【文献】
BUZDAR A U,BREAST CANCER RESEARCH AND TREATMENT,2003年,V82 N.SUPPLEMENT 1,P.S69
【文献】
Gottfried Konecny et al,Quantitative Association Between HER−2/neu and Steroid Hormone Receptors in Hormone Receptor−Positive Primary Breast Cancer,Journal of the National Cancer Institute,2003年,Vol.95 No.2,p142−153
【文献】
TETSURO KUBOTA et al ,Growth Regulation by Estradiol, Progesteron and Recombinant Human Epidermal Growth Factor of Human Breast Carcinoma Xenografts Grown Serially in Nude Mice,ANTICANCER RESEARCH,1995年,Vol.15 No.4、p1275−1278
【文献】
P.Kauraniemi et al,New Amplified Highly Expressed Genes Discovered in the ERBB2 Amplicon in Breast Cancer by cDNA Microarrays,CANCER RESEARCH,2001年,Va.61,p8235−8240
【文献】
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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、ホルモン受容体状態(例えば、個別の細胞(例えば、乳癌細胞)が、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現するか否か)に基づいて、乳癌を、タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子によって治療する方法を提供する。治療はさらに、タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子の投与を含む第1治療を、放射線照射、手術、少なくとも一つの他の化学療法剤などの第2治療と組み合わせて含む併用治療、または、ホルモン状態に基づく乳癌治療のための、それらの組み合わせを含んでもよい。治療はさらに、ホルモン受容体状態に基づく乳癌治療のためのメトロノーム治療を含んでもよい。
【0045】
本発明は、Abraxane(登録商標)は、その優れた抗腫瘍活性、および低度の毒性および副作用によって、単独で、または、他の治療剤および/または治療方式と組み合わせて投与することが可能であり、さらに、ホルモン受容体状態に基づく乳癌治療のためのメトロノーム化学療法にも使用が可能であるという発見を含む。薬剤/キャリヤータンパクを含む組成物(例えば、Abraxane(登録商標))における著明に改善された安全プロフィールのために、我々は、このナノ粒子組成物(例えば、Abraxane(登録商標))による単独治療および併用治療は、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づく乳癌治療において、非ナノ粒子処方による単独治療、または他の薬剤との併用化学療法よりも有効であると信ずる。さらに、放射線照射と組み合わせたナノ粒子組成物(例えば、Abraxane(登録商標))の使用は、ホルモン受容体状態に基づく乳癌治療において、他の薬剤同士の組み合わせよりも有効であると考えられる。したがって、このナノ粒子組成物(特に、パクリタキセル/アルブミン・ナノ粒子組成物、例えば、Abraxane(登録商標))は、単独で用いても、他の化学療法剤と組み合わせても、または、他の治療方式と組み合わせても、きわめて効果的で、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づく乳癌治療において、手術、放射線治療、および化学療法の欠点を克服する。
【0046】
その実施態様の一つにおける本発明は、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づく乳癌治療のための、タキサン、例えば、Abraxane(登録商標)を含む組成物の使用である。ある実施態様では、本発明は、ホルモン受容体状態に基づく乳癌治療のために、タキサン、例えば、Abraxane(登録商標)を含む第1治療法を、第2治療法、例えば、別の化学療法剤(単数または複数)、放射線照射などと組み合わせて使用することである。タキサンを含む第1治療法、および第2治療法は、増殖性異常を抱える哺乳動物に対し逐次的に投与することが可能であるし、または並行して投与することも可能であるし、場合によっては、同じ製薬組成物において同時に投与することも可能である。
【0047】
さらに、Abraxane(登録商標)を用いるメトロノーム投与処方は、同じ薬剤組成物の、従来型のMTD投与スケジュールよりも有効であることが見出されている。さらに、Abraxane(登録商標)の、このメトロノーム投与処方は、Taxol(登録商標)のメトロノーム投与法よりも有効であることが見出されている。
【0048】
本明細書に記載される方法は、一般に、病気の治療において、特に、増殖性疾患の治療において有用である。本明細書で用いる「治療」とは、有益であるか、または所望の臨床結果を獲得するための対処法である。本発明の目的のためには、有益または所望の臨床結果は、例えば、ただしこれらに限定されないが、下記:一つ以上の症状の緩和、病気の程度の軽減、病気の安定(すなわち、悪化しないこと)状態、病気の拡散(例えば、転移)の阻止または遅延、病気の発生または再発の阻止または遅延、病気の進行の遅延または緩徐化、病状の軽快、および(部分的であれ、全体的であれ)寛解、の内のいずれか一つ以上を含む。さらに、「治療」に包含されるものとして、増殖性疾患の病理的結果の緩和がある。本発明の方法は、これらの治療局面のいずれか一つ以上を考慮の対象とする。
【0049】
本明細書で用いる「増殖性疾患」は、腫瘍疾患(良性、または癌性を含む)および/または転移、該腫瘍または転移の局在する場所がどこであるかによらない、と定義され、さらに特異的には乳癌腫瘍と定義される。ある実施態様では、増殖性疾患は癌である。ある実施態様では、増殖性疾患は、良性または悪性腫瘍である。上記においても下記においても、腫瘍、腫瘍病、上皮癌、または癌について言及した場合、腫瘍および/または転移の場所がどこであれ、元の器官または組織における転移、および/または、任意の他の場所における転移も、それとは別に、またはそれに加えて含まれる。
【0050】
本明細書で用いる「有効量」という用語は、ある指定の障害、病態、または疾患を治療する、例えば、その一つ以上の症状を寛解、緩和、軽減、および/または遅延させるのに十分な、化合物または組成物の量を指す。癌、または、他の、望まれない細胞増殖に関して言うと、有効量は、腫瘍を縮小させる、および/または、腫瘍の成長速度を下げる(例えば、腫瘍の増殖を抑える)、または、他の、望まれない細胞増殖を阻止、または遅延させるのに十分な量を含む。ある実施態様では、有効量は、発達を遅らせるのに十分な量である。ある実施態様では、有効量は、発生および/または再発を阻止または遅らせるのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与において投与できる。癌の場合、薬剤または組成物の有効量は:(i)癌細胞の数を下げる;(ii)腫瘍サイズを縮小する;(iii)抹消器官に対する癌細胞の浸潤を、ある程度抑制、遅延、緩徐化するか、好ましくは阻止する;(iv)腫瘍転移を抑制する(すなわち、ある程度緩徐化する、好ましくは阻止する);(v)腫瘍増殖を抑制する;(vi)腫瘍の発生および/または再発を阻止または遅延する;および/または(vii)癌に関連する症状の一つ以上をある程度解除する、可能性がある。
【0051】
ある実施態様では、一次腫瘍の治療法が提供される。ある実施態様では、転移癌(すなわち、一次腫瘍から転移した癌)の治療法が提供される。ある実施態様では、進行ステージ(単数または複数)の癌の治療法が提供される。ある実施態様では、乳癌(HER2陽性、またはHER2陰性であってもよい)であって、例えば、進行性乳癌、ステージIV乳癌、局所的進行癌、および転移乳癌などの治療法が提供される。ある実施態様では、固体腫瘍(例えば、進行固体腫瘍)の治療法が提供される。ある実施態様では、細胞増殖および/または細胞移動を抑える方法が提供される。本発明はさらに、本明細書に記載される増殖性疾患のいずれかについて、その発達を遅らせる方法を提供する。
【0052】
「個体」という用語は、ヒトを含む哺乳動物である。個体は、例えば、ただしこれらに限定されないが、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類、または霊長類を含む。ある実施態様では、個体はヒトである。個体(例えば、ヒト)は、進行疾患、または低度の疾患、例えば、低い腫瘍負荷を有していてもよい。ある実施態様では、個体は、増殖性疾患(例えば、癌)の初期ステージにある。ある実施態様では、個体は、増殖性疾患の進行ステージ(例えば、進行癌)にある。ある実施態様では、個体は、HER2陽性である。ある実施態様では、個体は、HER2陰性である。
【0053】
本方法は、アジュバント療法において実行してもよい。「アジュバント療法」とは、増殖性疾患、特に癌の既往歴を持ち、全般的に(しかし、必ずしもそうでなくともよい)、治療、例えば、ただしこれらに限定されないが、手術(例えば、外科切除)、放射線治療、および化学療法などに反応的である、ある個体が置かれる臨床背景である。しかしながら、その増殖性疾患の既往歴のため、このような個体は、該疾患を発症するリスクを持つと考えられる。「アジュバント療法」における治療または投与とは、事後の治療方式を指す。リスクの程度(すなわち、アジュバント療法にある個体が、「高リスク」または「低リスク」と考えられる時点)は、いくつかの要因に依存するが、もっとも多くの場合、最初に治療されたときの病気の程度に依存する。本明細書において提供される方法はさらに、新しいアジュバント療法において実行してもよい、すなわち、本方法は、一次的/決定的治療の前に実行してもよい。ある実施態様では、個体は以前に一度も治療されたことがない。ある実施態様では、治療は第1次治療である。
【0054】
本明細書に記載される、本発明の局面および実施態様は、複数の局面および複数の実施態様「から成る」および/または「から事実上成る」ことを含むことを理解しなければならない。
【0055】
当業者であれば理解されるように、本明細書において「約」ある値またはパラメータに対する言及は、その値またはパラメータ自体を指向する実施態様を含む(および記載する)。例えば、「約X」と述べる記述は、“X”に関する記述を含む。
【0056】
ホルモン受容体状態が、本明細書に記載される治療法の適用のため、または、本明細書に記載される治療法選択のための「基礎として使用される」場合、ホルモン受容体状態は、治療の前および/または最中に測定され、得られた値は、臨床家によって、下記:(a)初回治療(単数または複数)受容における、個体の、十分な、または予想される適性;(b)初回治療(単数または複数)受容における、個体の、十分な、または予想される不適性;(c)治療に対する反応性;(d)継続治療(単数または複数)受容における、個体の、十分な、または予想される適性;(e)継続治療(単数または複数)受容における、個体の、十分な、または予想される不適性;(f)用量の調整;または(g)得られると思われる臨床利益の予想、のいずれかを評価する際に使用される。
治療法
本発明は、乳癌を、乳癌組織のホルモン受容体状態に基づいて、タキサンおよびキャリヤータンパクを含むナノ粒子によって治療する方法を提供する。ある実施態様では、ホルモン受容体状態は、ホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体(ER)、またはプロゲステロン受容体(PgR)の発現に基づいて決められる。ある実施態様では、ホルモン受容体状態は、乳癌組織および/または細胞のホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体、およびプロゲステロン受容体の発現に基づいて決められる。
【0057】
ある実施態様では、ホルモン受容体状態は、一つ以上のホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体については低い。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の両方について低い場合、治療法に対してより反応的である可能性が高い。ある実施態様では、ホルモン受容体状態は、一つ以上のホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体(ER)、またはプロゲステロン受容体(PgR)を発現しない(すなわち、陰性である)。ある実施態様では、乳癌組織のホルモン受容体状態は、エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PgR)の両方を発現しない(すなわち、陰性である)。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の両方について陰性である場合、治療法に対してより反応的である可能性が高い。ある実施態様では、個体は、エストロゲン受容体か、またはプロゲステロン受容体のいずれかを発現する(すなわち、陽性である)。ある実施態様では、個体は、エストロゲン受容体と、プロゲステロン受容体の両方を発現する(すなわち、陽性である)。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体について陽性である場合、治療法に対してより反応性が低い可能性が高い。
【0058】
ある実施態様では、乳癌はさらに、HER2を発現する(HER2+)。ある実施態様では、乳癌は、HER2を発現しない(HER2−)。
【0059】
ある実施態様では、このナノ粒子組成物は、約200nm以下の平均直径を有する。ある実施態様では、このナノ粒子組成物は、界面活性剤(例えば、Cremophor)を事実上含まない(例えば、非含有)。ある実施態様では、タキサンはパクリタキセルである。ある実施態様では、キャリヤータンパクはアルブミンである。ある実施態様では、アルブミンはヒト血清アルブミンである。ある実施態様では、組成物におけるアルブミンのパクリタキセルに対する重量比は、約18:1以下、例えば、約9:1以下である。ある実施態様では、パクリタキセルは、アルブミンによってコートされる。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、このパクリタキセル/アルブミン組成物は、界面活性剤(例えば、Cremophor)を事実上含まない(例えば、非含有)。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、パクリタキセルは、アルブミンによってコートされる。ある実施態様では、ナノ粒子組成物はAbraxane(登録商標)である。
【0060】
エストロゲンは、エストロゲン受容体(ER)の仲介の下に、正常な乳房上皮の成長および分化の調節に大きな役割を果たす(Pike MC et al.,Epidemiologic Reviews(1993)15(1):17−53;Henderson BE et al.Cancer Res.(1988)48:246−253)。エストロゲンは、細胞増殖を刺激し、かつ、プロゲステロン受容体(PgR)を含む、他の遺伝子の発現を調節する。次に、PgRは、プロゲステロンの分裂促進作用を仲介し、さらに増殖を刺激する(Pike et al.,1993;Henderson et al.,1988)。エストロゲン受容体(“ER”)陰性腫瘍と、ER陽性腫瘍の間の分子的違いは、ER陽性腫瘍とER陰性腫瘍の性質および生物学的行動は、ホルモン治療を行わない場合でもはっきり異なることを示す臨床観察に照らして重要である。例えば、ER陰性癌は、ER陽性腫瘍に比べて、より速やかに再発する傾向があり、遠隔器官部位において異なる再発率を示す。臨床的観察および分子プロフィールデータから、ERおよびPgRを両方とも発現しない腫瘍は、化学療法反応性の観点から見ると異なる臨床実体を代表することが示唆される(Colleoni et al.,Annals of Oncology 11(8):1057(2000))。したがって、ER陰性乳癌およびER陽性乳癌は、同じ病気の表現型変動ではなく、二つの、異なる、病気実体である。
【0061】
ある実施態様では、本方法は、ERとPgRの両方を発現しない腫瘍組織を有する患者のホルモン受容体状態に基づいて乳癌患者を特定することを含む。適切な患者には、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、またはオルタタキセル)、およびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量が投与される。ある実施態様では、方法はさらに、該患者に対し、少なくとももう一つの、他の化学療法剤の有効量を投与することを含む。この少なくとももう一つの、他の化学療法剤は、該タキサンナノ粒子と並行して、または逐次的に投与されてもよい。ある実施態様では、この少なくとももう一つの、他の化学療法剤は、並行して、または逐次的に投与される、5−フルオロウラシル、エピルブシン、およびシクロフォスファミド(FEC)を含む。これらの方法は、HER−2陽性であれ、HER−2陰性であれ、全患者集団の内の、ER(−)/PgR(−)集団においてより高い効力を発揮する。
【0062】
サンプル(例えば、乳癌組織)中のホルモン受容体状態を定量し、ホルモン受容体レベル(例えば、エストロゲン受容体レベルおよび/またはプロゲステロン受容体レベル)を測定するには、種々の方法を使用することが可能である。RNAレベルを測定する方法としては、例えば、ただし限定されないが、ハイブリダイゼーション(例えば、分離RNAのノーザンブロッティング、マイクロアレイ、および、ドットまたはスロットブロットまたは全体RNA)、およびPCR利用法(例えば、RT−PCR、および定量的リアルタイムPCR)などが挙げられる。例えば、ハイブリダイゼーションは、プローブにハイブリダイズするRNA配列を特定するノーザン分析によって実行することが可能である。このプローブは、
32Pなどの放射性同位元素、酵素、ジゴキシゲニンによって、またはビオチニル化によって標識化することが可能である。分析されるRNAは、アガロースまたはポリアクリルアミドゲルにおいて電気泳動的に分離し、ニトロセルロース、ナイロン、または他の適切な膜に移し、当該技術分野で周知の標準的技術、例えば、Sambrook et al.,(1989)Molecular Cloning,second edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,N.Y.の7.39−7.52節に記載される技術を用いてプローブにハイブリダイズさせることが可能である。
【0063】
哺乳動物からのサンプルにおける特定RNAレベルを確かめるために、標準的ノーザンブロットが使用可能であるように、PCR利用法、例えば、定量的リアルタイムPCRの使用が可能である。一実施態様では、癌サンプルから単離された全体mRNAに対し、ランダムヘキサマー・オリゴヌクレオチドプライマーを用いる逆転写を実行することが可能である。次に、得られたcDNAを、鋳型として、定量的リアルタイムPCR実験:特異的プローブ(例えば、一端に5′蛍光リポーター染料を、他端に3′消光染料を有するプローブ)の存在下に、順行および逆行オリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCR実験において用いる。反応は、ある一定数のサイクル後に蓄積されるPCR産物の量ではなく、サイクル過程の間、PCR産物の増幅が最初に検出される時点を用いて監視される。得られた定量化PCR産物レベルは、元の癌サンプルにおけるmRNAレベルに相関させることが可能であり、次に、このmRNAレベルは、その癌の侵襲性と相関させることが可能である。
【0064】
ポリペプチドホルモン受容体レベル(例えば、エストロゲン受容体タンパクレベルおよび/またはプロゲステロン受容体タンパクレベル)を測定する方法としては、例えば、ただし限定されないが、ELISA、免疫組織化学、および免疫蛍光に基づく技術が挙げられる。これらの方法は、通常、特定のポリペプチドに対し、特異的結合親和性を有する抗体を用いる。「特異的結合親和性」とは、ある抗体が、同じ環境における、他の異なるポリペプチドに対し著明な交差反応を持つことなく、ある特定のポリペプチドと特異的に相互作用を持つ、その能力を指す。エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体に対し特異的結合親和性を持つ抗体は、エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体ポリペプチドと相互作用を持つことが可能である。
【0065】
乳癌サンプルにおけるエストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体ポリペプチドのレベルは、例えば、定量的サンドイッチELISA技術を用いて測定することが可能である。乳癌組織サンプルはホモジェナイズし、抽出し、該抽出物の分液を、エストロゲンまたはプロゲステロン受容体に対して特異的な抗体であらかじめコートした、マイクロタイタープレートの別々のウェルに加えてもよい。タンパク結合および続く洗浄後に、エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体に対して特異的な酵素結合抗体を、ウェルに加えてもよい。抗体結合および続く洗浄後に、標識接合IgG(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)−接合IgG)を含む基質液をウェルに加えてもよい。次に、この標識を、分光光度計測によって定量し、その定量化レベルを、コントロールレベル、または基礎値と比較してもよい。得られた定量化ポリペプチドレベルは、その癌の侵襲性と相関させてもよい。
【0066】
ポリペプチドレベルはさらに、免疫組織化学によって測定することも可能である。例えば、乳癌組織サンプルの切片は、抗−エストロゲン受容体、または抗−プロゲステロン受容体抗体によって処理してもよい。陰性コントロール切片は、一次抗体の代わりに、あらかじめ免疫させたウサギまたはマウス血清と共にインキュベートしてもよい。抗体結合および続く洗浄後、一次抗体は、適切な標識接合二次抗体(例えば、金接合、または酵素接合抗体)によって検出してもよい。次に、この標識は、現像され、画像分析システムを用いて定量化される。得られた定量化ポリペプチドレベルは、その癌の侵襲性と相関させてもよい。サンプルは、個別に処理されてもよいが、異なる組織のサンプル、または異なる患者から成る集団からのサンプルは、同時に処理されてもよい。このような処理法としては、例えば、ただし限定されないが、Kononen et al.,(1998)Nature Med.4:844−847に記載されるような組織マイクロアレイが挙げられる。
【0067】
ELISA、免疫組織化学、および免疫蛍光法のために適切な抗体は、標準的技術を用いて獲得することが可能である。さらに、癌の侵襲性に関連するポリペプチドに対する、市販の抗体を使用してもよい。
【0068】
前述の、当該技術分野で公知の、種々の測定法に基づいて、プロゲステロン受容体、およびエストロゲン受容体などの、ホルモン受容体状態を定量してよい。例えば、免疫組織化学を用い、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体の核反応性を測定し、少なくとも2,000個の腫瘍細胞における免疫反応性細胞のパーセントとして記録される、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現する、免疫反応性細胞のパーセントが定量されてもよい。乳癌組織は、該乳癌組織細胞の約1%以上から約10%がエストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現する場合、低度のホルモン受容体状態を持つものとして特徴づけられる。乳癌組織は、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体などのホルモン受容体について、該乳癌組織細胞の約1%未満が該ホルモン受容体を発現する場合、該ホルモン受容体について発現しないまたは陰性として特徴づけられる。ある実施態様では、乳癌組織細胞の、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、または約0.9%の内のいずれかよりも低い数量が、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体などのホルモン受容体を発現する。ある実施態様では、乳癌組織細胞の、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、または約0.9%の内のいずれかよりも低い数量が、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体を発現する。ある実施態様では、乳癌組織細胞の0%が、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体を発現する。
化学療法剤との併用治療法
本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)少なくとも一つの他の有効量の治療剤を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびオルタタキセルの内(および、ある実施態様では、事実上それらから成る)のいずれかである。ある実施態様では、ナノ粒子組成物は、Abraxane(登録商標)を含む。ある実施態様では、化学療法剤は、抗代謝剤(ヌクレオシド類縁体を含む)、白金系薬剤、アルキル化剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アントラサイクリン抗生物質、ビンカアルカロイド、プロテオソーム阻害剤、マクロライド、およびトポイソメラーゼ阻害剤の内(および、ある実施態様では、から成る群から選ばれる)のいずれかである。
【0069】
