(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934052
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】ランキンサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F02G 5/02 20060101AFI20160602BHJP
F02G 5/00 20060101ALI20160602BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
F02G5/02 B
F02G5/00 B
F01N5/02 F
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-178695(P2012-178695)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-37774(P2014-37774A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】中村 正明
【審査官】
佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−255604(JP,A)
【文献】
特開2010−077933(JP,A)
【文献】
特開2002−115504(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/126723(WO,A1)
【文献】
特開2009−133266(JP,A)
【文献】
特開2011−027000(JP,A)
【文献】
特開2008−297962(JP,A)
【文献】
特開2012−112369(JP,A)
【文献】
特開昭61−171811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02G 5/00− 5/04
F01K 23/06
F01K 23/10
F01K 25/10
F01N 5/02
F25B 9/00−41/06
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるランキンサイクルシステムであって、
作動媒体の流れ方向において蒸発器の上流側に取り付けられる蒸発器用熱交換器と、
作動媒体の流れ方向において凝縮器の上流側に取り付けられる凝縮器用熱交換器と、
前記蒸発器用熱交換器と前記凝縮器用熱交換器とに接続される伝熱部材を備えるランキンサイクルシステム。
【請求項2】
前記伝熱部材は、ヒートパイプである、
請求項1に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項3】
前記蒸発器用熱交換器と前記蒸発器とが離間されており、
前記凝縮器用熱交換器と前記凝縮器とが離間されている、
請求項1又は2に記載のランキンサイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるランキンサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、蒸発器と、膨張機と、凝縮器と、ポンプと、を備えるランキンサイクルシステムが知られている。そして、特許文献1,2には、このようなランキンサイクルシステムにおいて、膨張機と凝縮器との間の流路を流れる作動媒体とポンプと蒸発器との間の流路を流れる作動媒体との間で熱交換を行う再生器を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−133266号公報
【特許文献2】特開2011−027000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に記載のランキンサイクルシステムでは、膨張機と凝縮器との間の流路を流れる作動媒体とポンプと蒸発器との間の流路を流れる作動媒体とを近接させる必要があるため、配置自由度が低くなる。一方、配置自由度を向上させるために膨張機と凝縮器との間の流路を流れる作動媒体とポンプと蒸発器との間の流路を流れる作動媒体とを離間させると、再生器として機能しなくなるため、ランキンサイクル効率を十分に向上させることができない。
【0005】
そこで、本発明は、配置自由度を向上させつつランキンサイクル効率を向上させることができるランキンサイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るランキンサイクルシステムは、車両に搭載されるランキンサイクルシステムであって、作動媒体の流れ方向において蒸発器の上流側に取り付けられる蒸発器用熱交換器と、作動媒体の流れ方向において凝縮器の上流側に取り付けられる凝縮器用熱交換器と、蒸発器用熱交換器と凝縮器用熱交換器とに接続される伝熱部材を備える。
【0007】
