【文献】
Kazuhiko Tanaka et al,New Methods for Stereoselective Synthesis of α-Alkylidene-γ-butyrolactones Using Monoanion of O-Et,Bulletin of the Chemical Society of Japan,1980年,Vol.53, No.10,p.2910-2916,第2911頁右欄第2段落〜第2912頁左欄
【文献】
江角朋之他,ビリジオファンジンAの合成と絶対構造の決定,第39回天然有機化合物討論会講演要旨集,1997年 7月20日,p.409-414,Scheme2
【文献】
Barry M. Trost et al,A synthetic approach to polyene macrolldes: Synthesis of the building blocks,Tetrahedron Letters,1986年,Vol.27, No.47,p.5691-5694,Scheme2
【文献】
武智翔他,α−チオラクトンを求核剤とするジアステレオ選択的触媒的不斉ダイレクトアルドール反応,日本薬学会第132年会要旨集2,2012年 3月 5日,p.154,31E06−pm07S
【文献】
Sho Takechi et al,A Direct Catalytic Asymmetric Aldol Reaction of a-Sulfanyl Lactones:Efficient Synthesis of SPT Inhib,Angewandte Chemie International Edition,2012年 4月23日,Vol.51, No.17,p.4218-4222,全文
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書、及び特許請求の範囲に記載された化学式及び一般式における立体配置は、特に言及しない場合には、絶対配置を表す。
【0014】
(一般式(1)で表される化合物)
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される。
【化12】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2は、メチル基及びエチル基のいずれかを表す。
【0015】
前記一般式(1)で表される化合物は、例えば、下記反応式(1)で表されるように、下記一般式(2)及び下記一般式(3)を経由して、化合物gを合成する出発物質となる。
【化13】
前記化合物g中、TBDPSは、tert−ブチルジフェニルシリル基を表す。
前記一般式(2)及び一般式(3)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2は、メチル基及びエチル基のいずれかを表す。R
3は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
4は、メチル基及びエチル基のいずれかを表す。X
−は、一価の陰イオンを表す。
【0016】
前記化合物gは、国際公開第2004/071503号パンフレットにも記載のとおり、抗C型肝炎ウイルス(HCV)剤に有用な化合物(例えば、国際公開第2004/071503号パンフレットの一般式(1’)で表される化合物)の合成中間体である(国際公開第2004/071503号パンフレットの実施例参照)。
前記一般式(1)で表される化合物は、上記のように、抗HCV剤などの薬剤合成における光学活性合成素子となりうる化合物である。そして、前記一般式(1)で表される化合物は、本発明者らによって見出された後述する本発明の不斉合成反応を用いることにより、触媒量のキラル源を用いて合成することができる。そのため、前記一般式(1)で表される化合物は、高額な光学活性体を多量に用いることなく、安価に合成することができる。
【0017】
前記一般式(1)のR
1における水酸基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Greenら、Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition,1999,John Wiley & Sons, Inc.などの成書を参照することができる。
前記水酸基の保護基としては、例えば、アラルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシアルキル基、アルカノイル基、アリールカルボニル基などが挙げられる。保護基におけるアリール環(ベンゼン環など)が置換基を有する場合には、置換基としてハロゲン原子やアルコキシ基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、p−メトキシベンジル基(PMB)、p−アミノベンジル基などが挙げられる。
前記トリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基(TBS)などが挙げられる。
前記アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基などが挙げられる。
前記アルカノイル基としては、例えば、アセチル基、トリフルオロアセチル基などが挙げられる。
前記アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、置換フェニルカルボニル基などが挙げられる。
これらの中でも、合成反応における保護基としての効果、及び脱保護反応の容易性の点から、アラルキル基、トリアルキルシリル基が好ましく、p−メトキシベンジル基(PMB)、ベンジル基、tert−ブチルジメチルシリル基(TBS)がより好ましい。
【0018】
前記R
2としては、前記一般式(1)で表される化合物の合成において、反応時間を短縮できる点からメチル基が好ましい。
【0019】
前記一般式(1)で表される化合物の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の不斉合成反応により合成することが好ましい。
【0020】
(一般式(2)で表される化合物)
本発明の化合物は、下記一般式(2)で表される。
【化14】
ただし、前記一般式(2)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2は、メチル基及びエチル基のいずれかを表す。R
3は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
【0021】
前記一般式(2)で表される化合物は、前記反応式(1)で示すとおり、本発明の前記一般式(1)で表される化合物から前記化合物gを合成する際の中間体として有用である。
【0022】
前記一般式(2)のR
1における水酸基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(1)のR
1で例示した保護基と同じ保護基などが挙げられる。また、好ましい保護基及びその理由も、前記一般式(1)のR
1と同様である。
【0023】
前記一般式(2)のR
2としては、前記一般式(2)で表される化合物の前駆体(前記一般式(1)で表される化合物)を合成する際の反応時間を短縮できる点から、メチル基が好ましい。
【0024】
前記一般式(2)のR
3における水酸基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(1)のR
1で例示した保護基と同じ保護基などが挙げられる。前記水酸基の保護基としては、前記化合物gの合成が容易である点から、tert−ブチルジフェニルシリル基(TBDPS)が好ましい。
【0025】
前記一般式(2)で表される化合物の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(1)で表される化合物から合成することなどが挙げられる。
前記一般式(2)で表される化合物を前記一般式(1)で表される化合物から合成する方法としては、例えば、還元剤を用いてラクトンをジオールに還元する方法などが挙げられる。前記還元剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、LiAlH
4、NaAlH
2(OC
2H
4OCH
3)
2、NaBH
4などが挙げられる。前記方法の際の溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0026】
(一般式(3)で表される化合物)
本発明の化合物は、下記一般式(3)で表される。
【化15】
ただし、前記一般式(3)中、R
1は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
2は、メチル基及びエチル基のいずれかを表す。R
3は、水酸基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R
4は、メチル基及びエチル基のいずれかを表す。X
−は、一価の陰イオンを表す。
【0027】
前記一般式(3)で表される化合物は、前記反応式(1)で示すとおり、本発明の前記一般式(1)で表される化合物から前記化合物gを合成する際の中間体として有用である。
【0028】
前記一般式(3)のR
1における水酸基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(1)のR
1で例示した保護基と同じ保護基などが挙げられる。また、好ましい保護基及びその理由も、前記一般式(1)のR
1と同様である。
【0029】
前記一般式(3)のR
2としては、前記一般式(3)で表される化合物の合成の際の中間体である前記一般式(1)で表される化合物を合成する際の反応時間を短縮できる点から、メチル基が好ましい。
【0030】
前記一般式(3)のR
3における水酸基の保護基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(1)のR
1で例示した保護基と同じ保護基などが挙げられる。前記水酸基の保護基としては、前記化合物gの合成が容易である点から、tert−ブチルジフェニルシリル基(TBDPS)が好ましい。
【0031】
前記一般式(3)のR
4としては、簡単にエポキシ化でき前記化合物gの合成が容易となる点から、メチル基が好ましい。
【0032】
前記一般式(3)のX
−としては、一価の陰イオンであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラフルオロボレート(BF
4−)、ヘキサフルオロホスフェート(PF
6−)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF
6−)などが挙げられる。これらの中でも、不斉反応の立体選択性の点から、ヘキサフルオロホスフェート(PF
6−)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF
6−)が好ましい。
【0033】
前記一般式(3)で表される化合物の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(2)で表される化合物から合成することなどが挙げられる。
