(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934012
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】油滓分離器
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
A47J37/12 321
A47J37/12 391
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-83816(P2012-83816)
(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公開番号】特開2013-212251(P2013-212251A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】市川 惠
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−031627(JP,A)
【文献】
実開昭59−040052(JP,U)
【文献】
特開2001−275853(JP,A)
【文献】
実開昭52−017157(JP,U)
【文献】
実開昭62−067539(JP,U)
【文献】
実開昭48−017479(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油槽の略平坦な底面に設置される油滓分離器であって、縦断面において、下端部から上方且つ側方に伸びる上覆い部と、前記上覆い部の先端部に設けられ先端側程下方へ位置する下がり部と、からなる傘部を複数備え、前記傘部は隣接する前記傘部と平面視において重なる重なり代を有することを特徴とする油滓分離器。
【請求項2】
前記傘部は、縦断面における最上部で上方に尖る末広がり状に形成されることを特徴とする請求項1記載の油滓分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底面が略平坦となった油槽に設置される油滓分離器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フライヤーは、器体と、器体内に収容される加熱部と、器体の上部に設けられる油槽とを備えている。例えば特許文献1に示される従来例では、
図1に示すように、加熱部3は、ガスバーナからなる燃焼器31が湯槽2の下位置に設けられて主体が構成され、油槽2の底面20は略平坦となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−5080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のフライヤーにあっては、油槽2に溜まっている油中に揚げ物を入れると、揚げ物は一旦油槽2の底面20にまで下降し、その後浮き上がってくる。油槽2の底面20上には、通常、揚げ物を揚げる際に発生する油滓(揚げ滓)が沈んでいる。このため、油槽2の底面20付近にまで下降した揚げ物に油滓が付着してしまい、所望のころもを形成するのが難しく、商品価値が下がってしまうものであった。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、油槽の底面上に沈んでいる油滓が揚げ物に付着するのを防止する油滓分離器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、油槽2の略平坦な底面20に設置される油滓分離器4であって、縦断面において、下端部から上方且つ側方に伸びる上覆い部41と、前記上覆い部41の先端部に設けら
れ先端側程下方へ位置する下がり部42と、からなる傘部40を
複数備え
、前記傘部40は隣接する前記傘部40と平面視において重なる重なり代45を有することを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記傘部40は、縦断面における最上部43で上方に尖る末広がり状に形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明にあっては、傘部により、油滓が下方に位置し且つ揚げ物が上方に位置するように分離されるため、揚げ物と油滓が接触せず、揚げ物に油滓が付着するのが抑止される
とともに、揚げ物の油槽の底面への下降が確実に阻止される。
【0010】
請求項2に係る発明にあっては、油滓が傘部の上面に載置され難くなり、揚げ物に油滓が付着するのがより一層抑止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態のフライヤーの全体斜視図である。
【
図2】同上のフライヤーの燃焼室を通る面で切断した縦断面図である。
【
図3】油滓分離器を示し、(a)は縦断面図であり、(b)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基づいて説明する。
図1及び
図2にてフライヤーを示し、
図3にて油滓分離器4を示す。
【0014】
