特許第5933876号(P5933876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5933876シース継手およびこれを含むシース管路構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5933876
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】シース継手およびこれを含むシース管路構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/10 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
   E04C5/10
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-509197(P2016-509197)
(86)(22)【出願日】2015年10月28日
(86)【国際出願番号】JP2015005427
【審査請求日】2016年2月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221502
【氏名又は名称】東拓工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】那波 恒博
(72)【発明者】
【氏名】藤原 敏史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 暁宏
(72)【発明者】
【氏名】菊森 康博
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−108405(JP,A)
【文献】 特開2003−321900(JP,A)
【文献】 特開2004−251065(JP,A)
【文献】 特許第5555820(JP,B1)
【文献】 特開2015−94174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物に埋設され、前記コンクリート構造物にプレストレスを導入するための緊張材を受け入れるシース管路を、外周面に螺旋状突起を有するシース管と共に形成するシース継手であって、
少なくとも一方が内周面に前記シース管の螺旋状突起に係合する螺旋状突起を有する第1および第2連結部と、
前記第1および第2連結部との間にあり、前記シース管の挿入を許容する内径を有し、内周面に前記第1および第2連結部の前記少なくとも一方の前記螺旋状突起に沿う螺旋状の仮想線に沿った少なくとも一つの内周突起を有する中間部と、を備え、
前記少なくとも一つの内周突起が、前記第1および第2連結部の前記少なくとも一方の前記螺旋状突起から離間している、
シース継手。
【請求項2】
前記少なくとも一つの内周突起は、互いに離間した第1および第2内周突起を含む、請求項1に記載のシース継手。
【請求項3】
前記第1および第2内周突起は、それぞれ、第1端および第2端を有し、前記第1端と前記第2端との間の前記シース継手の軸方向における距離が前記螺旋状の仮想線の半ピッチよりも大きく1ピッチよりも小さく、
前記第1および第2内周突起をそれぞれ前記シース継手の軸方向に直交する仮想平面に投影して得られる投影形状が、略C字状である、
請求項2に記載のシース継手。
【請求項4】
前記第1内周突起は、前記第1内周突起の前記第1端と前記第2端との間に第1間隙を規定し、前記第2内周突起は、前記第2内周突起の前記第1端と前記第2端との間に第2間隙を規定し、前記第1間隙および前記第2間隙は、前記シース継手の周方向において同じ位置にある、請求項3に記載のシース継手。
【請求項5】
前記第1内周突起は、前記第1内周突起の前記第1端と前記第2端との間に第1間隙を規定し、前記第2内周突起は、前記第2内周突起の前記第1端と前記第2端との間に第2間隙を規定し、前記第1間隙および前記第2間隙は、前記シース継手の周方向において異なる位置にある、請求項3に記載のシース継手。
【請求項6】
前記中間部は、2つの半周領域を有し、前記第1間隙および前記第2間隙は、同じ半周領域内に位置する、請求項5に記載のシース継手。
【請求項7】
前記中間部は、内周面から外周面に貫通する排出口を有し、
前記排出口は、前記第1内周突起と前記第2内周突起の間で、且つ、前記第1内周突起の前記第1間隙と前記第2内周突起の前記第2間隙とを結ぶ領域内に位置する、
請求項4〜6の何れかに記載のシース継手。
【請求項8】
さらに、前記中間部に前記グラウトの充填を検出するセンサを備え、
前記センサは、前記第1内周突起と前記第2内周突起の間で、且つ、前記第1内周突起の前記第1間隙と前記第2内周突起の前記第2間隙とを結ぶ領域内に位置する、
請求項4〜6の何れかに記載のシース継手。
【請求項9】
前記第1内周突起と前記第2内周突起との間の前記シース継手の軸方向における距離は、前記螺旋状の仮想線の半ピッチよりも小さい、請求項2、7、8の何れかに記載のシース継手。
【請求項10】
前記中間部は、内周面から外周面に貫通する排出口を有する、請求項1に記載のシース継手。
【請求項11】
さらに、前記中間部に前記グラウトの充填を検出するセンサを備える、請求項1に記載のシース継手。
【請求項12】
さらに、前記第1および第2連結部の前記少なくとも一方の内周面に取り付けられたシール材を備える、請求項1〜11の何れかに記載のシース継手。
【請求項13】
さらに、前記第1および第2連結部の前記少なくとも一方から延出された延出部と、前記延出部の内周面に取り付けられたシール材とを備える、請求項1〜11の何れかに記載のシース継手。
【請求項14】
前記シール材は、繊維マトリックスを有する不織布を含む請求項12または13に記載のシース継手。
【請求項15】
さらに、前記不織布に担持され、膨潤により前記繊維マトリックスを充填する成分を備える、請求項14に記載のシース継手。
【請求項16】
前記膨潤により前記繊維マトリックスを充填する成分は、ブリージング水により膨張する樹脂成分である、請求項15に記載のシース継手。
【請求項17】
さらに、前記不織布に担持された、ブリージング水とのアルカリシリカ反応によりゲル状物質を生成する成分を備える、請求項14に記載のシース継手。
【請求項18】
コンクリート構造物に埋設され、前記コンクリート構造物にプレストレスを導入するための緊張材を受け入れるシース管路構造であって、外周面に螺旋状突起を有するシース管と、請求項1〜17の何れかに記載のシース継手とを備え、前記第1および第2連結部の前記少なくとも一方の内周面にある前記螺旋状突起の前記シース継手の軸方向に沿う断面形状が、前記シース管の外周面にある前記螺旋状突起の前記シース管の軸方向に沿う断面形状と異なるシース管路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物に埋設され、このコンクリート構造物にプレストレスを導入するための緊張材を受け入れるシース管路に関し、特に、シース管路をシース管と共に形成するシース継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物の強度を高めるため、コンクリート構造物への荷重前にコンクリート構造物にプレストレスを導入する技術がよく知られている。プレストレスは、緊張材(例えば、鋼材または炭素繊維複合材からなる線材または棒材)を利用して導入される。プレストレスの導入方式は、緊張材を緊張させてからコンクリートを打設するプレテンション方式と、コンクリートを打設してから緊張材を緊張させるポストテンション方式に大別される。
