特許第5934173号(P5934173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5934173ガラスセラミックプレート及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934173
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】ガラスセラミックプレート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/10 20060101AFI20160602BHJP
   C03C 17/38 20060101ALI20160602BHJP
   C03C 17/23 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   F24C15/10 B
   C03C17/38
   C03C17/23
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-260402(P2013-260402)
(22)【出願日】2013年12月17日
(62)【分割の表示】特願2009-532859(P2009-532859)の分割
【原出願日】2007年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-62733(P2014-62733A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2014年1月10日
(31)【優先権主張番号】0654285
(32)【優先日】2006年10月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504374919
【氏名又は名称】ユーロケラ ソシエテ オン ノーム コレクティフ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ビラト,パブロ
(72)【発明者】
【氏名】フェラ,カロリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ルイロン,マリー−エレーヌ
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−130785(JP,A)
【文献】 特開2005−298219(JP,A)
【文献】 特開2004−193050(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0214521(US,A1)
【文献】 特開2006−208862(JP,A)
【文献】 特開平05−125559(JP,A)
【文献】 特開2005−170034(JP,A)
【文献】 特開平08−048587(JP,A)
【文献】 特開2000−335940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/10
H05B 6/12
A47J 27/00 − 27/13
A47J 27/20 − 29/06
A47J 33/00 − 36/42
C03C 15/00 − 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの加熱エレメントを覆うか又は収容することを意図したガラスセラミックプレートであって、ガラスセラミックよりも高い屈折率を有する金属材料に基づく10〜100nmの厚さを有する少なくとも1つのナノスケールの層で少なくとも部分的にコーティングされ、該ナノスケールの層が少なくとも95wt%の金属材料から形成され、該ナノスケールの層を形成する金属材料の粒子の少なくとも90%が最初は100nmよりも小さい直径を有するガラスセラミックプレート。
【請求項2】
前記ナノスケールの層がほぼ100wt%の金属材料から形成されたことを特徴とする、請求項1に記載のガラスセラミックプレート。
【請求項3】
料理板又はホブ(hob)としての役割を果たすことを意図したことを特徴とする、請求項1又は2に記載のガラスセラミックプレート。
【請求項4】
前記ナノスケールの層が別の層のための下層としての役割を果たすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラスセラミックプレート。
【請求項5】
前記ナノスケールの層が少なくとも1つの塗料層と組み合わせられたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラスセラミックプレート。
【請求項6】
前記ナノスケールの層が少なくとも1つのエナメル層と組み合わせられたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラスセラミックプレート。
【請求項7】
ガラスセラミックよりも高い屈折率を有する少なくとも1つの金属材料及び/又は該金属材料の前駆体を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のガラスセラミックプレートを得るのに適したスクリーン印刷可能な組成物。
