(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被処理体が所定位置に配置されると、前記押圧手段を降下させて前記被処理体に近接させ、その後、前記X線処理手段にX線を照射させる制御手段を備える、ことを特徴とする請求項9に記載のX線処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
穴明け装置でガイド穴が形成されるプリント基板は、製造過程のものであり、
図11に示すように、穴明け対象のプリント基板101の辺部には、銅箔と接着材とが積層された耳(ばり)部102が残存している。
【0007】
この耳部102は、プリント基板101を穴明け装置に搬入する際、搬入口に配置されているX線遮蔽用のスカートを捲り上げ、X線が漏れてしまう。
【0008】
同様の問題は、X線を使用して処理を行う種々の装置、例えば、単層のプリント基板を積層して加熱・積層する際に、X線を用いて位置合わせを行う装置でも、発生することがあり、X線の遮蔽をより適切に行うことが望まれる。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、X線の漏洩の少ないX線処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のX線処理装置は、
被処理体を載置する作業テーブルと、
前記作業テーブル上の所定の処理域に配置された前記被処理体にX線を照射して処理するX線処理手段と、
前記作業テーブル上に配置され、被処理体搬入口を有し、前記処理域を覆うX線遮蔽カバーと、
前記X線遮蔽カバーの前記被処理体搬入口に配置されたX線遮蔽手段と、
前記被処理体の前記被処理体搬入口への搬送路上に配置され、前記被処理体の端部に残存している耳部を押圧してつぶす押圧手段と、
を備える。
【0011】
例えば、前記押圧手段は、前記耳部との接触部分が曲面形状に形成されており、
さらに、前記押圧手段を揺動可能に支持する揺動支持部を備える。
【0012】
例えば、前記X線遮蔽手段は、X線遮蔽性材料から構成されたカーテンから構成されている。また、前記カーテンは、例えば、間隔をおいて積層された複数枚のカーテンから構成されている。さらに、例えば、前記カーテンの少なくとも下端部は短冊状に切断されている。
【0013】
前記押圧手段に積層された、X線遮蔽部材をさらに備えてもよい。
【0014】
前記押圧手段を、前記搬送路の左右方向に移動可能に支持する支持手段、をさらに備えてもよい。また、前記押圧手段を、前記搬送路の上下方向に移動可能に支持する移動支持手段、をさらに備えてもよい。
【0015】
前記被処理体が所定位置に配置されると、前記押圧手段を降下させて前記被処理体に近接させ、その後、前記X線処理手段にX線を照射させる制御手段を備えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のX線処理装置によれば、被処理体は、押圧手段により、端部に残存している耳部がある程度潰されてから、遮蔽手段を通過する。このため、遮蔽手段が耳部により捲られにくく、X線の漏洩を有効に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る穴明け装置10は、
図1(a)に平面図、
図1(b)にI−I線での断面図で示すように、作業テーブル11と、一対のX線照射源12R、12Lと、一対のX線カメラ13R、13Lと、一対の穴明けドリル14R、14Lと、一対の押圧部材15R、15Lと、基板検出センサ16と、制御部17と、を備える。
【0019】
作業テーブル11は、台18上にほぼ水平に配置されている。作業テーブル11上には、処理対象のプリント基板101を載置し、X線の照射及び穴明け作業を行うための処理領域11aと、処理対象のプリント基板101を載置し、処理領域11aに搬送するための搬送路11bを備える。プリント基板101は、
図1のX軸方向に搬送・搬出される。
【0020】
一対のX線照射源12R、12Lは、それぞれ作業テーブル11上側に配置され、制御部17の制御に従って、X線を発生し、下方(作業テーブル11上のプリント基板101)に向けて照射する。
【0021】
一対のX線カメラ13R、13Lは、ぞれぞれ、制御部17の制御に従って、対応するX線照射源12R、12Lから照射され、処理対象のプリント基板101を透過したX線を受信し、プリント基板101上の位置合わせ用マークの画像を撮像する。
【0022】
