【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、金属酸化物シェルを有するマイクロカプセルを得るための方法に関する発見に基づいており、ここで前記マイクロカプセルのコアの中への相変化材料の組み込みにより、前記マイクロカプセルのコアにおいて封入された活性剤に予期外の安定性がもたらされる。
【0012】
いくつかの実施態様では、本発明は、いくつかの実施態様において金属酸化物ナノ粒子をゾル−ゲル前駆体と組み合わせて用いて、安定な水不溶性コア上に厚くて濃密なコーティングを得るための方法を提供し、ここで前記コア中に組み込まれる相変化材料の添加により、封入された活性剤に対して、そしてそれらを含む医薬組成物に対して、更なる安定性パラメータが提供される。
【0013】
従って、本発明の一つの態様では、金属酸化物シェル内に封入されたコアを含むマイクロカプセルを調製する方法が提供され、前記方法は:
(a)水相中で、少なくとも1種の活性剤と少なくとも1種の相変化材料とを含む油相を乳化することによって水中油型エマルジョンを調製する工程であって、前記油相及び水相のうちの少なくとも一方はゾル−ゲル前駆体を含む工程;
(b)前記エマルジョンをマイクロカプセル形成条件に暴露して、それにより前記マイクロカプセルを得る工程
を含む。
【0014】
本発明では、「コア」とは、マイクロカプセルの金属酸化物シェルによって両方とも囲まれている、少なくとも1種の活性剤と少なくとも1種の相変化材料とを含むマイクロカプセルの内部を指している。例えば担体、賦形剤、薬学的に許容可能なポリマー又は塩などを含む追加の化合物が、すべて製造されるマイクロカプセルの意図される使用に従って前記コア中に存在していてもよい点に留意するべきであり、そしてそのことは、前記マイクロカプセルを調製する当業者には明らかであろう。本発明の前記マイクロカプセルのコアは、前記少なくとも1種の活性剤及び少なくとも1種の相変化材料を含んでいてもよい。
【0015】
いくつかの実施態様では、室温での前記コアの粘度は、約300cP、350cP、400cP、450cP、500cP、550cP、600cP、650cP、700cP、750cP、800cP、900cP、1000cP、2000cP、3000cP、4000cP、5000cP、6000cP、7000cP、8000cP、9000cP、10,000cP、20,000cP、30,000cP、40,000cP、50,000cP、60,000cP、70,000cP、80,000cP、90,000cP、100,000cP、200,000cP、300,000cP、400,000cP、500,000cP、600,000cP、700,000cP、800,000cP、900,000cP又は1,000,000cPであり得る(様々な条件下で測定したとき)。いくつかの実施態様では、室温での前記コアの粘度は、約300〜600cPである。他の実施態様では、室温での前記コアの粘度は、約400〜500cPである。更なる実施態様では、室温での前記コアの粘度は、約300〜10,000cPである。他の実施態様では、室温での前記コアの粘度は、約5,000〜1,000,000cPである。いくつかの更なる実施態様では、室温での前記コアの粘度は、約20,000〜1,000,000cPである。
【0016】
本発明の他の実施態様では、前記コアは、室温で、固体であってもよい。他の実施態様では、前記コアは、室温で、半固体相であってもよい。
【0017】
本発明の方法によって利用される油相は、少なくとも1種の活性剤と少なくとも1種の相変化材料とを含む。前記少なくとも1種の活性剤は、前記少なくとも1種の活性剤を含む水不溶性液体の形態又は水不溶性液体中の分散液の形態であってもよい。
【0018】
油相は、液状水不溶性活性成分により構成されていてもよく;別の活性成分であるか又は担体として機能する第二の水不溶性液体に溶解及び/又は分散された第一の液体の水不溶性活性成分を含んでいてもよい。別の実施態様では、前記油相は、別の活性成分であるか又は担体として機能する水不溶性液体中に溶解及び/又は分散された固体活性成分を含んでいてもよい。
