12などに接続される電極などが省略して図示されていないが、電極と発熱抵抗体12や温度測定用抵抗体13との関係が、1個の発熱抵抗体が絶縁基板11上に形成された加熱基板10として形成された例で、
図2A〜2Cを参照して説明される。絶縁基板5は、この加熱基板10の絶縁基板11を大きくしたのと同じである。
【0037】
この加熱基板10は、カードなどに記録や消去などをするのに用いられる従来の加熱ヘッドと同様の構造になっている。例えば
図2Aに保護膜(カバー基板)17を除去した基本的な絶縁基板11上の発熱抵抗体12および温度測定用抵抗体13とその電極14〜16の一例の平面説明図が、
図2Bに、
図2AのB-B断面図で、保護膜17が形成された状態がそれぞれ示さている。すなわち、絶縁基板11上に形成される発熱抵抗体12や温度測定用抵抗体13(13a、13b)、電極14(14a、14b、14c)、温度測定端子15(15a〜15e)などが形成され、その上に保護膜17が形成されている。なお、発熱抵抗体12や温度測定用抵抗体13と電極14や測定用端子15との間は、それぞれ導電体16により接続されている。この電極14や測定用端子15には図示しないリードが接続される。
【0038】
さらに具体的には、
図2Aに示されるように、例えばアルミナなどのセラミックスからなる絶縁基板11の一面に発熱抵抗体12と温度測定用抵抗体13(13a、13b)とが設けられた構造になっている(この例では、温度測定用抵抗体13が1個の発熱抵抗体12に対して2個形成されているが、この数は多いほど絶縁基板11の温度を正確に把握できて好ましいが、その数は制限されない)。なお、これらの形状および配置等は任意に形成され得る。
図2Aに示される例では、例えば直線状で、帯状の発熱抵抗体12が矩形状の絶縁基板11の長手方向の一辺に沿って設けられることにより形成されている。この絶縁基板11の長手方向の長さ(幅)Wは、50mm以上に形成され、例えば記録媒体41の幅(
図1の記録媒体41の紙面と垂直方向の寸法)に応じて形成される。記録媒体41が大きい場合には、この絶縁基板11の幅Wを大きくするか、または加熱基板10をその長手方向に複数個並べて配置することにより記録媒体41の幅に合せられる。また、1個で長い絶縁基板11で加熱基板が形成される場合には、発熱抵抗体12や温度測定用抵抗体13の途中に電極14や測定用端子15を複数個形成しておき、分割して電圧を印加できるようにしたり、絶縁基板11の領域ごとに温度を定めることができるようにしたりして、常に絶縁基板11の全体で均一な温度になるように制御される。
【0039】
図2Aに示される例では、温度測定用抵抗体13a、13bが2本形成されているが、この構造に限定されない。この絶縁基板11の温度は、低すぎると記録媒体41上に転写されたトナー42が軟化状態や流動状態にならず、充分に定着されなくなるし、高過ぎてもトナー42が流動状態になり過ぎて加圧ローラ21にトナーが付着してトナーオフセットの現象が生じるので、絶縁基板11の温度が、その各領域に応じて正確に制御される必要がある。そのため、温度測定用抵抗体13の数や、測定用端子15の数はできるだけ多く形成されることが好ましい。
【0040】
発熱抵抗体12は、例えばAg、Pd、RuO
2、Pt、金属酸化物、ガラス粉末などを選択して混合することにより温度係数、抵抗値などが最適になるようにし、ペースト状にして印刷し、焼成することにより形成されている。焼成により形成される抵抗膜のシート抵抗値は固形絶縁粉末の量によって変えられる。両者の比率により抵抗値や温度係数を変えることができる。また、導体(電極14、測定端子15、接続導体16として使用する材料としては、Agの割合を多くし、Pdを少なくした同様のペースト状にしたものが用いられる。そうすることにより、発熱抵抗体12と同様に、印刷により形成することができる。端子接続の関係で使用温度により変る必要がある場合もある。Agが多い程抵抗値を低くすることができる。この発熱抵抗体12の抵抗温度係数は正に高い方が好ましく、とくに1000〜3500ppm/℃の材料を用いることが好ましい。また、図示されていないが、発熱抵抗体12の電流の流れる方向に沿って適当な位置に電極が設けられることにより、部分的に電圧を印加することができ、場所によって温度を変えることができる。
