【実施例】
【0130】
実験:MALDI−TOF質量スペクトルは、PE−ABI Voyager Elite遅延引き出し機器で記録した。スペクトルは、加速電圧25KVおよび遅延100msにより正イオンモードで得た。別段特定されない限り、1HのNMRスペクトルは、Varian Gemini 200MHz分光計で記録した。HPLCはWaters系で実施した。化学物質は、Sigma−Aldrich Chemical Company(USA)、Avocado research chemicals(UK)、Lancaster Synthesis Ltd(UK)およびAcros Organics(Fisher Scientific、UK)から得た。シリカゲル、TLCプレートおよび溶媒は、BDH/Merckから得た。IRスペクトルは、Vertex 70分光計を用いて記録した。
1Hおよび
13CのNMRスペクトルは、Bruker AC 400機器を用いて、CDCl
3中、それぞれ400MHzおよび100MHzで得た(内部標準として、
1Hについてはδ=0.00におけるTMSまたはδ=7.26におけるCHCl
3および
13Cについてはδ=77.0におけるCHCl
3)。
【0131】
例1.11,11−D2−リノール酸の合成
【0132】
【化18】
【0133】
1,1−ジジュウテロ−オクト−2−イン−1−オール(2)。ブロモエタン(100ml)、1,2−ジブロモエタン(1ml)および削り状マグネシウム(31.2g)から調製した臭化エチルマグネシウムの乾燥THF(800ml)溶液に、ヘプチン−1((1);170ml)をアルゴン下で30〜60分間かけて滴下添加した。反応混合物を1時間撹拌し、次いでジュウテロパラホルム(Deuteroparaform)(30g)を、一度に注意深く添加した。反応混合物を穏やかに2時間還流させ、−10℃に冷却し、次いで水5〜7mlをゆっくり添加した。混合物をクラッシュアイススラリー0.5kgおよび濃硫酸40mlに注ぎ、ヘキサン0.5Lで洗浄した。有機相を分離し、残りの水相を5:1ヘキサン:酢酸エチルで抽出(3×300ml)した。混合有機画分を、飽和NaCl(1×50ml)、飽和NaHCO
3(1×50ml)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。溶媒を真空中で蒸発させて、無色油119.3g(99%)を得、それをさらなる精製なしに使用した。HRMS、m/z C
8H
12D
2Oの計算値:128.1168;実測値:128.1173。
1H NMR(CDCl
3,δ):2.18(t,J=7.0,2H)、1.57(s,1H)、1.47(q,J=7.0Hz,2H)、1.31(m,4H)、0.87(t,J=7.0Hz,3H)。
【0134】
1,1−ジジュウテロ−1−ブロモ−オクト−2−イン(3)。(2)(3.48g;27.2mmol)およびピリジン(19ml)の乾燥ジエチルエーテル(300ml)溶液に、ジエチルエーテル35ml中PBr
336mlを、アルゴン下で撹拌しながら−15℃で30分かけて滴下添加した。反応混合物を室温まで徐々に温め、次いで撹拌しながら3時間還流させ、撹拌なしに1時間還流させた。次いで、反応混合物を−10℃に冷却し、氷水500mlを添加した。残渣が溶解したら、飽和NaCl(250ml)およびヘキサン(250ml)を添加し、有機層を分離した。水性画分をヘキサン(2×100ml)で洗浄し、混合有機画分をNaCl(2×100ml)で洗浄し、微量のヒドロキノンおよびトリエチルアミンの存在下で、Na
2SO
4で乾燥させた。溶媒を、大気圧において蒸留によって、その後回転蒸発によって除去した。残渣を減圧蒸留(3mmHg)によって分留して、薄黄色油147.4gを得た(ジュウテロパラホルムで計数して82%)。b.p.75℃。HRMS、m/z C
8H
11D
2Brの計算値:190.0324;実測値:189.0301、191.0321。
1H NMR(CDCl
3,δ):2.23(t,J=7.0Hz,2H,CH
2)、1.50(m,2H,CH
2)、1.33(m,4H,CH
2)、0.89(t,J=6.9Hz,3H,CH
3)。
【0135】
11,11−ジジュウテロ−オクタデカ−9,12−ジイン酸メチルエステル(5)。CuI(133g)を、DMF(CaH
2で新しく蒸留した)400mlに急速に添加し、その後乾燥NaI(106g)、K
2CO
3(143g)を添加した。次いで、デカ−9−イン酸メチルエステル((4);65g)を一度に添加し、その後臭化物(3)(67g)を添加した。追加のDMF250mlを使用してフラスコ壁から試薬をすすぎ、反応混合物のバルクに入れ、次いで12時間撹拌した。次いで、飽和NH
4Cl水溶液500mlを撹拌しながら添加し、その後数分以内に飽和NaCl水溶液を添加し、次いでヘキサン:EtOAcの5:1混合物(300ml)を添加した。混合物をさらに15分間撹拌し、次いで細かいメッシュのSchottガラスフィルターを介して濾過した。残渣を、ヘキサン:EtOAcミックスで数回洗浄した。有機画分を分離し、水相をさらに抽出した(3×200ml)。混合有機画分を乾燥させ(Na
2SO
4)、微量のヒドロキノンおよびジフェニルアミンを添加し、溶媒を真空中で蒸発させた。残渣を1mmHgですぐに蒸留して、沸点165〜175℃の画分79g(77%)を得た。HRMS、m/z C
19H
28D
2O
2の計算値:292.2369;実測値:292.2365。
1H NMR(CDCl
3,δ):3.67(s,3H,OCH
3)、2.3(t,J=7.5Hz,2H,CH
2)、2.14(t,J=7.0Hz,4H,CH
2)、1.63(m,2H,CH
2)、1.47(m,4H,CH
2)、1.3(m,10H,CH
2)、0.88(t,J=7.0Hz,3H,CH
3)。
【0136】
11,11−ジジュウテロ−cis,cis−オクタデカ−9,12−ジエン酸メチルエステル(6)。酢酸ニッケル四水和物(31.5g)の96%EtOH(400ml)懸濁液を、塩が溶解するまで撹拌しながら約50〜60℃に加熱した。フラスコを水素でフラッシュし、次いでNaBH