ある実施態様では、ホルモン受容体状態は、一つ以上のホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体については低い。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の両方について低い場合、治療法に対してより反応的である可能性が高い。ある実施態様では、ホルモン受容体状態は、一つ以上のホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体(ER)、またはプロゲステロン受容体(PgR)を発現しない(すなわち、陰性である)。ある実施態様では、乳癌組織のホルモン受容体状態は、エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PgR)の両方を発現しない(すなわち、陰性である)。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の両方について陰性である場合、治療法に対してより反応的である可能性が高い。ある実施態様では、個体は、エストロゲン受容体か、またはプロゲステロン受容体のいずれかを発現する(すなわち、陽性である)。ある実施態様では、個体は、エストロゲン受容体と、プロゲステロン受容体の両方を発現する(すなわち、陽性である)。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体について陽性である場合、治療法に対してより反応性が低い可能性が高い。
【0070】
ある実施態様では、乳癌組織はさらに、HER2を発現する(HER2+)。ある実施態様では、乳癌組織はさらに、HER2を発現しない(HER2−)。
【0071】
ある実施態様では、方法は、個体に対し、a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物;および、b)少なくとも一つの他の有効量の化学療法剤を投与することを含む。ある実施態様では、このパクリタキセル/アルブミン・ナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有する。ある実施態様では、このパクリタキセル/アルブミン・ナノ粒子組成物は、界面活性剤(例えば、Cremophor)を事実上含まない(例えば、非含有)。ある実施態様では、組成物におけるアルブミンのパクリタキセルに対する重量比は、約18:1以下、例えば、約9:1以下である。ある実施態様では、パクリタキセルは、アルブミンによってコートされる。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、このパクリタキセル/アルブミン組成物は、界面活性剤(例えば、Cremophor)を事実上含まない(例えば、非含有)。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、パクリタキセルは、アルブミンによってコートされる。ある実施態様では、ナノ粒子組成物はAbraxane(登録商標)である。
【0072】
ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)有効量のAbraxane(登録商標);およびb)有効量の、少なくとも一つの他の治療剤を投与することを含む、方法を提供する。Abraxane(登録商標)と、逐次的、並行して、または同時的に投与するのに好ましい併用薬剤は、単一成分単独と比較した場合、抗増殖活性が強化されるもの、特に、増殖組織の縮退、および/または増殖性疾患の治癒をもたらす併用である。
【0073】
本明細書に記載される化学療法剤は、薬剤それ自体であってもよいし、薬学的に受容可能な、その塩、および、薬学的に受容可能な、そのエステルの外、立体異性体、エナンチオマー、ラセミ混合物などであってもよい。本明細書に記載される化学療法剤(単数または複数)は、該薬剤(単数または複数)を含み、薬学的に受容可能な輸送ベヒクルなどを含む製薬組成物と同様に投与が可能である。
【0074】
化学療法剤は、ナノ粒子組成物として存在してもよい。例えば、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)少なくとも一つの他の化学療法剤、およびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、方法は、個体に対し、a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(Abraxane(登録商標))を含む有効量の組成物;およびb)少なくとも一つの他の化学療法剤、およびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、を投与することを含む。ある実施態様では、化学療法剤は、チオコルヒチン、またはその誘導体(例えば、チオコルヒチン二量体、例えば、nab−5404、nab−5800、およびnab−5801など)、ラパマイシンまたはその誘導体、および、ゲルダナマイシンまたはその誘導体(例えば、17−アリルアミノゲルダマイシン(17−AAG))の内(および、ある実施態様では、から成る群から選ばれる)のいずれかである。ある実施態様では、化学療法剤はラパマイシンである。ある実施態様では、化学療法剤は17−AAGである。
【0075】
考慮の対象とされる化学療法剤の、例示の、非限定的リストが、本明細書に示される。適切な化学療法剤としては、例えば、ビンカアルカロイド、微小管形成を破壊する薬剤(例えば、コルヒチンおよびその誘導体)、抗血管形成剤、治療用抗体、EGFR標的剤、チロシンキナーゼ標的剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、一過性金属複合体、プロテアソーム阻害剤、抗代謝剤(例えば、ヌクレオシド類縁体)、アルキル化剤、白金系薬剤、アントラサイクリン抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、マクロライド、治療用抗体、レチノイド(例えば、全体トランス型レチノイン酸、またはその誘導体);ゲルダナマイシン、またはその誘導体(例えば、17−AAG)、および、当該技術分野で周知の、他の標準的化学療法剤が挙げられる。
【0076】
ある実施態様では、化学療法剤は、アドリアマイシン、コルヒチン、シクロフォスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキセート、ミトキサントロン、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、タキサンおよびその誘導体(例えば、パクリタキセルおよびその誘導体、タキソテールおよびその誘導体など)、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、ピポスルファン、nab−5404、nab−5800、nab−5801、イリノテカン、HKP、オルタタキセル、ゲムシタビン、Herceptin(登録商標)、ビノレルビン、Doxil(登録商標)、カペシタビン、Alima(登録商標)、Avastin(登録商標)、Velcade(登録商標)、Tarceva(登録商標)、Neulasta(登録商標)、ラパチニブ、ソラフェニブ、その誘導体、当該技術分野で公知の化学療法剤などの内(および、ある実施態様では、から成る群から選ばれる)のいずれかである。ある実施態様では、化学療法剤は、チオコルヒチン誘導体およびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物である。
【0077】
ある実施態様では、化学療法剤は、抗新生物剤であって、例えば、ただし限定されないが、カルボプラチン、Navelbine(登録商標)(ビノレルビン)、アントラサイクリン(Doxil(登録商標))、ラパチニブ(GW57016)、Herceptin(登録商標)、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、Alimta(登録商標)、シスプラチン、5−フルオロウラシル、エピルビシン、シクロフォスファミド、Avastin(登録商標)、Velcade(登録商標)などが挙げられる。
【0078】
ある実施態様では、化学療法剤は、腫瘍増殖に関与する他の因子、例えば、EGFR、ErbB2(Herbとも呼ばれる)、ErbB3、ErbB4、またはTNFの拮抗剤である。場合によっては、個体に、さらに一つ以上のサイトカインを投与すると有益なことがある。ある実施態様では、治療剤は、増殖阻害剤である。増殖阻害剤の適切な用量は、現在使用されるものであるが、増殖阻害剤およびタキサンの併合(協働)活動のために下げてもよい。
【0079】
ある実施態様では、化学療法剤は、抗VEGF抗体、HER2抗体、インターフェロン、およびHGFβ拮抗剤以外の化学療法剤である。
【0080】
本明細書における化学療法剤への言及は、化学療法剤またはその誘導体にも適用される、したがって、本発明は、これらの実施態様(薬剤;薬剤、または誘導体(単数または複数))のいずれも含む。化学療法剤または他の化学成分の「誘導体」または「類縁体」としては、例えば、ただし限定されないが、該化学療法剤または成分に対し構造的に近似の化合物、または、該化学療法剤または成分と、同じ一般的化学クラスにある化合物が挙げられる。ある実施態様では、化学療法剤または成分の誘導体または類縁体は、該化学療法剤または成分に対し、近似の化学的および/または物理的特性(例えば、機能性など)を保持する。
【0081】
ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量の、チロシンキナーゼ阻害剤を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))を含む有効量の組成物;およびb)有効量の、チロシンキナーゼ阻害剤を投与することを含む、方法を提供する。適切なチロシンキナーゼ阻害剤としては、例えば、イマチニブ(Gleevec(登録商標))、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、タルセバ、Sutent(登録商標)(スニチニブマレイン酸塩)、および、ラパチニブが挙げられる。ある実施態様では、チロシンキナーゼ阻害剤は、ラパチニブである。ある実施態様では、チロシンキナーゼ阻害剤は、タルセバである。タルセバは、小型分子の、ヒトの、1型上皮増殖因子/上皮増殖因子受容体(HER1/EGFR)阻害剤であって、III相臨床治験において、進行性の、非小細胞型肺癌(NSCLC)において生存率の増大を示した。ある実施態様では、本方法は、乳癌治療、例えば、転移乳癌の治療およびネオアジュバント療法における乳癌治療のためのものである。ある実施態様では、本方法は、進行した固体腫瘍の治療のためのものである。ある実施態様では、哺乳動物において腫瘍を発現するEGFRの増殖を抑制する方法であって、そのような腫瘍に感染する哺乳動物に対し、Abraxane(登録商標)およびゲフィチニブを投与することを含み、ゲフィチニブがパルス投与される方法が提供される。
【0082】
ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量の抗代謝剤(例えば、ヌクレオシド類縁体、例えば、プリン類縁体およびピリミジン類縁体など)を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))を含む有効量の組成物;およびb)有効量の抗代謝剤を投与することを含む、方法を提供する。「抗代謝剤」とは、代謝産物に構造的に近縁であるが、生体によって生産的には使用されない薬剤である。多くの抗代謝剤は、核酸、RNA、およびDNAの生産を妨げる。例えば、抗代謝剤は、ヌクレオシド類縁体であってもよく、例えば、ただし限定されないが、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、シタラビン、クラドリビン、シトシンアラビノシド(ara−C、シトサール)、ドキソフルリジン、フルオロウラシル(例えば、5−フルオロウラシル)、UFT、ヒドロキシウレア、ゲムシタビン、メルカプトプリン、メトトレキセート、チオグアニン(例えば、6−チオグアニン)を含む。他の抗代謝剤としては、例えば、L−アスパラギナーゼ(エルスパ)、デカルバジン(DTIC)、2−デオキシ−D−グルコース、およびプロカルバジン(マツラン)が挙げられる。ある実施態様では、ヌクレオシド類縁体は、ゲムシタビン、フルオロウラシル、およびカペシタビンの内(および、ある実施態様では、事実上それらから成る)のいずれかである。ある実施態様では、本発明は、転移性乳癌、または局所的進行癌の治療用である。ある実施態様では、本発明は、転移性乳癌の第1次治療用である。ある実施態様では、本発明は、ネオアジュバント療法における乳癌治療用である。
【0083】
ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量のアルキル化剤を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))を含む有効量の組成物;およびb)有効量のアルキル化剤を投与することを含む、方法を提供する。適切なアルキル化剤としては、例えば、ただし限定されないが、シクロフォスファミド(シトキサン)、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、チオテパ、ブスルファン、アルキルスルフォン酸塩、エチレンイミン、ナイトロジェンマスタード類縁体、エストラムスチン硫酸ナトリウム、イフォスファミド、ニトロソウレア、ロムスチン、およびストレプトゾシンが挙げられる。ある実施態様では、アルキル化剤はシクロフォスファミドである。ある実施態様では、シクロフォスファミドは、ナノ粒子組成物の投与前に投与される。ある実施態様では、本方法は、早期乳癌治療用である。ある実施態様では、本方法は、アジュバント療法およびネオアジュバント療法における乳癌治療用である。
【0084】
ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量の白金系薬剤を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))を含む有効量の組成物;およびb)有効量の白金系薬剤を投与することを含む、方法を提供する。適切な白金系薬剤としては、例えば、ただし限定されないが、カルボプラチン、シスプラチン、およびオキサリプラチンが挙げられる。ある実施態様では、白金系薬剤は、カルボプラチンである。ある実施態様では、本方法は、乳癌(HER2陽性か、またはHER2陰性で、転移乳癌および進行性乳癌を含む)の治療のためである。
【0085】
ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量のアントラサイクリン抗生物質を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、本発明は、個体において、増殖性疾患(例えば、癌)を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))ならびにキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含む有効量の組成物;およびb)有効量のアントラサイクリン抗生物質を投与することを含む、方法を提供する。適切なアントラサイクリン抗生物質としては、例えば、ただし限定されないが、Doxil(登録商標)、アクチノマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ドキソルビシン(アドリダマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシンが挙げられる。ある実施態様では、アントラサイクリンは、Doxil(登録商標)、エピルビシン、およびドキソルビシンの内の(および、ある実施態様では、それらから成る群から選ばれる)いずれかである。ある実施態様では、本方法は、早期乳癌治療用である。ある実施態様では、本方法は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法における乳癌治療用である。
【0086】
ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量のビンカアルカロイドを投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))ならびにキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含む有効量の組成物;およびb)有効量のビンカアルカロイドを投与することを含む、方法を提供する。適切なビンカアルカロイドとしては、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデスチン、ビノレルビン(Navelbine(登録商標))、およびVP−16が挙げられる。ある実施態様では、ビンカアルカロイドはビノレルビン(Navelbine(登録商標))である。ある実施態様では、本方法は、ステージIVの乳癌治療用である。
【0087】
ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量のマクロライドを投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))ならびにキャリヤータンンパク(例えば、アルブミン)を含む有効量の組成物;およびb)有効量のマクロライドを投与することを含む、方法を提供する。適切なマクロライドとしては、例えば、ラパマイシン、カルボマイシン、およびエリスロマイシンが挙げられる。ある実施態様では、マクロライドは、ラパマイシン、またはその誘導体である。ある実施態様では、本方法は、固体腫瘍の治療用である。
【0088】
ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量のトポイソメラーゼ阻害剤を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))ならびにキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含む有効量の組成物;およびb)有効量のトポイソメラーゼ阻害剤を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、化学療法剤は、トポイソメラーゼ阻害剤であって、例えば、トポイソメラーゼIおよびトポイソメラーゼIIの阻害剤を含む。トポイソメラーゼIの例示の阻害剤としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、カンプトテシン、例えば、イリノテカンおよびトポテカンが挙げられる。トポイソメラーゼIIの例示の阻害剤としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、アムサクリン、エトポシド、エトポシドリン酸塩、およびテノポシドが挙げられる。
【0089】
ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量の抗血管形成剤を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))ならびにキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含む有効量の組成物;およびb)有効量の抗血管形成剤を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、本方法は、転移乳癌治療用、およびアジュバント療法またはネオアジュバント療法における乳癌治療用である。
【0090】
これまで、Carmeliet and Jain (2000)によって掲載されるものを含め、たくさんの抗血管形成剤が特定され、当該技術分野において公知である。この抗血管形成剤は、天然のものであってもよいし、非天然のものであってもよい。ある実施態様では、化学療法剤は、合成の抗血管形成ペプチドである。例えば、小型の、apoptic促進合成ペプチドの抗血管形成活性は、二つの機能ドメインを含むことが以前に報告されている。一つは、腫瘍の微小血管上のCD13受容体(アミノペプチダーゼN)を標的とし、他方は、細胞な取り込みの後ミトコンドリア膜を破壊する。Nat.Med.(1999)5(9):1032−8.第2世代ペプチド二量体、HKP(Hunter Killer Peptide)と名づけられたCNGRC−GG−d(KLAKLAK)2は、その抗腫瘍活性がさらに増強されることが認められた。したがって、ある実施態様では、抗血管形成剤はHKPである。ある実施態様では、抗血管形成剤は、抗VEGF抗体(例えば、Avastin(登録商標))以外のものである。
【0091】
ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量のプロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブ(Velcade)を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))ならびにキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含む有効量の組成物;およびb)有効量のプロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブ(Velcade(登録商標))を投与することを含む、方法を提供する。
【0092】
ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量の治療用抗体を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様では、本発明は、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))ならびにキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含む有効量の組成物;およびb)有効量の治療用抗体を投与することを含む、方法を提供する。適切な治療用抗体としては、例えば、ただし限定されないが、抗VEGF抗体(例えば、Avastin(登録商標)(ベバシズマブ))、抗HER2抗体(例えば、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ))、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ)、Campath(アレムツズマブ)、Myelotarg(ゲムツズマブ)、Zevalin(イブリツモマブtiuextan、Rituxan(リツキシマブ)、およびBexxar(トシツモマブ)が挙げられる。ある実施態様では、化学療法剤は、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ)である。ある実施態様では、化学療法剤は、VEGFまたはHER2に対する抗体以外の、治療用抗体である。ある実施態様では、本方法は、HER2陽性乳癌の治療、例えば、進行性乳癌の治療、転移癌の治療、アジュバント療法における乳癌の治療、およびネオアジュバント療法における乳癌の治療などのための方法である。ある実施態様では、本方法は、転移乳癌、アジュバント療法における乳癌、およびネオアジュバント療法における乳癌の内のいずれかの治療用である。例えば、ある実施態様では、個体において、HER2陽性転移乳癌を治療する方法であって、個体に対し、125mg/m
2パクリタキセル、アルブミン・ナノ粒子組成物(例えば、Abraxane(登録商標))を、Herceptin(登録商標)投与と並行して毎週、3週間、4週目を休薬期間として投与することを含む方法が提供される。
【0093】
ある実施態様では、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパクを含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量の抗VEGF抗体を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、有効量のタキサンナノ粒子組成物および抗VEGF抗体は、細胞増殖(例えば、腫瘍細胞増殖)を相乗的に抑制する。ある実施態様では、少なくとも約10%(例えば、約20%、約30%、約40%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%の内の少なくともいずれかを含む)の細胞増殖が抑制される。ある実施態様では、タキサンはパクリタキセルである。ある実施態様では、抗VEGF抗体はベバシズマブ(例えば、Avastin(登録商標))である。ある実施態様では、タキサンはパクリタキセルであり、ある実施態様では、抗VEGF抗体はベバシズマブ(例えば、Avastin(登録商標))である。ある実施態様では、組成物のナノ粒子に含められているタキサンは、静注投与によって投与される。ある実施態様では、抗VEGF抗体は、静注投与によって投与される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物に含められているタキサンも、抗VEGF抗体も、静注投与によって投与される。
【0094】
ある実施態様では、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌腫瘍転移を抑制する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパクを含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量の抗VEGF抗体を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、有効量のタキサンナノ粒子組成物および抗VEGF抗体は、腫瘍転移を相乗的に抑制する。ある実施態様では、少なくとも約10%(例えば、約20%、約30%、約40%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%の内の少なくともいずれかを含む)の転移が抑制される。ある実施態様では、リンパ節への転移を抑制する方法が提供される。ある実施態様では、肺に対する転移を抑制する方法が提供される。ある実施態様では、タキサンはパクリタキセルである。ある実施態様では、抗VEGF抗体は、ベバシズマブ(例えば、Avastin(登録商標)である。ある実施態様では、タキサンはパクリタキセルであり、抗VEGF抗体は、ベバシズマブ(例えば、Avastin(登録商標)である。ある実施態様では、組成物のナノ粒子に含められているタキサンは、静注投与によって投与される。ある実施態様では、抗VEGF抗体は、静注投与によって投与される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物に含められているタキサンも、抗VEGF抗体も、静注投与によって投与される。
【0095】
抗VEGF抗体の適切な用量は、例えば、約1mg/kgから約20mg/kg、例えば、約1mg/kgから約15mg/kg(例えば、約2、約4、約6、約8、約10、または約12mg/kgの内のいずれか)を含む。ある実施態様では、抗VEGF抗体の用量は、約40mg/m
