(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弁開度制御手段は、目標過冷却度設定手段によって設定された目標過冷却度に基づいて弁開度に関するフィードフォワード目標値を算出するフィードフォワード目標値算出手段と、過冷却度算出手段によって算出された過冷却度および目標過冷却度設定手段によって設定された目標過冷却度に基づいて弁開度に関するフィードバック目標値を算出するフィードバック目標値算出手段と、を有し、フィードフォワード目標値算出手段によって算出されたフィードフォワード目標値とフィードバック目標値算出手段によって算出されたフィードバック目標値に基づいて膨張弁の弁開度を制御する
ことを特徴とする請求項2記載の車両用空気調和装置。
過冷却度算出手段によって算出された過冷却度、膨張弁の弁開度および過熱度算出手段によって算出された過熱度に基づいて冷媒回路に封入された冷媒の量が適正の範囲内か否かを判定する冷媒封入量判定手段を備えた
ことを特徴とする請求項4記載の車両用空気調和装置。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1乃至
図10は、本発明の第1実施形態を示すものである。
【0034】
本発明の車両用空気調和装置は、
図1に示すように、車室内に設けられた空調ユニット10と、車室内および車室外に亘って構成された冷媒回路20と、を備えている。
【0035】
空調ユニット10は、車室内に供給する空気を流通させるための空気流通路11を有している。空気流通路11の一端側には、車室外の空気を空気流通路11に流入させるための外気吸入口11aと、車室内の空気を空気流通路11に流入させるための内気吸入口11bと、が設けられている。また、空気流通路11の他端側には、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の足元に向かって吹き出させるフット吹出口11cと、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の上半身に向かって吹き出させるベント吹出口11dと、空気流通路11を流通する空気を車両のフロントガラスの車室内側の面に向かって吹き出させるデフ吹出口11eと、が設けられている。
【0036】
空気流通路11内の一端側には、空気を空気流通路11の一端側から他端側に向かって流通させるためのシロッコファン等の室内送風機12が設けられている。この室内送風機12は電動モータ12aによって駆動される。
【0037】
空気流通路11の一端側には、外気吸入口11a及び内気吸入口11bの一方を開放して他方を閉鎖することが可能な吸入口切換えダンパ13が設けられている。この吸入口切換えダンパ13は電動モータ13aによって駆動される。吸入口切換えダンパ13によって内気吸入口11bが閉鎖されて外気吸入口11aが開放されると、外気吸入口11aから空気が空気流通路11に流入する外気供給モードとなる。また、吸入口切換えダンパ13によって外気吸入口11aが閉鎖されて内気吸入口11bが開放されると、内気吸入口11bから空気が空気流通路11に流入する内気循環モードとなる。さらに、吸入口切換えダンパ13が外気吸入口11aと内気吸入口11bとの間に位置し、外気吸入口11aと内気吸入口11bがそれぞれ開放されると、吸入口切換えダンパ13による外気吸入口11a及び内気吸入口11bのそれぞれの開口率に応じた割合で、外気吸入口11aと内気吸入口11bとから空気が空気流通路11に流入する内外気吸入モードとなる。
【0038】
空気流通路11の他端側のフット吹出口11c、ベント吹出口11d及びデフ吹出口11eのそれぞれには、各吹出口11c,11d,11eを開閉するための吹出口切換えダンパ13b,13c,13dが設けられている。この吹出口切換えダンパ13b,13c,13dは、図示しないリンク機構によって連動するように構成され、電動モータ13eによってそれぞれ開閉される。ここで、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11cが開放されてベント吹出口11dが閉鎖され、デフ吹出口11eが僅かに開放されると、空気流通路11を流通する空気の大部分がフット吹出口11cから吹き出されると共に残りの空気がデフ吹出口11eから吹き出されるフットモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが閉鎖されてベント吹出口11dが開放されると、空気流通路11を流通する空気の全てがベント吹出口11dから吹き出されるベントモードとなる。さらに、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが開放されてデフ吹出口11eが閉鎖されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びベント吹出口11dから吹き出されるバイレベルモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが閉鎖されてデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がデフ吹出口11eから吹き出されるデフモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってベント吹出口11dが閉鎖されてフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びデフ吹出口11eから吹き出されるデフフットモードとなる。尚、バイレベルモードにおいては、フット吹出口11cから吹き出される空気の温度がベント吹出口11dから吹き出される空気の温度よりも高温となる温度差が生じるような、空気流通路11、フット吹出口11c、ベント吹出口11d、後述する吸熱器及び放熱器の互いの位置関係や構造となっている。
