【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009] 本発明の様々な実施形態は、(a)極く軽量で摩擦及び慣性による損失が非常に少ないデバイスと、(b)広範囲の風速と変動する風向きに対応できるデバイスと、(c)デバイスの風を受けるブレードのフェザリングを可能にして出力を最大化し、かつタービンの回転の逆風を受ける部分における抗力を低減するデバイスと、(d)フェザリングの制御を強化し、好適には最大のトルクを引き出せるよう、ブレードにおける風況を必要時に素早く検知することによって生みだすトルク(力)を最大化するデバイスと、(e)視覚的に適切な外観を備え、動くブレードの周辺に気圧低下を生じさせないデバイスと、(f)通常、動作音が静かなデバイスと、(g)弱風時に外部からの補助を受けずに起動するデバイスと、(h)高速及び低速の両方の風を利用できる(及び時には構造的な故障を起こさずに非常に強い風に対応できる)デバイスと、(i)タービンの構成部品にかかる遠心力に耐えるように設計されたデバイスと、(j)高さ及びその他の具体的な条件による風の利点の捕捉が可能な高層建物の頂部に設置できるデバイスと、(k)超高層ビルで利用可能な、建物が誘発する独特の上昇気流を捕捉するデバイスと、(l)それが設置されている建物へ最小の伝送距離で電力を直接供給し、それによってタービンが発電する電力の伝送損失を最小限に抑えるために使用できるデバイスと、を備えてこれらの難点を克服し、動作要件を満たす。
【0010】
[0010] 本発明の実施形態は、地面に対して通常は垂直なデバイス垂直軸の周りに等間隔に離隔して置かれ、垂直軸に平行に、通常は鉛直に配置されたブレードを備える風力タービンを含む。好ましい実施形態では、これらの風力タービンは、前記垂直軸の周りに通常は放射状に(地面に対して通常は平行に)配置され、同垂直軸に対して通常は垂直な追加ブレードを含む。したがって、タービンブレードの前記軸に対する位置は異なるが、すべてのタービンブレードは同じ軸の周りを運行する。本発明の実施形態は、高層建物の頂部、又は自立する塔、とりわけ好適には塔の全高にわたって側面に堅固なファサードを備える自立する塔の上、又はその他の支持構造物上に設置することができる。生成される力は発電に利用し、立地場所で使用するか、又は売却して電力網へ戻すことができる。
【0011】
[0011] 本発明の実施形態に鉛直及び水平に配置された両方のブレードが存在する場合、デバイスは、従来は捕捉されなかった風の流れを捕捉することができる。これは特に都市での使用に当たっての利点だが、その他の環境においても実施できる。
【0012】
[0012] 自然状態の風は、障害物がなければ地面の上を水平に流れる。地面からの高度が高まるに従い、風速は強まる傾向がある。このことは、風から取得できる動力が、風速が増すにつれて増大し、第3の動力になるために重要である。自然の水平風は、鉛直の障害物表面で上昇気流を生む。建物、地形の起伏及び樹木のある都市の条件は、地上付近の風に乱気流を生む傾向があるが、高度が高まるにつれて乱気流は少なくなる。風速は速く、これに中程度の乱気流のみが会合する少なくとも50フィート(1,524cm)以上の高度環境、好適には超高層ビルの高所において効率的に使用でき、また好ましい実施形態では建物が誘発する気流も捕捉して利用できる風力タービンの提供が、本発明の重要な目的である。
【0013】
[0013] 本発明の種々の実施形態は、タービンの軸を通常地面に鉛直にして「建物」に装着するか、又は「塔に装着する」ことができる。そのため、これらはVAWT型デバイスの特徴を備える。地面より高い場所であっても、多少の乱気流は残る。VAWTはHAWTよりも乱気流の風によって受ける影響が少ないことが知られている。またVAWTは、HAWTが風に直接面するように常時向きを変えなければならないのと対照的に、本来的に全方向性であり、定義からして常に風に対向する。このためVAWTは、都市の環境中では通常非常に変動しやすい風向の追跡に機械的エネルギーを使用せず、したがって浪費がないため、この点で効率が良く、自然風又は環境中の風用として非常に優れている。