2から約600mg/m
2、例えば、約100mg/m
2から約400mg/m
2(例えば、約100、約200、または約300mg/m
2の内のいずれか)を含む。ある実施態様では、抗VEGF抗体は、ベバシズマブ(例えば、Avastin(登録商標)である。
【0096】
ナノ粒子組成物におけるタキサンの量および抗VEGF抗体の量の適切な組み合わせとしては、例えば、ナノ粒子組成物におけるタキサンは、約1mg/kgから約20mg/kg(例えば、約2、約5、約10、または約15mg/kgのいずれか)、抗VEGF抗体は、約1mg/kgから約20mg/kg(例えば、約2、約4、約6、約8、約10、約12、約14、約16、または約18mg/kgの内のいずれか);ナノ粒子組成物におけるタキサンは、約3mg/m
2から約400mg/m
2(例えば、約6、約10、約15、約30、約45、約60、約100、約150、約200、または約300mg/m
2のいずれか)、抗VEGF抗体は、約40mg/m
2から約600mg/m
2、例えば、約100mg/m
2から約400mg/m
2(例えば、約100、約200、または約300mg/m
2の内のいずれか);ナノ粒子組成物におけるタキサンは、約3mg/m
2から約300mg/m
2(例えば、約6、約10、約15、約30、約45、約60、約100、約150、約200、または約300mg/m
2のいずれか)、抗VEGF抗体は、約1mg/kgから約20mg/kg(例えば、約2、約4、約6、約8、約10、約12、約14、約16、または約18mg/kgの内のいずれか)が挙げられる。ある実施態様では、方法は、個体に対し、ナノ粒子組成物に含められているタキサンを少なくとも約200mg/m
2、抗VEGF抗体を約2、約4、約8、または約10mg/kgの内の少なくともいずれか投与することを含む。
【0097】
本方法のある実施態様では、タキサンナノ粒子組成物および抗VEGF抗体は、個体に対し同時に投与される。本方法のある実施態様では、ナノ粒子組成物および化学療法剤の投与は、並行する。タキサンナノ粒子組成物の併用療法のための一つの例示的投与処方としては、ナノ粒子組成物に含められているタキサンの100mg/m2〜300mg/m
2(例えば、200mg/m
2)、少なくとも毎週(例えば、1、2、3、4、5、または6日毎)投与し、それと並行して、抗VEGFの2mg/kg〜15mg/kg(例えば、4、6、8、10mg/kg、または15mg/kgの内のいずれか)、2週毎またはそれ以上の頻度(例えば、毎週、週2回、週3回)投与することが挙げられる。
【0098】
ある実施態様では、タキサンナノ粒子組成物および抗VEGF抗体は、個体に対し逐次的に投与される。例えば、ある実施態様では、タキサンナノ粒子組成物は、抗VEGF抗体の投与の前に、少なくとも1(例えば、2、3、4、5、または6の内の少なくともいずれか)サイクル投与される。次に、抗VEGF抗体の投与が、週に少なくとも1回(例えば、2回)、少なくとも約3(例えば、4、5、または6)週行われる。タキサンナノ粒子組成物(例えば、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物、例えば、Abraxane(登録商標))、および抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ、例えば、Avastin(登録商標))の併用療法のための、一つの例示的投与処方としては、ナノ粒子組成物に含められているタキサンを10mg/kg、5日間毎日を、1週間を間にはさんで2サイクル、その後、抗VEGF抗体を2mg/kg、4mg/kg、または8mg/kg用量で、週2回、6週間投与することが挙げられる。
【0099】
ある実施態様では、ナノ粒子組成物に含められているタキサンに加えて、二つ以上の化学療法剤が投与される。これら二つ以上の化学療法剤は、異なるクラスの化学療法剤に属していてもよい(が、必ずしもそうでなくともよい)。これらの組み合わせの例は、本明細書において提供される。他の組み合わせも考慮の対象とされる。
【0100】
ある実施態様では、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量の抗代謝剤(例えば、ヌクレオシド類縁体、例えば、ゲムシタビン)、およびc)アントラサイクリン抗生物質(例えば、エピルビシン)を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))を含む有効量の組成物、b)有効量の抗代謝剤(例えば、ヌクレオシド類縁体、例えば、ゲムシタビン)、およびc)有効量のアントラサイクリン抗生物質(例えば、エピルビシン)を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、本方法は、ネオアジュバント療法における乳癌治療用である。例えば、ある実施態様では、個体において、局所的に進行した/炎症性の癌を治療する方法であって、個体に対し:220mg/m
2のパクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物(例えば、Abraxane(登録商標))を2週間毎;2000mg/m
2のゲムシタビンを2週間毎;および50mg/m
2のエピルビシンを2週間毎に投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、アジュバント療法において個体の乳癌を治療する方法であって、個体に対し:175mg/m
2のパクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物(例えば、Abraxane(登録商標))を2週間毎;2000mg/m
2のゲムシタビンを2週間毎、50mg/m
2のエピルビシンを2週間毎に投与することを含む、方法が提供される。
【0101】
ある実施態様では、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量の白金系薬剤(例えば、カルボプラチン)、およびc)治療用抗体(例えば、ant−HER2抗体(例えば、Herceptin(登録商標))および抗VEGF抗体(例えば、Avastin(登録商標))を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))を含む有効量の組成物、b)有効量の白金系薬剤(例えば、カルボプラチン)、および、c)治療用抗体(例えば、ant−HER2抗体(例えば、Herceptin(登録商標))および抗VEGF抗体(例えば、Avastin(登録商標))を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、本方法は、進行性乳癌、転移乳癌、および、アジュバント療法における乳癌の内のいずれかの治療用である。ある実施態様では、個体において転移乳癌を治療する方法であって、個体に対し:75mg/m
2のパクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物(例えば、Abraxane(登録商標))、およびカルボプラチンAUC=2を投与することを含み、該投与は、3週間は毎週、4週目を休薬期間として実施される、方法が提供される。ある実施態様では、本方法はさらに、約2〜4mg/kgのHerceptin(登録商標)の毎週投与を含む。
【0102】
ある実施態様では、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量の白金系薬剤(例えば、カルボプラチン)、およびc)ビンカアルカロイド(例えば、Navelbine(登録商標))を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))を含む有効量の組成物、b)有効量の白金系薬剤(例えば、カルボプラチン)、およびc)ビンカアルカロイド(例えば、Navelbine(登録商標))を投与することを含む、方法が提供される。
【0103】
ある実施態様では、個体において、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量のアルキル化剤(例えば、シクロフォスファミド)、およびc)アントラサイクリン抗生物質(例えば、アドリアマイシン)を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、本発明は、個体において、増殖性疾患(例えば、癌)を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物、b)有効量のアルキル化剤(例えば、シクロフォスファミド)、およびc)アントラサイクリン抗生物質(例えば、アドリアマイシン)を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、本方法は、初期ステージの乳癌治療用である。ある実施態様では、本方法は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法における乳癌治療用である。例えば、ある実施態様では、個体において、初期ステージの乳癌を治療する方法であって、260mg/m
2のパクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物(例えば、Abraxane(登録商標))、60mg/m
2のアドリアマイシン、および600mg/m
2のシクロフォスファミドを投与することを含み、投与は2週間毎に1回行われる、方法が提供される。
【0104】
他の実施態様は表1に提示される。例えば、ある実施態様では、個体において、進行性乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))を含む有効量の組成物;およびb)有効量のカルボプラチンを投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、本方法はさらに、個体に対し、有効量のHerceptin(登録商標)を投与することを含む。ある実施態様では、個体において、転移乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))を含む有効量の組成物、b)有効量のゲムシタビンを投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、個体において、進行した非小細胞肺癌を治療する方法であって、個体に対し:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))を含む有効量の組成物、b)有効量のカルボプラチンを投与することを含む、方法が提供される。
【0105】
ある実施態様では、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、またはオルタタキセル)、およびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子、および少なくとも一つの他の化学療法剤を含む組成物が提供される。本明細書に記載される組成物は、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療するために、有効量のタキサンおよび化学療法剤を含んでもよい。ある実施態様では、化学療法剤およびタキサンは、所定の比率、例えば、本明細書に記載される重量比で、組成物中に存在する。ある実施態様では、本発明は、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、またはオルタタキセル)を含むナノ粒子を含む有効量の組成物と、有効量の少なくとも一つの他の化学療法剤と相乗的な組成物を提供する。ある実施態様では、他の化学療法剤は、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ、例えば、Avastin(登録商標))である。
【0106】
ある実施態様では、本発明は、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づく乳癌治療において使用される、タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む製薬組成物であって、使用が、少なくとも一つの他の化学療法剤との、同時および/または逐次投与を含む、製薬組成物を提供する。ある実施態様では、本発明は、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づく乳癌治療において使用される、化学療法剤を含む製薬組成物であって、使用が、タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物の同時および/または逐次投与を含む、製薬組成物を提供する。ある実施態様では、本発明は、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づく乳癌治療において、同時的および/または逐次的に使用される、タキサン含有ナノ粒子組成物と、他の一つの化学療法剤とを含む組成物とを提供する。
投与方式
ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する前述の方法において、タキサン含有ナノ粒子を含む組成物(「ナノ粒子組成物」とも呼ばれる)、および化学療法剤は、同時的(すなわち、同時投与)および/または逐次的(すなわち、逐次投与)に投与することが可能である。
【0107】
ある実施態様では、ナノ粒子組成物、および化学療法剤(本明細書に記載される特異的化学療法剤を含む)が同時投与される。本明細書で用いる「同時投与」という用語は、ナノ粒子組成物および化学療法剤が、約15分以下、例えば、約10分以下、約5分以下、または約1分以下の内のいずれかの時間をおいて投与されることを意味する。これらの薬剤を同時に投与する場合、ナノ粒子における薬剤、および化学療法剤は、同じ組成物の中に含まれてもよいし(例えば、該ナノ粒子および該化学療法剤の両方を含む組成物)、あるいは、別々の組成物の中に含まれてもよい(例えば、該ナノ粒子は一組成物の中に含まれ、該化学療法剤は、もう一つの組成物の中に含まれる)。例えば、タキサンおよび化学療法剤は、少なくとも二つの異なるナノ粒子を含む単一組成物の中に存在してもよく、その場合、該組成物のナノ粒子の一部が、タキサンおよびキャリヤータンパクを含み、該組成物の残りのナノ粒子の一部が、化学療法剤とキャリヤータンパクを含む。本発明は、このような組成物を考慮の対象とし、これらを包含する。ある実施態様では、タキサンのみがナノ粒子に含まれる。ある実施態様では、ナノ粒子組成物中の薬剤、および化学療法剤の同時投与を、タキサンおよび/または化学療法剤の追加用量と組み合わせることも可能である。
【0108】
ある実施態様では、ナノ粒子組成物および化学療法剤は、逐次的に投与される。本明細書で用いる「逐次投与」という用語は、ナノ粒子組成物中の薬剤および化学療法剤が、約15分を超える、例えば、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分またはそれ以上の分の内のいずれかを超える時間をおいて投与されることを意味する。ナノ粒子組成物、化学療法剤のどちらを先に投与してもよい。ナノ粒子組成物および化学療法剤は、別々の組成物に含まれ、これらは、同じパッケージに納められても、異なるパッケージに納められてもよい。
【0109】
ある実施態様では、ナノ粒子組成物と化学療法剤の投与は、並行する、すなわち、ナノ粒子組成物の投与期間と、化学療法剤の投与期間とは互いに重複する。ある実施態様では、ナノ粒子組成物と化学療法剤の投与は、並行しない。例えば、ある実施態様では、ナノ粒子組成物の投与は、化学療法剤が投与される前に終了する。ある実施態様では、化学療法剤の投与は、ナノ粒子組成物が投与される前に終了する。これら二つの非並行投与の間の時間間隔は、約2から8週間の範囲、例えば、約4週間にあってもよい。
【0110】
薬剤含有ナノ粒子組成物および化学療法剤の投与頻度は、投与医師の判断に基づいて治療進行中に調整してもよい。別々に投与される場合、薬剤含有ナノ粒子組成物および化学療法剤は、異なる投与頻度または間隔で投与してもよい。例えば、薬剤含有ナノ粒子組成物は、毎週投与し、一方、化学療法剤は、それよりも高または低頻度で投与してもよい。ある実施態様では、薬剤含有ナノ粒子および/または化学療法剤の、連続的な放徐処方を使用してもよい。徐放を実現するための、種々の処方およびデバイスが当該技術分野で公知である。
【0111】
ナノ粒子組成物および化学療法剤は、同じ投与ルートを用いて投与してもよいし、異なる投与ルートを用いて投与してもよい。ある実施態様では(同時的および逐次的投与の両方について)、ナノ粒子組成物におけるタキサン、および化学療法剤は、所定の比率で投与される。例えば、ある実施態様では、ナノ粒子組成物におけるタキサンと、化学療法剤との重量比は、約1対1である。ある実施態様では、該重量比は、約0.001対約1から約1000対約1の間、または約0.01対約1から約100対約1の間にあってもよい。ある実施態様では、ナノ粒子組成物におけるタキサンと、化学療法剤との重量比は、約100:1、約50:1、約30:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、および約1:1の内のいずれか未満である。ある実施態様では、ナノ粒子組成物におけるタキサンと、化学療法剤との重量比は、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約30:1、約50:1、約100:1の内のいずれかを超える。その他の比も考慮の対象とされる。
【0112】
タキサンおよび/または化学療法剤に対して要求される用量は、各薬剤が単独で投与される場合に通常要求される用量よりも低くてよい(しかし、必ずしもそうでなくてもよい)。したがって、ある実施態様では、ナノ粒子組成物における薬剤および/または化学療法剤の、治療的有効未満量が投与される。「治療的有効未満量」または「治療的有効未満レベル」とは、治療量よりも低い量、すなわち、ナノ粒子組成物における薬剤および/または化学療法剤が単独で投与される場合に通常使用される量よりも低い量を指す。この低下は、ある任意の投与において投与される量に反映されてもよいし、および/または、ある任意の期間に投与される量に反映されてもよい(頻度低下)。
【0113】
ある実施態様では、ナノ粒子組成物における薬剤の通常用量に対し、同程度の治療を実現するのに必要な用量として、少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%以上の内のいずれか低下させるのに十分なだけの化学療法剤が投与される。ある実施態様では、化学療法剤の通常用量に対し、同程度の治療を実現するのに必要な用量として、少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%以上の内のいずれか低下させるのに十分なだけのナノ粒子組成物における薬剤が投与される。
【0114】
ある実施態様では、ナノ粒子組成物におけるタキサンの用量および化学療法剤の用量は、それぞれが単独で投与される場合の、対応通常用量に比べると低下する。ある実施態様では、ナノ粒子組成物におけるタキサンおよび化学療法剤は、治療的有効未満量、すなわち、低下量において投与される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物および/または化学療法剤の用量は、確立された最大毒性用量(MTD)よりも事実上低い。例えば、ナノ粒子組成物および/または化学療法剤の用量は、MTDの約50%、約40%、約30%、約20%、または約10%未満である。
【0115】
本明細書に記載される投与形態の組み合わせを使用してもよい。本明細書に記載される併用治療法は、単独で実行してもよいし、別の治療法、例えば、手術、放射線照射、化学療法、免疫療法、遺伝子治療などと組み合わせて実行してもよい。さらに、増殖性疾患を発症する危険性の比較的高いヒトは、該疾患の発症を抑制および/または遅延させるために治療を受けてもよい。
【0116】
当業者であれば理解されるように、化学療法剤の適切な用量は、該化学療法剤が、単独か、または他の化学療法剤と組み合わせて投与されている臨床治療において既に採用されるものと近似する。用量の変動は、治療される病態に応じて起こる場合が多い。既述のように、ある実施態様では、化学療法剤は、レベルを低下させて投与してもよい。
【0117】
本明細書に記載されるナノ粒子組成物は、個体(例えば、ヒト)に対し、各種のルートから、例えば、非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、経口、吸引、小胞内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、硬膜下腔内、または経皮などのルートを通じて投与することが可能である。例えば、ナノ粒子組成物は、気道の病態を治療するために吸引によって投与することが可能である。本組成物は、呼吸器病態、例えば、肺線維症、閉塞性細気管支炎、肺癌、気管支肺胞癌などを治療するのに使用することが可能である。ある実施態様では、ナノ粒子組成物は静注投与される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物は経口的に投与される。
【0118】
ナノ粒子組成物投与の投与頻度は、併用療法の性質、および治療される特定の疾患に依存する。例示の投与頻度としては、例えば、ただし限定されないが、休薬なしに毎週;毎週で、4週の内3週;3週毎に1週;2週毎に1週;毎週、3週の内2週が挙げられる。さらに表1を参照されたい。
【0119】
ナノ粒子組成物におけるタキサンの用量は、併用治療の性質、および治療される特定の疾患に応じて変動する。用量は、所望の反応、例えば、特定の疾患に対する治療的、または予防的反応をもたらすのに十分でなければならない。ナノ粒子組成物におけるタキサン(ある実施態様では、パクリタキセル)の例示の用量として、例えば、ただし限定されないが、約50mg/m
2、約60mg/m
2、約75mg/m
2、約80mg/m
2、約90mg/m
2、約100mg/m
2、約120mg/m
2、約160mg/m
2、約175mg/m
2、約200mg/m
2、約210mg/m
2、約220mg/m
2、約260mg/m
2、および約300mg/m
2の内のいずれかが挙げられる。例えば、ナノ粒子組成物におけるパクリタキセルの用量は、3週スケジュールで投与する場合、100〜400mg/m
2、または、毎週スケジュールで投与する場合、50〜250mg/m
2の範囲であってもよい。さらに表1を参照されたい。
【0120】
ナノ粒子組成物(例えば、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物、例えば、Abraxane(登録商標))の、他の例示の投与スケジュールとしては、例えば、ただし限定されないが、100mg/m
2、毎週、休薬期間無し;75mg/m
2、毎週、4週の内3週;100mg/m
2、毎週、4週の内3週;125mg/m
2、毎週、4週の内3週;125mg/m
2、毎週、3週の内2週;130mg/m
2、毎週、休薬期間無し;175mg/m
2、2週毎に1週;260mg/m
2、2週毎に1週;260mg/m
2、3週毎に1週;180〜300mg/m
2、3週毎;60〜175mg/m
2、毎週、休薬期間無し、が挙げられる。さらに、タキサン(単独、または併用治療において)は、本明細書に記載されるメトロノーム投与処方にしたがって投与することが可能である。
【0121】
ナノ粒子組成物(例えば、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物、例えば、Abraxane(登録商標))と、他剤との例示の併用投与スケジュールとしては、例えば、ただし限定されないが、125mg/m
2、毎週、3週の内2週、プラス、825mg/m
2Xeloda(登録商標)、毎日が挙げられる。ナノ粒子組成物(例えば、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物、例えば、Abraxane(登録商標))、およびXeloda(登録商標)の用量は、特定の疾患、または治療される患者に応じて変動してよい。用量は、所望の反応、例えば、特定の疾患に対する治療的、または予防的反応をもたらすのに十分でなければならない。併用療法における、ナノ粒子組成物(ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物、例えば、Abraxane(登録商標))の例示の用量として、例えば、ただし限定されないが、約100mg/m
2、約125mg/m
2、約200mg/m
2、および約260mg/m
2の内のいずれかが挙げられる。例えば、ナノ粒子組成物におけるパクリタキセルの用量は、毎週スケジュールで投与する場合休薬期間の有無に拘わらず、50〜300mg/m
2の範囲であってもよい。併用治療におけるXeloda(登録商標)の例示用量として、例えば、ただし限定されないが、約550mg/m
2、約650mg/m
2、約825mg/m
2、約850mg/m
2、約1000mg/m
2、および約1250mg/m
2の内のいずれかが挙げられる。例えば、Xeloda(登録商標)の用量は、毎日スケジュールで投与する場合、休薬期間の有無に拘わらず、500〜2500mg/m
2の範囲であってもよい。
【0122】
ナノ粒子組成物(例えば、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物、例えば、Abraxane(登録商標))と、他剤との例示の併用投与スケジュールとしては、例えば、ただし限定されないが、260mg/m
2、2週毎に1週、プラス、60mg/m
2のアドリアマイシン、および600mg/m
2のシクロフォスファミド、2週毎に1週;220〜340mg/m
2、3週毎に1週、プラス、カルボプラチン、AUC=6、3週毎に1週;100〜150mg/m
2、毎週、プラス、カルボプラチン、AUC=6、3週毎に1週;175mg/m
2、2週毎に1週、プラス、2000mg/m
2、ゲムシタビン、および50mg/m
2のエピルビシン、2週毎に1週;および、75mg/m
2、毎週、4週の内3週、プラス、カルボプラチン、AUC=2、4週の内3週、が挙げられる。
【0123】
ある実施態様では、タキサンのナノ粒子組成物、および化学療法剤は、表1に記載の投与処方の内のいずれかにしたがって投与される。
【0124】