【0039】
室内送風機12の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を冷却及び除湿するための吸熱器14が設けられている。また、吸熱器14の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を加熱するための放熱器15が設けられている。吸熱器14及び放熱器15は、それぞれ内部を流通する冷媒と空気流通路11を流通する空気とを熱交換させるためのフィンとチューブ等からなる熱交換器である。
【0040】
吸熱器14と放熱器15との間の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気の放熱器15において加熱される割合を調整するためのエアミックスダンパ16が設けられている。エアミックスダンパ16は電動モータ16aによって駆動される。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側に位置することによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が減少し、空気流通路11の放熱器15以外の部分側に移動させることによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が増加する。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側を閉鎖して放熱器15以外の部分を開放した状態で開度が0%となり、空気流通路11の放熱器15の上流側を開放し、放熱器15以外の部分を閉鎖した状態で開度が100%となる。
【0041】
冷媒回路20は、前記吸熱器14、前記放熱器15、冷媒を圧縮するための圧縮機21、冷媒と車室外の空気とを熱交換するための室外熱交換器22、放熱器15および室外熱交換器22の少なくとも放熱器15から流出する冷媒と吸熱器14から流出する冷媒とを熱交換させるための内部熱交換器23、暖房運転時に室外熱交換器22に流入する冷媒を減圧するための膨張手段と除湿冷房運転時に放熱器における冷媒の凝縮圧力を制御するための凝縮圧力調整手段とを有する第1制御弁24と、吸熱器14における冷媒の蒸発圧力を調整するための蒸発圧力調整手段としての機能を有する第2制御弁25と、第1〜第3電磁弁26a,26b,26c、第1〜第2逆止弁27a,27b、膨張弁28、気体の冷媒と液体の冷媒を分離して液冷媒が圧縮機21に吸入されることを防止するためのアキュムレータ29を有し、これらは銅管やアルミニウム管によって接続されている。
【0042】
具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側に放熱器15の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20aが設けられている。また、放熱器15の冷媒流出側には、第1制御弁24の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20bが設けられている。第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の一端側が接続されることによって、冷媒流通路20cが設けられている。また、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の他端側が接続されることによって、冷媒流通路20dが設けられている。室外熱交換器22の他端側には、冷媒流通路20dと並列に、圧縮機21の冷媒吸入側が接続されることによって、冷媒流通路20eが設けられている。冷媒流通路20eには、冷媒流通方向の上流側から順に、第1電磁弁26a、アキュムレータ29が設けられている。冷媒流通路20bには、内部熱交換器23の高圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20fが設けられている。冷媒流通路20fには、冷媒流通方向の上流側から順に、第2電磁弁26b、第1逆止弁27aが設けられている。内部熱交換器23の高圧冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側接続されることによって、冷媒流通路20gが設けられている。冷媒流通路20gには、膨張弁28が設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、内部熱交換器23の低圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20hが設けられている。冷媒流通路20hには、第2制御弁25が設けられている。内部熱交換器23の低圧冷媒流出側には、冷媒流通路20eの第1電磁弁26aとアキュムレータ29との間が接続されることによって、冷媒流通路20iが設けられている。室外熱交換器22の一端側には、冷媒流通路20cと並列に、冷媒流通路20fの第1逆止弁27aの冷媒流通方向の下流側が接続されることによって、冷媒流通路20jが設けられている。冷媒流通路20jには、冷媒流通方向の上流側から順に、第3電磁弁26c、第2逆止弁27bが設けられている。
【0043】
圧縮機21及び室外熱交換器22は、車室外に配置されている。また、圧縮機21は電動モータ21aによって駆動される。室外熱交換器22には、車両の停止時に車室外の空気と冷媒とを熱交換させるための室外送風機30が設けられている。室外送風機30は、電動モータ30aによって駆動される。
【0044】
第1制御弁24には、膨張手段側の冷媒流路と凝縮圧力調整手段側の冷媒流路がそれぞれ形成されている。膨張手段側および凝縮圧力調整手段側の冷媒流路は、それぞれ冷媒流路の開度を調整する弁によって完全に閉鎖可能に構成されている。