一対の穴明けドリル14R、14Lは、制御部17の制御に従って、エアシリンダなどにより、上下方向に移動して、モータなどにより回転され、プリント基板101の所定位置に穴を明ける。
【0023】
X線照射源12RとX線カメラ13Rと穴明けドリル14Rとは、X・Yステージ等により、一体として、X軸方向及びY軸方向に移動可能に構成されている。同様に、X線照射源12LとX線カメラ13Lと穴明けドリル14Lとは、X・Yステージ等により、一体として、X軸方向及びY軸方向に移動可能に構成されている。
【0024】
一対の押圧部材15R、15Lは、
図2を参照して後述する遮蔽カバー21に配置されており、搬送路11bを挟んで配置され、制御部17の制御に従って、搬送路11bを搬送されるプリント基板101の端部の耳部102を押圧して(ある程度)潰すと共にX線照射源12R,12LからのX線を遮蔽する。一対の押圧部材15R、15Lの詳細については、後述する。
【0025】
基板検出センサ16は、光センサ、マイクロスイッチ等から構成され、処理対象のプリント基板101が、搬送路11bを搬送されて、押圧部材15R,15Lに所定距離まで近接したことを検出し、制御部17に検出信号を送信する。
【0026】
制御部17は、CPU(中央処理装置)、記憶装置等から構成され、記憶装置に記憶している制御プログラムに従って動作し、各部を制御する。制御内容の詳細は後述する。
【0027】
図2に示すように、上述のX線照射源12R,12L〜穴明けドリル14R、14Lが配置された処理領域11aは、遮蔽カバー21に覆われている。遮蔽カバー21は、鉛を含有する金属などから構成され、X線照射源12R、12LからのX線を遮蔽し、外部への漏洩を防止する。遮蔽カバー21は、作業テーブル11の搬送路11bとの間に、処理対象のプリント基板101が搬入される搬入口22を有する。搬入口22には、鉛を含む樹脂等から構成されたX線遮蔽スカート(カーテン)23が配置されている。X線遮蔽スカート23は、
図3に示すように、短冊状に構成されている。
【0028】
さらに、遮蔽カバー21の正面上部には、モニタ装置24が配置されている。モニタ装置24は、液晶表示装置、EL表示装置等から構成され、制御部17の制御下に、種々のデータを表示する。
【0029】
また、遮蔽カバー21の正面下部には、押圧部材15Rと15Lが配置されている。
【0030】
次に、押圧部材15Rと15Lを、
図4及び5を参照して詳細に説明する。
押圧部材15Rと15Lは実質的に同一の構成を有しており、ここでは、押圧部材15Rについて説明する。
押圧部材15Rは、駆動部151と、垂直可動軸152と、支持体153と、支持部材154と、支持軸155と、固定部材156と、押圧部材157と、3枚のX線遮蔽シート(スクリーン)158a〜158cと、スプリング160,161とを備える。
【0031】
駆動部151は、遮蔽カバー21の正面且つ搬送路11bのプリント基板101の側辺(耳部102)が通過する位置に固定されており、制御部17の制御に従って、垂直可動軸152を下方に押し出しまたは収容する。
垂直可動軸152は、駆動部151の駆動により垂直方向に上下動する。
支持体153は、垂直可動軸152の下端に固定され、垂直可動軸152の上下に伴って上下する。
支持部材154は、支持体153の、搬入口22側側面に固定され、支持軸155を固定する。
【0032】
支持軸155は、支持軸方向(水平且つ基板搬送方向に対して垂直方向)に支持部材154にその両端が固定されている。
固定部材156は、その貫通孔に支持軸155が挿通されており、支持軸155の回りに一定のトルクで揺動(回動)可能であると共にY軸方向に摺動可能に構成されている。
スプリング160と161は、固定部材156と支持部材154との間で、支持軸155の周囲に巻回しており、無負荷時に、固定部材156が支持軸155のほぼ中央部に位置するように両側から付勢している。
【0033】
押圧部材157とX線遮蔽シート158a〜158cとは、
図5に分解して示すように、スペーサ171を介して、所定の間隔を置いて積層されるとともに、ネジ穴が設けられた後端側板201および先端側板200に挟まれ、ねじなどの固定部材202によって固定されて、一体の部材として形成された状態で、先端側板200の上端側が固定部材156にねじなどの固定具172で固定されている。
【0034】
押圧部材157は、
