特許第5934171号(P5934171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5934171インターボーザの厚さ決定方法、コンピュータプログラム、インターボーザおよびチップ実装構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934171
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】インターボーザの厚さ決定方法、コンピュータプログラム、インターボーザおよびチップ実装構造体
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20160602BHJP
   H01L 23/32 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   G06F17/50 612G
   G06F17/50 658Z
   G06F17/50 666S
   H01L23/32 D
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-247309(P2013-247309)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-106241(P2015-106241A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2015年11月27日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「立体構造新機能集積回路(ドリームチップ)技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】羽田 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】堀部 晃啓
(72)【発明者】
【氏名】松本 圭司
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−278803(JP,A)
【文献】 特開2013−191903(JP,A)
【文献】 特表2003−532280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
H01L 23/32
H01L 25/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板に接合層を介して接続されるインターボーザの厚さを決定する方法であって、
前記インターボーザの厚さを初期値に設定するステップと、
前記設定した厚さでの、前記支持基板、前記接合層および前記インターボーザそれぞれの熱膨張率の差により発生する前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めるステップと、
前記求めた軸力と曲率半径を用いて、前記インターボーザの軸力による応力と反りによる応力とから前記インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めるステップと、
前記求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定するステップと、
前記求めた応力の絶対値が許容値内でないときには、前記インターボーザの厚さを所定値だけ変化させて設定し、前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めるステップと、前記インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めるステップと、前記求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定するステップとを繰り返すステップと、
前記求めた応力の絶対値が許容値内であるときには、そのときの設定した厚さをインターボーザの厚さとして確定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めるステップは、前記支持基板、前記接合層および前記インターボーザそれぞれについてのヤング率および熱膨張率と、前記支持基板および前記接合層の所望の厚さと、前記インターボーザの設定した厚さとを用いて、前記支持基板、前記接合層および前記インターボーザについて、界面でのひずみの連続性、軸力の釣り合いおよび曲げモーメントの釣り合いからそれぞれ導出される連立方程式を生成するステップと、前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径について連立方程式を解いて軸力と反りの曲率半径を算出するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接合層のヤング率および熱膨張率は、金属接合部とアンダーフィル樹脂部との複合体の材料特性から算出されるヤング率および熱膨張率である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めるステップは、前記インターボーザの軸力をインターボーザの所望の幅および前記設定した厚さで除算することで前記インターボーザの軸力による応力を算出するステップと、前記インターボーザのヤング率と前記設定した厚さの半分を乗算して前記インターボーザの反りの曲率半径で除算することで前記インターボーザの反りによる応力を算出するステップと、前記算出したインターボーザの軸力による応力と反りによる応力との合計を算出するステップとを含む、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
支持基板に接合層を介して接続されるインターボーザの厚さを決定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに、
前記インターボーザの厚さを初期値に設定するステップと、
前記設定した厚さでの、前記支持基板、前記接合層および前記インターボーザそれぞれの熱膨張率の差により発生する前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めるステップと、
前記求めた軸力と曲率半径を用いて、前記インターボーザの軸力による応力と反りによる応力とから前記インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めるステップと、