【0041】
抵抗温度係数が正に大きいということは、温度が上昇すると抵抗値の増加が大きいことであるから、発熱させた状態における抵抗値測定により基準抵抗値からのずれにより実際の発熱温度の検出を容易に精度よく行え、実効印加電力を調整することにより所望の発熱温度からのずれを修正しやすくなる。定着装置の場合、発熱抵抗体12用の電源に商用交流電源が使用されることが多く、交流のまま、例えば半波整流、全パ精留のままで直流変換せずに使用される場合が多い。この場合、脈流のまま実効値を制御することになる。但し、制御には双方向サイリスタ(商品名トライアック)が用いられ、実効値で制御される。温度測定も実効値で行われ、トライアックで温度制御される。また、抵抗温度係数が正であることにより、温度が上昇し過ぎた場合に抵抗値が増大して電流値が下がり、抵抗による発熱量が下がるため、より早く温度が飽和状態となり、高温時の温度安定性に優れているからであり、熱暴走などによる過熱を防止できる。なお、発熱抵抗体12の標準的な部分の幅も、用途に応じて所定の温度になるように設定されるし、複数本の発熱抵抗体12が並列に並べられてもよい。
【0042】
また、発熱抵抗体12の両端部には、例えばパラジウムの比率を小さくした銀・パラジウム合金やAg-Pt合金などの良導電体からなる電極14が印刷などにより形成されている。この電極14は、図示しないリードが接続され、電源が接続されて発熱抵抗体12に通電される構造になっている。この電源は、直流でも、交流でもよく、また、パルス電圧でもよい。パルス電圧であれば、そのデューティを変えることにより、印加電力を制御することができる。また、
図2Aには、4mm程度の幅広の発熱抵抗体12が1本で形成されているが、発熱抵抗体の幅や本数はこの例に限定されず、目的に応じて、所望の温度になるように形成される。
【0043】
発熱抵抗体12の近傍には、発熱抵抗体12と同様に絶縁基板11の表面に温度測定用抵抗体13が形成されている。この温度測定用抵抗体13は、例えば
図2Aに示されるように、発熱抵抗体12に沿って形成されるのが好ましい。
図2Aに示される例では、間隔をあけて若干長さの異なる2個が形成されている。そして、それぞれの両端が一対の測定用端子15a、15bに接続されている。この測定用端子15a、15bも前述の電極14と同様に、良導電性の材料により形成されている。この温度測定用抵抗体13には、両端の一対の測定用端子15a、15bのみならず、その中心部にも測定用端子15eが形成されている。また、第2の温度測定用抵抗体13bの両端部にも一対の測定用端子15c、15dがそれぞれ形成され、中心部の測定用端子15eにも接続されている。
【0044】
温度測定用抵抗体13は、発熱抵抗体12と同じ材料で形成されてもよいが、好ましくはできるだけ温度係数の絶対値(%)が大きい方が好ましい。この温度測定用抵抗体13は、発熱させるものではなく、絶縁基板21の温度を検出して、造形材料の融解温度に達するようにするもので、例えば0.5mm幅で、発熱抵抗体12より若干短い長さで形成される。また、温度測定用抵抗体13自身は発熱しないよう印加電圧が低く抑えられて、例えば5V程度が印加される。すなわち、この温度測定用抵抗体13は絶縁基板11上に直接設けられているため、両者の温度は殆ど同じで、温度測定用抵抗体13の抵抗値を測定することにより、絶縁基板11表面の温度、ひいては記録媒体41を加熱する絶縁基板11の温度を知り、その温度をその軟化状態または流動状態にする温度にするためである。すなわち、抵抗体材料は、一般的にその温度が変化するとその抵抗値が変化するので、その抵抗値の変化を測定することにより、温度を測定するのである。温度検出手段については後述するが、この温度測定用抵抗体13の両端の電圧変化を検出することにより温度測定用抵抗体13の抵抗値を検出し、その抵抗値と温度測定用抵抗体13の温度係数(材料により分っている)から、その温度を検出するものであり、温度係数が大きい方が測定誤差を小さくすることができる。なお、この場合は、温度係数は正でも負でもよい。
【0045】