【請求項8】
前記金属材料の粒子をガラスセラミックプレートに結合させるための有機材料をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
ガラスセラミックよりも高い屈折率を有する少なくとも1つの金属材料及び/又は該金属材料の前駆体を含む組成物がスクリーン印刷によってセラミック化の前に前駆体ガラスに適用される、請求項1〜のいずれか1項に記載のプレートを製造するための方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のガラスセラミックプレートと、1つ又は複数の加熱エレメントとを含む、高温を維持する機器及び/又は調理機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミックプレート、特には加熱エレメントを覆うか又は収容することを意図したガラスセラミックプレート、特には料理板(又はホブ(hob))としての役割を果たすことを意図したガラスセラミックプレート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスセラミックのホブの売れ行きは、ここ数年にわたって伸び続けている。この成功は、特にはこのようなホブの魅力的な外観とその掃除が容易であることによって説明される。
【0003】
ガラスセラミックは、最初は、その特有の化学組成により制御された結晶化をセラミック化と呼ばれる適切な熱処理で誘導することができる前駆体ガラスと呼ばれるガラスであることが思い起こされよう。この部分的に結晶化された特有の構造がガラスセラミックに固有の特性を付与する。
【0004】
現在、種々のタイプのガラスセラミックプレートがあり、それぞれの変形態様は、これらのプレート及び/又はこれらのプレートを得るための方法を所望の特性について不利な影響を与えることなく改良することが非常に難しいことを考えると、広範囲の研究及び多くの試験の結果である。ホブとして使用し得るためには、ガラスセラミックプレートは、一般的には、可視領域の波長において透過性を有していなければならず、このような透過性は、下にある加熱エレメントを使用していない場合にはそれらのうち少なくとも幾つかを隠すほど十分低いものであり、そして、加熱エレメントが作動している場合には、安全のために、使用者が加熱エレメントを視覚的に感知できるほど十分高いものである。ガラスセラミックプレートは、赤外領域の波長においても同様に透過性を有していなければならない。
【0005】
現在の大部分のプレートは暗い色のものであり、特には黒色のものであるが、より明るい色(特には、例えば、仏国特許出願公開第2766816号明細書に記載されるような少なくとも50%の曇り度を有する白色)のプレート又は不透明コーティングを備えた透明なプレートもある。ガラスセラミックプレートのための公知の(機能性及び/又は装飾性)コーティングの中には、ガラスフリットや顔料に基づく従来のエナメル、並びに、例えば、アルキド樹脂に基づく高温に対して抵抗性のある幾つかの塗料がある。特には、エナメルは、セラミック化の前に前駆体ガラス(又は母ガラス又は緑色ガラス)上に堆積させることができ、そしてセラミック化の間に焼成することができるという利点を有し、さらには(プレートのための種々の加熱手段の使用を可能にする)高温に耐えることができるという利点も有する。しかしながら、エナメルには、厚さの薄い単一の堆積しかできないという欠点があり(エナメルを重ね合わせることはできない)、他の点では、特にエナメルが剥がれてガラスセラミックプレートにダメージを与えるというリスクがある。塗料については、塗料は(必要に応じて)複数の層として適用することができる。しかしながら、塗料は、セラミック化の後に適用しなければならず(それゆえ追加の焼成操作を必要とする)、(低温で操作する)誘導加熱器のためのプレートに限定されている。
【0006】
最近では、ガラスセラミックプレートとしては、マグネトロンカソードスパッタリングによって堆積された反射層に基づくか又は特殊効果顔料(酸化アルミニウム又は金属酸化物でコーティングされた雲母片)を組み込んだガラスバッチ材料に基づき、したがって美的及び/又は技術的な効果を与える対照的な領域(特にはより艶のない領域と対照的な光沢のある領域)を作り出すことを可能とするコーティングを有するものも提案されている。しかしながら、マグネトロンスパッタリングによって堆積された反射層に基づくコーティングはより高価であり、その製造はより複雑であり(あるいは、複雑なマスキング操作を要するパターンを形成する場合には扱いが難しく)、そして、このような製造は、以降の作業としてセラミック化の後に実施され、加えて一般的には、これらのコーティングは、誘導加熱エレメントに関してのみ使用されるものであるので、タッチセンサー式の制御要素の使用には一般に適していない。