4溶液(EtOH(170ml)中NaBH
4懸濁液(7.2g)を15分撹拌し、その後濾過することによって調製した)130mlを、撹拌しながら20〜30分間かけて滴下添加した。15〜20分以内にエチレンジアミン(39ml)を一度に添加し、その後5分以内にEtOH(200ml)中(5)(75g)を添加した。反応混合物を、水素(1気圧)下で激しく撹拌した。水素吸収は約2時間で停止した。反応混合物に、ヘキサン900mlおよび氷冷したAcOH55mlを添加し、その後水(15ml)を添加した。ヘキサン(400ml)を添加し、混合物を分離させた。水性画分を、ヘキサン:EtOAcの5:1ミックスによって抽出した。抽出の完了をTLCによって監視した。混合有機相を希釈したH
2SO
4溶液で洗浄し、その後飽和NaHCO
3および飽和NaClで洗浄し、次いでNa
2SO
4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。シリカゲル(シリカゲル60、Merck;162g)を、硝酸銀(43g)の無水MeCN(360ml)溶液に添加し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。得られた含浸シリカゲルを、50℃で3時間乾燥させ(吸引ポンプ)、次いで油ポンプで8時間乾燥させた。生成物1グラム当たり、このシリカを30g使用した。反応混合物を少量のヘキサンに溶解し、銀修飾シリカゲルに適用し、1〜3%勾配のEtOAcで予洗した。非極性汚染物質を洗い流したら(TLCによる制御)、生成物を10%EtOAcで溶出し、溶媒を真空中で蒸発させて、標題エステル(6)52gを無色液体として得た。HRMS、m/z C
19H
32D
2O
2の計算値:296.2682;実測値:296.2676。IR(CCl
4):ν=1740cm
−1。
1H NMR(CDCl
3,δ):5.32(m,4H)、3.66(s,3H,OCH
3)、2.29(t,J=7.5Hz,2H,CH
2)、2.02(m,4H,CH
2)、1.60(m,2H,CH
2)、1.30(m,14H,CH
2)、0.88(t,J=7.0Hz,3H,CH
3)。
【0137】
11,11−ジジュウテロ−cis,cis−オクタデカ−9,12−ジエン酸(7)。KOH(46g)の水(115ml)溶液を、エステル(6)(46g)のMeOH(60ml)溶液に添加した。反応混合物を40〜50℃で2時間撹拌し(TLCによる制御)、次いで水200mlで希釈した。溶媒の3分の2を除去した(ロータリーエバポレーター)。希硫酸をpH2になるまで残渣に添加し、その後少量のペンタンと共にジエチルエーテルを添加した。有機層を分離し、水層を少量のペンタンと共にジエチルエーテルで洗浄した。混合有機画分を飽和NaCl水溶液で洗浄し、次いでNa
2SO
4で乾燥させた。溶媒を蒸発させて、43gの(7)(99%)を得た。IR(CCl
4):ν=1741、1711cm
−1。
【0138】
例2.11,11,14,14−D4−リノレン酸の合成
【0139】
【化19】
【0140】
1,1−ジジュウテロ−ペンタ−2−イン−1−オール(9)。ブロモエタン(100ml)および削り状マグネシウム(31.3g)から調製した臭化エチルマグネシウムの乾燥THF(800ml)溶液中、ブチ−1−イン(8)を浴(−5℃)上でゆっくり発泡させた。時々発泡を停止し、ブチ−1−インを入れたシリンダーを秤量して、消費速度を測定した。多量の沈殿物が形成して間もなく、アルキンの供給を停止した(消費されたアルキンの測定質量は125gであった)。反応混合物を30分かけて室温まで温め、次いで15分間撹拌した。次いで、混合物を30℃まで加熱すると、その時点で沈殿物が溶解し、次いで室温でさらに30分間撹拌した。ジュウテロパラホルム(28g)を一度に添加し、混合物を3時間還流させて、透明溶液を形成した。それを室温に冷却し、クラッシュアイス(800g)および濃H
2SO
450mlの混合物に注いだ。ヘキサン(400ml)を添加し、有機層を分離した。水相をNaClで飽和させ、ヘキサン:EtOAcの4:1混合物(1L)で抽出した。抽出プロセスの完了を、TLCによって監視した。混合有機相を、飽和NaCl、NaHCO
3で洗浄し、再度NaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。溶媒を、大気圧において蒸留によって除去した(最大蒸気温度105℃)。残渣(70.5g;94%)を、さらなる精製なしに使用した。HRMS、m/z C
5H
6D
2Oの計算値:86.0699;実測値:86.0751。
1H NMR(CDCl
3,δ):2.21(q,J=7.5Hz,2H,CH
2)、1.93(br s,1H,OH)、1.12(t,J=7.5Hz,3H,CH
3)。
13C NMR(CDCl
3,δ):87.7、77.6、13.7、12.3(CD
2のシグナルは欠けている)。
【0141】
1,1−ジジュウテロ−1−ブロモ−ペンタ−2−イン(10)。(9)(70.5g)およびピリジン(16.5ml)の乾燥ジエチルエーテル(280ml)溶液に、ジエチルエーテル50ml中PBr
332.3mlを、アルゴン下で撹拌しながら−10℃で30分かけて滴下添加した。反応混合物を1時間かけて室温まで徐々に温めた。少量のヒドロキノンを添加し、次いで混合物を4.5時間還流させた。次いで反応混合物を−10℃に冷却し、氷水350mlを添加した。残渣が溶解したら、飽和NaCl(350ml)およびヘキサン(300ml)を添加し、有機層を分離した。水性画分をジエチルエーテル(2×150ml)で洗浄し、混合有機画分をNaCl(2×50ml)で洗浄し、微量のヒドロキノンおよびトリエチルアミンの存在下で、Na
2SO
4で乾燥させた。溶媒を大気圧で除去し、次いで沸点147〜155℃の画分を留去した。あるいは、100℃に達した後、大気圧での蒸留を停止させ、生成物を77〜84℃で留去した(25mmHg)。収率:107gの澄明液体。HRMS、m/z C
5H
5D
2Brの計算値:147.9855;実測値:146.9814、148.9835。IR(CCl