【0019】
用語「水不溶性液体」又は「水不溶性液体中分散液」は、室温(20〜25℃)における、約1%w/w未満、好ましくは0.5%w/w、及び最も好ましくは0.15%w/wの液体(その中に含まれ、溶解され且つ/又は分散された成分を含む)の水中での溶解度を指している。
【0020】
従って、固体又は液体の成分に関係なく、コア中に含まれる構成成分は、室温(20〜25℃)で、約1%w/w未満、好ましくは0.5%w/w、及び最も好ましくは0.15%w/wの溶解度を有する。水不溶性液体は、例えば、スクアラン油、ポリジメチルシロキサン、鉱油、ヒマシ油、アロマティック200、及びそれらの混合物であり得る。
【0021】
本発明において、「ゾル−ゲル前駆体」という用語は、現場重合(無機ゾルゲル重合法)によりガラス又はセラミック材料を得ることができるあらゆる金属又は半金属の有機金属モノマー又はそのプレポリマー(一緒に重合された幾つかのモノマーを意味している)を指している。好ましくは、ゾル−ゲル前駆体は、金属又は半金属の有機金属モノマー(例えば金属又は半金属アルコキシドモノマー)である。
【0022】
本発明では、「活性成分」という用語は、医薬又は化粧品で用いることができ、そして最終製品(化粧品、薬剤など)に少なくとも一つの所望の特性を付与するあらゆる分子又は物質を指している。いくつかの実施態様では、1種の活性剤を、本発明の方法によって得られる前記マイクロカプセル中に封入する。他の実施態様では、少なくとも2種の異なる活性剤を、本発明の方法によって得られる前記マイクロカプセル中に封入する。他の実施態様では、少なくとも2種の異なる活性剤を、本発明の方法によって独立に又は同時に得られる別々のマイクロカプセル中に封入する。
【0023】
本明細書で用いる「金属酸化物ナノ粒子」とは、本質的に金属酸化物から成るか、又は完全に金属酸化物から成る実質的に純粋な金属酸化物ナノ粒子を指している。いくつかの実施態様では、金属酸化物ナノ粒子は、有機材料、特にポリスチレンを含まない。
【0024】
用語「相変化材料」(PCM)は、その物質の状態(相)又は少なくともその粘度を、それが晒される温度に従って変えることができるあらゆる物質を包含していることを意味している。PCMは、典型的には、特定の温度で溶融させ、そして凝固させることができる高い融解熱を有し、また、大量のエネルギーを貯蔵及び放出できる。PCM材料が、固体から液体へと及びその逆に液体から固体へと変化する際に、熱が吸収又は放出される。PCMが、それらの相又は粘度(例えばそれらの溶融温度)を変える温度に達すると、PCMは、ほぼ一定の温度で大量の熱を吸収する。PCMは、すべての材料が液相に変換されるまで、有意に温度上昇せずに、熱を吸収し続ける。液体材料周辺の周囲温度が低下すると、PCMは凝固し、その貯蔵された潜熱を放出する。本発明のある実施態様に従って、本発明の方法によって使用される相変化材料は、有機物質であって、本発明の方法によって使用されるいかなる化合物に関しても非反応性であり、そして、室温で、前記PCMは、約300cP〜1,000,000cP(様々な条件下で測定したとき)の粘度を有するという事実によって特徴づけられる。いくつかの実施態様では、前記PCMの粘度は、室温で、300cP、350cP、400cP、450cP、500cP、550cP、600cP、650cP、700cP、750cP、800cP、900cP、1000cP、2000cP、3000cP、4000cP、5000cP、6000cP、7000cP、8000cP、9000cP、10,000cP、20,000cP、30,000cP、40,000cP、50,000cP、60,000cP、70,000cP、80,000cP、90,000cP、100,000cP、200,000cP、300,000cP、400,000cP、500,000cP、600,000cP、700,000cP、800,000cP、900,000cP又は1,000,000cPであり得る(様々な条件下で測定したとき)。
【0025】
