【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
脂肪酸生合成経路に由来する生成物(脂肪酸誘導体)を合成することができ、所望によりかかる生成物を発酵ブロスに放出することが出来る組換え微生物が本明細書に開示される。かかる脂肪酸誘導体はとりわけ、バイオ燃料および特殊化学製品として有用である。これらバイオ燃料および特殊化学製品は、さらなる製品、例えば、栄養サプリメント、ポリマー、パラフィン代用品およびパーソナルケア製品の製造に利用できる。
【0006】
本明細書に開示される組換え微生物は、これらに限定されないが以下を含む様々な脂肪酸誘導体を生じるよう操作することが出来る:短鎖アルコール、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノール、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、炭化水素およびろうエステル(wax ester)。
【0007】
一つの例において、本開示は、再生可能な炭素源から生じる脂肪酸誘導体を生産し、所望によりそれを放出するように微生物を改変する方法を提供する。かかる微生物は、例えば、脂肪酸誘導体を生産し、ある例においては分泌するために、再生可能な炭素源を代謝することができる1以上のタンパク質をコードする外来性 DNA 配列を導入することにより、遺伝子操作される。改変された微生物は、出発物質として再生可能な炭素源 (バイオマス)を用いて有用な脂肪酸誘導体を生産するために発酵プロセスにおいて利用可能である。いくつかの例において、既存の遺伝子操作しやすい微生物が、生育、生産の制御および生合成経路効率を下げる副反応の低減または排除のためのその経路の操作の容易性により用いられる。さらに、かかる改変された微生物は、貯蔵または輸送のための特定の方法の必要なく、直接バイオ燃料として利用可能な燃料を作るために再生可能な炭素源を消費するためにも利用できる。別の例において、炭化水素を天然に生産する微生物が、脂肪酸生産を高める外来性核酸配列の発現により炭化水素を過剰生産するように操作される。
【0008】
規定された炭素鎖長、分枝、および飽和レベルを有する脂肪酸誘導体を生産する微生物を本明細書において提供する。具体的な例において、均質な生成物の生産は、発酵および分離に伴う総コストを低下させる。いくつかの例において、少なくとも1つのチオエステラーゼ (EC 3.1.2.14)、および少なくとも1つのろうシンターゼ (EC 2.3.1.75)をコードする1以上の外来性核酸配列を含む微生物が提供される。別の例において、少なくとも1つの チオエステラーゼ (EC 3.1.2.14) および少なくとも1つの アルコール アセチルトランスフェラーゼ (2.3.1.84)をコードする1以上の外来性核酸配列を含む微生物が提供される。さらに別の例において、少なくとも1つの チオエステラーゼ (EC 3.1.2.14)、少なくとも1つの アシル-CoAレダクターゼ (EC 1.2.1.50)および少なくとも1つの アルコール デヒドロゲナーゼ (EC 1.1.1.1)をコードする1以上の外来性核酸配列を含む微生物が提供される。少なくとも1つの チオエステラーゼ (EC 3.1.2.14)および 少なくとも1つの 脂肪アルコール形成アシル-CoAレダクターゼ (1.1.1.*)をコードする1以上の外来性核酸配列を発現する微生物も提供される。外来性核酸配列によってコードされるチオエステラーゼ ペプチドは、均質な生成物を提供するために選択されうる。
【0009】
いくつかの例において、脂肪酸誘導体を生産するよう操作される微生物は、 大腸菌(E. coli)、ゼット・モビリス(Z. mobilis)、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、ビブリオ・ファーニッシ(Vibrio furnissii)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ストレプトマイセテス(Streptomycetes)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophila)、シュードモナス(Pseudomonas)またはミクロコッカス・ロイテウス(Micrococus leuteus)およびそれらの類縁体である。
【0010】
別の例において、炭化水素を内因的に生産する微生物を、脂肪酸生合成経路を本明細書に記載のように最適化することによって炭化水素を過剰生産するよう操作することが出来る。炭化水素を生産することが知られており、本明細書に提供する教示を用いて炭化水素を過剰生産するよう操作されうる例示的な微生物としては、 アルスロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)、バシラス・エスピー(Bacillus sp.)、ボツリオコッカス・ブラウニ(Botryococcus braunii)、クロマチウム・エスピー(Chromatium sp.)、クラドスポリウム・レシナ(Cladosporium resina)(ATCC22711)、クロストリジウム・パステウリアヌム・ブイケーエム(Clostridium pasteurianum VKM)、クロストリジウム・テナノモルフム(Clostridium tenanomorphum)、クロストリジウム・アシディウリキ(Clostridium acidiurici)、コリネバクテリウム種(Corynebacterium spieces)、シアノバクテリア種(cyanobacterial spieces)(ノストック・ムスコルム(Nostoc muscorum)、アナシスティス(Anacystis)(シネココッカス(Synechococcus))・ニドゥランス(nidulans)、フォルミジウム・ルリダム(Phormidium luridum)、クロログロエア・フリツキ(Chlorogloea fritschii)、トリコデスミウム・エリタエウム(Trichodesmium erythaeum)、オシラトリア・ウィリアムシ(Oscillatoria williamsii)、ミクロコレウス・キトノプラセイス(Microcoleus chthonoplaseis)、コッコクロリス・エラベンス(Coccochloris elabens)、アグメネルム・クアドルプリカツム(Agmenellum quadruplicatum)、プレクトネマ・テレブランス(Plectonema terebrans)、エム・ヴァギナツス(M vaginatus)および シー・スコプロルム(C. scopulorum)) 、デスルフォビブリオ・デスルフリカンス(Desulfovibrio desulfuricans)(ATCC29577)、キネオコッカス・ラジオトレランス(Kineococcus radiotolerans)(BAA-149)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)(FD533、ATCC 272、381、382、ISU、540、4698、7468、27141)、ミクロコッカス・エスピー(Micrococcus sp.)(ATCC 146、398、401、533)、ミクロコッカス・ロセウス(Micrococcus roseus)(ATCC 412、416、516)、ミクロコッカス・リソデイクチクス(Micrococcus lysodeikticus)、マイコバクテリウム種(Mycobacterium spieces)、ペニシリウム・エスピー(Penicillium sp.)、アスペルギルス・エスピー(Aspergillus sp.)、トリコデルマ・ビリダ(Trichoderma virida)、プルラリア・プルランス(Pullularia pullulans)、ジェオトガリコッカス・エスピー(Jeotgalicoccus sp.) (エム・カンディカンス(M. candicans))(ATCC 8456)、ロドシュードモナス・スフェロイド(Rhodopseudomonas spheroids)、 クロロビウム・エスピー(Chlorobium sp.)、ロドスピリリウム・ルブラム(Rhodospirillium rubrum)(ATCC11170)、ロドミクロビウム・バニエリ(Rhodomicrobium vannielii)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)(ATCC 13637、17444、17445、17666、17668、17673、17674、17679、17677)、サッカロマイコデス・ルドウィギ (Saccharomycodes ludwigii)(ATCC 22711)、サッカロマイセス・エスピー(Saccharomyces sp.) (オビフォルムス(oviformus)、ルドウィギ(ludwiggi)、トロピカリス(tropicalis))、ビブリオ・ファーニッシ M1、ビブリオ・マリヌス(Vibrio marinus) MP-1、ビブリオ・ポンチクス(Vibrio ponticus)、セッラティア・マリノルブラ(Serratia marinorubra)、ウスティラゴ・マイディス(Ustilago maydis)、ウスティラゴ・ヌダ(Ustilago nuda)、ウロシスティス・アグロピリ(Urocystis agropyri)、スファセロテカ・レイリアナ(Sphacelotheca reiliana)、 およびティレティア・エスピー(Tilletia sp.)(フォエチダ(foetida)、カリエス(caries)、コントロヴェルサ(controversa))が挙げられる。
【0011】
脂肪酸誘導体の生産を可能とする外来性核酸配列を発現するよう操作されていることに加えて、微生物はさらに1以上の機能的に欠失または減弱された内因性遺伝子を有しうる。例えば、ackA (EC 2.7.2.1)、ackB (EC 2.7.2.1)、adhE (EC 1.1.1.1、1.2.1.10)、fabF (EC 2.3.1.179)、 fabR (受入番号 NP_418398)、fadE (EC 1.3.99.3、1.3.99.-)、GST (EC 6.3.2.3)、gpsA (EC 1.1.1.94)、 ldhA (EC 1.1.1.28)、pflB (EC 2.3.1.54)、plsB (EC 2.3.1.15)、poxB (EC 1.2.2.2)、pta (EC 2.3.1.8)、グルタチオンシンターゼ (EC 6.3.2.3) およびそれらの組合せが減弱化されうる。
【0012】
脂肪酸誘導体の生産を可能とする外来性核酸配列を発現するよう操作されていることに加えて、微生物はさらに1以上の過剰発現されるさらなる遺伝子を有しうる。例えば、pdh、panK、aceEF (ピルビン酸および 2-オキソグルタル酸 デヒドロゲナーゼ 複合体のE1p デヒドロゲナーゼ 成分およびE2p ジヒドロリポアミドアシルトランスフェラーゼ 成分をコードする、受入番号: NP_414656、NP_414657、EC: 1.2.4.1. 2.3.1.61、2.3.1.12)、accABCD /fabH /fabD/fabG/acpP/fabF (FASをコードする、受入番号: CAD85557、CAD85558、NP_842277、NP_841683、NP_415613、EC: 2.3.1.180、2.3.1.39、1.1.1.100、1.6.5.3、2.3.1.179)、脂肪-アシルCoAレダクターゼをコードする遺伝子 (受入番号: AAC45217、EC 1.2.1.-)、UdhAまたは類似の遺伝子 (ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼをコードする、受入番号: CAA46822 、EC:1.6.1.1) および脂肪-アシルCoAレダクターゼをコードする遺伝子(受入番号: AAC45217、EC 1.2.1.-)。
【0013】
いくつかの例において、本明細書に記載する微生物は、発酵ブロス1リットル当たり少なくとも 1 mgの脂肪酸誘導体を生産する。別の例において、微生物は発酵ブロス1リットル当たり少なくとも 100 mg/L、500 mg/L、1 g/L、5 g/L、10 g/L、20 g/L、25 g/L、30 g/L、35 g/L、40 g/L、50 g/L、100 g/L、または 120 g/Lの脂肪酸誘導体を生産する。いくつかの例において、脂肪酸誘導体は微生物から生産および放出され、さらに別の例において 、微生物は 生成物の分離の前に溶解される。
【0014】
いくつかの例において、脂肪酸誘導体は、少なくとも 8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、または34 炭素長の炭素鎖を含む。いくつかの例において 少なくとも 50%、60%、70%、80%、85%、90%、または 95%の作られる脂肪酸誘導体生成物は、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、または 34 炭素長の炭素鎖を含む。さらに別の例において、少なくとも 60%、70%、80%、85%、90%、または 95%の脂肪酸誘導体生成物は 1、2、3、4、または5の不飽和点を含む。
【0015】
脂肪酸誘導体を生産する方法も提供される。これらの方法は、本明細書に記載する微生物を培養する工程および発酵ブロスから生成物を分離する工程を含む。
【0016】
これらおよびその他の例は、以下の詳細な記載においてさらに記載する。
【0017】
図面の簡単な説明
図1はFAS 生合成経路を示す。
【0018】
図2は、ろう(wax)を生産する生合成経路を示す。ろうは、宿主細胞内で生産されたアルコールを用いて宿主細胞中で生産されうるかまたは、外来性アルコールを培地に添加することによって生産されうる。ろうを生産するよう設計された微生物は、外来性核酸配列およびチオエステラーゼ (EC 3.1.2.14) 配列を用いてろうシンターゼ 酵素(EC 2.3.1.75)を生産する。ろうの生産を高めるよう調節されうるその他の酵素には、脂肪酸合成に関与する酵素 (FAS 酵素 EC 2.3.1.85)、アシル-CoA シンターゼ (EC 2.3.1.86)、脂肪アルコール 形成アシル-CoAレダクターゼ (EC 1.1.1.*)、アシル-CoAレダクターゼ (1.2.1.50) およびアルコール デヒドロゲナーゼ (EC 1.1.1.1)が含まれる。
【0019】
図3は、脂肪アルコールを生産する生合成経路を示す。規定された炭素鎖長を有する脂肪アルコールは、チオエステラーゼ(EC 3.1.2.14)、およびアシル-CoAレダクターゼ(EC 1.2.1.50)、アルコール デヒドロゲナーゼ (EC 1.1.1.1) と脂肪アルコール 形成アシル-CoAレダクターゼ (FAR、EC 1.1.1*)との組合せをコードする外来性核酸配列を発現させることによって生産されうる。脂肪アルコールの生産を高めるよう調節されうるその他の酵素には、脂肪酸合成に関与する酵素 (FAS 酵素EC 2.3.1.85)、およびアシル-CoA シンターゼ (EC 2.3.1.86)が含まれる。