4):ν=2251cm
−1。
1H NMR(CDCl
3,δ):2.23(q,J=7.5Hz,2H,CH
2)、1.11(t,J=7.5Hz,3H,CH
3)。
13C NMR(CDCl
3,δ):89.3、74.5、13.4、12.6(CD
2のシグナルは欠けている)。
【0142】
1,1,4,4−テトラジュウテロ−オクタ−2,5−ジイン−1−オール(12)。乾燥THF400ml中、臭化エチル(53ml)および削り状マグネシウム(15.8g)から調製した臭化エチルマグネシウムを、乾燥THF350mlに少量ずつ添加すると同時に、激しく撹拌しながらこの混合物中にアセチレンを発泡させた(約25L/時間の速度で)。グリニャール試薬溶液を、2〜5分当たり約10mlで混合物に供給した。すべての臭化エチルマグネシウムを添加したら(約2.5時間後)、その系中にアセチレンをさらに15分間発泡させた。ジュウテロパラホルム(17.3g)およびCuCl(0.2g)をアルゴン下で添加し、ジュウテロパラホルムが溶解するまで反応混合物を撹拌なしに2.5時間還流させて、(11)の溶液を得た。乾燥THF250ml中、マグネシウム14.8gおよび臭化エチル50mlから調製した臭化エチルマグネシウム溶液を、20分かけて反応混合物に滴下添加した。ガスの発生が停止したらコンデンサーを取り付け、溶媒250mlを留去した。次いで、反応混合物を30℃に冷却し、CuCl(1.4g)を添加し、その後臭化物(10)(69g)を15分かけて滴下添加した。次いで、反応混合物を5時間還流させ、わずかに冷却し(冷却が速すぎると沈殿物が形成することになる)、クラッシュアイススラリー(1〜1.2kg)および濃H
2SO
440mlに注いだ。混合物をヘキサン(600ml)で洗浄した。有機画分を分離し、水性画分を5:1のヘキサン:EtOAc(2×400ml)でさらに抽出した。混合有機画分を飽和NaClで洗浄し、その後飽和NaHCO
3およびNaClで洗浄した。溶媒のバルクを、微量のヒドロキノンおよびトリエチルアミンの存在下で大気圧において除去した。残渣を、シリカゲル100mlでフラッシュした(溶離液:7:1のヘキサン:EtOAc)。溶媒のバルクを大気圧において除去し、残りをロータリーエバポレーターで除去した。得られた標題化合物49.5g(85%)を、さらなる精製なしに使用した。HRMS、m/z C
8H
6D
4Oの計算値:126.0979;実測値:126.0899。IR(CCl
4):ν=3622cm
−1。
1H NMR(CDCl
3,δ):2.16(q,J=7.5Hz,2H,CH
2)、1.85(br s,1H,OH)、1.11(t,J=7.5Hz,3H,CH
3)。
13C NMR(CDCl
3,δ):82.3、80.4、78.3、72.6、13.7、12.2。
【0143】
1,1,4,4−テトラジュウテロ−1−ブロモ−オクタ−2,5−ジイン(13)を、臭化物(3)について記載の通り合成した。アルコール(12)54.2gに対して、ピリジン2ml、PBr
314mlおよびジエチルエーテル250mlを使用した。生成物を、4mmHgで蒸留することによって精製した。収率:53g(65%)の(13);b.p.100〜110℃。HRMS、m/z C
8H
5D
4Brの計算値:188.0135;実測値:187.0136、189.0143。IR(CCl
4):ν=2255cm
−1。
1H NMR(CDCl
3,δ):2.13(q,J=7.5Hz,2H,CH
2);1.07(t,J=7.5Hz,3H,CH
3)。
13C NMR(CDCl
3,δ):82.5、81.8、75.0、72.0、13.6、12.2。
【0144】
11,11,14,14−テトラジュウテロ−オクタデカ−8,12,15−トリイン酸メチルエステル(15)を、11,11−ジジュウテロ−オクタデカ−9,12−ジイン酸メチルエステル(5)について記載のものと類似の方法で合成した。CuI(97g)を、DMF400ml(CaH
2で新しく蒸留した)に急速に添加し、その後乾燥NaI(77.5g)、K
2CO
3(104.5g)を添加した。次いで、デカ−9−イン酸メチルエステル((14);47.5g)を一度に添加し、その後臭化物(13)(48.5g)を添加した。追加のDMF250mlを使用してフラスコ壁から試薬をすすぎ、反応混合物のバルクに入れ、次いで12時間撹拌した。次いで、飽和NH
4Cl水溶液500mlを撹拌しながら添加し、その後数分以内に飽和NaCl水溶液(300ml)を添加し、その後ヘキサン:EtOAcの5:1混合物(300ml)を添加した。混合物をさらに15分間撹拌し、次いで細かいメッシュのSchottガラスフィルターを介して濾過した。残渣を、ヘキサン:EtOAcミックスで数回洗浄した。有機画分を分離し、水相をさらに抽出した(3×200ml)。混合有機画分を乾燥させ(Na
2SO
4)、微量のヒドロキノンおよびジフェニルアミンを添加し、溶媒を真空中で蒸発させた。残渣を1mmHgですぐに蒸留して、沸点173〜180℃の画分45.8g(62%)を得た。さらなる結晶化を以下の通り実施した。エステル(15)をヘキサン(500ml)に溶解し、−50℃に冷却した。形成した結晶を、冷却したヘキサンで洗浄した。このステップの収率は80%である。HRMS、m/z C
19H
22D
4O
2の計算値:290.2180;実測値:290.2200。
1H NMR(CDCl
3,δ):3.66(s,3H,OCH
3)、2.29(t,J=7.5Hz,2H,CH
2)、2.15(m,4H,CH
2)、1.61(m,2H,CH
2)、1.47(m,2H,CH
2)、1.30(m,6H,CH
2)、1.11(t,J=7.5Hz,3H,CH
3)。
13C NMR(CDCl
3,δ):174.1、82.0、80.6、74.7、74.6、73.7、73.0、51.3、33.9、28.9、28.6、28.52、28.49、24.8、18.5、13.7、12.2。
【0145】