【0045】
さらに、車両用空気調和装置は、車室内の温度及び湿度を設定された温度及び設定された湿度とする制御を行うためのコントローラ40を備えている。
【0046】
コントローラ40は、CPU、ROM,RAMを有している。コントローラ40は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0047】
コントローラ40の出力側には、
図2に示すように、室内送風機12駆動用の電動モータ12a、吸入口切換えダンパ13駆動用の電動モータ13a、吹出口切換えダンパ13b,13c,13d駆動用の電動モータ13e、エアミックスダンパ16駆動用の電動モータ16a、圧縮機21駆動用の電動モータ21a、第1制御弁24、第2制御弁25、第1〜第3電磁弁26a,26b,26c、室外送風機30駆動用の電動モータ30aが接続されている。
【0048】
コントローラ40の入力側には、
図2に示すように、車室外の温度Tamを検出するための外気温度センサ41、車室内の温度Trを検出するための内気温度センサ42、日射量Tsを検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ43、冷媒流通路20bを流通する高圧冷媒の温度Thpを検出するための高圧冷媒温度センサ44、冷媒流通路20bを流通する高圧冷媒の圧力Phpを検出するための高圧冷媒圧力センサ45、圧縮機21に吸入される冷媒流通路20eを流通する低圧冷媒の温度Tlpを検出するための低圧冷媒温度センサ46、圧縮機21に吸入される冷媒流通路20eを流通する冷媒の圧力Plpを検出するための低圧冷媒圧力センサ47、吸熱器14における冷媒の蒸発温度Teを検出するための吸熱器温度センサ48、目標設定温度Tsetや運転の切換えに関するモードを設定するための操作部49、運転状態や車室内の温度Tr等を表示するための表示部50が接続されている。
【0049】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転が行われる。以下、それぞれの運転について説明する。
【0050】
冷房運転及び除湿冷房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側の流路を閉鎖するとともに、凝縮圧力調整手段側の流路を開放し、第3電磁弁26cを開放するとともに、第1及び第2電磁弁26a,26bを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図3に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20d、室外熱交換器22、冷媒流通路20j,20f、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20i,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、冷房運転において、室外熱交換器22において放熱して吸熱器14において吸熱する。除湿冷房運転として
図3の一点鎖線に示すようにエアミックスダンパ16が開放されると、冷媒回路20を流通する冷媒は放熱器15においても放熱する。
【0051】
このとき、冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却され、車室内の温度を目標設定温度Tsetとするために吹出口11c,11d,11eから吹き出すべき空気の温度である目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。
目標吹出温度TAOは、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、日射量Ts等の環境条件を、外気温度センサ41、内気温度センサ42、日射センサ43等によって検出し、検出された環境条件と目標設定温度Tsetに基づいて算出されるものである。
【0052】
また、除湿冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換して冷却されることによって除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、放熱器15おいて放熱する冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0053】
暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流路を開放するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第1電磁弁26aを開放するとともに、第2および第3電磁弁26b,26cを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図4に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、室外熱交換器22において吸熱する。
【0054】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0055】