【0020】
図4は、脂肪酸エステルを生産する生合成経路を示す。規定された炭素鎖長を有する脂肪酸エステルは、様々なチオエステラーゼ(EC 3.1.2.14)、アシル-CoAレダクターゼ (1.2.1.50)、アルコール デヒドロゲナーゼ (EC 1.1.1.1)、および脂肪アルコール 形成アシル-CoAレダクターゼ (FAR、EC 1.1.1*)の組合せ、ならびに、アセチルトランスフェラーゼ (EC 2.3.1.84)を外来性に発現させることにより生産されうる。脂肪酸エステルの生産を高めるよう調節されうるその他の酵素には、脂肪酸 合成に関与する酵素 (FAS 酵素 EC 2.3.1.85)およびアシル-CoA シンターゼ (EC 2.3.1.86)が含まれる。
【0021】
図5は、pCDFDuet-1-fadD-acr1および様々なチオエステラーゼ遺伝子を含むプラスミドで共形質転換された実施例4に記載の株による脂肪アルコール 生産を示す。この株を振盪フラスコ中で0.4% グルコースを含むM9 ミネラル培地で25℃で好気的に培養した。飽和C10、C12、C14、C16 および C18 脂肪アルコールが同定された。少量の C16:1およびC18:1 脂肪アルコールもいくつかのサンプルにおいて検出された。脂肪アルコールを細胞ペレットから酢酸エチルを用いて抽出し、N-トリメチルシリル (TMS) イミダゾールを用いて誘導体化し、検出を向上させた。
【0022】
図6は、生産株からの脂肪アルコールの放出を示す。生産された脂肪アルコールのおよそ 50% が37℃で培養された場合に細胞から放出された。
【0023】
図7A-7D は、アルコール アセチルトランスフェラーゼ (AAT、EC 2.3.1.84)を発現する生産宿主およびろうシンターゼ (EC 2.3.1.75)を発現する生産宿主により生産されたオクチルオクタノエート (C8C8)のGS-MS スペクトルを示す。
図7Aは、株 C41(DE3、ΔfadE/pHZ1.43)/pRSET B+pAS004.114B)の酢酸アセチル抽出物を示し、ここでpHZ1.43 プラスミドはADP1 (ろうシンターゼ)を発現した。
図7B は、株 C41(DE3、ΔfadE/pHZ1.43)/pRSET B+pAS004.114B)の酢酸アセチル抽出物を示し、ここでpHZ1.43 プラスミドはSAATを発現した。
図7Cは、株 C41(DE3、ΔfadE/pHZ1.43)/pRSET B+pAS004.114B)の酢酸アセチル抽出物を示し、ここでpHZ1.43 プラスミドはADP1 (ろうシンターゼ)またはSAATを含んでいなかった。
図7Dは、C41(DE3、ΔfadE/pHZ1.43)/pRSET B+pAS004.114B) (ここでpHZ1.43 プラスミドはSAATを発現した)により生産されたC8C8のマススペクトルおよびフラグメンテーションパターンを示す。
【0024】
図8は、 A. baylyi ADP1 (WSadp1) からのろうシンターゼが生産宿主においてCuphea hookeriana からのチオエステラーゼ遺伝子と共発現された場合に作られたエチルエステルの分布を示す。
【0025】
図9Aおよび9Bは、 GC/MS 分析のクロマトグラムを示す。
図9Aは、プラスミド pCDFDuet-1-fadD-WSadp1、pETDuet-1-tesAで形質転換された大腸菌 LS9001 株の培養物のエチル抽出物のクロマトグラムを示す。エタノールを発酵に加えた。
図9Bは、エチルヘキサデカノエートおよび参照として用いた エチルオレエートのクロマトグラムを示す。
【0026】
図10は、脂肪酸誘導体生産を高めるために過剰発現または減弱されうる様々な遺伝子を同定する表を示す。この表はまた、脂肪酸誘導体生成物の構造を変化させるよう調節されうる様々な遺伝子も同定する。当業者であれば、脂肪酸誘導体の構造を変化させるのに用いられる遺伝子のいくつかは、脂肪酸誘導体の生産も上昇させることを理解するであろう。
【0027】
略語および用語
以下の用語および方法の説明は、本開示を詳細に説明するため、および本開示を実施する当業者へのガイドのために提供する。本明細書において用いる場合、「含む」とは、「包含する」という意味であり、単数形「ある」または「1つの」または「その」は、特に断りのない限り複数形を包含する。例えば、「細胞を含む」という記載は、1または複数のかかる細胞を包含し、「チオエステラーゼを含む」という記載は、1以上のチオエステラーゼ ペプチドおよび当業者に知られたその均等物に対する言及を包含する、といった具合である。用語「または」とは、特に断りのない限り、記載された選択肢である複数の要素の1つの要素または2以上の要素の組合せを意味する。例えば、「チオエステラーゼ活性または脂肪アルコール-形成アシル-CoAレダクターゼ活性」という表現は、チオエステラーゼ 活性、脂肪アルコール 形成アシル-CoAレダクターゼ 活性、または脂肪アルコール 形成アシル-CoAレダクターゼ 活性とチオエステラーゼ 活性との両方の組合せを指す。
【0028】
特に断りのない限り、本明細書において用いるすべての技術および科学用語は本開示が属する分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載するものと類似または同等の方法および材料が本開示の実施または試験において使用できるが、好適な方法および材料を以下に記載する。材料、方法および実施例は単に例示のためのものであり、限定の意図はない。本開示のその他の特徴は以下の詳細な説明および請求の範囲から明らかである。
【0029】
受入番号: 本明細書にわたり、受入番号は、米国の国立衛生研究所により維持されるNCBI データベース (National Center for Biotechnology Information)に由来する。受入番号は、2007年3月27日にデータベースにおいて提供されているものである。
【0030】
酵素分類番号 (EC): 本明細書にわたり提供されているEC 番号は東京大学に部分的に支援されているKyoto Encyclopedia of Genes and Genomicsに維持されているKEGG Ligand データベースに由来する。EC番号は、2007年3月27日にデータベースにおいて提供されているものである。
【0031】
減弱する:あるものの影響、活性または強度を弱めることである。一例において、フィードバック阻害または生成物または反応物ではない組成物によって起こる阻害(非経路特異的フィードバック)に対する特定の酵素の感受性は、酵素活性が化合物の存在によって影響されないように弱められる。例えば、fabH 遺伝子およびその対応するアミノ酸配列は温度感受性であり、温度変化に対する感受性を低下するよう変化されうる。fabH 遺伝子の減弱は分枝アミノ酸が望ましい場合に利用できる。別の例において、活性が低くなるよう改変された酵素は減弱されたと称されうる。
【0032】
酵素の機能的欠失は、酵素の減弱のために用いられ得る。機能的欠失は、遺伝子配列または遺伝子配列の転写を制御する配列に対してなされる突然変異、部分的または完全な欠失、挿入、またはその他の変異であって、遺伝子産物の生産を低下または阻害するか、または遺伝子産物を非機能的にするものである (即ち、plsB 遺伝子に対する本明細書に記載する突然変異)。例えば、大腸菌におけるfabRの機能的欠失は、脂肪酸生合成経路の抑制を低下させ、大腸菌により不飽和の脂肪酸(UFA)を生産させる。いくつかの例において 、機能的欠失は、ノックアウト突然変異として記載される。
【0033】
当業者であれば酵素活性を減弱させる多くの方法が存在することを理解している。例えば、減弱は、核酸配列を変化させることによりアミノ酸配列変化を導入すること、より活性の低いプロモーターの制御下に遺伝子をおくこと、目的遺伝子を標的化する干渉RNA、リボザイムまたはアンチセンス配列を発現させること、またはその他の当該技術分野で知られた技術により達成することが出来る。
【0034】
炭素源:一般に、原核または単純な真核細胞生育のための炭素の源として使用するために好適な基質または化合物をいう。炭素源は様々な形態であり得、これらに限定されないが、ポリマー、炭水化物、酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、アミノ酸、ペプチド等が含まれる。これらには、例えば、様々な単糖、例えば、グルコース、オリゴ糖、多糖、セルロース性材料、キシロース、およびアラビノース、二糖、例えば、スクロース、飽和または不飽和脂肪酸、コハク酸、乳酸、酢酸、エタノール等またはそれらの混合物が含まれる。炭素源はさらに光合成産物であってもよく、これに限定されないが、グルコースが含まれる。
【0035】
cDNA (相補的 DNA):内部の非コードセグメント (イントロン) および転写を規定する調節配列を欠くDNA片である。cDNAは、細胞から抽出したメッセンジャー RNAからの逆転写により合成されうる。
【0036】
欠失: 核酸分子からの1以上の ヌクレオチドまたはタンパク質からの1以上の アミノ酸の除去であり、その両側の領域が一緒にされ連結される。
【0037】
検出可能:存在していることが確認できること。例えば、反応物からの生成物の生産、例えば、C18 脂肪酸の生産は、以下の実施例11に示す方法を用いて検出可能である。
【0038】
DNA: デオキシリボ核酸。DNAはほとんどの生物の遺伝子材料を含む長鎖 ポリマーである(いくつかのウイルスは、リボ核酸、RNAを含む遺伝子を有する)。 DNA ポリマーにおける反復単位は4種類のヌクレオチドであり、そのそれぞれはアデニン、グアニン、シトシンおよびチミン の4つの塩基の1つを含み、それはデオキシリボース糖に結合しており、糖にはリン酸基が結合している。DNA 分子におけるコドンと称されるヌクレオチドのトリプレットがペプチドにおけるアミノ酸をコードする。コドンという用語はまた、DNA 配列が転写されるmRNAにおける3つのヌクレオチドの対応する(および相補的な) 配列についても用いられる。
【0039】
内因性:核酸分子および特定の細胞または微生物に言及して本明細書において用いる場合、細胞中にあって組換え操作技術を用いて細胞に導入されたものではない核酸配列またはペプチドをいう。例えば、遺伝子は、細胞が元々天然から単離された場合に細胞中に存在していた。遺伝子は、制御配列、例えば、転写または翻訳を活性化するプロモーターまたはエンハンサー配列が組換え技術を介して改変された場合も内因性であると考えられる。
【0040】
外来性:核酸分子および特定の細胞に言及して本明細書において用いる場合、天然にみられる特定の細胞に起因していない核酸分子をいう。したがって、非天然核酸分子は細胞にいったん導入されると細胞に対して外来性であるとみなされる。天然の核酸分子も特定の細胞に対して外来性であることがある。例えば、細胞 X から単離された全長コード配列は、そのコード配列が細胞 Yに導入されると、XとYとが同じ細胞タイプであっても細胞 Yに対して外来性核酸である。
【0041】
発現:遺伝子にコードされる情報が細胞の構造および機能、例えば、タンパク質、トランスファー RNA、またはリボソーム RNAに変換されるプロセスである。発現した遺伝子には mRNAに転写され、次いでタンパク質に翻訳されるものもあるし 、RNAに転写されるがタンパク質に翻訳されないものもある (例えば、トランスファーおよびリボソーム RNA)。
【0042】
脂肪エステル: 脂肪酸からできたあらゆるエステルを含む。脂肪酸における炭素鎖は本明細書に記載する修飾のあらゆる組合せを含みうる。例えば、炭素鎖は1以上の 不飽和点、1以上の分枝点、例えば環状分枝を含み得、短鎖または長鎖に操作されうる。脂肪酸エステルを形成するためにはあらゆるアルコールが利用でき、例えば、脂肪酸生合成経路由来のアルコール、生産宿主により非脂肪酸生合成経路を介して生産されたアルコール、および発酵ブロスにおいて供給されるアルコールが挙げられる。
【0043】
脂肪酸誘導体:宿主生物の脂肪酸生合成経路から部分的にはできている生成物を含む。脂肪酸生合成経路は、本明細書に記載のように脂肪酸誘導体を生産するよう操作されうる脂肪酸 シンターゼ 酵素を含み、いくつかの例においてさらなる酵素とともに発現されて所望の炭素鎖特徴を有する脂肪酸誘導体を生産することができる。例示的な脂肪酸誘導体としては、例えば、短鎖および長鎖アルコール、炭化水素および脂肪酸エステル、例えばろうが挙げられる。
【0044】
発酵ブロス:微生物(即ち、炭素を活性に代謝する微生物)の生命を支持するあらゆる培地を含む。発酵培地は通常炭素源を含む。炭素源は、さらなる酵素の有無に拘わらず、微生物によってエネルギーのために利用されうるあらゆるものでありうる。
【0045】
炭化水素: 元素、炭素 (C) および水素 (H)を含む化学物質を包含する。すべての炭化水素は、炭素バックボーンおよびそのバックボーンに結合した水素原子からなる。この用語は、用語「脂肪族炭化水素」の短縮形として用いられることがある。基本的に3つのタイプの炭化水素が存在する: (1)少なくとも1つの 芳香族環を有する芳香族炭化水素; (2) アルカンとも称され、二重、三重または芳香族結合を有さない、飽和炭化水素;および(3)炭素原子間に1以上の二重 または三重結合を有し、アルケン、アルキンおよびジエンに分けられる不飽和炭化水素。液体の地質から抽出された炭化水素は、石油 (逐語的には「ロックオイル」)またはミネラルオイルと称され、ガス状の地質由来の炭化水素は天然ガスと称される。すべてが有機化学物質の生産のための原材料としての燃料および原料の重要な源であり、石油地質学の手段を用いて地球の地表面下に通常見いだされる。堆積岩中の石油備蓄はエネルギーおよび化学工業のための炭化水素の主な源である。炭化水素は経済的に非常に重要である。というのはそれらは主な化石燃料 (石炭、石油、天然ガス、等) およびバイオ燃料ならびにプラスチック、ろう、溶媒および油の構成成分を包含するからである。
【0046】
単離: 「単離された」生物学的成分 (例えば、核酸分子、タンパク質、または細胞)は実質的に成分が天然に存在するその他の生物学的成分、例えば、その他の染色体および 染色体外 DNA およびRNA、およびタンパク質から分離または精製されている。「単離された」核酸分子およびタンパク質は、標準的精製方法によって精製された核酸分子およびタンパク質を含む。この用語はまた、宿主細胞において組換え発現により調製された核酸分子およびタンパク質、ならびに化学合成された核酸分子およびタンパク質も包含する。
【0047】
一例において、単離されているとは、それが由来する生物の天然ゲノムにおいて それが直近に隣接している配列の両方(一方は5’末端および一方は3’末端)に直近していない天然核酸分子をいう。
【0048】
微生物: 古細菌ドメイン、真正細菌ドメインおよび真核生物ドメインに由来する原核および真核微生物種を含み、後者には酵母および糸状菌、原生動物、藻類、またはより高等の原生生物が含まれる。用語「微生物細胞」および「微生物(microbe)」は微生物という用語と互換的に用いられる。