温度測定用抵抗体13は、発熱抵抗体12と同じ材料とは限らず用途に応じて印刷などにより形成される。すなわち、微小の温度差を必要とする場合には、AgとPdの混合比率を変えたものや、全く別の材料で温度係数の大きいものを用いることもできる。この温度測定用抵抗体13の測定端子15a、15bも、発熱抵抗体12の電極14などと同様に、Agを多くしてPdを少なくした良導電性の材料により形成される。この温度測定用端子15a、15bの形成は、温度測定用抵抗体13の端部に設けられるとは限らない。例えば
図3Aに示されるように、中央部に測定端子15eが設けられてもよいし、さらに二分されたそれぞれの中点に形成されてもよい。なお、温度測定用抵抗体13は、絶縁基板11の大きさ、または目的に応じて、形成される位置や測定端子15の位置が設定される。
【0046】
図2Aには省略して二点鎖線で外周部分のみが示されているが、
図2Bに断面図が示されているように、この発熱抵抗体12、温度測定用抵抗体13、および接続導体16は、保護膜17により被覆されている。この保護膜17は熱伝導率の大きいことが好ましく、例えば表面が平滑な硬質ガラス膜などにより形成される。しかし、後述される
図1Aに示されるような絶縁基板11と反対側の面が加圧ローラ21などにより加圧される受け部22の部分は、その圧力に耐えられるように、絶縁基板11の半分ぐらいの厚さの薄いセラミック板などからなるカバー基板17a(
図1A参照)がガラス材17bなどにより接着されてもよい。耐久性が向上する。この場合も含めて保護膜17という。しかし、このようなカバー基板17aが設けられなくても、また、耐摩耗層が無くても、絶縁基板5の面のままでもよい。表面にガラスコートがなされることが好ましい。この保護膜17がガラス材などにより形成され、その表面に、記録媒体41の進行方向に沿って、0.2mm以上の凹凸(蒲鉾状の盛上りや湾曲形状の形状)が形成されていることがこの絶縁基板5と記録媒体41との接触圧力を高めることができるので好ましい。特に、発熱抵抗体12の上側が凸になっていると、温度の高い部分が記録媒体41に接触しやすくなる。なお、電極14や測定用端子15は保護膜17により被覆されないで、露出しており、図示しないリードが接続される。また、省電力の観点からは、図示されていないが、発熱抵抗体12と絶縁基板11との間に、グレーズ層などの熱伝導率の小さい断熱層が挿入されることが好ましい。
【0047】
図2Aに示される例は、それぞれの端部に電極や測定端子が設けられていたが、これらの一方を共通にして電極や測定端子を狭い方の側縁に集約させることもできる。その一例が
図2Cに示されている。すなわち、
図2Cに示される例は、発熱抵抗体12と温度測定用抵抗体13が1本ずつ並行して形成されると共に、さらに共通導体18が形成されている。この共通導体18は、発熱抵抗体12の他端部、および温度測定用抵抗体13の他端部に接続して形成され、その一端部が発熱抵抗体の一端部に接続される電極14、および温度測定用抵抗体13の一端部に接続される測定用端子15と並んで形成されている。その他の構造は
図2Aと同じで、同じ部分には同じ符号を付してその説明は省略される。
【0048】
図1A〜1Bに示される加熱部1は、絶縁基板5上にこの発熱抵抗体12a〜12cが形成されている。この発熱抵抗体12の数はこれに限定されず、これより多くても少なくてもよい。また、各発熱抵抗体12は同じ発熱量ではなく、それぞれの温度が異なるように発熱抵抗体12が形成されたり、発熱抵抗体12に印加される電圧が調整されたりしてもよい。前述のように、転写直後から直ちに軟化状態または流動状態に加熱されることが好ましい。その観点からは、転写部3に近い側の第1発熱抵抗体12aの温度が上昇しやすく、加圧搬送部2側の第3発熱抵抗体12c側の温度が低くなるように形成されることが好ましい。しかし、温度設定は、この例に限定されない。
【0049】