【0003】
ポストテンション方式では、まず、緊張材を挿入するためのシース管路を埋設したコンクリート構造物が形成される。このようなコンクリート構造物は、例えば、格子状に組まれた鉄筋からなる鉄筋籠とこの鉄筋籠の中を通過するシース管路を内部に備えた型枠内にコンクリートを注ぎ込み、このコンクリートの硬化を待つことで形成される。次に、緊張材がシース管路に挿入され、外部から付与された緊張力を受け、緊張力を受けた状態でコンクリート構造物の両端に設けられた定着具に固定される。コンクリート構造物は、緊張材に付与された緊張力の反作用による圧縮力を受ける。これによりコンクリート構造物にプレストレスが導入される。プレストレスの導入後にグラウト(例えば、モルタル)がシース管路内に注入される。
【0004】
このように、ポストテンション方式では、コンクリート構造物内に緊張材を通すためにシース管路が利用される。シース管路は、一般に、金属製または樹脂製のシース管を複数連結して形成される。例えば、特許文献1は、数メートルの長さのシース管同士を数十センチメートルの長さのシース継手で連結してシース管路を形成する技術を開示している。シース管は、螺旋波形状であり、そのため外周面に螺旋状突起を有する。シース継手は、螺旋波形状であり、そのため内周面に螺旋状突起を有する。特許文献1は、シース管を軸回りに回転させてシース管をシース継手に螺合し、これによりシース管をシース継手に連結することを開示している(段落0003参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−108405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、特許文献1の従来の技術の欄に開示された技術は、シース管をシース継手に連結する際に、シース管を軸回りに回転させている。ところが、数メートルの長さの重いシース管を軸回りに回転させる作業は、作業者にとって大きな負担となる。特に、鉄筋籠の中にシース管を配置してからシース管同士を連結する場合、作業者は鉄筋に囲まれた狭い空間内に手を差し込んで連結作業を実施することになるので、より負担が重くなる。そこで、シース管を回転させるのではなく、数十センチメートルの長さの比較的軽いシース継手を軸回りに回転させて、シース管同士を連結してもよい。まず、シース継手を軸回りに回転させてこのシース継手を一方のシース管に多めにねじ込んでおく。次に、このシース管と他方のシース管を突き合わせるようにして鉄筋籠の中に配置する。そして、今度はシース継手を軸回りに逆回転させて、このシース継手を少しねじ戻してそれに伴い他方のシース管にねじ込む。このようにすれば、重いシース管を回転させる場合に比べて作業者への負担を軽減できる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたシース継手を利用した場合、上記連結作業を採用しても作業者への負担の軽減が不十分であることが判明した。
【0008】
本発明は、シース管の連結作業時に作業者への負担をより軽減できるシース継手を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るシース継手は、コンクリート構造物に埋設され、前記コンクリート構造物にプレストレスを導入するための緊張材を受け入れるシース管路を、外周面に螺旋状突起を有するシース管と共に形成するシース継手である。シース継手は、少なくとも一方が内周面に前記シース管の螺旋状突起に係合する螺旋状突起を有する第1および第2連結部と、前記第1および第2連結部との間にあり、前記シース管の挿入を許容する内径を有し、内周面に前記第1および第2連結部の前記少なくとも一方の前記螺旋状突起に沿う螺旋状の仮想線に沿った少なくとも一つの内周突起を有する中間部と、を備える。前記少なくとも一つの内周突起が、前記第1および第2連結部の前記少なくとも一方の前記螺旋状突起から離間している。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、中間部の内周突起は、第1および第2連結部の螺旋状突起から離間している。これにより、中間部の内周突起が第1および第2連結部の螺旋状突起と連続している場合に比べて、中間部の内周突起がシース管の螺旋状突起に接触する面積を低減することができる。従って、シース継手のねじ込み(以下、「螺進」という)およびねじ戻し(以下、「螺退」という)の際に発生する摩擦力を低減でき、ひいては作業者への負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】コンクリート構造物の断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るシース継手の側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るシース継手の縦断面図であり、図4のB−B断面に相当する。
図4】本発明の第1実施形態に係るシース継手の横断面図であり、図2図3のA−A断面に相当する。
図5】シース管の連結作業の説明図である。
図6】シース管とシース継手の連結部分を示す縦断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るシース継手の側面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るシース継手の横断面図であり、(a)は図7のC−C断面に相当し、(b)は図7のD−D断面に相当する。
図9】本発明の第3実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図である。
図10】本発明の第4実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図である。
図11】本発明の第5実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図である。
図12】本発明の第6実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図である。
図13】本発明の第7実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図である。