【0049】
核酸分子: RNAと DNA 分子との両方を包含し、限定されないが、cDNA、ゲノム DNA、およびmRNAが含まれる。合成核酸分子、例えば、化学合成されたものまたは組換え生産されたものが含まれる。核酸分子は二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖である場合、核酸分子はセンス鎖またはアンチセンス鎖であり得る。さらに、核酸分子は環状または直鎖状であり得る。
【0050】
作動可能に連結:第一の核酸配列が第二の核酸配列と機能的関係に位置している場合、第一の核酸配列は第二の核酸配列に作動可能に連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響する場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結している。一般に、作動可能に連結した DNA 配列は近接しており、2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合、同じリーディングフレーム内にある。単一のメッセンジャー RNAとしてタンデムに転写される別々の遺伝子の立体配置はオペロンと称される。したがって単一のプロモーターの転写調節下に、例えばプラスミド ベクター中に遺伝子を近接させることは、合成オペロンを構成する。
【0051】
ORF (オープンリーディングフレーム): 一連の、終止コドンなしにアミノ酸をコードするヌクレオチドトリプレット (コドン)。これら配列は通常ペプチドへと翻訳されうる。
【0052】
過剰発現: ある遺伝子が、その遺伝子の内因性転写速度と比較して高い速度で転写されるようにされている場合である。いくつかの例において、過剰発現はさらにその遺伝子の内因性翻訳速度と比較して遺伝子の翻訳の高い速度も含む。過剰発現を試験する方法は当該技術分野で周知であり、例えば 転写された RNA レベルはrtPCRを用いて評価でき、タンパク質 レベルはSDS pageゲル分析を用いて評価できる。
【0053】
精製:精製という用語は完全に純粋であることを要求するわけではない; むしろ、それは相対的用語として意図される。したがって、例えば、精製脂肪酸誘導体調製物、例えば、ろう、または脂肪酸エステル調製物は、生成物が細胞内の環境におけるよりも生成物がより高濃度にあるものである。例えば、精製ろうは、それに付随しうる細胞成分 (核酸、脂質、炭水化物、及びその他のペプチド)から実質的に分離されたものである。別の例において、精製ろう調製物は、ろうが実質的に汚染物質、例えば、発酵の後に存在しうるもの、を含まないものである。
【0054】
一例において、脂肪酸エステルはサンプルの少なくとも 約 50重量%が脂肪酸エステルで構成されている場合、例えばサンプルの少なくとも 約 60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、98%、または99% あるいはそれ以上が脂肪酸エステルから構成されている場合、精製されている。ろう、脂肪アルコールおよび脂肪酸エステルの精製に用いうる方法の例としては、以下の実施例11に記載の方法が挙げられる。
【0055】
組換え:組換え核酸分子またはタンパク質は、天然ではない配列を有するもの、配列の2つの別々のセグメントの人工的組合せにより作られた配列を有するもの、またはその両方である。この人工的組合せは、例えば、核酸分子またはタンパク質の単離されたセグメントの化学合成または人工的操作によって、例えば、 遺伝子操作技術によって達成されうる。組換えはまた、人工的に操作されているが、核酸が単離された生物にみられるものと同じ調節配列およびコード領域を含む核酸分子を記載するのにも用いられる。組換え 細胞または微生物は、外来性 核酸分子、例えば、組換え核酸分子を含むものである。
【0056】
放出:化合物の細胞の内側(細胞内)から細胞の外側(細胞外)への移動である。移動は能動的であっても受動的であってもよい。放出が能動的である場合、それは1以上の トランスポーターペプチドによって促進され得、いくつかの例においてそれはエネルギーを消費しうる。放出が受動的である場合、それは膜を横切る拡散を介して起こり得、細胞外環境から連続的に所望の化合物を回収することによって促進され得、さらなる拡散が促進される。化合物の放出は細胞の溶解によっても達成されうる。
【0057】
界面活性剤:それが溶解されている液体の表面張力を低下させることが出来る物質である。それは典型的には水溶性頭部と炭化水素鎖または尾部から構成される。水溶性基は親水性であり、イオン性または非イオン性であり得、炭化水素鎖は疎水性である。界面活性剤は様々な製品、例えば、洗浄剤および洗剤に用いられており、織物、革および紙の補助剤として、化学的プロセスにおいて、化粧品および医薬品において、食品産業および農業においても使用されている。さらに、それは環境にアクセスしにくいことが見いだされている粗製油の抽出および単離を助けるためにまたは水乳濁液としても利用されうる。
【0058】
異なる用途を特徴とする4つのタイプの界面活性剤が存在する。アニオン性界面活性剤は洗浄剤様活性を有し、一般に洗浄用途に用いられる。カチオン性界面活性剤は長鎖炭化水素を含み、タンパク質および合成 ポリマーの処理にしばしば用いられ、あるいは織物柔軟剤およびヘアコンディショナーの成分である。両性界面活性剤も長鎖炭化水素を含み、典型的にはシャンプーに用いられる。非イオン性界面活性剤は 一般にクリーニング製品に用いられる。
【0059】
形質転換または組換え細胞:例えば分子生物学技術によって例えば、 アシル-CoA シンターゼをコードする核酸分子といった核酸分子が導入された細胞である。形質転換は核酸分子が細胞に導入されうるあらゆる技術を含み、例えば、これらに限定されないが、ウイルスベクターによるトランスフェクション、コンジュゲーション、プラスミド ベクターによる形質転換、および裸のDNAの、エレクトロポレーション、リポフェクション、およびパーティクルガン加速による導入が挙げられる。
【0060】
生成物の生産を可能とする条件下:所望の生成物、例えば、脂肪酸、炭化水素、脂肪アルコール、ろう、または脂肪酸エステルを微生物が生産するのを可能とするあらゆる発酵条件である。発酵条件には、通常、温度範囲、通気レベル、および一緒にすると微生物の生育を可能とする培地の選択が含まれる。例示的な培地としてはブロスまたはゲルが含まれる。一般に、培地は炭素源、例えば、 グルコース、フルクトース、セルロース等を含み、これは微生物によって直接代謝されうるか、あるいは酵素が炭素源の代謝を促進するために培地中に使用されうる。培養条件が生成物の生産を可能とするかを決定するために、微生物を24、36、または48 時間培養すればよく、サンプルを得て分析するとよい。例えば、細胞が培養されるサンプルまたは培地における細胞を、所望の生成物の存在について試験するとよい。生成物の存在を試験する場合、例えば、以下の実施例に提供するアッセイを用いることが出来る。
【0061】
ベクター:細胞に導入されると、形質転換細胞を生じる核酸分子である。ベクターは、細胞中でそれを複製可能とする核酸配列、例えば、複製起点を含みうる。ベクターはまた、1以上の 選択可能マーカー遺伝子および当該技術分野において知られているその他の遺伝的要素を含みうる。
【0062】
ろう:決められたセットの物理的条件下で固体または柔軟な物質を形成する様々な 脂肪酸エステルである。ろうと称される脂肪酸エステルは一般にろうではない脂肪酸エステルよりも長い炭素鎖を有する。例えば、ろうは一般に室温で柔軟な物質を形成する。
【0063】
詳細な説明
I.脂肪酸誘導体の生産
外来性 DNA 配列が形質転換される宿主生物は改変された宿主生物でもよく、例えば、アシル-ACPまたはアシル-CoAの生産を上昇させるよう、脂肪酸誘導体および中間体の異化を低下させるよう、または生合成経路の特定の点でのフィードバック阻害を低下させるよう改変された生物であってもよい。本明細書に記載する遺伝子を改変することに加えて、さらなる細胞資源を、脂肪酸、例えば、乳酸、コハク酸を過剰生産するよう転用してもよく、および/または、酢酸経路を減弱させてもよく、アセチル-CoA カルボキシラーゼ (ACC)を過剰発現させてもよい。本明細書に記載する生産宿主に対する改変は、ゲノムの改変、染色体外発現系、またはその組合せを介するものであってよい。経路の概観を、
図1および2に提供する。
【0064】
A.アセチル-CoA - マロニル-CoA からアシル-ACP
脂肪酸 シンターゼ (FAS)はアシル鎖の開始および伸長を触媒するペプチドの一群である(Marrakchi et al.、Biochemical Society、30:1050-1055、2002)。アシル キャリアタンパク質 (ACP)はFAS 経路における酵素とともに、生産される脂肪酸の長さ、飽和および分枝の程度を制御する。FASに含まれうる酵素としては、 AccABCD、FabD、FabH、FabG、FabA、FabZ、FabI、FabK、FabL、FabM、FabB、および FabFが挙げられる。所望の生成物に応じて、これらの遺伝子の1以上が減弱または過剰発現されうる。
【0065】
例えば、生産宿主における脂肪酸生合成経路は、前駆体である アセチル-CoAおよびマロニル-CoAを用いる (
図2)。これら成分を過剰生産するよう操作された大腸菌 またはその他の 宿主生物は、特定の生産物 (例えば、脂肪酸エステル、炭化水素、脂肪アルコール)を提供するための後での遺伝子操作工程のための出発点として役立ちうる。数種類の改変を組み合わせてまたは別々に行うことが出来、それにより宿主株によるアセチル CoA/マロニル CoA/脂肪酸および脂肪酸誘導体生産が上昇する。例えば、アセチル CoA 生産を上昇させるために、すべて構成的、またはその他の制御可能なプロモーターの制御下にある、pdh、panK、aceEF、(ピルビン酸および2-オキソグルタル酸 デヒドロゲナーゼ複合体のE1p デヒドロゲナーゼ 成分および E2p ジヒドロリポアミドアシルトランスフェラーゼ 成分をコードする)、fabH /fabD/fabG/acpP/fabF、およびいくつかの例においてさらなる脂肪-アシルCoAレダクターゼおよびアルデヒド デカルボニラーゼをコードするDNAを有するプラスミドを構築できる。これらの遺伝子の例示的なGenbank 受入番号は以下の通り: pdh (BAB34380、AAC73227、AAC73226)、panK (coaAとしても知られる、AAC76952)、aceEF (AAC73227、AAC73226)、fabH (AAC74175)、fabD (AAC74176)、fabG (AAC74177)、acpP (AAC74178)、fabF (AAC74179)。
【0066】
さらに、対応する遺伝子のヌルまたは欠失 突然変異を含む条件的に複製可能なまたは複製不可能なプラスミドによる形質転換により、またはプロモーターまたはエンハンサー 配列を置換することにより操作された微生物において、fadE、gpsA、ldhA、pflb、adhE、pta、poxB、ackA、および/または ackB をノックアウトしてもよいし、それらの発現 レベルを低下させてもよい。これらの遺伝子の例示的な Genbank 受入番号は以下の通り; fadE (AAC73325)、gspA (AAC76632)、ldhA ( AAC74462)、pflb (AAC73989)、adhE (AAC74323)、pta (AAC75357)、poxB (AAC73958)、ackA (AAC75356)、および ackB (BAB81430)。
【0067】
その結果得られる操作された微生物は、所望の環境、例えば、グリセロールが制限された環境(培養培地において1% w/v未満)において培養するとよい。したがって、かかる微生物はアセチル-CoA 生産 レベルが上昇する。マロニル-CoA 過剰生産は、上記の微生物を、デノボに合成されたプラスミドに含まれるaccABCD (アセチル CoA カルボキシラーゼ、例えば 受入番号 AAC73296、EC 6.4.1.2) をコードするDNA により操作することによって影響されうる。脂肪酸 過剰生産は、デノボに合成されたプラスミドにリパーゼ (例えば 受入番号 CAA89087、CAA98876)をコードするDNAをさらに含めることによって達成できる。
【0068】
いくつかの例において、アセチル-CoA カルボキシラーゼ (ACC)は、その細胞内濃度を例えばネイティブな 発現 レベルと比較して少なくとも 2-倍、例えば、 少なくとも 5-倍、または少なくとも 10-倍上昇させるように過剰発現される。
【0069】
さらに、plsB (例えば 受入番号 AAC77011) D311E 突然変異をアシル-CoAのプールに対する制限を除くために利用できる。
【0070】
さらに、sfa遺伝子(FabAのサプレッサー、例えば 受入番号 AAN79592)の過剰発現を生産宿主に含めて、モノ不飽和 脂肪酸の生産を上昇させることが出来る(Rock et al.、J. Bacteriology 178:5382-5387、1996)。
【0071】
B.アシル-ACP から脂肪酸
脂肪酸誘導体の均質な集団の生産のために生産宿主を操作するために、1以上の 内因性遺伝子を減弱または機能的に欠失させることができ、1以上の チオエステラーゼを発現させることが出来る。例えば、C10 脂肪酸誘導体は、 C18:1-ACPを使用するチオエステラーゼ C18 (例えば 受入番号AAC73596およびP0ADA1 )の減弱、およびC10-ACPを使用するチオエステラーゼ C10 (例えば 受入番号 Q39513)の発現により生産できる。このようにして、炭素鎖長10を有する脂肪酸誘導体の比較的均質な 集団が結果として得られる。別の例において、C14 脂肪酸誘導体は非-C14 脂肪酸を生産する内因性 チオエステラーゼを減弱させ、 チオエステラーゼ 受入番号 Q39473 (C14-ACPを使用する)を発現させることにより生産することができる。さらに別の例において、C12 脂肪酸誘導体は C12-ACPを使用するチオエステラーゼ (例えば 受入番号 Q41635)を発現させ、非-C12 脂肪酸を生産するチオエステラーゼを減弱することによって生産することができる。アセチル CoA、マロニル CoA、および脂肪酸過剰生産は当該技術分野において知られている方法、例えば細胞溶解の後に放射性前駆体、HPLC、およびGC-MSを用いることによって確認することが出来る。
【0072】
表 1
チオエステラーゼ
【表1】
*Mayer et al.、BMC Plant Biology 7:1-11、2007
【0073】
C.脂肪酸からアシル-CoA
生産宿主は、様々な長さの脂肪酸を生産することが知られているペプチドを用いて操作することができる。脂肪酸を作る1つの方法は、1以上の アシル-CoA シンターゼ ペプチド (EC 2.3.1.86)の発現を上昇させること、または1以上の アシル-CoA シンターゼ ペプチド(EC 2.3.1.86)のより活性な形態を発現させることを含む。