11,11,14,14−テトラジュウテロ−cis,cis,cis−オクタデカ−8,12,15−トリエン酸メチルエステル(16)を、11,11−ジジュウテロ−cis,cis−オクタデカ−9,12−ジエン酸メチルエステル(「6」)について記載のものと類似の方法で合成した。酢酸ニッケル四水和物(42g)の96%EtOH(400ml)懸濁液を、塩が溶解するまで約50〜60℃にして撹拌しながら加熱した。フラスコを水素でフラッシュし、次いでNaBH
4溶液(EtOH(170ml)中NaBH
4懸濁液(7.2g)を15分間撹拌し、その後濾過することによって調製した)130mlを、撹拌しながら20〜30分間かけて滴下添加した。15〜20分以内にエチレンジアミン(52ml)を一度に添加し、その後5分以内にEtOH(200ml)中(15)(73g)を添加した。反応混合物を、水素(1気圧)下で激しく撹拌した。水素吸収は約2時間で停止した。反応混合物に、ヘキサン900mlおよび氷冷したAcOH55mlを添加し、その後水(15ml)を添加した。ヘキサン(400ml)を添加し、混合物を分離させた。水性画分を、ヘキサン:EtOAcの5:1ミックスによって抽出した。抽出の完了をTLCによって監視した。混合有機相を希釈したH
2SO
4溶液で洗浄し、その後飽和NaHCO
3および飽和NaClで洗浄し、次いでNa
2SO
4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。精製のためのシリカゲルを、(6)に記載の通り調製した。生成物1グラム当たりこのシリカを30g使用した。反応混合物を少量のヘキサンに溶解し、銀修飾シリカゲルに適用し、1〜5%勾配のEtOAcで予洗した。非極性汚染物質を洗い流したら(TLCによる制御)、生成物を10%EtOAcで溶出し、溶媒を真空中で蒸発させて、標題エステル(16)42gを無色液体として得た。HRMS、m/z C
19H
28D
4O
2の計算値:296.2649;実測値:296.2652。IR(CCl
4):ν=1740cm
−1。
1H NMR(CDCl
3,δ):5.4(m,6H,CH−二重結合)、3.68(s,3H,OCH
3)、2.33(t,J=7.5Hz,2H,CH
2)、2.09(m,4H,CH
2)、1.62(m,2H,CH
2)、1.33(m,8H,CH
2)、0.97(t,J=7.5Hz,3H,CH
3)。
13C NMR(CDCl
3,δ):174.1、131.9、130.2、128.2、128.1、127.7、126.9、51.3、34.0、29.5、29.04、29.02、27.1、25.5、24.9、20.5、14.2。
【0146】
11,11,14,14−テトラジュウテロ−cis,cis,cis−オクタデカ−8,12,15−トリエン酸(17)。KOH(1.5g、27mmol)の水(2.6ml)溶液を、エステル(16)(1.00g、3.4mmol)のMeOH(15ml)溶液に添加した。反応混合物を40〜50℃で2時間撹拌し(TLCによる制御)、次いで水20mlで希釈した。溶媒の3分の2を除去した(ロータリーエバポレーター)。希硫酸をpH2になるまで残渣に添加し、その後少量のペンタンと共にジエチルエーテルを添加した(50ml)。有機層を分離し、水層を少量のペンタンと共にジエチルエーテルで洗浄した(3×30ml)。混合有機画分を飽和NaCl水溶液で洗浄し、次いでNa
2SO
4で乾燥させた。溶媒を蒸発させて、0.95gの(17)(100%)を得た。IR(CCl
4):ν=1741、1711cm
−1。
【0147】
例3.14,14−D2−リノレン酸の合成
【0148】
【化20】
【0149】
4,4−ジジュウテロ−オクタ−2,5−ジイン−1−オール(19)。臭化エチル(9.2ml、123.4mmol)および削り状マグネシウム(2.74g、112.8mmol)から調製した臭化エチルマグネシウムの乾燥THF40ml溶液に、氷浴上で撹拌しながら、THF(5ml)中プロパルギルアルコール(3.16g、56.4mmol)を10〜15分間かけて滴下添加した。反応混合物を室温まで温め、時に40℃まで温めながらさらに2時間撹拌した。こうして生成されたジアニオンに、CuCl0.13gを添加し、その後THF(20ml)中臭化物(10)(6.9g)をゆっくり(15分かけて)添加した。次いで、反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで5時間還流させた。次いで、反応混合物を5時間還流させ、わずかに冷却し(冷却が速すぎると沈殿物が形成することになる)、クラッシュアイススラリーおよび濃H
2SO
42.5mlに注いだ。混合物をヘキサン(600ml)で洗浄した。有機画分を分離し、水性画分を5:1のヘキサン:EtOAcでさらに抽出した。混合有機画分を飽和NaClで洗浄し、その後飽和NaHCO
3およびNaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。溶媒のバルクを、微量のヒドロキノンおよびトリエチルアミンの存在下で大気圧において除去した。生成物を、CC(ヘキサン:EtOAc=15:1)によって精製して、3.45g(59%)の生成物19を得た。HRMS、m/z C
8H
8D
2Oの計算値:124.0855;実測値:124.0849。IR(CCl
4):ν=3622cm
−1。
1H NMR(CDCl
3,δ):4.21(m,2H,CH
2)、2.4(m,1H,OH)、2.16(q,J=7.5Hz,2H,CH
2)、1.11(t,J=7.5Hz,3H,CH
3)。
13C NMR(CDCl
3,δ):82.3、80.4、78.3、72.6、51.0、13.7、12.2。
【0150】
4,4−ジジュウテロ−1−ブロモ−オクタ−2,5−ジイン(20)を、すべての溶媒をロータリーエバポレーターで除去したことを除き、(3)について記載の通り合成した。3.4gの(19)(27mmol)から、臭化物(20)3.9g(75%)を得、それをさらなる精製なしに使用した。HRMS、m/z C
8H
7D
2Brの計算値:186.0011;実測値:185.0019、187.0012。IR(CCl
4):ν=2255cm
−1。
1H NMR(CDCl
3,δ):3.88(br s,2H,CH