図14】(a)は本発明の第8実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図であり、(b)は(a)のE−E断面図である。
図15】本発明の第9実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図である。
図16】(a)は本発明の第10実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図であり、(b)は(a)のF−F断面図である。
図17】本発明の第11実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図である。
図18】本発明の第12実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図である。
図19】本発明の第13実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図である。
図20】本発明の第14実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図である。
図21】本発明の第15実施形態に係るシース継手の一部切欠き側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、コンクリート構造物の断面図であり、特にシース管路の連結箇所を示している。
【0014】
シース管路1は、コンクリート構造物2に埋設されて、そのコンクリート構造物2にプレストレスを導入するための緊張材3を受け入れている。グラウト4が、シース管路1の内周面と緊張材3の外周面の隙間に充填されている。緊張材3は、例えば、鋼材または炭素繊維複合材からなる線材または棒材である。グラウト4は、例えば、モルタルである。
【0015】
シース管路1は、シース管20,40と、シース管20,40を連結するシース継手100を含む。シース管20,40は、例えば、主に、ポリエチレンのような樹脂材料からなり、例えば、数メートルの長さを有する。シース管20,40は、外周面21,41に径外方向に螺旋状に突出した螺旋状突起22,42を有し、内周面23,43に外周面21,41の螺旋状突起22,42に対応する螺旋状溝24,44を有する。すなわち、シース管20,40は、径外方向に螺旋状に膨らんだ管壁を有する、いわゆる螺旋波形状管である。ただし、内周面23,43の螺旋状溝24,44は必須ではなく、例えば、内周面23,43は平坦でもよい。
【0016】
シース継手100は、シース管20,40よりも大径の管であり、例えば、主に、ポリエチレンのような樹脂材料からなり、例えば、数十センチメートルの長さを有する。シース継手100は、シース管20を連結する第1連結部110と、シース管40を連結する第2連結部130と、第1連結部110および第2連結部130の間の中間部150とを備える。
【0017】
図2は、シース継手の側面図であり、図3は、シース継手の縦断面図である。第1連結部110は、内周面113に径内方向に螺旋状に突出した螺旋状突起114を有し、外周面111に内周面113の螺旋状突起114に対応する螺旋状溝112を有する。螺旋状突起114は、第1連結部110の全長に亘り、一定のピッチP1で、連続的に、すなわち途切れることなく伸びている。第1連結部110の内周面113の螺旋状突起114は、シース管20の外周面21の螺旋状突起22に係合する。すなわち、シース継手100がシース管20に螺合したときに第1連結部110の螺旋状突起114がシース管20の螺旋状突起22に噛み合うように、第1連結部110の螺旋状突起114の高さH1およびピッチP1が調整されている。第1連結部110の最大内径D11は、シース管20の最大外径(螺旋状突起22を含む外径)よりも大きい。第1連結部110の最小内径D12は、シース管20の最大外径よりも小さく、シース管20の最小外径(螺旋状突起22を含まない外径)よりも大きい。第1連結部110の螺旋状突起114のピッチP1は、シース管20の螺旋状突起22のピッチと同じである。
【0018】
第2連結部130は、概ね、第1連結部110と同様の構造を有する。第2連結部130は、内周面133に径内方向に螺旋状に突出した螺旋状突起134を有し、外周面131に内周面133の螺旋状突起134に対応する螺旋状溝132を有する。螺旋状突起134は、第2連結部130の全長に亘り、一定のピッチP2で、連続的に、すなわち途切れることなく伸びている。第2連結部130の内周面133の螺旋状突起134は、シース管40の外周面41の螺旋状突起42に係合する。すなわち、シース継手100がシース管40に螺合したときに第2連結部130の螺旋状突起134がシース管40の螺旋状突起42に噛み合うように、第2連結部130の螺旋状突起134の高さH2およびピッチP2が調整されている。第2連結部130の最大内径D21は、シース管40の最大外径(螺旋状突起42を含む外径)よりも大きい。第2連結部130の最小内径D22は、シース管40の最大外径よりも小さく、シース管40の最小外径(螺旋状突起42を含まない外径)よりも大きい。第2連結部130の螺旋状突起134のピッチP2は、シース管40の螺旋状突起42のピッチと同じである。
【0019】
シース管20がシース管40と同じサイズの場合、第1連結部110を第2連結部130と同じサイズとしてもよい。具体的には、第1連結部110の最大内径D11を第2連結部130の最大内径D21と同じとし、第1連結部110の最小内径D12を第2連結部130の最小内径D22と同じとし、第1連結部110の螺旋状突起114のピッチP1を第2連結部130の螺旋状突起134のピッチP2と同じとしてもよい。さらに、第1連結部110の螺旋状突起114および第2連結部130の螺旋状突起134を、共通の螺旋状の仮想線158(図2参照)に沿わせて、共通の螺旋状の仮想線158上に形成することとしてもよい。
【0020】
中間部150は、円筒状であり、内周面153に径内方向に突出した内周突起154,164を有し、外周面151に内周面153の内周突起154,164に対応する外周溝152,162を有する。内周突起154,164は、螺旋状であり、螺旋状の仮想線158に沿って、この仮想線158上に形成されている。内周突起154は、第1連結部110の螺旋状突起114から離間し、内周突起164からも離間している。内周突起164は、第2連結部130の螺旋状突起134から離間し、内周突起154からも離間している。つまり、中間部150は、中間部150の全長に亘り連続的な螺旋状の内周突起を有するのではなく、部分的に途切れた不連続な螺旋状の内周突起を有するとも表現できる。
【0021】
中間部150の最大内径D31は、シース管20,40の最大外径よりも大きい。また、中間部150の最小内径D32は、シース管20,40の最大外径よりも小さく、シース管20,40の最小外径よりも大きい。これにより、中間部150は、第1連結部110から挿入されたシース管20の挿入を許容でき、第2連結部130から挿入されたシース管40の挿入を許容できる。