前記一般式(3)で表される化合物を前記一般式(2)で表される化合物から合成する方法としては、例えば、アルキル化剤を用いてチオメトキシ基又はチオエトキシ基を(R
2R
4)S
+−に変換する方法などが挙げられる。前記アルキル化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Me
2Cl(SbF
6)、(MeO)
2CHBF
4、Me
3OBF
4、Et
3OBF
4、MeOTf、MeSO
2F、(MeO)
2SO
2、MeIなどが挙げられる(ここで、「Me」は「メチル基」を表し、「Et」は「エチル基」を表し、「Tf」は「トリフルオロメタンスルホニル基」を表す)。前記方法の際の溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0034】
前記一般式(3)で表される化合物は、前記反応式(1)に示すように、国際公開第2004/071503号パンフレットにも記載の抗C型肝炎ウイルス(HCV)剤に有用な化合物である前記化合物gの前駆体となりうる。
【0035】
(不斉合成反応)
<第1の不斉合成反応>
本発明の不斉合成反応(第1の不斉合成反応)は、キラル銀錯体の存在下で、下記一般式(4)で表される化合物と下記一般式(5)で表される化合物とを反応させて、下記一般式(6)で表される化合物を得ることを特徴とする。
【0036】
<<一般式(4)で表される化合物、一般式(5)で表される化合物、及び一般式(6)で表される化合物>>
【化16】
ただし、前記一般式(4)〜一般式(6)中、R
11は、水素原子及び置換基のいずれかを表す。R
12は、メチル基及びエチル基のいずれかを表す。nは、1〜3の整数である。
【0037】
前記一般式(4)〜一般式(6)の前記R
11における置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、ヒドロキシル基が保護基により保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、アミノ基が保護基により保護されていてもよいアミノアルキル基などが挙げられる。
【0038】
前記アルキル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基などが挙げられる。前記アルキル基としては、イソブチル基、n−ペンチル基が好ましい。
前記アルケニル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルケニル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、炭素数1〜20のアリール基などが挙げられる。
前記アリールアルキル基としては、例えば、炭素数1〜20のアリールアルキル基などが挙げられる。前記アリールアルキル基としては、2−フェニルエチル基が好ましい。
前記アリールアルケニル基としては、例えば、炭素数1〜20のアリールアルケニル基などが挙げられる。
前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アリール基、前記アリールアルキル基、及び前記アリールアルケニル基は、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基などを有していてもよい。
【0039】
前記ヒドロキシル基が保護基により保護されていてもよいヒドロキシアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ヒドロキシル基が保護基により保護されていてもよいヒドロキシアルキル基のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基などが挙げられる。前記ヒドロキシル基が保護基により保護されていてもよいヒドロキシアルキル基の保護基としては、水酸基の保護基であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(1)中のR
1の説明で例示した保護基と同じ保護基などが挙げられる。前記ヒドロキシル基が保護基により保護されていてもよいヒドロキシアルキル基としては、p−メトキシベンジルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル基が好ましい。
【0040】
前記アミノ基が保護基により保護されていてもよいアミノアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記アミノ基が保護基により保護されていてもよいアミノアルキル基のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基などが挙げられる。前記アミノ基が保護基により保護されていてもよいアミノアルキル基の保護基としては、アミノ基の保護基であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、メチル基、エチル基、アリル基、ベンゼンスルホニル基、フタロイル基などが挙げられる。
【0041】
<<キラル銀錯体(第1のキラル銀錯体)>>
前記キラル銀錯体(第1のキラル銀錯体)としては、銀化合物及び下記一般式(A)で表される化合物により得られる銀錯体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
−銀化合物−
前記銀化合物としては、前記キラル銀錯体を形成可能な化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、AgPF
6、AgBF
4、AgSbF
6、AgOTf(Tfは、トリフルオロメチルスルホニル基(CF
3SO
2−)を表す。以下に同じ。)、AgClO
4、AgNTf
2、AgOAc(Acは、アセチル基を表す。)などが挙げられる。これらの中でも、反応性及び立体選択性の点から、AgPF
6、AgBF
4、AgSbF
6が好ましく、AgPF
6がより好ましい。
【0043】
−一般式(A)で表される化合物−
【化17】
ただし、前記一般式(A)中、R
aは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、非芳香族系複素環及び芳香族系複素環のいずれかを表す。mは、1〜2の整数を表す。mが2の場合には、2つのR
aは、結合して環構造を形成してもよい。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0044】
前記一般式(A)のR
aにおけるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基などが挙げられる。前記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−メチル−1−エチル−n−ペンチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−ヘプチル基、2−ヘプチル基、1−エチル−1,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−オクチル基、3−オクチル基、4−メチル−3−n−ヘプチル基、6−メチル−2−n−ヘプチル基、2−プロピル−1−n−ヘプチル基、2,4,4−トリメチル−1−n−ペンチル基、1−ノニル基、2−ノニル基、2,6−ジメチル−4−n−ヘプチル基、3−エチル−2,2−ジメチル−3−n−ペンチル基、3,5,5−トリメチル−1−n−へキシル基、1−デシル基、2−デシル基、4−デシル基、3,7−ジメチル−1−n−オクチル基、3,7−ジメチル−3−n−オクチル基などが挙げられる。また、シクロプロピル基、1−メチルシクロプロピル基、2−メチルシクロプロピル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などの環状アルキル基が挙げられる。
【0045】
前記一般式(A)のR
aにおけるアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基などが挙げられる。前記炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などが挙げられる。
これらの中でも、不斉反応における立体選択性の点から炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜3のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0046】
前記一般式(A)のR
aにおけるアルケニル基としては、例えば、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基などが挙げられる。
【0047】
前記一般式(A)のR
aにおけるアリール基としては、例えば、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基などが挙げられる。
【0048】
前記一般式(A)のR
aにおけるアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、o−ビフェニリルメチル基、m−ビフェニリルメチル基、p−ビフェニリルメチル基、1−アントリルメチル基、2−アントリルメチル基、9−アントリルメチル基、1−フェナントリルメチル基、2−フェナントリルメチル基、3−フェナントリルメチル基、4−フェナントリルメチル基、9−フェナントリルメチル基、α−ナフチルエチル基、β−ナフチルエチル基、o−ビフェニリルエチル基、m−ビフェニリルエチル基、p−ビフェニリルエチル基、1−アントリルエチル基、2−アントリルエチル基、9−アントリルエチル基、1−フェナントリルエチル基、2−フェナントリルエチル基、3−フェナントリルエチル基、4−フェナントリルエチル基、9−フェナントリルエチル基、ビフェニルメチル基、トリチル基などが挙げられる。
【0049】
前記一般式(A)のR
aにおけるアリールアルケニル基としては、例えば、1−フェニルエテニル基、2−フェニルエテニル基、1−フェニル−1−プロペニル基、2−フェニル−1−プロペニル基、3−フェニル−1−プロペニル基、1−フェニル−2−プロペニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、3−フェニル−2−プロペニル基、1−フェニル−1−ブテニル基、2−フェニル−1−ブテニル基、3−フェニル−1−ブテニル基、4−フェニル−1−ブテニル基、1−フェニル−2−ブテニル基、2−フェニル−2−ブテニル基、3−フェニル−2−ブテニル基、4−フェニル−2−ブテニル基、1−フェニル−3−ブテニル基、2−フェニル−3−ブテニル基、3−フェニル−3−ブテニル基、4−フェニル−3−ブテニル基、5−フェニル−1−ペンテニル基、5−フェニル−2−ペンテニル基、5−フェニル−3−ペンテニル基、5−フェニル−4−ペンテニル基、6−フェニル−1−ヘキセニル基、6−フェニル−2−ヘキセニル基、6−フェニル−3−ヘキセニル基、6−フェニル−4−ヘキセニル基、6−フェニル−5−ヘキセニル基などが挙げられる。