前記求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定するステップと、
前記求めた応力の絶対値が許容値内でないときには、前記インターボーザの厚さを所定値だけ変化させて設定し、前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めるステップと、前記インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めるステップと、前記求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定するステップとを繰り返すステップと、
前記求めた応力の絶対値が許容値内であるときには、そのときの設定した厚さをインターボーザの厚さとして確定するステップと、
を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項6】
前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めるステップは、前記支持基板、前記接合層および前記インターボーザそれぞれについてのヤング率および熱膨張率と、前記支持基板および前記接合層の所望の厚さと、前記インターボーザの設定した厚さとを用いて、前記支持基板、前記接合層および前記インターボーザについて、界面でのひずみの連続性、軸力の釣り合いおよび曲げモーメントの釣り合いからそれぞれ導出される連立方程式を生成するステップと、前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径について連立方程式を解いて軸力と反りの曲率半径を算出するステップとを含む、請求項5に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記接合層のヤング率および熱膨張率は、金属接合部とアンダーフィル樹脂部との複合体の材料特性から算出されるヤング率および熱膨張率である、請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めるステップは、前記インターボーザの軸力をインターボーザの所望の幅および前記設定した厚さで除算することで前記インターボーザの軸力による応力を算出するステップと、前記インターボーザのヤング率と前記設定した厚さの半分を乗算して前記インターボーザの反りの曲率半径で除算することで前記インターボーザの反りによる応力を算出するステップと、前記算出したインターボーザの軸力による応力と反りによる応力との合計を算出するステップとを含む、請求項5、6又は7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
表面にチップが接続され裏面に支持基板が接合層を介して接続されるインターボーザであって、当該インターボーザの厚さが、
前記インターボーザの厚さを初期値に設定することと、
前記設定した厚さでの、前記支持基板、前記接合層および前記インターボーザそれぞれの熱膨張率の差により発生する前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めることと、
前記求めた軸力と曲率半径を用いて、前記インターボーザの軸力による応力と反りによる応力とから前記インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めることと、
前記求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定することと、
前記求めた応力の絶対値が許容値内でないときには、前記インターボーザの厚さを所定値だけ変化させて設定し、前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めることと、前記インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めることと、前記求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定することとを繰り返すことと、
前記求めた応力の絶対値が許容値内であるときには、そのときの設定した厚さをインターボーザの厚さとして確定することと、
により決定された、インターボーザ。
【請求項10】
前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めることは、前記支持基板、前記接合層および前記インターボーザそれぞれについてのヤング率および熱膨張率と、前記支持基板および前記接合層の所望の厚さと、前記インターボーザの設定した厚さとを用いて、前記支持基板、前記接合層および前記インターボーザについて、界面でのひずみの連続性、軸力の釣り合いおよび曲げモーメントの釣り合いからそれぞれ導出される連立方程式を生成することと、前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径について連立方程式を解いて軸力と反りの曲率半径を算出することを含む、請求項9に記載のインターボーザ。
【請求項11】
前記接合層のヤング率および熱膨張率は、金属接合部とアンダーフィル樹脂部との複合体の材料特性から算出されるヤング率および熱膨張率である、請求項10に記載のインターボーザ。
【請求項12】
前記インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めることは、前記インターボーザの軸力をインターボーザの所望の幅および前記設定した厚さで除算することで前記インターボーザの軸力による応力を算出することと、前記インターボーザのヤング率と前記設定した厚さの半分を乗算して前記インターボーザの反りの曲率半径で除算することで前記インターボーザの反りによる応力を算出することと、前記算出したインターボーザの軸力による応力と反りによる応力との合計を算出することとを含む、請求項9、10又は11に記載のインターボーザ。
【請求項13】
フリップチップと、
表面に前記フリップチップが接続されるインターボーザと、
前記インターボーザの裏面に接続される支持基板と、
前記インターボーザと前記支持基板との間に設けられる接合層とを含み、
前記インターボーザの厚さが、
前記インターボーザの厚さを初期値に設定することと、
前記設定した厚さでの、前記支持基板、前記接合層および前記インターボーザそれぞれの熱膨張率の差により発生する前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めることと、