一つの実施態様では、前記少なくとも1種の相変化材料は、天然又は合成パラフィン[例えばC
nH
2n+2(前記式中n=10〜100である)の分子式を有する]、C
10〜C
100アルカン、C
10〜C
100アルケン(少なくとも1つの二重結合を有する)、C
10〜C
100アルキン(少なくとも1つの三重結合を有する)、脂肪族アルコール[例えばCH
3(CH
2)
nOH(式中、n=10〜100である)分子式を有する]、及び脂肪酸[例えばCH
3(CH
2)
nCOOH(式中、n=10〜100である)の分子式を有する]、又はそれらの任意の組み合わせから選択する。
【0026】
いくつかの実施態様では、前記少なくとも1種の相変化材料は、少なくとも1種の天然又は合成パラフィンである。いくつかの実施態様では、前記少なくとも1種の相変化材料は、C
10〜C
100脂肪族アルコール(他の実施態様ではC
10、C
20、C
30、C
40、C
50、C
60、C
70、C
80、C
90〜C
100脂肪族アルコール)である。更なる実施態様では、前記少なくとも1種の相変化材料は、C
10〜C
100脂肪族脂肪酸(他の実施態様ではC
10、C
20、C
30、C
40、C
50、C
60、C
70、C
80、C
90〜C
100脂肪族脂肪酸)である。
【0027】
一つの実施態様では、前記PCMは、約35℃〜約60℃、より好ましくは35℃〜約45℃の範囲の温度で、液化される(又は、少なくとも、実質的に若しくは部分的に液化、柔軟若しくは半固体とされ、本発明の方法によって処理され得る)。
【0028】
本発明の方法によって使用できる相変化材料の例としては:カルナウバワックス(融点82〜86℃)、純粋な蜜蝋(融点61〜65℃)、蜜蝋ホワイトピュア(融点61〜65℃)、蜜蝋ブリーチトテクニカル(Beeswax bleached technical)(融点61〜65℃)、漂白されたモンタンワックス(融点80〜86℃)、漂白され部分的に鹸化されたモンタンワックス(融点99〜105℃)、モンタン酸(融点81〜87℃)、合成炭化水素蝋(融点106〜114℃)、マイクロクリスタリンワックス(融点89〜95℃)、マイクロクリスタリンワックス(融点76〜82℃)、部分的に鹸化されたハードワックス(融点104〜109℃)、蜜蝋イエロー(融点61〜66℃)、ポリッシングワックス(融点78〜84℃)、カスターワックス(融点83〜89℃)、マイクロワックス(融点89〜95℃)、マイクロワックス(融点80〜86℃)、マイクロワックス(融点76〜82℃)、オゾケライト(融点72〜79℃)、マイクロクリスタリンワックス、プラスチック(融点76〜82℃)、マイクロクリスタリンワックス、ソフト(融点74〜80℃)、ワックスブレンド(融点62〜68℃)、ポリオレフィンワックス(融点65〜75℃)、ラノリン、セラック、ベイベリーワックス(融点45℃)、キャンデリアワックス(融点67〜79℃)、オーリキュリーワックス、米糠ワックス(融点77〜86℃)、ソイキャンドル(ワックス)、パラフィン(融点47〜64℃)、中国蝋、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0029】
本発明の方法の一つの実施態様では、前記少なくとも1種の相変化材料は、液体状態である。よって、前記少なくとも1種のPCMを添加する前に、PCMが実質的に均一に液化されるまで、その温度を上げる。本発明の更なる実施態様では、本明細書で開示される全ての乳化及び封入のプロセス全体において、前記少なくとも1種の相変化材料が液体状態である温度下で、本発明の方法を実行する。その融解熱により、使用される活性剤、形成されるエマルジョン及び本発明のマイクロカプセルのために製造される金属酸化物シェルを実質的に損なわずに、本発明の方法を実行できるように、本発明の方法によって使用される前記少なくとも1種のPCMを選択することに留意すべきである。
【0030】
本発明の一つの実施態様では、少なくとも1種の金属酸化物ナノ粒子を、工程(a)の乳化前、乳化中、又は乳化後に、前記水相に加える。
【0031】