【0050】
前記一般式(A)のR
aにおける非芳香族系複素環としては、例えば、5員環〜7員環までの単環式複素環基、構成原子数が6〜10までの縮合二環式複素環基などが挙げられる。これらは、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を1原子〜3原子単独若しくは組み合わせて含むことができる。前記非芳香族系複素環としては、例えば、2−テトラヒドロフラニル基、3−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロピラニル基、3−テトラヒドロピラニル基、4−テトラヒドロピラニル基、1−ピロリジニル基、2−ピロリジニル基、3−ピロリジニル基、1−ピロリニル基、2−ピロリニル基、3−ピロリニル基、4−ピロリニル基、5−ピロリニル基、1−イミダゾリジニル基、2−イミダゾリジニル基、4−イミダゾリジニル基、1−イミダゾリニル基、2−イミダゾリニル基、4−イミダゾリニル基、1−ピラゾリジニル基、3−ピラゾリジニル基、4−ピラゾリジニル基、1−ピラゾリニル基、2−ピラゾリニル基、3−ピラゾリニル基、4−ピラゾリニル基、5−ピラゾリニル基、1−ピペリジル基、2−ピペリジル基、3−ピペリジル基、4−ピペリジル基、1−ピペラジニル基、2−ピペラジニル基、3−ピペラジニル基、1−インドリニル基、2−インドリニル基、3−インドリニル基、4−インドリニル基、5−インドリニル基、6−インドリニル基、7−インドリニル基、1−イソインドリニル基、2−イソインドリニル基、4−イソインドリニル基、5−イソインドリニル基、2−キヌクリジニル基、3−キヌクリジニル基、4−キヌクリジニル基、2−モルフォリニル基、3−モルフォリニル基、4−モルフォリニル基、1−アゼチジニル基、2−アゼチジニル基、3−アゼチジニル基、1−アゼチジノニル基、3−アゼチジノニル基、4−アゼチジノニル基などが挙げられる。
【0051】
前記一般式(A)のR
aにおける芳香族系複素環としては、例えば、5員環〜7員環までの単環式複素環基、構成原子数が8〜10までの縮合二環式複素環基などが挙げられる。これらは、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を1原子〜3原子単独若しくは組み合わせて含むことができる。前記芳香族系複素環としては、例えば、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ピラニル基、3−ピラニル基、4−ピラニル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、2−ベンゾチエニル基、3−ベンゾチエニル基、4−ベンゾチエニル基、5−ベンゾチエニル基、6−ベンゾチエニル基、7−ベンゾチエニル基、1−イソベンゾチエニル基、4−イソベンゾチエニル基、5−イソベンゾチエニル基、2−クロメニル基、3−クロメニル基、4−クロメニル基、5−クロメニル基、6−クロメニル基、7−クロメニル基、8−クロメニル基、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、1−イミダゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジニル基、2−ピリミジニル基、4−ピリミジニル基、5−ピリミジニル基、3−ピリダジニル基、4−ピリダジニル基、1−インドリジニル基、2−インドリジニル基、3−インドリジニル基、5−インドリジニル基、6−インドリジニル基、7−インドリジニル基、8−インドリジニル基、1−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−インダゾリル基、2−インダゾリル基、3−インダゾリル基、4−インダゾリル基、5−インダゾリル基、6−インダゾリル基、7−インダゾリル基、1−プリニル基、2−プリニル基、3−プリニル基、6−プリニル基、7−プリニル基、8−プリニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、1−フタラジニル基、5−フタラジニル基、6−フタラジニル基、2−ナフチリジニル基、3−ナフチリジニル基、4−ナフチリジニル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、2−キナゾリニル基、4−キナゾリニル基、5−キナゾリニル基、6−キナゾリニル基、7−キナゾリニル基、8−キナゾリニル基、3−シンノリニル基、4−シンノリニル基、5−シンノリニル基、6−シンノリニル基、7−シンノリニル基、8−シンノリニル基、2−プテニジニル基、4−プテニジニル基、6−プテニジニル基、7−プテニジニル基、3−フラザニル基などが挙げられる。
【0052】
前記mが2の場合において2つのR
aが結合した環構造を有する前記一般式(A)で表される化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(A)がビピペロニル骨格を有する化合物などが挙げられる。具体的には、下記一般式(A−2)で表される化合物が挙げられる。
【化18】
ただし、前記一般式(A−2)中、Arは、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル基を表す。
【0053】
前記一般式(A)におけるArとしては、置換基を有していてもよいアリール基であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記アリール基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記R
aの説明において挙げたアリール基などが挙げられる。これらの中でもフェニル基が好ましい。
前記置換基を有していてもよいアリール基における置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
前記アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。前記炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。これらの中でも、tert−ブチル基が好ましい。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基が特に好ましい。前記炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基などが挙げられる。これらの中でも、メトキシ基が好ましい。
【0054】
前記置換基を有していてもよいアリール基における前記置換基の置換位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記置換基を有していてもよいアリール基における前記置換基の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1個〜3個などが挙げられる。
【0055】
前記一般式(A)で表される化合物としては、不斉反応における立体選択性の点から、下記一般式(A−1)で表される化合物が好ましい。
【化19】
ただし、前記一般式(A−1)中、R
aは、メトキシ基を表し、Arは、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル基を表す。
【0056】
−キラル銀錯体(第1のキラル銀錯体)の合成方法−
前記キラル銀錯体(第1のキラル銀錯体)の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不活性雰囲気中で、前記銀化合物と前記一般式(A)で表される化合物とを、必要に応じて溶媒中で混合することにより得ることができる。
【0057】
前記キラル銀錯体(第1のキラル銀錯体)の合成における前記銀化合物及び前記一般式(A)で表される化合物の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記銀化合物1.0モルに対して、前記一般式(A)で表される化合物が、1.0モル〜2.0モルが好ましく、1.0モル〜1.1モルがより好ましい。前記一般式(A)で表される化合物が、1.0モル未満であると、立体選択性が低下することがあり、2.0モルを超えると、触媒活性が低下することがある。前記一般式(A)で表される化合物が、前記より好ましい範囲内であると、立体選択性及び触媒活性の点で有利である。
【0058】
前記不活性雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルゴン雰囲気などが挙げられる。
【0059】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエンなどが挙げられる。前記トルエンは、無水トルエンであることが好ましい。
【0060】
前記キラル銀錯体の合成における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温などが挙げられる。前記室温としては、例えば、20℃〜30℃が挙げられる。
前記キラル銀錯体の合成における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5時間〜1時間などが挙げられる。
【0061】
<<不斉合成反応(第1の不斉合成反応)の反応条件>>
前記不斉合成反応(第1の不斉合成反応)においては、前記キラル銀錯体及び必要に応じて塩基を触媒量用いて、前記一般式(4)で表される化合物と前記一般式(5)で表される化合物とを反応させることにより、前記一般式(6)で表される化合物を得ることができる。
【0062】
−塩基−
前記塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU、1,8−diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene)、トリエチルアミン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどが挙げられる。
前記塩基の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(5)で表される化合物に対して、0.5モル%〜10モル%が好ましく、1モル%〜8モル%がより好ましく、2モル%〜6モル%が特に好ましい。前記塩基の使用量が、0.5モル%未満であると、反応の進行に支障をきたすことがあり、10モル%を超えると、副反応が進行することがある。前記塩基の使用量が、前記特に好ましい範囲内であると、立体選択性及び触媒活性の点で有利である。
また、前記塩基の使用量は、後述する前記キラル銀錯体の使用量1モルに対して、0.8モル〜2モルが好ましい。
【0063】
−キラル銀錯体の使用量−