【0074】
本明細書において用いる場合、アシル-CoA シンターゼは、酵素 分類番号 EC 2.3.1.86におけるペプチド、ならびに脂肪酸からアシル-CoAの変換を触媒することが出来るその他のあらゆるペプチドを含む。さらに、当業者であれば、いくつかのアシル-CoA シンターゼ ペプチドはその他の反応を同様に触媒すること、例えばいくつかのアシル-CoA シンターゼ ペプチドは脂肪酸に加えてその他の基質を受け入れることを理解している。かかる非特異的 アシル-CoA シンターゼ ペプチドも、それゆえ含まれる。アシル-CoA シンターゼ ペプチド 配列は公共源から入手できる。例示的なGenBank 受入番号を
図10に提供する。
【0075】
D.アシル-CoAから脂肪アルコール
生産宿主はアシル-CoAから脂肪アルコールを生産することが知られているポリペプチドを用いて操作することができる。脂肪アルコールを作る1つの方法は、脂肪アルコール 形成アシル-CoAレダクターゼ (FAR、EC 1.1.1.*)、またはアシル-CoAレダクターゼ (EC 1.2.1.50) およびアルコール デヒドロゲナーゼ (EC 1.1.1.1)の発現を上昇させることまたはそれらのより活性な形態を発現させることを含む。以下、脂肪アルコール 形成アシル-CoAレダクターゼ (FAR、EC 1.1.1.*)、アシル-CoAレダクターゼ(EC 1.2.1.50) およびアルコール デヒドロゲナーゼ (EC 1.1.1.1)を脂肪アルコール形成ペプチドと総称する。いくつかの例において3つのすべての脂肪アルコール 形成遺伝子を生産宿主において過剰発現させるとよく、さらに別の例において 1以上の脂肪アルコール 形成遺伝子を過剰発現させるとよい。
【0076】
本明細書において用いる場合、脂肪アルコール形成ペプチドは、酵素 分類番号 EC 1.1.1.*、1.2.1.50、および1.1.1.1におけるペプチド、ならびにアシル-CoAから脂肪アルコールへの変換を触媒することが出来るその他のすべてのペプチドを含む。さらに、当業者であれば、いくつかの脂肪アルコール形成ペプチドはその他の反応も同様に触媒すること、例えばいくつかのアシル-CoAレダクターゼ ペプチドは脂肪酸に加えてその他の基質も受け入れることを理解している。かかる非特異的 ペプチドも、それゆえ含まれる。脂肪アルコール形成ペプチド配列は公共源から入手できる。 例示的な GenBank 受入番号を
図10に提供する。
【0077】
脂肪アルコールは炭化水素に基づく界面活性剤とも記載される。界面活性剤生産のために、微生物は再生可能な炭素源から界面活性剤を生産するよう改変される。かかる微生物は、脂肪酸を 脂肪アルデヒドに変換することができるタンパク質をコードする第一の外来性 DNA 配列と脂肪アルデヒドをアルコールに変換することができるタンパク質をコードする第二の外来性 DNA 配列とを含む。いくつかの例において、第一の外来性 DNA 配列は脂肪酸 レダクターゼをコードする。一つの態様において、第二の外来性 DNA 配列は哺乳類ミクロソーム アルデヒド レダクターゼまたは長鎖 アルデヒド デヒドロゲナーゼをコードする。さらなる例において、第一および第二の外来性 DNA 配列は、 Arthrobacter AK 19、Rhodotorula glutinins、Acinobacter sp 株 M-1、または Candida lipolyticaからの複数酵素複合体に由来する。一つの態様において、第一および第二の 異種 DNA 配列はAcinobacter sp 株 M-1または Candida lipolyticaからの複数酵素複合体に由来する。
【0078】
界面活性剤 生産に利用できる脂肪酸を長鎖 アルコールに変換するタンパク質をコードする異種 DNA 配列のさらなる源としては、これらに限定されないが、Mortierella alpina (ATCC 32222)、Crytococcus curvatus、(Apiotricum curvatumとも称される)、Alcanivorax jadensis (T9T =DSM 12718 =ATCC 700854)、Acinetobacter sp. HO1-N、(ATCC 14987)およびロドコッカス・オパクス (PD630 DSMZ 44193)が挙げられる。
【0079】
一例において、脂肪酸誘導体は6から36 炭素原子に限定された炭素原子を含有する飽和または不飽和 界面活性剤生成物である。別の例において、界面活性剤生成物は24から 32 炭素原子に限定された炭素原子を含有する。
【0080】
界面活性剤を生産するために適当な 宿主は 真核または原核微生物のいずれでもよい。例示的な 宿主としては、Arthrobacter AK 19、Rhodotorula glutinins、Acinobacter sp 株 M-1、Arabidopsis thalania、または Candida lipolytica 、サッカロマイセス・セレビシエ、およびアセチル CoA カルボキシラーゼを発現するよう操作された大腸菌が挙げられる。脂質および油の形態で高レベルの界面活性剤 前駆体を合成する生得的な能力を示す宿主、例えば、 ロドコッカス・オパクス、Arthrobacter AK 19、Rhodotorula glutinins、アセチル CoA カルボキシラーゼを発現するよう操作された大腸菌、及びその他の油性細菌、酵母、および真菌も利用可能である。
【0081】
E. 脂肪アルコールから脂肪エステル
生産宿主は様々な 長さの脂肪エステルを生産することが知られているポリペプチドを用いて操作することができる。脂肪エステルを作る1つの方法は、1以上の アルコール O-アセチルトランスフェラーゼ ペプチド (EC 2.3.1.84)の発現を上昇させることまたはそのより活性な形態を発現させることを含む。これらのペプチドはアセチル-CoA とアルコールとからCoAおよび酢酸エステルを形成する反応を触媒する。いくつかの例において 、アルコール O-アセチルトランスフェラーゼ ペプチドは、選択されたチオエステラーゼ ペプチド、FAS ペプチドおよび脂肪アルコール形成ペプチドとともに発現させることが出来、それによって炭素鎖長、飽和および分枝の程度が制御できる。場合によっては、bkd オペロンを、分枝脂肪酸 前駆体の生産を可能にするために共発現させることができる。
【0082】
本明細書において用いる場合、アルコール O-アセチルトランスフェラーゼ ペプチドは、酵素 分類番号 EC 2.3.1.84におけるペプチド、ならびにアセチル-CoAとアルコールとからCoAおよび酢酸エステルを形成する変換を触媒することが出来るあらゆるその他のペプチドを含む。さらに、当業者であれば、アルコール O-アセチルトランスフェラーゼ ペプチドはその他の反応も同様に触媒すること、例えばいくつかのアルコール O-アセチルトランスフェラーゼ ペプチドは脂肪アルコールまたはアセチル-CoA チオエステルに加えてその他の基質、即ち例えば、その他のアルコールおよびその他のアシル-CoA チオエステルを受け入れることを認識しているであろう。かかる非特異的または多様な特異性のアルコール O-アセチルトランスフェラーゼ ペプチドも、それゆえ含まれる。アルコール O-アセチルトランスフェラーゼ ペプチド 配列は公共源から入手可能である。例示的な GenBank 受入番号を
図10に提供する。特定の アルコール O-アセチルトランスフェラーゼ ペプチドの活性を特徴づけるアッセイは当該技術分野で周知である。ドナーアシル基 またはアクセプター アルコール 部分に対する新規な活性および特異性を有する操作された O-アセチルトランスフェラーゼおよび O-アシルトランスフェラーゼを作ることが可能である。操作された酵素は、当該技術分野においてよく記載されている合理的および進化的 アプローチを介して作成することが出来る。
【0083】
F.アシル-CoAから脂肪エステル(バイオディーゼルおよびろう)
生産宿主は、アシル-CoAとアルコールから脂肪酸エステルを生産することが知られているペプチドを用いて操作することができる。いくつかの例において、アルコールは発酵培地中に提供され、別の例において、生産宿主が本明細書に記載のようにアルコールを提供しうる。当業者であれば、構造的に、脂肪酸エステルは A および B側を有していることを認識しているであろう。 本明細書に記載のように、エステルのA側はアルコールにより寄与される炭素鎖を記載するために用いられ、エステルのB側はアシル-CoAにより寄与される炭素鎖を記載するために用いられる。いずれの鎖も飽和または不飽和であってよく、分枝していてもしていなくてもよい。生産宿主は脂肪アルコールまたは短鎖 アルコールを生産するよう操作することができる。生産宿主はまた、特定のアシル-CoA 分子を生産するよう操作することもできる。本明細書において用いる場合、脂肪酸エステルは、脂肪アシル-チオエステルおよびアルコールに由来するエステルであり、エステルのA側およびB側は独立に長さにおいて異なっていてもよい。一般に、エステルのA側は 少なくとも 1、2、3、4、5、6、7、または8 炭素の長さであり、エステルのB側は、8、10、12、14、16、18、20、22、24、または26 炭素の長さである。A側およびB側は、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和であってよい。
【0084】
脂肪エステルの生産、例えばアシル-CoAとアルコールからのろうの生産は、既知のポリペプチドを用いて操作することができる。本明細書において用いる場合、ろうは長鎖 脂肪酸エステルであり、エステルのA側およびB側は長さにおいて独立に異なっていてもよい。 一般に、エステルのA側は少なくとも 8、10、12、14、16、18、20、22、24、または26 炭素の長さである。同様に、エステルのB側は少なくとも 8、10、12、14、16、18、20、22、24、または26 炭素の長さである。A側および B側は、モノ-、ジ-、トリ- 不飽和であってよい。脂肪エステルの生産、例えばアシル-CoAとアルコールからのろうの生産は既知のポリペプチドを用いて操作することができる。脂肪エステルを作る1つの方法は、1以上の ろうシンターゼ (EC 2.3.1.75)の発現を上昇させることまたはそれらのより活性な形態を発現させることを含む。
【0085】
本明細書において用いる場合、ろうシンターゼは、酵素 分類番号 EC 2.3.1.75におけるペプチド、ならびにアシル-チオエステルの脂肪エステルへの変換を触媒することが出来るその他のあらゆるペプチドを含む。さらに、当業者であれば、いくつかのろうシンターゼ ペプチドはその他の反応も同様に触媒すること、例えばいくつかのろうシンターゼ ペプチドは 短鎖 アシル-CoAと短鎖 アルコールとを受け入れて脂肪エステルを生産することを認識しているであろう。かかる非特異的 ろうシンターゼも、それゆえ含まれる。ろうシンターゼ ペプチド 配列は公共源から入手可能である。例示的な GenBank 受入番号を
図10に提供する。ろうシンターゼ 活性を同定する方法は米国特許第7,118,896号に提供されており、これは引用により本明細書に含める。
【0086】
具体的な例において、所望の生成物が脂肪エステルに基づくバイオ燃料である場合、微生物は、再生可能エネルギー 源から作られる脂肪エステルを生産するよう改変される。 かかる微生物は、発現されると該微生物に再生可能エネルギー 源から飽和、不飽和または分枝脂肪エステルを合成する能力を付与するろうエステル シンターゼをコードする外来性 DNA 配列を含む。いくつかの態様において、ろうエステル 合成 タンパク質としては、これらに限定されないが以下が挙げられる: 脂肪酸 エロンガーゼ(elongase)、アシル-CoAレダクターゼ、アシルトランスフェラーゼまたはろうシンターゼ、脂肪アシル トランスフェラーゼ、ジアシルグリセロール アシルトランスフェラーゼ、アシル-coA ろう アルコール アシルトランスフェラーゼ、二機能性 ろうエステル シンターゼ/アシル-CoA:ジアシルグリセロール アシルトランスフェラーゼ、これらはSimmondsia chinensis、Acinetobacter sp. 株 ADP1 (以前はAcinetobacter calcoaceticus ADP1)、Pseudomonas aeruginosa、Fundibacter jadensis、Arabidopsis thaliana、または Alkaligenes eutrophusからの複数酵素複合体から選択される。一つの態様において、脂肪酸 エロンガーゼ、アシル-CoAレダクターゼまたは ろうシンターゼは、Alkaligenes eutrophus およびろうおよび脂肪酸エステルを生産することが文献公知であるその他の生物由来の複数酵素複合体からのものである。
【0087】
脂肪エステル 生産に有用なろう 合成 タンパク質をコードする異種 DNAのさらなる源としては、これらに限定されないが、Mortierella alpina (例えば ATCC 32222)、Crytococcus curvatus、(Apiotricum curvatumとも称される)、Alcanivorax jadensis (例えば T9T =DSM 12718 =ATCC 700854)、Acinetobacter sp. HO1-N、(例えば ATCC 14987) およびロドコッカス・オパクス (例えば PD630、DSMZ 44193)が挙げられる。
【0088】
本明細書に記載する方法は、様々な長さの脂肪エステルの生産を可能とする。一例において、脂肪エステル生成物は、炭素原子含量が24から46 炭素原子である飽和または不飽和 脂肪エステル生成物 である。一つの態様において、脂肪エステル生成物は炭素原子含量が24 から32 炭素原子である。別の態様において、脂肪エステル生成物の炭素含量は14および20 炭素である。別の態様において、脂肪エステルはC18:1のメチルエステルである。別の態様において、脂肪酸エステルはC16:1のエチルエステルである。別の態様において、脂肪エステルはC16:1のメチルエステルである。別の態様において、脂肪酸エステル はオクタノールのオクタデシル エステルである。
【0089】
脂肪エステルの生産に有用な宿主は真核または原核微生物であり得る。いくつかの態様において、かかる宿主としては、これらに限定されないが、サッカロマイセス・セレビシエ、Candida lipolytica、大腸菌、Arthrobacter AK 19、Rhodotorula glutinins、Acinobacter sp 株 M-1、Candida lipolytica 及びその他の油性微生物が挙げられる。
【0090】
一例においてAcinetobacter sp. ADP1由来の座位 AAO17391におけるろうエステル シンターゼ(Kalscheuer and Steinbuchel、J. Biol. Chem. 278:8075-8082、2003に記載、引用により本明細書に含める)が用いられる。別の例において、Simmondsia chinensis由来の座位 AAD38041におけるろうエステル シンターゼが用いられる。