特殊効果顔料を有するガラスバッチに基づくコーティングに関しては、セラミック化によって反射効果が一般に低下するだけでなく、上記のエナメルと同じ欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、機能的及び美的外観、特に及び好ましくは反射領域の存在に起因する対照的な外観、上で述べたよりも簡単及び/又は有利に、特には上記の欠点のないコーティングを有するプレートを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による新規のプレートは、例えば、少なくとも1つの加熱エレメントを覆うか又は収容することを意図したガラスセラミックプレート、特には料理板(又はホブ(hob))としての役割を果たすことを意図したガラスセラミックプレートであって、ガラスセラミックよりも高い屈折率を有する金属材料に基づく少なくとも1つのナノスケールの層で少なくとも部分的にコーティングされたガラスセラミックプレートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「ガラスセラミックプレート」という用語は、以降において、実際のガラスセラミックから作製されるプレートだけでなく、高温に対して抵抗性がありかつゼロか又はほぼゼロ(例えば15×10-7-1よりも小さい)の膨張率を有する他の任意の類似の材料から作製されるプレートも意味すると解される。しかしながら、このようなプレートは、好ましくは実際のガラスセラミックプレートである。
【0010】
「ナノスケールの層」という用語は、100nm以下、好ましくは50nm以下の厚さを有する層を意味すると解される(比較のために、エナメル層の厚さは、焼成後に一般的には2.5〜5μmであり、マグネトロンスパッタリングされた層の厚さは一般的には100nmよりも大きい)。有利には、層を形成する金属材料の粒子は、最初は(凝集前には)ナノスケールのサイズを有し、特にこれらの粒子は、100nmよりも小さい平均直径を有し(これらの粒子の少なくとも90%は一般に100nmよりも小さい直径を有し)、好ましくは50nmよりも小さい平均直径を有する。
【0011】
「金属材料に基づく層」という表現は、層が主として(少なくとも50wt%、有利には少なくとも95wt%、一般的にはほぼ100wt%の)金属材料から形成されることを意味すると解され、一般的に及び有利には、層は(100wt%の)金属材料からなる。「金属材料」という用語は、層において、金属元素(チタン、スズ、ジルコニウム、アルミニウム、鉄など)の無機化合物、例えば、金属酸化物、金属硫化物、及び金属窒化物(又は金属酸窒化物)から選択され、好ましくは金属酸化物から選択される1つ又は複数の化合物を意味すると解される。ガラスセラミックの屈折率は約1.54であるので、本発明によって規定されるナノスケールの層は、好ましくは酸化アルミニウムAl23(屈折率nは約1.77)、二酸化スズSnO2(屈折率nは約1.85)、二酸化ジルコニウムZnO2(屈折率nは約2)、二酸化チタンTiO2(屈折率nは約2〜2.2)及び/又は酸化鉄Fe23(屈折率nは約2.9〜3.2)から形成され(あるいはそれらに基づき)、特に好ましくは二酸化チタン又は酸化鉄Fe23から形成される(あるいはそれに基づく)。
【0012】
上で規定される層は、以下に詳細に説明されるように、プレートの一方の面の少なくとも一部を一般に覆い、有利には一方の面の全体を覆うことができる。
【0013】
本発明はまた、上で規定される層を得るようプレートに適用される組成物であって、少なくとも上記の金属材料及び/又は該金属材料の1つ又は複数の前駆体を含む組成物に関する。
【0014】
好ましくは、適用される組成物は、上記の金属材料の粒子をプレートに結合させるための少なくとも1つの有機材料を含み、及び/又は該有機材料を含む別の組成物と(連続的な堆積において)一緒に適用される。必要に応じて、適用される組成物はまた、有機媒体、特にはプレート上への堆積に関して粘度を調節するための有機媒体を含むことができる。
【0015】
金属材料の粒子を結合させるための有機材料は、一般にポリマーの形態であり、(例えば、金属材料の前駆体を構成する有機金属化合物の場合には)金属材料を組み込むことができるか又は粒子のためのバインダーを単に形成することができ、この有機材料は、続いて、すべての場合において、本発明によって規定される層を与えるように焼成の間に除去される(特には焼き尽くされる)(必要に応じて、以下に詳細に説明されるように、組成物中に存在する媒体は一般に乾燥によって事前に除去される)。
【0016】
上記のとおり、金属材料の粒子は、層の焼成の際に粒子を放出する1つ又は複数の前駆体(有機金属のケイ酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、セレン酸塩、硝酸塩、炭酸塩、チタン酸塩など)から得ることもできるし、及び/又は(プレートに適用される組成物に添加する前に)種々の公知のプロセスによって事前に形成することもできる。後者の場合には、金属材料の粒子は、好ましくは熱分解によって(例えば、有機金属化合物の有機部分を除去するよう酸素の存在下で火炎中に有機金属化合物を通すことによって)得られた粒子であり、このプロセスによって特にはナノスケールの粒子を得ることが可能となる。