図8(a)に示すように、1枚の樹脂シートを折り曲げて形成されており、その先端部は曲面形状に形成されている。押圧部材157は、その先端が、押圧部材15R及び15Lが下降した状態で、プリント基板101の上面から1mm〜2mm上に位置するように配置されている。この理由は、押圧部材157をプリント基板101の上面に近づけすぎると、押圧部材157あるいは、押圧部材157によって潰された耳部102がプリント基板101の上面に接触することでプリント基板101を傷つけてしまうことを防止するためである。従って、傷をつけても許される状況、もしくは傷がつかないような素材の場合は、押圧部材15R及び15Lが下降した状態で、押圧部材157の先端がプリント基板101に接触するようにしてもよい。当然、押圧部材157の先端がプリント基板101に近づいたほうが、耳部102を潰す効果は強くなる。
【0035】
X線遮蔽シート158a〜158cは、それぞれ、鉛を含む樹脂等のX線を遮蔽する機能を有するシート(スクリーン)から構成されている。X線遮蔽シート158a〜158cは、
図6に示すように、上端部を除き下端部に切り込みが設けられ、短冊状に形成されている。
図6に示すように、短冊のピッチは、シートによって異なる。また、X線遮蔽シート158a〜158cは、自重により垂れ下がる程度の弾性を有する。
【0036】
次に、上記構成を有する穴明け装置10の動作を説明する。
電源投入時点では、駆動部151は、垂直可動軸152を上昇させている。
プリント基板101に穴明けを行う場合、作業者は、
図1に示すように、プリント基板101を作業テーブル11上に載置し、例えば、手作業で、搬送路11bを搬入口22に向けて(X軸方向に)を搬送する。
【0037】
プリント基板101が基板検出センサ16上に到達すると、基板検出センサ16は、検出信号を制御部17に送信する。制御部17は、検出信号に応答し、
図7に示す処理を開始する。
【0038】
まず、制御部17は、駆動部151を制御して、垂直可動軸152を下降させる(ステップS1)。これにより、押圧部材157は、
図8(a)に示すように、プリント基板101の上面から1mm〜2mmの位置まで下降する。また、X線遮蔽シート158a〜158cも、自重で垂れ下がり、プリント基板101との隙間を埋める。
さらに、制御部17は、X線照射源12R,12L,X線カメラ13R,13Lをオンする(ステップS2)。これにより、X線カメラ13Rと13Lは、それぞれ、プリント基板101の透過画像の取得を開始する。
【0039】
作業者が、プリント基板101を搬入口22に向けて搬送すると、プリント基板101は、まず、押圧部材15R,15Lの下を通過する。
押圧部材15R,15Lは、
図1(a)に示すように、搬送路11bの両側に位置しており、プリント基板101の先端が押圧部材157に達すると、押圧部材157の先端が耳部102と接触して、トルクがかかり、
図8(b)に示すように固定部材156が支持軸155を軸に揺動する。この状態で、プリント基板101をさらに挿入すると、
図10(a)に示すように、後端側板201の背面(−X側面)から突出した固定具202と支持部材154の当接面154aとが当接し、あるいは
図4(a)に示すように、後端側板201の背面側と支持部材154の当接面154aとが当接して、固定部材156は、それ以上揺動することができなくなり、押圧部材157は、自らの弾性に基づいて、耳部102を押圧する。そして耳部102は、押圧部材157に押圧されて、
図8(b)、
図10に示すように潰れて、比較的平坦となる。
【0040】
この平坦な耳部102を有するプリント基板101がX線遮蔽シート158a〜158cを通過する。このため、X線遮蔽シート158a〜158cはあまりめくれない。
【0041】
続いて、プリント基板101は、X線遮蔽スカート23を押し分けて遮蔽カバー21の処理領域に進入する。この際、プリント基板101に耳部102が残存している場合には、X線遮蔽スカート23に一部隙間ができるが、手前側に、X線遮蔽シート158a〜158cが存在するため、X線は作業者には届かない。
【0042】
続いて、作業者は、プリント基板101のおおよその位置合わせを行う。この段階では、上述のように、制御部17の処理により、X線照射源12Rと12LはX線を発生しており、X線カメラ13Rと13Lは、それぞれ、プリント基板101の透過画像を取得している。制御部17は、X線カメラ13Rと13Lの取得画像を、例えば、
図9に例示するように、表示部24に表示する(ステップS3)。ここで、表示241は位置合わせ用の照準マークの画像であり、表示251はプリント基板101上の位置合わせマークの画像である。
【0043】