本発明の方法の更なる実施態様では、本方法は、得られたマイクロカプセルを室温まで冷却する工程を更に含む。前記得られたマイクロカプセルを冷却すると、前記少なくとも1種の活性剤及び少なくとも1種のPCMを含む前記コアの粘度は、約300cP〜1,000,000cP(様々な条件下で測定したとき)の値を有するように変化する点が注目される。本発明の方法によって使用されるこのようなPCMは、得られたマイクロカプセルのコアに蓄積され、本発明の封入法によって形成された金属酸化物シェルのいかなる部分にも組み込まれないことを理解すべきである。
【0032】
本発明の方法によって得られたこのようなマイクロカプセルは、前記マイクロカプセルの長期保存時に測定された漏出量を尺度とした場合、より高い安定性を示している点が更に注目される。
【0033】
本発明のいくつかの実施態様では、本発明の方法によって得られるマイクロカプセルは、室温で、少なくとも2週間安定である。本発明のいくつかの実施態様では、本発明の方法によって得られるマイクロカプセルは、室温で、少なくとも2か月安定である。本発明のいくつかの実施態様では、本発明の方法によって得られるマイクロカプセルは、室温で、約2週間〜2年間安定である。他の実施態様では、本発明の方法によって得られるマイクロカプセルは、室温で、約2か月〜約2年間安定である。この文脈において、本発明の方法によって得られる本発明のマイクロカプセルの安定性は、特定の温度及び室温の条件下で、一定時間、前記マイクロカプセル中に前記少なくとも1種の活性剤を実質的に保持する前記マイクロカプセルの能力(最大漏出量は約0〜5%の前記活性剤)によって測定されることに留意すべきである。
【0034】
本発明の方法の更なる実施態様では、前記少なくとも1種の活性剤及び少なくとも1種の相変化材料を封入している前記マイクロカプセルは、約300cP〜約1,000,000cPの粘度を有する。
【0035】
本発明のある実施態様によれば、前記コアは、医薬品、化粧品、又は農薬を含む。
【0036】
更に、本発明のある実施態様によれば、前記コアは、外皮用剤を含む。
【0037】
なお更に、本発明のある実施態様によれば、前記外皮用剤は、抗真菌剤、抗菌剤、消炎剤、鎮痒剤、乾癬治療剤、抗座瘡剤、抗酒さ剤、及びそれらの任意の組合せから選択する。
【0038】
いくつかの実施態様では、抗座瘡剤は、過酸化ベンゾイル、レチノイド、及びそれらの混合物から選択する。レチノイドは、例えばトレチノイン(オールトランスレチノイン酸、ATRA)、タザロテン、イソトレチノイン、アダパレン又はそれらの混合物であってもよい。
【0039】
本発明のある実施形態によれば、前記金属酸化物ナノ粒子は、シリカ、チタニア、ジルコニア、ZnO、及びそれらの混合物から選択する。
【0040】
本発明の別の実施態様によれば、前記金属酸化物ナノ粒子は、1〜100nmの範囲の粒径直径(d50)を有する。他の実施態様では、粒径直径(d50)は、1〜50nm、より好ましくは5〜30nmの範囲である。
【0041】
「1〜100ナノメートルの範囲内の粒径直径(d50)」という用語は、少なくとも50体積%が1〜100ナノメートルの範囲内の直径を有する粒子を含んでいることを意味している。
【0042】
特に明記しない限り、ナノ粒子サイズは、D
90値、すなわち前記粒子の少なくとも90%(体積基準で測定)のサイズを使用して示す。而して、例えば、少なくとも約10nmの直径を有するナノ粒子に言及する時は、前記ナノ粒子のD
90値が10ナノメートルであることを意味していることを理解すべきである。D
90値はレーザー回折で測定し得る。
【0043】
別の実施態様によれば、本発明の方法は、少なくとも1種の金属酸化物塩を、工程(a)における乳化前、乳化中又は乳化後のいずれかで、前記水相に加える工程を更に含む。別の実施態様では、前記金属酸化物塩は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ジルコン酸ナトリウム、ジルコン酸カリウム、及びそれらの混合物から選択する。別の実施態様では、金属酸化物ナノ粒子と金属酸化物塩の重量比は、99:1〜1:2、好ましくは50:1〜2:1、より好ましくは50:1〜10:1である。