【0014】
[0014] どんな建物(又はファサードで覆われた塔)も自然風にとって障害物であり、高層建物は風の大断面にとって大きな障害である。高層建物(又はファサードで覆われた塔)が引き起こす風にとっての障害は、建物にかかる静的及び動的な大きな力を引き起こす。高層建物は、構造的に、大きな安全係数を見込んだうえで、予想される最大強度の風の障害によって引き起こされる大きな応力に耐えるように設計される。タービンは中程度の風及び強い風の中での動作が予定されるが、時として建物に最大荷重を生じさせる最強度の風の中では「停止」される。停止位置では、ブレードは、タービンにかかる力と支持物である建物又は塔に伝わる力を最小限に抑える方向に向けられる。この状態では、タービンにかかる風力は、建物全体にかかる力に比して小さくなり、建物の設計に用いられる通常の保守主義と安全係数の視点では、既存の最高層の建物でも、追加の構造支持を要せずに本発明の実施形態のタービンを支持することができる。
【0015】
[0015] 妨害された風は、自然の反応として脱出口を求める。妨害された風は、障害物を迂回することによって脱出しようとする。このため、妨害された風は、風の障害になる建物のファサードに沿って建物の角を回って逃避し、そのうちかなりの部分が屋上面を越えた上向きの逃避を求めて上向きの鉛直の流れに移行する。妨害された風が鉛直に移動し、合体すると速度を増し、とりわけ屋上面の脱出地点に到達すると加速する傾向があり、その際、風の向きが水平に変わる。これは、いわゆる「ベンチュリー」効果で、速度を最大約20%増加させる。
図12A〜
図12Cは、超高層ビルの頂部を横切って移動する水平の自然風の流れW1と、超高層ビル242のファサード244にぶつかる水平の自然風W2を含むこの風の流れの概念説明図である。風の流れW2が建物のファサードにぶつかると、加速された上向きの風の流れW3を形成する。上向きの風の流れW3は、次に図示のとおり建物の屋根の構造に影響を受け、風の流れW4及びW5に分かれながら更に加速する。
【0016】
[0016] 本発明の実施形態は、こうして方向を変え、加速した風を建物の頂部で捕捉する。例えば鉛直及び水平の両方に配置されたブレードを含むタービンの実施形態では、鉛直の風成分は水平の(垂直軸に対してほぼ垂直の)ブレードを動かし、水平の風成分は鉛直の(垂直軸に対してほぼ平行の)ブレードを動かす。更に、建物に妨害された風、及び妨害されない自然の風の両方の水平成分は、合体し、タービンの鉛直ブレードを通過しながら捕捉される。これは、風上側と風下側の両方の位置で生じ、タービンが本来三次元であるため、水平ブレードと鉛直ブレードの両方が同時に動かされる状態が発生し得る。風の鉛直成分も、水平に置かれたブレードによって同時に取得される。
【0017】
[0017] 自然のより通常通りに流れる水平の風も、鉛直と水平の両方に配置されたブレードを含む実施形態によって捕捉される。自然のほぼ水平な風は、最初に風上の鉛直に配置されたブレードにぶつかると、その一部は減速する(その結果ブレードに力が加わり、動力抽出デバイスにトルクが生じる)。しかし、その大部分は障害となるブレードを回避しようとして、タービンに入り、タービンの周囲を回り、またタービンの上を越える。タービンを貫通し、又は風上のブレードを横切って移動する風は、タービンが回転する間、タービンの内側を通って流れ、風下のブレードを動かす。これがそれらのブレードに追加の動力を伝え、脱出口を求める追加の風を生む。脱出口を求める風の避難路は、風下のブレードの間と鉛直方向への方向転換である。鉛直方向の成分は、水平ブレードによって取得できる。したがって、本発明のこれらの実施形態は、他の方法では鉛直に配置されたブレードで取得されない風の鉛直成分を効率的に捕捉でき、水平に配置されたブレードを経てさらなるトルクを生み、それが前記ほぼ垂直な軸に更に伝達される。