加熱部1では、トナー42が軟化状態または流動状態になるまで加熱される。トナーは、種々の成分を混合して構成されている。例えば、主成分はアクリル-スチレン共重合体であるが、その混合比率は種々設定され得るし、その他に顔料、染料、外添剤(トナーの粒子同士が付着しないように設けられる1μm以下の小粒子)などが混合されている。そのため、トナーの性状を一概に示すことは難しいが、一般に温度を上昇させるとその粘弾性が低下することが知られている。例えば、典型的なトナーの主成分であるPETのガラス転移点は68〜80℃程度、アクリル-スチレン共重合体のガラス転移点は105℃程度で、固体領域からゴム領域に変化し、軟化状態になる。このガラス転移点では、固体領域からゴム領域に変化する温度であるが、それ程粘弾性が固体領域から急激に下がる訳ではないので、紙などの記録媒体に浸み込ませるには十分ではない。実際には、この温度(ガラス転移点)よりも20〜50℃程度高い温度で十分に軟化状態になる。さらに、温度を上昇させると、粘弾性が急激に低下する流動状態(融解状態)になる(前述のPETで212〜265℃程度、アクリル-スチレン共重合体で、200℃程度)。しかし、これらの温度の絶対値は組成等により一定しない。
【0050】
カラー印刷の場合には、色の異なるトナーが充分に混ぜ合わさる必要がある。そのため、ただ軟化状態になっただけでは、通常のトナーの粒度ではきれいな印刷物を得ることはできない場合がある。しかし、流動状態の温度になればトナー同士が十分に混ざり合い、カラー印刷でも、きれいな印刷が得られやすい。しかし、カラー印刷の場合でも、流動状態になっている必要はなく、トナーの粒子が小さければ問題はない。また、モノクロ印刷の場合でも、この流動状態にして行うこともできる。そこで、加熱部1では、印刷の種類により、軟化状態か流動状態になるまで加熱される。
【0051】
図1A〜1Bに示される例では、この絶縁基板5に貫通孔19aおよび細い溝19bが形成されている。この貫通孔19aは、絶縁基板5の裏面(記録媒体41と反対面)から吸引する図示しない吸引具に接続されている。また、貫通孔がなく、溝19bの両端部を絶縁基板5の両端部まで延ばして、図示しない吸引具に接続されるようにしてもよい。この貫通孔19aおよび/または細い溝19bと吸引具とにより吸引装置が形成されることにより、その表面にある記録媒体41が吸引され、絶縁基板5の表面と記録媒体41との接触が良くなり、絶縁基板5の表面に形成される発熱抵抗体12で発生する熱を記録媒体41に効率的に伝熱しやすい。この場合、絶縁基板5の表面が平坦面であるよりも、搬送方向に沿って多少の蒲鉾状の凹凸(湾曲部)がある方が、凸部と記録媒体41との接触圧力が高くなるので、より一層熱伝導が向上する。この場合、発熱抵抗体12が形成された部分が凸部になっていることにより、より一層熱伝導が向上する。なお、この吸引装置は、減圧状態になればよい程度の吸引であり、記録媒体41の搬送の妨げになるほどの強い吸引は行われない。
【0052】
この貫通孔19aの大きさは、0.3〜0.5mm程度で、溝19bの幅は0.3〜0.5mm程度であり、溝19bの深さは、0.2〜0.3mm程度である。吸引具としては、小型ブロワーや小型源圧ポンプ(半導体ウェハ用真空チャック)などが用いられ得る。この吸引された加熱空気は予熱部(転写前後の記録媒体の予熱)で熱の再利用も考えられる。また、図示されていないが、この加熱1の表面側に1〜3mm程度の間隔をあけてカバーが形成されることにより、断熱およびトナー42の粉末の飛散防止の観点から好ましい。
【0053】
加圧搬送部2では、軟化状態になり紙などの繊維間にも浸み込みやすくなるトナーの温度、または流動状態になったトナーの温度を低下させながら加圧することで記録媒体41に粘着させることに特徴がある。また、加圧搬送部2の加圧ローラ21に対向する部分には、絶縁基板5が延出して受け部22が形成されている。加圧搬送部2では、この絶縁基板5の受け部22と加圧ローラ21とで、記録媒体41が圧接されながら搬送される。この観点から、加圧ローラ21の外周面は、多少の弾力性を有することが好ましい。加圧搬送部2では、この絶縁基板5を伝導する熱により加熱される。この加圧搬送部2では、トナー42を流動状態(融解状態)にはしないが、加熱部1で流動状態になったトナー42が急速に冷却されると、加圧されても充分に記録媒体に粘着させることができない場合があるので、ある程度の軟化状態を維持する必要があるから、ある程度加熱されることが好ましい。必要に応じて、この受け部22にも第4の発熱抵抗体12dが形成されてもよい。その場合でも、加熱部1における発熱抵抗体12a〜12c程、温度を上昇させる必要はないので、第4の発熱抵抗体12dまたは印加される電圧などにより温度が低めになるように調整される。このような構造になっている結果、加熱部1で発熱する熱量を転写部3から加圧搬送部2まで有効に利用することができるのみならず、トナー42が転写と同時に加熱されるため、トナー42などの微粉末の飛散が防止される。