【0022】
これにより、シース管20がシース継手100の第1連結部110および中間部150を越えて第2連結部130に到達するまで、シース継手100をシース管20に対して螺進することができる。また、シース管40がシース継手100の第2連結部130および中間部150を越えて第1連結部110に到達するまで、シース継手100をシース管40に対して螺進することができる。このとき、中間部150の内周突起154,164は、シース管20の螺旋状突起22に接触し、摩擦力を発生させる。しかし、内周突起154,164は、中間部150の全長に亘る連続的な螺旋状の内周突起に比べて、螺旋状突起22との接触面積を低減でき、そのため、摩擦力を低減することができる。従って、シース継手100の螺進および螺退の際の作業者の負担を軽減することができる。
【0023】
さらに、中間部150の内周突起154,164は、中間部150を補強する効果を奏する。特に、内周突起154,164は、径内方向に突出しているので、中間部150の径方向の耐圧力を高めることができる。従って、中間部150が内周突起154,164を有さない場合に比べて、コンクリートの荷重によるシース継手の変形を防止または低減し、これによりグラウトの充填不良を回避することができる。
【0024】
中間部150の外径は、これに限られないが、第1連結部110の外径および第2連結部130の外径と同じである。これにより、例えば、ブロー成型のような管の膨張工程を含む製法でシース継手100を形成した場合でも、第1連結部110、第2連結部130および中間部150の各管壁の肉厚を略均一にすることができる。また、内周突起154,164の高さH3,H4は、これに限られないが、第1連結部110の螺旋状突起114の高さH1および第2連結部130の螺旋状突起134の高さH2と同じである。これにより、例えば、ブロー成型のような加熱および冷却工程を含む製法でシース継手100を形成した場合でも、樹脂材料の収縮に起因する螺旋状突起114,134および内周突起154,164の寸法誤差を略均一にすることができる。
【0025】
図4に示すように、中間部150の内周突起154は、中間部150の一周に満たない。図4に示された内周突起154の形状は、内周突起154をシース継手100の軸方向に直交する仮想平面に投影して得られる投影形状に相当する。これによると、内周突起154の投影形状は、略C字状である。内周突起154は、第1端155と第2端156を有する。内周突起154の第1端155と第2端156の間のシース継手100の周方向における距離L5は、シース継手100の半周の長さよりも小さい。また、図2に示すように、内周突起154の第1端155と第2端156との間のシース継手100の軸方向における距離L3は、仮想線158の半ピッチよりも大きく1ピッチよりも小さい。中間部150の内周突起164は、内周突起154と同じ形状を有する。内周突起164の第1端165と第2端166の間のシース継手100の周方向における距離L5は、シース継手100の半周の長さよりも小さい。内周突起164の第1端165と第2端166との間のシース継手100の軸方向における距離L4は、距離L3と同じである。このように、内周突起154,164が中間部150の周方向の大半に存在するため、中間部150の径方向の耐圧力を一層高めることができる。しかも、内周突起154,164が中間部150の一周に満たないので、シース管路1内にグラウト4を注入する際にシース管路1内に残留するエアまたはグラウト4が硬化する際にシース管路1内に生じるブリージング水をシース管路1の長手方向に流動させるための通路を確保することができる。従って、シース管路1内のエアまたはブリージング水をシース管路1内を通過させて外部に排出しやすくできる。
【0026】
図2に示すように、内周突起154は、第1端155と第2端156との間に、シース継手100の軸方向に距離L3を有し、シース継手100の周方向に距離L5を有する第1間隔157を規定している。同様に、内周突起164は、第1端165と第2端166との間に、シース継手100の軸方向に距離L4を有し、シース継手100の周方向に距離L5を有する第2間隔167を規定している。第1間隔157および第2間隔167は、シース継手の周方向において同じ位置にある。シース管路1内のエアまたはブリージング水は、グラウト4よりも比重が軽いので、シース管路1内をその長手方向に流動する際にはシース管路1内の上方を通過する。第1間隔157および第2間隔167がシース継手の周方向において同じ位置にあるので、シース管路1を設置する際に、シース継手100の回転角を調整して第1間隔157および第2間隔167の両方を上方に向けることができる。これにより、シース管路1内のエアまたはブリージング水を外部に排出しやすくできる。
【0027】
次に、シース管の連結作業を説明する。図5(a)に示すように、シース継手100を軸回りに回転させて、シース継手100をシース管20に対して螺進させる。このとき、図5(b)に示すように、シース継手100を多めに螺進させておく。ここでは、シース継手100の全体がシース管20に重なるまでシース継手100が螺進されている。次に、図5(c)に示すように、シース管40をシース管20に突き合わせ、シース継手100を軸回りに逆回転させて、シース継手100をシース管20に対して少し螺退させる。このとき、図5(d)に示すように、シース管40は第2連結部130に螺合する。これにより、シース管20,40をシース継手100で連結することができる。
【0028】
シース継手100の第1連結部110および第2連結部130のシース継手の軸方向の断面形状は、シース管20,40のシース管の軸方向の断面形状と同じでも良いが、異なる方が好ましい。図6に、第2連結部130の断面形状がシース管40の断面形状と異なる場合を例示する。第2連結部130は、平坦な内周面133に螺旋状突起134を有する。螺旋状突起134は、斜面部134a、斜面部134b、および、これらの間の頂部134cを有する。頂部134cは、斜面部134a,134bとの接続領域では僅かに丸みを帯びた曲面であるが、それらの間の中間領域では略平坦面となっている。シース管40は、平坦な外周面41に螺旋状突起42を有する。螺旋状突起42は、斜面部42a、斜面部42b、および、これらの間の頂部42cを有する。頂部42cは、全体的に丸みを帯びた曲面を有する。
【0029】
シース継手100の螺旋状突起134の断面形状がシース管40の螺旋状突起42の断面形状と異なることから、螺旋状突起134と螺旋状突起42が全体的に重なり合うことなく部分的に接触した状態となっている。螺旋状突起134と螺旋状突起42が面接触ではなく線接触しているとも表現できる。このため、シース継手100の螺旋状突起134とシース管40の螺旋状突起42とが接触する面積を低減でき、シース継手100の螺進および螺退の際の摩擦力を低減することができる。さらに、シース継手100の螺旋状突起134の断面形状がシース管40の螺旋状突起42の断面形状と異なることから、シース継手100の内周面133とシース管40の外周面41との間に螺旋状に連続するクリアランスが確保される。この螺旋状に連続するクリアランスが、シース管路1内のブリージング水をシース管路1外へ導くための排出路45,46となる。