【0018】
[0018] 吊り下げフレームを用いた1つの好ましい実施形態には、自然の(水平の)風及び建物が誘発した上昇気流と、鉛直に配置されたブレード及び水平に配置されたブレードの両方を備えた構成との上述の組合せを利用した、本発明の実施形態の要素及び構造が取り入れられる。吊り下げフレームの設計には、構造体にかかる風の抗力を最小化し、それによってデバイス全体の効率を最大化しつつ、乱気流及び超高速の風況の応力にも耐えるための最小限の構造が要求される。それは、頂部及び底部の堅固なフープと、1系統の支柱及びケーブルとを含み、これらが一体として、フープが縦に並んで最小限の摩擦及び慣性損失で確実に運転されるようにする軽量の構造効率の高いフレームワークを形成する。上下のフープをつなぎ合わせることで、フレーム要素とフープが合体して、環状の形態のため本来的に安定で応力耐性のある効率的なシステムを生成する。
【0019】
[0019] 鉛直と水平の両方に配置されたブレードを採用した好ましい実施形態では、軽量のフレーム設計により、ほぼ水平な自然風と、建物の側面に沿って上昇しまた建物頂部を横切って動く風の流れと、の両方の自由な流れが可能になる。この実施形態はまた、デバイスの回転につれてそれらの風が風下の鉛直ブレードにぶつかるため、デバイスそのものによる水平の自然風から上向きの鉛直気流への転換も促す。タービンが塔の頂部及びデバイスの下の支持材と回転ゾーンから十分に離隔した本発明のさらなる実施形態では、水平に配置されたブレードは、フレームの上下のフープの内側のオープンフレームの頂部及び底部の両方に置くことができる。
【0020】
[0020] ブレードを好適に支持するフレーム構造は、鉛直マストに装着されたハブが重力を支える。マスト上でハブが回転可能に支持するために、磁気浮上ベアリング又はその他の種類のベアリングが使用できる。1つの好ましい支持方法では、鉛直マスト上で完全に組み立てられたフレームの全重量がハブに集中する。そのため、本発明のこの支持方法では、タービンが建物屋上に装着される場合、タービンの重力荷重及び横向き荷重部分を、ハブがマストを通じて効率的に建物へ伝達する。他の支持方法では、頂部に装着されたハブではなく、主要垂直軸(マスト)全体をデバイスの回転要素として用いてもよい。第1の支持方法のハブは、一部の横向き荷重をマストへ伝え、回転する下フープが残りの横向き荷重をベースへ移動させる。回転するマストの支持方法は、マストのベースと下フープの両方を通じて鉛直重力荷重と横向き荷重をベースへ伝達する。第1の固定マストの支持方法は、横向き成分を有するが、重力/鉛直成分を持たない下フープを備え、第2の支持方法は横向き成分と重力/鉛直成分を備える。
【0021】
[0021] また、フレーム設計は、堅固な環状フープが応力の横への伝達を阻害し、通常、特に回転時に均衡のとれた状況を提供する。第1の支持構成では、下フープは好適には、フレームから水平の横力の部分を受けるが重力荷重は受けない固定されたガイドウェイに沿って設けられる。ガイドウェイは、組み立てられた全体を安定させつつ一部の水平の横力を大きな面積で建物へ徐々に分散することができるように、超高層ビル又はその他の建物(又は自立する塔)の屋根に固定してもよい。ガイドウェイは、建物上昇気流の一部を流線型にし、フレーム構造体を通って上側水平ブレードへ向けて方向付け、デバイスによる追加的な風力の取得を有利にするためにその風成分の捕捉を補助する翼形状のデフレクタ面を含んでもよい。
【0022】