【0091】
所望により、ろうエステル 排出輸送体、例えば、 FATP ファミリーのメンバーを、ろうまたはエステルの細胞外環境への放出の促進のために利用できる。利用できるろうエステル 排出輸送体の一例はDrosophila melanogaster由来の 座位 NP_524723における脂肪酸 (長鎖) 輸送タンパク質 CG7400-PA、アイソフォーム Aである。
【0092】
G. アシル-ACP、アシル-CoAから炭化水素
多様な微生物が、炭化水素、例えば、 アルカン、オレフィンおよび イソプレノイドを生産することが知られている。これらの炭化水素の多くは脂肪酸生合成に由来する。これらの炭化水素の生産は、ネイティブな宿主における脂肪酸 生合成に関与する遺伝子を制御することによって制御することが出来る。例えば、藻類 ボツリオコッカス・ブラウニにおける炭化水素 生合成は、脂肪アルデヒドの脱カルボニルを介して起こる。脂肪アルデヒドは脂肪アシル - チオエステルの脂肪-アシルCoAレダクターゼによる還元によって生産される。したがって、最終的なアルカンの構造は、アルカン 生合成に導かれる脂肪酸鎖 長を制御する特定の遺伝子、例えば、 チオエステラーゼを発現するようボツリオコッカス・ブラウニを操作することによって制御することが出来る。ボツリオコッカス・ブラウニにおける分枝鎖 脂肪酸 生合成をもたらす酵素の発現は、分枝鎖 アルカンの生産をもたらす。脂肪酸の不飽和化を生じさせる遺伝子の導入はオレフィンの生産をもたらす。これら遺伝子のさらなる組合せは、生産される炭化水素の最終的構造に対するさらなる制御を提供しうる。より高いレベルのネイティブなまたは操作された炭化水素を生産するために、脂肪酸およびその前駆体の生合成 またはその他の生成物への分解に関与する遺伝子を発現、過剰発現、または減弱させることができる。これらアプローチのそれぞれは脂肪アルコールの還元を介してアルカンを生産するVibrio furnissi M1 およびその機能的ホモログにおけるアルカンの生産に適用できる (脂肪アルコール生合成および生産の操作について上記参照)。これらアプローチのそれぞれは、Micrococcus leuteus、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、Jeogalicoccus sp. (ATCC8456)の多くの株および関連微生物により生産されるオレフィンの生産にも適用できる。これら微生物は脂肪酸 前駆体のヘッドトゥーヘッドの 縮合に由来する長鎖内部オレフィンを生産する。本明細書に記載する方法を用いて脂肪酸 前駆体の構造およびレベルを制御することにより、様々な鎖長、分枝、および飽和レベルのオレフィンの形成が導かれる。
【0093】
炭化水素は、一級アルコールの還元のための進化したオキシド/レダクターゼを用いて生産することもできる。一級脂肪アルコールは微生物、例えば、 ビブリオ・ファーニッシ M1においてアルカンを生産するのに用いられることが知られている(Myong-Ok、J. Bacteriol.、187:1426-1429、2005)。NAD(P)H 依存的 オキシド/レダクターゼが原因となる触媒である。合成 NAD(P)H 依存的 オキシドレダクターゼは進化的操作の使用を介して生産することができ、生産宿主において発現させて脂肪酸誘導体を生産することができる。当業者であれば脂肪アルコール レダクターゼの所望の活性を有するための「進化」のプロセスが周知であることを理解している (Kolkman and Stemmer Nat Biotechnol. 19:423-8、2001、Ness et al.、Adv Protein Chem. 55:261-92、2000、Minshull and Stemmer Curr Opin Chem Biol. 3:284-90、1999、Huisman and Gray Curr Opin Biotechnol. Aug;13:352-8、2002、および米国特許出願 2006/0195947参照)。 NAD(P)H 依存的 オキシドレダクターゼのライブラリーは標準的方法、例えば、 変異性 PCR、部位特異的ランダム突然変異誘発、部位特異的 飽和 突然変異誘発、または部位指向特異的 突然変異誘発によって作成される。さらに、ライブラリーは天然 NAD(P)H 依存的 オキシドレダクターゼコード配列の「シャッフリング」を介して作成されうる。ライブラリーは好適な宿主、例えば、 大腸菌にて発現される。オキシド/レダクターゼ ライブラリーの異なるメンバーを発現する個々のコロニーは次いで脂肪アルコールの還元を触媒しうるオキシド/レダクターゼの発現について分析される。例えば、各細胞は、全細胞生体変換、細胞抽出物、透過性細胞、または精製酵素としてアッセイされうる。脂肪アルコール レダクターゼは、分光光度法または蛍光定量法でNAD(P)Hの脂肪アルコール 依存的 酸化をモニターすることによって同定される。アルカンの生産は GC/MS、TLC、またはその他の 方法によってモニターされる。このようにして同定されたオキシド/レダクターゼは、アルカン、アルケン、および関連分枝炭化水素の生産に用いられる。これはインビトロまたはインビボで達成される。後者は、 進化した脂肪アルコール レダクターゼ遺伝子を脂肪アルコールを生産する生物、例えば、本明細書に記載するものにおいて発現させることによって達成される。脂肪アルコールはアルカンを生産するであろうアルコール レダクターゼのための基質として作用する。その他のオキシドレダクターゼもこの反応を触媒するように操作され得、例えば、分子状水素、グルタチオン、FADH、またはその他の 還元補酵素を使用する。
【0094】
II.脂肪酸誘導体 生産を上昇させるための生産株の遺伝子操作
脂肪酸誘導体の生産のための生合成経路に関与する異種 DNA 配列は、当該技術分野で周知の技術、例えば エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降法、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム-媒介トランスフェクション、コンジュゲーション、形質導入等を用いて宿主細胞に安定にまたは一過性に導入されうる。安定な形質転換のために、DNA 配列はさらに、選択可能マーカー、例えば、抗生物質耐性、例えばネオマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシンに対する耐性、栄養要求欠損を補完する遺伝子等を含みうる。
【0095】
本開示の様々な態様は、代謝または生合成経路に関与するタンパク質をコードする異種 DNA 配列を含む発現 ベクターを利用する。好適な 発現 ベクターとしては、これらに限定されないが、ウイルスベクター、例えば、 バキュロウイルス ベクター、ファージ ベクター、例えば、 バクテリオファージ ベクター、プラスミド、ファージミド、コスミド、フォスミド、細菌人工染色体、ウイルスベクター (例えば、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ-随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペス ウイルス等に基づくウイルスベクター)、P1-に基づく人工染色体、酵母 プラスミド、酵母 人工染色体、および特定の目的宿主(例えば、 大腸菌、シュードモナス・ピスムおよびサッカロマイセス・セレビシエ)に特異的なその他のベクターが挙げられる。
【0096】
有用な 発現 ベクターは形質転換宿主細胞の選択のための表現形質を提供する1以上の 選択可能マーカー遺伝子を含みうる。選択可能マーカー遺伝子は選択培養培地において培養された形質転換宿主細胞の生存または生育に必要なタンパク質をコードする。選択可能マーカー遺伝子を含むベクターで形質転換されていない宿主細胞 は培養培地で生育できない。典型的な選択遺伝子は (a) 抗生物質 またはその他の 毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリンに耐性を付与するタンパク質、(b)栄養要求欠損を補完するタンパク質、または(c)複合培地から入手できない必須栄養素を供給するタンパク質をコードし、例えば、バチルスのためのD-アラニン ラセマーゼをコードする遺伝子が挙げられる。別の態様において、選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸 レダクターゼをコードするもの、またはネオマイシン 耐性を付与するもの (真核細胞培養における使用のため)、またはテトラサイクリンまたはアンピシリン 耐性を付与するもの (原核宿主細胞、例えば、 大腸菌における使用のため)である。
【0097】
発現 ベクターにおいて生合成経路遺伝子産物をコードするDNA 配列は適当な発現制御配列(プロモーター、エンハンサー等)に作動可能に連結して、コードされた遺伝子産物の合成を導く。かかるプロモーターは微生物またはウイルス起源であってよく、CMVおよびSV40が挙げられる。使用する宿主/ベクター系に応じて、多数の好適な転写および翻訳 制御要素、例えば構成的および誘導可能 プロモーター、転写 エンハンサー 要素、転写 ターミネーター等のいずれもが発現 ベクターにおいて利用できる (例えば、Bitter et al.、 Methods in Enzymology、153:516- 544、1987参照)。
【0098】
原核 宿主細胞における使用に好適な プロモーターとしては、これらに限定されないが、T4、T3、Sp6およびT7 ポリメラーゼを認識できるプロモーター、バクテリオファージ ラムダのP
R および P
L プロモーター、大腸菌のtrp、recA、熱ショック、および lacZ プロモーター、枯草菌のアルファ-アミラーゼおよびシグマ-特異的プロモーター、バチルスのバクテリオファージのプロモーター、ストレプトマイセス プロモーター、バクテリオファージ ラムダの int プロモーター、pBR322のベータ・ラクタマーゼ遺伝子のbla プロモーター、およびクロラムフェニコール アセチルトランスフェラーゼ 遺伝子のCAT プロモーターが挙げられる。原核 プロモーターは Glick、J. Ind. Microbiol. 1:277、1987; Watson et al.、MOLECULAR BIOLOGY OF THE GENE、4th Ed.、Benjamin Cummins (1987);およびSambrook et al.、前掲により概説されている。
【0099】
真核 宿主における使用に好適な 真核 プロモーターの非限定的な例はウイルス起源のものであり、マウス メタロチオネイン I 遺伝子のプロモーター(Hamer et al.、J. Mol. Appl. Gen. 1:273、1982);ヘルペス ウイルスのTK プロモーター (McKnight、Cell 31:355、1982); SV40 初期プロモーター (Benoist et al.、Nature (London) 290:304、1981);ラウス肉腫 ウイルス プロモーター;サイトメガロウイルス プロモーター (Foecking et al.、Gene 45:101、1980);酵母 gal4 遺伝子 プロモーター (Johnston、et al.、PNAS (USA) 79:6971、1982; Silver、et al.、PNAS (USA) 81:5951、1984); および IgG プロモーター (Orlandi et al.、PNAS (USA) 86:3833、1989)が挙げられる。
【0100】
微生物 宿主細胞は、誘導可能 プロモーターに作動可能に連結した生合成経路 遺伝子産物をコードする異種 DNA 配列により遺伝子的に改変されうる。誘導可能 プロモーターは当該技術分野で周知である。好適な 誘導可能 プロモーターとしては、これらに限定されないが、タンパク質、代謝産物または化学物質によって影響を受けるプロモーターが挙げられる。これらとしては:ウシ 白血病 ウイルス プロモーター、メタロチオネイン プロモーター、デキサメタゾン-誘導可能 MMTV プロモーター、SV40 プロモーター、MRP polIII プロモーター、テトラサイクリン-誘導可能 CMV プロモーター (例えば、ヒト 最初期 CMV プロモーター)ならびにtrpおよびlac オペロン由来のものが挙げられる。
【0101】
いくつかの例において、遺伝子的に改変される宿主細胞は構成的 プロモーターに作動可能に連結された生合成経路 遺伝子産物をコードする異種 DNA 配列により遺伝子的に改変される。好適な 構成的 プロモーターは当該技術分野において知られており、例えば、構成的 アデノウイルス 主要後期 プロモーター、構成的 MPSV プロモーター、および構成的 CMV プロモーターが挙げられる。
【0102】
いくつかの例において、改変された宿主細胞は、生合成経路に関与する単一のタンパク質をコードする外来性 DNA 配列により遺伝子的に改変されたものである。 別の態様において、改変された宿主細胞は生合成経路に関与する2以上のタンパク質をコードする外来性 DNA 配列、例えば、生合成経路における第一および第二の酵素をコードする外来性 DNA 配列により遺伝子的に改変されたものである。
【0103】
宿主細胞が遺伝子的に改変されて生合成経路に関与する2以上のタンパク質を発現する場合、かかるDNA 配列はそれぞれ単一または別々の発現 ベクターに含まれうる。かかるDNA 配列が単一の発現 ベクターに含まれる場合、いくつかの態様において、ヌクレオチド 配列は共通の制御要素 (例えば、プロモーター)に作動可能に連結しており、例えば、共通の制御要素が単一の発現 ベクターにおけるすべての生合成経路 タンパク質をコードするDNA 配列の発現を制御する。
【0104】
改変された宿主細胞が生合成経路に関与する2以上のタンパク質をコードする異種 DNA 配列により遺伝子的に改変されている場合、DNA 配列の1つは誘導可能 プロモーターに作動可能に連結し、1以上のDNA 配列は構成的 プロモーターに作動可能に連結していてもよい。
【0105】
いくつかの態様において、生合成経路 中間体の細胞内 濃度 (例えば遺伝子的に改変された宿主細胞における中間体濃度)は最終生成物の収量をさらに追加するよう高められ得る。中間体の細胞内 濃度は多数の方法で高められ得、例えば、これらに限定されないが、生合成経路のための基質の培養培地中の濃度の上昇;生合成経路において活性な酵素の触媒活性の上昇;生合成経路において活性な酵素のための基質 (例えば一次基質)の細胞内量の上昇; 等が挙げられる。
【0106】
いくつかの例において、脂肪酸誘導体または中間体は細胞の細胞質中に生産される。細胞質濃度は多数の方法で高められ得、例えば、これらに限定されないが、脂肪酸の補酵素 Aへの結合によるアシル-CoA チオエステルの形成が挙げられる。さらに、アシル-CoAの濃度は細胞におけるCoAの生合成の上昇によっても高められ得、例えば、パントテン酸 生合成 に関与する遺伝子(panD)の過剰発現またはグルタチオン 生合成に関与する 遺伝子(グルタチオンシンターゼ)のノックアウトによってなされる。