【0030】
一般に、シース管路1へのグラウト4の充填に際しては、グラウト4はポンプ等によって加圧された状態でシース管路1内に注入される。グラウト4の注入後は、ポンプ等による加圧が解除されることになるが、シース管路1内は加圧状態のグラウト4に満たされて高圧(1気圧以上)に維持されることになる。グラウト4の硬化に際して、シース管路1内にブリージング水が生じると、このブリージング水は、高圧に維持されたシース管路1内から排水路45,46を通ってシース管路1外へ導かれることになる。これにより、ブリージング水に起因する緊張材3の腐食を抑えることができ、コンクリート構造物2の強度を長期に亘って良好に維持することができる。
【0031】
(第2実施形態)
第1実施形態のシース継手100では、内周突起154により規定される第1間隔157と内周突起164により規定される第2間隔167は、シース継手の周方向において同じ位置にある。一方、第2実施形態のシース継手200では、図7に示されるように、内周突起254により規定される第1間隔257と内周突起264により規定される第2間隔267は、シース継手の周方向において異なる位置にある。第1間隔257は、内周突起254の第1端255と第2端256との間の間隔である。第2間隔267は、内周突起264の第1端265と第2端266との間の間隔である。第1間隔257および第2間隔267は、シース管路1内のエアまたはブリージング水をシース管路1の長手方向に通過させることができる。一方で、第1間隔257および第2間隔267は、内周突起254,264が存在しない空間なので中間部150の径方向の耐圧に関しては弱点となる。しかしながら、第1間隔257と第2間隔267がシース継手の周方向において異なる位置にあるので、径方向の耐圧の弱点を周方向に分散させることができ、中間部150の耐圧力を周方向に平均化できる。
【0032】
また、図8に示されるように、中間部150は、2つの半周領域270,271を有する。第1間隔257および第2間隔267は、これに限られないが、同じ半周領域270内に位置する。上述の通り、シース管路1内のエアまたはブリージング水は、グラウト4よりも比重が軽いので、シース管路1内をシース管路1の長手方向に流動する際に、シース管路1内の上方を通過する。第1間隔257および第2間隔267が同じ半周領域にあるので、シース管路1を設置する際に、シース継手200の回転角を調整して第1間隔257および第2間隔267の両方を上方に向けやすくできる。これにより、シース管路1内のエアまたはブリージング水を外部に排出しやすくできる。
【0033】
(第3実施形態)
第1実施形態のシース継手100では、内周突起154と内周突起164との間のシース継手の軸方向における距離は、螺旋状の仮想線158の1ピッチよりも大きく、より詳細には約2ピッチ程度である。一方、第3実施形態のシース継手300では、図9に示されるように、内周突起354と内周突起364との間のシース継手の軸方向における距離L6は、螺旋状の仮想線の半ピッチよりも小さい。内周突起354は、第1端355と第2端356を有する。内周突起364は、第1端365と第2端366を有する。内周突起354と内周突起364との間の距離は、内周突起354の内周突起364寄りの端に該当する第2端356と、内周突起364の内周突起354寄りの端に該当する第1端365との間の距離をいう。なお、内周突起354,364は、別の表現では、1ピッチ以上の長さの1本の内周突起であって、途中に間歇部377を有する内周突起とも表現できる。
【0034】
内周突起354と内周突起364の間の距離L6を螺旋状の仮想線の半ピッチよりも小さくすることで、内周突起354と内周突起364がシース継手の軸方向において近くに位置することとなり、中間部150の径方向の耐圧力を高めることができる。特に、距離L6を螺旋状の仮想線の4分の1ピッチよりも小さくすると、中間部150の耐圧力の向上効果をより高めることができる。
【0035】
また、本実施形態では、内周突起に一つの間歇部377を設けているが、これに限らず、複数の間歇部を設け、各間歇部の位置をシース継手の周方向において異なる位置に配することとしてもよい。このように間歇部をシース継手の周方向に分散することで、シース管路1を設置する際に、シース継手300の回転角の僅かな調整により間歇部の何れかを上方に向けることができる。従って、僅かな調整によりシース管路1内のエアまたはブリージング水を外部に排出しやすくできる。
【0036】
(第4実施形態)
第1実施形態のシース継手100では、内周突起154は、中間部150の一周に満たない。一方、第4実施形態のシース継手400では、図10に示されるように、内周突起454は、中間部150の一周を超える。すなわち、内周突起454の第1端455と第2端456との間のシース継手の軸方向における距離L7が螺旋状の仮想線の1ピッチよりも大きい。このように、内周突起454が中間部150の一周を超えているので、中間部150の径方向の耐圧力を一層高めることができる。さらに、図10に示されるように、内周突起454が中間部150の1周半に満たないこととしてもよい。すなわち距離L7が螺旋状の仮想線の1ピッチ半よりも小さい。このように、内周突起454が中間部150の一周半に満たないので、シース管路1内のエアまたはブリージング水をシース管路1の長手方向に流動させるための通路を確保しやすくできる。
【0037】
(第5実施形態)
第4実施形態のシース継手400では、中間部150は、一つの内周突起454を有する。一方、第5実施形態のシース継手500では、図11に示されるように、中間部150は、二つの内周突起554,564を有する。内周突起554,564は、中間部150の一周を超え、一周半に満たない。すなわち、内周突起554の第1端555と第2端556との間のシース継手の軸方向における距離L7が螺旋状の仮想線の1ピッチよりも大きく、1ピッチ半よりも小さい。内周突起564の第1端565と第2端566との間のシース継手の軸方向における距離L7が螺旋状の仮想線の1ピッチよりも大きく、1ピッチ半よりも小さい。このように、互いに離間した内周突起を複数設けることで、中間部150の径方向の耐圧力を高めることができる。
【0038】
内周突起554は、第1間隔557を規定し、内周突起564は、第2間隔567を規定する。第1間隔557と第2間隔567は、第1実施形態と同様、シース継手の周方向において同じ位置にある。これにより、シース管路1を設置する際に、シース継手500の回転角を調整して第1間隔557および第2間隔567の両方を上方に向けることができ、シース管路1内のエアまたはブリージング水を外部に排出しやすくできる。