前記求めた軸力と曲率半径を用いて、前記インターボーザの軸力による応力と反りによる応力とから前記インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めることと、
前記求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定することと、
前記求めた応力の絶対値が許容値内でないときには、前記インターボーザの厚さを所定値だけ変化させて設定し、前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めることと、前記インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めることと、前記求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定することとを繰り返すことと、
前記求めた応力の絶対値が許容値内であるときには、そのときの設定した厚さをインターボーザの厚さとして確定することと、
により決定された、
チップ実装構造体。
【請求項14】
前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めることは、前記支持基板、前記接合層および前記インターボーザそれぞれについてのヤング率および熱膨張率と、前記支持基板および前記接合層の所望の厚さと、前記インターボーザの設定した厚さとを用いて、前記支持基板、前記接合層および前記インターボーザについて、界面でのひずみの連続性、軸力の釣り合いおよび曲げモーメントの釣り合いからそれぞれ導出される連立方程式を生成することと、前記インターボーザの軸力と反りの曲率半径について連立方程式を解いて軸力と反りの曲率半径を算出することを含む、請求項13に記載のチップ実装構造体。
【請求項15】
前記接合層のヤング率および熱膨張率は、金属接合部とアンダーフィル樹脂部との複合体の材料特性から算出されるヤング率および熱膨張率である、請求項14に記載のチップ実装構造体。
【請求項16】
前記インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めることは、前記インターボーザの軸力をインターボーザの所望の幅および前記設定した厚さで除算することで前記インターボーザの軸力による応力を算出することと、前記インターボーザのヤング率と前記設定した厚さの半分を乗算して前記インターボーザの反りの曲率半径で除算することで前記インターボーザの反りによる応力を算出することと、前記算出したインターボーザの軸力による応力と反りによる応力との合計を算出することとを含む、請求項13、14又は15に記載のチップ実装構造体。
【請求項17】
前記インターボーザはシリコンインターボーザであり、前記支持基板は有機基板である、請求項13、14、15又は16に記載のチップ実装構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC(Integrated Circuit:集積回路)チップ(以下、単に「チップ」と云う。)の実装技術に関し、特に、チップを搭載するインターボーザの厚さを決定する方法、厚さを決定するためのコンピュータプログラム、厚さが決定されたインターボーザおよびインターボーザにフリップチップを搭載したチップ実装構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、チップを3次元に積層してフェースダウンボンディングで実装するような発熱密度の高いチップ実装において、フリップチップを搭載する支持基板としてセラミックスのような無機基板に代わって低コストの有機基板が利用されるようになってきている。
【0003】
しかしながら、有機基板の利用には、例えばシリコンのようなフリップチップと有機基板とではそれらの熱膨張率は大きく異なるので、熱膨張率の大きな差によって発生する熱応力がそれらの間の半田接合部を破壊する可能性がある。
【0004】
図1に実装構造100を示す。実装構造100では、例えば有機基板のような支持基板105の上に例えばシリコンのようなインターポーザ110を設けて、インターポーザ110の上に例えばシリコンのような積層チップ115およびトップチップ120を搭載している。トップチップ120は、積層チップ115内に設けられた貫通ビア125を介してインターポーザ110の表面で電気的に接続される。インターポーザ110はその裏面で電極135により支持基板105に接続され、支持基板105とインターポーザ110の間にはアンダーフィル140が設けられる。特に、インターポーザ110と積層チップ115の間の接合部130は、支持基板105に最も近く、複数のチップを個別に積層するときなどには熱応力を受ける回数が最も多いため、他の接合部に比べて破壊する可能性が高い。
【0005】
それ故に、支持基板として熱膨張率の大きな有機基板を利用するにしても、信頼性の高いチップ実装を実現するには、インターポーザとチップの接合部の応力を低減することが求められる。従来、その接合部の応力を低減するために、最上層のチップを調整するなどしているが、この手法は、設計者の経験に頼るものであり、設計者の経験に頼っているので、設計者以外でも行えるように自動化することは難しい。
【0006】
一方、支持基板、インターポーザおよびチップで構成の積層構造におけるインターポーザとチップの接合部の応力そのものを直接求めることにより、その積層構造を最適化することが行われている。例えば、FEM(Finite Element Method:有限要素法)によりパラメータ解析してその接合部の応力を求めている。この方法では、モデル作成と計算に時間がかかる上に、高度な専門技術が必要であり、基本的に一度の計算でその作成したモデルに対する1つの解しか得られず、種々のモデルに対応するように自動化するのは困難である。
【0007】
非特許文献1には、材料力学的手法を応用することにより、熱的負荷を受ける多層ばりに生じる応力、ひずみおよびたわみを簡便に評価する多層ばり理論が提案されている。この多層ばり理論では、積層構造の各層は「はり」にモデル化されるのであるが、各層の曲率半径は各層の厚さよりも大きいために全て等しいと近似され、全ての層は反ったときに追従することが前提になっている。このため、積層構造の各層が互いに追従しないことによる層間の接合部の応力の増大は、多層ばり理論により求められる面内平均応力には反映されないことになり、接合部の応力を直接求めることはできない。
【0008】