[0022] 好適には、下フープはガイドウェイの上方に設け、ガイドウェイに影響しないようにし、下フープを支持するすべての部材が張力を受けるようにし、部材が重力ベアリング及び集中型の場合よりも一般に小さく、したがって軽量になるようにする。また、ガイドウェイは、種々の鉛直方向の位置ずれを起こし得る温度その他の応力変形に対し、下フープの位置での追加の摩擦又は鉛直重力ベアリングを引き起こさずに収容するために、可変次元による鉛直方向にフープがないことが好ましい。言い換えると、下フープは実際には環状のガイドウェイ上に置かれていないため、回転するにつれて、組立ての完成したフレーム構造を構成する要素内で、温度及び応力に関係する素材の伸縮に応じて上下に自由に動く。このようにして、下フープは、したがってタービンの鉛直ブレードは、最小限の摩擦損失で定位置にしっかり固定される。構造体は、その頂部の中心点で支持される「ランプシェード」のように動く。上下のフープは、張り骨の中のフープのように動き、環状を保つ。下側ガイドウェイは張り骨の「振れ」は阻止するが、自由な回転は許す。「X」型に固定されたケーブル組立体はフープを縦に並んで回転させるが、タービンに出入りする風の流れにとってはほぼ透明である(障害にならない)。
【0023】
[0023] 鉛直ブレードを備えるフレーム構造は、先端を適度に切った円錐形が好ましいが、円筒形でもよい。また、先端を切った円錐形を反転させたものでもよい。先端の切断角度は、両方向へ、12°から垂直までの範囲でよい。オープンフレーム型設計は、極く軽量のフレーム構造にかかるすべての力を鉛直マストへ効率的に伝達することを可能にする。下フープの回転運動は、環状ガイドウェイによって、又は他の実施形態では発電ユニットを動かすことのできるタイヤ状の支持材内で制約される。上フープの回転は、オープンフレームの三角形の構造管によって下フープに連結され、各フープが他方と縦に並んで動くようになっている。タービンのフレームは、このようにして鉛直マスト頂部のハブによって拘束され、下フープとガイドウェイによって更に拘束されるが、デバイスのフレームを構成するロッド及びケーブルの開放系によって一体としてつなぎ合わされる。
【0024】
[0024] また、本発明の実施形態で拘束され、問題が起こりにくくされている重要な力は、タービンの回転から生じる遠心力である。最大の応力を受ける主要な構成部品は鉛直ブレードである。これらのブレードは風力によって応力を受け、回転の遠心力によって更に応力を受ける。本発明のある実施形態は、それらの力によってブレードにかかる外向きの偏りを防止するために、回転可能な鉛直ブレードを中央の支持構造体につなぎ、支えることによってこれらの力の効果を低減する。ブレーシングは、例えばブレードの旋回ロッドを約3分の1及び3分の2の高さの地点でつなぎ、ブレードの支えられていない長さを低減するが、回転は止めない。これにより、デバイス全体の重量を更に低減し、ブレードが妨げのない効率的な形で成果を上げられるようにする。
【0025】
[0025] デバイスは風の中で動作するので、回転する下フープの端面又は表面が1つ又は複数の従来型発電機パッケージを直接動かし、その場で電力を生むことができる。現在のところ、発電機パッケージを駆動させるにはオープンフレームの下フープの端面又は表面を用いて発電するのが好ましいが、タービンは、他の回転する面又は鉛直マスト頂部の回転するハブと連動するように設定してもよい。
【0026】
[0026] 回転可能な鉛直ブレードは、上下のフープの間に装着される。本発明の実施形態のオープンフレームの上フープ、及び一部の実施形態の下フープもまた、下の建物の側面に沿って吹き上がる一部分の風、及びタービンを動かす水平の自然風の方向が変わった部分を受ける、水平に配置されたブレードを備える。最小限、3枚の水平に配置されたブレードと3枚の鉛直に配置されたブレードを使用する。現在のところ、約5枚の水平に配置されたブレードと、約5枚の鉛直に配置されたブレードを使用することが検討されている。すべてのブレードは、その長軸の周りで回転可能なものとする。鉛直のブレード、及び水平のブレードも、モーター又はアクチュエータ又は該デバイスの回転によって動力を得るその他の機械的デバイスによって制御し得る。主タービンによって動く小型発電機も、タービン用のTSRアルゴリズムデータベースの指示に従ってブレードを回転させるアクチュエータ/モーター用のバッテリーに動力を供給することができる。