第1除湿暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流路を開放するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第1及び第2電磁弁26a,26bを開放するとともに、第3電磁弁26cを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図5に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20bを順に流通する。冷媒流通路20bを流通する冷媒の一部は、第1制御弁24、冷媒流通路20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。また、冷媒流通路20bを流通するその他の冷媒は、冷媒流通路20f、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20iの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14及び室外熱交換器22において吸熱する。
【0056】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0057】
第2除湿暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側および凝縮圧力調整手段側の両方の冷媒流路を閉鎖し、第2電磁弁26bを開放するとともに、第1及び第3電磁弁26a,26cを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図6に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20f、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20i,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0058】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、前記第1除湿暖房運転と同様に、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。
【0059】
コントローラ40は、オートエアコンスイッチがオンの状態に設定されている場合に、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転を、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、車室外の湿度、車室内の湿度Th、日射量Ts等の環境条件に基づいて切換える運転切換え制御処理を行う。
【0060】
また、コントローラ40は、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによって吹出口11c,11d,11eのモードを切換えるとともに、吹出口11c,11d,11eから吹出される空気の温度を目標吹出温度TAOとするために、エアミックスダンパ16の開度を制御する。
【0061】
また、コントローラ40は、運転切換え制御処理によって切り換えられる各運転において、目標吹出温度TAOに応じてフットモード、ベントモード、バイレベルモードの切り替えを行う。具体的には、目標吹出温度TAOが例えば40℃以上など、高温となる場合にフットモードに設定する。また、コントローラ40は、目標吹出温度TAOが例えば25℃未満など、低温となる場合にベントモードに設定する。さらに、コントローラ40は、目標吹出温度TAOが、フットモードが設定される目標吹出温度TAOとベントモードが設定される目標吹出温度TAOとの間の温度の場合にバイレベルモードに設定する。
【0062】
また、コントローラ40は、暖房運転および第1除湿暖房運転において、運転状態に応じて第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を制御する膨張手段制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0063】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、運転が暖房運転または除湿暖房運転であるか否かを判定する。暖房運転または除湿暖房運転であると判定した場合にはステップS2に処理を移し、暖房運転または除湿暖房運転であると判定しなかった場合には膨張手段制御処理を終了する。
【0064】
(ステップS2)
ステップS1において運転が暖房運転または除湿暖房運転であると判定した場合に、ステップS2においてCPUは、低圧冷媒温度センサ46の検出温度Tlpおよび低圧冷媒圧力センサ47の検出圧力Plpに基づいて冷媒の過熱度SHを算出する。
【0065】
(ステップS3)
ステップS3においてCPUは、ステップS2において算出された過熱度SHが所定値以上か否かを判定する。過熱度SHが所定値以上と判定した場合にはステップS9に処理を移し、過熱度SHが所定値以上と判定しなかった場合にはステップS4に処理を移す。
【0066】
(ステップS4)
ステップS3において過熱度SHが所定値以上と判定しなかった場合に、ステップS4においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて目標過冷却度SCtを設定する。例えば、目標吹出温度TAOが所定値(例えば、60℃)以上の場合には第1目標過冷却度SCt1(例えば、15℃)に設定し、目標吹出温度TAOが所定値未満の場合には第2目標過冷却度SCt2(例えば、12℃)に設定する。
【0067】
(ステップS5)
ステップS5においてCPUは、ステップS4において設定された目標過冷却度SCtに対して、室内送風機12の送風量Gaに基づく補正量H1および冷媒回路20を流通する冷媒の流量Grに基づく補正量H2を算出する。