2)、2.13(q,J=7.5Hz,2H,CH
2)、1.07(t,J=7.5Hz,3H,CH
3)。
13C NMR(CDCl
3,δ):82.5、81.8、75.0、72.0、14.8、13.6、12.2。
【0151】
14,14−ジジュウテロ−オクタデカ−8,12,15−トリイン酸メチルエステル(21)を、(5)について記載の通り合成した。CuI9.7g、NaI7.8g、K
2CO
310.5g、臭化物(20)4.85g、メチルエステル(14)4.75gおよび無水DMF40mlから得られた生成物を、CC(25:1のヘキサン:EtOAc)によって精製して、標題化合物4.5g(60%)を得た。HRMS、m/z C
19H
24D
2O
2の計算値:288.2056;実測値:288.2046。
1H NMR(CDCl
3,δ):3.66(s,3H,OCH
3)、3.12(m,2H,CH
2)、2.29(t,J=7.5Hz,2H,CH
2)、2.15(m,4H,CH
2)、1.61(m,2H,CH
2)、1.47(m,2H,CH
2)、1.30(m,6H,CH
2)、1.11(t,J=7.5Hz,3H,CH
3)。
13C NMR(CDCl
3,δ):174.1、82.0、80.6、74.7、74.6、73.7、73.0、51.3、33.9、28.9、28.6、28.52、28.49、24.8、18.5、13.7、12.2、9.7。
【0152】
14,14−ジジュウテロ−cis,cis,cis−オクタデカ−8,12,15−トリエン酸メチルエステル(22)を、リノール酸誘導体(6)について記載の通り合成した。4.5gの(21)の還元のために、酢酸ニッケル四水和物2.6gおよびエチレンジアミン3.2mlを使用した。生成物を、(6)について記載の通りAgNO
3を含浸させたシリカゲルで精製した。HRMS、m/z C
19H
30D
2O
2の計算値:294.2526;実測値:294.2529。IR(CCl
4):ν=1740cm
−1。
1H NMR(CDCl
3,δ):5.37(m,6H,CH−二重結合)、3.68(s,3H,OCH
3)、2.82(m,2H,CH
2)、2.33(t,J=7.5Hz,2H,CH
2)、2.09(m,4H,CH
2)、1.62(m,2H,CH
2)、1.33(m,8H,CH
2)、0.97(t,J=7.5Hz,3H,CH
3)。
13C NMR(CDCl
3,δ):174.1、131.9、130.2、128.2、128.1、127.7、126.9、51.3、34.0、29.5、29.1、29.04、29.02、27.1、25.5、24.9、20.5、14.2。
【0153】
14,14−ジジュウテロ−cis,cis,cis−オクタデカ−8,12,15−トリエン酸(23)。(22)(1g、3.4mmol)のMeOH(15ml)溶液に、KOH(1.5g、27mmol)の水(2.6ml)溶液を一度に添加した。次いで、反応混合物を(7)について記載の通り処理して、標題の酸0.94g(99%)を得た。IR(CCl
4):ν=1741、1711cm
−1。
【0154】
例4.11,11−D2−リノレン酸の合成
【0155】
【化21】
【0156】
ペンタ−2−イン−1−オール(24)ブチン−1((8);10.4g)を、THF(100ml)中ブロモエタン(11.2ml)および削り状マグネシウム(3.6g)から調製した氷冷溶液中で発泡させた。反応混合物を室温まで温め、次いで15分間撹拌した。次いで、混合物を30℃まで加熱すると、その時点ですべての沈殿物が溶解した。熱を除去し、混合物をさらに30分間撹拌し、次いでパラホルム(3g)を一度に添加した。反応混合物を3時間還流させ(すべてのパラホルムが溶解した)、次いで室温に冷却し、クラッシュアイス(80g)および濃H
2SO
48mlの混合物に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。有機相を、飽和NaHCO
3およびNaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残渣(7.56g;90%)をさらなる精製なしに使用した。HRMS、C
5H
8Oのm/z算出値:84.0575;実測値:84.0583。
【0157】
1−ブロモ−ペンタ−2−イン(25)。(24)(11.7g)およびピリジン(2.66ml)の乾燥ジエチルエーテル(34ml)溶液に、ジエチルエーテル5ml中PBr
35.2mlを、アルゴン下で撹拌しながら−10℃で30分かけて滴下添加した。反応混合物を1時間かけて室温まで徐々に温めた。触媒量のヒドロキノンを添加し、次いで混合物を4.5時間還流させた。次いで、反応混合物を−10℃に冷却し、氷水35mlを添加した。残渣が溶解したら、飽和NaCl(35ml)およびジエチルエーテル(30ml)を添加し、有機層を分離した。水性画分をジエチルエーテル(2×15ml)で洗浄し、混合有機画分をNaCl(2×400ml)で洗浄し、MgSO
4で乾燥させた。溶媒を、大気圧に次いで減圧下(25mmHg)で除去し、60〜90℃の画分を収集した。収率:11.1g(84%)。HRMS、C
5H
7Brのm/z算出値:145.9731;実測値:144.9750、146.9757。
【0158】
1,1−ジジュウテロ−オクタ−2,5−ジイン−1−オール(26)を、収率87%で(12)について記載の通り合成した。HRMS、m/z C
8H
8D
2Oの計算値:124.0855;実測値:124.0868。IR(CCl
4):ν=3622cm
−1。
1H NMR(CDCl
3,δ):2.65(m,2H,CH
2)、2.4(m,1H,OH)、2.1(q,2H,CH
2)、1.09(t,3H,CH
3)。
【0159】
1,1−ジジュウテロ−1−ブロモ−オクタ−2,5−ジイン(27)を、すべての溶媒をロータリーエバポレーターで除去したことを除き、(3)について記載の通り合成した。生成物を、減圧下で蒸留によって精製した。収率:86%(b.p.100〜105℃、4mm Hg)。(HRMS,m/z C
8H
7D