【0039】
なお、これに限らず、第1間隔557と第2間隔567が、第2実施形態と同様、シース継手の周方向における異なる位置に配され、同じ半周領域にあることとしてもよい。
【0040】
(第6実施形態)
第1〜5実施形態のシース継手では、第1および第2連結部はどちらもシース管を連結するが、これに限らず、第1および第2連結部の少なくとも一方がシース管を連結するものでもよい。第6実施形態のシース継手600では、図12に示されるように、第1連結部110は、シース管を連結するために螺旋波形状を有し、第2連結部130は、シース管路1をコンクリート構造物2に固定する定着具を連結するために円筒状の形状を有する。このようなシース継手600は、シース管路1の中間点ではなく両端に配される。第2連結部130は、平坦な外周面631および平坦な内周面633を有する。なお、第2連結部130は、定着具を連結できればよく、必ずしも円筒状であることを要しない。
【0041】
第6実施形態の中間部150は、第3実施形態の中間部150と同じであるが、これに限らず、第1、第2、第4または第5実施形態の中間部150と同じでもよい。
【0042】
(第7実施形態)
第1〜5実施形態のシース継手では、同サイズのシース管同士を連結するが、これに限らず異なるサイズのシース管同士を連結してもよい。第7実施形態のシース継手700では、図13に示されるように、第2連結部130の内径D21は、第1連結部110の内径D11および中間部150の内径D31よりも小さい。第2連結部130は、内周面733に径内方向に螺旋状に突出した螺旋状突起734を有し、外周面731に内周面733の螺旋状突起734に対応する螺旋状溝732を有する。第2連結部130の内周面733の螺旋状突起734は、シース管の外周面の螺旋状突起に係合する。これにより、シース継手700は、異なるサイズのシース管同士を連結することができる。
【0043】
第7実施形態の中間部150は、第3実施形態の中間部150と同じであるが、これに限らず、第1、第2、第4または第5実施形態の中間部150と同じでもよい。
【0044】
(第8実施形態)
第8実施形態のシース継手800では、図14(a),(b)に示されるように、中間部150は内周面から外周面に貫通する排出口175を有する。シース継手800は、排出口175を除き、第1実施形態のシース継手100と同じである。シース管路1内のエアまたはブリージング水は、排出口175を通じて外部に排出される。
【0045】
中間部150は、外周面に排出口175を囲む筒部176を有することとしてもよい。筒部176は、エアまたはブリージング水をコンクリート構造物2の外部に導くホースを連結可能とする。筒部176は、図14(b)に示されるように、その外周面にホースの抜け止めのための断面くさび状の段付きリング構造を有していてもよい。
【0046】
排出口175は、これに限られないが、第1間隔157と第2間隔167とを結ぶ領域177に位置する。第1間隔157、第2間隔167および領域177は、シース管路1内のエアまたはブリージング水の通路となる。排出口175が領域177に位置するので、シース管路1内のエアまたはブリージング水を効率よく外部に排出することができる。
【0047】
第8実施形態の中間部150では、第1間隔157と第2間隔167のシース継手の周方向における位置が同じであるが、これに限らず、異なることとしてもよい。この場合でも、排出口175は、第1間隔と第2間隔とを結ぶ領域内に位置することとしてもよい。
【0048】
また、排出口175に透明なキャップ部材を取り付けて、このキャップ越しにグラウト4の充填をカメラで確認するようにしてもよい。
【0049】
(第9実施形態)
第9実施形態のシース継手900では、図15に示されるように、中間部150は内周面から外周面に貫通する排出口175を有する。シース継手900は、排出口175を除き、第3実施形態のシース継手300と同じである。シース管路1内のエアまたはブリージング水は、排出口175を通じて外部に排出される。
【0050】
排出口175は、これに限られないが、内周突起354により規定される第1間隔と内周突起364により規定される第2間隔とを結ぶ領域に位置する。別の表現をすると、排出口175は、内周突起の間歇部377に位置する。間歇部377は、シース管路1内のエアまたはブリージング水の通路となる。排出口175が間歇部377に位置するので、シース管路1内のエアまたはブリージング水を効率よく外部に排出することができる。
【0051】
また、図15の例では、排出口175は、内周突起354の第1端355付近の部分と内周突起364の第2端366付近の部分とに挟まれる。これにより、排出口175が緊張材3により封鎖されることなく、シース管路1内のエアまたはブリージング水を速やかに排出することができる。
【0052】
(第10実施形態)
第10実施形態のシース継手1000では、図16(a),(b)に示されるように、中間部150は、グラウトの充填を検知するセンサ75を備える。これにより、シース管路1内へのグラウト4の充填を検知することができる。
【0053】
センサ75は、図16(b)に示されるように、基板76と、基板76に実装されたセンサ素子77と、センサ素子77から引き出された配線78を備えることとしてもよい。中間部150は、内周面から外周面に貫通し、センサ素子77を内部に位置させる開口を有する。センサ素子77は、光、熱、電気などの物理量を検知することにより、グラウトを検知する。センサ素子77は、例えば、発熱体とその発熱体から離れて位置する温度センサとを含む。発熱体と温度センサとの間の熱抵抗は、その間にグラウト4が存在する場合と存在しな場合とで異なる。温度センサを利用して熱抵抗の変化を検知することで、グラウト4の充填を検知することができる。
【0054】
センサ75は、シース継手の軸方向において内周突起354と内周突起365の間に位置することとしてもよい。これにより、センサ75は、シース継手の軸方向に内周突起354と内周突起365に挟まれる。図16(a)の例では、センサ75は、内周突起354の第1端355付近の部分と内周突起364の第2端366付近の部分とに挟まれる。これにより、緊張材3がシース管路1に挿入される際に、緊張材3がセンサ75に接触することを防止することができる。
【0055】
センサ75は、さらに、内周突起354により規定される第1間隔と内周突起364により規定される第2間隔とを結ぶ領域に位置することとしてもよい。別の表現をすると、センサ75は、内周突起の間歇部377に位置することとしてもよい。シース管路1を設置する際に、シース管路1内のエアまたはブリージング水の排出を良好にするため、間歇部377が上方に向くようにシース継手1000の回転角が調整される。その後、グラウト4がシース管路1内に注入される際に、グラウト4はシース継手1000内の下方から上方に向けて充填される。つまり、シース継手1000内で最後にグラウト4が充填されるのは、間歇部377の付近である。センサ75は、間歇部377に位置するので、グラウト4の充填の完了を正確に検知することができる。