【0044】
ある実施態様によれば、本発明の方法は、高分子剤、二価又は三価の金属塩、多価電解質、及びそれらの混合物から選択される結合又は架橋添加剤を、前記水相に、工程(a)の乳化前、乳化中、又は乳化後のいずれかで加える工程を更に含む。これらのタイプの結合又は架橋添加物を使用すると、調製されるマイクロカプセルは、より架橋された、そしてより強い金属酸化物シェルを有することが注目される。
【0045】
一つの実施態様では、前記高分子剤は、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、及びそれらの混合物から選択する。
【0046】
別の実施態様では、前記二価又は三価の金属塩は、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、塩化カルシウム、及びそれらの混合物から選択する。
【0047】
理論に縛られずに、結合又は架橋添加剤は、以下に示してあるようなマイクロカプセルシェルの強化特性及び架橋特性を提供し得る:
硫酸アルミニウム−正に荷電したアルミニウム陽イオンが負に荷電した金属酸化物ナノ粒子に引きつけられ、それ自体、油滴−水界面上で吸着される金属酸化物ナノ粒子間の架橋剤として機能し得る。
アルミン酸ナトリウム−アルミン酸ナトリウムは金属酸化物ナノ粒子表面上のシラノール基と反応し、それ自体、油滴−水界面上で吸着される金属酸化物ナノ粒子間の架橋剤として機能し得る。
PVA(ポリビニルアルコール)は、水素結合を介して金属酸化物シェル上に吸着することができ、またホウ酸ナトリウムによって架橋され得る。
ホウ酸ナトリウム:ホウ酸ナトリウムは、PVAをマイクロカプセルの金属酸化物シェルと架橋させることができる。
アルギン酸ナトリウム:アルギン酸ナトリウムは、金属酸化物シェル(金属酸化物ナノ粒子の吸着から生成される)上に吸着することができ、塩化カルシウムの添加により架橋され得る。
PDAC7(ポリクオタニウム7)−PDAC7は、金属酸化物シェルを被覆するために使用し得る。正に荷電しているPDAC7は、負に荷電した金属酸化物シェル上に吸着することができ、それ自体、金属酸化物ナノ粒子間の「ギャップ」を減少させ、よってシェルを強化することができる。
CMC(カルボキシメチルセルロース)−CMCは、金属酸化物シェルを更に被覆するために使用し得る。それはPDAC7での被覆後に使用できる。
【0048】
一つの実施態様では、前記多価電解質は、ポリクオタニウム−7(ジメチルジアリルアンモニウムクロリドアクリルアミドコポリマー)、ポリクオタニウム−1[ポリ[(ジメチルイミノ)−2−ブテン−1,4−ジイルクロリド]、α−[4−[トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニオ]−2−ブテニル]−ω−[トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニオ]−、ジクロリド]、ポリクオタニウム−10[セルロース2−ヒドロキシエチル2−(2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロポキシ)エチル−2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピルエーテル、クロリド]、キトサン、ポリリジン、及びそれらの混合物から選択する。
【0049】
一つの実施態様によれば、前記油相及び水相のうちの少なくとも1つは、少なくとも1種の界面活性剤を含む。一つの実施態様では、前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性活性剤及びそれらの混合物から選択する。一つの実施態様では、少なくとも1種の界面活性剤は、カチオン性界面活性剤である。更なる実施態様では、前記少なくとも1種のカチオン性界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)である。