本発明に係るランキンサイクルシステムによれば、蒸発器及び凝縮器の上流側に蒸発器用熱交換器及び凝縮器用熱交換器が取り付けられているため、蒸発器における作動媒体の加熱能力を小さくすることができるとともに、凝縮器における作動媒体の冷却能力を小さくすることができる。そして、蒸発器用熱交換器と凝縮器用熱交換器とに伝熱部材が接続されているため、蒸発器用熱交換器と凝縮器用熱交換器とが再生器として機能する。つまり、凝縮器用熱交換器により伝熱部材が加熱されるとともに、蒸発器用熱交換器により伝熱部材が冷却されるため、凝縮器用熱交換器では、冷却された伝熱部材により膨張機後の高温作動媒体が冷却され、蒸発器用熱交換器では、加熱された伝熱部材により作動媒体が加熱される。これにより、配置自由度を向上させつつランキンサイクル効率を向上させることができ、更には、蒸発器及び凝縮器を小型化することもできる。
【0008】
また、本発明は、伝熱部材がヒートパイプであるものとすることができる。これにより、凝縮器用熱交換器においてヒートパイプが加熱されると、ヒートパイプ内の作動媒体が蒸発して蒸発器用熱交換器側に移動するため、熱エネルギーを凝縮器用熱交換器側から蒸発器用熱交換器側に移動させることができる。これにより、熱エネルギーの再生効率を効果的に向上させることができる。
【0009】
また、本発明は、蒸発器用熱交換器と蒸発器とが離間されており、凝縮器用熱交換器と凝縮器とが離間されているものとすることができる。このように蒸発器用熱交換器及び凝縮器用熱交換器と蒸発器及び凝縮器とを離間させることで、ランキンサイクルシステムの配置自由度が更に向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配置自由度を向上させつつランキンサイクル効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ランキンサイクルシステムの基本原理図である。
【
図2】実施形態に係るランキンサイクルシステムを示すブロック図である。
【
図3】
図2に示すランキンサイクルシステムの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係るランキンサイクルシステムは、トラックなどの車両に搭載されるものである。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
まず、本実施形態に係るランキンサイクルシステムを説明する前に、ランキンサイクルシステムの基本原理について簡単に説明する。
【0014】
図1は、ランキンサイクルシステムの基本原理図である。なお、
図1において、右方は車両上下方向における上方を示しており、左方は車両上下方向における下方を示している。
図1に示すように、ランキンサイクルシステムは、エンジン冷却水や排気ガスなどの車両の熱源を利用して作動媒体を加熱して蒸発させる蒸発器1と、蒸発器1で蒸発された作動媒体を利用して発電を行う膨張機2と、車両の冷熱源などにより膨張機2において発電に利用された作動媒体を冷却して凝縮する凝縮器3と、凝縮器3で凝縮された作動媒体を圧縮して蒸発器1に送り出すポンプ4と、を備えている。そして、蒸発器1には、車両の熱源と作動媒体との熱交換を行う熱交換器(不図示)が設けられており、凝縮器3には、車両の冷熱源と作動媒体との熱交換を行う熱交換器(不図示)が設けられている。
【0015】
次に、実施形態に係るランキンサイクルシステムについて説明する。
【0016】
図2は、実施形態に係るランキンサイクルシステムを示すブロック図である。なお、
図2において、右方は車両上下方向における上方を示しており、左方は車両上下方向における下方を示している。
図2に示すように、本実施形態に係るランキンサイクルシステム10は、蒸発器1と、膨張機2と、凝縮器3と、ポンプ4と、蒸発器用熱交換器11と、凝縮器用熱交換器12と、ヒートパイプ13と、を備えている。
【0017】
蒸発器用熱交換器11は、ランキンサイクルシステム10の作動媒体の熱交換を行う熱交換器である。蒸発器用熱交換器11は、作動媒体の流れ方向において蒸発器1の上流側に蒸発器1から離間するように配置されている。なお、蒸発器用熱交換器11としては、公知の様々な熱交換器を採用することができる。
【0018】
凝縮器用熱交換器12は、ランキンサイクルシステム10の作動媒体の熱交換を行う熱交換器である。凝縮器用熱交換器12は、作動媒体の流れ方向において凝縮器3の上流側に凝縮器3から離間するように配置されている。なお、凝縮器用熱交換器12としては、公知の様々な熱交換器を採用することができる。
【0019】
ヒートパイプ13は、蒸発器用熱交換器11と凝縮器用熱交換器12との間の熱交換を行うための伝熱部材である。具体的に説明すると、ヒートパイプ13は、内部にヒートパイプ用作動媒体が封入されており、高温部においてヒートパイプ用作動媒体が蒸発し、この蒸発したヒートパイプ用作動媒体が低温部に移動し、低温部においてヒートパイプ用作動媒体が凝縮し、この凝縮したヒートパイプ用作動媒体がウィック(毛細管構造の芯)を伝って高温部に移動するものである。そして、ヒートパイプ13の一方端部13aが、蒸発器用熱交換器11に接続されて低温部として機能し、ヒートパイプ13の他方端部13bが、凝縮器用熱交換器12に接続されて高温部として機能する。なお、ヒートパイプ13としては、蒸発器用熱交換器11と凝縮器用熱交換器12との間で熱交換を行うことができる公知の様々なヒートパイプを採用することができ、その形状や構造についても特に限定されない。