前記不斉合成反応(第1の不斉合成反応)における前記キラル銀錯体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(5)で表される化合物に対して、0.5モル%〜10モル%が好ましく、1モル%〜8モル%がより好ましく、2モル%〜6モル%が特に好ましい。前記キラル銀錯体の使用量が、0.5モル%未満であると、立体選択性が低下することがあり、10モル%を超えると、触媒量が多く、合成コストが高くなることがある。前記キラル銀錯体の使用量が、前記特に好ましい範囲内であると、高い立体選択性を有し、かつ安価に不斉合成反応を行うことができる点で有利である。
【0064】
−一般式(4)で表される化合物の使用量−
前記不斉合成反応(第1の不斉合成反応)における前記一般式(4)で表される化合物の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(5)で表される化合物1モルに対して、1モル以上が好ましく、1モル〜2モルがより好ましく、1.1モル〜1.5モルが特に好ましい。前記一般式(4)で表される化合物の使用量が、1モル未満であると、反応の収率が低下することがあり、2モルを超えると、精製に手間が掛かることがある。前記一般式(4)で表される化合物の使用量が、前記特に好ましい範囲内であると、反応の収率がよく、かつ精製などに手間が掛からずに合成することができる点で有利である。
【0065】
−有機溶媒−
前記不斉合成反応(第1の不斉合成反応)では、有機溶媒を用いることが好ましい。前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、塩化メチレンなどが挙げられる。前記有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0066】
−反応温度−
前記不斉合成反応(第1の不斉合成反応)の反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、−40℃〜20℃が好ましく、−30℃〜10℃がより好ましく、−25℃〜−15℃が特に好ましい。前記反応温度が、−40℃未満であると、反応の進行が遅いことがあり、20℃を超えると、立体選択性が低下することがある。前記反応温度が、前記特に好ましい範囲内であると、立体選択性及び触媒活性の点で有利である。
【0067】
−反応時間−
前記不斉合成反応(第1の不斉合成反応)の反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、6時間〜72時間が好ましく、12時間〜36時間がより好ましく、20時間〜28時間が特に好ましい。前記反応時間が、6時間未満であると、反応収率が低下することがあり、72時間を超えると、副反応が進行することがある。前記反応時間が、前記特に好ましい範囲内であると、反応収率の点で有利である。
【0068】
<第2の不斉合成反応>
本発明の不斉合成反応(第2の不斉合成反応)は、キラル銀錯体の存在下で、下記一般式(4)で表される化合物と下記一般式(5)で表される化合物とを反応させて、下記一般式(7)で表される化合物を得ることを特徴とする。
【0069】
<<一般式(4)で表される化合物、一般式(5)で表される化合物、及び一般式(7)で表される化合物>>
【化20】
ただし、前記一般式(4)、及び前記一般式(7)中、R
11は、水素原子及び置換基のいずれかを表す。前記一般式(5)、及び前記一般式(7)中、R
12は、メチル基及びエチル基のいずれかを表し、nは、1〜3の整数である。
【0070】
前記一般式(4)、及び前記一般式(7)のR
11における置換基としては、例えば、前記第1の不斉合成反応の説明において例示した前記一般式(4)〜一般式(6)の前記R
11における置換基と同様の置換基が挙げられる。好ましい態様も同様である。
【0071】
<<キラル銀錯体(第2のキラル銀錯体)>>
前記キラル銀錯体(第2のキラル銀錯体)としては、銀化合物及び下記一般式(B)で表される化合物により得られる銀錯体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0072】
−銀化合物−
前記銀化合物としては、前記キラル銀錯体を形成可能な化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、AgPF
6、AgBF
4、AgSbF
6、AgOTf(Tfは、トリフルオロメチルスルホニル基(CF
3SO
2−)を表す。以下に同じ。)、AgClO
4、AgNTf
2、AgOAc(Acは、アセチル基を表す。)などが挙げられる。これらの中でも、反応性及び立体選択性の点から、AgPF
6、AgBF
4、AgSbF
6が好ましく、AgPF
6がより好ましい。
【0073】
−一般式(B)で表される化合物−
【化21】
ただし、前記一般式(B)中、R
aは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、非芳香族系複素環及び芳香族系複素環のいずれかを表す。mは、1〜2の整数を表す。mが2の場合には、2つのR
aは、結合して環構造を形成してもよい。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0074】
前記一般式(B)のR
aにおけるアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、非芳香族系複素環及び芳香族系複素環としては、例えば、前記第1の不斉合成反応の説明において例示した前記一般式(A)のR
aにおけるアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、非芳香族系複素環及び芳香族系複素環とそれぞれ同様の基が挙げられる。好ましい態様も同様である。
【0075】
前記mが2の場合において2つのR
aが結合した環構造を有する前記一般式(B)で表される化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(B)がビピペロニル骨格を有する化合物などが挙げられる。
【0076】
前記一般式(B)におけるArとしては、例えば、前記第1の不斉合成反応の説明において例示した前記一般式(A)のArと同様の基が挙げられる。好ましい態様も同様である。
【0077】
前記一般式(B)で表される化合物としては、不斉反応における立体選択性の点から、下記一般式(B−1)で表される化合物が好ましい。
【化22】
ただし、前記一般式(B−1)中、R
aは、メトキシ基を表し、Arは、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル基を表す。
【0078】
−キラル銀錯体の合成方法−
前記キラル銀錯体(第2のキラル銀錯体)の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不活性雰囲気中で、前記銀化合物と前記一般式(B)で表される化合物とを、必要に応じて溶媒中で混合することにより得ることができる。
【0079】
前記キラル銀錯体(第2のキラル銀錯体)の合成における前記銀化合物及び前記一般式(B)で表される化合物の使用量の好ましい範囲は、前記キラル銀錯体(第1のキラル銀錯体)の合成における前記銀化合物及び前記一般式(A)で表される化合物の使用量と同様である。好ましい理由も同様である。
【0080】
前記不活性雰囲気、前記溶媒、並びに前記キラル銀錯体(第2のキラル銀錯体)の合成における反応温度及び反応時間としては、例えば、前記キラル銀錯体(第1のキラル銀錯体)の合成の説明において例示した不活性雰囲気、溶媒、反応温度、及び反応時間と同様である。好ましい態様も同様である。
【0081】
<<不斉合成反応(第2の不斉合成反応)の反応条件>>
前記不斉合成反応(第2の不斉合成反応)においては、前記キラル銀錯体及び必要に応じて塩基を触媒量用いて、前記一般式(4)で表される化合物と前記一般式(5)で表される化合物とを反応させることにより、前記一般式(7)で表される化合物を得ることができる。
【0082】
−塩基−
前記塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU、1,8−diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene)、トリエチルアミン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどが挙げられる。
前記塩基の使用量の好ましい範囲は、前記不斉合成反応(第1の不斉合成反応)における前記塩基の使用量の好ましい範囲と同様である。好ましい理由も同様である。
【0083】
−キラル銀錯体の使用量−
前記不斉合成反応(第2の不斉合成反応)における前記キラル銀錯体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(5)で表される化合物に対して、0.5モル%〜10モル%が好ましく、1モル%〜8モル%がより好ましく、2モル%〜6モル%が特に好ましい。前記キラル銀錯体の使用量が、0.5モル%未満であると、立体選択性が低下することがあり、10モル%を超えると、触媒量が多く、合成コストが高くなることがある。前記キラル銀錯体の使用量が、前記特に好ましい範囲内であると、高い立体選択性を有し、かつ安価に不斉合成反応を行うことができる点で有利である。
【0084】
−一般式(4)で表される化合物の使用量−
前記不斉合成反応(第2の不斉合成反応)における前記一般式(4)で表される化合物の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一般式(5)で表される化合物1モルに対して、1モル以上が好ましく、1モル〜2モルがより好ましく、1.1モル〜1.5モルが特に好ましい。前記一般式(4)で表される化合物の使用量が、1モル未満であると、反応の収率が低下することがあり、2モルを超えると、精製に手間が掛かることがある。前記一般式(4)で表される化合物の使用量が、前記特に好ましい範囲内であると、反応の収率がよく、かつ精製などに手間が掛からずに合成することができる点で有利である。
【0085】
−有機溶媒−
前記不斉合成反応(第2の不斉合成反応)では、有機溶媒を用いることが好ましい。前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、塩化メチレンなどが挙げられる。前記有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0086】
前記不斉合成反応(第2の不斉合成反応)における反応温度、及び反応時間の好ましい範囲は、前記不斉合成反応(第1の不斉合成反応)における反応温度、及び反応時間の好ましい範囲と同様である。好ましい理由も同様である。
【0087】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物は、本発明の前記不斉合成反応により、高価な不斉触媒を多量に用いることなく合成できる。また、前記一般式(1)で表される化合物は、前記反応式(1)に示すように、国際公開第2004/071503号パンフレットにも記載の抗C型肝炎ウイルス剤に有用な化合物の合成中間体である前記化合物gの合成に用いることができる。更に、前記国際公開第2004/071503号パンフレットに記載のいわゆるセリンパルミトイルトランスファーゼ(SPT)阻害剤は、C型肝炎以外の他の疾患への有効性も期待されている。そのため、前記一般式(1)で表される化合物は、抗C型肝炎ウイルス剤などの薬剤の製造に有用な化合物を有機合成化学的手法により安価に合成することを可能にする。