【0056】
(第11実施形態)
第11実施形態のシース継手1100では、図17に示されるように、中間部150は、グラウトの充填を検知するセンサ75を備える。これにより、シース管路1内へのグラウト4の充填を検知することができる。
【0057】
センサ75は、これに限られないが、内周突起154により規定される第1間隔157と内周突起164により規定される第2間隔167とを結ぶ領域177に位置する。シース管路1を設置する際に、シース管路1内のエアまたはブリージング水の排出を良好にするため、第1間隔157、第2間隔167およびこれらを結ぶ領域177が上方に向くようにシース継手1100の回転角が調整される。その後、グラウト4がシース管路1内に注入される際に、グラウト4はシース継手1100内の下方から上方に向けて充填される。つまり、シース継手1100内で最後にグラウト4が充填されるのは、第1間隔157、第2間隔167およびこれらを結ぶ領域177の付近である。センサ75は、領域177に位置するので、グラウト4の充填の完了を正確に検知することができる。
【0058】
第11実施形態の中間部150では、第1間隔157と第2間隔167のシース継手の周方向における位置が同じであるが、これに限らず、異なることとしてもよい。この場合に、センサ75は、シース継手の軸方向において内周突起154と内周突起164の間に位置することとしてもよい。これにより、緊張材3がシース管路1に挿入される際に、緊張材3がセンサ75に接触することを防止することができる。さらに、センサ75は、第1間隔と第2間隔とを結ぶ領域内に位置することとしてもよい。これにより、センサ75は、グラウト4の充填の完了を正確に検知することができる。
【0059】
(第12実施形態)
第12実施形態のシース継手1200は、図18に示されるように、第1連結部110の内周面113および第2連結部130の内周面133に取り付けられたシール材80を備える。シール材80は、第1連結部110にシース管20が連結された際に、第1連結部110の内周面113とシース管20の外周面21との隙間に位置する。また、シール材80は、第2連結部130にシース管40が連結された際に、第2連結部130の内周面133とシース管40の外周面41との間に位置する。
【0060】
シール材80は、例えば、不織布、ゴムおよびスポンジの一つまたはこれらの組み合わせを含む。不織布は、繊維マトリックスを有し、シース管路1内からのエアおよびブリージング水がその繊維マトリックス内を通過することを許容する。また、コンクリートおよびグラウト4のセメント成分がそのマトリックス内に含浸することも許容されるが、コンクリートおよびグラウト4の砂利がマトリックス内に入ることは抑制される。これにより、コンクリート打設時にシース継手の内周面とシース管の外周面との間の隙間を通じてコンクリートがシース管路1内に流入したり、グラウト4注入時にその隙間を通じてグラウト4がシース管路1外に流出したりすることを防止または抑制できる。なお、不織布は、シース管20,40の外表面を滑りやすく、シース管の連結作業時の作業者への負担を軽減できる。
【0061】
不織布は、膨潤により繊維マトリックスを充填する成分を担持することとしてもよい。このような成分は、ブリージング水により膨張する樹脂成分であってもよい。これにより、コンクリート打設時またはグラウト4の注入時に生じたブリージング水により樹脂成分が膨張して、シール材80の封止性を高めることができる。しかも、シース管の連結作業時には樹脂成分は膨張していないので、シース継手1200の螺進または螺退の際の摩擦力を低減することができる。ブリージング水により膨張する樹脂成分としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどの吸水性樹脂を利用できる。
【0062】
また、不織布が、ブリージング水とのアルカリシリカ反応によりゲル状物質を生成する成分を担持することとしてもよい。アルカリシリカ反応は、アルカリ金属とシリカとの化学反応である。この反応により生成されたアルカリシリカゲルは、水の吸収により膨張する。これにより、コンクリート打設時またはグラウト4の注入時に生じたブリージング水により成分が膨張して、シール材80の封止性を高めることができる。しかも、シース管の連結作業時には成分は膨張していないので、シース継手1200の螺進または螺退の際の摩擦力を低減することができる。さらに、通常の吸水性樹脂は、ブリージング水のような強アルカリ性溶液では十分に膨張できないことがあるが、アルカリシリカ反応によりゲル状物質を生成する成分は、ブリージング水のような強アルカリ性溶液でも十分に膨張できる。このような成分として、シリカを含有する材料、例えば、シリカゲルまたはケイ酸化合物などを利用することができる。
【0063】
ゴム製のシール材は、エアまたはブリージング水の通過を抑制するものでもよいが、これらの通過を許容するものでもよい。エアまたはブリージング水の通過を許容するゴムとしては、例えば、繊維マトリックスを有するゴム、または、オープンセル構造を有する多孔質のゴムを利用することができる。これらは、不織布製のシール材と同様に、膨潤により繊維マトリックスまたは孔を充填する成分、または、ブリージング水とのアルカリシリカ反応によりゲル状物質を生成する成分を担持してもよい。スポンジ製のシール材も、同様に、膨潤により孔を充填する成分、または、ブリージング水とのアルカリシリカ反応によりゲル状物質を生成する成分を担持してもよい。
【0064】
第12実施形態のシース継手1200は、第3実施形態のシース継手300にシール材80を追加したものであるが、これに限らず、第1、第2、第4〜第11のシース継手にシール材80を追加してもよい。なお、第6実施形態のシース継手600にシール材80を追加する場合は、第1連結部110の内周面のみにシール材80を追加することとしてもよい。
【0065】
(第13実施形態)
第13実施形態のシース継手1300は、図19に示されるように、第1連結部110から延出された延出部180および第2連結部130から延出された延出部190を備える。延出部180は、円筒状であり、内周面183に取り付けられたシール材80を備える。延出部190は、円筒状であり、内周面193に取り付けられたシール材80を備える。延出部180の内径D7は、第1連結部110の内径D11と同じである。延出部190の内径D7は、第2連結部130の内径D21と同じである。延出部180,190の内周面183,193は、平坦であり、そのため、シール材80の内周面も平坦となる。これにより、シース継手1300の螺進または螺退の際の摩擦力を低減することができる。
【0066】