【0050】
別の実施態様では、前記油相は、疎水性界面活性剤、疎水性ポリマー界面活性剤、又はそれらの混合物を含み得る。一つの実施態様では、疎水性界面活性剤又は疎水性ポリマー界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。親水性界面活性剤は、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又はそれらの混合物であり得る。
【0051】
いくつかの実施態様では、水相中のカチオン性界面活性剤の濃度は、0.1〜5%(w/w)であり得、他の実施態様では1〜5%(w/w)であり得る。界面活性剤の濃度は、油相及び水相のパーセンテージによっても左右されることが理解される。いくつかの実施態様では、界面活性剤の濃度は、油相の重量の5〜10%(w/w)であり得る。
【0052】
本発明の別の実施態様によれば、前記油相はゾル−ゲル前駆体を含む。
【0053】
本発明の更なる実施態様によれば、前記ゾル−ゲル前駆体は、金属アルコキシドモノマー、半金属アルコキシドモノマー、金属エステルモノマー、半金属エステルモノマー、及び化学式M(R)n(P)m(前記式中、Mは金属又は半金属元素、Rは加水分解性置換基、nは2から6の整数、Pは非重合性置換基、及びmは0から6の整数)のモノマー、上記いずれかが部分的に加水分解され且つ部分的に縮合されたポリマー、並びに上記いずれかの混合物から選択される。一つの実施態様では、前記金属又は半金属元素は、Si、Ti、Zr、Al、及びZnから選択する。
【0054】
別の実施態様では、前記ゾル−ゲル前駆体は、シリコンアルコキシドモノマー、シリコンエステルモノマー、式Si(R)n(P)m(前記式中、Rは加水分解性置換基、nは2〜4の整数、Pは非重合性置換基、及びmは0〜4の整数である)のモノマー、上記いずれかが部分的に加水分解され且つ部分的に縮合されたポリマー、及び上記いずれかの混合物から選択する。一つの実施態様では、前記シリコンアルコキシドモノマーは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びそれらの混合物から選択する。更なる実施態様では、前記化学式Si(R)n(P)mのモノマーは、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びそれらの混合物から選択される。なお更なる実施態様では、前記ゾル−ゲル前駆体は、先に記載したようなモノマー(例えば金属アルコキシドモノマー、半金属アルコキシドモノマー)である。
【0055】
本発明の一つの実施態様によれば、前記水相のpHは2〜9の範囲である。別の実施態様では、前記水相のpHは、2〜7の範囲、より更に好ましくは3〜5の範囲である。
【0056】
本発明のある実施態様によれば、前記マイクロカプセル形成条件は、遠心分離、濾過、蒸発、水性媒体への再懸濁、及び透析のうちの少なくとも一つから選択された処理によりマイクロカプセルを単離する工程を含む。
【0057】
本発明の別の実施態様では、前記マイクロカプセル形成条件は、形成されるエマルジョンのpHを、約2〜約9の範囲に、好ましくは3〜5の範囲のpHに変える工程を含む。
【0058】
本発明の別の実施態様によれば、前記マイクロカプセル形成条件は、前記エマルジョンの撹拌を含む。いくつかの実施態様では、前記撹拌は、例えば、機械的撹拌機により200〜500回転/分で行ってもよい。
【0059】
本発明の別の実施態様によれば、前記マイクロカプセル形成条件は、懸濁液中のマイクロカプセルを乾燥させることを含む。
【0060】
別の実施態様によれば、本発明の方法で得られた生成物は、前記形成されたマイクロカプセルの懸濁液である。
【0061】
本発明の更なる実施態様によれば、本発明の方法で得た生成物は、前記マイクロカプセルの粉末である。
【0062】
本発明の別の態様では、本発明の方法によって得ることができるマイクロカプセルを提供する。
【0063】