【0020】
次に、本実施形態に係るランキンサイクルシステム10の作用について説明する。
【0021】
まず、膨張機2から凝縮器3側に送られる高温の作動媒体は、凝縮器用熱交換器12に流れ込む。凝縮器用熱交換器12では、作動媒体の熱エネルギーがヒートパイプ13の他方端部13b内のヒートパイプ用作動媒体に吸収されることにより、高温の作動媒体が冷却される。このとき、ヒートパイプ13では、他方端部13bにおいて熱エネルギーを吸収したヒートパイプ用作動媒体が蒸発し、この蒸発したヒートパイプ用作動媒体が一方端部13a側に移動する。そして、凝縮器用熱交換器12において冷却された作動媒体は、ポンプ4により送り出されて蒸発器用熱交換器11に流れ込む。蒸発器用熱交換器11では、ヒートパイプ13の他方端部13bにおいて熱エネルギーを吸収したヒートパイプ用作動媒体からヒートパイプ13の一方端部13aにおいて熱エネルギーが放出されることで、低温の作動媒体が加熱される。このとき、ヒートパイプ13では、一方端部13aにおいて熱エネルギーを放出したヒートパイプ用作動媒体が凝縮し、この凝縮したヒートパイプ用作動媒体が他方端部13b側に移動する。そして、蒸発器用熱交換器11において加熱された作動媒体は、蒸発器1において加熱されて膨張機2に流れ込み、膨張機2において発電に利用された後に、再度凝縮器用熱交換器12に流れ込む。
【0022】
このように、本実施形態に係るランキンサイクルシステム10によれば、蒸発器1及び凝縮器3の上流側に蒸発器用熱交換器11及び凝縮器用熱交換器12が取り付けられているため、凝縮器3における作動媒体の冷却能力を小さくすることができるとともに、蒸発器1における作動媒体の加熱能力を小さくすることができる。そして、蒸発器用熱交換器11と凝縮器用熱交換器12とにヒートパイプ13が接続されているため、蒸発器用熱交換器11と凝縮器用熱交換器12とが再生器として機能する。これにより、配置自由度を向上させつつランキンサイクル効率を向上させることができ、更には、蒸発器1及び凝縮器3を小型化することもできる。
【0023】
また、蒸発器用熱交換器11及び凝縮器用熱交換器12と蒸発器1及び凝縮器3とが離間しているため、ランキンサイクルシステムの配置自由度が更に向上する。
【0024】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0025】
例えば、上記実施形態では、蒸発器用熱交換器11と凝縮器用熱交換器12とに接続される伝熱部材としてヒートパイプ13を採用するものとして説明したが、これに限らず、蒸発器用熱交換器11と凝縮器用熱交換器12との間で熱交換を行うことができる公知の様々な伝熱部材を採用することができる。
【0026】
また、上記実施形態では、蒸発器用熱交換器11及び凝縮器用熱交換器12に蒸発器1及び凝縮器3が離間して取り付けられるものとして説明したが、
図3に示すように、蒸発器用熱交換器及び凝縮器用熱交換器と蒸発器及び凝縮器とを一体的に取り付けるものとしてもよい。このように一体的に取り付けることで、ランキンサイクルシステムの小型化を図ることができる。
【0027】
図3に示すランキンサイクルシステム20は、蒸発器用熱交換器11及び凝縮器用熱交換器12の代わりに蒸発器用熱交換器21及び凝縮器用熱交換器22が設けられている。なお、
図3において、右方は車両上下方向における上方を示しており、左方は車両上下方向における下方を示している。そして、蒸発器用熱交換器21が、作動媒体の流れ方向において蒸発器1の上流側に一体的に取り付けられており、凝縮器用熱交換器22が、作動媒体の流れ方向において凝縮器3の上流側に一体的に取り付けられている。この場合、蒸発器用熱交換器21は、蒸発器1に設けられて車両の熱源と作動媒体との熱交換を行う熱交換器(不図示)と一体であってもよく、この熱交換器(不図示)と別体であってもよい。また、凝縮器用熱交換器22は、凝縮器3に設けられて車両の熱源と作動媒体との熱交換を行う熱交換器(不図示)と一体であってもよく、この熱交換器(不図示)と別体であってもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、ランキンサイクルシステムが搭載される車両としてトラックを例示しているが、例えばバス、トラクタ又はその他の車両でもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…蒸発器、2…膨張機、3…凝縮器、4…ポンプ、10…ランキンサイクルシステム、11…蒸発器用熱交換器、12…凝縮器用熱交換器、13…ヒートパイプ、13a…一方端部、13b…他方端部、20…ランキンサイクルシステム、21…蒸発器用熱交換器、22…凝縮器用熱交換器。