特許第5933957号(P5933957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許5933957-グラフィックスフィルム前駆体 図000004
  • 特許5933957-グラフィックスフィルム前駆体 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933957
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】グラフィックスフィルム前駆体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20160602BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20160602BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20160602BHJP
   B44C 1/17 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   B41M5/00 B
   B44C1/17 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-231893(P2011-231893)
(22)【出願日】2011年10月21日
(65)【公開番号】特開2013-86467(P2013-86467A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100112704
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100130041
【弁理士】
【氏名又は名称】成岡 郁子
(74)【代理人】
【識別番号】100175075
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康子
(74)【代理人】
【識別番号】100160956
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛生
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−297930(JP,A)
【文献】 特開平10−250294(JP,A)
【文献】 特開平10−130593(JP,A)
【文献】 特開平09−157606(JP,A)
【文献】 特開平08−113768(JP,A)
【文献】 特開昭63−093371(JP,A)
【文献】 特表平09−509373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00,5/50,5/52,
B44C 1/165,1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)画像受容層と、樹脂バインダー中に分散した無機ビーズを含む耐傷付き層とを含む画像受容フィルムと、
(ii)前記画像受容フィルムに積層され、支持層と、前記支持層に積層された粘着性樹脂バインダーに分散した弾性微小球を含む粘着剤層とを含むプレマスクとを有するグラフィックスフィルム前駆体であって
前記耐傷付き層と前記粘着剤層がともに凹凸面を有し、前記耐傷付き層の凹凸面と、前記粘着剤層の凹凸面とが向かい合っており
前記プレマスクは、前記グラフィックスフィルム前駆体を被着体に貼着した後に剥離されるものである、グラフィックスフィルム前駆体。
【請求項2】
前記弾性微小球は、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される1以上の樹脂で形成されている、請求項1に記載のグラフィックスフィルム前駆体。
【請求項3】
前記プレマスクは、粘着剤層の塗布重量が5g/m〜100g/mである、請求項1又は2に記載のグラフィックスフィルム前駆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフィックスフィルム前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムに画像を印刷した種々のグラフィックスフィルムが用いられている。このようなグラフィックスフィルムは、マーキングフィルム等とも呼ばれ、広告、宣伝や、その他の情報伝達の目的で、建築物の壁面、路面、看板用ユニット等に貼付して使用されるため、被着体への接着性はもちろん、使用中に表面に傷が付きにくいことが要求される。さらに、路面に貼付して使用するマーキングフィルムの場合は、その上を人や車が通過する際に滑らないようにする必要がある。
【0003】
また、グラフィックスフィルムの中には、透明なフィルムの一方の面に画像を印刷し、そして当該フィルムの他方の面が最外層にくるようにして使用するものがある。このタイプのグラフィックスフィルムを製造する際には、取扱性を上げるため、最外層にさらにプレマスクと呼ばれるフィルムを積層することがある。プレマスクは、グラフィックスフィルムを被着体に貼付した後剥離する。
【0004】
例えば特許文献1には、製造時の取扱性を付与するために、プレマスク層を設けた図形転写物品が記載されている。この物品は、屈曲性フィルム層表面に設けた画像受容体層に画像を転写し、さらに保護層及びプレマスク層を積層したものである。プレマスク層は、保護層に相対しており、図形転写物品を被着体に貼付したのちに剥離する。特許文献1に記載の物品においては、保護層の、プレマスク層に相対する表面も、またかかる表面に相対するプレマスク層の表面も平滑である。