具体的には、室内送風機12の送風量Gaが所定風量以上の場合には補正量H1をゼロとし、送風量Gaが所定風量未満の場合には送風量Gaに応じて過冷却度SCが小さくなる補正量H1(例えば、−10≦H1≦0)とする。また、冷媒回路20の高圧側を流通する冷媒の流量Grが所定流量以上の場合には流量Grに応じて過冷却度が大きくなる補正量H2(例えば、0≦H2≦5)とし、流量Grが所定流量未満の場合には流量Grの減少に応じて過冷却度SCが小さくなる補正量H2(例えば、−5≦H2<0)とする。冷媒回路20の高圧側を流通する冷媒の流量Grは、冷媒回路20の高圧側の圧力の上昇に従って多くなり、圧力の下降に従って少なくなる関係にあることから、高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて算出される。
【0068】
(ステップS6)
ステップS6においてCPUは、目標過冷却度SCtに補正量H1,H2を加えることで補正目標過冷却度SCtc(SCtc=SCt−(H1+H2))を算出する。
【0069】
(ステップS7)
ステップS7においてCPUは、高圧冷媒温度センサ44の検出温度Thpおよび高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて冷媒の過冷却度SCを算出する。
【0070】
(ステップS8)
ステップS8においてCPUは、過冷却度SCが補正目標過冷却度SCtcとなるように第1制御弁24の弁開度を制御し、膨張手段制御処理を終了する。
【0071】
(ステップS9)
ステップS3において過熱度SHが所定値以上と判定した場合に、ステップS9においてCPUは、低圧冷媒の過熱度SHを目標過熱度SHtとなるように第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を制御する過熱度制御処理を行い、膨張手段制御処理を終了する。
【0072】
また、コントローラ40は、除湿冷房運転において、吸熱器14の吸熱能力および放熱器15の放熱能力を制御するための除湿冷房能力制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図8のフローチャートを用いて説明する。
【0073】
(ステップS11)
ステップS11においてCPUは、運転が除湿冷房運転であるか否かを判定する。除湿冷房運転であると判定した場合にはステップS12に処理を移し、除湿冷房運転であると判定しなかった場合には除湿冷房能力御処理を終了する。
【0074】
(ステップS12)
ステップS11において除湿冷房運転であると判定した場合に、ステップS12においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて高圧冷媒の目標圧力Phptを算出する。
【0075】
(ステップS13)
ステップS13においてCPUは、高圧冷媒の目標圧力Phptと高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側の弁開度を制御する。
具体的には、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段の弁開度を、全閉を除く大と小の2段階を切換えることによって行う。この場合、弁開度を小から大に切換えると高圧冷媒の圧力Phpは低下し、弁開度を大から小に切換えると高圧冷媒の圧力Phpが上昇する
【0076】
(ステップS14)
ステップS14においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて吸熱器14における冷媒の目標蒸発温度Tetを算出する。
【0077】
(ステップS15)
ステップS15においてCPUは、吸熱器14における冷媒の蒸発温度Teが目標蒸発温度Tetとなるように、吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて圧縮機21の電動モータ21aの回転数を制御し、除湿冷房能力制御処理を終了する。
【0078】
また、コントローラ40は、第1除湿暖房運転において、運転状態に応じて第2制御弁25の弁開度を制御する蒸発器温度制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図9のフローチャートを用いて説明する。
【0079】
(ステップS21)
ステップS21においてCPUは、運転状態が第1除湿暖房運転か否かを判定する。第1除湿運転と判定した場合にはステップS22に処理を移し、第1除湿暖房運転と判定しなかった場合には蒸発器温度制御処理を終了する。
【0080】
(ステップS22)
ステップS21において第1除湿暖房運転であると判定した場合に、ステップS22においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて吸熱器14における冷媒の目標蒸発温度Tetを算出する。
【0081】
(ステップS23)
ステップS23においてCPUは、目標蒸発温度Tetと吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて第2制御弁25の弁開度を制御する。
具体的には、目標蒸発温度Tetよりも吸熱器温度センサ48の検出温度Teが低い場合には第2制御弁25の弁開度を小さくし、目標蒸発温度Tetよりも検出温度Teが高い場合には弁開度を大きくする。
【0082】
また、コントローラ40は、暖房運転および第1除湿暖房運転において、冷媒回路20に封入された冷媒量が適正か否かを判定する冷媒量判定処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図10のフローチャートを用いて説明する。
【0083】
(ステップS31)
ステップS31においてCPUは、車室外の温度Tam、室内送風機12の送風量Ga、圧縮機21の電動モータ21aの回転数Nc等、冷媒回路20の冷媒量を判定可能な熱負荷条件であるか否かを判定する。冷媒量を判定可能な熱負荷条件であると判定した場合にはステップS32に処理を移し、冷媒量を判定可能な熱負荷条件であると判定しなかった場合には冷媒量判定処理を終了する。