【0027】
[0027] 水平の風の捕捉は、デバイスが発生するトルクを最大化するために垂直軸を中心に回転するにつれて、風と速度の指示に対して位置を瞬時に調整するように構成された鉛直ブレードを備える本発明の実施形態で最大になる。
【0028】
[0028] 捕捉される鉛直の風は、デバイスが発生するトルクを最大化するために垂直軸を中心に回転するにつれて、風速と方向に対して位置を瞬時に調整するように構成された水平ブレードを備える本発明の実施形態で最大になる。上述のとおり、好ましい実施形態では、水平及び鉛直の両方の風の捕捉は、それぞれ鉛直ブレードと水平ブレードによって達成される。
【0029】
[0029] 各個別ブレードの回転角度は、特定の時点及びタービンの旋回半径における位置によってそれぞれ異なる。それぞれの瞬間的位置は、ブレードが風の中で回転するときに生まれるトルクを最大化するブレードの回転とフェザリングを実現するための経験的及び数学的なアルゴリズムによって決定し得る。制御のアルゴリズムは、瞬時に測定される風速、タービン位置、風向及びその他の適切な局所変数のそれぞれについて、各ブレードのトルクを最適化するだろう。
【0030】
[0030] 各タービン位置について作成されるアルゴリズムとデータベースの主要要素は、トルクの発生を最適化するための動作するタービンのブレードの周速比の慎重なモニタリングである。制御アルゴリズムも、弱風時のタービンの起動及び強風時のタービンの停止を行う他のブレード角が、デバイスの構造能力及び政府の安全規制を上回る過大な回転速度を抑えることを可能にする。タービンの修理及び保守の予定にあわせて回転を止めるために、手動のブレーキとロックがあってもよい。
【0031】
[0031] デバイスは、鉛直ブレードのフェザリング角度を、デバイスのトルクを最適化するアルゴリズムを通じ、所与の風速及びタービンの1分間当たり回転数rpmに合わせ、あらゆる回転角度に制御する。rpmは、最適な周速比(TSR)を達成し維持するために、独立して最適化される。風速が非常に速い場合、TSRはタービンのRPMを制限するために引き下げ得る。ブレードのフェザリング角度は、タービンのTSRで画定されるタービンの各動作基点について、オープンフレームにぶつかり、これを抜けていく風から最大のトルクを引き出すために最適化される。この制御は、動力の産生を瞬時に最適化し、また回転速度の制御並びにタービンの自動起動を達成するためにも使用できる。ブレードのフェザリング角度の制御も、デバイスが遭遇する大気条件に特有の変動する風速に、タービンが瞬時に適合させることを可能にする。制御システムは、建物の重大な自然振動モードを刺激し共振を起こす動的な力を引き起こすおそれのある回転速度でのデバイスの動作(一過性のものを除く)も防ぐように設計される。
【0032】
ブレード角度制御I
[0032] ブレード角度制御Iは、鉛直のタービンブレードについて瞬時のブレード角度制御を達成するための好適なアルゴリズムである。ブレードは向かってくる風に対して円運動をするため、ブレードの翼弦線「C」(
図10Bに表示)が受ける空気の迎角は周期的に変動する。ブレードアームの逆向きの位置に対して反時計回りに方位位置角θを測定すると、時計回りに動くときにブレードが受ける空気の流れの風下の角度β(θと同じ方法で測定)は、
【数1】
で得られる。上式でTSRは、デバイスより十分上流の風の風速に対するブレードの先端の速度の比である大局的周速比を示す。
【数2】
【0033】
[0033] 上式で、ωは風力タービンの角速度、Rはその旋回半径、及びU