本発明の前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(1)で表される化合物から合成できる。また、前記一般式(2)で表される化合物は、前記反応式(1)に示すように、国際公開第2004/071503号パンフレットにも記載の抗C型肝炎ウイルス剤に有用な化合物の合成中間体である前記化合物gの合成に用いることができる。更に、前記国際公開第2004/071503号パンフレットに記載のいわゆるSPT阻害剤は、C型肝炎以外の他の疾患への有効性も期待されている。そのため、前記一般式(2)で表される化合物は、抗C型肝炎ウイルス剤などの薬剤の製造に有用な化合物を有機合成化学的手法により安価に合成することを可能にする。
本発明の前記一般式(3)で表される化合物は、前記一般式(2)で表される化合物から合成できる。また、前記一般式(3)で表される化合物は、前記反応式(1)に示すように、国際公開第2004/071503号パンフレットにも記載の抗C型肝炎ウイルス(HCV)剤に有用な化合物の合成中間体である前記化合物gの合成に用いることができる。更に、前記国際公開第2004/071503号パンフレットに記載のいわゆるSPT阻害剤は、C型肝炎以外の他の疾患への有効性も期待されている。そのため、前記一般式(3)で表される化合物は、抗C型肝炎ウイルス剤などの薬剤の製造に有用な化合物を有機合成化学的手法により安価に合成することを可能にする。
本発明の前記不斉合成反応は、上記のとおり、抗C型肝炎ウイルス剤などの薬剤の製造に有用な化合物を有機合成化学的手法により安価に合成することを可能にする。
【実施例】
【0088】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、「Me」は、「メチル基」を表す。「THF」は、「テトラヒドロフラン」を表す。「DMF」は、「N,N−ジメチルホルムアミド」を表す。「Bn」は、「ベンジル基」を表す。「PMB」は、「p−メトキシベンジル基」を表す。「TBDPS」は、「tert−ブチルジフェニルシリル基」を表す。「TBS」は、「tert−ブチルジメチルシリル基」を表す。「rt」は、室温を示す。
【0089】
(製造例1)
<触媒(キラル銀錯体)溶液1の調製>
加熱真空乾燥した50mLの褐色ナスフラスコにグローブボックス中にてAgPF
6(22.8mg,0.09mmol)と(S)−3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシ−メトキシBIPHEP(min.97%)((S)−3,5−di−
tBu−4−MeO−MeOBIPHEP、下記一般式(A−1),106.8mg,0.09mmol)を秤量し、グローブボックス内からフラスコを取り出しアルゴン雰囲気下無水トルエン(14.8mL)を加えて室温にて30分間撹拌し触媒溶液1を得た。
【化23】
ただし、前記一般式(A−1)中、Raは、メトキシ基を表し、Arは、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル基を表す。
【0090】
(製造例2)
<触媒(キラル銀錯体)溶液2の調製>
加熱真空乾燥した褐色試験管にグローブボックス中にてAgSbF
6(97%,3.5mg,0.01mmol,0.05当量)と(S)−3,5−di−
tBu−4−MeO−MeOBIPHEP(min.97%,11.9mg,0.01mmol,0.05当量、前記一般式(A−1))を秤量し、グローブボックス内からフラスコを取り出しアルゴン雰囲気下無水トルエン(0.98mL)を加えて室温にて30分間撹拌し触媒溶液2を得た。
【0091】
(製造例3)
<触媒(キラル銀錯体)溶液3の調製>
加熱真空乾燥した褐色試験管にグローブボックス中にてAgBF
4(98%,2.0mg,0.01mmol,0.05当量)と(S)−3,5−di−
tBu−4−MeO−MeOBIPHEP(min.97%,11.9mg,0.01mmol,0.05当量、前記一般式(A−1))を秤量し、グローブボックス内からフラスコを取り出しアルゴン雰囲気下無水トルエン(0.98mL)を加えて室温にて30分間撹拌し触媒溶液3を得た。
【0092】
(製造例4)
<触媒(キラル銀錯体)溶液4の調製>
加熱真空乾燥した褐色試験管にグローブボックス中にてAgPF
6(2.5mg,0.01mmol,0.05当量)と(S)−DTBM−SEGPHOS(11.8mg,0.01mmol,0.05当量、下記一般式(A−2))を秤量し、グローブボックス内からフラスコを取り出しアルゴン雰囲気下無水トルエン(0.98mL)を加えて室温にて30分間撹拌し触媒溶液4を得た。
【化24】
ただし、前記一般式(A−2)中、Arは、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル基を表す。
【0093】
(製造例5)
<触媒(キラル銀錯体)溶液5の調製>
加熱真空乾燥した褐色試験管にグローブボックス中にてAgPF
6(10.1mg,0.04mmol)と(R)−3,5−di−
tBu−4−MeO−MeOBIPHEP(min.97%,47.5mg,0.04mmol,下記一般式(B−1))を秤量し、グローブボックス内からフラスコを取り出しアルゴン雰囲気下無水トルエン(0.8mL)を加えて室温にて30分間撹拌し触媒溶液5(0.05Mトルエン溶液)を得た。
【化25】
ただし、前記一般式(B−1)中、Raは、メトキシ基を表し、Arは、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル基を表す。
【0094】
以下の実施例1−1〜1−5の全体像をまず下記に示す。
【化26】
ここで、保護基及び置換基の略号は、前述のとおりであり、化合物の略号は、前述及び以下の実施例1−1〜1−5に記載のとおりである。
【0095】
(実施例1−1)
<化合物1の合成>
製造例1で得られた触媒溶液1に、α−メチルチオ−γ−ブチロラクトン(320μL,3.00mmol、Barry M. Trost, Henry. C. Ardnt J. Org. Chem., 1973, 38, 3140−3144の手法で合成)、及びα−p−メトキシベンジルオキシアセトアルデヒド(531μL,3.30mmol、Amos B. Smith, III and Richard J. Fox Org. Lett , 2004, 6, 1477−1480の手法で合成)を順次加えた後に、溶液を−20℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の0.5Mトルエン溶液(180μL,0.09mmol)を加え、同温度で24時間撹拌した。24時間後、反応溶液と同体積のシリカゲルを加えた後に、混合物をシリカゲルショートパッドカラムに通し、酢酸エチルにて溶出し、減圧下濃縮した。得られた残渣に、1,1,2,2−テトラクロロエタン(200μL,1.91mmol)を内部標準物質として加えてNMR収率を導いた。NMR収率は98%(シン/アンチ=12/1)であった。フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1(体積比))で精製した後に、さらにフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン−ジクロロメタン/酢酸エチル=9/1(体積比))で精製することで、下記化合物1を無色油状物質として得た。収量800mg(収率85%,光学純度98%ee)。
【化27】
【0096】
得られた化合物1の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)、比旋光度及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.27−7.21(m, 2H), 6.90−6.85(m, 2H), 4.51(d, J=11.7 Hz, 1H), 4.44(d, J=11.7Hz, 1H), 4.40(ddd, J=6.4, 8.7, 10.3Hz, 1H), 4.30(ddd, J=1.6, 8.7, 9.0Hz, 1H), 4.17(ddd, J=2.1, 5.3, 6.2Hz, 1H), 3.81(s, 3H), 3.71(dd, J=6.2, 9.8Hz, 1H), 3.67(dd, J=5.3, 9.8Hz, 1H), 3.29(d, J=2.1Hz, 1H), 2.58(ddd, J=9.0, 10.3, 14.0Hz, 1H), 2.21(s, 3H), 1.96(ddd, J=1.6, 6.4, 14.0Hz, 1H)
[α]
D23 +27.9 (c 1.11, CHCl
3, 98%ee)
HPLC [Daicel CHIRALPAK AD−H, detection at 254nm, 4:1 n−hexane/EtOH, flow rate=1.0mL/min, t
R=20.6min(minor), t
R=24.2min(major)].
【0097】
(実施例1−2)
<化合物2の合成>
加熱真空乾燥した100mLナスフラスコにアルゴン雰囲気下で無水THF(15mL)に水素化アルミニウムリチウム(565mg,14.89mmoL,6.0当量)を加えて攪拌した懸濁液を氷冷し、実施例1−1で得られた化合物1(775mg,2.48mmol,1.0当量)の無水THF溶液(10mL)をゆっくりと滴下し気体の発生が落ち着いた後に、1時間加熱還流した。室温まで冷却した後、得られた懸濁液を氷冷し、0.57mLの水、0.57mLの15質量%水酸化ナトリウム水溶液、及び1.71mLの水を順次ゆっくりと滴下した後に室温まで昇温し、しばらく攪拌した。得られた混合物をグラスフィルターにて濾過した後、酢酸エチルにて溶出し減圧下濃縮して得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/1(体積比)−酢酸エチル)で精製することで下記化合物2を無色油状物質として得た。収量641mg(収率82%)。
【化28】
【0098】
得られた化合物2の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)、及び比旋光度の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.28−7.24(m, 2H), 6.91−6.86(m, 2H), 4.53(d, J=11.2Hz, 1H), 4.49(d, J=11.2Hz, 1H), 3.94(dd, J=4.4, 6.6Hz, 1H), 3.90−3.82(m, 2H), 3.81(s, 3H), 3.78−3.62(m, 4H), 3.36(brs, 3H), 2.01(s, 3H), 1.98−1.85(m, 2H)
[α]
D23 −12.4 (c 0.98, CHCl
3).