特許文献1には、プリント基板と半田接合する電子部品の少なくとも形状データと配置データとを取り込んで各データに材料特性値を加え、プリント基板のモデルデータを生成し、生成したモデルデータに基づいて、プリント基板の反り方向を算出すると共に、プリント基板の反り量と半田接合された箇所の応力とを算出し、算出した反り方向におけるプリント基板の反り量と半田接合された箇所の応力とのバランスが最適となり得る設計条件を算出するようにした、反りと応力とのバランスを最適にするプリント基板モデルの設計が示されている。多層ばり理論を用いることにより、反りと応力とのバランスが最適となり得る設計条件は算出されるものの、このプリント基板モデルの設計でも、積層構造の各層が互いに追従しないことによる層間の接合部の応力は、多層ばり理論により求められる面内平均応力には反映されないので、直接求めることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−159870号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】尾田十八、阿部新吾、「多層ばり理論によるプリント基板の応力・変形の評価」、日本機械学会論文集(A編)、社団法人日本機械学会、1993年7月、59巻、563号、p.203−208
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、インターポーザとチップの接合部の応力を最小にすることができるインターポーザの厚さを決定し、その厚さのインターポーザの使用により接合部の応力を低減して、信頼性の高いチップ実装を実現することを目的とする。本発明の目的には、インターボーザの厚さを決定する方法、厚さを決定するためのコンピュータプログラム、厚さが決定されたインターボーザおよびインターボーザにフリップチップを搭載したチップ実装構造体を提供することが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により提供される1実施態様の方法、即ち、支持基板に接合層を介して接続されるインターボーザの厚さを決定する方法は、インターボーザの厚さを初期値に設定するステップと、設定した厚さでの、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれの熱膨張率の差により発生するインターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めるステップと、求めた軸力と曲率半径を用いて、インターボーザの軸力による応力と反りによる応力とからインターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めるステップと、求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定するステップと、求めた応力の絶対値が許容値内でないときには、インターボーザの厚さを所定値だけ変化させて設定し、インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めるステップと、インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めるステップと、求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定するステップとを繰り返すステップと、求めた応力の絶対値が許容値内であるときには、そのときの設定した厚さをインターボーザの厚さとして確定するステップとを含む。
【0013】
その方法において、好ましくは、インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めるステップは、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれについてのヤング率および熱膨張率と、支持基板および接合層の所望の厚さと、インターボーザの設定した厚さとを用いて、支持基板、接合層およびインターボーザについて、界面でのひずみの連続性、軸力の釣り合いおよび曲げモーメントの釣り合いからそれぞれ導出される連立方程式を生成するステップと、インターボーザの軸力と反りの曲率半径について連立方程式を解いて軸力と反りの曲率半径を算出するステップとを含むと良い。
【0014】
その方法において、好ましくは、接合層のヤング率および熱膨張率は、金属接合部とアンダーフィル樹脂部との複合体の材料特性から算出されるヤング率および熱膨張率であると良い。
【0015】
その方法において、好ましくは、インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めるステップは、インターボーザの軸力をインターボーザの所望の幅および設定した厚さで除算することでインターボーザの軸力による応力を算出するステップと、インターボーザのヤング率と設定した厚さの半分を乗算してインターボーザの反りの曲率半径で除算することでインターボーザの反りによる応力を算出するステップと、算出したインターボーザの軸力による応力と反りによる応力との合計を算出するステップとを含むと良い。
【0016】
本発明により提供される1実施態様のコンピュータプログラム、即ち、支持基板に接合層を介して接続されるインターボーザの厚さを決定するためのコンピュータプログラムは、コンピュータに、インターボーザの厚さを初期値に設定するステップと、設定した厚さでの、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれの熱膨張率の差により発生するインターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めるステップと、求めた軸力と曲率半径を用いて、インターボーザの軸力による応力と反りによる応力とからインターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めるステップと、求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定するステップと、求めた応力の絶対値が許容値内でないときには、インターボーザの厚さを所定値だけ変化させて設定し、インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めるステップと、インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めるステップと、求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定するステップとを繰り返すステップと、求めた応力の絶対値が許容値内であるときには、そのときの設定した厚さをインターボーザの厚さとして確定するステップとを実行させる。