【0005】
特許文献2には、表面に凹凸のある路面表示シートが開示されている。このように、傷付き防止や滑り防止のためにグラフィックスフィルムの最外層に凹凸を設けることがあるが、従来の表面が平滑なプレマスク層では、印刷時に剥がれが起きる等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平9−509373号公報
【特許文献2】米国特許4248932号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、印刷する際には剥離せず、被着体に貼付した後に手で容易に剥離することができるプレマスクを有するグラフィックスフィルム前駆体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、(i)画像受容層と、樹脂バインダー中に分散した無機ビーズを含む耐傷付き層とを含む画像受容フィルムと、
(ii)前記画像受容フィルムに積層され、支持層と、前記支持層に積層された粘着性樹脂バインダーに分散した弾性微小球を含む粘着剤層とを含むプレマスクからなり、前記耐傷付き層と前記粘着剤層がともに凹凸面を有し、前記耐傷付き層の凹凸面と、前記粘着剤層の凹凸面とが向かい合っているグラフィックスフィルム前駆体を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、印刷時の取り扱いを向上し、被着体に貼付した後に手で容易に剥離することができるプレマスクを有するグラフィックスフィルム前駆体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のグラフィックスフィルム前駆体の一例を示す断面図である。
図2】本発明のグラフィックスフィルム前駆体の他の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のグラフィックスフィルム前駆体は、画像受容フィルムとプレマスクとを有する。
【0012】
グラフィックスフィルム前駆体は、被着体に貼着したのちプレマスクを剥離してグラフィックスフィルムとなる。
【0013】
画像受容フィルムは、画像受容層と耐傷付き層を含む。
【0014】
画像受容層は、各種印刷の画像受容層として従来から使用されている公知の樹脂からなる層である。このような樹脂は熱可塑性樹脂であればよく、その表面に施す印刷方法や使用するインクに応じて適宜選択可能である。例えば、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、またはこれらの樹脂のブレンドを挙げることができる。前記画像受容層は、これらの樹脂を所望の厚さで、基材や剥離材等に塗布・乾燥して形成することができる。
【0015】
画像受容層の厚さは特に限定されないが、例えば、約1μm〜約100μmとすることができる。この厚さは、グラフィックスフィルム前駆体の使用態様や、画像受容層に施す印刷の種類等に合わせて適宜調整することができる。
【0016】
耐傷付き層は、無機ビーズと樹脂バインダーとを含む。耐傷付き層において、無機ビーズが樹脂バインダー中にほぼ包括されている(例えば、図1または図2に示す態様)ことが、無機ビーズの脱落(粉落ち)を防ぐため好ましい。
【0017】
無機ビーズは、無機材料からなる球状の微粒子であり、非粘着性であることが好ましい。具体的には例えば、シリカ、アルミナまたはガラスからなる球状微粒子を用いることができる。形状は、ブロッキングやインク移り防止の観点から真球状であることが好ましい。また、中空粒子、多孔粒子も使用することができる。
【0018】
前記無機ビーズの体積平均粒径は、約10μm〜約100μmとすることができる。あるいは、約20μm〜約60μmとすることができる。尚、本明細書において、体積平均粒径はコールター(株)社製レーザー回折・散乱粒径測定装置LS−230を用いて測定している。
【0019】
樹脂バインダーは、非粘着性の樹脂であれば良く特に限定されない。無機ビーズとの濡れ性が良好で膜強度及び耐溶剤性に優れた樹脂を用いるのが好ましい。また、耐溶剤性の面から架橋型の樹脂を利用するのが好ましい。具体的には例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アルキド・メラミン樹脂、またはこれらの樹脂のブレンドなどを挙げることができる。前記樹脂バインダーの粘度は、約100〜約5000センチポイズとすることができる。
【0020】
無機ビーズと樹脂バインダーとの質量比は適宜設定することができる。例えば、約45〜約180:約100とすることができる。
【0021】
また、耐傷付き層の画像受容層への塗布重量は、約10g/m〜約100g/mと、好ましくは約20g/m〜約60g/mとすることができる。
【0022】
耐傷付き層は、樹脂バインダーに無機ビーズを添加、混合した後、画像受容層に例えばナイフコーティングなどの従来公知の方法により塗布、乾燥して得ることができる。乾燥後の表面は凹凸を有する。
【0023】
耐傷付き層の厚さは特に限定されない。例えば、約10μm〜約100μmとすることができる。
【0024】