【0107】
III.炭素鎖 特徴
本明細書に提供する教示を用いて一定範囲の生成物を生産することができる。かかる生成物としては、炭化水素、脂肪アルコール、脂肪酸エステルおよびろうが挙げられる。かかる生成物のいくつかはバイオ燃料および特殊化学製品として有用である。かかる生成物は微生物において設計および生産されうる。生成物は分枝点、飽和レベル、および炭素鎖長を含むよう生産され得、これらの生成物は多くの用途における使用のために望ましい出発物質となる (
図10は様々な脂肪酸誘導体を作るために単独でまたは組み合わせて用いられうる様々な 酵素の説明を提供する)。
【0108】
別の例において、様々な種または操作された 変異体に由来する外来性 FAS 遺伝子の発現を宿主細胞に導入することができ、その結果、ネイティブな 宿主のものとは構造的に(長さ、分枝、不飽和度等において)異なる脂肪酸 代謝産物の生合成が導かれる。これら異種遺伝子産物はまた宿主細胞における天然の複雑な調節機構によって影響を受けないよう選択または操作することができ、それゆえ所望の商品の生産のためにより制御可能な様式で機能する。例えば、バチルス・スブチリス、サッカロマイセス・セレビシエ、ストレプトマイセス・エスピーピー、ラルストニア、ロドコッカス、コリネバクテリア、ブレビバクテリア、マイコバクテリア、油性酵母等に由来するFAS 酵素を生産宿主において発現させることが出来る。
【0109】
当業者であれば、生産宿主が操作されて脂肪酸生合成経路から特定のレベルの不飽和、分枝、または炭素鎖長を含む脂肪酸を生産する場合、その結果得られる操作された脂肪酸は、脂肪酸誘導体の生産に利用できることを認識している。したがって、生産宿主から作られた脂肪酸誘導体は、 操作された脂肪酸の特徴を示しうる。例えば、生産宿主は操作されて分枝、短鎖 脂肪酸をつくり得、そして脂肪アルコール 生産に関連する本明細書に提供する教示を用いて(即ちアルコール形成酵素、例えば、 FARを含む)、生産宿主は分枝した短鎖 脂肪アルコールを生産する。同様に、炭化水素は規定されたレベルの分枝、不飽和、および/または 炭素鎖長を有する脂肪酸を生産するよう生産宿主を操作することにより生産され得、したがって、均一な炭化水素集団が作られる。さらに、不飽和アルコール、脂肪酸エステル、または炭化水素が望ましい場合、脂肪酸生合成経路を操作して、低レベルの飽和脂肪酸を生産させることができ、 さらなるデサチュラーゼが飽和生成物の生産を低めるよう発現されうる。
【0110】
A.飽和
生産宿主は、生産宿主をfabBを過剰発現するよう操作することにより、または低温で生産宿主を培養することにより(例えば 37℃未満)、不飽和脂肪酸を生産するよう操作されうる。FabBはシス-δ
3デセノイル-ACPを優先し、大腸菌における不飽和脂肪酸生産がもたらされる。FabBの過剰発現により、かなりのパーセンテージの不飽和脂肪酸の生産が導かれる(de Mendoza et al.、J. Biol. Chem.、258:2098-101、1983)。これら不飽和脂肪酸は、脂肪酸誘導体、例えば、 脂肪アルコール、エステル、ろう、オレフィン、アルカン等を生産するよう操作された生産宿主において中間体として利用することが出来る。当業者であれば、fabAの減弱、またはFabBの過剰発現および特定のチオエステラーゼの発現により (以下に記載)、所望の 炭素鎖長を有する不飽和脂肪酸誘導体が生産されうることを理解している。あるいは、脂肪酸 生合成のリプレッサー、FabR (Genbank 受入番号 NP_418398 )を欠失させてもよく、それによっても大腸菌における不飽和脂肪酸 生産が上昇する (Zhang et al.、J. Biol. Chem. 277:pp. 15558、2002.)。不飽和脂肪酸のさらなる上昇はFabM (トランス-2,シス-3-デセノイル-ACP イソメラーゼ、Genbank 受入番号 DAA05501) の過剰発現およびStreptococcus pneumoniae からのFabK (トランス-2-エノイル-ACP レダクターゼ II、Genbank 受入番号 NP_357969)の発現制御 (Marrakchi et al.、J. Biol. Chem. 277: 44809、2002)、および大腸菌 Fab I ((トランス-2-エノイル-ACP レダクターゼ、Genbank 受入番号 NP_415804)の欠失により達成できる。さらに、不飽和脂肪酸エステルのパーセンテージを高めるためには、微生物は、fabB (β-ケトアシル-ACP シンターゼ I、受入番号: BAA16180、EC:2.3.1.41をコードする)、Sfa (fabAのサプレッサー、受入番号: AAC44390をコードする)および gnsA およびgnsB (ともに secG ヌル突然変異体 サプレッサー、a.k.a. 冷ショック タンパク質、受入番号: ABD18647.1、AAC74076.1をコードする)を過剰発現するとよい。
【0111】
いくつかの例において、内因性 fabF 遺伝子を減弱することができ、それにより生産されるパルミトレイン酸 (C16:1)のパーセンテージが上昇する。
【0112】
B.環状部分を含む分枝
分枝点、環状部分、およびそれらの組合せを含む脂肪酸誘導体を本明細書に提供する教示を用いて生産することができる。
【0113】
直鎖状脂肪酸(sFA)を天然に 生産する微生物を1以上の外来性核酸配列を発現させることによって分枝鎖 脂肪酸 (brFA)を生産するように操作することができる。 例えば、大腸菌は直鎖状脂肪酸(sFA)を天然に生産する。大腸菌をbrFAを生産するよう操作するために、いくつかの遺伝子を導入し、発現させて、分枝前駆体を提供し (bkd オペロン)、分枝前駆体からの脂肪酸 生合成を開始させることができる(fabH)。さらに、生物はbrFAの伸長(例えば ACP、FabF) および/または通常sFAを導き、導入された遺伝子と競合しうる対応する大腸菌遺伝子(例えば、 FabH、FabF)の欠失のための遺伝子を発現することが出来る。
【0114】
分枝 アシル-CoAである 2-メチル-ブツリル-CoA、イソバレリル-CoAおよびイソブツリル-CoAはbrFAの 前駆体である。ほとんどの brFA-含有微生物においてそれらは分枝アミノ酸(イソロイシン、ロイシンおよびバリン)から2工程で合成される(以下に詳細に記載する) (Kadena、Microbiol. Rev. 55: pp. 288、1991)。微生物を brFAを生産するよう、またはbrFAを過剰生産するよう操作するために、これら2工程における1以上の酵素の、発現または過剰発現を操作するとよい。例えば、いくつかの例において、生産宿主は1工程を達成しうる内因性 酵素を有し得、それゆえ、第二工程に関与する酵素のみを組換えにより発現させなければならない。
【0115】
分枝脂肪酸の形成における第一工程は、対応するα-ケト 酸の 分枝鎖 アミノ酸 アミノトランスフェラーゼによる生産である。 大腸菌はかかる酵素、IlvE (EC 2.6.1.42; Genbank 受入番号 YP_026247)を有している。いくつかの例において、異種 分枝鎖 アミノ酸 アミノトランスフェラーゼを発現させてはならない。しかし、アミノトランスフェラーゼ 反応 が脂肪酸誘導体 生産のために選択された宿主生物におけるbrFA 生合成の律速であると判明すれば、大腸菌 IlvE またはその他の分枝鎖 アミノ酸 アミノトランスフェラーゼ、例えばラクトコッカス・ラクティスからのilvE (Genbank 受入番号 AAF34406)、シュードモナス・プチダからのilvE (Genbank 受入番号 NP_745648) またはストレプトマイセス・コエリカラー からのilvE (Genbank 受入番号 NP_629657)を宿主微生物において過剰発現させることができる。
【0116】
第二工程、α-ケト酸の対応する 分枝鎖 アシル-CoAへの酸化的脱炭酸は、分枝鎖 α-ケト 酸 デヒドロゲナーゼ 複合体(bkd; EC 1.2.4.4.)により触媒され(Denoya et al. J. Bacteriol. 177:pp. 3504、1995)、これは E1α/β(デカルボキシラーゼ)、E2 (ジヒドロリポイル トランスアシラーゼ) および E3 (ジヒドロリポイル デヒドロゲナーゼ) サブユニットからなり、ピルビン酸およびα-ケトグルタル酸 デヒドロゲナーゼ 複合体に類似している。表2は、生産宿主において発現されて分枝鎖 アシル-CoA 前駆体を提供しうるいくつかの微生物からの可能性のあるbkd 遺伝子を示す。基本的には、brFAを有する、および/または、分枝鎖アミノ酸上で生育するあらゆる微生物は、生産宿主、例えば、大腸菌における発現のための単離 bkd 遺伝子の源として利用できる。さらに、大腸菌はE3 成分 (そのピルビン酸 デヒドロゲナーゼ複合体の一部として; lpd、EC 1.8.1.4、Genbank 受入番号 NP_414658)を有し、それはそれゆえ、E1α/βおよび E2 bkd 遺伝子のみを発現するのに十分であり得る。
【0117】
表 2
選択された微生物からのBkd 遺伝子
【表2】
【0118】
別の例において、イソブツリル-CoAは生産宿主、例えば大腸菌においてクロトニル-CoA レダクターゼ (Ccr、EC 1.1.1.9)およびイソブツリル-CoA ムターゼ (ラージサブユニット IcmA、EC 5.4.99.2; スモールサブユニット IcmB、EC 5.4.99.13 ) (Han and Reynolds J. Bacteriol. 179:pp. 5157、1997)の共発現を介して作ることが出来る。クロトニル-CoAは大腸菌およびその他の微生物における脂肪酸 生合成の中間体である。選択された微生物からのccrおよびicm 遺伝子の例を表3に示す。
【0119】
表3
選択された微生物からのccrおよびicm 遺伝子
【表3】
【0120】
bkd 遺伝子の発現に加えて(上記参照)、brFA 生合成の開始は、分枝鎖 アシル CoAに対する特異性を有するβ-ケトアシル-アシル-キャリアタンパク質 シンターゼ III (FabH、EC 2.3.1.41) を利用する (Li et al. J. Bacteriol. 187:pp. 3795、2005)。かかる FabHの例を表 4に挙げる。あらゆるbrFA-含有微生物の脂肪酸 生合成に関与するFabH 遺伝子を生産宿主において発現させることが出来る。天然には brFAを作らない生産宿主からのBkd およびFabH 酵素は brFA 生産を支持しないことがあり得、それゆえ、BkdおよびFabHは組換えにより発現されうる。同様に、Bkd およびFabH 生産の内因性 レベルはbrFAの生産に十分でないことがあり得、それゆえ、それらは過剰発現されうる。さらに、脂肪酸 生合成機構のその他の成分を発現させることが出来、例えば、 アシル キャリアタンパク質 (ACP) およびβ-ケトアシル-アシル-キャリアタンパク質 シンターゼ II 候補はアシル キャリアタンパク質 (ACP) およびβ-ケトアシル-アシル-キャリアタンパク質 シンターゼ II (fabF、EC 2.3.1.41)である (候補は表 4に挙げる)。これらの遺伝子の発現に加えて、内因性脂肪酸 生合成 経路におけるいくつかの遺伝子は生産宿主において減弱されうる。例えば、大腸菌においてbrFA 生合成を干渉する可能性の最も高い候補はfabH (Genbank 受入番号 # NP_415609) および/または fabF 遺伝子(Genbank 受入番号 # NP_415613)である。
【0121】
上記のように、brFA 合成 およびアルコール 合成を支持する遺伝子を発現させることの組合せを介して分枝鎖 アルコールが生産されうる。例えば、アルコール レダクターゼ、例えば、Acinetobacter baylyi ADP1からのAcr1がbkd オペロンと共発現される場合、大腸菌はイソペンタノール、イソブタノールまたは 2-メチル ブタノールを合成することができる。 同様に、Acr1が ccr/icm 遺伝子と共発現される場合、大腸菌はイソブタノールを合成することができる。
【0122】
生産宿主、例えば、 大腸菌をω-環状脂肪酸(cyFA)を合成することができる生物に変換するために、いくつかの遺伝子が導入され発現されなければならず、それによって環状 前駆体であるシクロヘキシルカルボニル-CoAが提供される (Cropp et al. Nature Biotech. 18:pp. 980、2000)。表 4に示す遺伝子 (fabH、ACP および fabF)は発現されるとω-環状 脂肪酸の開始および伸長を可能としうる。 あるいは、相同性遺伝子が cyFAを作る微生物から単離され得、大腸菌において発現されうる。
【0123】
表4
brFAを有する選択された微生物からのFabH、ACPおよびfabF 遺伝子
【表4】
【0124】
以下の遺伝子の発現は大腸菌におけるシクロヘキシルカルボニル-CoAの提供に十分である: ストレプトマイセス・コリヌスのアンサトリエニン 遺伝子 クラスターからのansJ、ansK、ansL、chcA およびansM (Chen et al.、Eur. J. Biochem. 261:pp. 1999、1999) またはストレプトマイセス sp. HK803 のホスラクトマイシン B 遺伝子 クラスターからのplmJ、plmK、plmL、chcA およびplmM (Palaniappan et al.、J. Biol. Chem. 278:pp. 35552、2003)とともに、 S. collinus、S. avermitilisまたはS. coelicolorからのchcB 遺伝子 (Patton et al. Biochem.、39:pp. 7595、2000) (Genbank 受入番号について表5参照)。
【0125】
表5
シクロヘキシルカルボニル-CoA合成のための遺伝子
【表5】
chcAのみがGenbank entry U72144においてアノテーションされており、ansJKLM はChen et al.による(Eur. J. Biochem. 261:pp. 1999、1999)。
【0126】
表4に挙げる遺伝子 (fabH、ACP およびfabF)はω-環状脂肪酸の開始および伸長を起こらせるのに十分である。というのはそれらは広い基質特異性を有しうるからである。これらのいずれかの遺伝子と表5からのansJKLM/chcABまたはpmlJKLM/chcAB 遺伝子の共発現がcyFAを生じない場合は、cyFAを作る微生物からのfabH、ACP および/または fabF ホモログを単離し(例えば縮重 PCR プライマーまたは異種 DNA プローブの使用により)、共発現させればよい。表6はω-環状 脂肪酸を含む選択された微生物を示す。
【0127】
表 6
ω-環状 脂肪酸を含む微生物の例
【表6】
* cyFA 生合成の前駆体としてシクロヘプチルカルボニル-CoAを使用しシクロヘキシルカルボニル-CoAを使用しない。