【0017】
そのコンピュータプログラムにおいて、好ましくは、インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めるステップは、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれについてのヤング率および熱膨張率と、支持基板および接合層の所望の厚さと、インターボーザの設定した厚さとを用いて、支持基板、接合層およびインターボーザについて、界面でのひずみの連続性、軸力の釣り合いおよび曲げモーメントの釣り合いからそれぞれ導出される連立方程式を生成するステップと、インターボーザの軸力と反りの曲率半径について連立方程式を解いて軸力と反りの曲率半径を算出するステップとを含むと良い。
【0018】
そのコンピュータプログラムにおいて、好ましくは、接合層のヤング率および熱膨張率は、金属接合部とアンダーフィル樹脂部との複合体の材料特性から算出されるヤング率および熱膨張率であると良い。
【0019】
そのコンピュータプログラムにおいて、好ましくは、インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めるステップは、インターボーザの軸力をインターボーザの所望の幅および設定した厚さで除算することでインターボーザの軸力による応力を算出するステップと、インターボーザのヤング率と設定した厚さの半分を乗算してインターボーザの反りの曲率半径で除算することでインターボーザの反りによる応力を算出するステップと、算出したインターボーザの軸力による応力と反りによる応力との合計を算出するステップとを含むと良い。
【0020】
本発明により提供される1実施態様のインターボーザ、即ち、表面にチップが接続され裏面に支持基板が接合層を介して接続されるインターボーザは、その厚さが、インターボーザの厚さを初期値に設定することと、設定した厚さでの、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれの熱膨張率の差により発生するインターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めることと、求めた軸力と曲率半径を用いて、インターボーザの軸力による応力と反りによる応力とからインターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めることと、求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定することと、求めた応力の絶対値が許容値内でないときには、インターボーザの厚さを所定値だけ変化させて設定し、インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めることと、インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めることと、求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定することとを繰り返すことと、求めた応力の絶対値が許容値内であるときには、そのときの設定した厚さをインターボーザの厚さとして確定することとにより決定されている。
【0021】
そのインターボーザにおいて、好ましくは、インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めることは、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれについてのヤング率および熱膨張率と、支持基板および接合層の所望の厚さと、インターボーザの設定した厚さとを用いて、支持基板、接合層およびインターボーザについて、界面でのひずみの連続性、軸力の釣り合いおよび曲げモーメントの釣り合いからそれぞれ導出される連立方程式を生成することと、インターボーザの軸力と反りの曲率半径について連立方程式を解いて軸力と反りの曲率半径を算出することを含むと良い。
【0022】
そのインターボーザにおいて、好ましくは、接合層のヤング率および熱膨張率は、金属接合部とアンダーフィル樹脂部との複合体の材料特性から算出されるヤング率および熱膨張率であると良い。
【0023】
そのインターボーザにおいて、好ましくは、インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めることは、インターボーザの軸力をインターボーザの所望の幅および設定した厚さで除算することでインターボーザの軸力による応力を算出することと、インターボーザのヤング率と設定した厚さの半分を乗算してインターボーザの反りの曲率半径で除算することでインターボーザの反りによる応力を算出することと、算出したインターボーザの軸力による応力と反りによる応力との合計を算出することとを含むと良い。
【0024】
本発明により提供される1実施態様のチップ実装構造体は、フリップチップと、表面にフリップチップが接続されるインターボーザと、インターボーザの裏面に接続される支持基板と、インターボーザと支持基板との間に設けられる接合層とを含み、インターボーザの厚さが、インターボーザの厚さを初期値に設定することと、設定した厚さでの、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれの熱膨張率の差により発生するインターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めることと、求めた軸力と曲率半径を用いて、インターボーザの軸力による応力と反りによる応力とからインターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めることと、求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定することと、求めた応力の絶対値が許容値内でないときには、インターボーザの厚さを所定値だけ変化させて設定し、インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めることと、インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めることと、求めた応力の絶対値が許容値内であるかを判定することとを繰り返すことと、求めた応力の絶対値が許容値内であるときには、そのときの設定した厚さをインターボーザの厚さとして確定することとにより決定されている。
【0025】