画像受容層と耐傷付き層は、図1図2に示すように直接積層されていてもよいし、間に、支持や補強のための、フィルムあるいは樹脂の層や、粘着剤層を介して積層されていてもよい。例えば、耐傷付き層に支持フィルム層を、続いてウレタン樹脂などからなる補強層を積層したのち画像受容層を積層したり、耐傷付き層に支持フィルム層を、続いて粘着剤層及びウレタン樹脂などからなる補強層を積層したのち画像受容層を積層したり、あるいは耐傷付き層に支持フィルム層を、続いてウレタン樹脂などからなる補強層を積層したのち画像受容層を積層したりしてもよい。
【0025】
図2に示すように、画像受容フィルムの画像受容層の耐傷付き層と反対側の面に、さらに印刷層、及び粘着剤層(第一の粘着剤層)をこの順で含むことができる。印刷層は、水性溶媒系インク、有機溶媒系インク、あるいはUVインクを用いた各種インクジェット印刷、静電印刷、オフセット印刷、またはシルク印刷によって画像受容層に施すことができる。粘着剤層には、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、またはシリコーン系など、従来公知の粘着性ポリマーからなる粘着剤を用いることができる。さらに、所望により白色顔料を含んでもよい。このような粘着性ポリマーや白色顔料は従来公知のものを適宜選択して用いることができ限定されない。本発明のグラフィックスフィルム前駆体を種々の条件で使用する場合に、グラフィックスの色濃度に差が生じないようにするためには、適度の隠蔽性を有する粘着剤を用いることが好ましい。
【0026】
さらに図2に示すように、上記の粘着剤層に公知のフィルムやアルミニウムなどの補強層を積層し、さらにもう一つの粘着剤層(第二の粘着剤層)を設けてもよい。この場合、第二の粘着剤層によりグラフィックスフィルムを被着体に貼着することができる。被着体に貼着する粘着表面を保護するため、ライナーを設けることもできる。
【0027】
プレマスクは、支持層と粘着剤層からなる。支持層は、可撓性のフィルムからなる。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、またはフッ素系ポリマーからなるフィルムを使用することができる。フィルムは、透明であっても不透明であってもよく、さらに着色の有無も問わない。
【0028】
支持層の厚さは、適宜選択することができ限定されない。例えば、約5μm〜約300μmとすることができる。
【0029】
粘着剤層は、粘着性樹脂バインダーとこれに分散した弾性微小球からなる。
【0030】
粘着性樹脂バインダーとしては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、またはシリコーン系など、従来公知の粘着性ポリマーを用いることができる。
【0031】
弾性微小球は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、またはウレタン樹脂からなる球状の微粒子を用いることができ、それ自身で粘着性を有してもよい。
【0032】
耐溶剤性の面から、弾性微小球は、架橋粒子であることが好ましい。また、中空粒子、多孔粒子も使用することができる。
【0033】
弾性微小球の体積平均粒径は、約10μm〜約100μmとすることができる。あるいは、約20μm〜約50μmとすることができる。
【0034】
プレマスクの粘着剤層は、粘着性樹脂バインダーに弾性微粒子を添加、混合した後、支持層に、例えばナイフコーティングなどの従来公知の方法により塗布、乾燥して得ることができる。乾燥後の表面は凹凸を有する。
【0035】
耐傷付き層の厚さは特に限定されない。例えば、約10μm〜約100μmとすることができる。
【0036】
また、プレマスクの粘着剤層の塗布重量は、約5g/m〜約100g/m、または約10g/m〜約60g/mとすることができる。
【0037】
本発明のグラフィックスフィルム前駆体は、従来公知の方法を適宜選択することにより製造することができる。以下に製造法の一例を示す。
<画像受容フィルムの作製>
まず工程基材となる剥離処理フィルムに、樹脂を塗布・乾燥して画像受容層を形成する。そして、樹脂バインダーに無機ビーズを分散した溶液を画像受容層に塗布乾燥して、耐傷付き層を形成し、工程基材付き画像受容フィルムを得ることができる。
<プレマスクの作製>
支持層となるフィルムに、粘着性樹脂バインダーに弾性微小球を分散した溶液を塗布・乾燥して粘着剤層を得、プレマスクを作製することができる。
<グラフィックスフィルム前駆体の作製>
工程基材付き画像受容フィルムとプレマスクとを、耐傷付き層と粘着剤層とが向き合うように積層し、工程基材を剥離してグラフィックスフィルム前駆体を得ることができる。
【0038】
印刷層は、ロール状に巻き取ったグラフィックスフィルム前駆体を、公知の印刷機械に装填し、上述のような印刷法により設けることができる。
【0039】
印刷層を設けたのち、必要や目的に応じて第一の粘着剤層、補強層、第二の粘着剤層、ライナー、さらにその他の機能層を従来公知の方法により適宜設けてグラフィックスフィルム前駆体を得ることができる。印刷層及びその他の層を有するグラフィックスフィルム前駆体の一例を図2に示す。
【0040】
グラフィックスフィルム前駆体は、被着体に貼着したのちプレマスクを剥離してグラフィックスフィルムとして使用することができる。耐傷付き層とプレマスクの粘着剤層の凹凸面(トポロジー性を有する表面)とを貼り合わせることにより、グラフィックフィルム前駆体に印刷機を用いて印刷する際に剥がれることがないが、かかる前駆体を被着体に貼着したのち、プレマスクのみを容易に剥離することができる。