【0084】
(ステップS32)
ステップS31において冷媒量を判定可能な熱負荷条件であると判定した場合に、ステップS32においてCPUは、低圧冷媒温度センサ46の検出温度Tlpおよび低圧冷媒圧力センサ47の検出圧力Plpに基づいて冷媒の過熱度SHを算出する。
【0085】
(ステップS33)
ステップS33においてCPUは、高圧冷媒温度センサ44の検出温度Thpおよび高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて冷媒の過冷却度SCを算出する。
【0086】
(ステップS34)
ステップS34においてCPUは、ステップS32において算出された冷媒の過熱度SHと、ステップS33において算出された冷媒の過冷却度SCと、第1制御弁24の膨張手段側の弁開度と、に基づいて冷媒回路20の冷媒量が適正か否かを判定する。冷媒量が適正と判定した場合には冷媒量判定処理を終了し、冷媒量が適正と判定しなかった場合にはステップS35に処理を移す。
冷媒回路20の冷媒量が適正か否かの判定は、ステップS32において算出された冷媒の過熱度SHと、ステップS33において算出された冷媒の過冷却度SCと、第1制御弁24の膨張手段側の弁開度と、がそれぞれ適正の範囲内であるか否かを判断することによって行われる。
【0087】
(ステップS35)
ステップS34において冷媒量が適正と判定しなかった場合に、ステップS35においてCPUは、冷媒回路20の冷媒量が不足または過剰である旨を表示部50に表示して冷媒量判定処理を終了する。
【0088】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、暖房運転および除湿暖房運転において、目標吹出温度TAOが所定温度以上のときの目標過冷却度SCtを、目標吹出温度TAOが所定温度未満のときの目標過冷却度SCt2よりも大きい目標過冷却度SCt1に設定し、室内送風機12の送風量Gaが所定風量未満のときに、室内送風機12の送風量Gaが所定風量以上のときに補正される目標過冷却度SCtcよりも過冷却度SCが小さくなるように設定された目標過冷却度SCtを補正している。これにより、室内送風機12の送風量Gaが小さいときに冷媒の過冷却度SCを小さくすることができるので、放熱器15の冷媒流通方向上流側を流通する冷媒と冷媒流通方向下流側を流通する冷媒との間の温度差を小さくすることができるので、放熱器15において熱交換された後の空気の温度にばらつきが生じることを防止することによって、車室内に吹出す空気の温度を確実に制御することが可能となる。
【0089】
また、冷媒回路20を流通する冷媒の流量Grが所定流量以上のときに、冷媒の流量Grが所定流量未満のときに補正される目標過冷却度SCtよりも過冷却度SCが大きくなるように設定された目標過冷却度SCtを補正している。これにより、冷媒の流量Grが多いときに、第1制御弁24の上流側の冷媒の過冷却度を大きくすることで、放熱器15の冷媒流入側と冷媒流出側との間のエンタルピ差を大きくすることができるので、加熱能力を向上させることが可能となり、さらに、COP(成績係数)を大きくしてヒートポンプの運転効率を向上させることが可能となる。
【0090】
また、高圧冷媒温度センサ44の検出温度Thpおよび高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて冷媒の過冷却度SCを算出し、算出した過冷却度SCに基づいて、第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を制御している。これにより、冷媒の過冷却度SCを確実に目標過冷却度SCtに追従させることができ、車室内の環境を良好な状態に保持することが可能となる。
【0091】
また、低圧冷媒温度センサ46の検出温度Tlpおよび低圧冷媒圧力センサ47の検出圧力Plpに基づいて低圧冷媒の過熱度SHを算出し、算出された過熱度SHが所定値以上のときには、低圧冷媒の過熱度SHを目標過熱度SHtとするように第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を制御するようにしている。これにより、過冷却度SCを大きくすることによって、冷媒回路20の低圧側の冷媒量が不足して過熱度SHが過大となることを防止することができるので、圧縮機21の故障等の不具合の発生を防止することが可能となる。
【0092】
また、算出された冷媒の過冷却度SC、第1制御弁24の膨張手段側の弁開度、および、算出された低圧冷媒の過熱度SHに基づいて冷媒回路20に封入された冷媒の封入量が適正であるか否かを判定するようにしている。これにより、冷媒回路20に封入された冷媒の漏洩を容易に発見することができるので、故障に対する対応を迅速に行うことが可能となる。
【0093】
図11は本発明の第2実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0094】
本実施形態の車両用空気調和装置は、第1実施形態と同様の構成において、コントローラ40が
図11のフローチャートに示すように膨張手段制御処理を行う。
【0095】
(ステップS41)
ステップS41においてCPUは、運転が暖房運転または除湿暖房運転であるか否かを判定する。暖房運転または除湿暖房運転であると判定した場合にはステップS42に処理を移し、暖房運転または除湿暖房運転であると判定しなかった場合には膨張手段制御処理を終了する。
【0096】
(ステップS42)
ステップS41において運転状態が暖房運転または除湿暖房運転であると判定した場合に、ステップS42においてCPUは、低圧冷媒温度センサ46の検出温度Tlpおよび低圧冷媒圧力センサ47の検出圧力Plpに基づいて冷媒の過熱度SHを算出する。
【0097】
(ステップS43)