∞は、流速がタービンの存在により著しい影響を受けない、タービンから離れた場所の風速である。例えば風速は、タービンの直径の約1〜2個分離れた場所で測定し得る。以下では、
【数3】
で定義する局所周速比T
*の概念も使用し、上式で、Uは、ブレードがその瞬間の位置で経験する局所自由流れ速度である。動作中のタービンは周辺の風速を低下させるという事実により、この局所速度はU
∞とは異なる。このアルゴリズムを用いた計算では、この風速の低下が、通常、それぞれのブレードの位置の角度によって異なるという事実を考慮する。特に、タービンのブレードは、タービンの風下に向いた半分にあるブレード位置に対応する角度−π/2<θ<π/2のときに、サイクルのうち風上側の半分にあるときの速度に比べ、速度が遅くなる。
【0034】
[0034]
図13Aは、放射状のタービンアームに直角に装着されたブレードが経験する迎角の変動α
0(θ)を、風向きに対する回転角θの関数、
【数4】
として示す。α
0は、ブレードの受ける気流の相対速度がタービンの回転軸から離れる半径方向外向きを指す成分を有する場合に、正と定義される。
【0035】
[0035] 一般に、風圧板は、「失速角」α
Sとして知られる、特定の最大迎角に対してのみ大きな揚力を生むことができる。この角度を越えると流れの分離が起こり、これに揚力の衰退が加わって、抗力が非常に著しく増大する。揚力の生成に使用される風圧板の標準的な失速角は、α
S<15°で、
図13Aを参照すると、目指す周速比(TSR<2.5)では、固定の正接ブレードは、風圧板が効率的に作動できる最大迎角を大きく上回る迎角を経験し、こうした風力タービンの風圧板は回転サイクルのうちかなりの部分において失速状態で作動することになる。
【0036】
[0036] 正常の(失速していない)流れ条件では、揚力と抗力は、風圧板に対する空気の迎角の関数である。揚力と抗力の迎角に関する正確な従属性は、実験的に、又は数値シミュレーションによって決定しなければならず、また風圧板の形状及びレイノルズ数の両方に依存する。これらの関係は、従来、
【数5】
で定義される揚力係数C
L及び抗力係数C
Dに関して表わされており、上式のL及びDはそれぞれ揚力と抗力であり、ρは空気の密度、Sはブレードの平面面積、及びVは動くブレードに対する空気の速度である。タービンアームの放射ベクトルの力のベクトルFのベクトル積を使い、各タービンブレードが生むトルクTを計算することができる。したがってこのトルクは、風速U
∞、局所周速比TSR
*、ブレードの迎角α、及び回転角度θの関数になり、T=T(U
∞、TSR
*、α、θ)を得る。迎角αを慎重に選定しないとこのトルクが負(タービンの回転方向と反対)になること、及び上述の各パラメータセットについて、ブレードの回転中の各ブレード位置において正の(駆動)トルクが最大化される最適な迎角があること、に留意することが重要である。
【0037】
[0037] 所与のタービン動作条件(風速及び周速比)における揚力と抗力の係数であるC
L(α)とC
D(α)が分かっている場合、最適迎角aは、数値最適化によって決定できる。所与の局所周速比TSR
*についての最適迎角は、タービンの各半サイクル中のブレード位置に関して弱い従属しか示さず、このことは、最適な出力を得るにはタービンブレードを、それに向かってくる流れの速度に対してほぼ絶対定数の迎角になるように制御すべきであることを意味する。この迎角は、±90°のタービンアーム位置において、生じるタービンブレードの揚力ベクトルが後ろの向きであるタービンの風下側を指す成分を有するように符号を変える必要がある。生じるブレード迎角の例を
図13Bに示す。
図13Bに示す迎角を得るために、タービンブレードはタービンの回転に従って変動する角度でフェザリングする必要がある。
図13Bに示す迎角を得るために必要なフェザリング角度を
図13Cに示す。
図13Cにおいて、フェザリング角度γは、風圧板の先頭の先端がタービンの軸から離れる外向きを指すように、風圧板の回転について正と定義される。