【0017】
プレート上に堆積される組成物はまた、1つ又は複数の接着促進剤(例えば、シラン)、粘度を調節してプレート上への堆積を可能にするための1つ又は複数の物質などを含むことができる。この組成物は、安定でかつ液状からペースト状の稠度である溶液(又はゾル−ゲル)の形態をなす(特にはスクリーン印刷によってそれを堆積する目的で、スクリーン印刷可能なペーストの形態をなす)。
【0018】
本発明によって得られそして規定される層は、任意選択で、金属材料とは別に、必要に応じて、金属材料の前駆体(例えば、微量の炭素)などによって形成される1つ又は複数の化合物を含むことができる。
【0019】
本発明はまた、上記の組成物が好ましくはスクリーン印刷によってセラミック化の前に前駆体ガラスに適用され、該組成物がセラミック化サイクルの間に焼成される本発明によるプレートを製造するための方法に関する。
【0020】
念のため、ガラスセラミックプレートの製造は一般に以下のように行われる。ガラスセラミックを形成するために選択された組成物を有するガラスが溶融炉で溶融され、次いで溶融されたガラスが回転ロールの間に溶融されたガラスを通すことによって標準的なリボン又はシートに圧延され、ガラスのリボンが所望の寸法に切断される。そうして切断されたプレートは、次いで、それ自体は公知の方法においてセラミック化され、このセラミック化は、ガラスを「ガラスセラミック」と呼ばれる多結晶材料に変換するために選択される熱プロファイルによってプレートを焼成することにあり、このガラスセラミックの膨張率はゼロか又はほぼゼロであり、ガラスセラミックは場合により最大700℃の熱衝撃に対して抵抗性がある。セラミック化は、温度を核形成の範囲、一般的にはガラス転移の範囲付近まで徐々に上げる工程と、数分間にわたって核形成の範囲を経る工程と、セラミック化の保持(レベル、プラトー)温度まで温度をさらに徐々に上げる工程とを一般に含み、セラミック化の保持温度が数分間にわたって維持され、続いて室温まで急激に冷却される。必要に応じて、このプロセスはまた、例えば、水噴射を用いた切断操作(一般的にはセラミック化の前)、スコアリングホイール(scoring wheel)を用いた機械的な切れ目入れなどを含み、続いて成形操作(研削、面取りなど)が行われる。
【0021】
好ましくは、上記の組成物は、スクリーン印刷によってペーストの形態でプレート上に堆積され、湿った膜の厚さは、例えば、約5〜20μmである。組成物が堆積された後、コーティングされた前駆体ガラスのプレートは(例えば、赤外線で又は炉において)一般に約100〜150℃の温度で乾燥され、溶媒(媒体)を蒸発させてコーティングを固定し、そしてプレートの扱いを可能にし、結果として一般に約1〜5μmの厚さを有する乾燥したコーティングが得られ、次いで(先に記載したように)従来の高温のセラミック化サイクルが行われ、層の焼成は基材の変換を伴い、得られるナノスケールの層は一般に約10〜100nm、特には約20〜50nmの厚さを有する。
【0022】
得られたナノスケールの層(例えば、本発明による好ましい二酸化チタンのナノスケールの層)は、裸のガラスセラミックよりも高い反射の特徴(又は反射率)(例えば、裸のガラスセラミックに対して約5〜50ポイントの可視領域における反射の増加)を有する。懸念されることに反して、ガラスセラミックと本発明によって規定されるナノスケールの層との間の如何なる相互作用も、ガラスセラミックの表面を乱したり改質したりすることはない(脆化、引張応力、結晶状態の変化、熱サイクル又は熱耐久性の改質など)。プロセスの見地から言えば、堆積される組成物は、従来のエナメルと異なるものではなく、既存の製造ラインと完全に適合している。特には、組成物は、標準的なプレスと繊維を用いたスクリーン印刷によって適用することができ、追加の熱処理を必要としない。さらに、それはエナメルの欠点を有していない(装飾面を弱くすることはなく、厚さの制御を気にしなくてもよく、引裂のリスクもない等)。マグネトロンスパッタリングによって堆積された薄層と比較して、この組成物はより経済的であり、有利には電気絶縁性のタッチセンサー式の制御機器とともに使用することができる。この組成物はまた、幾つかのタイプの加熱に関して見合わせられる塗料やマグネトロンスパッタリングされた層とは異なり、すべてのタイプの加熱と適合する(特には、それは放射加熱エレメントの最大700℃の高温に耐え、誘導コイルの磁場等にも適している)。この組成物はまた、特に塗料とは異なり、(ヒーターの領域を含む)プレートの任意の領域に堆積させることができる。
【0023】
得られた層は、優れた耐老化性及び優れた熱衝撃耐性、(エナメルよりも)優れた機械強度特性、優れた耐摩耗性、及び優れた耐汚染性などを有し、ガラスセラミックプレートの所望の特性と一致している。それはまた、化学的攻撃や汚染に対して従来のプレートと同じ抵抗性を有する。本発明によるプレートはまた、光学的特性、安全性特性等の観点における要件も満足する。適切な場合には、1つ又は複数の結晶相の存在が観測され、特にはナノスケールの層がTiO2に基づいている場合には、アナターゼ型の1つ又は複数の結晶相の存在が、得られる層中に観測される(アナターゼは場合によりナノスケールの層の唯一の結晶相である)。