ある実施態様では、表1の列1から35に提示されるように、個体において乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)少なくとも一つの、他の、有効量の化学療法剤を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物および化学療法剤の投与は、表1の列1から35に表示される投与処方のいずれであってもよい。ある実施態様では、個体において転移乳癌を治療する方法であって、表1の列2、4〜8、および10〜15に提示されるように、個体に対し:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物、および、b)少なくとも一つの、他の、有効量の化学療法剤を投与することを含む方法が提供される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物および化学療法剤の投与は、表1の列2、4〜8、および10〜15に示す投与処方のいずれかであってよい。
【0125】
ある実施態様では、表1の列1および16に提示されるように、個体において進行性乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量、およびb)少なくとも一つの、他の、有効量の化学療法剤を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物および化学療法剤の投与は、表1の列1および16に表示される投与処方のいずれであってもよい。ある実施態様では、表1の列3に提示されるように、個体においてステージIV乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)少なくとも一つの、他の、有効量の化学療法剤を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物および化学療法剤の投与は、表1の列3に表示される投与処方であってもよい。
【0126】
ある実施態様では、表1の列18から24に提示されるように、個体に対しアジュバント療法において乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)少なくとも一つの、他の、有効量の化学療法剤を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物および化学療法剤の投与は、表1の列18から24に表示される投与処方のいずれであってもよい。
【0127】
ある実施態様では、表1の列25から35に提示されるように、個体に対しネオアジュバント療法において乳癌を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)少なくとも一つの、他の、有効量の化学療法剤を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物および化学療法剤の投与は、表1の列25から35に表示される投与処方であってもよい。
【0128】
ある実施態様では、表1の列36から39に提示されるように、個体において固体腫瘍(進行固体腫瘍を含む)を治療する方法であって、個体に対し:a)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)少なくとも一つの、他の、有効量の化学療法剤を投与することを含む、方法が提供される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物および化学療法剤の投与は、表1の列36から39に表示される投与処方のいずれであってもよい。
【0134】
【表1-6】
本明細書で用いる(例えば、表1において)ABXは、Abraxane(登録商標);GW572016は、ラパチニブ;Xelは、カペシタビン、またはXeloda(登録商標)を指し;ベバシズマブは、Avastin(登録商標)とも呼ばれ;トラスツズマブは、Herceptin(登録商標)とも呼ばれ;ペムトレキセドは、Alimta(登録商標)とも呼ばれ;セツキシマブは、Erbitux(登録商標)とも呼ばれ;ゲフィチニブは、Iressa(登録商標)とも呼ばれ;FECは、5−フルオロウラシル、エピルビシン、およびシクロフォスファミドの組み合わせを指し;ACは、アドリアマイシン・プラス・シクロフォスファミドの組み合わせを指し;TACは、FDA承認の、アジュバント乳癌処方を指し;RAD001は、ラパマイシンの誘導体を指す。
【0135】
本明細書で用いる(例えば、表1において)AUCは、曲線下面積を指し;q4wkは、4週毎投与を指し;q3wkは、3週毎投与を指し、q2wkは、2週毎投与を指し;qwkは、毎週投与を指し;qwk×3/4は、3週間毎週投与で、4週目休薬を指し;qwk×2/3は、2週間毎週投与で、3週目休薬を指す。
放射線治療および手術との併用治療
別の局面で、本発明は、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、タキサン(特に、タキサンを含むナノ粒子)およびキャリヤータンパクの投与を含む第1治療、および、放射線照射および/または手術を含む第2治療を含む方法を提供する。
【0136】
ある実施態様では、ホルモン受容体状態は、一つ以上のホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体について低い。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体の両方について低い場合、本療法に対してより反応的である可能性が高い。ある実施態様では、ホルモン受容体状態は、一つ以上のホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体(ER)、またはプロゲステロン受容体(PgR)を発現しない(すなわち、それに対して陰性である)。ある実施態様では、乳癌組織のホルモン受容体状態は、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PgR)の両方を発現しない(すなわち、それに対して陰性である)。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体の両方について陰性である場合、本療法に対してより反応的である可能性が高い。ある実施態様では、個体は、エストロゲン受容体か、プロゲステロン受容体のどちらかを発現する(すなわち、それに対して陽性である)。ある実施態様では、個体は、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体の両方を発現する(すなわち、それに対して陽性である)。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体について陽性である場合、本療法に対してより反応性が低い可能性が高い。
【0137】
ある実施態様では、乳癌組織はさらに、HER2を発現する(HER2+)。ある実施態様では、乳癌組織はさらに、HER2を発現しない(HER2−)。
【0138】
ある実施態様では、本方法は:a)個体に対し、有効量のタキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含む組成物を投与することを含む、第1治療、およびb)放射線治療、手術、またはそれらの組み合わせを含む、第2治療を含む。ある実施態様では、タキサンは、キャリヤータンパク(例えば、アルブミン)によってコートされる。ある実施態様では、第2治療は放射線治療である。ある実施態様では、第2治療は手術である。
【0139】
ある実施態様では、本方法は:a)個体に対し、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む、第1治療、およびb)放射線治療、手術、またはそれらの組み合わせを含む、第2治療を含む。ある実施態様では、第2治療は放射線治療である。ある実施態様では、第2治療は手術である。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有する。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物は、界面活性剤(例えば、Cremophor)を事実上含まない(例えば、非含有)。ある実施態様では、該組成物における、アルブミンのパクリタキセルに対する重量比は、約18:1以下、例えば、約9:1以下である。ある実施態様では、パクリタキセルは、アルブミンによってコートされる。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、このパクリタキセル/アルブミン組成物は、界面活性剤(例えば、Cremophor)を事実上含まない(例えば、非含有)。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、パクリタキセルは、アルブミンによってコートされる。ある実施態様では、ナノ粒子組成物はAbraxane(登録商標)である。
【0140】
ナノ粒子組成物の投与は、放射線照射および/または手術の前でも、放射線照射および/または手術の後でも、または放射線照射および/または手術と並行してもよい。例えば、ナノ粒子組成物の投与は、数分から数週の範囲の間隔で、放射線照射および/または手術に先行または追随してもよい。ある実施態様では、第1治療と第2治療の間の期間は、タキサンおよび放射線照射/手術が、細胞に対し依然として有利な併用効果を及ぼすことが可能であるように選ばれる。例えば、ナノ粒子組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)は、放射線照射および/または手術よりも、約1、約3、約6、約9、約12、約18、約24、約48、約60、約72、約84、約96、約108、約120時間の内のいずれか未満だけ、前に投与されてもよい。ある実施態様では、ナノ粒子組成物は、放射線照射および/または手術よりも、約9時間未満前に投与される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物は、放射線照射および/または手術よりも、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10日の内のいずれか日未満前に投与される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)は、放射線照射および/または手術よりも、約1、約3、約6、約9、約12、約18、約24、約48、約60、約72、約84、約96、約108、または約120時間の内のいずれか未満だけ、後に投与される。ある実施態様では、治療のための期間を著明に延長すること、二つの治療の間に数日から数週が経過するように延長することが望ましい場合がある。
【0141】
本発明において考慮の対象とされる放射線照射としては、例えば、ガンマ線、X線(外部ビーム)、および腫瘍細胞に対して向けられる放射性同位元素の指向性送達が挙げられる。他の形のDNA損傷因子、例えば、マイクロウェーブ、およびUV被爆も考慮の対象とされる。放射線照射は、単一用量として与えてもよいし、用量分割スケジュールにしたがって、一連の、小用量として与えてもよい。本発明において考慮の対象とされる照射量は、約1から約100Gyの範囲を有し、例えば、約5から約80、約10から約50Gy、または約10Gyなどである。全用量を、分割処方として与えてもよい。例えば、処方は、2Gyの、分割された個別用量を含んでもよい。放射性同位元素の用量範囲は大きく変動するが、同位元素の半減期、および照射される放射線の強度およびタイプに依存する。
【0142】
放射線照射が、放射性同位元素の使用を含む場合、該同位元素は、放射性核種を標的組織に運ぶ、標的剤、例えば、治療用抗体に接合されてもよい。適切な放射性同位元素としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、アスタチン
211、炭素
14、クロム
51、塩素
36、鉄
57、コバルト
58、銅
67、Eu
152、ガリウム
67、水素
3、ヨウ素
123、ヨウ素
131、インジウム
111、鉄
59、燐
32、レニウム
186、セレン
75、硫黄
35、テクネチウム
99m、および/またはイットリウム
90が挙げられる。
【0143】
ある実施態様では、同程度の治療を実現するのに必要な、ナノ粒子組成物におけるタキサン(例えば、パクリタキセル)の通常用量を、少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%以上の内のいずれか低下させるのに十分な放射線照射が投与される。ある実施態様では、同程度の治療を実現するのに必要な、放射線照射の通常用量を、少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%以上の内のいずれか低下させるのに十分な、ナノ粒子組成物におけるタキサン(例えば、パクリタキセル)が投与される。ある実施態様では、ナノ粒子組成物におけるタキサンの用量および放射線照射の用量は、それぞれが単独で投与される場合の、対応通常用量に比べると低下する。
【0144】
ある実施態様では、ナノ粒子組成物の投与、および放射線照射の併用は、超加算効果を産み出す。ある実施態様では、ナノ粒子組成物におけるタキサン(例えば、パクリタキセル)は、90mg/kgの用量で1回投与され、放射線照射は、毎日80Gyで5回投与される。
【0145】
本明細書に記載される手術は、癌組織の全てまたは一部が物理的に除去、摘出、および/または破壊される切除を含む。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍切除の外、手術による治療は、レーザー手術、低温手術、電気外科、顕微鏡手術(Mohs手術)を含む。表層手術、前癌状態、または正常組織の除去も考慮の対象とされる。
【0146】
放射線照射および/または手術は、化学療法剤の投与に加えて実行してもよい。例えば、個体に先ず、タキサン含有ナノ粒子組成物、および少なくとも一つの、他の化学療法剤を投与し、次いで、放射線治療および/または手術を施してもよい。それとは別に、個体を先ず、放射線治療および/または手術で治療し、次いで、ナノ粒子組成物、および少なくとも一つの、他の化学療法剤を投与してもよい。他の組み合わせも考慮の対象とされる。
【0147】
化学療法剤の投与と組み合わせて上に開示される、ナノ粒子組成物の投与は、放射線治療および/または手術と組み合わされるものに対しても同様に適用が可能である。
【0148】
ある実施態様では、本発明は、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づく乳癌治療法において使用される、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリヤータンパクを含むナノ粒子を含む製薬組成物を提供し、ここに、使用は、放射線治療、手術、またはそれらの組み合わせを含む第2治療を含む。
メトロノーム治療
本発明は、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づく乳癌治療法のための、メトロノーム治療処方を提供する。メトロノーム投与処方に基づいて、個体に対し、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、またはオルタタキセル)およびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供される。本方法は、治療法、発症遅延、および、本明細書に記載される、その他の背景および構成にも適用が可能である。
【0149】
ある実施態様では、ホルモン受容体状態は、一つ以上のホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体について低い。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体の両方について低い場合、本療法に対してより反応的である可能性が高い。ある実施態様では、ホルモン受容体状態は、一つ以上のホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体(ER)、またはプロゲステロン受容体(PgR)を発現しない(すなわち、それに対して陰性である)。ある実施態様では、乳癌組織のホルモン受容体状態は、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PgR)の両方を発現しない(すなわち、それに対して陰性である)。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体の両方について陰性である場合、本療法に対してより反応的である可能性が高い。ある実施態様では、個体は、エストロゲン受容体か、プロゲステロン受容体のどちらかを発現する(すなわち、それに対して陽性である)。ある実施態様では、個体は、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体の両方を発現する(すなわち、それに対して陽性である)。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体について陽性である場合、本療法に対してより反応性が低い可能性が高い。
【0150】
ある実施態様では、乳癌組織はさらに、HER2を発現する(HER2+)。ある実施態様では、乳癌組織はさらに、HER2を発現しない(HER2−)。
【0151】
本明細書で用いる「メトロノーム投与処方」とは、休薬期間を設ける従来型スケジュール(以後、「標準的MTDスケジュール」または「標準的MTD処方」と呼ぶ)による既定の最大許容用量よりも低い用量における、長い休薬期間無しの、タキサンの高頻度投与を指す。メトロノーム投与でも、ある期間において、標準的MTDスケジュールを通じて投与されるものと同じか、より低いか、またはより高い、蓄積用量が、最終的に投与される場合がある。ある場合、これは、時間枠および/または投与処方が実行される頻度を延長し、一方で、各投与において投与される量を下げることによって実現される。一般に、本発明のメトロノーム投与処方を通じて投与されるタキサンは、個体によってよりよく耐容される。メトロノーム投与はさらに、維持投与または慢性投与とも呼ばれる。
【0152】
ある実施態様では、タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、この方法では、該ナノ粒子組成物は、少なくとも1ヶ月の期間に亘って投与され、各投与間の間隔は、約1週以下であり、各投与におけるタキサンの用量は、伝統的投与処方による、その最大許容用量の約0.25%から約25%である。ある実施態様では、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、この方法では、該ナノ粒子組成物は、少なくとも1ヶ月の期間に亘って投与され、各投与間の間隔は、約1週以下であり、各投与におけるタキサンの用量は、伝統的投与処方による、その最大許容用量の約0.25%から約25%である。
【0153】
ある実施態様では、投与当たりの、ナノ粒子組成物におけるタキサン(例えば、パクリタキセル)の投与量は、任意の伝統的投与スケジュールによる同じ処方における同じタキサン(例えば、パクリタキセル)の、約1%、約2%、約3&、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約18%、約20%、約22%、約24%、または約25%の内のいずれか未満である。伝統的投与スケジュールとは、一般に臨床背景において定められる投与スケジュールを指す。例えば、Abraxane(登録商標)の伝統的投与スケジュールは、3週スケジュール、すなわち、該組成物の毎3週(3週置き)の投与である。
【0154】
ある実施態様では、投与当たりの、タキサン(例えば、パクリタキセル)の投与量は、対応するMTD値の約0.25%から約25%、例えば、対応するMTD値の約0.25%から約20%、約0.25%から約15%、約0.25%から約10%、約0.25%から約20%、および約0.25%から約25%の内のいずれかを含む。伝統的投与スケジュールによるタキサンのMTD値は、当業者であれば簡単に決定することが可能である。例えば、Abraxane(登録商標)を伝統的3週投与スケジュールにしたがって投与する場合、MTD値は、約300mg/m
2である。
【0155】
ある実施態様では、タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、この方法では、該ナノ粒子組成物は、少なくとも1ヶ月の期間に亘って投与され、各投与間の間隔は、約1週以下であり、各投与におけるタキサンの用量は、約0.25mg/m
2から約25mg/m
2である。ある実施態様では、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、この方法では、該ナノ粒子組成物は、少なくとも1ヶ月の期間に亘って投与され、各投与間の間隔は、約1週以下であり、各投与におけるタキサンの用量は、約0.25mg/m
2から約25mg/m
2である。
【0156】
ある実施態様では、各投与におけるタキサン(例えば、パクリタキセル)の用量は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約18、約20、約22、約25、および約30mg/m
2の内のいずれか未満である。例えば、タキサン(例えば、パクリタキセル)の用量は、約0.25mg/m
2から約30mg/m
2、約0.25mg/m
2から約25mg/m
2、約0.25mg/m
2から約15mg/m
2、約0.25mg/m
2から約10mg/m
2、約0.25mg/m
2から約5mg/m
2である。
【0157】
ナノ粒子組成物におけるタキサン(例えば、パクリタキセル)の投与頻度は、例えば、ただしこれらに限定されないが、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、または毎日の内の、少なくともいずれかである。通常、各投与間の間隔は、1週未満、例えば、約6、約5、約4、約3、約2、または1日のいずれか未満である。ある実施態様では、各投与間の間隔は一定である。例えば、投与は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、または毎週実行してもよい。ある実施態様では、投与は、1日2回、1日3回、またはさらに高頻度に実行することが可能である。
【0158】
本明細書に記載されるメトロノーム投与処方は、長期に亘って延長すること、例えば、約1ヶ月から約3年に延長することが可能である。例えば、投与処方は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約18、約24、約30、および約36ヶ月の内のいずれかの期間に延長することが可能である。一般に、投与スケジュールに休薬期間は無い。
【0159】
メトロノーム処方によって投与される、タキサン(例えば、パクリタキセル)の累積用量は、同じ期間に、標準的MTD投与スケジュールにしたがって投与されるタキサンの累積用量よりも高い場合がある。ある実施態様では、メトロノーム処方によって投与される、タキサン(例えば、パクリタキセル)の累積用量は、同じ期間に、標準的MTD投与スケジュールにしたがって投与されるタキサンの累積用量以下である。
【0160】
本明細書に提示される教示は、単に例示のためだけであり、メトロノーム投与処方は、本明細書に提示される教示、および、個別の標準的MTDスケジュールにしたがって通例にならって設計が可能であり、これらの実験において使用されるメトロノーム投与処方は、最適メトロノーム投与処方に到達するために、標準的MTDスケジュールに対して行う、投与間隔および持続時間における可能な変化の一例として単に役立てるだけのものであることを理解しなければならない。
【0161】
本明細書に記載されるメトロノーム投与処方は、単独で、増殖性疾患の治療として用いてもよいし、あるいは、併用治療背景において、例えば、本明細書に記載される併用治療として実行してもよい。ある実施態様では、メトロノーム治療投与処方は、標準的MTD処方にしたがって投与される、他の既定の治療と組み合わせて、または関連させて使用してもよい。「組み合わせ、または関連させて」とは、本発明のメトロノーム投与処方は、既定の治療の標準的MTD処方と同時に実行してもよいし、または、誘起治療によって個体に付与される利益を維持するための誘起治療コース、すなわち、腫瘍増殖を抑制しながら、他方では、個体の健康、または、個体の、次の誘起治療コースに対する耐久力を不当に脅かすことのないように行われる治療コースの合間に実行してもよい。例えば、メトロノーム投与処方は、MTD化学療法の最初の、短いコースの後に採用されてもよい。
【0162】
本明細書に記載されるメトロノーム投与処方にしたがって投与されるナノ粒子組成物は、個体(例えば、ヒト)に対し、各種のルートから、例えば、非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、肺内、経口、吸引、小胞内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、硬膜下腔内、または経皮などのルートを通じて投与することが可能である。例えば、ナノ粒子組成物は、気道の病態を治療するために吸引によって投与することが可能である。本組成物は、呼吸器病態、例えば、肺線維症、閉塞性気管支炎、肺癌、気管支肺胞癌などを治療するのに使用することが可能である。ある実施態様では、ナノ粒子組成物は経口的に投与される。
【0163】
いくつかの例示の実施態様が下記に提示される。
【0164】
ある実施態様では、タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、この方法では、該ナノ粒子組成物は、少なくとも1ヶ月の期間に亘って投与され、各投与間の間隔は、約1週以下であり、各投与におけるタキサンの用量は、伝統的投与処方による、その最大許容用量の約0.25%から約25%である。ある実施態様では、タキサンは、キャリヤータンパク(例えば、アルブミン)によってコートされる。ある実施態様では、投与当たりの、タキサンの用量は、最大許容用量の、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約18%、約20%、約22%、約24%、または約25%の内のいずれか未満である。ある実施態様では、タキサンは、週に、1x、2x、3x、4x、5x、6x、7x(すなわち、毎日)投与される。ある実施態様では、各投与間の間隔は、約7日、約6日、約5日、約4日、約3日、約2日、および約1日のいずれか未満である。ある実施態様では、タキサンは、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約18、約24、約30、および約36ヶ月の内の、少なくともいずれかの期間投与される。
【0165】