【0038】
[0038] 低い周速比(例、TSR<1.5)で駆動トルクを最大化するには、迎角の変動を大きくする必要がある。最適な迎角の達成には、±90°のタービンアーム位置において、タービンブレードが突然動くことが要求されることは明らかだが、それには大きな力が必要であり、動きの強制に大きな動力が消費されるため、現実的ではない。本発明者の設計では、この突然の迎角の変化が円滑に行われる。だが、この位置に近いタービンのブレードによって供給されるトルクが常に小さく(
図13D参照)、必要な最適迎角からの偏差はタービンの出力には小さな影響しかないことに留意されたい。
【0039】
[0039] したがって、タービンブレードのフェザリング角度の調整は次のように実施することができる。
−選択されたブレード断面についてのC
L(α,Re)とC
D(α,Re)の関係は、風洞実験による1枚ブレードテストを通じて、又は風圧板を取り巻く気流を管理するナビエ・ストークス方程式の数値解によって決定される。
−各ブレードの各位置(風の入射方向に対して)の理論上の最適フェザリング角度は、デバイスが動作する周速比の範囲について決定される。最適な実用フェザリング角度は理論値に基づくが、全体の出力を最適化し(例えば流管近似法を用いたエネルギー抽出により、局所の風の減速、及びブレードのフェザリングで消費しなければならないエネルギーを考慮する)、また角のフェザリング力が構造設計及び機構設計に及ぼす影響を最小化するように調整する。このために、タービンが丸1回転したときの出力を、一組の実用フェザリング角度の関数として決定する。この角度のセットは、正味の出力を最大化するように最適化される。
−タービンの一実施形態では、各ブレードの少し前方に、瞬間の大気速度と各ブレードの速度を決定できる速度センサを装備する。これは、例えば
図1Aと
図10に示すように、例えばブレードから突き出した杭162に装着した熱線又はピトープローブ164を用いて行うことができる。
−本発明者のタービンの別の実施形態は、例えば
図11に示すように、タービンブレードそのものの前後に装着した少なくとも2つの圧力センサ166の組を使用することができる。風圧板の両側に装着した数個の圧力センサからの情報を組み合わせることで、タービンブレードが受ける気流の迎角と速度の両方を決定することができる。先行するブレードのセンサからの情報を用いることで、後続のブレードが対面する風況が予想でき、設計を簡略化し、適切な制御アルゴリズムの成績を向上させることができる。
−制御アルゴリズムが導入され、それが上記センサの瞬時読み取りに基づいて、
図3に示すものに類似の円滑な関係をつくるために最適なフェザリング角度を決定する。
−制御装置は、各タービンブレード上のアクチュエータに適切な信号を送り、ブレードはそれに従ってフェザリング角度を調整する。
【0040】
ブレード角度制御II
[0040] 別の実施形態では、
図13Cの特定の例が表わす最適なフェザリング角度を、シヌソイド関数によって近似することができる。これは、フェザリング角度が
【数6】
の形の関係に従うことを意味し、上式でγ
0はフェザリングの振動振幅であり、φ
0は位相シフトである。この実施形態において、パラメータγ
0及びφ
0は、方程式(6)で与えられるフェザリング角度を用いてタービンの出力を直接最適化することによって決定される。このために、タービンが丸1回転したときの出力を、例えば流管近似法を用いてγ
0及びφ
0の関数として決定する。次に、この出力が最大になるようにγ
0及びφ
0の値を決定する。一般に、これらの最適値は風速と周速比に依存する。このアプローチの利点は、周速比の決定のためのタービン速度のほかに、そのタービンについて1つの代表的な風速と風向の決定のみが必要な点であり、この風速と風向は1つのセンサによって測定できる。その後、ブレードのフェザリング角度の制御は、機械的な手段又は電動式アクチュエータによって実施できる。