【0054】
さらに、記録媒体41の搬送スピードを速くすることができ、1分当たりの処理枚数を大きくすることができる。すなわち、加圧ローラ21による圧接は、加圧だけで良いため、非常に短時間で通過させることができるので、記録媒体42の進行速度が律速されることがない。さらに、記録媒体の裏面側から加熱されるため、トナー42と記録媒体41との密着性が非常に向上すると共に、記録媒体に含まれる水分を蒸発させやすく、トナー画像の印刷表面が非常に鮮明できれいな印刷画像が得られる。
【0055】
なお、加圧搬送部2では、絶縁基板5上に第4発熱抵抗体12dが形成されないで、または第4発熱抵抗体12dと共に、加圧ローラ21の周面に他の加熱基板を接触させて加熱することもできる。従って、加圧搬送部2の加圧ローラ21の
加圧時の温度は、加熱部1での軟化状態または流動状態の温度以下の温度で
あり、流動状態よりも低い温度で
加圧が行われることになる。換言すると、加熱部1で加熱された温度よりも低い温度で加圧される。従って、連続して印刷されることにより、軟化状態または流動状態になったトナー42からの熱により加圧ローラ21の温度が上がり過ぎる場合には、加熱しないで冷却(空冷)する場合もあり得る。
【0056】
この加圧搬送部2では、図示されていないが、例えば保護膜17の表面に平滑な硬質ガラスなどからなる耐摩耗層が形成されることが好ましい。すなわち、前述の加圧ローラ21と対向する受け部22は回転ローラと異なり、加圧ローラ21により押しつけられた記録媒体41を反発しながら搬送するため、記録媒体41とこの受け部22とは摺動することになる。そのため、記録媒体41がスムースに動くように、かつ、絶縁基板5の表面が消耗しないように、滑らかで摩耗しにくい耐摩耗層が形成されていることが好ましい。この受け部22は、耐摩耗層がなく、金属層または絶縁層でもよい。
【0057】
図1に示される例では、転写部3より上流側に、第5発熱抵抗体12eが設けられている。この第5発熱抵抗体12eは、薄い記録媒体41を裏面側から直ちに加熱する。その結果、記録媒体41が紙などの場合、水分を吸収しやすく、水分を内部に含んでいても、トナー42が転写される前に乾燥しやすく、定着後に水分が蒸発してトナー43の表面に凹凸が形成される問題を防止しやすい。なお、
図1で55は記録媒体41の送り用ローラである。また、この第5発熱抵抗体12eが設けられる場合でも、前述のように、感光体31の温度を余り上昇させないように、第5発熱抵抗体12eにより発生する温度は低く設定される。
【0058】
この記録媒体41を加熱して水分を蒸発させること、および各加熱部を有効加熱すること、という観点から、図示されていないが、例えば、この第5発熱抵抗体12e、トナー42を加熱する加熱部1、加圧搬送部2および排紙された記録媒体41を集積する排紙集積部(図示せず)を転写部3の記録媒体41の裏面側を介して一体的に最小限の空間で囲むカバーケース(図示せず)が形成され、さらに、転写部3側が加圧搬送部2よりも高くなるように、記録媒体41の搬送路が傾けて設置されることが好ましい。
【0059】
この定着装置の傾斜は、熱の有効利用という観点からは水平面に対する角度が大きいほど好ましい。しかし、転写したトナー42は紙などの記録媒体41の表面に付着しているだけであるので、余り傾けるとトナー42がずれる可能性がある。これは加熱部1で流動状態になるまで加熱された場合にも同様の危険性がある。その観点からは傾斜は小さいほど好ましい。この両者の関係を考慮すると、20°〜60°、さらに好ましくは30°〜45°程度が好ましい。このようにカバーケース7で囲まれ、傾斜されることにより、記録媒体加熱部5などで弱い加熱によっても記録媒体41を乾燥させ、また、加熱部1での軟化状態または流動状態にトナー42を加熱することができる。従って、全体的にエネルギー消費を少なくすることができ、地球温暖化への対策にもなる。
【0060】