更に、本発明の別の態様では、金属酸化物シェルによって封入されたコアを含むマイクロカプセルを提供し、ここで前記コアは、約300cP〜約1,000,000cP(様々な条件下で測定したとき)の粘度を有し;前記金属酸化物シェルの厚さは0.1〜10ミクロンの範囲であり;また、前記シェルは、(a)金属酸化物ナノ粒子、及び(b)加水分解され、且つ重合されたゾル−ゲル前駆体から得られる。
【0064】
いくつかの実施態様では、前記コアの粘度は、室温で、350cP、400cP、450cP、500cP、550cP、600cP、650cP、700cP、750cP、800cP、900cP、1000cP、2000cP、3000cP、4000cP、5000cP、6000cP、7000cP、8000cP、9000cP、10,000cP、20,000cP、30,000cP、40,000cP、50,000cP、60,000cP、70,000cP、80,000cP、90,000cP、100,000cP、200,000cP、300,000cP、400,000cP、500,000cP、600,000cP、700,000cP、800,000cP、900,000cP又は1,000,000cP(様々な条件下で測定したとき)であり得る。
【0065】
粘度値測定は、計測器、使用するスピンドル、速度及び測定温度に左右されることに注意されたい。特に言及しない限り、本発明における粘度測定は、スモールサンプルアダプタ、スピンドル#21を具備したBrookfield LVDV−II+Pro粘度計を使用して、6回転/分及び30℃の温度で、行った。
【0066】
いくつかの実施態様では、本発明のマイクロカプセルは、室温で、約2週間〜約2年間、安定であることができる(すなわち、前記封入された少なくとも1種の活性剤の少なくとも約0〜5%が維持されている)。他の実施態様では、本発明のマイクロカプセルは、室温で、約数か月〜約2年間安定であることができる。他の実施態様では、本発明のマイクロカプセルは、室温で、少なくとも2週間安定であることができる。更なる実施態様では、本発明のマイクロカプセルは、室温で、少なくとも2か月安定であることができる。
【0067】
更に、本発明の別の実施態様によれば、金属酸化物シェルは、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、1、1.5、2若しくは5ミクロン又はそれを超え、好ましくは10ミクロンまでの幅(厚み)を有する。コア、シェルなどの構成成分は、本発明で記載してあるようなものであり得る。
【0068】
金属酸化物層の幅は、例えば透過型電子顕微鏡又は共焦点顕微鏡によりマイクロカプセルの円形断面領域において最小幅が少なくとも例えば0.1ミクロンであるように決定することができる(幅は、マイクロカプセルの外面(すなわち金属酸化物表面)からコア−金属酸化物界面までの最小距離として決定される)。
【0069】
本発明の別の態様では、本発明のマイクロカプセルを含む組成物を提供する。
【0070】
更に、本発明の別の態様では、本発明の組成物を対象に局所投与することを含む、本方法を必要としている対象における表面状態を治療する方法を提供し、ここでコア材料は、外皮用剤を含む。
【0071】
本明細書で使用する「治療する」又は「治療」という用語は、皮膚又は粘膜などのような患者の体表面に関わる状態、疾患又は障害のあらゆる治療を含み、また、疾患又は障害を抑制すること(すなわち、その進展を阻止する)か、疾患又は障害を緩和すること(すなわち、疾患又は障害を退行させる)か、又は疾患により生じた状態(すなわち、疾患の症状)を緩和することを含む。特定の疾患又は障害の治療に使用できる外皮用剤の濃度は、The Merck index an encyclopedia of chemical drugs and biologicals,Rahway,NJ;Merck & Co;1989に記載されているような濃度でよく、その全てを参照により本明細書に組み込む。
【0072】