【0041】
[0041] この実施形態では、タービンのブレードのフェザリング角度は次のようにして調整する。
−選択されたブレード断面についてのC
L(α,Re)とC
D(α,Re)の関係は、風洞実験による1枚ブレードテストを通じて、又は風圧板を取り巻く気流を管理するナビエ・ストークス方程式の数値解によって決定される。
−実験又はシミュレーションのいずれかのデータに基づき、方程式(6)で与えられるフェザリング角度を用いてタービンの出力を決定する。
−値最適化によりγ
0の値を決定し、φ
0はこの出力が最大になるように決定する。最適パラメータは風速と周速比に依存する。
−一実施形態では、瞬時に風の向きと速度を決定する速度センサをタービンに装備する。これにはピトープローブが適するが、風の向きと風速の大きさを決定できる他のセンサを使用してもよい。
−制御アルゴリズムが実施され、それが上記センサの瞬時読み取りに基づいて、偏心制御デバイスの振動振幅と位相のための最適なパラメータを決定する。
−制御装置は、パラメータγ
0及びφ
0ブレードの角度を制御するアクチュエータに適切な信号を送る。
【0042】
[0042] 本発明の実施には、上述のものに類似のフェザリング技術、又はこの技術分野ですでに利用可能なその他のフェザリング技術のいずれかが使用できる。
【0043】
測定
[0043] 瞬時の気流測定は、
図1Aに示すように、杭162上の熱線又はピトープローブ164を、チューブの先端が各ブレードの前方約1ブレードコードの位置になるように設置することによって取得できる。測定された流速と流れの向きからの瞬時流速ベクトルは、既知の従来技術を用いて、各ブレード上の熱線又はピトープローブによって作成されたデータから決定できる。このデータを使い、後述するように、各ブレードについてそのブレードがチューブの先端の位置に達した瞬間のブレード角を、瞬時流速ベクトルに基づいて制御し、ブレードの最適なフェザリング角度を決定し、実施することができる。
【0044】
[0044] あるいは、圧電性圧力センサ、ピトー静圧センサ、LIDARセンサ又はSODARセンサ166などの圧力センサ166を、各ブレードの前面及び背面に装着することができる。これを
図11に示す。各ブレードの各側面に少なくとも1つのセンサがなければならないが、各側面に2個以上のセンサがあることが好ましい。これらの圧力から、従来技術を用いて瞬時流速ベクトルを決定できる。この流速ベクトルは、後続の次のブレードに必要なフェザリングの予想に使用することができる。
【0045】
[0045] 上述の瞬時流速決定技術を下記の流れ図に示す。
【表1】
【0046】
[0046] 上述のブレード角度制御I技術を下記の流れ図に示す。
【表2】
【表3】
【0047】
[0047] 上述のブレード角度制御IIの技術を下記のフローチャートに示す。この技術の実施には、複数個の風向風速検知器をタービンから離間して設置することが必要である。
【表4】
【表5】
【0048】
[0048]
図14は、TSRが1.5のときの鉛直ブレード140A〜140Eのフェザリング角度の一組を図示する。このように、この図ではD1の方向の水平風が吹いている。ブレード140Aは風向に対して216度フェザリングされ、ブレード140Bは288度フェザリングされ、ブレード140Cは0度フェザリングされ、ブレード140Dは72度フェザリングされ、ブレード140Eは144度フェザリングされる。
【0049】
[0049]
図15Aは、TSRを変更したときのフェザリング角度の変化を図示する。したがって、
図15Aは、TSR=1.5のときのブレード140Aの位置を示す。
図15Bは、TSR=2.0のときのブレードの位置を示す。
図15Cは、TSR=2.5のときのブレードの位置を示す。最後に、
図15Dは、TSR=3.0のときのブレードの位置を示す。