ある実施態様では、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、この方法では、該ナノ粒子組成物は、少なくとも1ヶ月の期間に亘って投与され、各投与間の間隔は、約1週以下であり、各投与におけるタキサンの用量は、伝統的投与処方による、その最大許容用量の約0.25%から約25%である。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有する。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物は、界面活性剤(例えば、Cremophor)を事実上含まない(例えば、非含有)。ある実施態様では、該組成物における、アルブミンのパクリタキセルに対する重量比は、約18:1以下、例えば、約9:1以下である。ある実施態様では、パクリタキセルは、アルブミンによってコートされる。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、このパクリタキセル/アルブミン組成物は、界面活性剤(例えば、Cremophor)を事実上含まない(例えば、非含有)。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、パクリタキセルは、アルブミンによってコートされる。ある実施態様では、ナノ粒子組成物はAbraxane(登録商標)である。
【0166】
ある実施態様では、タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、この方法では、該ナノ粒子組成物は、少なくとも1ヶ月の期間に亘って投与され、各投与間の間隔は、約1週以下であり、各投与におけるタキサンの用量は、約0.25mg/m
2から約25mg/m
2である。ある実施態様では、タキサンは、キャリヤータンパク(例えば、アルブミン)によってコートされる。ある実施態様では、各投与におけるタキサンの用量は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約18、約20、約22、および約25mg/m
2の内のいずれか未満である。ある実施態様では、タキサンは、週に、約1x、約2x、約3x、約4x、約5x、約6x、約7x(すなわち、毎日)の内の少なくともいずれかにおいて投与される。ある実施態様では、各投与間の間隔は、約7日、約6日、約5日、約4日、約3日、約2日、および約1日のいずれか未満である。ある実施態様では、タキサンは、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約18、約24、約30、および約36ヶ月の内の、少なくともいずれかの期間投与される。
【0167】
ある実施態様では、パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、この方法では、該ナノ粒子組成物は、少なくとも1ヶ月の期間に亘って投与され、各投与間の間隔は、約1週以下であり、各投与におけるタキサンの用量は、約0.25mg/m
2から約25mg/m
2である。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有する。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物は、界面活性剤(例えば、Cremophor)を事実上含まない(例えば、非含有)。ある実施態様では、該組成物における、アルブミンのパクリタキセルに対する重量比は、約18:1以下、例えば、約9:1以下である。ある実施態様では、パクリタキセルは、アルブミンによってコートされる。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、このパクリタキセル/アルブミン組成物は、界面活性剤(例えば、Cremophor)を事実上含まない(例えば、非含有)。ある実施態様では、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、パクリタキセルは、アルブミンによってコートされる。ある実施態様では、ナノ粒子組成物はAbraxane(登録商標)である。
【0168】
ある実施態様では、Abraxane(登録商標)(または、他のパクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物)は、毎日、約3mg/kgから約10mg/kgの用量で投与される。ある実施態様では、Abraxane(登録商標)は、毎日、約6mg/kgから約10mg/kgの用量で投与される。ある実施態様では、Abraxane(登録商標)は、毎日、約6mg/kgの用量で投与される。Abraxane(登録商標)は、毎日、約3mg/kgの用量で投与される。
【0169】
本発明はさらに、本明細書に記載されるメトロノーム処方(単数または複数)に使用される組成物を提供する。ある実施態様では、タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、組成物は、メトロノーム投与処方、例えば、本明細書に記載される投与処方にしたがって個体に対して投与される。
本発明の他の局面
別の局面では、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、またはオルタタキセルなど)およびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む方法が提供される。ある実施態様では、ホルモン受容体状態(例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づいて乳癌を治療する方法であって、オルタタキセルおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0170】
ある実施態様では、乳癌を治療する方法であって、パクリタキセルを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む方法であって、この方法では、該ナノ粒子組成物は、表2に記載される投与処方のいずれかにしたがって投与される。ある実施態様では、この癌は、タキサン難治性の転移乳癌である。
【0171】
【表2】
ナノ粒子組成物
本明細書に記載されるナノ粒子組成物は、タキサン(例えば、パクリタキセル)、およびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)(種々の実施態様では、から事実上成る)を含む。水溶性に乏しい薬剤(例えば、タキサン)のナノ粒子は、例えば、米国特許第5,916,596;6,506,405;および6,537,579号に開示され、さらに、米国特許出願公開第2005/0004002A1に開示される。下記に提示される記述は、タキサンに対して特異的であるが、同じことが、他の薬剤、例えば、ラパマイシン、17−AAG、およびチオコルヒチン二量体にも適用されることを理解しなければならない。
【0172】
ある実施態様では、本組成物は、約1000ナノメートル(nm)以下、例えば、約900、約800、約700、約600、約500、約400、約300、約200、および約100nm以下の平均直径を有するナノ粒子を含む。ある実施態様では、ナノ粒子の平均直径は、約200nm以下である。ある実施態様では、ナノ粒子の平均直径は、約150nm以下である。ある実施態様では、ナノ粒子の平均直径は、約100nm以下である。ある実施態様では、ナノ粒子の平均直径は、約20から約200nmである。ある実施態様では、ナノ粒子の平均直径は、約40から約400nmである。ある実施態様では、ナノ粒子は、滅菌的−ろ過可能である。
【0173】
本発明に記載されるナノ粒子は、乾燥処方として存在してもよいし(例えば、凍結乾燥組成物)、または、生物適合性媒体に縣濁させてもよい。適切な生物適合性媒体としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、水、緩衝化水性媒体、生理的食塩水、緩衝化生理的食塩水、必要に応じて緩衝化されるアミノ酸液、必要に応じて緩衝化されるタンパク液、必要に応じて緩衝化される糖液、必要に応じて緩衝化されるビタミン液、必要に応じて緩衝化される合成ポリマー液、脂質含有乳液などが挙げられる。
【0174】
「タンパク」という用語は、任意の長さ(完全長または断片を含む)の、ポリペプチド、またはアミノ酸のポリマーを指し、該ポリペプチドは、直鎖でも、分枝鎖であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、および/または、非アミノ酸によって中断されてもよい。本用語はさらに、自然に、または人手によって修飾される:例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作または修飾によって変えられる、アミノ酸ポリマーを包含する。さらに本用語に含まれるものとして、例えば、一つ以上のアミノ酸類縁体(例えば、非天然アミノ酸など)、および当該技術分野で公知の、その他の修飾体を含むポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載されるタンパクは、天然産、すなわち、天然供給源(例えば、血液)から得られるか、または誘導されるものであってもよいが、合成(例えば、化学的合成、または組み換えDNA技術による合成)されてもよい。
【0175】
適切な担体タンパクの例としては、通常、血液または血漿の中に見出されるタンパクであって、例えば、ただしこれらに限定されないが、アルブミン、免疫グロブリン、例えば、IgA、脂質タンパク、アポリポタンパクB、アルファ酸糖タンパク、ベータ−2−マクログロブリン、チログロブリン、トランスフェリン、フィブロネクチン、因子VII、因子VIII、因子IX、因子Xなどが挙げられる。ある実施態様では、キャリヤータンパクは、非血液タンパク、例えば、カゼイン、α−ラクトアルブミン、およびβ−ラクトアルブミンである。キャリヤータンパクは、天然起源のものであってもよいし、合成的に調製されてもよい。ある実施態様では、薬学的に受容可能な担体は、アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミンを含む。ヒト血清アルブミン(HSA)は、きわめて可溶な、M
r65Kの、顆粒状タンパクであり、585個のアミノ酸から成る。HSAは、血漿においてもっとも豊富なタンパクであり、ヒト血漿のコロイド浸透圧の70−80%を占める。HSAのアミノ酸配列は、合計17個のジスルフィド架橋、1個の遊離チオール(Cys34)、および1個のトリプトファン(Trp214)を含む。HSA溶液の静注投与は、循環血液量減少性ショックの予防と治療において(例えば、Tullis,JAMA 237:355−360,460−463(1977))および、Houser et al.,Surgery,Gynecology and Obsterics,150:811−816(1980)を参照)、かつ、新生児高ビリルビン血症の治療における交換輸血関連において(例えば、Finlayson,Seminars in Thrombosis and Hemostasis,6:85−120(1980)を参照)適応することが示されている。他のアルブミン、例えば、ウシ血清アルブミンも考慮の対象とされる。このような非ヒトアルブミンの使用は、例えば、非ヒト哺乳類、例えば、獣医学(例えば、家庭内ペット、および農業関係)におけるこれらの組成物の使用背景において適切であると考えられる。
【0176】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、複数の疎水性結合部位(HSAの内因性リガンドである脂肪酸に対し、合計8個)を持ち、様々の組のタキサンに、特に、中性、および陰性荷電の疎水性化合物に結合する(Goodman et al.,The Pharmacological Basis of Therapeutics,9th ed,McGraw−Hill New York(1996))。二つの高親和性結合部位が、HSAのサブドメインIIAおよびIIIAに仮定されている。これらのサブドメインは、リガンドの極性特徴のための付着点として機能する表面近くに、荷電性のリシンおよびアルギニンを有する、高度に延長した疎水性ポケットである(例えば、Fehske et al.,Biochem.Pharmacol.30:687−92(198a),Vorum, Dan.Med.Bull.46:379−99(1999),Kragh−Hansen,Dan.Med.Bull.1441:131−40(1990),Curry et al.,Nat.Struct.Biol.5:827−35(1998),Sugio et al.,Protein Eng.12:439−46(1999),He et al.,Nature 358:209−15(199b),および、Carter et al.,Adv.Protein.Chem.45:153−203(1994)を参照されたい)。パクリタキセルおよびプロポフォルは、HSAに結合することが示されている(例えば、Paal et al.,Eur.J.Biochem.268(7):2187−91(200a),Purcell et al.,Biochim.Biophys.Acta 1478(a):61−8(2000),Altmayer et al.,Arzneimittelforschung 45:1053−6(1995)、および、Garrido et al.,Rev.Esp.Anestestiol.Reanim.41:308−12(1994)を参照されたい)。さらに、ドセタキセルは、ヒトの血漿タンパクに結合することが示されている(例えば、Urien et al.,Invest.New Drugs 14(b):147−51(1996)を参照されたい)。
【0177】
本組成物におけるキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)の役割は、一般に、タキサンのキャリヤーとなること、すなわち、本組成物におけるキャリヤータンパクは、キャリヤータンパクを含まない組成物と比べて、水性媒体においてタキサンをより容易に縣濁可能とし、または、その縣濁液の維持を助ける。これは、タキサンの可溶化のために有毒な溶媒(または、界面活性剤)を使用することを回避させ、そうすることによって、個体(例えば、ヒト)の中にタキサンが投与されたことによって起こる、一つ以上の副作用を抑えることが可能となる。したがって、ある実施態様では、本明細書に記載される組成物は、界面活性剤、例えば、Cremophor(Cremophor ER(登録商標)(BASF)を含む)を事実上含まない(例えば、非含有)。ある実施態様では、本明細書に記載される組成物は、界面活性剤を事実上含まない(例えば、非含有)。組成物は、該組成物におけるCremophorまたは界面活性剤の量が、該組成物が個体に対し投与された場合、個体において一つ以上の副作用(単数または複数)を引き起こすのに十分でない時、「事実上Cremophorを含まない」か、または、「事実上界面活性物質を含まない」。
【0178】
本明細書に記載される組成物中のキャリヤータンパクの量は、該組成物中の他の成分に応じて変動する。ある実施態様では、本組成物は、タキサンを、水性縣濁液において、例えば、安定なコロイド縣濁液(例えば、安定な、ナノ粒子縣濁液)として安定化させるのに十分な量としてキャリヤータンパクを含む。ある実施態様では、キャリヤータンパクは、水性媒体におけるタキサンの沈降速度を下げる量として存在する。粒子含有組成物では、キャリヤータンパクの量はさらに、タキサンナノ粒子のサイズおよび密度に依存する。
【0179】
タキサンは、それが、水性媒体の中に、長期間、例えば、約0.1、約0.2、約0.25、約0.5、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約24、約36、約48、約60、または約72時間、縣濁を(例えば、目に見える沈降または沈殿無く)維持する時、水性縣濁液として「安定化」される。この縣濁液は、一般に、しかし必ずしもそうであるとは限らないが、個体(例えば、ヒト)に対する投与に適切である。縣濁液の安定性は、一般に(しかし必ずしもそうとは限らないが)、保存温度(例えば、室温(例えば、20−25℃)または冷蔵条件(例えば、4℃))で評価される。例えば、縣濁液は、該縣濁液調製の約15分後、肉眼で見て、または1000倍の光学顕微鏡で覗いて見て、綿状化または粒子凝集を示さないのであれば、保存温度において安定である。安定性はさらに、加速試験条件下に、例えば、約40℃よりも高い温度で評価することも可能である。
【0180】
ある実施態様では、キャリヤータンパクは、タキサンを、ある濃度において、水性縣濁液において安定化させるのに十分な量として存在する。例えば、組成物におけるタキサンの濃度は、約0.1から約100mg/mlであり、例えば、約0.1から約50mg/ml、約0.1から約20mg/ml、約1から約10mg/ml、約2mg/mlから約8mg/ml、約4から約6mg/ml、約5mg/mlのいずれかである。ある実施態様では、組成物におけるタキサンの濃度は、約1.3mg/ml、約1.5mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約4mg/ml、約5mg/ml、約6mg/ml、約7mg/ml、約8mg/ml、約9mg/ml、約10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約40mg/ml、および約50mg/mlの内の、少なくともいずれかである。ある実施態様では、キャリヤータンパクは、界面活性剤の使用を回避させる量として存在し、そのため、本組成物は、界面活性剤(例えば、Cremophor)を含まないか、事実上含まない。
【0181】
ある実施態様では、液状の組成物は、約0.1%から約50%(w/v)(例えば、約0.5%(w/v)、約5%(w/v)、約10%(w/v)、約15%(w/v)、約20%(w/v)、約30%(w/v)、約40%(w/v)、または50%(w/v))のキャリヤータンパクを含む。ある実施態様では、液状の組成物は、約0.5%から約5%(w/v)のキャリヤータンパクを含む。
【0182】
ある実施態様では、ナノ粒子組成物における、キャリヤータンパク、例えば、アルブミンの、タキサンに対する重量比は、十分量のタキサンが、細胞に結合するか、または、細胞によって運ばれるように選ばれる。キャリヤータンパクのタキサンに対する重量比は、種々のキャリヤータンパクとタキサンの組み合わせに対して最適化されなければならないが、一般に、キャリヤータンパク、例えば、アルブミンの、タキサンに対する重量比(w/w)は、約0.01:1から約100:1、約0.02:1から約50:1、約0.05:1から約20:1、約0.1:1から約20:1、約1:1から約18:1、約2:1から約15:1、約3:1から約12:1、約4:1から約10:1、約5:1から約9:1、または約9:1である。ある実施態様では、キャリヤータンパクの、タキサンに対する重量比は、約18:1以下、約15:1以下、約14:1以下、約13:1以下、約12:1以下、約11:1以下、約10:1以下、約9:1以下、約8:1以下、約7:1以下、約6:1以下、約5:1以下、約4:1以下、および約3:1以下のいずれかである。
【0183】
ある実施態様では、キャリヤータンパクは、組成物を、個体(例えば、ヒト)に対し、著明な副作用無しに投与することを可能とする。ある実施態様では、キャリヤータンパク(例えば、アルブミン)は、ヒトに対するタキサン投与の、一つ以上の副作用を抑えるのに有効な量として存在する。「タキサン投与の、一つ以上の副作用を抑える」という用語は、タキサンによって引き起こされる一つ以上の有害作用、および送達ベヒクル(例えば、タキサンを注入に相応しいものとする溶媒)によって引き起こされる副作用の軽減、緩和、除去、または回避を指す。このような副作用としては、例えば、骨髄機能抑制、神経毒性、過敏症、炎症、静脈過敏、静脈炎、疼痛、皮膚過敏、抹消ニューロパチー、好中球減少発熱、アナフィラキシー反応、静脈血栓症、血管外溢出、およびそれらの組み合わせが挙げられる。しかしながら、これらの副作用は、単に例示的なものであって、タキサンに関連する他の副作用、または副作用の組み合わせも軽減することが可能である。
【0184】
ある実施態様では、本組成物はAbraxane(登録商標)を含む。Abraxane(登録商標)は、ヒトアルブミンUSPによって安定化されるパクリタキセル処方であり、これは、直接注入が可能な生理的溶液の中に分散させることが可能である。適切な水性媒体、例えば、0.9%塩化ナトリウム注射液、または5%デキストロース注射液の中に分散されると、Abraxane(登録商標)は、安定な、パクリタキセルの、コロイド縣濁液を形成する。このコロイド縣濁液におけるナノ粒子の平均粒径は、約130ナノメートルである。HSAは、水に簡単に可溶であるから、Abraxane(登録商標)は、希釈液(0.1mg/mlパクリタキセル)から濃縮液(20mg/mlパクリタキセル)に亘る、広範囲の濃度、例えば、約2mg/mlから約8mg/mlまで、約5mg/mlに再構成することが可能である。
【0185】
ナノ粒子組成物の製法は、当該技術分野で公知である。例えば、タキサン(例えば、パクリタキセル)およびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子は、高せん断力条件下(例えば、超音波処理、高圧ホモジェニゼーションなど)に調製することが可能である。これらの方法は、例えば、米国特許第5,916,596;6,506,405;および6,537,579号、さらに、米国特許出願公開第2005/0004002A1号に開示される。
【0186】
簡単に言うと、タキサン(例えば、ドセタキセル)は、有機溶媒に溶解され、この溶液は、ヒトの血清アルブミン溶液に加えられる。この混合物に対し、高圧ホモジェニゼーションを実施する。次に、有機溶媒を蒸発によって除去する。得られた分散液はさらに凍結することが可能である。適切な有機溶媒としては、例えば、ケトン類、エステル類、塩素化溶媒、および、当該技術分野で公知のその他の溶媒が挙げられる。例えば、有機溶媒は、塩化メチレン、およびクロロフォルム/エタノール(例えば、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、または9:aの比を持つ)であってもよい。
ナノ粒子組成物における他の成分
本明細書に記載されるナノ粒子は、他の薬剤、賦形剤、または安定剤を含む組成物の中に存在することも可能である。例えば、ナノ粒子の陰性ゼータ電位を増すことによって安定性を増すために、いくつかの陰性荷電成分を加えてもよい。このような陰性荷電成分としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、グリコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、タウロコール酸、グリコケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸、およびその他から成る胆汁酸の胆汁塩;リン脂質、例えば、レシチン(卵黄)主成分リン脂質で、下記のフォスファチジルコリン類:パルミトイルオレオイルフォスファチジルコリン、パルミトイルリノオレオイルフォスファチジルコリン、ステアロイルリノオレオイルフォスファチジルコリン、ステアロイルオレオイルフォスファチジルコリン、ステアロイルアラキドイルフォスファチジルコリン、およびジパルミトイルフォスファチジルコリンが挙げられる。他のリン脂質、例えば、L−α−ジミリストイルフォスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルフォスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルフォスファチジルコリン(DSPC)、水素添加大豆フォスファチジルコリン(HSPC)、および他の関連化合物。さらに、陰性荷電界面活性剤または乳化剤、例えば、コレステリル硫酸ナトリウムも、添加剤として好適である。
【0187】
ある実施態様では、本組成物は、ヒトへの投与に好適である。ある実施態様では、本組成物は、哺乳動物、例えば、獣医学的背景におけるもの、家庭内ペット、および農業動物への投与に好適である。ナノ粒子組成物については、広く多様な好適な処方がある(例えば、米国特許第5,916,596および6,096,331号を参照)。下記の処方および方法は、単に例示的のものであり、いかなる意味でも限定的ではない。経口投与に好適な処方は、(a)液体溶液、例えば、希釈液、例えば、水、生理的食塩水、またはオレンジジュースに溶解させた、有効量の化合物、(b)それぞれが、固体または顆粒として所定量の活性成分を含む、カプセル、散剤、または錠剤、(c)適切な液体における縣濁液、および(d)適切な乳液から成っていてもよい。錠剤形は、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモでん粉、微細結晶セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、保湿剤、防腐剤、芳香剤、薬理学的に受容可能な賦形剤の内の一つ以上を含んでもよい。ローゼンジ形は、活性成分を香料、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントの中に含み、香剤は、不活性基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアの中に活性成分を含み、乳液、ゲルなどは、活性成分の外に、当該技術分野で公知の賦形剤を含む。
【0188】
適切な担体、賦形剤、および希釈剤の例としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、でん粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶セルロース、ポリビニールピロリドン、セルロース、水、生理的食塩水、シロップ、メチルセルロース、メチル−およびプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油が挙げられる。この処方はさらに、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤および縣濁剤、防腐剤、甘味剤、または芳香剤を含んでもよい。
【0189】
非経口投与に好適な処方としては、例えば、水性および非水性の、等張の、滅菌注射液で、抗酸化剤、バッファー、静菌剤、および、該処方を、意図されるレシピエントの血液と適合させる溶質を含む溶液、および、縣濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および防腐剤を含む、水性および非水性の、滅菌縣濁液が挙げられる。処方は、単位用量、または複数用量密封容器、例えば、アンプルおよびバイアルとして提示してもよいし、注射のために、使用の直前に、滅菌液体賦形剤、例えば、水の添加のみを必要とする、凍結条件において保存してもよい。前述の種類の、滅菌散剤、顆粒、および錠剤からは、即席注射液および縣濁液を調製することが可能である。注射処方は好ましい。
【0190】