【0024】
1つの特に好ましい実施態様では、本発明によるプレートは、本発明によって規定される層でコーティングされた不透明なガラスセラミック(例えば、EurokeraによってKERABLACKの名称で販売されているプレート)に基づいている。この場合には、プレートは、コーティングされた場所に、従来のエナメルの場合や干渉効果を作り出すエナメルの場合よりもはるかに明るい高度に金属化された鏡面の外観を有することが観察される。
【0025】
本発明によって規定される層でコーティングされた透明なガラスセラミック(例えば、EurokeraによってKERABISCUIT又はKERAVANILLAの名称で販売されているプレート)又は半透明なガラスセラミック(例えば、EurokeraによってKERAWHITEの名称で販売されているプレート)に基づくプレートの場合には、このプレートは、(上述の理由によって)マグネトロンスパッタリングされた層でコーティングされた透明又は半透明なプレートに代わる有利なものを構成し、得られる効果、特に不透明な(特には黒色の)塗料のパスと組み合わせて得られる効果は、金属化されること又は光沢のあること、適切な場合には真珠層のようであること(又は真珠光沢のあること)である。透明又は半透明なガラスセラミックに基づくプレートの場合には、本発明によって規定される層は、特には、下にある部材(例えば、加熱エレメント及び場合により表示器)を、それらが使用されていない場合に少なくとも部分的にマスクし、一方で、依然としてそれらが使用中の場合には加熱エレメント及び場合により表示器を感知できることを意図することができる。
【0026】
本発明によって規定される層は、プレート上にただ1つのコーティングを構成することもできるし、又は先に記載したように他の層と組み合わせることもできる。特には、この層は、少なくとも1つの不透明な塗料層とともに使用することができ(透明なガラスセラミックのための好ましい実施態様及び半透明又は黒色のガラスセラミックの場合に高い光沢の効果を与える実施態様)、この塗料層は好ましくは(使用位置における)プレートの裏面上にある。
【0027】
塗料層又は必要に応じて本発明によるナノスケールの層と組み合わされた塗料層は、有利には、高温に耐えかつ色の安定性及びプレートとの接着を与え、そしてプレートの機械的性質に影響を及ぼすことなくそのようにするよう選択される。有利には、塗料層は350℃よりも高い劣化温度を有し、一般的には1つ又は複数の樹脂(例えば、シリコーン樹脂、特には少なくとも1つのアルキド樹脂を組み込むことによって改質されたもの、又はポリイミド、ポリアミド、ポリフッ化及び/又はポリシロキサン樹脂、例えば、Dow Corning(登録商標)樹脂804、805、806、808、840、249、409HS及び418HS、RhodiaのRHODORSIL(登録商標)6405及び6406、General Electric SiliconeのTRIPLUS(登録商標)及びWacker Chemie GmbHのSILRES(登録商標)604など)に基づいており、必要に応じて、それらは(例えば、1つ又は複数の顔料及び染料とともに)充填され、任意選択で粘度を調整するよう希釈され、希釈剤は、必要に応じて、以降の焼成の際に除去される。各塗料層の厚さは、1〜100μm(特には5〜50μm)であることができ、塗料層は、任意の好適な技術、例えば、ブラシ堆積、ドクターブレード堆積、吹き付け、静電堆積、浸漬、カーテンコーティング、スクリーン印刷などによって適用することができる。好ましくは、本発明によれば、塗料層は、スクリーン印刷によって堆積され、必要に応じて、続いて乾燥される。
【0028】
本発明によって規定される層はまた、少なくとも1つのエナメル層と組み合わせることができる。驚くべきことに、本発明による層と重ねたエナメル(エナメルが層上に堆積されるか又は層がエナメル上に堆積される)は、2つのエナメル層の重ね合わせとは異なり、剥がれ落ちず、これは2つのエナメル層の重ね合わせでは達成できない。エナメルは、ガラスセラミックをコーティングするのに従来用いられているすべてのエナメルから選択することができ、一般的には少なくとも1つのガラスフリットと顔料、さらにはそれを適用可能にする媒体を含み、一般的に及び好ましくは、本発明によれば、スクリーン印刷によって適用される。
【0029】
上で明らかにしたように、したがって、本発明によって規定されるナノスケールの層は、特に有利には、本発明によれば、別の層、例えば、エナメル又は塗料層のための下層としての役割を果たすことができ、特には場合により、例えば、厚さを増加させることを可能にし、2つのタイプの装飾を並置することを可能にし、持続した光沢の効果を与えることを可能にする。
【0030】