【0099】
(実施例1−3)
<化合物3の合成>
20mLナスフラスコにアルゴン雰囲気下で、実施例1−2で得られた化合物2(618mg,1.95mmol,1.0当量)に無水DMF(3.9mL)、及びイミダゾール(798mg,11.72mmol,6.0当量)を加え、氷浴で0℃に冷却した。tert−ブチルジフェニルクロロシラン(TBDPSCl、1.0mL,3.91mmol,2.0当量)を加えた後に室温にて1時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。混合物に水を加えてジエチルエーテルで3回抽出した後、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下濃縮後に得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−ヘキサン/ジエチルエーテル=4/1(体積比))で精製し、下記化合物3を黄色油状物質として得た。収量1.37g(収率90%)。
【化29】
【0100】
得られた化合物3の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)、及び比旋光度の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.70−7.63(m, 8H), 7.48−7.34(m, 12H), 7.27(d, J=8.7Hz, 2H), 6.88(d, J=8.7Hz, 2H), 4.51(d, J=11.7Hz, 1H), 4.47(d, J=11.7Hz, 1H), 4.08−4.04(m, 1H), 3.99−3.90(m, 1H), 3.87−3.75(m, 6H), 3.72−3.61(m, 2H), 3.17(d, J=4.4Hz, 1H), 2.09−1.99(m, 1H), 1.96−1.87(m, 1H), 1.85(s, 3H), 1.08(s, 9H), 1.06(s, 9H)
[α]
D23 −6.4 (c 4.20, CHCl
3)
【0101】
(実施例1−4)
<化合物4の合成>
加熱真空乾燥した試験管にアルゴン雰囲気下で、実施例1−3で得られた化合物3(79.3mg,0.10mmol,1.0当量)、炭酸水素ナトリウム(25.2mg,0.30mmol,3.0当量)、及び乾燥エーテル(1mL)を入れ、そこへメチルトリフラート(MeOTf,23μL,0.20mmol,2.0当量)をゆっくりと滴下し、室温で原料の消失を確認するまで攪拌した後、減圧下濃縮した。得られた残渣を無水ジクロロメタン(1mL)に溶解し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(60μL,0.40mmol,4.0当量)を滴下し1時間室温で撹拌した後に飽和塩化アンモニウム水溶液にて反応を停止した。混合物をジクロロメタンにて抽出した後、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧下濃縮し得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=9/1(体積比))で精製し、下記化合物4を無色油状物質として得た。収量45.2mg(2段階収率61%)。
【化30】
【0102】
得られた化合物4の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.68−7.60(m, 8H), 7.45−7.32(m, 12H), 7.20(d, J=8.7Hz, 1H), 6.83(d, J=8.7Hz, 1H), 4.47(d, J=11.5Hz, 1H), 4.35(d, J=11.5Hz, 1H), 3.83−3.78(m, 5H), 3.74(d, J=11.2Hz, 1H), 3.67(d, J=11.2Hz, 1H), 3.61(dd, J=2.8, 11.2Hz, 1H), 3.31(dd, J=6.9, 11.2Hz, 1H), 3.23(dd, J=2.8, 6.9Hz, 1H), 2.35(dt, J=5.7, 14.2Hz, 1H), 1.81(dt, J=7.1, 14.2Hz, 1H), 1.04(s, 9H), 1.03(s, 9H)
【0103】
(実施例1−5)
<化合物5の合成>
試験管で実施例1−4で得られた化合物4(33mg,0.044mmol,1当量)を塩化メチレン−水(塩化メチレン/水=20/1(体積比),1mL)に溶解し、0℃にて2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ、21mg,0.089mmol)を加えて室温まで昇温し1時間撹拌した後、反応混合物をセライト濾過し、塩化メチレンで洗い込みを行った。得られた溶液を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧下濃縮し得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=7/1(体積比))で精製し、下記化合物5を無色油状物質として得た。収量22.4mg(収率81%)。
【化31】
【0104】
得られた化合物5の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)、及び比旋光度の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.66−7.60(m, 8H), 7.45−7.32(m, 12H), 3.79−3.54(m, 6H), 3.18(dd, J=5.0, 6.4Hz, 1H), 2.23(dt, J=6.0, 14.2Hz, 1H), 1.82(dt, J=6.9, 14.2Hz, 1H), 1.71(t, J=6.4Hz, 1H), 1.04(s, 9H), 1.03(s, 9H)
[α]
D23 −3.0 (c 1.15, CHCl
3)
【0105】
(実施例2−1)
<化合物6の合成>
加熱真空乾燥した20mLの褐色ナスフラスコにグローブボックス中にてAgPF
6(15.2mg,0.06mmol)と(S)−3,5−di−tBu−4−MeO−MeOBIPHEP(min.97%)(71.2mg,0.06mmol)を秤量し、グローブボックス内からフラスコを取り出しアルゴン雰囲気下無水トルエン(9.88mL)を加えて室温にて30分間撹拌し触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液に、α−メチルチオ−γ−ブチロラクトン(213μL,2.00mmol)、及びα−ベンジルオキシアセトアルデヒド(337μL,2.40mmol)を順次加えた後に、溶液を−20℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の0.5Mトルエン溶液(120μL,0.06mmol)を加え、同温度で48時間撹拌した。48時間後、反応溶液と同体積のシリカゲルを加えた後に、混合物をシリカゲルショートパッドカラムに通し、ヘキサン/酢酸エチル=1/1(体積比)にて溶出し、減圧下濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=7/1−2/1(体積比))で精製した後に、さらにフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン−ジクロロメタン/酢酸エチル=9/1(体積比))で精製することで、下記化合物6を無色油状物質として得た。収量395mg(収率70%,98%ee)。
【化32】
【0106】
得られた化合物6の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)、及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.38−7.27(m, 5H), 4.58(d, J=11.9Hz, 1 H), 4.52(d, J=11.9Hz, 1H), 4.40(ddd, J=6.4, 8.9, 10.3Hz, 1H), 4.30(ddd, J=1.8, 8.7, 8.9Hz, 1H), 4.19(m, 1H), 3.73(m, 2H), 3.33(d, J=1.8Hz, 1H), 2.60(ddd, J=8.7, 10.3, 14.0Hz, 1H), 2.21(s, 3H), 1.98(ddd, J=1.8, 6.4, 14.0Hz, 1H).
HPLC [Daicel CHIRALPAK AD−H, detection at 254 nm, 9:1 n−hexane/EtOH, flow rate=1.0mL/min, t
R=26.2min(minor), t
R=33.0min(major)].
【0107】
(実施例2−2)
<化合物7の合成>
加熱真空乾燥した50mLナスフラスコにアルゴン雰囲気下で無水THF(8mL)に水素化アルミニウムリチウム(315mg,8.29mmol,6.0当量)を加えて攪拌した懸濁液に、実施例2−1で得られた化合物6(390mg,1.38mmol,1当量)の無水THF溶液(5.8mL)を氷浴中ゆっくりと滴下し気体の発生が落ち着いた後に、1時間加熱還流した。室温までゆっくりと空冷した後、得られた懸濁液に氷浴中にて0.32mLの水、0.32mLの15質量%水酸化ナトリウム水溶液、及び0.96mLの水を順次ゆっくりと滴下した後に室温まで昇温し、しばらく攪拌した。得られた混合物をセライトにて濾過した後、酢酸エチルにて溶出し、減圧下濃縮して得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/3(体積比))で精製することで下記化合物7を無色油状物質として得た。収量351mg(収率89%)。
【化33】
【0108】
得られた化合物7の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.38−7.27(m, 5H), 4.60(d, J=11.7Hz, 1H), 4.56(d, J=11.7Hz, 1H), 3.97(m, 1H), 3.88−3.64(m, 6H), 3.12(brs, 3H), 2.01(s, 3H), 1.98−1.82(m, 2H).
【0109】
(実施例2−3)
<化合物8の合成>
加熱真空乾燥した20mLナスフラスコにアルゴン雰囲気下で実施例2−2で得られた化合物7(337mg,1.18mmol,1当量)にDMF(2.4mL)、及びイミダゾール(481mg,7.06mmol,6当量)を加え、氷浴で0℃に冷却した。tert−ブチルジフェニルクロロシラン(0.61mL,2.35mmol,2.0当量)を加えた後に室温にて1時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液にて反応を停止した。混合物をジエチルエーテルで抽出した後、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下濃縮後に得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1(体積比))で精製し、下記化合物8を無色油状物質して得た。収量884mg(収率98%)。
【化34】
【0110】
得られた化合物8の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.68−7.61(m, 8H), 7.46−7.26(m, 17H), 4.57(d, J=11.9Hz, 1H), 4.53(d. J=11.9Hz, 1H), 4.08−4.03(m, 1H), 3.96−3.89(m, 1H), 3.85−3.75(m, 3H), 3.71−3.61(m, 2H), 3.17(d, J=4.6Hz, 1H), 2.08−1.97(m, 1H), 1.93−1.84(m, 1H), 1.83(s, 3H), 1.06(s, 9H), 1.04(s, 9H).