ある実施態様では、本組成物は、約4.5から約9.0のpH範囲、例えば、約5.0から約8.0、約6.5から約7.5、および約6.5から約7.0のいずれかの範囲を持つように処方される。ある実施態様では、組成物のpHは、約6以上、例えば、6.5、7、または8(例えば、約8)の内のいずれか以上に処方される。本組成物はさらに、適切な等張性修飾因子、例えば、グリセロールの添加によって血液と等張となるように製造されてもよい。
キット
本発明はさらに、即席法で使用されるキットを提供する。本発明のキットは、乳癌患者のホルモン受容体状態(例えば、腫瘍組織は、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PgR)の両方を発現しない)を特定するための検出手段を含む。ある実施態様では、キットは:(a)乳癌患者のエストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体のホルモン受容体状態を検出するための薬剤;および、(b)タキサンおよびキャリヤータンパクを含むナノ粒子を含む組成物を含む。ある実施態様では、キットは:(a)乳癌患者のエストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体のホルモン受容体状態を検出するための薬剤;および、(b)エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体のホルモン受容体状態に基づく乳癌治療のための治療法に対する予想される反応性を評価するための案内を含み、該治療法は、タキサンおよびキャリヤータンパクを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む。ある実施態様では、案内はさらに、有効量の組成物を患者に投与するための案内を提供する。
【0191】
ある実施態様では、本発明のキットはさらに、タキサン含有ナノ粒子組成物(または、単位剤形、および/または製造品)を含む、一つ以上の容器を含む。ある実施態様では、本発明のキットは、タキサン含有ナノ粒子組成物(または、単位剤形、および/または製造品)、および/または化学療法剤を含み、および、ある実施態様ではさらに、本明細書に記載される方法のいずれかにしたがって使用するための案内を含む。本キットはさらに、治療に好適な個体を選択するための説明を含んでもよい。本発明のキットにおいて支給される案内は、通常、ラベル、または包装挿入体(例えば、キットの中に含まれる紙のシート)であるが、機械の読み取りが可能な案内(例えば、磁気または光学的保存ディスクの上に担持される指令)も受容可能である。ある実施態様では、案内は、ホルモン受容体状態(例えば、腫瘍組織は、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PgR)の両方を発現しない)に基づいて乳癌を治療する方法であって、個体に対し、タキサンおよびキャリヤータンパクを含むナノ粒子を含む組成物の有効量を投与することを含む方法の案内を含む。
【0192】
ある実施態様では、ホルモン受容体状態は、一つ以上のホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体については低い。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の両方について低い場合、治療法に対してより反応的である可能性が高い。ある実施態様では、ホルモン受容体状態は、一つ以上のホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体(ER)、またはプロゲステロン受容体(PgR)を発現しない(すなわち、陰性である)。ある実施態様では、乳癌組織のホルモン受容体状態は、エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PgR)の両方を発現しない(すなわち、陰性である)。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の両方について陰性である場合、治療法に対してより反応的である可能性が高い。ある実施態様では、個体は、エストロゲン受容体か、またはプロゲステロン受容体のいずれかを発現する(すなわち、陽性である)。ある実施態様では、個体は、エストロゲン受容体と、プロゲステロン受容体の両方を発現する(すなわち、陽性である)。ある実施態様では、個体は、ホルモン受容体状態が、エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体について陽性である場合、治療法に対してより反応性が低い可能性が高い。
【0193】
ある実施態様では、乳癌組織はさらに、HER2を発現する(HER2+)。ある実施態様では、乳癌組織はさらに、HER2を発現しない(HER2−)。
【0194】
ある実施態様では、キットは:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物、b)少なくとも一つの、他の、有効量の化学療法剤、および、c)ホルモン受容体状態(エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づく乳癌治療において、該ナノ粒子と該化学療法剤を同時的および/または逐次的に投与するための案内、を含む。ある実施態様では、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびオルタタキセルのいずれかである。ある実施態様では、キットは:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))を含む組成物、b)少なくとも一つの、他の、有効量の化学療法剤、および、c)ホルモン受容体状態(エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づく乳癌治療において、該ナノ粒子と該化学療法剤を同時的および/または逐次的に投与するための案内、を含む。
【0195】
ある実施態様では、キットは:a)タキサンおよびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物、b)少なくとも一つの他の化学療法剤およびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物、および、c)ホルモン受容体状態(エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づく乳癌治療において、該ナノ粒子組成物同士を同時的および/または逐次的に投与するための案内、を含む。ある実施態様では、キットは:a)パクリタキセルおよびアルブミンを含むナノ粒子(例えば、Abraxane(登録商標))を含む組成物、b)少なくとも一つの他の化学療法剤およびキャリヤータンパク(例えば、アルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物、を含むナノ粒子、および、c)ホルモン受容体状態(エストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体を発現しないこと)に基づく乳癌治療において、該ナノ粒子組成物同士を同時的および/または逐次的に投与するための案内、を含む。
【0196】
ナノ粒子および化学療法剤は、別々の容器に納めてもよいし、単一容器に納めてもよい。キットは、一つの、明瞭な組成物を含んでもよいし、二つ以上の組成物であって、一組成物はナノ粒子を含み、一組成物は化学療法剤を含む、複数組成物を含んでもよいことを理解しなければならない。
【0197】
本発明のキットは、包装に好適である。適切な包装法としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、バイアル、瓶、ジャー、屈曲性包装(例えば、密封マイラー、またはプラスチックバッグ)などが挙げられる。キットは、必要に応じて、追加成分、例えば、バッファー、および説明情報を提供してもよい。
【0198】
ナノ粒子組成物の使用に関する案内は、一般に、意図する治療のための、用量、投与スケジュール、および投与ルートに関する情報を含む。容器は、単位用量、バルク包装(例えば、多用量パッケージ)、または、サブユニット用量であってもよい。例えば、個体について、長期間、例えば、1週、2週、3週、4週、6週、8週、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、またはそれ以上に亘って有効治療を実行するのに十分なものとして、本明細書に開示される用量のタキサン(例えば、タキサン)を含むキットが提供されてもよい。キットは、複数の単位用量のタキサンおよび製薬組成物、および、使用案内を含み、薬局、例えば、病院の薬局および調合薬局において、保存、使用するのに十分な量として包装されてもよい。
【0199】
当業者であれば、本発明の範囲および精神の範囲内でいくつかの変動が可能であることを認識するであろう。ここで、本発明は、下記の非限定的実施例を参照しながらさらに詳細に説明される。下記の実施例は、本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例を、いかなる意味でも、本発明の範囲を限定するものと思量してはならない。
【実施例】
【0200】
(実施例1)
局所的進行性乳癌に対する、Abraxane(登録商標)、次いで、5−フルオロウラシル、エピルビシン、シクロフォスファミド(FEC)による、ネオアジュバント化学療法のII相治験
Abraxane(登録商標)は、3週毎スケジュールにおいて、Cremophor系パクリタキセルと比較すると、効力はより大きく、毒性はより好ましい(Gradishar WJ,et al.(2005)J Clin Oncol 23:7794−7803)。Abraxane(登録商標)の毎週投与は、タキサン難治性転移乳癌において、3週毎スケジュールよりも低い毒性を示した(Blum JL,et al.(2004)J Clin Oncol 22:14S,抄録543)。この治験は、局所的に進行した乳癌(LABC)を持つ女性に対し、Abraxane(登録商標)、次いで、5−フルオロウラシル、エピルビシン、およびシクロフォスファミド(FEC)による治療の活性および安全性プロフィールを確定するために設定されたものである。
【0201】
66名のLABC女性に対し、術前に、Abraxane(登録商標)を毎週100mg/m
2で連続12週投与し、次いでFECを3週毎に4サイクル投与した。彼らの乳癌がHER2陰性(HER2−)である場合、FECは、5−フルオロウラシル:500mg/m
2、エピルビシン:100mg/m
2、シクロフォスファミド:500mg/m
2の用量で投与し、これをFEC−100と名づけた。彼らの癌がHER陽性(HER2+)である場合、FECは、5−フルオロウラシル:500mg/m
2、エピルビシン:75mg/m
2、シクロフォスファミド:500mg/m
2の用量で投与した(FEC−75)。彼らは、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))を服用した。トラスツズマブは、HER2+疾患の患者に対し、実験者の指示にしたがって、標準的毎週スケジュールにそってAbraxane(登録商標)およびFEC−75と共時投与された。
【0202】
治験の一次終末点は、FEC治療の完了後における病理的に完全な反応率であった。二次終末点は、Abraxane(登録商標)の完了時点で評価される、完全な臨床反応率、毒性/安全性、進行無しの生存、および完全な生存を含む。
【0203】
患者の年齢中央値は47歳(28−70の範囲)。ステージIIBの疾患が、患者の33%に見られ、ステージIIIAは42%、ステージIIIBは24%であった。腫瘍は、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PgR)を含む、ホルモン受容体状態について評価した。患者の58%は、ERまたはPgR陽性であり、42%は、両受容体について陰性であった。HER2状態を患者について評価した、29%は、HER2+であり、71%は、HER2陰性であった。58名の患者(89.2%)においてプロトコールが完了したが、残りの患者では治療は完了しなかった。全12回のAbraxane(登録商標)投与は、61名の患者に行われた:48名は、12回投与を12週に受け、13名は、12回投与を13−14週に受けた。Abraxane(登録商標)に関する毒性データから、もっとも高頻度の毒性は、下痢、発疹、疲労、悪心、および感覚性ニューロパシーであることが示された。等級4または5の毒性は報告されず、等級3の、好中球欠乏血症が1名だけに報告された。
【0204】
100mg/m
2で毎週、12週間のAbraxaneでは、毒性は極小であるが、活性は確実で、局所進行性乳癌(LABC)患者の32%(21/65)において、臨床的に完全な反応率が達成された。Abraxaneに続くFECの逐次処方は、全ての患者が切除を受け、33%が乳房保存手術を受けたことを考慮すると、よく耐容された。
【0205】
表3に示すように、HER2陽性LABCにおける病理的完全反応(pCR)乳癌率は、トラスツズマブとの共時治療では56%であった。表4に示すように、HER2陰性、ホルモン受容体陰性のLABCにおける、病理的完全反応(pCR)乳癌率は29%(5/17)であった;HER2陰性、HR陽性LABCは10%(3/29)であった。
【0206】
【表3-1】
【0207】
【表3-2】
【0208】
【表4】
Abraxane続いてFECによる治療は、HER2陰性患者、および、トラスツズマブによって共時治療されたHER2陽性患者の両方において高い効力を示した。この治療処方は、HER2陰性患者においても、HER2陽性患者集団においても、ERおよび/またはPgR陽性の患者においてよりも、ERおよびPgR陰性の患者において、有意により有効であった。
【0209】
(実施例2)
3週毎投与Abraxane(登録商標)のIII相試験で見た、Taxol(登録商標)と比較した場合の、Abraxane(登録商標)における反応の向上、および毒性の軽減
好中球減少血症および過敏症発生頻度の有意の低下、ステロイドの事前投与の不要、ニュロパシー持続時間の短縮、輸液時間の短縮、および高用量。
【0210】
転移肺癌(MBC)個体において、ABI−007(Abraxane(登録商標))、すなわち、最初の、生物学的相互作用を持つで、ナノ粒子状アルブミン結合パクリタキセルで、溶媒をまったく含まないものを、Cremophor(登録商標)系パクリタキセル(Taxol(登録商標))と比較した。このIII相試験は、前臨床試験において、Taxol(登録商標)に比べて、ABI−007の方が効力が優れ、毒性が低いことが示されたことを確認するために行った。個体は、ABI−007 260mg/m
2(iv)、30分、3週サイクル、準備投薬無し(n=229)、または、Taxol(登録商標)、175mg/m
2IV、3時間、準備投薬有り(n=225)のいずれかにランダムに割り当てた。ABI−007は、Taxol(登録商標)に比べ、有意に高い反応率(33%対19%;p=0.001)を示し、および腫瘍進行までの時間が有意に長かった(23.0対16.9週;HR=0.75;p=0.006)。ABI−007を服用した個体に、総合生存期間が長くなる傾向があった(65.0対55.7週;p=0.374)。非計画的分析において、ABI−007は、第2次、またはそれ以上の治療として服用した個体において生存を改善した(56.4対46.7週;HR=0.73;p=0.024)。等級4の好中球減少血症の発生頻度は、パクリタキセル用量の方が49%高いにも拘わらず、ABI−007群の方が有意に低かった(9%対22%;p<0.001)。等級3の感覚ニュロパシーは、Taxol(登録商標)群よりも、ABI−007群の方により一般的に見られた(10%対2%;p<0.001)が、管理は容易であり、Taxol(登録商標)の場合(中央値73日)よりも速やかに改善した(中央値22日)。重大な(等級3または4)治療関連性過敏反応は、準備投薬が無く、投薬時間もより短かったにも拘わらず、ABI−007群のいずれの個体にも見られなかった。一方、等級3の過敏反応が、標準的準備投薬をしたにも拘わらず、Taxol(登録商標)群に見られた(胸部痛:2名;アレルギー反応:3名)。プロトコールにしたがって、コルチコステロイドおよび抗ヒスタミン剤は、通例として、ABI−007群の個体には投与されなかったが、準備投薬が、ABI−007群の18名の患者に対し、治療サイクルの2%において、嘔吐、筋肉痛/関節痛のために投与された。一方、Taxol(登録商標)群では、224名の個体(>99%)が、サイクルの95%において準備投薬を服用した。この二つの治療アームの間で明らかに異なっていた、唯一の臨床化学的数値は、Taxol(登録商標)服用個体の血清ブドウ糖レベルがより高いことで、これらの個体は、副作用(AE)としての高血糖症の頻度がより高いことが報告されていた(15[7%]対3[1%];p=0.003)。以上まとめると、この個体集団において、ABI−007は、Taxol(登録商標)に比べ、効力が高く、安全性プロフィールがより好適であることを示した。このように治療指数が改善されること、溶媒依存タキサンには必要とされる準備投薬が不要となることによって、このアルブミン結合パクリタキセルナノ粒子は、MBC治療において重大な進歩を表す。
【0211】
(実施例3)
タキサン難治性転移乳癌個体に対するAbraxane(登録商標)毎週投与
最近のII相臨床試験から、Taxol(登録商標)またはTaxotere(登録商標)による治療時、その病気が進行した転移乳癌個体(すなわち、タキサン難治性個体)に対する、Abraxane(登録商標)(アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子)の、125mg/m
2用量における毎週投与は、長期の疾患コントロールが示された。
【0212】
Abraxane(登録商標)は、最初の生物学的相互作用性組成物を代表すると考えられているが、この組成物は、一体的であることが判明した受容体介在(gp60)経路を利用して、腫瘍細胞内において、活性成分パクリタキセルの高濃度を実現する。このII相試験は、タキサン難治性転移乳癌を持つ、75名の個体を含んでいた。Abraxane(登録商標)は、ステロイド/抗ヒスタミンの準備投薬またはG−CSF予防無しで、毎週、125mg/m
2で30分輸液して投与した。個体は、3週の投与後、1週間の休薬、これを28日毎に繰り返した。腫瘍の取り込みを抑制する可能性のある界面活性剤を含むTaxol(登録商標)またはTaxore(登録商標)と違って、アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子の作用機序が、この難治性個体集団で、改善された結果をもたらすと考えられる。
【0213】
具体的には、データから、このようにあらかじめ高度の治療を受け、タキサンに暴露された個体集団において、毎週125mg/m
2という高用量にも拘わらず、Abraxane(登録商標)を中断したものは、75名の個体の内僅かに3名(4%)、抹消性ニューロパシーのため、であることが示された。さらに、等級3の抹消性ニューロパシーを経験した人々についても、80%は、通常、僅かに1または2週間の遅れの後、再び治療を再開することができ、平均してさらに4ヶ月、用量を下げてAbraxane(登録商標)の服用を続行した。この速やかな改善は、我々の、III相治験における観察と一致した。すなわち、パクリタキセル単独(すなわち、Cremophor(登録商標)非含有)によって誘発された抹消性ニューロパシーは、Taxol(登録商標)によって誘発されたものに比べ、急速に改善する。このAbraxane(登録商標)臨床治験における経験は、溶媒の作用から切り離して、化学療法剤そのもの、すなわち、パクリタキセルの作用を評価する最初の臨床的機会を提供する。II相およびIII相の経験に基づくデータから、今度は、Abraxane(登録商標)による抹消性ニューロパシーは、持続時間および個体に対する影響に関して、Taxol(登録商標)またはTaxotere(登録商標)による抹消性ニューロパシーとは同じではないことが示唆される。
【0214】
Taxol(登録商標)またはTaxotere(登録商標)による抹消性ニューロパシーの臨床経験に関して、Abraxis Oncologyは最近、200名の癌研究者の調査を完了した。研究者に、Taxol(登録商標)によって誘発された抹消性ニューロパシーは、改善および/または寛解するのにどのぐらいかかりますかと尋ねたところ:25%は、「7−12ヶ月」と報告し、別の23%は、「寛解せず」と報告した。Taxore(登録商標)に関して、パーセントは、それぞれ、29%と7%であった。これらのデータは、Taxotere(登録商標)およびTaxol(登録商標)の包装挿入体の通知と一致する。
【0215】
タキサン難治性の、転移乳癌個体から成る、この予後不良の個体集団(87%は内臓(肺および肝)病、69%>3転移部位、88%はタキサン治療中に腫瘍成長)において、II相試験データの分析から、Abraxane(登録商標)が活性を持つことが示された。観察は、Taxotere(登録商標)難治性個体における44%疾病コントロール、および、Taxol(登録商標)難治性個体における39%疾病コントロールを含む。転移背景においてTaxotere(登録商標)単独治療中に病気が進行したこれらの個体において(n=27)、Abraxane(登録商標)毎週服用後、19%の反応率が認められた。転移背景においてTaxol(登録商標)単独治療中に病気が進行したこれらの個体において(n=23)、Abraxane(登録商標)毎週服用後、13%の反応率が認められた。
【0216】
Abraxane(登録商標)は、ステロイドまたはG−CSF予防無しで毎週30分投与した場合、よく耐容されることが判明した:4等級好中球減少血症=3%(G−CSF無し);4等級貧血=1%;重大な過敏反応無し(準備投薬無しにも拘わらず)。この、事前に高度の治療を受けた個体集団において、75%の個体は、Abraxane毎週125mg/m
2という高用量を完全服用し、毒性/副作用による用量低下は無かった。3等級感覚ニューロパシーを発症した個体については、77%が、用量を低下させ(75〜100mg/m
2)、さらに平均12.2(範囲、1〜28)のAbraxane(登録商標)用量を服用した。Abraxane(登録商標)を再開した、これらの個体の内、80%(10名の内8名)が、ニューロパシーが等級1または2に改善した後、薬剤の服用を再開することができたことは注目に値する。これらの結果は、Abraxane(登録商標)、260mg/m
2、3週毎投与のIII相治験において注目された観察、ニューロパシーは、急速に改善(中央値、22日)するという所見を支持する。以上まとめると、これら二つの臨床治験から、パクリタキセルは単独投与した場合、発生するニューロパシーは、短期のようで、かつ容易に管理されることが示唆される。
【0217】
Abraxane(登録商標)は、アルブミン・パクリタキセル複合体を、血管から腫瘍間質へ輸送するのに、微小血管内皮細胞上のgp60受容体介在経路を利用するが、Taxol(登録商標)は、この機構によって輸送されないことが示されている。さらに、アルブミン結合タンパクSPARCが、乳房腫瘍において過剰発現されるが、これが、Abraxane(登録商標)の腫瘍内蓄積の増加に関与している可能性がある。提案された機構は、一旦腫瘍間質に入ると、アルブミン・パクリタキセル複合体は、腫瘍細胞表面に存在するSPARCに結合し、非リソソーム機構によって腫瘍細胞の中に急速に取り込まれることを示唆する。
【0218】
さらに、現今のタキサン処方に一般に使用される界面活性剤/溶媒、例えば、Cremophor(登録商標)、Tween(登録商標)80、およびTPGSは、パクリタキセルのアルブミンに対する結合を強力に抑制し、そうすることによって経内皮輸送を制限する。さらに別のデータからも、MX−1乳腺乳癌異種移植片において、等用量で、Taxotere(登録商標)よりも、Abraxane(登録商標)の方が、統計的に優れた効力を持つことが示された。
【0219】
結論として、75%の個体が、用量を低下させることなく、完全高用量で治療された。データから、溶媒Cremophor(登録商標)無しで、アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子を単独で投与した場合、抹消性ニューロパシーの速やかな改善が示された。さらに別のデータから、個別結果の強化には作用機序が重要な役割を果たすという証拠が強調された。
(実施例4)
Abraxane(登録商標)(ABI−007)は、MDA−MB−435ヒト腫瘍異種移植片において、標的性、抗血管形成性、アポトーシス促進ペプチド(HKP)と相乗的に作動する。
【0220】
二つの機能ドメイン:一方は、腫瘍微小血管のCD13受容体(アミノペプチダーゼN)を標的とし、他方は、細胞内取り込み後、ミトコンドリア膜を破壊する、から構成される、アポトーシス促進性、小型合成ペプチドの抗血管形成活性が、従来報告されている。Nat Med.1999 Sep;5(9):1032−8を参照されたい。第2世代ペプチド二量体、CNGRC−GG−d(KLAKLAK)
2は、HKP(Hunter Killer Peptide)と名づけられるが、より優れた抗腫瘍活性を持つことが見出された。Avastin(登録商標)などの抗血管形成剤は、5−フルオロウラシルなどの細胞傷害剤と組み合わされると協働作用を示すので、我々は、MDA−MB−435ヒト乳癌異種移植片において、抗血管形成剤HKPと、Abraxane(登録商標)(ABI−007)、すなわち、血管内皮のgp60受容体によって輸送される(Desai,SABCS2003)アルブミンナノ粒子パクリタキセルとの組み合わせを評価した。
【0221】
方法:確立されたMDA−MB−435ヒト腫瘍異種移植片は、100mm
3の平均腫瘍体積を持っていた。マウスは、12−13匹の群にランダムに割り当て、HKP、Abraxane(登録商標)、または、HKPおよびAbraxane(登録商標)で治療した。HKPは、i.v.(250ug)、週1回、16週間投与した。Abraxane(登録商標)は、i.v.毎日5日間、10mg/kg/日、治療の最初の1週のみ投与した。使用したAbraxane(登録商標)の用量は、腫瘍の完全寛解を阻止し、HKPの作用が目に見えるように、そのMTD(30mg/kg/日、qd×5)よりも事実上低いものとした。
【0222】
結果:治療19週で、腫瘍体積は、コントロール群(10,298mm
3±2,570)、およびHKP(4,372mm
3±2,470;p<0.05対コントロール)の間、またはABI−007(3,909mm
3±506;p<0.01対コントロール)の間で有意に減少した。ABI−007とHKPの併用は、いずれの単独治療よりも優って腫瘍体積を有意に減少させた(411mm
3±386;p<0.01対Abraxane(登録商標)単独治療、またはHKP単独治療)。治療はよく耐容された。
【0223】