【0128】
C.エステル特徴
当業者であれば、エステルはA側とB側とを含むことを理解している。本明細書に記載のように、B側には宿主生物におけるデノボ合成から生産される脂肪酸が寄与する。いくつかの例において、宿主がさらに操作されてアルコール、例えば脂肪アルコールを作る場合、A側もまた宿主生物により生産される。さらに別の例において、A側は培地において提供されうる。本明細書に記載のように、所望のチオエステラーゼ 遺伝子を選択することにより、B側、および脂肪アルコールが作られる場合、A側は、特定の炭素鎖特徴を有するよう設計されうる。これらの特徴には、不飽和点、分枝、および所望の炭素鎖長が含まれる。長鎖脂肪酸エステルを作る例示的な方法であって、AおよびB側が生産宿主によって生産される方法を以下の実施例6に提供する。同様に、実施例5は、中鎖 脂肪酸エステルを作る方法を提供する。AおよびB側の両方が生産宿主によって寄与される場合、それらは類似の炭素鎖特徴を有する脂肪酸生合成経路中間体を用いて生産される。例えば、生産される脂肪酸エステルの少なくとも 50%、60%、70%、または80%は、 6、4、または 2 炭素、長さにおいて変動するA側および B側を有する。A側およびB側はまた、類似の分枝および飽和レベルを示す。
【0129】
A側に寄与するための脂肪アルコールの生産に加えて、宿主はその他の短鎖アルコール、例えば、 エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、およびブタノールを当該技術分野で周知の技術を用いてA側上に取り込むために生産しうる。例えば、ブタノールは宿主生物によって作られうる。ブタノール生産細胞を作るために、LS9001 株 (以下の実施例1に記載)をさらに操作して大腸菌 K12からのatoB (アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ) 、Butyrivibrio fibrisolvensからのβ -ヒドロキシブチリル-CoA デヒドロゲナーゼ、Clostridium beijerinckii からのクロトナーゼ、Clostridium beijerinckii からのブチリル CoA デヒドロゲナーゼ、Cladosporium fulvum からのCoA-アシル化 アルデヒド デヒドロゲナーゼ (ALDH) およびClostridium acetobutylicumのアルデヒド-アルコール デヒドロゲナーゼをコードするadhE をpBAD24 発現 ベクターにおいてprpBCDE プロモーター系の下で発現させることが出来る。同様に、エタノールはKalscheuer et al.、Microbiology 152:2529-2536、2006に教示される方法を用いて生産宿主において生産され得、これは引用により本明細書に含める。
【0130】
IV.発酵
脂肪酸誘導体の生産および単離は特定の発酵技術の使用によって促進されうる。生産を最大化させ、コストを削減する1つの方法は、炭化水素生成物に変換される炭素源のパーセンテージを上昇させることである。通常の細胞の生活環において、炭素は、細胞機能、例えば、 脂質、糖類、タンパク質、有機酸および核酸の生産に用いられる。生育に関連する活性に必要な炭素の量を減らすと、炭素源の出力への変換効率を高めることが出来る。これは、所望の密度、例えば、対数増殖期のピークに達する密度までまず微生物を培養することにより達成できる。かかる点において、複製チェックポイント遺伝子が細胞の増殖の停止に利用されうる。具体的には、クオラムセンシングメカニズム(Camilli and Bassler Science 311:1113、2006; Venturi FEMS Microbio Rev 30:274-291、2006;および Reading and Sperandio FEMS Microbiol Lett 254:1-11、2006に概説)を利用して、遺伝子、例えば、 p53、p21、またはその他の チェックポイント 遺伝子を活性化することが出来る。細胞複製を停止するよう活性化され得、大腸菌において生育できる遺伝子としては umuDC 遺伝子が挙げられ、その過剰発現は静止期から対数増殖期への進行を停止する (Murli et al.、J. of Bact. 182:1127、2000)。 UmuCは非コード損傷に対する損傷乗り越え合成を行うことが出来るDNA ポリメラーゼであり、これは多くのUVおよび化学物質 突然変異誘発の機構の基礎である。umuDC 遺伝子産物は損傷乗り越え合成のプロセスに用いられ、DNA損傷チェックポイントとしても働く。UmuDC 遺伝子産物には UmuC、UmuD、umuD’、UmuD’
2C、UmuD’
2 およびUmuD
2が含まれる。同時に、生成物生産遺伝子は活性化され、したがって複製および維持経路が用いられる必要性が最小となり、一方脂肪酸誘導体が作られる。
【0131】
炭化水素生成物に変換される入力 炭素のパーセンテージはコスト推進要因である。効率的であるほど(即ちパーセンテージが高いほど)、プロセスは安価となる。酸素-含有炭素源 (即ち、グルコースおよびその他の炭水化物に基づく源)について、酸素は二酸化炭素の形態で放出されなければならない。2 酸素原子が放出される度に、1炭素原子が放出され、最大理論的代謝効率は ~34% (w/w) となる(脂肪酸由来生成物について)。この値はしかし、その他の 炭化水素 生成物および炭素源については変化する。文献における典型的な効率は ~<5%である。炭化水素 生成物を生産する操作された微生物は 1、3、5、10、15、20、25、および 30%を超える効率を有しうる。一例において微生物は約 10%から約 25%の効率を示す。別の例において、かかる微生物は約 25%から約 30%の効率を示し、別の例においてかかる微生物は >30%の効率を示す。
【0132】
最終生成物が細胞から放出されるいくつかの例において、連続プロセスを実施することが出来る。このアプローチにおいて、脂肪酸誘導体を生産する生物を含むリアクターは複数の方法で組み立てられうる。一例において、培地の一部が除かれ放置される。脂肪酸誘導体は水層から分離され、それはまた、発酵チャンバに戻される。
【0133】
一例において、発酵チャンバは連続的還元が行われている発酵物を封入する。この例において、安定な還元環境が作られるであろう。電子のバランスは二酸化炭素の放出(気体形態における)により維持されるであろう。NAD/H および NADP/H バランスを増強する努力は電子のバランスの安定化において役立ちうる。
【0134】
細胞内 NADPHの利用能はまたNADH:NADPH トランスヒドロゲナーゼを発現するよう生産宿主を操作することによっても増強されうる。1以上の NADH:NADPH トランスヒドロゲナーゼの発現は解糖において生産されたNADH をNADPHに変換し、それは脂肪酸誘導体の生産を促進する。
【0135】
組換え宿主微生物から輸送タンパク質を介して脂肪酸誘導体を連続的に生産および排出するシステムが本明細書に開示される。多くの輸送および流出タンパク質が多様な 化合物を排出するよう働き、特定のタイプの脂肪酸誘導体に対して選択的であるように進化しうる。したがって、いくつかの態様においてABC トランスポーターをコードする外来性 DNA 配列が組換え宿主微生物によって機能的に発現され、それによって微生物は脂肪酸誘導体を培養培地に排出する。一例において、ABC トランスポーターはCaenorhabditis elegans、Arabidopsis thalania、Alkaligenes eutrophus またはRhodococcus erythropolis (座位 AAN73268)由来のABC トランスポーターである。別の例において、ABC トランスポーターは、CER5 (座位At1g51500 または AY734542)、AtMRP5、AmiS2およびAtPGP1から選択されるABC トランスポーターである。いくつかの例において、ABC トランスポーターは CER5である。さらに別の例において、CER5 遺伝子はArabidopsis由来である(座位 At1g51500、AY734542、At3g21090 およびAt1g51460)。
【0136】
輸送タンパク質は、例えば、以下から選択される流出タンパク質であり得る: 大腸菌由来のAcrAB、TolC およびAcrEF または Thermosynechocossus elongatus BP-1由来のtll1618、tll1619 およびtll0139。
【0137】
さらに、輸送タンパク質は、例えば、Drosophila melanogaster、Caenorhabditis elegans、Mycobacterium tuberculosis またはサッカロマイセス・セレビシエから選択される脂肪酸 輸送タンパク質 (FATP)または哺乳類 FATPのいずれかでありうる。FATPはさらに基質の流れの方向を反転させるために逆転した膜領域により再合成されうる。具体的には、タンパク質の親水性 ドメイン (または膜ドメイン)を構成するアミノ酸配列はそれぞれの特定のアミノ酸について同じコドンを維持しつつ逆転されうる。かかる領域の同定は当該技術分野で周知である。
【0138】
生産宿主はまた脂肪酸誘導体を放出する内因性の能力について選択されうる。生成物の生産および発酵ブロスへの放出の効率は細胞内生成物の細胞外生成物に対する比として表現されうる。いくつかの例において比は、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、または 1:5でありうる。
【0139】
生産宿主はさらに組換えセルロソーム、例えば、PCT出願番号 PCT/US2007/003736に記載のものを発現するよう操作され得、これは生産宿主がセルロース性材料を炭素源として利用することを可能にする。例えば、生産宿主はさらにインベルターゼ (EC 3.2.1.26)を発現するよう操作され得、それによってスクロースが炭素源として利用可能となる。
【0140】
同様に、生産宿主はIngram et al.の米国特許第5,000,000、5,028,539、5,424,202、5,482,846、および5,602,030号に記載の教示を用いて操作され得、それによって生産宿主は炭素を効率的に同化し得、セルロース性材料が炭素源として利用可能になる。
【0141】
IV.生産後プロセシング
発酵において生産された脂肪酸誘導体は発酵培地から分離されうる。脂肪酸誘導体を水性培地から分離するために知られているあらゆる技術を利用できる。本明細書において提供する1つの例示的な分離プロセスは二相(二相性) 分離プロセスである。このプロセスは、遺伝子操作された生産宿主を脂肪酸誘導体を生産するのに十分な条件下で培養すること、誘導体を有機相に回収することおよび有機相を水性発酵ブロスから分離することを含む。この方法はバッチおよび連続発酵設定の両方において実施できる。
【0142】
二相性分離は脂肪酸誘導体が比較的混ざり合わないことを利用して分離を容易にする。混ざり合わないこととは、化合物が水に比較的溶解できないことをいい、化合物の分配係数によって規定される。分配係数、Pは、有機相にある化合物の平衡濃度(二相性 システムにおいて有機相は通常生産 プロセスにおいて脂肪酸誘導体によって形成される相であるが、いくつかの例において有機相は供給されうる(例えば、生成物分離を促進するためのオクタン層))を 水相 (即ち発酵ブロス)において平衡にある濃度によって割ったものであると規定される。二相系について記載する場合、Pは通常logPとして議論される。logPが10の化合物は有機相に10:1に分配され、logPが 0.1の化合物は水相に10:1に分配される。当業者であれば、生産される脂肪酸誘導体が高い logP値を有するように発酵ブロスと有機相とを選択することにより、脂肪酸誘導体 は発酵槽において非常に低濃度であっても有機相に分離されることを理解している。
【0143】
本明細書に記載する方法により生産された脂肪酸誘導体は発酵ブロスならびに細胞質において比較的混ざり合わない。それゆえ、脂肪酸誘導体は細胞内または細胞外のいずれかで有機相に回収される。生成物の有機相における回収は、脂肪酸誘導体の細胞機能に対する影響を小さくし、生産宿主がより多くの生成物を生産することを可能とする。言い換えると、脂肪酸誘導体の濃度は宿主細胞に対する顕著な影響を有さない。
【0144】
本明細書に記載のように生産される脂肪アルコール、脂肪酸エステル、ろう、および炭化水素は均質な 化合物の生産を可能とし、ここで少なくとも 60%、70%、80%、90%、または95%の生産された脂肪アルコール、脂肪酸エステルおよびろうは、 4未満の炭素、または 2未満の炭素のみ変動する炭素鎖長を有する。これらの化合物は比較的均一な程度の飽和を有するよう生産され得、例えば、少なくとも 60%、70%、80%、90%、または95%の 脂肪アルコール、脂肪酸エステル、炭化水素およびろうはモノ-、ジ-、またはトリ- 不飽和である。かかる化合物は直接燃料、パーソナルケア添加剤、栄養サプリメントとして利用できる。かかる化合物はまた、後の反応、例えば エステル交換、水素化、水素化、熱分解のいずれかまたは両方を介した触媒的クラッキングまたはエポキシド化反応によりその他の生成物を作るための原材料としても利用できる。
【0145】
V.燃料組成物
本明細書に記載する脂肪酸誘導体は燃料として利用できる。当業者であれば、燃料の意図される目的に応じて、異なる脂肪酸誘導体を生産および利用できることを理解している。例えば、寒冷気候において使用されることが意図される自動車 燃料のためには、分枝脂肪酸誘導体が望ましく、本明細書に提供する教示を用いて、分枝 炭化水素、脂肪酸エステルおよびアルコールを製造できる。本明細書に記載する方法を用いて、所望の燃料品質を有する比較的均質な 脂肪酸誘導体を含む燃料を生産することができる。かかる燃料は、炭素フィンガープリント法、石油由来燃料またはトリグリセリド由来バイオディーゼルと比較した場合に不純物が無いことにより特徴づけられ得、さらに、脂肪酸誘導体に基づく燃料をその他の燃料または燃料添加剤と組み合わせて所望の性質を有する燃料を生産することができる。
【0146】
A.炭素 フィンガープリント法
生物学的に生産された脂肪酸誘導体は、燃料、例えば、 アルコール、ディーゼルおよびガソリンのための新しい原材料である。脂肪酸誘導体を用いて作られたいくつかのバイオ燃料は再生可能な源から生産されているわけではなく、したがって、新規な組成物である。かかる新規な燃料は二重炭素-同位体 フィンガープリント法に基づいて石油化学の炭素由来の燃料とは区別されうる。さらに、特定の生物由来の炭素源(例えば、グルコース 対 グリセロール) は二重炭素-同位体 フィンガープリント法により判定できる (米国特許第7,169,588号参照、これは引用により本明細書に含める) 。
【0147】
この方法は有用なことに化学的に同一の材料を識別し、生成物における炭素をバイオスフェア (植物) 成分の生育の源 (および可能であれば年数)によって割り当てる。同位体である、
14C および