前述のように、トナー42を加熱する温度が低すぎると、軟化状態または流動状態にすることができず、十分な定着をすることができない。また、高すぎても、加圧搬送部2でトナー42の一部が加圧ローラ21に付着して好ましくない。そのため、絶縁基板5の温度制御を正確に行うことが必要となる。
図1などに示される定着装置の温度制御手段(駆動回路)が
図3に示されている。すなわち、この駆動回路は直流または交流の電源390で駆動する例であるが、電源390としては、電池または商用電源390をパルス駆動、トランスなどにより電圧や印加時間を調整して、印加電力を調整する調整部370を介して発熱抵抗体12に接続される電極14(
図2A参照)に駆動電力が供給されるようになっている。その結果、交流電源をそのまま使用することもでき、商用の交流電源390により供給される電圧は、電力の調整部370により調整され、所望の温度になるように調整される。商用電源が用いられることにより、直流電源が不要で、電源冷却ファンも不要になる。しかし、電池による直流電源を用いることもできる。また、図示されていないが、パルスを印加するパルス駆動により加熱することもできる。その場合、電圧を変える以外にもデューティサイクルを変えることにより印加電力を調整することができる。さらに、パルス印加する場合には、その位相制御をする(PDM)ことにより出力を変えることもできる。
【0061】
その温度は、温度測定用抵抗体13を利用して、定電流回路350により測定用電源310の電流を一定にして供給される電流と、温度測定用抵抗体13の両端の電圧Vの測定により、その時点の温度測定用抵抗体13の抵抗値を知り、その抵抗値の変化により温度測定用抵抗体13、すなわち絶縁基板11(
図2A参照)の温度を測定して、その温度により電力の調整部370で印加電圧などを調整できるようになっている。調整部370は、特に複数の発熱抵抗体12を並べて加熱する場合に、各発熱抵抗体12の温度を均一にする、または温度を異ならせる場合に有効である。そのため、複数の温度測定用抵抗体13が設けられている場合には、それぞれ別々にその近傍の温度を測定し、各発熱抵抗体12で印加電圧などが調整されることが好ましい。ここでは直流電源の例で示されているが、交流でも実効値制御により温度検出をすることができる。
【0062】
この温度測定の原理を、もう少し詳しく説明する。例えば直流電源からなる測定用電源310の両端に定電流回路CCR(current controlled regulator)350を温度測定用抵抗体13と直列に接続しておき、温度測定用抵抗体13の両端の電圧VをV検出器340で測定すれば、温度検出手段330により、その電圧を定電流で割り算することにより、温度測定用抵抗体13のその時点での抵抗値を知ることができ、予め分っている温度測定用抵抗体13の温度係数(材料により定まる)とから温度を算出することができる。なお、交流の場合は、内部で半波整流し、トリガー作用により行われる。その検出温度に応じて、制御手段360から調整部370により発熱抵抗体12の両端に印加する電力を制御することにより、絶縁基板11の温度を所定の温度に維持することができる。この制御手段360による発熱用抵抗体12の温度制御は、前述のように、印加電圧をパルスにして、そのパルスのデューティサイクルを変えてもよいし、電圧そのものを変化させてもよい。
図3に示される例では、定電流回路350を設けたが、それに代えて、温度が変化しない場所に基準抵抗を設けて、その基準抵抗の電圧を測定することにより、電流を求めて、温度測定用抵抗体13の両端の電圧をV検出器340で測定してもよい。また、温度測定用電源310は、直流電源とは限らない。交流でもパルス的に定電流を得ることができる。
【課題】加熱部と加圧部とを分離し、トナーの転写後直ちにトナーを加熱できるようにすることにより、トナーの飛散を防止することができる定着装置および定着方法を得ることを目的とする。
【解決手段】加熱部1と、加圧搬送部2との全体に亘って連続して絶縁基板5が設けられ、絶縁基板5の記録媒体41と対向する面であって、転写部3に対応する部分に転写用電極37が設けられ、加熱部1に対応する部分に加熱用の発熱抵抗体12a〜12cが設けられ、加圧搬送部2に対応する部分には加圧ローラ21の圧力を受け止め得る受け台22として形成されている。