結論:MDA−MB−435ヒト腫瘍異種移植片に対する、Abraxane(登録商標)(ABI−007)、アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子と、血管標的性、抗血管形成ペプチド二量体HKP(CNGRC−GG−d(KLAKLAK)
2)との併用は、いずれかの薬剤の単独治療に比べ、腫瘍体積の有意の低下を示した。我々の結果から、Abraxane(登録商標)の、抗血管形成剤、例えば、HKP、または恐らくAvastin(登録商標)との併用は有益である可能性があることが示唆される。
【0224】
(実施例5)
ABI−007メトロノーム治療:アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子の抗血管形成および抗腫瘍活性
実施例5a
方法:ABI−007の抗血管形成活性を、ラットの大動脈リング、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖および管形成アッセイによって評価した。メトロノーム治療用のABI−007の最適用量は、Balb/c非腫瘍担持マウス(n=5/群;投与:1−30mg/kg,i.p,qd×7)の抹消血における循環内皮前駆細胞(CEP)を、フローサイトメトリーによって測定することによって決定した(Shaked et al.,Cancer Cell,7:101−111(2005))。次いで、メトロノーム(qd;i.p.)およびMTD(qd×5、1サイクル;i.v.)ABI−007およびTaxol(登録商標)の抗腫瘍作用を評価し、ヒトのMDA−MD−231乳癌およびPC3前立腺癌異種移植片を担持するSCIDマウスと比較した。
【0225】
結果:5nMのABI−007は、ラット大動脈微小血管の成長、ヒト内皮細胞の増殖および管形成を、それぞれ、53%、24%、および75%と有意に(p<0.05)抑制した。メトロノーム治療に対するABI−007の最適用量は、CEP測定値に基づき6−10mg/kgであることが観察された。メトロノームのABI−007(6mg/kg)は、両異種移植片モデルにおいて腫瘍増殖を有意(p<0.05)に抑制したが、Taxol(登録商標)(1.3mg/kg)では同様の結果は得られなかった。メトロノームで投与されたABI−007、Taxol(登録商標)のいずれもまったく減量を起こさなかった。MTD ABI−007(30mg/kg)は、MTD Taxol(登録商標)(13mg/kg)よりも効果的に腫瘍増殖を抑制したが、前者には、有意な減量が観察された。興味あることに、メトロノームによるABI−007の抗腫瘍作用は、MTD Taxol(登録商標)のそれに近似していた。
【0226】
結論:ABI−007は、メトロノーム処方において服用されると、強力な抗血管形成および抗腫瘍活性を示す。
実施例5b
ラット大動脈リングアッセイ。12ウェル組織培養プレートに、マトリゲル(Collaborative Biomedical Products,Bedford,MA)をコートし、37℃・5%CO
2、30分でゲル化させた。胸部大動脈を、8から10週齢の雄性Sprague−Dawleyラットから摘出し、1mm長断面リングに切り、マトリゲル被覆ウェルに載せ、さらに別のマトリゲルで覆った。第2のマトリゲル層が固定した後、リングをEGM−IIで覆い、37℃・5%CO
2で一晩インキュベートした。EGM−IIは、内皮細胞の基本培地(EBM−II;Cambrex,Walkersville,MD)、プラス、EGM−II Bulletkit(Cambrex)として販売される内皮細胞増殖因子から成る。続いて、この培養培地を、2%FBS、0.25μg/mlアンフォテリシンB、および10μg/mlゲンタマイシンを添加したEBM−IIに変えた。大動脈リングを、ベヒクル(0.9%生理的食塩水/アルブミン)、カルボキシアミドトリアゾール(CAI;12μg/ml)、またはABI−007(0.05−10nMパクリタキセル)を含むEBM−IIによって4日間処理し、5日目に写真撮影した。陽性コントロールとして、公知の抗血管形成剤であるCAIを、臨床的実現可能濃度よりも高濃度で用いた。実験は、4匹の異なるラットから得た大動脈を用いて4回繰り返した。平方ピクセルで表される、血管形成発芽面積を、Adobe Photoshop 6.0によって定量化した。
【0227】
図1Aに示すように、ABI−007は、ベヒクルコントロールに比べ、ラット大動脈微小血管の増殖を、濃度依存的に有意に抑制し、5nM(53%抑制)および10nM(68%抑制)において統計的有意(p<0.05)に達した。各濃度のABI−007において存在するアルブミンの量単独は血管形成を抑制しなかった。
【0228】
内皮細胞増殖アッセイ。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC;Cambrex)を37℃・5%CO
2においてEGM−IIにおいて維持した。HUVECを、12ウェルプレートに、30,000細胞/ウェルの密度で撒き、一晩放置して付着させた。次に、この培養媒体を吸引し、ベヒクル(0.9%生理的食塩水/アルブミン)、またはABI−007(0.05−10nMパクリタキセル)を含む、新鮮な培養媒体を各ウェルに加えた。48時間後、細胞をトリプシン処理し、Coulter Z1カウンター(Coulter Corp.,Hialeah,FL)を用いてカウントした。実験は全て3回繰り返した。
【0229】
図1Bに示すように、ヒト内皮細胞の増殖は、ABI−007によって有意に抑制され、5nMおよび10nMでは、抑制は、それぞれ、36%および41%であった。
【0230】
内皮細胞管形成アッセイ。8ウェルスライドチェンバーをマトリゲルでコートし、37℃・5%CO
2で30分放置しゲル化させた。次に、HUVECを、ベヒクル(0.9%生理的食塩水/アルブミン)、またはABI−007(0.05−10nMパクリタキセル)を含むEGM−IIにおいて、30,000細胞/ウェルの密度で撒き、37℃・5%CO
2で16時間インキュベートした。インキュベーション後、スライドをPBSで洗浄し、100%メタノールで10秒固定し、DiffQuick液II(Dade Behring,Inc.,Newark,DE)で2分染色した。管形成を分析するために、各ウェルを、2.5x対物レンズを用いてディジタル撮影した。染色管をマスクするために閾値レベルを設定した。対応面積は、MetaMorphソフトウェア(Universal Imaging,Downingtown,PA)を用い、ピクセル数として測定した。実験は3回繰り返した。
【0231】
図1Cに示すように、ABI−007は、5nMおよび10nMにおいて管形成を75%阻止した。
【0232】
循環内皮細胞(CEC)および循環内皮前駆細胞(CEP)測定による、ABI−007の、生物学的インビボ最適用量の決定。6から8週齢の雌性Balb/cJマウスを、下記の8群(それぞれ、n=5)ランダムに割り当てた:非治療、薬剤ベヒクル(0.9%生理的食塩水/アルブミン)のi.p.ボーラス注入、または、ABI−007のi.p.ボーラス注入で、1、3、6、10、15、または30mg/kgのパクリタキセル、毎日7日間。治療期間の終わりに、心臓穿刺によって血液サンプルを抽出し、EDTA含有吸引チューブ(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)に採取した。CECおよびCEPは、4色フローサイトメトリーによって数えた。CD45+造血細胞を排除するために、CD45に対して特異的なモノクロナール抗体を用いた。CECおよび、そのCEPサブセットは、マウス内皮マーカー、胎児肝キナーゼ1/VEGF受容体2(flk−1/VEGFR2)、CD13、およびCD117(BD Pharmingen,San Diego,CA)を用いて描き出した。CECおよびCEP計数を妨げる血小板または細胞破砕物の可能性を排除するために、核染色(Procount;Biosciences,San Jose,CA)を実行した。赤血球細胞分解後、細胞縣濁液を、死亡細胞、血小板、および破砕物を排除するように設計された分析ゲート使用のFACSCalibur(BD Biosciences)によって評価した。CECおよびCEPのパーセントを分析するために、サンプル当たり、少なくとも100,000事象を集めた。次に、CECおよびCEPの絶対数は、CECおよびCEP計数ゲートで集めた事象のパーセントに白血球合計数を掛けることによって計算した。染色細胞のパーセントを決定し、適切な陰性コントロールと比較した。陽性染色は、非特異的背景染色よりも大きいと定義した。生細胞・対・アポトーシスおよび死亡細胞を数えるために、7−アミノアクチノマイシンD(7AAD)を用いた。
【0233】
図2は、i.p.毎日7日間、10−30mg/kgのABI−007が、非腫瘍担持Balb/cJマウスにおいてCEPレベルを有意に下げることを示す。しかしながら、10−30mg/kgのABI−007は、白血球カウントの有意の低下と関連し、これは毒性を示す。6mg/kgのABI−007によるCEPレベルの低下は、統計的有意性に達していないけれども、白血球数の低下も明らかではなかった。したがって、メトロノームABI−007用インビボ最適生物学的用量は、3−10mg/kgにあることが結論された。一試験では、1.3、3、6、または13mg/kg、i.p.、毎日7日間のメトロノームTaxol(登録商標)は、CEP生細胞レベルを有意に下げなかったが、一方、30mg/kg以上のメトロノームTaxol(登録商標)は、重大な毒性をもたらし、最終的にはラットの死を招いた。臨床的に一般的に使用される用量におけるTaxol(登録商標)のi.p.投与では、腹腔においてCremophor(登録商標)のELミセルにパクリタキセルが捕捉され、その結果、パクリタキセルの血漿濃度はほとんど目立たなくなる(Gelderblom et al.,Clin.Cancer Res.8:1237−41(2002))。これが、死を招かない、メトロノームTaxol(登録商標)の用量(1.3、3、6、および13mg/kg)では、なぜCEP生細胞レベルが変化しなかったのかの理由を説明すると考えられる。この場合、メトロノームTaxol(登録商標)を1.3mg/kgでi.p.投与することは、13mg/kgで投与するのとまったく変わらないと考えられる。したがって、その後の実験では、パクリタキセル投与当たりの、Cremophor(登録商標)ELの量を最小とするために、比較的低い用量1.3mg/kgを選んだ。
【0234】
メトロノームおよびMTD ABI−007の抗腫瘍作用を、メトロノームおよびMTD Taxol(登録商標)のそれと比較した。ヒトの前立腺癌細胞系統PC3、およびヒトの乳癌細胞系統MDA−MD−231を、American Type Culture Collection(Manassas,VA)から入手した。PC細胞(5×10
6)は、6から8週齢の雄性SCIDマウスにs.c.注入し、一方、MDA−MB−231細胞(2×10
6)は、雌性SCIDマウスの乳房脂肪パッドに直交的に植えつけた。一次腫瘍体積が約150−200mm
3に達したところで、動物を8群(n=5−10/群)にランダムに割り当てた。各群は、0.9%生理的食塩水/アルブミンベヒクルコントロール、Cremophor(登録商標)Lベヒクルコントロール、メトロノームTaxol(登録商標)(1.3mg/kg、i.p.、qd)、メトロノームABI−007(3、6、または10mg/kgパクリタキセル、i.p.、qd)、MTD Taxol(登録商標)(13mg/kg、i.p.、qdx5、1サイクル)、またはMTD ABI−007(30mg/kgパクリタキセル、i.v.、qdx5、1サイクル)のいずれかである。直交腫瘍直径を、週に1度キャリパーで測定し、その体積を計算した。治療期間の終わりに、心臓穿刺によって血液サンプルを全群のマウスから抽出した。CECおよびCEPは、本明細書に記載する通りに計数した。
【0235】
メトロノームのABI−007(3、6、および10mg/kg)i.p.毎日、4週間は、MDA−MB−231およびPC3の両腫瘍の増殖を有意(p<0.05)に抑制したが、Taxol(登録商標)(1.3mg/kg)では同様の結果は得られなかった(
図3Aおよび3B)。メトロノームで投与されたABI−007、およびTaxol(登録商標)のいずれもまったく減量を起こさなかった(
図3Cおよび3D)。MTD ABI−007(30mg/kg)は、MTD Taxol(登録商標)(13mg/kg)よりも効果的に腫瘍増殖を抑制したが、前者には、有意な減量が観察され、これは毒性を示す。さらに、MTD ABI−007で治療された5匹のマウスの内2匹が、最終薬剤投与の6日後、一肢に麻痺の兆候を示した。麻痺は一過性であり、24〜48時間以内に解消した。興味あることに、メトロノームによる6mg/kgのABI−007の抗腫瘍作用は、MDA−MB−231異種移植片モデルにおけるMTD Taxol(登録商標)のそれに近似していた(
図3A)。メトロノームABI−007の用量を10mg/kgに増しても、より著明な腫瘍増殖抑制を与えるようには見えなかった。一方、メトロノームABI−007は、PC3異種移植片において、3および6mg/kgよりも、10mg/kgにおいてより大きな抗腫瘍反応を引き起こした(
図3B)。
【0236】
メトロノームABI−007は、MDA−MB−231腫瘍担持マウスにおいて、CEP生細胞のレベルを、用量依存的に有意に下げた(
図4A)。CEP生細胞レベルはさらに、PC3腫瘍担持マウスにおいて、メトロノームABI−007に反応して用量依存性の低下を示したが、10mg/kgでやっと統計的有意に達した(
図4B)。両異種移植モデルにおいて、メトロノームTaxol(登録商標)では、CEPレベルは変わらなかった(
図4Aおよび4B)。
【0237】
腫瘍内微小血管密度に対する、メトロノームおよびMTD ABI−007、およびメトロノームおよびMTD Taxol(登録商標)の作用を調べた。MDA−MB−231およびPC3凍結腫瘍から得た5ミクロン厚切片をH&Eで染色し、当業者には公知の標準法によって組織学的に調べた。微小血管検出のために、切片を、ラット抗マウスCD31/PECAM−1抗体(1:1000、BD Pharmingen)で染色し、次いで、テキサスレッド接合ヤギ抗ラット二次抗体(1:200、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.,West Grove,PA)で染色した。単一微小血管は、CD31/PECAM−1dに対して陽性に染まる不連続クラスターまたは単一細胞と定義し、微小血管の計数の中に腔の存在を要求しなかった。各腫瘍のMVDは、Zeiss AxioVision 3.0蛍光顕微鏡画像システムにおいて20×対物レンズによって特定される、3ヶ所の、もっとも高密度に染色される視野の平均カウントで表した。各ベヒクルコントロールまたは治療群について、4から5個の異なる腫瘍を分析した。
【0238】
MDA−MB−231腫瘍では、6および10mg/kgのメトロノームABI−007は、MTD ABI−007同様、やや微小血管密度(MVD)を下げるようであるが、統計的有意には達しなかった(
図5A)。PC3腫瘍では、メトロノームABI−007は3および10mg/kgにおいて、MVDを下げるように見えるが、統計的有意には達しなかった(
図5A)。興味あることに、MVDと、MDA−MB−231のCEP生細胞数のレベルの間には有意の相関が存在するが(
図5B;r=0.76,P−0.04)、PC3では対応する相関は見られなかった(
図5C;r=−0.071,P−0.88)。
【0239】
インビボの血管形成評価を行った。マトリゲルプラグ還流アッセイを、当業者に公知の方法に若干の修正を加えて行った。簡単に言うと、500ng/mlの、線維芽細胞基本増殖因子(bFGF;R&D Systems Inc.,Minneapolis,MN)を添加した0.5mlのマトリゲルを、0日目、10週齢の雌性Balb/cJマウスの横腹にs.c.注入した。3日目、動物を8群(それぞれn=5)にランダムに割り当てた。各群は、下記のいずれかによって治療した:0.9%生理的食塩水/アルブミンベヒクルコントロール、CremophorELベヒクルコントロール、メトロノームTaxol(登録商標)(1.3mg/kg、i.p.、qd)、メトロノームABI−007(3、6、または10mg/kgパクリタキセル、i.p.、qd)、MTD Taxol(登録商標)(13mg/kg、i.v.、qdx5)、またはMTD ABI−007(30mg/kgパクリタキセル、i.v.、qdx5)。陰性コントロールとして、同年齢の、さらに5匹の雌性Balb/cJマウスにマトリゲルだけを注入した。10日目、全ての動物に、25mg/ml FITC−デキストラン(Sigma,St.Louis,MO)0.2mlをi.v.注入した。次いで、血漿サンプルを採取した。マトリゲルプラグを取り出し、Dispase(Collaborative Biomedical Products,Bedford,MA)と37℃で一晩インキュベートし、次いでホモジェナイズした。蛍光読み取り値は、FL600蛍光プレートリーダー(Biotech Instruments,Winooski,VT)を用いて得た。血管形成反応は、マトリゲルプラグ蛍光の、血漿蛍光に対する比として表した。
【0240】
6および10mg/kgにおけるメトロノームABI−007は血管形成を下げるようであるが、その抑制は、統計的有意には達しなかった(
図6)。血管形成は、ABI−007 3mg/kg、MTD ABI−007、MTDおよびメトロノームTaxol(登録商標)によって、それぞれのベヒクルコントロールと比べ、変化されないようである(
図6)。これらの所見は、本明細書に記載される、腫瘍内MVD結果と同様であった。
【0241】
(実施例6)
Abraxane(登録商標)対Taxotere(登録商標):毒性および効力の前臨床比較
方法:Abraxane(登録商標)およびTaxotere(登録商標)の毒性を、これらの薬剤をq4d×3スケジュールで投与したヌードマウスにおける用量変動試験において比較した。用量レベルは、Taxotere(登録商標)7、15、22、33、および50mg/kg、ABX 15、30、60、120、および240mg/kgであった。Abraxane(登録商標)およびTaxotere(登録商標)の抗腫瘍活性を、ヒトMX−1乳腺異種移植片を植えたヌードマウスにおいて、15mg/kg、毎週、3週間の用量で比較した。
【0242】
結果:マウスにおける用量漸増試験において、Taxotere(登録商標)の最大許容用量(MTD)は、15mg/kgであり、致死量(LD
100)は、500mg/kgであった。一方、Abraxane(登録商標)のMTDは、120と240mg/kgの間であり、致死量(LD
100)は、240mg/kgであった。腫瘍試験では、Abraxane(登録商標)は、腫瘍増殖抑制において、Taxotere(登録商標)の等用量に比べより有効であった(79.8%対29.1%、p<0.0001、ANOVA)。
【0243】
結論:MX−1腫瘍モデルにおいて等用量で試験してみると、アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子(Abraxane(登録商標))の方が、Taxotere(登録商標)よりも優れていた。さらに、Abraxane(登録商標)の毒性の方が、Taxotere(登録商標)よりも有意に低かった。これは、Abraxane(登録商標)の、実質的により高レベルの投与を可能とする。これらの結果は、Taxol(登録商標)と比べた、Abraxane(登録商標)に見られた治療指数の向上と近似するが、これは、界面活性剤の存在が、タキサンの輸送、抗腫瘍活性を損ない、その毒性を増すことを示唆する。別の腫瘍モデルにおいてAbraxane(登録商標)とTaxotere(登録商標)を比較する試験が現在進行中である。
【0244】
(実施例7)
Abraxane(登録商標)と他の薬剤との併用試験
Abraxane(登録商標)(ABX、アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子)には前述の有利な特性のあるため、これを、種々の投与方式およびスケジュール、および、他の抗癌剤および放射線治療との併用に関して、いくつかの試験で用いており、現在でも用いている。これらを下記に掲げる。
【0245】
転移乳癌において、これらの試験は下記を含む:
【表A-1】
【0246】
【表A-2】
【0247】
乳癌において、ネオアジュバント療法試験は下記を含む:
【表B-1】
【0248】
【表B-2】
【0249】
化学放射線治療における試験は下記を含む:
【表C】
【0250】
その他の試験は下記を含む:
【表D】
【0251】
(実施例8)
Abraxane(登録商標)の、カルボプラチンおよびHerceptin(登録商標)との併用
Taxol(登録商標)とカルボプラチンの併用は、転移乳癌に対し著明な効力を示した。この組み合わせでは、毎週スケジュールにおいて、Taxol(登録商標)の用量は、せいぜい80mg/m
2までしか上げることができない。それより高い用量は、毒性のために許容できない。さらに、HER2陽性個体は、その治療処方にHerceptin(登録商標)が含まれると、より大きな利益を得る。このラベル開示II相試験は、これらの薬剤と組み合わせた場合の、ABI−007(Abraxane(登録商標))の、協働的治療作用を決定するために行った。この試験では、先ず、HER−2陽性疾患を持つ個体に対する、Herceptin(登録商標)を組み合わせたABI−007/カルボプラチンの安全性および抗腫瘍活性を評価した。ABI−007は、カルボプラチンおよびHerceptin(登録商標)と共に、HER−2陽性、進行性乳癌を持つ個体に対し、毎週静注投与した。3名の集団には、ABI−007を75mg/m
2IVの用量で、次いで、カルボプラチンをAUC=2を標的として毎週、およびHeceptin(登録商標)輸液注入(1週目は4mg/kg、その後の週は全て2mg/kg)1サイクルを投与した。これらの個体は、薬剤をきわめてよく耐容したので、その後のサイクルおよび個体については、ABI−007の用量は、75mg/m
2に上げた。6名の患者は本日まで治療した。反応を評価した4名の内、4名全て(100%)が治療に反応した。Abraxane(登録商標)の比較的低い毒性のため、Taxol(登録商標)と比べて、全体としてより高い用量のパクリタキセルを投与することが可能であり、これは、個体に対し利益をもたらすと考えられる。
【0252】
(実施例9)
Abraxane(登録商標)とチロシンキナーゼ阻害剤との併用
Abraxane(登録商標)の使用と組み合わせたゲフィチニブのパルス投与は、EGFR発現腫瘍の増殖の抑制に有用である。120匹のヌードマウスにBT474腫瘍細胞を接種し、BT474異種移植腫瘍を担持する、少なくとも90匹のマウスを得、これを、18個のアームに分けた(それぞれ5匹)。アーム1には、コントロールi.v.注入を行った。他のマウスには全て、Abraxane(登録商標)、50mg/kg、毎週i.v.注入を3週間行った。アーム2には、Abraxane(登録商標)単独を与えた。アーム3、4、5、6、7、8には、毎週Abraxane(登録商標)を与えたが、ただし、それに2日先立って、漸増用量のゲフィチニブパルスを与えた。アーム9、10、11、12、13、には、毎週Abraxane(登録商標)を与えたが、ただし、それに1日先立って、漸増用量のゲフィチニブパルスを与えた。アーム14、15、16、17、18には、毎週Abraxane(登録商標)を、漸増用量のゲフィニチブ毎日投与と共に与えた。毎週Abraxane(登録商標)に対して1または2日の先行投与、またはAbraxane(登録商標)との連続投与で与えることのできる、ゲフィチニブの最大許容用量は、確立されている。さらに、抗腫瘍反応の測定によって、用量−反応関係が存在するのかどうか、および、2日パルス投与と1日パルス投与のどちらが優るのかが決定される。これらのデータを用いて、Abraxane(登録商標)と共に投与される、パルスゲフィチニブおよび毎日連続ゲフィチニブの最適用量が選ばれる。
【0253】
120匹のヌードマウスにBT474腫瘍細胞を接種し、90匹の腫瘍担持マウスを得た。これらのマウスを、6群に分割した(それぞれ15匹)。アーム1には、コントロールi.v.注入を行った。アーム2には、Abraxane(登録商標)、50mg/kg、毎週i.v.を3週間投与した。アーム3には、ゲフィチニブを150mg/kg/日で経口投与した。アーム4には、Abraxane(登録商標)、50mg/kgを、以前に定められた用量の毎日ゲフィチニブと共に投与した。アーム5には、Abraxane(登録商標)、50mg/kgに、以前に定められた用量と持続時間の、ゲフィチニブパルスが先行した。アーム6には、以前に定められた用量の毎週ゲフィニチブパルスのみが投与された。3週間の治療の後、コントロールの腫瘍が最大許容サイズに達するまで、マウス達の経過を追った。
【0254】
(実施例10)
進行HER2陽性乳癌の第1次治療としての、ドーズデンスnab(商標)−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))、カルボプラチン、Trastuzumab(登録商標)毎週のII相試験
本試験は、進行/転移(ステージIV腺癌)HER−2過剰発現乳癌を持つ患者に対する、第1次治療としての、ドーズデンストラスツズマブ/Abraxane(登録商標)/カルボプラチン毎週の、(1)安全性および耐容性、および(2)客観的反応率を評価することを目的とする。トラスツズマブとは、Herceptin(登録商標)とも呼ばれるモノクロナール抗体で、erbB2受容体の細胞外セグメントに結合する。
【0255】
簡単に言うと、最近細胞傷害性または放射線治療を受けていない患者を含めた。Abraxane(登録商標)は、75mg/m
2から、30分i.v.輸液で、1、8、15日で100mg/m
2まで、以後のサイクルでは標準的3+3規則にしたがって上昇させた。カルボプラチンAUC=2は、30−60分のi.v.輸液で、1、8、15日、および、最初の29日サイクルで投与した。トラスツズマブは、1週目は4mg/kgの用量で、30−90分i.v.輸液で、1、8、15、22日、その後の週は2mg/kgの用量で投与した。
【0256】
反応について評価が可能な9名の患者の内8名であって、反応率(確認プラス未確認)は63%で、38%は病状安定であった。もっとも一般的な毒性は、好中球減少血症(等級3:44%;等級4:11%)、および白血病(33%)であった。
【0257】
これらの結果から、トラスツズマブ・プラス・Abraxane(登録商標)・プラス・カルボプラチンは、MBCに対する第1次治療として、高度の抗腫瘍活性を示し、許容性も受容可能なものであった。
【0258】
(実施例11)
転移乳癌の第1次治療における、カペシタビン、プラス、nab(商標)−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))のII相治験