本発明によって規定される層は、プレートの上面又は底面上に堆積することができる。必要に応じてナノスケールの層と組み合わせて用いられる他の1つ又は複数の層は、プレートの同じ面(ナノスケールの層の上か又は下)又は反対側の面に適用することができる。ナノスケールの層が下層として用いられる場合には、ナノスケールの層は、例えば、1つ又は複数の空いた領域又は予備の領域(すなわち、例えばスクリーン印刷堆積技術によって残った領域)が任意選択で提供されるか又は作られる1つ又は複数の領域において第1の層として適用することができ、この空いた領域及び/又は第1の層は、少なくとも1つの第2の層でコーティングして、対比領域又はより顕著な効果を形成するようにすることができる。
【0031】
ここで注目すべきは、本発明によるナノスケールの層に対する追加の層の数に応じて、これら追加の層は、セラミック化の前及び/又は後に(すなわち、セラミック化と同時に又はそれに続いて)連続的に堆積することができ、一般にはそれぞれの堆積に続いて熱処理が行われることである。さらに注目すべきは、本発明による層は、本発明によって規定されるように、好ましくはセラミック化の前に堆積されるが、必要に応じて、セラミック化の後に及び/又はスクリーン印刷以外の方法によって堆積することもできることである。
【0032】
したがって、本発明によるプレートは、必要に応じて、ガラスセラミックのための他の(従来の)コーティングと組み合わせて、新規の装飾及び魅力的な効果(対比効果、真珠層のような効果など)を作り出すことができ、装飾は場合により薄く、あるいは規則的であり(網目構造など)、あるいは不連続的又は連続的などであり、簡単に作り出され、通常求められない特性に関して悪影響を及ぼさない。
【0033】
本発明によるプレートは、必要に応じて、1つ又は複数の追加の機能的又は装飾的な部材(フレーム、1つ又は複数のコネクター、1つ又は複数のケーブル、1つ又は複数の制御要素、1つ又は複数の表示器、例えば、「7セグメント」発光ダイオードと呼ばれるもの、タッチセンサー式の制御機器及びデジタル表示を備えた電子制御パネルなど)を備える(又はそれと結合する)ことができる。本発明によるプレートは、必要に応じて、使用者の側から装置の内部をマスクすることを目的とした中間複合体なしに、1つ又は複数の加熱エレメントがその内側に配置された絶縁支持体の上に取り付けることができる。
【0034】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つのプレート(例えば、調理器具及びはめ込み式のホットプレート)を含む高温を維持する機器及び/又は調理機器(又は装置)に関する。本発明は、1つのホブ又はプレートを有する調理機器と複数のホブを有する機器の両方を包含し、これらホブのそれぞれは1つ又は複数のヒーターを有する。「ヒーター」という用語は、調理の位置を意味すると解される。本発明はまた、その1つ又は複数のホブが幾つかのタイプのヒーターを有するハイブリッド調理機器にも関する。さらに、本発明は、調理器具又はレンジ台上面のためのホブの製造には限定されない。本発明によって製造されるプレートはまた、温度の変動に対してあまり影響を受けないことが必要とされる他のプレート(煙突の挿入物、防火壁など)であることもできる。
【0035】
以下の例は、本発明を例示するものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0036】
2つの滑らかな面を有する黒色の不透明なガラスセラミックプレートを、例えば、仏国特許出願公開第2657079号明細書に記載されている組成物を有するガラスから作製した。
【0037】
このガラスを、ガラスリボンを圧延できるような量において約1600〜1750℃で溶融し、それから例えば56.5cm×56.5cm×0.4cmの最終寸法を有するリボンガラスプレートを切断した。
【0038】
これらのプレートの上面に、スクリーン印刷によって、二酸化チタンの前駆体である有機金属チタン化合物(例えば、チタンテトライソプロパノラート)と、有機バインダーと、グリコールエーテル及びグリコールアセテートに基づく希釈媒体とに基づくスクリーン印刷可能な安定なゲルの形態の組成物を、従来のポリエステルのスクリーン印刷用繊維を用いて、例えば、ヒーター、表示器及び装飾領域を表す場所にコーティングした。
【0039】
次いで、プレートを約100〜150℃で乾燥し、乾燥後の層の厚さは例えば2μmであり、次いで仏国特許出願公開第2657079号明細書に記載されているサイクルに従ってセラミックのトレイ上でそれをセラミック化した。
【0040】
満足のいく新規の美的外観を有するガラスセラミックプレートが得られ、このプレートは、調理器具の下にある構造部材を隠す不透明な艶のない黒色の背景領域を有し、(場合により熱処理によって導入される不純物を含む)得られた二酸化チタンのナノスケールの層によって形成された光沢のある外観(例えば、むしろ銀色の鏡の外観)のパターンを含み、このプレートは、下にある部材を使用していない場合にはそれらを隠し、一方で、それらを使用している場合にはそれらを見ることを可能にした。
【0041】
本発明によるプレートは、特には、調理器具又はレンジ台上面のための新規範囲のホブを製造するのに有利に使用することができる。