作業者は、表示部24の表示を見ながら、位置合わせマーク251が照準マーク241の中心にくるように、プリント基板101を前後(X軸方向)、横方向(Y軸方向)に動かす。このとき、固定部材156が支持軸155に沿ってY軸方向にスライドし、また、支持軸155の回りに揺動する。このため、プリント基板101の移動に合わせて、X線遮蔽シート158a〜158cも移動する。このため、X線遮蔽シート158a〜158cがめくれて、X線が大量に漏洩するという事態を防止する。
【0044】
制御部17は、位置合わせマーク251が照準マーク241のほぼ中心に位置し、停止したことを検出すると(ステップS4:Yes)、図示せぬ押さえ部材により、プリント基板101を作業テーブル11に押しつけて固定し、検出した位置合わせマーク251の位置に基づいて、穴明け位置を特定する(ステップS5)。
制御部17は、続いて、穴明けドリル14R、14LをX軸方向及びY軸方向に移動して位置合わせを行い、位置合わせが完了すると、穴明けドリル14R,14Lを回転させながら下降させ、プリント基板101の所定位置に穴を開口する(ステップS6)。
【0045】
穴明けが完了すると、制御部17は、穴明けドリル14R、14Lを停止すると共に上昇させ、押さえを解く、さらに、X線照射源12R,12L,X線カメラ13R,13Lをオフする(ステップS7)。
【0046】
その後、制御部17は、駆動部151を制御して、押圧部材157とX線遮蔽シート158a〜158cを上昇させる(ステップS8)。このとき、固定部材156は、スプリング160,161の付勢により、ホームポジションに復帰する。
【0047】
これにより、作業者は、容易に穴明け済みのプリント基板101を取り出すことができる。
【0048】
以上説明したように、この実施の形態に係る穴明け装置によれば、処理対象であるプリント基板101の端部に残存している耳部102を押し潰してから、プリント基板101を遮蔽カバー21の処理領域に進入させる。このため、X線遮蔽スカート23のめくれが少なく、X線の漏洩が少ない。さらに、X線遮蔽スカート23のめくれ部分から漏れたX線も、X線遮蔽シート158a〜158cで遮蔽される。
【0049】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されず種々の変更及び応用が可能である。
例えば、上記実施の形態では、押圧部材15R,15Lに、それぞれ、X線遮蔽シート158a〜158cを配置したが、X線遮蔽シート158a〜158cの枚数は任意であり、1枚でも4枚以上でもよい。さらに、X線遮蔽シートを配置しない構成でもよい。
【0050】
押圧部材15Rと15LをX線遮蔽カバー21に固定する例を示したが、固定位置には任意であり、押圧部材15Rと15Lを作業テーブル11に固定する等してもよい。
【0051】
上記実施の形態では、押圧部材15Rと15Lとは揺動可能に支持されているが、揺動不能な状態で取り付けられていてもよい。
【0052】
上記実施の形態では、押圧部材15Rと15Lとは、搬入口22のY方向の一部の領域を遮蔽する大きさとしていたが、これに限られず、押圧部材15Rと15Lとを一体とし、搬入口22のY方向全ての領域を遮蔽する大きさとしてもよい。
【0053】
また、押圧部材157の材質、形状、サイズ等は、耳部102を押圧して潰すことができれば、任意である。例えば、材質としては、樹脂、紙、金属、等を使用可能である。また、その形状は、折り曲げたシート、厚い1枚のシート、積層シート、円柱・円筒形状などでもよい。また、ローラ等でもよい。但し、プリント基板101に傷をつけないように、プリント基板101との接触部分は曲面形状で、プリント基板101の構成材料に対して柔らかい材質から形成することが望ましい。また、押圧部材157に、耳部102を押圧するためのトルクを与える手段は、例えば、固定部材等156〜X線遮蔽シート158cの重量(自重)、ばね・ゴム等の弾性材による付勢等、任意である。
【0054】
上記構成において、固定部材156を付勢するスプリング160,161を、他の任意の弾性材で置換してもよい。また、固定部材156のY軸方向の位置を固定してもよい。
【0055】
上述した構成は、穴明け装置以外に、X線を用いて何らかの処理(撮像する、エネルギーを照射する、分析する)を行う装置に広く適用可能である。
また、本発明における処理対象も、押し潰しつつX線を遮蔽する必要があるものならば、任意である。
【0056】
また、本明細書におけるX線は、通常の意味のX線(波長が1pm − 10nm程度の電磁波)に限定されず、ガンマ線、α線、β線等、人体に有害な電磁波・放射線を広く含むものである。