本試験の目的は、Abraxane(登録商標)と組み合わせてカペシタビンの投与を受けた患者について、治療の安全性、効力(進行までの時間、および、全体生存率)、および、患者のクォリティオブライフを評価することである。カペシタビンは、フルオロピリミジンカルバミン酸塩で、Xeloda(登録商標)とも呼ばれる。これは、MBCの治療において、単独でも、タキサンとの併用でも実質的効力を有することが示された。
【0259】
このラベル開放、シングルアーム試験では、Abraxane(登録商標)125mg/m
2を、3週毎に、1日、8日にi.v.輸液、プラス、カペシタビン825mg/m
2を、3週毎に、1から14日まで1日2回経口投与した。患者は、HER−2/neu陰性で、余命が3ヶ月を超える。患者は、転移癌について以前に化学療法を受けたことがなく、以前にカペシタビン治療を受けたことがなく、かつ、以前に、アジュバント療法においてもフルオロピリミジンおよびパクリタキセル化学治療を受けたことがない。治験進行中、3名の患者において、カペシタビンの用量を650mg/m
2に下げねばならず、2名の患者において、カペシタビンの用量を550mg/m
2に下げねばならず、3名の患者において、Abraxane(登録商標)の用量を100mg/m
2に下げねばならなかった。
【0260】
主要終末点は、客観的反応率と安全性/毒性であり、評価は、各2サイクル後に行った。二次終末点は、進行までの時間であった。12名の患者を登録し、安全性分析は、最初の6名について完了し、反応は、最初の8名について2サイクル後に評価可能であった。特異な、または予想外の毒性は無く、等級4の毒性、または等級1を超えるニューロパシーは無かった。反応データは、6名の患者では、最初の2サイクルの治療(最初の評価時点)だけで確認された。2名の患者が6サイクルを完了し、1名は部分的反応、1名では病状安定であった。2サイクル後の最初の8名では、2名が部分的反応で、4名では病状安定であった。
【0261】
次いで、合計50名の患者が登録し、38名が分析の対象とされた。患者の平均年齢は58.3歳(範囲は24〜84)で、患者の50%は、以前に化学療法を受けたことが無かった(転移疾患の前)。34%の患者で、転移部位1箇所、37%で転移部位2箇所、21%で転移部位3箇所、8%で、3箇所を超えた。転移のもっとも一般的部位は、肝臓、骨、肺組織、および、他のリンパ節であった。
【0262】
これらの結果から、カペシタビンと、有効用量のAbraxane(登録商標)毎週の併用は、これまでのところ新規の毒性はなく、実行可能であることが示された。Abraxane(登録商標)関連の毒性は、主に、好中球減少血症であるが、臨床的結果をもたらすことなく、手足症候群が、カペシタビンの主な毒性であった。
【0263】
臨床反応は、34名の患者において評価された。3名(9%)が、完全反応を示した。15名(44%)が部分反応を示した。11名(32%)が、病状安定を示した。5名(15%)が、病気の進行を示した。カペシタビンとAbraxaneの併用は、転移乳癌の第1次治療においてきわめて有効な併用処方であった。この結果から、この併用処方によって、進行への時間が延長されることが明らかになった。
【0264】
(実施例12)
初期ステージ乳癌を持つ患者に対する、ドーズデンスドキソルビシン・プラス・シクロフォスファミド、次いでnab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))の試行試験
本発明の目的は、初期ステージ乳癌に対する、ドキソルビシン(アドリアマイシン)・プラス・シクロフォスファミド、次いでAbraxane(登録商標)の毒性を評価することである。
【0265】
患者は、手術可能で、組織学的に確認可能な、初期ステージの乳房腺癌を有していた。患者には、ドキソルビシン(アドリアマイシン)60mg/m
2・プラス・フォスファミド600mg/m
2(AC)を2週毎、4サイクル、次いでAbraxane(登録商標)260mg/m
2を2週毎、4サイクル投与した。
【0266】
30名の患者に、4サイクルのACを投与し、29名の患者の内27名に4サイクルのAbraxane(登録商標)を投与した。33%の患者に、Abraxane(登録商標)治療中ANC(好中球絶対数)が回復しないためにペグフィルグラスチム(Neulasta(登録商標))を投与した。9名(31%)において、非血清学的毒性のために、Abraxane(登録商標)用量の低下を行った。合計9名の患者において、等級2の、4名の患者に、等級3の抹消性ニューロパシー(PN)が見られた。PNは、中央値28日以内に等級≧1改善した。
【0267】
結果から、ドキソルビシン(60mg/m
2)プラス・フォスファミド(600mg/m
2)を2週毎、4サイクル、次いでドーズデンスAbraxane(登録商標)(260mg/m
2)2週毎、4サイクルは、初期ステージ乳癌患者においてよく耐容された。
【0268】
(実施例13)
転移乳癌に対する第1次治療として、毎週nab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))、HER−2/neu陽性患者に対するトラスツズマブ追加
本試験の目的は、第1次背景に毎週Abraxane(登録商標)を動かし、かつ、HER−2/neu陽性患者に対しトラスツズマブを加えることである。
【0269】
このラベル開放II相試験には、局所的進行または転移乳癌を持つ、20名のHER2陽性、および50名のHER2陰性患者が含められた。Abraxane(登録商標)は、125mg/m
2、30分i.v.輸液、1、8、および15日、次いで、1週間の休薬として投与した。トラスツズマブは、HER2陽性患者に対し、試験治療と並行して投与した。一次終末点は、反応率で、二次終末点は、進行までの時間(TTP)、全体生存率(OS),および毒性であった。
【0270】
安全性集団では、23名の患者に、これまで、3サイクル中央値のAbraxane(登録商標)を投与した。もっとも一般的な治療関連副作用は、等級3好中球減少血症(8.7%)で、等級4の副作用は無かった。4名の評価可能患者の内1名が治療に反応した。
【0271】
(実施例14)
nab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))およびカルボプラチンのI相治験
本試験の目的は、カルボプラチンAUC=6と併用されるAbraxane(登録商標)(共に毎週、3週毎)の最大許容量を決定すること、投与順序の、薬理動態学(PK)に及ぼす作用を比較することである。
【0272】
「標準治療」後に進行した、組織学的または細胞学的に裏づけられた悪性を持つ患者を含めた。アーム1には、Abraxane(登録商標)を、3週毎に、サイクル1毒性に基づく用量漸増方式(220、260、300、340mg/m
2)で3週毎、次いで、カルボプラチンAUC=6を投与した。アーム2には、毎週(1、8、15日、次いで、1週間の休薬)、次いで、カルボプラチンAUC=6を投与した。試験のPK部分では、サイクル1では、Abraxane(登録商標)、次にカルボプラチン、サイクル2では、投与順序を逆転させ、PKレベルを、最初の6、24、48、および72時間で決定した。
【0273】
3週毎スケジュールでは、好中球減少血症、血小板減少症、およびニューロパシーが、もっとも一般的な等級3/4毒性であった(それぞれ3/17)。毎週スケジュールでは、好中球減少血症が、もっとも一般的な等級3/4毒性であった。最高用量125mg/m
2(n=6)毎週投与に対する最高反応は、2名の部分的反応(すい臓癌、メラノーマ)、および2名の病状安定(NSCLC)であった。最高用量340mg/m
2(n=5)3週毎投与に対する最高反応は、1名の病状安定(NSCLC)、および2名の部分的反応(SCLC、食道)であった。
【0274】
これらのデータは、Abraxane(登録商標)およびカルボプラチン併用の活性を示す。毎週投与のMTDは、340mg/m
2であり、3週毎1回の投与では、100mg/m
2であった。
【0275】
(実施例15)
局所進行/炎症性乳癌に対する、用量高密度ゲムシタビン、エピルビシン、およびnab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))のII相治験
ゲムシタビン、アントラサイクリン、およびタキサンは、乳癌治療においてもっとも活性の高い薬剤に属し、転移乳癌(MBC)の治験も、これら3剤併用の高活性を確認する。ネオアジュバント治療において、種々のスケジュールで、25%の病理的完全反応(pCR)が明らかであった。ゲムシタビン、エピルビシン、および毎週ドセタキセルの、以前のネオアジュバント治療治験は、12週の治療後に24%のpCRを明らかにした。ただし、禁止的血清学的毒性が見られた。Abraxane(登録商標)は、標準的パクリタキセルに比べ、優れた反応、進行までの時間(TTP)、骨髄機能抑制の低下を示す新規タキサンである。Abraxane(登録商標)については、独特の腫瘍内濃度の上昇があるが、これは、gp60およびSPARC糖タンパクによることが示された。本治験は、局所的進行性乳癌および/または炎症性乳癌に対する、ゲムシタビン、エピルビシン、およびAbraxane(登録商標)の、ドーズデンスネオアジュバント併用治療の実行性、毒性、および効力を調べた。主要目的は、ネオアジュバントGEAの実行性および毒性を評価すること、および、臨床的、病理学的反応を評価することであった。二次目的は、乳房保存手術の進行、全体生存状態および率を評価することであった。
【0276】
ラベル開放II相試験において、局所治療の前に、誘導/ネオアジュバント治療処方が実行された。治療処方は、ゲムシタビン2000mg/m
2i.v.、2週毎、6サイクル、エピルビシン50mg/m
2、2週毎、6サイクル、Abraxane(登録商標)175mg/m
2、2週毎、6サイクルで、さらに、ペグフィルグラスチム6mg s.c.、2日目、2週毎を加えた。局所治療後の、術後/アジュバント治療処方は、ゲムシタビン2000mg/m
2、2週毎、4サイクル、Abraxane(登録商標)220mg/m
2、2週毎、4サイクル、およびペグフィルグラスチム6mg s.c.、2日目、2週毎であった。患者は、組織学的に確認された、乳房の、局所進行/炎症性腺癌を持つ女性を含む。
【0277】
年齢中央値48歳(29−73の範囲)の48名の患者が登録された。腫瘍特徴としては:79%が腺管組織学、8%が腺葉組織学、および13%が、炎症組織学を呈した。ホルモン受容体状態は:i)エストロゲン受容体(ER)陰性で、プロゲステロン受容体(PgR)陰性腫瘍−患者の54%;ii)ER+PgR+腫瘍−患者の33%;iii)ER+PR−腫瘍−患者の10%;iv)ER−PR+腫瘍−患者の2%、である。HER2状態は:HER+腫瘍−患者の81%、およびHER−腫瘍−患者の19%、であることが示された。113サイクルを投与した。18名の患者が術後治療を完了した。血清学的毒性は、主に、G3/4好中球減少血症、4名(8%);G3血小板減少症、3名(6%);およびG3貧血症、1名(2%)から成っていた。発熱性好中球減少血症の発作は無かった。非血清学的毒性はきわめて稀であり、1名のG4事象(疲労)だけであった。G3事象は、主に、関節痛/疼痛、5名(10%)から成り、ニューロパシーおよび感染は、それぞれ、2名に観察された。
【0278】
35名の患者が病理所見、および併用治療効力の評価の対象とされた。病理学的完全反応(pCR;一次乳房病巣およびリンパ節組織病巣の両方における病理学的完全反応と定義される)は20%(7/35);病理学的部分反応は74%(26.35);病状安定は6%(2/35)であった。
【0279】
結果から、ゲムシタビン、エピルビシン、およびAbraxane(登録商標)のネオアジュバント用量による高密度併用治療は、実行可能であり、よく耐容された。2週毎スケジュールにおける毒性は、ごく僅かであり、容易に管理が可能であった。GEA併用治療は、高レベルの完全または部分反応率を示した。
【0280】
(実施例16)
Abraxane(登録商標)(ABI−007)は、MDA−MB−231ヒト腫瘍異種移植片における腫瘍増殖を抑え、壊死、低酸素症、およびVEGF−A発現を誘発する
MDA−MB−231ヒト乳癌異種移植片を、雌性ヌード(nu/nu)マウスの乳房脂肪パッドに直交的に植えつけた。平均腫瘍体積が230mm
3になったところで、動物を5匹の動物から成る群にランダムに割り当て、生理的食塩水、Taxol(登録商標)、Abraxane(登録商標)、またはトキソルビシンを投与した。Taxol(登録商標)は、10mg/kg/日で投与し、Abraxane(登録商標)は、15mg/kg/日で投与し、ドキソルビシンは、10mg/kg/日で投与した。全ての薬剤およびコントロールは、100μl容量として、毎日、5日間、i.v.投与した。マウスを屠殺し、腫瘍を採取し、腫瘍細胞抽出物を調製した。腫瘍抽出物におけるVEGF−AタンパクレベルはELISAで定量した。ある場合、Abraxane(登録商標)で治療したマウスの腫瘍は、組織学によって分析した。
【0281】
【表5】
表5に示すように、Taxol(登録商標)、Abraxane(登録商標)およびドキソルビシンは全て、生理的食塩水投与コントロール動物と比べると、腫瘍体積の減少によって表されるように、腫瘍増殖を抑制した。腫瘍増殖抑制(TGI)は、コントロール群の最終測定におけるコントロール群の平均腫瘍体積に対する、試験群の平均腫瘍体積を比べることによって計算した。腫瘍増殖抑制は、Abraxane(登録商標)を投与したマウスにおいて最大であった(64%抑制)。Taxol(登録商標)およびドキソルビシンは、それぞれ、56%および45%の腫瘍増殖抑制を示した。
【0282】
腫瘍細胞抽出物におけるVEGF−AタンパクのレベルをELISAによって測定したところ、Taxol(登録商標)、Abraxane(登録商標)、およびドキソルビシンを投与したマウスの腫瘍で増加することが示された。VEGF−Aタンパクレベルは、Abraxane治療マウスの腫瘍で最高であり(164%増加)、次いで、ドキソルビシン(124%)、およびTaxol(登録商標)(97%)であった。
【0283】
生理的食塩水投与コントロールマウス、およびAbraxane(登録商標)投与マウスから、Abraxane(登録商標)の最終注入後、腫瘍を採取した。壊死部位および低酸素症細胞の有無について、腫瘍を評価した。低酸素症細胞は、ピモニダゾール−タンパク接合体の免疫組織化学的検出によって特定した。
図7に示すように、Abraxane(登録商標)投与マウスにおける腫瘍増殖抑制は、腫瘍組織において壊死(
図7B)および低酸素症(
図7D)を伴っていた。壊死および低酸素症は、生理的食塩水投与コントロールマウスの腫瘍組織には観察されなかった(
図7Aおよび
図7C)。
【0284】
(実施例17)
Abraxane(登録商標)誘発インビトロ細胞傷害性に対するVEGF−AおよびAvastin(登録商標)の作用
Abraxane(登録商標)誘発細胞傷害性に対する、VEGF−A、または抗VEGF抗体(Avastin(登録商標))の作用を、細胞のインビトロ細胞傷害アッセイにおいて評価した。細胞は、ある範囲の濃度(1から24nM)のAbraxane(登録商標)で処理した。細胞はさらに、VEGF−AまたはAvastin(登録商標)で処理し、細胞傷害性を、Abraxane(登録商標)だけで処理した細胞と比べた。
図8Aに示すように、VEGF−Aの添加は、Abraxane(登録商標)のインビトロ細胞傷害性を抑えた。一方、Avastin(登録商標)の添加は、Abraxane(登録商標)のインビトロ細胞傷害性を増した(
図8A)。
【0285】
同様の結果が、インビトロのクローン発生アッセイにおいても観察された。細胞は、生理的食塩水コントロール、Abraxane(登録商標)のみ、VEGF−Aのみ、Avastin(登録商標)のみ、Abraxane(登録商標)+VEGF−A、またはAbraxane(登録商標)+Avastin(登録商標)によって処理した。
図8Bに示すように、Abraxane(登録商標)は、生理的食塩水コントロールと比べ、形成されるコロニーの平均数を下げた。VEGF−2単独による処理は、形成されるコロニーの数を増したが、一方、Avastin(登録商標)単独による処理は、形成コロニー数に僅かな低下をもたらした。Abraxane(登録商標)処理細胞に対しVEGF−Aを加えると、細胞傷害性を抑え、このため、Abraxane(登録商標)単独に比べると、より大きい数の形成コロニーが得られた。Abraxane(登録商標)処理細胞にAvastin(登録商標)を加えると、協働作用をもたらすようであり、Abraxane(登録商標)またはAvastin(登録商標)単独で観察されるレベルを超える、細胞傷害性の増加(形成コロニー数の急激な低下によって示される)を示した。
【0286】
(実施例18)
Avastin(登録商標)と組み合わせたAbraxane(登録商標)(ABI−700)は、MDA−MB−231腫瘍異種移植片における腫瘍増殖を抑える
ルシフェラーゼ発現、MDA−MB−231ヒト乳癌異種移植片を、雌性ヌード(nu/nu)マウスの乳房脂肪パッドに直交的に植えつけた。平均腫瘍体積が230mm
3に達したところで、動物を5匹の動物から成る群にランダムに割り当て、生理的食塩水、Abraxane(登録商標)、Avastin(登録商標)、または、Abraxanen(登録商標)プラスAvastin(登録商標)の併用を投与した。Abraxane(登録商標)は、単独または併用として、10mg/kg/日、毎日5日間、2サイクル、1週間隔で投与した。いくつかの群には、Abraxane(登録商標)10mg/kg/日、毎日5日間、1サイクルのみを投与した。2サイクルのAbraxane(登録商標)後、Avastin(登録商標)が、2mg/kg、4mg/kg、または8mg/kgの用量で、週2回、6週間投与された。Avastin(登録商標)単独が、併用治療のマウスと同時に、4mg/kgの用量で投与された。生理的食塩水コントロール群の平均腫瘍体積が2000mm
3に達した時点でマウスを屠殺した。
【0287】
【表6】
どの治療群にも毒性は観察されなかった。腫瘍増殖抑制(TGI)は、コントロール群の最終測定時において、試験群の平均腫瘍体積を、コントロール群のそれと比較することによって計算した。表6および
図9に示すように、Avastin(登録商標)は、4mg/kgの用量では、一次腫瘍の増殖を有意には抑制しなかった(12.56%抑制)。Abraxane(登録商標)およびAvastin(登録商標)の併用治療、特に、2サイクルのAbraxane(登録商標)による併用は、Avastin(登録商標)単独よりも有意に優れた結果をもたらし、腫瘍抑制は、94.23%から98.49%の範囲であった。二つの最高用量におけるAbraxane(登録商標)の、Avastin(登録商標)との併用は、Abraxane(登録商標)単独よりも優れた結果をもたらした(97.49または98.49%、対、95.11%抑制)。Abraxane(登録商標)およびAvastin(登録商標)の併用は、治療マウスの腫瘍の後退をもたらすが、その場合、完全寛解とは、65日目に、測定可能な腫瘍を持たないマウスを指す。Abraxane(登録商標)およびAvastin(登録商標)の併用によって治療した15匹のマウスの内5匹(30%)は、腫瘍の完全寛解を示した:残りのマウスの腫瘍は、コントロールと比べ、90%減少した。
【0288】
上記用量において、Avastin(登録商標)単独は、一次腫瘍を有意には抑制しなかった。Abraxane(登録商標)の効力は、Avastin(登録商標)よりもはるかに高く、第2サイクルのAbraxane(登録商標)を加えることによって確実に向上した。Abraxane(登録商標)およびAvastin(登録商標)の併用だけが、マウスの30%において一次腫瘍を根絶した。
【0289】
(実施例19)
Abraxane(登録商標)(ABI−007)の、Avastin(登録商標)との併用は、MDA−MB−231腫瘍異種移植片における腫瘍転移を抑える。
【0290】
実施例25で記載したように、ルシフェラーゼ発現MDA−MB−231ヒト乳癌異種移植片を、雌性ヌード(nu/nu)マウスの乳房脂肪パッドに直交的に植えつけた。平均腫瘍体積が230mm
3に達したところで、マウスを複数群にランダムに割り当て:生理的食塩水(n=10)、Abraxane(登録商標)(n=5)、Avastin(登録商標)(n=5)、または、Abraxanen(登録商標)プラスAvastin(登録商標)の併用(n=5)を投与した。Abraxane(登録商標)は、単独または併用として、10mg/kg/日、毎日5日間、2サイクル、1週間隔で投与した。いくつかの群には、Abraxane(登録商標)10mg/kg/日、毎日5日間、1サイクルのみを投与した。2サイクルのAbraxane(登録商標)後、Avastin(登録商標)が、2mg/kg、4mg/kg、または8mg/kgの用量で、週2回、6週間投与された。Avastin(登録商標)単独が、併用治療のマウスと同時に、4mg/kgの用量で投与された。生理的食塩水投与コントロール群の平均腫瘍体積が2000mm
3に達した時点でマウスを屠殺した。付属のリンパ節、および肺の両葉を各マウスから摘出し、細胞抽出物を調製した。これらの組織におけるMDA−MB−231細胞の存在は、ルシフェラーゼ活性の分析によって評価し、一次腫瘍からの転移のインディケーターとした。ルシフェラーゼ活性は、屠殺当日(腫瘍の接種後65日目)、抽出物において、10個のリンパ節および両肺葉について測定した。20μlの分解物当たり500光単位よりも大きい値を、MDA−MB−231細胞の存在、および転移の発生について陽性と判定した。
【0291】
【表7-1】
【0292】
【表7-2】
表7に示すように、細胞抽出物におけるルシフェラーゼ活性によって分析すると、Abraxane(登録商標)またはAvastin(登録商標)単独は、腫瘍のリンパ節転移の発生頻度には作用を及ぼさないようであった。本明細書で用いる発生とは、各マウスの組織におけるルシフェラーゼ活性の存在を指す。Abraxane(登録商標)の、Avastin(登録商標)との併用は、特に、Abraxane(登録商標)2サイクルにおいて、腫瘍転移に対し有意な作用を示した。転移の発生頻度は、Abraxane(登録商標)およびAvastin(登録商標)を、4mg/kgおよび8mg/kgという、二つの最高用量で投与した群では40%に低下した(P値=0.022;P値は、Fischerの厳密試験による、試験群とコントロール群の間の差の分析から得られた;NSは、非有意を指す)。表6に示すように、Abraxane(登録商標)またはAvastin(登録商標)単独は、腫瘍の肺転移発生頻度に対しほとんど作用を及ぼさないようである。Abraxane(登録商標)の、Avastin(登録商標)との併用は、肺転移の発生頻度に作用を示した。Abraxane(登録商標)およびAvastin(登録商標)の、用量2mg/kg、4mg/kg、および8mg/kgにおける併用によって、転移の発生頻度それぞれ、20%、40%、および0%に低下した。
【0293】
組織抽出物におけるルシフェラーゼ活性によって評価される、腫瘍のリンパ節および肺への転移を
図10に示す。Abraxane(登録商標)およびAvastin(登録商標)は、MDA−MB−231腫瘍細胞の、リンパ節転移(
図10A)および肺転移(
図10B)の低下に対し協働作用を及ぼした。この用量では、Avastin(登録商標)単独は、転移を有意には抑制しなかった。Abraxane(登録商標)の効力は、Avastin(登録商標)よりもはるかに高く、第2サイクルのAbraxane(登録商標)を加えることによって確実に向上した。Abraxane(登録商標)およびAvastin(登録商標)の併用のみが、ある割合の処置マウスにおいて、局所器官および遠隔器官転移を根絶した。
【0294】
(実施例20)
転移乳癌治療のための、Abraxane(登録商標)(ABI−007)の、Avastin(登録商標)との併用
ベバシズマブ(Avastin(登録商標))およびパクリタキセルの併用は、転移乳癌に対し著明な活性を有する。Abraxane(登録商標)の方が、パクリタキセルよりも毒性が低く、より優れた腫瘍送達を示す。そこで、転移乳癌を持つ女性に対し、Abraxane(登録商標)およびAvastin(登録商標)の併用が用いられた。
【0295】
転移乳癌を持つ27名の女性を、Abraxane(登録商標)およびAvastin(登録商標)の併用によって治療した。Abraxane(登録商標)は、80−125mg/m
2、1、8、および15日(週1回、3週間)、または、170−200mg/m
2、14日毎(2週毎に1回)、28日サイクルで投与した。Avastin(登録商標)は、10mg/m
2、14日毎(2週毎に1回)に投与した。各患者に対し、最低2サイクル(2ヶ月)投与した。これらの女性は全て、アントラサイクリン(26/27)およびタキサン(24/27)を含む、最低三つの化学療法処方を以前に受けたことがある。患者は、治療に対する反応について、身体検査、腫瘍マーカー、およびPET/CT融合スキャニングによって監視した。患者は全て、試験期間中、毒性または副作用について、それがいかなるものであれ、監視した。
【0296】
3名の患者が完全反応を(11%)、13名が部分反応を(48%)を示し、全体の反応率は59%であった。7名の患者では病状が安定し、4名の患者で進行した。全体毒性は、受容可能であったが、しかしながら、6名の患者が副作用を呈し、1名は、治療から降ろされた。
【0297】
Abraxane(登録商標)およびAvastin(登録商標)は、以前に強力な治療を受けた転移乳癌の女性集団に対してきわめて活発な活性を示した。結果から、59%(3名の完全反応、13名の部分反応)の客観的臨床反応率が明らかにされた。
【0298】
本発明は、において、理解の明瞭のために、図示と実施例に基づいてやや詳細に説明されてきたが、当業者には、いくつかの些少の変更および修飾の実施が可能であることが明白であろう。したがって、この説明および実施例は、本発明の範囲を限定するものと思量してはならない。
【0299】
本明細書で引用される、公刊物、特許出願、および特許を含む参考文献は全て、個々の参考文献が、個別に、特異的に、引用によって含められると表示されて、その全体が本明細書に記載されるのと同程度に、引用によって本明細書に含められる。
【0300】
本発明の好ましい実施態様が、本発明を実行するために、本発明人にとって最善と思われる方式を含めて、本明細書には記載される。これらの好ましい実施態様の変異形が、前述の説明を読むことによって当業者に明らかとなる場合もあろう。本発明人らは、熟練した当業者であれば、そのような変異形を適宜採用することを予期しているが、本発明人らは、本発明は、ここに具体的に記載した以外のやり方でも実施されると予想する。したがって、本発明は、適用される法律の許す限りにおいて、ここに付属する特許請求項に言及される主題の全ての修飾物および等価物を含む。さらに、その、全ての可能な変異形における前述の要素同士の任意の組み合わせも、本明細書において別様に表示されない限り、文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。