そのチップ実装構造体において、好ましくは、インターボーザの軸力と反りの曲率半径を求めることは、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれについてのヤング率および熱膨張率と、支持基板および接合層の所望の厚さと、インターボーザの設定した厚さとを用いて、支持基板、接合層およびインターボーザについて、界面でのひずみの連続性、軸力の釣り合いおよび曲げモーメントの釣り合いからそれぞれ導出される連立方程式を生成することと、インターボーザの軸力と反りの曲率半径について連立方程式を解いて軸力と反りの曲率半径を算出することを含むと良い。
【0026】
そのチップ実装構造体において、好ましくは、接合層のヤング率および熱膨張率は、金属接合部とアンダーフィル樹脂部との複合体の材料特性から算出されるヤング率および熱膨張率であると良い。
【0027】
そのチップ実装構造体において、好ましくは、インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値を求めることは、インターボーザの軸力をインターボーザの所望の幅および設定した厚さで除算することでインターボーザの軸力による応力を算出することと、インターボーザのヤング率と設定した厚さの半分を乗算してインターボーザの反りの曲率半径で除算することでインターボーザの反りによる応力を算出することと、算出したインターボーザの軸力による応力と反りによる応力との合計を算出することとを含むと良い。
【0028】
そのチップ実装構造体において、好ましくは、インターボーザはシリコンインターボーザであり、支持基板は有機基板であると良い。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、インターポーザとチップの接合部の応力を最小にすることができるインターポーザの厚さが決定され、その厚さのインターポーザを使用して接合部の応力を低減した信頼性の高いチップ実装が実現される。特に、そのようなチップ実装は、本発明により提供される、インターボーザの厚さを決定する方法、厚さを決定するためのコンピュータプログラム、厚さが決定されたインターボーザおよびインターボーザにフリップチップを搭載したチップ実装構造体によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】支持基板およびインターポーザの上にチップを積層して搭載したチップ実装構造体を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の1実施形態に係るチップ実装構造体でのインターポーザの使用を概略的に示す側面図である。
図3】インターポーザについてチップ接続面の応力と厚さとの関係を示すグラフである。
図4】本発明の1実施形態に係るインターボーザの厚さを決定する方法を概略的に示す処理の流れ図である。
図5図4の処理330についての例示的な処理の流れ図である。
図6】接合層の例示的な構成を概略的に示す断面図である。
図7図4の処理340についての例示的な処理の流れ図である。
図8】本発明の1実施形態に係るインターポーザの使用を概略的に示す側面図である。
図9】本発明の1実施形態に係るインターポーザについてチップ接続面の応力と厚さとの関係を示すグラフである。
図10】FEMで解析したチップ実装構造を概略的に示す側面図である。
図11図10のFEMで解析したインターポーザについてチップ接続面の応力と厚さとの関係を示すグラフである。
図12】支持基板の厚さに対して本手法およびFEMによりそれぞれ求められたインターポーザの厚さを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、記載された実施形態の内容に限定して解釈されるべきではない。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ構成部分乃至構成要素には同じ番号を付している。
【0032】
図2に、本発明の1実施形態に係るチップ実装構造体200でのインターポーザ110の使用を側面図で概略的に示す。チップ120はインターポーザ110の表面のチップ接続面111で接続されている。インターポーザ110はその裏面で接合層145を介して支持基板105に接続されている。本発明者は、例えばFEMを用いてインターポーザ110のチップ接続面111の応力とインターポーザ110の厚さとの関係を調べ、チップ接続面111の応力を最小にすることができるインターポーザ110の厚さがあることを見出した。
【0033】
図3に、所定の例えば有機基板のような支持基板105および接合層145に対して、例えばシリコンのようなインターポーザ110の厚さを変えたときのチップ接続面111の応力をグラフで示す。チップ接続面111の応力は、基準となる応力(支持基板105の厚さが1200μmでインターポーザ110の厚さが50μmのときの応力)と比較した割合(%)で示してある。(A)のように、インターポーザ110の厚さが200μmから50μmへと薄くなるに連れて、支持基板105の影響を強く受けて、チップ接続面111の応力は増大する。また、(B)のように、インターポーザ110の厚さが240μmから400μmへと厚くなるに連れて、チップ120がインターポーザ110および支持基板105の反りに追従しないことにより、(A)ほどではないが、チップ接続面111の応力は増大する。そして、(C)のように、インターポーザ110の厚さが200μmから240μmの範囲では、チップ接続面111でのインターポーザ110内の軸力による応力とインターポーザ110の反りによる応力との合計の絶対値が最小となり、チップ接続面111の応力は最小となっている。従って、所定の支持基板105および接合層に対して、インターポーザ110の厚さを200μmから240μmの範囲内に設定すれば、チップ接続面111の応力を最小にすることができる。本発明者は、この見出した知見に基づいて、チップ接続面111の応力を最小にすることができるインターボーザの厚さを決定する方法を考案した。
【0034】
図4に、本発明の1実施形態に係るインターボーザの厚さを決定する方法300の処理の流れを概略的に示す。処理を開始すると、ステップ310で、支持基板、接合層およびインターポーザのデータ、例えば、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれについてのヤング率(E、E、E)および熱膨張率(α、α、α)と、支持基板および接合層の所望の厚さ(t、t)と、インターボーザの厚さの初期値にする最小の厚さ(tmin)および変化させる厚さ(Δt)や、支持基板、接合層およびインターボーザで構成される積層構造のパラメータ、例えば、それぞれの幅(b、b、b)および長さ(L、L、L)や、応力の許容値(σth)などを準備する。