2Brの計算値:186.0011;実測値:184.9948、187.9999。IR(CCl
4):ν=2255cm
−1。
1H NMR(CDCl
3,δ):2.66(m,2H,CH
2)、2.1(q,2H,CH
2)、1.09(t,3H,CH
3)。
【0160】
11,11−ジジュウテロ−オクタデカ−8,12,15−トリイン酸メチルエステル(28)を、(5)について記載の通り合成した。CuI7.1g、NaI5.66g、K
2CO
37.65g、臭化物(27)3.55g、メチルエステル(4)3.47gおよび無水DMF30mlから得られた生成物を、CC(25:1のヘキサン:EtOAc)によって精製して、標題化合物3.7gを得た。HRMS、m/z C
19H
24D
2O
2の計算値:288.2056;実測値:288.2069。
1H NMR(CDCl
3,δ):3.7(s,3H,OCH
3)、3.15(br. s,2H,CH
2)、2.35(m,2H,CH
2)、2.17(m,4H,CH
2)、1.61(m,2H,CH
2)、1.48(m,2H,CH
2)、1.35(m,6H,CH
2)、1.11(t,3H,CH
3)。
【0161】
11,11−ジジュウテロ−cis,cis,cis−オクタデカ−8,12,15−トリエン酸メチルエステル(29)を、リノール酸誘導体(6)について記載の通り合成した。3.7gの(28)の還元のために、酢酸ニッケル四水和物2.16gおよびエチレンジアミン2.62mlを使用した。生成物を、(6)について記載の通りAgNO
3を含浸させたシリカゲルで精製して、1.5gを得た。HRMS、m/z C
19H
30D
2O
2の計算値:294.2526;実測値:294.2402。IR(CCl
4):ν=1740cm
−1。
1H NMR(CDCl
3,δ):5.37(m,6H,CH−二重結合)、3.6(s,3H,OCH
3)、2.82(m,2H,CH
2)、2.33(t,o=7.5Hz,2H,CH
2)、2.09(m 4H,CH
2)、1.62(m,2H,CH
2)、1.33(m,8H,CH
2)、0.97(t,J=7.5Hz,3H,CH
3)。
13C NMR(CDCl
3,δ):174.1、131.9、130.2、128.2、128.1、127.7、126.9、51.3、34.0、29.5、29.1、29.04、29.02、27.1、25.5、24.9、20.5、14.2。
【0162】
11,11−ジジュウテロ−cis,cis,cis−オクタデカ−8,12,15−トリエン酸(30)。(29)(1.5g、5.1mmol)のMeOH(7.5ml)溶液に、KOH(1.5g、27mmol)の水(3ml)溶液を一度に添加した。次いで、反応混合物を(17)について記載の通り処理して、標題の酸0.9gを得た。IR(CCl
4):ν=1741、1711cm
−1。
1H NMR(CDCl
3,δ):11.2(br s,1H,COOH)、5.37(m,6H,CH−二重結合)、2.83(m,2H,CH
2)、2.35(t,J=7.5Hz,2H,CH
2)、2.06(m 4H,CH
2)、1.63(m,2H,CH
2)、1.32(m,8H,CH
2)、0.97(t,J=7.5Hz,3H,CH
3)。
13C NMR(CDCl
3,δ):180.4、131.9、130.2、128.3、128.1、127.6、127.1、34.1、29.5、29.1、29.03、28.98、27.2、25.5、24.6、20.5、14.2。
【0163】
例5.例1〜4に記載の重水素化PUFAの
1H−および
13C−NMR分析(
図2)
1Hおよび
13Cスペクトルに特徴的な面積、すべての値をppmで表す。(パネルA)11位におけるLin酸の重水素化は、
1Hおよび
13C NMRスペクトルのピークの消失によって確認される。H原子が存在しないことに起因して、δ
Η2.764におけるピークの消失が予測される(
1H NMR)。δ
C25.5におけるピークの消失は、核オーバーハウザー効果と、この特定の炭素原子がLin酸の重水素化形態における2個のD原子によって五重線に分裂することの組合せに起因して生じる。(パネルB)
1H NMRスペクトルは、部位特異的に重水素化されたαLnnのC11位およびC14位におけるH原子が同時発生し(δ
Η2.801)、したがっていずれかの部位(11,11−H
2、14,14−D
2または11,11−D
2、14,14−H
2)における重水素化は、このピークの積分を50%減少させるが、両方の部位(11,11,14,14−D
4)における重水素化は、δ
H2.801のピークの完全な消失をもたらすことを示している。しかし、C11位およびC14位について観測されるピークは、小さいが検出可能な差異によって分離されるので、
13C NMR実験によって3つの重水素化形態の間を明確に区別することができる。したがって、C11位またはC14位のいずれかにおける重水素化は、それぞれδ
C25.68またはδ
C25.60のピーク消失をもたらすが、両方の部位における重水素化は、2つの対応するピークの消失をもたらす。
【0164】
例6.PUFA過酸化を停止させることができる同位体強化
Q値が小さい酵母(coq変異体)は、脂肪酸のインビボ自動酸化を評価するための理想的な系を提供する。補酵素Q(ユビキノンまたはQ)は、低分子親油性抗酸化剤、ならびにミトコンドリア内膜の呼吸鎖における電子シャトルとして働く。補酵素Qの生合成および機能のためには10種の出芽酵母遺伝子(COQ1〜COQ10)が必要とされ、いずれかが欠失すると、呼吸欠損が生じる(Tran UC、Clarke CF.Mitochondrion 2007年;7S,S62頁)。coq酵母変異体は、PUFAの自動酸化産物に対して非常に感受性であることが示された(Do TQら、PNAS USA 1996年;93:7534〜7539頁;Poon WW、Do TQ、Marbois BN、Clarke CF.Mol.Aspects Med.1997年;18,s121頁)。