ステップS43においてCPUは、ステップS2において算出された過熱度SHが所定値以上か否かを判定する。過熱度SHが所定値以上と判定した場合にはステップS51に処理を移し、過熱度SHが所定値以上と判定しなかった場合にはステップS44に処理を移す。
【0098】
(ステップS44)
ステップS43において過熱度SHが所定値以上と判定しなかった場合に、ステップS44においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて目標過冷却度SCtを設定する。例えば、目標吹出温度TAOが所定値(例えば、60℃)以上の場合には第1目標過冷却度SCt1(例えば、15℃)に設定し、目標吹出温度TAOが所定値未満の場合には第2目標過冷却度SCt2(例えば、12℃)に設定する。
【0099】
(ステップS45)
ステップS45においてCPUは、ステップS44において設定された目標過冷却度SCtに対して、室内送風機12の送風量Gaに基づく補正量H1および冷媒回路20を流通する冷媒の流量Grに基づく補正量H2を算出する。
具体的には、室内送風機12の送風量Gaが所定風量以上の場合には補正量H1をゼロとし、送風量Gaが所定風量未満の場合には送風量Gaに応じて過冷却度SCが小さくなる補正量H1(例えば、−10≦H1≦0)とする。また、冷媒回路20の高圧側を流通する冷媒の流量Grが所定流量以上の場合には流量Grに応じて過冷却度が大きくなる補正量H2(例えば、0≦H2≦5)とし、流量Grが所定流量未満の場合には流量Grの減少に応じて過冷却度SCが小さくなる補正量H2(例えば、−5≦H2<0)とする。冷媒回路20の高圧側を流通する冷媒の流量Grは、冷媒回路20の高圧側の圧力の上昇に従って多くなり、圧力の下降に従って少なくなる関係にあることから、高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて算出される。
【0100】
(ステップS46)
ステップS46においてCPUは、目標過冷却度SCtに補正量H1,H2を加えることで補正目標過冷却度SCtc(SCtc=SCt−(H1+H2))を算出する。
【0101】
(ステップS47)
ステップS47においてCPUは、ステップS46において設定された補正目標過冷却度SCtcに基づいて第1制御弁24の膨張手段側の弁開度に関するフィードフォワード目標値EXVtgtFFを算出する。
フィードフォワード目標値EXVtgtFFは、車室外の温度Tam、室内送風機12を駆動するための電動モータ12aの電圧BLV、圧縮機21を駆動する電動モータ21aの回転数Ncに基づいて算出される(EXVtgtFF=Ka×Tam+Kb×BLV+Kc×Nc+d、Ka,Kb,Kc,d:それぞれ予め設定された定数)。
【0102】
(ステップS48)
ステップS48においてCPUは、高圧冷媒温度センサ44の検出温度Thpおよび高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて冷媒の過冷却度SCを算出する。
【0103】
(ステップS49)
ステップS49においてCPUは、ステップS48において算出された冷媒の過冷却度SCに基づいて第1制御弁24の膨張手段側の弁開度に関するフィードバック目標値EXVtgtFBを算出する。
フィードバック目標値EXVtgtFBは、ステップS35において算出されたフィードフォワード目標値EXVtgtFFおよびステップS36において算出された冷媒の過冷却度SCに基づいて算出される比例積分制御(PI制御)の出力値である(EXVtgtFB=EXVtgtfbp+EXVtgtfbi、EXVtgtfbp=Kp×(SCtgtFF−SC)、EXVtgtfbi=EXVtgtfbi_n−1+Kp/Ti×(SCtgtFF−SC)、Kp:比例ゲインとしての定数、Ti:積分時間、EXVtgtfbi_n−1:EXVtgtfbiの前回値)。
【0104】
(ステップS50)
ステップS50においてCUPは、ステップS47において算出されたフィードフォワード目標値EXVtgtFFおよびステップS49において算出されたフィードバック目標値EXVtgtFBに基づいて第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を制御し、膨張手段制御処理を終了する。
【0105】
(ステップS51)
ステップS43において過熱度SHが所定値以上と判定した場合に、ステップS51においてCPUは、低圧冷媒の過熱度SHを目標過熱度SHtとなるように第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を制御する過熱度制御処理を行い、膨張手段制御処理を終了する。
【0106】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置よれば、第1実施形態と同様に、室内送風機12の送風量Gaが小さいときに冷媒の過冷却度SCを小さくすることができるので、放熱器15の冷媒流通方向上流側を流通する冷媒と冷媒流通方向下流側を流通する冷媒との間の温度差を小さくすることができるので、放熱器15において熱交換された後の空気の温度にばらつきが生じることを防止することによって、車室内に吹出す空気の温度を確実に制御することが可能となる。
【0107】
また、目標過冷却度SCtcに基づいて第1制御弁24の膨張手段側の弁開度に関するフィードフォワード目標値EXVtgtFFを算出し、算出された過冷却度SCおよび設定された目標過冷却度SCtcに基づいて弁開度に関するフィードバック目標値EXVtgtFBを算出し、フィードフォワード目標値EXVtgtFFとフィードバック目標値EXVtgtFBに基づいて弁開度を制御している。これにより、車室内の温度および湿度をより確実に設定した温度および湿度とすることが可能となる。