【0035】
ステップ320で、インターボーザの厚さ(t)を初期値(tmin)に設定する(t ← tmin)。ステップ330で、設定した厚さ(t)での、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれの熱膨張率(α、α、α)の差により発生するインターボーザの軸力(P)と反りの曲率半径(R)を求める。ステップ340で、求めた軸力(P)と曲率半径(R)を用いて、インターボーザの軸力による応力と反りによる応力とからインターボーザのチップ接続面における応力の絶対値(|σ|)を求める。ステップ350で、求めた応力の絶対値(|σ|)が許容値(σth)内であるかを判定する(|σ| < σth)。
【0036】
ステップ350で、求めた応力の絶対値(|σ|)が許容値(σth)内でないときには、ステップ360で、インターボーザの厚さ(t)を所定値(Δt)だけ変化させて設定し(t ← t + Δt)、インターボーザの軸力(P)と反りの曲率半径(R)を求めるステップ(330)と、インターボーザのチップ接続面における応力の絶対値(|σ|)を求めるステップ(340)と、求めた応力の絶対値(|σ|)が許容値(σth)内であるかを判定するステップ(350)とを繰り返す。ステップ350で、求めた応力の絶対値(|σ|)が許容値(σth)内であるときには、ステップ370で、そのときの設定した厚さ(t)をインターボーザの厚さ(t)として確定する(t ←t)。ステップ380で、確定したインターボーザの厚さ(t)を出力して、処理は終了する。
【0037】
図5に、ステップ330についての例示的な処理の流れを示す。ステップ331では、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれについてのヤング率(E、E、E)および熱膨張率(α、α、α)と、支持基板および接合層の所望の厚さ(t、t)と、インターボーザの設定した厚さ(t)とを用いて、支持基板、接合層およびインターボーザについて、界面でのひずみの連続性、軸力の釣り合いおよび曲げモーメントの釣り合いからそれぞれ導出される連立方程式を生成する。
【0038】
界面でのひずみの連続性については、層1と層2との界面で成り立つ次の式1を用いる。
【数1】

式1における変数Tは温度(℃)の変化値であり、それ以外の変数については既に出てきているので説明は省略する。変数の添え字1および2はそれぞれ層1および2に対応している。例えば、支持基板と接合層の界面については、層1が支持基板で層2が接合層であれば、各変数の添え字1はSとなり添え字2はCとなる。同様に、接合層とインターボーザの界面については、層1が接合層で層2がインターボーザであれば、各変数の添え字1はCとなり添え字2はIとなる。支持基板と接合層の界面および接合層とインターボーザの界面のそれぞれの界面について、式1の関係が成り立つので、式1を用いる。
【0039】
軸力の釣り合いについては、層1、2、3、・・・nの間で成り立つ次の式2を用いる。
【数2】

軸力の変数Pの添え字1、2、3、・・・nはそれぞれ層1、2、3、・・・nに対応している。例えば、支持基板、接合層およびインターボーザがそれぞれ層1、2および3であれば、変数Pの添え字1、2および3はそれぞれS、CおよびIとなる。支持基板、接合層およびインターボーザの間で式2の関係が成り立つので、式2を用いる。
【0040】
曲げモーメントの釣り合いについては、層1、2、3、・・・nの間で成り立つ次の式3を用いる。
【数3】

は層iに生じる曲げモーメントであり、次の式4で与えられる。
【数4】

およびRは、それぞれ、層iについての既に出てきているヤング率および曲率半径である。Iは層iについての断面2次モーメントである。曲率半径R、R、・・・Rはほぼ等しいとして次の式5で与えられる。
【数5】

従って、MはE/Rで表される。オバーラインの付いたyは層iの中立面の位置を示す。支持基板、接合層およびインターボーザの間で式3の関係が成り立つので、式3を用いる。
【0041】
ステップ332では、インターボーザの軸力(P)と反りの曲率半径(R)について、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれに関する各変数により生成された式1、式2および式3の連立方程式を解いて、軸力(P)と反りの曲率半径(R)を算出する。
【0042】
接合層のヤング率(E)および熱膨張率(α)を算出するには、一般的な複合体の式を用いる。そして、複合体の材料特性を求める、例えば、サイバネットシステム株式会社から販売されているANSYSおよびMultiscale.Sim(登録商標)のような市販のソフトウェアを使う。一般的な複合体の式は次のように表される。積層方向に垂直な方向の物性値、即ち、ヤング率(E)および熱膨張率(α)は、次の式6で与えられる。
【数6】

また、積層方向に平行な方向の物性値、即ち、ヤング率(E)および熱膨張率(α)は、次の式7で与えられる。
【数7】

なお、式6および式7において、Vは体積率を表し、添え字のMは主材料であることを示し、Fは副材料であることを示す。従って、接合層の主材料のヤング率(E)および熱膨張率(α)と、副材料の体積率(V)、ヤング率(E)および熱膨張率(α)とを用いて、式6および式7より、積層方向に垂直な方向のヤング率(E)および熱膨張率(α)と積層方向に平行な方向のヤング率(E)および熱膨張率(α)とが求まる。
【0043】
図6に、接合層の例示的な構成を断面図で概略的に示す。(A)に示されるように、接合層は電極135およびアンダーフィル140で構成される。また、(B)に示されるように、電極135は、例えば、銅(Cu)のようなパッド136と銅錫(CuSn)のIMC(Inter Metallic Compound:金属間化合物)のようなバンプ137で構成される。電極135を構成するそれら主材料および副材料の2つのヤング率、熱膨張率と副材料の体積率とを用いて、式6および式7より、電極135の積層方向に垂直な方向(y)のヤング率(E)および熱膨張率(α)と積層方向に平行な方向(x)のヤング率(E)および熱膨張率(α)とが求まる。電極135の積層方向に垂直な方向(y)のヤング率(E)および熱膨張率(α)と積層方向に平行な方向(x)のヤング率(E)および熱膨張率(α)とが求まると、(C)に示されるように、電極135とアンダーフィル140との間で複合体の式6および式7を適用して、電極135とアンダーフィル140とで構成される接合層145の積層方向に垂直な方向(y)のヤング率(E)および熱膨張率(α)と積層方向に平行な方向(x)のヤング率(E)および熱膨張率(α)とが求まる。