出芽酵母はPUFAを産生しないが(Paltauf F、Daum G.Meth.Enzymol.1992年;209:514〜522頁)、出芽酵母は、外因的に提供される場合にはPUFAを利用することができ、したがってそれらの内容物を操作することができる(Paltauf F、Daum G.Meth.Enzymol.1992年;209:514〜522頁)。リノレン酸による4時間の処理後では、Q値が小さい(coq2、coq3およびcoq5)酵母変異体の1%未満が生存可能である(Do TQら、PNAS USA 1996年;93:7534〜7539頁;Poon WW、Do TQ、Marbois BN、Clarke CF.Mol.Aspects Med.1997年;18、s121頁)。それとは対照的に、この処理を受けた野生型(親の遺伝的背景は、菌株W303−1Bである)細胞の70%は、生存可能なままである。Q値が小さい酵母は、容易に酸化する他のPUFA(アラキドン酸など)にも過敏性であるが、一不飽和オレイン酸による処理に対して、野生型の親の菌株と同じ挙動をする(Do TQら、PNAS USA 1996年;93:7534〜7539年)。cor1またはatp2変異体酵母(それぞれbcl複合体またはATP合成酵素が欠如している)は、PUFA処理に対して野生型耐性を示すため、Q値が小さい酵母変異体の過敏性は、呼吸不能の二次的効果ではない(Do TQら、PNAS USA 1996年;93:7534〜7539頁;Poon WW、Do TQ、Marbois BN、Clarke CF.Mol.Aspects Med.1997;18、s121頁)。
【0165】
プレート希釈アッセイを使用して、PUFA感受性を評価することができる。このアッセイは、連続5倍希釈物のアリコートをYPDプレート培地上にスポットすることによって実施され得る(
図3)。異なる菌株の感受性は、各スポットにおける細胞密度の視覚的検査によって観測することができる。
【0166】
リノレン酸による処理は、coqヌル変異体の生存能の劇的な喪失を引き起こす。全く対照的に、D4−リノレン酸で処理したcoq変異体は死滅せず、オレイン酸で処理した酵母と類似の生存能を保持していた。定量的コロニー計数によって、オレイン酸およびD4−リノレン酸で処理した細胞の生存能は類似するが(
図4)、coq変異体の生存能は、標準のリノレン酸による4時間の処理後に100倍を超えて減少したことが明らかになった。これらの結果は、過敏性のcoq変異体の細胞死滅に対する耐性によって証明される通り、同位体で強化されたリノレン酸が、標準のリノレン酸よりもはるかに自動酸化に対して耐性があることを示している。
【0167】
GC−MSは、酵母細胞における脂肪酸およびPUFAを検出することができる。酵母はPUFAを合成しないが、酵母は、外因的に供給されたリノール酸およびリノレン酸を実際に組み込む(Avery SVら、Applied Environ.Microbiol.1996年;62、3960頁;Howlett NGら、Applied Environ.Microbiol.1997年;63、2971頁)。
【0168】
したがって、酵母は、外因的に供給されたD4−リノレン酸も組み込み得る可能性が高いと思われる。しかし、リノレン酸およびD4−リノレン酸に対する特異的な感受性は、自動酸化よりも細胞への統合の差異に起因し得る可能性が高い。その通りであるかどうかを試験するために、この脂肪酸の取込み度を監視した。最初に、C18:1、C18:3、D4−18:3およびC17:0(内部標準として使用される)の脂肪酸メチルエステル(FAME)の分離状態を決定した。
図5に示すGC−MSクロマトグラムは、これらの脂肪酸メチルエステル標準の分離および検出の感受性の両方を裏付けている。
【0169】
野生型酵母を対数期増殖中に集菌し、脂肪酸感受性アッセイについて記載の通り、リン酸緩衝液と0.20%デキストロースの存在下、外因的に添加した脂肪酸の存在下でインキュベートした(0または4時間)。細胞を集菌し、滅菌水10mlで2回洗浄し、次いで酵母細胞ペレットを前述の通りアルカリメタノリシスによって処理した。C17:0を内部標準として添加して、GC−MS後に脂肪酸をメチルエステル(FAME)として検出する(
図6)。4時間のインキュベーション後に検出された18:3およびD4の量を、較正曲線から外挿した。これらの結果は、4時間のインキュベーション期間中に、酵母がリノレン酸およびD4−リノレン酸の両方を貪欲に組み込むことを示唆している。これらの結果に基づくと、D4−C18:3による処理に対するcoq変異酵母の強化された耐性は、取込みの欠如に起因しないことが明らかである。
【0170】
D2−リノレン酸、11,11−D2−リノレン酸および14,14−D2−リノレン酸も、この酵母モデルに対して使用し、それに匹敵する保護をもたらした。
【0171】
例7.酸化ストレスを軽減し、AMDおよび糖尿病性網膜症の病理に関与する網膜細胞における生存率を増大するD−PUFA
微小血管内皮(MVEC)、網膜色素上皮(RPE)および網膜神経細胞(網膜神経節細胞)を含むいくつかの細胞型を、細胞培養における生存について試験した。細胞を、水素化(対照)または重水素化D2−リノール酸(ω−6;LA)およびD4−リノレン酸(ω3;ALA)(20μM;ω−6対ω−3比:1:1または2:1)のいずれかを含有する培地中で、72時間維持した。細胞へのPUFAの組込みを、GCによって監視した。MVECへのPUFAの組込みを示す表1によれば、PUFAは、細胞によって容易に取り込まれることが示された。
【0172】
【表1】
【0173】
次いで、細胞を、一般的な酸化ストレス発生化合物であるパラコート(PQ;500μM)で処理した。生存率の測定のために、血球計算器およびトリパンブルー排除法を使用して細胞を計数した。
図8は、パラコートによる急性中毒後のH−PUFAおよびD−PUFA処理したMVEC細胞の生存率を示す。試験したすべての細胞型について、D−PUFAは、対照と比較して、MVEC細胞について
図8に示したものと類似の保護作用を有していた。
【0174】
例8.脳組織のリン脂質膜へのD−PUFAの急速な組込みを確認する同位体比質量分析法