13Cはこの問題に対して補完的情報を提供する。核半減期が5730年である放射炭素日付同位体 (
14C)は、明確に検体の炭素を化石 (「死んだ」) およびバイオスフェア (「生きた」) 原材料に割り当てることを可能にする[Currie、L. A. "Source Apportionment of Atmospheric Particles," Characterization of Enviuronmental Particles、J. Buffle and H. P. van Leeuwen、Eds.、1 of Vol. I of the IUPAC Enviuronmental Analytical Chemistry Series (Lewis Publishers、Inc) (1992) 3 74]。放射炭素日付における基本的な前提は、大気 中の
14C 濃度の一定性が生きた生物中の
14Cの一定性を導くことにある。単離されたサンプルを扱う場合、サンプルの年齢は以下の関係 t=(-5730/0.693)ln(A/A.sub.O) (式5)によっておよそ推定でき、ここでt=年齢、5730年は放射炭素の半減期、およびAおよびA.sub.Oはそれぞれサンプルおよび現代の標準の
14C比活性である[Hsieh、Y.、Soil Sci. Soc. Am J.、56、460、(1992)]。しかし1950年からの大気中の核実験および1850年からの化石燃料の燃焼のために、
14Cは第二の地球化学時間特性を獲得している。大気中の CO2におけるその濃度--およびしたがって生きたバイオスフェアにおけるその濃度は--1960年代中頃の核実験のピークにおいてはおよそ 二倍となっている。それ以来徐々に定常状態 宇宙線生成 (大気中) 基底同位体率 (
14C /
12C)は約1.2x10
12に戻っており、おおよその緩和 「半減期」は7-10年である(この後者の半減期は文字通りに解釈してはならず; むしろ原子力時代の始まりからは詳細な大気の核の入力/崩壊関数を使用して大気およびバイオスフェア
14Cの変動を追跡しなくてはならない)。この後者のバイオスフェア
14C時間特徴が最近のバイオスフェア 炭素の年数付けの保証を提供する。
14C は加速器質量分析 (AMS)により測定でき、「現代炭素比(fraction of modern carbon)」 (f
M)という単位により結果が与えられる。f
M はNational Institute of Standards and Technology (NIST) Standard Reference Materials (SRMs) 4990Bおよび 4990Cにより規定され、これらはそれぞれシュウ酸標準 HOxIおよびHOxIIとして知られている。基本的定義は
14C /
12C 同位体比 HOxIの0.95倍に関連する (AD 1950を参照)。これは崩壊を修正した産業革命前の木におよそ匹敵する。現在生きているバイオスフェア(植物材料)については、f
M はおよそ1.1である。
【0148】
安定な炭素同位体比 (
13C /
12C)は源の識別および割当への補完的な経路を提供する。所定の生物由来材料における
13C /
12C 比は二酸化炭素が固定された時点の大気中の二酸化炭素における
13C /
12C 比と一致し、また正確な代謝経路を反映する。地域的変動も起こる。石油、C3 植物(広葉)、C.sub.4 植物(イネ科植物)、および海洋炭酸塩はすべて
13C /
12Cおよび対応するデルタ
13C値が有意に異なっている。さらに、C3およびC4 植物の脂質は代謝経路の結果として同じ植物の炭水化物成分に由来する材料とは異なる分析となる。測定の精度の範囲内で、
13C は同位体分別効果によって大きな変動を示し、本発明にとってもっとも顕著なのは光合成機構である。植物における炭素同位体比における相違の主な原因は、植物における光合成 炭素 代謝の経路、特に一次カルボキシル化の際に起こる反応、即ち大気中 CO
2の最初の固定における相違と密接に関連している。植物の2つの大きいクラスは、「C3」(またはカルビン・ベンソン) 光合成回路を組み込むものと、「C4」(またはハッチ・スラック) 光合成回路を組み込むものである。 C3 植物、例えば、 広葉樹および 針葉樹は、温帯気候領域において優勢である。C3 植物において、一次 CO
2 固定またはカルボキシル化 反応には、酵素 リブロース-1,5-二リン酸 カルボキシラーゼが関与し、 最初の安定な生成物は3-炭素化合物である。一方、C4 植物には、暖地型牧草、トウモロコシおよびサトウキビなどの植物が含まれる。C4 植物においては、さらなる酵素、ホスホエノール-ピルビン酸 カルボキシラーゼを伴うさらなるカルボキシル化 反応が一次カルボキシル化 反応である。第一の安定な 炭素 化合物は4-炭素酸であり、これは後で脱炭酸される。こうして放出される CO
2 は再び C3回路によって固定される。
【0149】
C4およびC3 植物の両方がある範囲の
13C /
12C 同位体比を示すが、典型的な値は約-10〜-14/mil (C4)および -21〜-26/ mil (C3)である [Weber et al.、J. Agric. Food Chem.、45、2942 (1997)]。石炭および石油は一般にこの後者の範囲に入る。
13C 測定尺度は元々ピー・ディー・ベレムナイト(PDB) 石灰石によって設定されたゼロにより規定され、ここで値はこの材料からの変位の千当たり部数によって示される。 「Δ
13C 」値は千当たり部数(per mil)、%の略であって、以下のように計算される:
【数1】
【0150】
PDB 参照物質 (RM)がなくなって以来、一連の代替的なRMがIAEA、USGS、NIST、およびその他の選択された国際的同位体研究室の協力によって開発された。PDBからのmil当たり変位の表記が Δ
13Cである。マス 44、45 および46の分子イオンに対する高精度安定比質量分析 (IRMS)によってCO
2に対して測定がなされる。
【0151】
脂肪酸誘導体および関連するバイオ燃料、化学物質、および混合物は、石油化学物質由来の対応物と
14C (fM)および二重炭素-同位体 フィンガープリント法によって完全に識別でき、新規組成物であることが示される。
【0152】
本明細書に記載する脂肪酸誘導体はバイオ燃料および化学物質の生産において有用性を有する。本発明により提供されるこの新規な脂肪酸誘導体に基づく生成物の組成物はさらに石油化学物質源のみに由来する物質から二重炭素-同位体 フィンガープリント法に基づいて区別することが出来る。これら生成物を識別する能力は商業目的でこれら材料を追跡することにおいて有益である。例えば、「新しい」および「古い」炭素 同位体 プロファイルの両方を含む燃料または化学物質は「古い」材料のみからできている燃料および化学物質から識別できる。したがって、本発明の材料はその特有のプロファイルに基づいて、競争の規定および寿命の決定のために商業利用できる。
【0153】
いくつかの例において、δ
13C が 約 -10.9から約 -15.4の脂肪酸誘導体を含むバイオ燃料組成物が作られ、ここで 脂肪酸誘導体は組成物における生物由来材料 (再生可能資源、例えば、セルロース性材料および糖に由来する)の少なくとも 約 85% を占める。別の例において、バイオ燃料組成物は下記式を有する脂肪酸誘導体を含む:
【化1】
[式中、
Xは、CH
3、-CH
2OR
1; -C(O)OR
2; または-C(O)NR
3R
4;
Rは各 nについて独立に非存在、Hまたは低級脂肪族;
nは 8〜34の整数、例えば、10〜24;および、
R
1、R
2、R
3およびR
4は独立にHおよび低級アルキルから選択される]。
典型的には、Rが低級 脂肪族である場合、R は分枝、非分枝または環状 低級 アルキルまたは低級 アルケニル 部分である。例示的な R基としては、限定されないが、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、シクロペンテニル 等が挙げられる。脂肪酸誘導体は さらにδ
13Cが約 -10.9 から 約 -15.4であるとして特徴づけられ;脂肪酸誘導体が組成物における生物由来材料の少なくとも 約 85% を占める。 いくつかの例においてバイオ燃料組成物における脂肪酸誘導体は現代炭素比(f
M 14C)少なくとも 約 1.003、1.010、または 1.5を有することを特徴とする。
【0154】
B.脂肪酸誘導体
様々な 脂肪酸エステルについてのセタン価(centane number) (CN)、粘度、融点、および燃焼熱が例えば、Knothe、Fuel Processing Technology 86:1059-1070、2005において特徴づけられており、これは引用により本明細書に含める。本明細書に提供する教示を用いて、生産宿主を Knothe、Fuel Processing Technology 86:1059-1070、2005に記載の脂肪酸エステルのいずれかを生産するよう操作することができる。
【0155】
アルコール (短鎖、長鎖、分枝または不飽和)は、本明細書に記載する生産宿主によって生産することができる。かかるアルコールは直接燃料として利用可能であるし、あるいはそれらは、エステル、即ち上記のようにエステルのA側を作るために利用することが出来る。かかるエステルは単独でまたはその他の本明細書に記載する脂肪酸誘導体と組合せて、有用な燃料である。
【0156】
同様に、本明細書に記載する微生物から生産される炭化水素はバイオ燃料として利用可能である。かかる炭化水素に基づく燃料は、分枝点、規定された飽和度、および特定の炭素長を含むよう設計することが出来る。バイオ燃料として単独でまたはその他の脂肪酸誘導体と組合せて使用する場合、 炭化水素はさらに、添加剤またはその他の従来型の燃料 (アルコール、トリグリセリド由来のディーゼルおよび石油に基づく燃料)と組み合わされてもよい。
【0157】
C.不純物
本明細書に記載する脂肪酸誘導体はバイオ燃料の製造に有用である。かかる脂肪酸誘導体は脂肪酸から直接作られ、トリグリセリドの化学的加工から作られるものではない。したがって、開示された脂肪酸誘導体を含む燃料は、トリグリセリド由来のバイオ燃料、例えば、植物油および脂肪に由来する燃料に通常付随するものよりも少ない不純物を含有する。
【0158】
本明細書に記載する粗脂肪酸誘導体バイオ燃料 (脂肪酸誘導体をその他の燃料、例えば、従来型の燃料と混合する前のもの)は、石油化学的ディーゼルまたはバイオディーゼルよりも少ないエステル交換 触媒を含有する。例えば、脂肪酸誘導体は、約 2%未満、1.5%、1.0%、0.5%、0.3%、0.1%、0.05%、または0%のエステル交換触媒またはエステル交換 触媒に起因する不純物を含みうる。エステル交換 触媒としては、例えば、水酸化物触媒、例えば、 NaOH、KOH、LiOH、および酸性触媒、例えば、鉱酸触媒およびルイス酸触媒が挙げられる。エステル交換触媒に起因する触媒および不純物としては、これらに限定されないが、スズ、鉛、水銀、カドミウム、亜鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ホウ素、アルミニウム、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、ウラン、カリウム、ナトリウム、リチウム、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0159】
同様に、本明細書に記載する粗脂肪酸誘導体バイオ燃料(脂肪酸誘導体をその他の燃料、例えば、 石油化学的ディーゼルまたはバイオディーゼルと混合する前のもの) は、トリグリセリドから作られたバイオ燃料よりも少ないグリセロール (または グリセリン)を含む。例えば、脂肪酸誘導体は、約 2%未満、1.5%、1.0%、.5%、.3%、.1%、.05%、または0%のグリセロールを含みうる。
【0160】
脂肪酸誘導体に由来する粗バイオ燃料はまた、トリグリセリドからできたバイオディーゼルと比較して少ない遊離アルコール (即ち、エステルを作るために用いられるアルコール)を含む。 これは部分的には生産宿主によるアルコールの利用効率に起因する。例えば、脂肪酸誘導体は、約 2%未満、1.5%、1.0%、.5%、.3%、.1%、.05%、または 0%の遊離アルコールを含む。
【0161】
開示された脂肪酸誘導体に由来するバイオ燃料は、さらに石油由来ディーゼルと比較して硫黄濃度が低いことによっても特徴づけられ得る。 例えば、脂肪酸誘導体由来のバイオ燃料は約 2%未満、1.5%、1.0%、.5%、.3%、.1%、.05%、または 0%の硫黄を有しうる。
【0162】
D.添加剤
燃料添加剤は燃料またはエンジンの性能を増強するために用いられる。例えば、燃料添加剤は、凍結/ゲル化点、曇り点、潤滑性、粘度、酸化安定性、発火性、オクタン レベルおよび引火点を変化させるために利用されうる。米国においては、すべての燃料添加剤は環境保護庁に登録しなければならず、燃料添加剤を販売する会社および燃料添加剤の名称は公共に庁のウェブサイトから入手でき、庁に接触することによっても入手できる。当業者であれば本明細書に記載する脂肪酸誘導体は所望の性質を付与するために1以上のかかる添加剤と混合されうることを理解している。
【0163】
当業者であれば、本明細書に記載する脂肪酸誘導体は、その他の燃料、例えば、トリグリセリド由来のバイオディーゼル、様々なアルコール、例えば、エタノールおよびブタノール、および石油由来生成物、例えば、ガソリンと混合できることを理解するであろう。いくつかの例において、ゲル化点の低い脂肪酸誘導体、例えば、 C16:1 エチルエステルまたは C18:1 エチルエステルが生産される。このゲル化点の低い脂肪酸誘導体をトリグリセリド由来のバイオディーゼルと混合すると燃料全体としてのゲル化点が低下する。同様に、脂肪酸誘導体、例えば、 C16:1 エチルエステルまたはC18:1 エチルエステルは石油由来ディーゼルと混合されると少なくともそしてしばしば5%を超えるバイオディーゼルである混合物が提供されうる。いくつかの例において、混合物は少なくとも 20%またはそれ以上の脂肪酸誘導体を含む。
【0164】
例えば、少なくとも 約 20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%または 95% の炭素鎖が8:0、10:0、12:0、14:0、14:1、16:0、16:1、18:0、18:1、18:2、18:3、20:0、20:1、20:2、20:3、22:0、22:1または22:3の脂肪酸誘導体を含むバイオ燃料組成物を作ることが出来る。かかるバイオ燃料組成物はさらに、曇り点を約 5℃未満、または0℃に低下させうる曇り点を低下させる添加剤、界面活性剤またはマイクロエマルジョンから選択される少なくとも1つの 添加剤、少なくとも 約 5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70% または80%、85%、90%、または95%のトリグリセリド由来のディーゼル 燃料、石油由来ガソリンまたは石油由来ディーゼル燃料を含みうる。