フライヤーは、器体1と、器体1の上部に設けられる油槽2と、器体1内に収容される加熱部3と、を備えるものである。本実施形態では、器体1は、前後左右の側板を備え、上端部の開口に、平面視略矩形状をし上方に凹となる油槽2のフランジ部が取り付けられる。本発明においては、油槽2の底面20は平坦となったものである。なお、油槽2の底面20は厳密に平坦である必要はないが、油滓(大部分は1mm〜10mm程度であって主にこの範囲の油滓を対象とする)が逃げ込むポケットのような凹所が形成されず、揚げ物が油槽2の底面20にまで達した時に、底面20上に溜まっている油滓が付着してしまう程度の平坦性を有している(これを略平坦という)ものとする。油槽2の底面20は、本実施形態を含め通常は略水平となるように設置される。
【0015】
油槽2の底部には排油バルブ21が設けられおり、その下方に油受け(図示せず)を設置することで、排油バルブ21を開放した際に油槽2内の揚げ油を排出することができる。器体1の下方への開口は特に閉塞されておらず、油受けを自在に設置することができる。
【0016】
加熱部3は、器体1内の油槽2の下位置に設けられる燃焼室30内に燃焼器31が設けられて構成される。燃焼器31は、都市ガス、LPガス等の燃料ガスと空気を混合して燃焼させるガスバーナで構成される。燃焼器31にて生じた高温の排気ガスは、下方より燃焼室30の天井となる油槽2の底部を加熱し、燃焼室30に連通する排気流路32を介して排出される。本実施形態では、器体1および油槽2の後部の上端から上方に向けてバックガード11が立設してあり、このバックガード11の内部が排気流路32の一部を構成している。また、油槽2や燃焼室30の外面に断熱材が設けられてもよい。
【0017】
このようなフライヤーにおいては、上述したように、揚げ物が油槽2の底面20に達した時に底面20上に溜まっている油滓が付着してしまう惧れがあるため、揚げ物と油滓とを分離し、揚げ物に油滓が付着するのを防止する油滓分離器4が設置される。
【0018】
油滓分離器4は、油滓が下方に位置し、揚げ物が上方に位置するように油滓と揚げ物とを分離する傘部40を備えるものである。傘部40は、縦断面(長手方向と略直交する断面)において、下端部から上方且つ側方に伸びる上覆い部41と、上覆い部41の先端部から下がる下がり部42と、を備えている。
【0019】
上覆い部41は、本実施形態では、縦断面が、油槽2の底面20に載置される下端部から上方へ行く程側方に位置するように傾斜する、上方に凸となる滑らかな曲線からなり、その先端部が傘部40の最上部43となる。最上部43から連設される下がり部42は、先端側程下方へ位置するように傾斜するとともに、先端が上覆い部41の下端部よりも上方に位置し、油槽2の底面20との間に、油滓が下方へ挿通する隙間が形成されるものである。
【0020】
本実施形態では、油滓分離器4は複数の傘部40を備えるもので、油槽2の底面20に載置されるフレーム44に複数の傘部40が所定の間隔をあけて固定される。そして、複数の傘部40は、平面視において、隣接する傘部40と重なる重なり代45を有しており、
図3に示す例では、上覆い部41の下端部と下がり部42の先端部が重なり代45となっている。
【0021】
また本実施形態では、傘部40は、最上部43で上方に尖る末広がり状、すなわち、縦断面における最上部43の上覆い部41側の接線の傾き方向と下がり部42側の接線の傾き方向が逆になる形状に形成される。
【0022】
上記のような油滓分離器4は、フレーム44が油槽2の底面20上に載置されると、複数の傘部40によって油槽2の底面20の平面視における略全体が覆われる状態となる。そして、揚げ物を揚げる作業により発生した油滓は油中を下降して、油槽2の底面20上に沈む。この時、本実施形態のように傘部40が最上部43で上方に尖る末広がり状をしていることで、油滓が傘部40の上面に載置(付着)され難くなる。
【0023】
揚げ物が油中を下降しても、傘部40の上面(特に最上部43)に当接し、それ以上の下降が阻止されるものであり、特に、複数の傘部40が重なり代45を有していることで、揚げ物が油槽2のいかなる位置で下降しても傘部40の上面に当接するため、揚げ物の下降が確実に阻止される。
【0024】
また、油槽2の底面20に載置された油滓は、油の流れにより移動し上昇する可能性がある。しかしながら、油滓分離器4は下がり部42を有しているため、矢印イに示すように、油の流れにより上昇し始めた油滓は、下がり部42により移動の向きが下方へと転換され、傘部40の上方に浮上するのが抑止される。
【0025】
なお、傘部40(上覆い部41、下がり部42)の形状は、
図3に示すような形状だけでなく、例えば断面Г字状や逆レ字状のような曲線を殆ど有しない形状であってもよく、特に限定されない。また、フライヤーの加熱部3が、燃焼器以外の例えば電気ヒーター等により加熱するものであっても勿論よく、加熱形態は限定されない。
【符号の説明】
【0026】
1 器体
11 バックガード
2 油槽
20 底面
21 排油バルブ
3 加熱部
30 燃焼室
31 燃焼器
32 排気流路
4 油滓分離器
40 傘部
41 上覆い部
42 下がり部
43 最上部
44 フレーム
45 重なり代