個々のニーズは変動し得るが、組成物の有効量の最適範囲の決定は、当業者の技能の範囲内である。一般に、当業者によって調整し得る医薬組成物の有効量を提供するのに必要な投与量は、レシピエントの年齢、健康、体調、体重、疾患又は障害のタイプ及び程度、治療頻度、併用療法(もしあれば)の性質、並びに所望する効果の性質及び範囲に応じて変動する。
【0073】
本発明の化合物を含む医薬組成物に言及する際には、本発明のマイクロカプセルと、薬学的に許容可能な助剤、及び任意に他の治療薬との混合物を含むことを理解すべきである。助剤は、組成物の他の成分と適合性であり、且つレシピエントに有害ではないという意味で、「許容可能な」ものでなければならない。
【0074】
医薬組成物としては、経口、直腸、経鼻、局所(経皮、口腔及び舌下を含む)、経膣又は非経口(皮下、筋内、静脈内及び髄腔内を含む)投与又はインプラントを介する投与に適するものが挙げられる。前記組成物は、製薬技術分野で公知の方法で調製し得る。前記方法は、本発明で使用される関連化合物、又はそれと任意の助剤との組み合わせを導入する工程を含む。
【0075】
補助成分(単数又は複数)とも呼ばれる助剤(単数又は複数)としては、従来技術で使用されている助剤、例えば担体、充填剤、バインダー、希釈剤、崩壊剤、潤滑油、着色剤、香料、抗酸化剤、及び湿潤剤が挙げられる。
【0076】
経口投与に適する医薬品組成物は、個別の用量単位として、例えばピル、錠剤、糖衣錠若しくはカプセル、又は粉又若しくは顆粒として、又は溶液若しくは懸濁液として、提供し得る。前記組成物は、ボーラス剤又はペースト剤としても提供し得る。組成物は、直腸投与のために坐薬又は浣腸へと更に加工できる。
【0077】
本発明は、包装材料と組み合わせた本明細書で先に記載してあるような医薬組成物を更に含み、先に記載したように使用するための前記組成物の使用に関する説明書を含む。
【0078】
非経口投与用に、適当な組成物としては、水性及び非水性の無菌注射が挙げられる。前記組成物は、単回用量又は複数回用量の容器、例えば密閉されたバイアル及びアンプルで提供してもよく、また、使用の直前に、無菌の液状担体、例えば水を添加することのみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵し得る。
【0079】
経皮投与用には、例えばゲル、パッチ又はスプレーを企図できる。例えば鼻吸入による肺への投与に適する組成物又は製剤としては、計量投与加圧エアゾール、ネブライザ又は注入器によって発生させ得る細塵又は霧が挙げられる。
【0080】
前記組成物の正確な投与量及び投与計画は、達成されるべき治療的又は栄養的な効果に必然的に左右され、依って、特定の処方、投与経路、組成物が投与される個々の対象の年齢及び状態によって変えることができる。
【0081】
本発明のある実施態様によれば、前記表面は皮膚又は粘膜である。
【0082】
本発明の別の実施態様によれば、前記表面状態は、座瘡、感染、炎症、掻痒症、乾癬、脂漏症、接触皮膚炎、酒さ及びそれらの組合せから選択される皮膚の疾患又は障害である。
【0083】
加えて、本発明の別の態様では、本発明で記載したようなマイクロカプセルを含む組成物を提供し、ここでコアは、座瘡、感染、炎症、掻痒症、乾癬、脂漏症、接触皮膚炎、酒さ、及びそれらの組合せから選択される疾患又は障害を治療するための外皮用剤を含む。
【0084】
更に、別の態様では、本発明のマイクロカプセルの使用を提供し、ここで前記コアは、局所投与用組成物の調製のための外皮用剤を含む。
【0085】
本発明のある実施態様によれば、前記局所投与は、座瘡、乾癬、脂漏症、接触皮膚炎、感染、酒さ、炎症、及びそれらの組合せから選択される疾患又は障害を治療するためである。
【0086】
本発明の別の態様では、本発明のマイクロカプセルを含む害虫駆除用の組成物を提供し、ここで前記コアは農薬を含む。本発明の一つの実施態様では、前記農薬は、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、及びそれらの混合物から選択される。本発明の更に別の実施態様によれば、前記組成物は、農作物保護又は非農作物害虫駆除の際に使用するものである。