D2−LAおよびD4−ALAを食事補給によって送達する場合、前記PUFAは、哺乳動物においてさらに伸展/不飽和化され、したがってそれらの化学的同一性が変化し得るので、動物組織への組込みは、クロマトグラフィー系の分析技術では監視することができない。本発明者らは、脂質膜における重水素組成のすべての増加を測定することができる同位体比質量分析技術を使用し、したがってD2−LA、D4−ALAおよびこれらの2つに由来する任意の他のPUFAの組込みについて報告した。この方法を使用して、マウス脳組織へのD−PUFAの実質的な取込みを検出した。マウスに、PUFAの唯一の供給源としてD−PUFAまたはH−PUFAを6日間栄養補助し、40mg/kgのMPTP((1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン)または生理食塩水ビヒクルに急激に曝露し、同じ食事をさらに6日間継続した。MPTPは、パーキンソン病のマウスにおいて十分に認識されているモデルである。脳を取り出し、解剖し、生理食塩水で処理したマウスからのホモジネート試料を、重水素含量について分析した。MSを異なる濃度のD2−LAおよびD4−ALAで較正し、H−PUFAベースラインと比較した(表2)。表2は、脳組織のリン脂質膜へのD−PUFAの組込みについての同位体比質量分析測定を示す。
【0175】
データは、重水素レベルのMS標準であるウィーン標準平均海水(V−SMOW)レベルに対して測定した試料における重水素ピーク面積のδと、水素ピークの面積比の比(dD/H)としてパーミル(‰)で表される。D−PUFAを与えたマウスは、参考文献と一致する1日3〜8%の重水素レベルを組み込んだ。高次PUFAの濃度は、単回用量のLAおよびALAを投与して8時間以内に脳内でピークに達し、そのLAおよびALAは、高級PUFAが存在しない場合には必要に応じて酵素的に不飽和化され、伸長される。
【0176】
【表2】
【0177】
先の3つの試料のそれぞれは、D2−リノレン酸:D4−リノレン酸1:1比の混合物を含有する。
【0178】
例9.D−PUFAを栄養補助したマウスの毒性学研究−主な血液バイオマーカーにおける明らかな異常なし
より長期の投与パラダイム(すなわち、3週間の食事の置き換え)を用いたH−PUFAおよびD−PUFAを栄養補助したマウスの血清の化学的分析(UC Davisで実施した)では、H−PUFA/D−PUFA生理食塩水で処理したマウスについて腎臓機能、肝機能、血液脂質等の主なバイオマーカーにおいて差異は明らかにならなかった。この例では、D−PUFAは、D2−リノール酸:D4−リノレン酸の2:1混合物である。
【0179】
試験したパラメータには、表3のトリグリセリド、総タンパク質、総ビリルビン、リン、遊離脂肪酸、HDL、グルコース、クレアチン、コレステロール、カルシウム、血液尿素窒素、アルカリホスファターゼ、アルブミン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ等の測定が含まれていた。
【0180】
【表3】
【0181】
例10.HDLレベルを増大し、LDLレベルを低減するD−PUFAによる栄養補助
食事性PUFAの唯一の供給源としてD−PUFAを3週間栄養補助したマウスは、H−PUFA(101mg/dl)を投与した対照コホートと比較して、わずかに高レベルのHDL(115mg/dl;例9)を有する。D−PUFAコホートはまた、H−PUFA対照群(181mg/dl)と比較して低レベルのコレステロール(158mg/dl)を有する。H−PUFAコホートに関するLDLレベル、すなわちコレステロールレベルとHDLの差異は80mg/dlであり、またはD−PUFAコホートの43mg/dlと比較してほぼ2倍高い。(D−PUFAは、D2−リノール酸:D4−リノレン酸の1:1混合物である。)
例11.パーキンソン病のマウスMPTPモデル:ドーパミン喪失を保護するD−PUFA補給
ビスアリル位におけるPUFAの同位体強化は、酸化ストレスに関係する傷害を予防し、したがって神経保護薬になる。マウスに、D−PUFAまたはH−PUFAのいずれかを6日間与え(無脂肪食(MPBio)に、10%脂肪を栄養補助した(10%(すなわち総脂肪の1%)がLA:ALA(1:1)またはD2−LA:D4−ALA(1:1)混合物である飽和および一不飽和(オレイン酸))、次いでMPTPまたは生理食塩水を用いてチャレンジした。神経化学的分析によって、D−PUFAを与えたマウスから、77.8±13.1(D−PUFA;n=4)対28.3±6.3(H−PUFA;n=3)ng/mgのタンパク質のほぼ3倍高い値と共に、線条体のドーパミンの著しい神経保護が明らかになった。(D−PUFAは、D2−リノレン酸:D4−リノレン酸の1:1混合物である)。DAの代謝産物である3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)レベルの著しい改善も、D−PUFA群、ならびにウエスタンブロット分析によるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の線条体の免疫反応性において見られた。重要なことに、生理食塩水で処理したマウスにおいて、線条体のDAレベルの上昇傾向(11%)が、D−PUFA対H−PUFAを与えたコホートに見られた(p=0.053;
図9)。
【0182】
例12.D−PUFA補給によるα−シヌクレイン(Cynuclein)凝集の減弱
a−syn発現の増大は、ヒトにおけるパーキンソン症候群および動物モデルのPD様の病理を誘発し得る。野生型タンパク質の発現を強化するSNCAの増殖変異であるa−syn遺伝子は、常染色体優性パーキンソニズムに必然的に関連する。タンパク質レベルの増大は、形成されるプロテイナーゼ−Kに耐性のある凝集同属種および病原性作用を媒介するニトリル化/リン酸化形態と共に、a−synの自己組織化を促進する。先の例に記載の通り、D−PUFA対H−PUFAの投与は、D−PUFA対H−PUFAで処理し、MPTPに曝露したマウスの黒質細胞体における毒性のあるa−synの蓄積を低減する(
図10)。D−PUFAは、D2−リノレン酸:D4−リノレン酸の1:1混合物である。