シール材80は、例えば、不織布、ゴムおよびスポンジの一つまたはこれらの組み合わせを含む。不織布は、繊維マトリックスを有し、膨潤により繊維マトリックスを充填する成分を担持することとしてもよく、ブリージング水とのアルカリシリカ反応によりゲル状物質を生成する成分を担持することとしてもよい。ゴムまたはスポンジについても、上記成分を担持することとしてもよい。
【0067】
第13実施形態のシース継手1300は、第3実施形態のシース継手300に延出部180,190を追加したものであるが、これに限らず、第1、第2、第4〜第11のシース継手に延出部180,190を追加してもよい。なお、第6実施形態のシース継手600では、第1連結部110から延出する延出部180のみを追加することとしてもよい。
【0068】
(第14実施形態)
第13実施形態のシース継手1300では、延出部180の内径D7が第1連結部110の内径と同じであり、延出部190の内径D7が第2連結部130の内径と同じである。一方、第14実施形態のシース継手1400では、図20に示されるように、延出部180の内径D8が第1連結部110の内径よりも大きく、延出部190の内径D8が第2連結部130の内径よりも大きい。これにより、シース継手1300の螺進または螺退の際の摩擦力を一層低減することができる。延出部180の内径D8と第1連結部110の内径との差は、シール材80の厚みと同じとしてもよい。同様に、延出部190の内径D9と第2連結部130の内径との差は、シール材80の厚みと同じとしてもよい。
【0069】
シール材80は、例えば、不織布、ゴムおよびスポンジの一つまたはこれらの組み合わせを含む。不織布は、繊維マトリックスを有し、膨潤により繊維マトリックスを充填する成分を担持することとしてもよく、ブリージング水とのアルカリシリカ反応によりゲル状物質を生成する成分を担持することとしてもよい。ゴムまたはスポンジについても、上記成分を担持することとしてもよい。
【0070】
第14実施形態のシース継手1400は、第3実施形態のシース継手300に延出部180,190を追加したものであるが、これに限らず、第1、第2、第4〜第11のシース継手に延出部180,190を追加してもよい。なお、第6実施形態のシース継手600では、第1連結部110から延出する延出部180のみを追加することとしてもよい。
【0071】
(第15実施形態)
第14実施形態のシース継手1400では、延出部180の内周面183および延出部190の内周面193が平坦である。一方、第15実施形態のシース継手1500では、延出部180は、内周面183に螺旋状突起184を有する。螺旋状突起184は、第1連結部110の内周面113の螺旋状突起114に沿う螺旋状の仮想線に沿い、この螺旋状の仮想線上に形成されている。これにより、延出部180の内周面183に取り付けられたシール材80の内周面に螺旋状突起184に対応する螺旋状突起が出現する。この螺旋状突起は、シース管20の外周面の螺旋状突起22に係合する。同様に、延出部190は、内周面193に螺旋状突起194を有する。螺旋状突起194は、第2連結部130の内周面133の螺旋状突起134に沿う螺旋状の仮想線に沿い、この螺旋状の仮想線上に形成されている。これにより、延出部190の内周面193に取り付けられたシール材80の内周面に螺旋状突起194に対応する螺旋状突起が出現する。この螺旋状突起は、シース管40の外周面の螺旋状突起42に係合する。従って、シース管の連結作業時のシース継手の螺進または螺退による摩擦力を低減しながら、シース継手の内周面とシース管の外周面との間の隙間の封止性を高めることができる。
【0072】
シール材80は、例えば、不織布、ゴムおよびスポンジの一つまたはこれらの組み合わせを含む。不織布は、繊維マトリックスを有し、膨潤により繊維マトリックスを充填する成分を担持することとしてもよく、ブリージング水とのアルカリシリカ反応によりゲル状物質を生成する成分を担持することとしてもよい。ゴムまたはスポンジについても、上記成分を担持することとしてもよい。
【0073】
第15実施形態のシース継手1500は、第3実施形態のシース継手300に延出部180,190を追加したものであるが、これに限らず、第1、第2、第4〜第11のシース継手に延出部180,190を追加してもよい。なお、第6実施形態のシース継手600では、第1連結部110から延出する延出部180のみを追加することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、コンクリート構造物に埋設され、コンクリート構造物にプレストレスを導入するための緊張材を受け入れるシース管路に利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 シース管路
2 コンクリート構造物
3 緊張材
4 グラウト
20,40 シース管
21,41 シース管の外周面
22,42 シース管の外周面の螺旋状突起
75 センサ
80 シール材
100 シース継手
110 第1連結部
113 第1連結部の内周面
114 第1連結部の内周面の螺旋状突起
130 第2連結部
133 第2連結部の内周面
134 第2連結部の内周面の螺旋状突起
150 中間部
153 中間部の内周面
154,164 中間部の内周面の内周突起
155,165 第1端
156,166 第2端
157 第1間隔
158 螺旋状の仮想線
167 第2間隔
175 排出口
177 第1間隔と第2間隔とを結ぶ領域
180,190 延出部
200 シース継手
254 中間部の内周面の内周突起
257 第1間隔
264 中間部の内周面の内周突起
267 第2間隔
270,271 半周領域
300,400,500,600,700,800,900,1000 シース継手
1100,1200,1300,1400,1500 シース継手
【要約】
シース継手は、コンクリート構造物に埋設され、前記コンクリート構造物にプレストレスを導入するための緊張材を受け入れるシース管路を、外周面に螺旋状突起を有するシース管と共に形成するシース継手である。シース継手は、少なくとも一方が内周面に前記シース管の螺旋状突起に係合する螺旋状突起を有する第1および第2連結部と、前記第1および第2連結部との間にあり、前記シース管の挿入を許容する内径を有し、内周面に前記第1および第2連結部の前記少なくとも一方の前記螺旋状突起に沿う螺旋状の仮想線に沿った少なくとも一つの内周突起を有する中間部と、を備える。前記少なくとも一つの内周突起が、前記第1および第2連結部の前記少なくとも一方の前記螺旋状突起から離間している。
図1
図2
図3
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図5
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図8
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図10
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