【0041】
本明細書において、以下の略称を用いることがある。
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
DMAEMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
AA:アクリル酸
IOA:イソオクチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
1,4BDA:1,4−ブタンジオールジアクリレート
MEK:メチルエチルケトン
【実施例】
【0042】
サンプルの作製
実施例1
実施例1のサンプルは次のようにして作製した。使用した材料は、表1に記載の通りである。
ステップ1:画像受容フィルムの作製
P1、P2及びCL1の混合溶液をミキサー(TKオートホモミキサー、特殊機化工業社製)で撹拌した。P1、P2及びCL1の混合比は固形分比で、100:75:0.15であった。撹拌した溶液を厚さ50μmの剥離処理済ポリエステルフィルムにナイフコートにより塗布し、95℃で5分間及び155℃で2分間乾燥した。乾燥後、厚さ50μmの画像受容層を得た。
PU1、CL2、Beads1及びFA1の混合溶液をミキサー(TKオートホモミキサー、特殊機化工業社製)で撹拌した。PU1、CL2、Beads1及びFA1の混合比は固形分比で、30:5:35:0.69であった。撹拌した溶液を画像受容層にナイフコートにより塗布し、65℃で2分間及び90℃で3分間乾燥し耐傷付き層を形成した。乾燥後、耐傷付き層の塗布重量は27g/mであった。
ステップ2:プレマスクの作製
プライマー溶液(3M社製カルボジイミド)を厚さ50μmのポリエステルフィルムにナイフコーターにより塗布し、95℃で1分間乾燥してプライマー層を得た。
MSA1(粘着性弾性微小球)、Binder1(粘着性樹脂バインダー)及びCL1の混合溶液をミキサーで混合した。MSA1、Binder1及びCL1の混合比は固形分比で、20:80:0.2であった。得られた粘着性弾性微小球と粘着性バインダーを含む粘着剤溶液を、プライマー層にナイフコーターにより塗布し、95℃で5分間乾燥して粘着剤層を得た。乾燥後の粘着剤層の塗布重量は、11g/mであった。
ステップ3:評価用サンプルの作製
得られたプレマスクの粘着剤層の面を、画像受容フィルムの耐傷付き層に貼りつけた後、画像受容層からポリエステルフィルムを剥がして画像受容層の表面を露出させた。印刷工程時の画像受容フィルムとプレマスクのポップオフの評価(以下「ポップオフ評価」ということがある)には、この段階のサンプルを用いた。
【0043】
続いて、得られたサンプルに溶媒インクジェットプリンター(ローランド社製SC540)とインク(ECO−SOLmax inks)を用いて印刷して印刷層を設けた。この印刷層に、住友スリーエム社製IJ5385(白色粘着剤層、アルミ層、アクリル粘着剤層、及びライナーを積層したフィルム)を積層した。ポップオフ評価以外の評価には、この段階のサンプルを用いた。
実施例2
プレマスクの粘着剤層の塗布重量を17g/mとした以外は実施例1と同様に作製した。
比較例1
プレマスクとして、粘着剤層表面が平滑なSCPS53(3M社製プレマスク)を用いた以外は実施例2と同様に作製した。
試験方法
接着力
サンプルのライナーを剥がしてアルミ板に貼り付けた。貼り付け方法は、JIS Z 0237 8.2.3.に従った。さらに、20℃で48時間放置した後、プレマスクの、耐傷付き層に対する180度剥離力をテンシロン型剥離試験機を用いて測定した。剥離速度は300mm/分とした。
印刷工程時の画像受容フィルムとプレマスクのポップオフ
溶媒インクジェットプリンター(ローランド社製SC540)とインク(ECO−SOLmax inks)を用いて、印刷工程時の剥離(ポップオフ)有無を評価した。印刷中にプレマスクと画像受容フィルムの間のポップオフがなかった場合は「No」と、ポップオフが起きた場合は「Yes」と評価した。結果を表2に示す。
再剥離性
サンプルのプレマスクを手で剥がして剥離性を評価した。プレマスクが容易に剥がれた場合は「Good」と、容易に剥がれなかった場合は「Poor」と評価した。結果を表2に示す。
耐摩擦性
幅10mm×長さ10mmにカットしたサンプルのライナーを剥がしてアルミ板に貼りつけた後、プレマスクを剥離した。JIS A1453に従い耐摩耗性を評価した。研磨紙はS−42(テーバーインダストリーズ社製)を摩耗輪に巻きつけ、1.0kgの重りを使用して、最初にローラーを100回転した後研磨紙を交換した。続いて500回転ごとに研磨紙を取り換えて、白色粘着剤層が摩耗してグラフィックスフィルムの白色が消えるまでの回転数を測定した。結果を表2に示す。
滑り抵抗
サンプルのライナーを剥がして、アスファルトに貼りつけた後、プレマスクを剥離した。ASTM E303−83に従い、湿潤時の滑り抵抗を測定した。結果を表2に示す。表2の数値が大きいほど滑りにくいことを示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【符号の説明】
【0046】
1 画像受容層
2 耐傷付き層
3 無機ビーズ
4 樹脂バインダー
5 支持層
6、10、12 粘着剤層
7 弾性微小球
8 粘着性樹脂バインダー
9 印刷層
11 補強層
13 ライナー
図1
図2