【0044】
図7に、ステップ340についての例示的な処理の流れを示す。ステップ341では、インターボーザの軸力(P)をインターボーザの所望の幅(b)および設定した厚さ(t)で除算することでインターボーザの軸力による応力(P/b)を算出する。インターボーザの軸力(P)は、ステップ330で求められた値、特にステップ331および332で算出された値が使用され、インターボーザの所望の幅(b)および設定した厚さ(t)は、既に得られている値が使用される。ステップ342では、インターボーザのヤング率(E)と設定した厚さの半分(t/2)を乗算してインターボーザの反りの曲率半径(R)で除算することでインターボーザの反りによる応力(E(t/2)/R)を算出する。インターボーザの反りの曲率半径(R)は、ステップ330で求められた値、特にステップ331および332で算出された値が使用され、インターボーザのヤング率(E)および設定した厚さ(t)は、既に得られている値が使用される。ステップ343では、算出したインターボーザの軸力による応力と反りによる応力との合計を算出する(P/b + E(t/2)/R)。インターボーザの軸力による応力(P/b)はステップ341で算出された値が使用され、インターボーザの反りによる応力(E(t/2)/R)はステップ342で算出された値が使用される。
【0045】
図4から図7には、本発明の1実施形態に係るインターボーザの厚さを決定する方法を示したが、この方法の各ステップは、コンピュータがそれらのステップを実行するようにコンピュータプログラムを作成して、コンピュータプログラムでもって実施することができる。その際、コンピュータにおいては、例えばメモリやハードディスクなどの記憶装置に作成したコンピュータプログラムが保持され、例えば中央演算処理装置(CPU)などの処理装置が、記憶装置に保持されたコンピュータプログラムを読み出してその命令を実行することにより実施される。
【0046】
図8に、本発明の1実施形態に係るインターポーザの使用構成例400を側面図で概略的に示す。支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれについてのヤング率(E、E、E)および熱膨張率(α、α、α)と、支持基板および接合層の所望の厚さ(t、t)が与えられると、先に示した本発明の1実施形態に係るインターボーザの厚さを決定する方法(本手法)により、チップ接続面111の応力を最小にすることができるインターボーザ110の厚さ(t)が決定される。そのように厚さが決定されて作成されたインターポーザ110は、それ自体で売買される製品となり得る。使用構成例400では、チップをまだ搭載していないが、厚さが決定されて作成れたインターポーザ110の裏面に支持基板105が接合層145を介して接続され、この状態でも製品となり得る。
【0047】
図9に、本発明の1実施形態に係るインターポーザの使用構成例400でのチップ接続面の応力と厚さとの関係をグラフで示す。例えば有機基板である支持基板105の厚さがそれぞれ600μm、900μmおよび1200μmであるときに、例えばシリコンのインターポーザ110において、チップ接続面111の応力(MPa)は、厚さ(μm)の増加に連れて、マイナスの値からゼロを経てプラスの値へと変化する。チップ接続面111の応力がゼロとなるときの厚さに近似の厚さは、本発明の1実施形態に係るインターボーザの厚さを決定する方法(本手法)により求められる。応力の許容値(σth)を限りなく小さくすれば、チップ接続面111の応力がゼロとなるときの厚さに限りなく近いインターボーザの厚さ(t)に設定することができる。本手法により求められたシリコンのインターポーザ110厚さは、有機基板である支持基板105の厚さが600μm、900μmおよび1200μmに対して、それぞれ、155μm、220μmおよび290μmであった。
【0048】
図10に、FEMで解析したチップ実装構造500を側面図で概略的に示す。チップ実装構造500では、図1のチップ実装構造100と違って、トップチップ120が積層チップ115を介さずに直接インターポーザ110の表面に搭載されている。図8に示されている、本発明の1実施形態に係るインターポーザの使用構成例400と比較するために、支持基板、接合層およびインターボーザそれぞれについてのヤング率(E、E、E)および熱膨張率(α、α、α)と、支持基板および接合層の所望の厚さ(t、t)は同じにされる。
【0049】
図11に、FEMで解析したチップ実装構造500のインターポーザ110についてチップ接続面の応力と厚さとの関係をグラフで示す。FEMによる解析では、有機基板である支持基板105の厚さがそれぞれ600μm、900μmおよび1200μmであるときに、シリコンのインターポーザ110において、チップ接続面の応力(%)は、それぞれ、140−190μm、200−240μmおよび270−330μmで最小になっている。図11に示されているように、本発明の1実施形態に係るインターボーザの厚さを決定する方法(本手法)により求められた厚さ155μm、220μmおよび290μmは、それぞれ、FEMで解析したそれらのチップ接続面の応力が最小になっているインターポーザ110の厚さ範囲の中に含まれている。従って、所定の接合層を使用して有機基板である支持基板105の厚さがそれぞれ600μm、900μmおよび1200μmであるときに、本手法によりそれぞれ求められた厚さ155μm、220μmおよび290μmのシリコンのインターポーザ110はチップ接続面の応力を最小になるまで低減できることが確かめられた。
【0050】
図12に、有機基板である支持基板105の厚さがそれぞれ600μm、900μmおよび1200μmであるときに、それぞれ、本手法により求められたシリコンのインターポーザ110の厚さと、FEMで解析したチップ接続面の応力が最小になっているインターポーザ110の厚さ範囲とを、比較のため、表にして示す。
【0051】
以上、実施態様を用いて本発明の説明をしたが、本発明の技術的範囲は実施態様について記載した範囲には限定されない。実施態様に種々の変更又は改良を加えることが可能であり、そのような変更又は改良を加えた態様も当然に本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
105 支持基板
110 インターポーザ
111 チップ接続面
120 チップ
145 接合層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12