【0111】
(実施例2−4)
<化合物9の合成>
加熱真空乾燥した試験管にアルゴン雰囲気下で実施例2−3で得られた化合物8(200mg,0.26mmol,1.0当量)に乾燥エーテル(2.6mL)を入れ、氷浴で0℃に冷却した。そこへメチルトリフラート(44μL,0.39mmol,1.5当量)をゆっくりと滴下し、室温で原料の消失を確認するまで間攪拌した後、減圧下濃縮した。得られた残渣を無水ジクロロメタン(2.6mL)に溶解し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(0.12mL,0.79mmol,3当量)を滴下し2時間室温で撹拌した後に飽和塩化アンモニウム水溶液にて反応を停止した。混合物をジクロロメタンにて抽出した後、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=9/1(体積比))で精製し、下記化合物9を無色油状物質して得た。収量99.8mg(2段階収率54%)。
【化35】
【0112】
得られた化合物9の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.66−7.58(m, 8H), 7.43−7.26(m, 17H), 4.52(d, J=11.9Hz, 1H), 4.39(d, J=11.9Hz, 1H), 3.79(dd, J=5.7, 6.9Hz, 2H), 3.72(d, J=11.4Hz, 1H), 3.65(d, J=11.4Hz, 1H), 3.62(dd, J=3.0, 11.2Hz, 1H), 3.31(dd, J=6.9, 11.2Hz, 1H), 3.23(dd, J=3.0, 6.9Hz, 1H), 2.33(dt, J=5.7, 14.2Hz, 1H), 1.79(dt, J=6.9, 14.2Hz, 1H), 1.02(s, 9H), 1.01(s, 9H).
【0113】
(実施例2−5)
<化合物5の合成>
実施例2−4で得られた化合物9(147mg,0.21mmol,1当量)、酢酸エチル(4mL)、及びパラジウム/炭素(29.4mg,20%質量/質量)を試験管に加えて1気圧の水素雰囲気下、室温にて21時間撹拌した後、不要物をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮して得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=7/1(体積比))で精製し、下記化合物5を無色油状物質として得た。収量45mg(収率35%)。
【化36】
【0114】
得られた化合物5の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.66−7.60(m, 8H), 7.45−7.32(m, 12H), 3.79−3.54(m, 6H), 3.18(dd, J=5.0, 6.4Hz, 1H), 2.24(dt, J=6.0, 14.2Hz, 1H), 1.82(dt, J=6.9, 14.2Hz, 1H), 1.77(brs, 1H), 1.04(s, 9H), 1.03(s, 9H).
【0115】
(実施例3)
<化合物1の合成(触媒の銀化合物を代えた合成例)>
製造例2で得られた触媒溶液2に、α−メチルチオ−γ−ブチロラクトン(21μL,0.20mmol,1.0当量)、及びα−p−メトキシベンジルオキシアセトアルデヒド(39μL,0.24mmol,1.2当量)を順次加えた後に、溶液を−20℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の0.5Mトルエン溶液(20μL,0.01mmol,0.05当量)を加え、同温度(−20℃)で24時間撹拌した。24時間後、反応溶液と同体積のシリカゲルを加えた後に、混合物をシリカゲルショートパッドカラムに通し、酢酸エチルにて溶出し減圧下濃縮して化合物1を得た。得られた残渣に、1,1,2,2−テトラクロロエタン(20μL,0.19mmol)を内部標準物質として加えてNMR収率を導いた。光学純度(ee)はHPLCにより決定した。NMR収率85%(シン/アンチ=18/1)、98%eeであった。
【0116】
(実施例4)
<化合物1の合成(触媒の銀化合物を代えた合成例)>
製造例3で得られた触媒溶液3に、α−メチルチオ−γ−ブチロラクトン(21μL,0.20mmol,1.0当量)、及びα−p−メトキシベンジルオキシアセトアルデヒド(39μL,0.24mmol,1.2当量)を順次加えた後に、溶液を−20℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の0.5Mトルエン溶液(20μL,0.01mmol,0.05当量)を加え、同温度(−20℃)で24時間撹拌した。24時間後、反応溶液と同体積のシリカゲルを加えた後に、混合物をシリカゲルショートパッドカラムに通し、酢酸エチルにて溶出し減圧下濃縮し化合物1を得た。得られた残渣に、1,1,2,2−テトラクロロエタン(20μL,0.19mmol)を内部標準物質として加えてNMR収率を導いた。eeはHPLCにより決定した。NMR収率93%(シン/アンチ=8/1)、97%eeであった。
【0117】
(実施例5)
<化合物1の合成(触媒の錯体を代えた合成例)>
製造例4で得られた触媒溶液4に、α−メチルチオ−γ−ブチロラクトン(21μL,0.20mmol,1.0当量)、及びα−p−メトキシベンジルオキシアセトアルデヒド(39μL,0.24mmol,1.2当量)を順次加えた後に、溶液を−20℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の0.5Mトルエン溶液(20μL,0.01mmol,0.05当量)を加え、同温度(−20℃)で24時間撹拌した。24時間後、反応溶液と同体積のシリカゲルを加えた後に、混合物をシリカゲルショートパッドカラムに通し、酢酸エチルにて溶出し減圧下濃縮し化合物1を得た。得られた残渣に、1,1,2,2−テトラクロロエタン(20μL,0.19mmol)を内部標準物質として加えてNMR収率を導いた。eeはHPLCにより決定した。NMR収率>99%(シン/アンチ=10/1)、97%eeであった。
【0118】
(実施例6)
<化合物10の合成>
加熱真空乾燥した褐色試験管に、無水トルエン(0.78mL)、α−メチルチオ−γ−ブチロラクトン(21μL,0.20mmol,1.0当量)、(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)アセトアルデヒド(47μL,0.24mmol,1.2当量)及び製造例5で得られた触媒溶液5(200μL,0.01mmol,0.05当量)を順次加えた後に、溶液を−20℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の0.5Mトルエン溶液(20μL,0.01mmol,0.05当量)を加え、同温度(−20℃)で48時間後撹拌した。反応溶液と同体積のシリカゲルを加えた後に、混合物をシリカゲルショートパッドカラムに通し、酢酸エチルにて溶出し減圧下濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=19/1(体積比))で精製し下記化合物10を得た。(収量54.4mg、シン/アンチ=>20/1、収率89%、98%ee)。
【化37】
【0119】
得られた化合物10の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ4.41(ddd, J=6.4, 8.7, 10.1Hz, 1H), 4.34(ddd, J=1.8, 8.7, 8.9Hz, 1H), 4.03(ddd, J=2.1, 5.7, 6.2Hz, 1H), 3.86(dd, J=5.7, 10.3Hz, 1H), 3.83(dd, J=6.2, 10.3Hz, 1H), 3.32(d, J=2.1Hz, 1H), 2.68(ddd, J=8.9, 10.1, 14.0Hz, 1H), 2.21(s, 3H), 2.00(ddd, J=1.8, 6.4, 14.0Hz, 1H), 0.89(s, 9H), 0.08(s, 3H), 0.08(s, 3H)
【0120】
(実施例7)
<化合物11の合成>
加熱真空乾燥した褐色試験管に、無水トルエン(0.87mL)、α−メチルチオ−γ−ブチロラクトン(21μL,0.20mmol,1.0当量)、ヒドロシンナムアルデヒド(32μL,0.24mmol,1.2当量)、及び製造例5で得られた触媒溶液5(120μL,0.006mmol,0.03当量)を順次加えた後に、溶液を−20℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の0.5Mトルエン溶液(12μL,0.006mmol,0.03当量)を加え、同温度(−20℃)で48時間撹拌した。反応溶液と同体積のシリカゲルを加えた後に、混合物をシリカゲルショートパッドカラムに通し、酢酸エチルにて溶出し減圧下濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1(体積比))で精製し下記化合物11を得た。(収量49.8mg、シン/アンチ=18/1、収率93%、98%ee)。
【化38】
【0121】
得られた化合物11の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.32−7.27(m, 2H), 7.24−7.17(m, 3H), 4.41(ddd, J=6.4, 8.9, 10.8Hz, 1H), 4.30(ddd, J=1.2, 8.9, 9.0Hz, 1H), 3.92(m,1H), 3.23(m, 1H), 3.00(ddd, J=4.8, 10.3, 13.8Hz, 1H), 2.73(ddd, J=6.9, 9.8, 13.8Hz, 1H), 2.41(ddd, J=9.0, 10.8, 14.0Hz, 1H), 2.22(s, 3H), 2.04−1.94(m, 1H), 1.90(ddd, J=1.2, 6.4, 14.0Hz, 1H), 1.66−1.58(m, 1H)
【0122】
(実施例8)
<化合物12の合成>
加熱真空乾燥した褐色試験管に、無水トルエン(0.78mL)、α−メチルチオ−γ−ブチロラクトン(21μL,0.20mmol,1.0当量)、オクタナール(38μL,0.24mmol,1.2当量)、及び製造例5で得られた触媒溶液5(200μL,0.01mmol,0.05当量)を順次加えた後に、溶液を−20℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の0.5Mトルエン溶液(20μL,0.01mmol,0.05当量)を加え、同温度(−20℃)で48時間撹拌した。48時間後、反応溶液と同体積のシリカゲルを加えた後に、混合物をシリカゲルショートパッドカラムに通し、酢酸エチルにて溶出し減圧下濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=19/1(体積比))で精製し下記化合物12を得た。(収量40.0mg、シン/アンチ=13/1、収率77%、99%ee)。
【化39】
【0123】
得られた化合物12の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ4.40(ddd, J=6.2, 8.9, 10.6Hz, 1H), 4.33(ddd, J=1.4, 8.9, 9.0Hz, 1H), 3.87(m, 1H), 3.09(s, 1H), 2.49(ddd, J=9.0, 10.6, 14.0Hz, 1H), 2.20(s, 3H), 1.89(ddd, J=1.4, 6.2, 14.0Hz, 1H), 1.68−1.56(m, 2H), 1.45−1.21(m, 10H), 0.87(t, J=7.1Hz, 3H)
【0124】
(実施例9)
<化合物13の合成>
加熱真空乾燥した褐色試験管に、無水トルエン(0.78mL)、α−メチルチオ−δ−バレロラクトン(25μL,0.20mmol,1.0当量),α−ベンジルオキシアセトアルデヒド(34μL,0.24mmol,1.2当量)、及び製造例5で得られた触媒溶液5(200μL,0.01mmol,0.05当量)を順次加えた後に、溶液を−20℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の0.5Mトルエン溶液(20μL,0.01mmol,0.05当量)を加え、同温度(−20℃)で32時間撹拌した。32時間後、反応溶液と同体積のシリカゲルを加えた後に、混合物をシリカゲルショートパッドカラムに通し、酢酸エチルにて溶出し減圧下濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1(体積比))で精製し下記化合物13を得た。(収量36.3mg、シン/アンチ=16/1、収率61%、99%ee)。
【化40】
【0125】
得られた化合物13の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.37−7.27(m, 5H), 4.58(d, J=11.9Hz, 1H), 4.52(d, J=11.9Hz, 1H), 4.50−4.44(m, 1H), 4.36−4.32(m, 1H), 4.24−4.18(m, 1H), 3.71(dd, J=6.4, 9.8Hz, 1H), 3.65(dd, J=4.6, 9.8Hz, 1H), 2.94(m, 1H), 2.31−2.18(m, 1H), 2.17−2.04(m, 4H), 1.78−1.68(m, 2H)
【0126】
(実施例10)
<化合物14の合成>
加熱真空乾燥した褐色試験管に、無水トルエン(0.78mL)、α−メチルチオ−γ−ブチロラクトン(21μL,0.20mmol,1.0当量)、α−p−メトキシベンジルオキシアセトアルデヒド(39μL,0.24mmol,1.2当量)、及び製造例5で得られた触媒溶液5(0.05Mトルエン溶液,200μL,0.01mmol,0.05当量)を順次加えた後に、溶液を−20℃に冷却し、トリエチルアミンの0.5Mトルエン溶液(20μL,0.01mmol,0.05当量)を加え、同温度で24時間撹拌した。反応溶液と同体積のシリカゲルを加えた後に、混合物をシリカゲルショートパッドカラムに通し、酢酸エチルにて溶出し減圧下濃縮し下記化合物14を得た。得られた残渣に、1,1,2,2−テトラクロロエタン(20μL,0.19mmol)を内部標準物質として加えてNMR収率を導いた。eeはHPLCにより決定した。NMR収率4%(シン/アンチ=10/1)、39%eeであった。
【化41】
【0127】
実施例10で得られた化合物14の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)、及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.27−7.21(m, 2H), 6.90−6.85(m, 2H), 4.51(d, J=11.7 Hz, 1H), 4.44(d, J=11.7Hz, 1H), 4.40(ddd, J=6.4, 8.7, 10.3Hz, 1H), 4.30(ddd, J=1.6, 8.7, 9.0Hz, 1H), 4.17(ddd, J=2.1, 5.3, 6.2Hz, 1H), 3.81(s, 3H), 3.71(dd, J=6.2, 9.8Hz, 1H), 3.67(dd, J=5.3, 9.8Hz, 1H), 3.29(d, J=2.1Hz, 1H), 2.58(ddd, J=9.0, 10.3, 14.0Hz, 1H), 2.21(s, 3H), 1.96(ddd, J=1.6, 6.4, 14.0Hz, 1H)
HPLC [Daicel CHIRALPAK AD−H, detection at 254nm, 4:1 n−hexane/EtOH, flow rate=1.0mL/min, t
R=21.3min(major), t
R=25.0min(minor)].
【0128】
(実施例11)
<化合物14の合成(塩基を代えた合成例)>
加熱真空乾燥した褐色試験管に、無水トルエン(0.80mL)、α−メチルチオ−γ−ブチロラクトン(21μL,0.20mmol,1.0当量)、α−p−メトキシベンジルオキシアセトアルデヒド(39μL,0.24mmol,1.2当量)、及び製造例5で得られた触媒溶液5(0.05Mトルエン溶液,200μL,0.01mmol,0.05当量)を順次加えた後に、溶液を−20℃に冷却し、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(1.4mg,0.01mmol,0.05当量)を加え、同温度で24時間撹拌した。反応溶液と同体積のシリカゲルを加えた後に、混合物をシリカゲルショートパッドカラムに通し、酢酸エチルにて溶出し減圧下濃縮し化合物14を得た。得られた残渣に、1,1,2,2−テトラクロロエタン(20μL,0.19mmol)を内部標準物質として加えてNMR収率を導いた。eeはHPLCにより決定した。NMR収率99%(シン/アンチ=6/1)、95%eeであった。
【0129】
実施例11で得られた化合物14の
1H NMRスペクトル(プロトン核磁気共鳴スペクトル)、及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)の結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3):δ7.27−7.21(m, 2H), 6.90−6.85(m, 2H), 4.51(d, J=11.7 Hz, 1H), 4.44(d, J=11.7Hz, 1H), 4.40(ddd, J=6.4, 8.7, 10.3Hz, 1H), 4.30(ddd, J=1.6, 8.7, 9.0Hz, 1H), 4.17(ddd, J=2.1, 5.3, 6.2Hz, 1H), 3.81(s, 3H), 3.71(dd, J=6.2, 9.8Hz, 1H), 3.67(dd, J=5.3, 9.8Hz, 1H), 3.29(d, J=2.1Hz, 1H), 2.58(ddd, J=9.0, 10.3, 14.0Hz, 1H), 2.21(s, 3H), 1.96(ddd, J=1.6, 6.4, 14.0Hz, 1H)
HPLC [Daicel CHIRALPAK AD−H, detection at 254nm, 4:1 n−hexane/EtOH, flow rate=1.0mL/min, t
R=21.1min(major), t
R=25.4min(minor)].
【課題】抗C型肝炎ウイルス剤などの薬剤の製造に有用な化合物を有機合成化学的手法により安価に合成することを可能にする新規化合物、及び該新規化合物を含む化合物群の合成に有用な不斉合成反応の提供。