【0108】
尚、前記実施形態では、圧縮機21から流出する冷媒が、暖房運転および第1除湿暖房運転時に、室外熱交換器22を一端側から他端側に向かって流通するようにしたものを示したがこれに限られるものではない。例えば、
図12に示すように、圧縮機21から流出する冷媒が、暖房運転および第1除湿暖房運転時に、室外熱交換器22を一端側から他端側に向かって流通するようにしてもよい。
【0109】
図12の車両用空気調和装置は、第1実施形態における冷媒流通路20cの代わりに、第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流出側と室外熱交換器22の他端側とを接続する冷媒流通路20kが設けられている。また、車両用空気調和装置は、第1実施形態における冷媒流通路20eの代わりに、室外熱交換器22の一端側と圧縮機21の冷媒吸入側とを接続する冷媒流通路20lが設けられている。
【0110】
以上のように構成された車両用空気調和装置において、放熱器15から流出する冷媒は、暖房運転および第1除湿暖房運転時に、第1実施形態の場合と異なり、室外熱交換器22を他端側から一端側に向かって流通する。その他の運転については、第1実施形態と同様に冷媒が流通する。
【0111】
また、前記実施形態では、暖房運転時に室外熱交換器22に流入する冷媒を減圧するための膨張手段と、除湿冷房運転時に放熱器における冷媒の凝縮圧力を調整するための凝縮圧力調整手段と、が一体に設けられた第1制御弁24を示したが、これに限られるものではない。例えば、膨張手段としての電子式膨張弁と、凝縮圧力調整手段としての凝縮圧力調整弁を互いに並列に室外熱交換器22の冷媒流通方向上流側に接続するようにしても前記実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0112】
また、前記実施形態では、室外熱交換器22の上流側に位置する第1制御弁24の膨張手段の弁開度を制御することによって、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度SCを制御するようにしたものを示したが、吸熱器14の上流側に位置する膨張弁28の代わりに電子式膨張弁を設け、この電子式膨張弁の弁開度を制御することによって、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度SCを制御するようにしてもよい。
【0113】
図13乃至
図29は、本発明の第3実施形態を示すものである。
【0114】
本発明の車両用空気調和装置は、
図13に示すように、車室内に設けられた空調ユニット10と、車室内および車室外に亘って構成された冷媒回路20と、を備えている。
【0115】
空調ユニット10は、車室内に供給する空気を流通させるための空気流通路11を有している。空気流通路11の一端側には、車室外の空気を空気流通路11に流入させるための外気吸入口11aと、車室内の空気を空気流通路11に流入させるための内気吸入口11bと、が設けられている。また、空気流通路11の他端側には、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の足元に向かって吹き出させるフット吹出口11cと、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の上半身に向かって吹き出させるベント吹出口11dと、空気流通路11を流通する空気を車両のフロントガラスの車室内側の面に向かって吹き出させるデフ吹出口11eと、が設けられている。
【0116】
空気流通路11内の一端側には、空気流通路11の一端側から他端側に向かって空気を流通させるためのシロッコファン等の室内送風機12が設けられている。
【0117】
空気流通路11の一端側には、外気吸入口11a及び内気吸入口11bの一方を開放して他方を閉鎖することが可能な吸入口切換えダンパ13が設けられている。吸入口切換えダンパ13によって内気吸入口11bが閉鎖されて外気吸入口11aが開放されると、外気吸入口11aから空気が空気流通路11に流入する外気供給モードとなる。また、吸入口切換えダンパ13によって外気吸入口11aが閉鎖されて内気吸入口11bが開放されると、内気吸入口11bから空気が空気流通路11に流入する内気循環モードとなる。さらに、吸入口切換えダンパ13が外気吸入口11aと内気吸入口11bとの間に位置し、外気吸入口11aと内気吸入口11bがそれぞれ開放されると、吸入口切換えダンパ13による外気吸入口11a及び内気吸入口11bのそれぞれの開口率に応じた割合で、外気吸入口11aと内気吸入口11bとから空気が空気流通路11に流入する内外気吸入モードとなる。
【0118】
空気流通路11の他端側のフット吹出口11c、ベント吹出口11d及びデフ吹出口11eのそれぞれには、各吹出口11c,11d,11eを開閉するための吹出口切換えダンパ13b,13c,13dが設けられている。この吹出口切換えダンパ13b,13c,13dは、図示しないリンク機構によって連動するように構成されている。ここで、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11cが開放されてベント吹出口11dが閉鎖され、デフ吹出口11eが僅かに開放されると、空気流通路11を流通する空気の大部分がフット吹出口11cから吹き出されると共に残りの空気がデフ吹出口11eから吹き出されるフットモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが閉鎖されてベント吹出口11dが開放されると、空気流通路11を流通する空気の全てがベント吹出口11dから吹き出されるベントモードとなる。さらに、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが開放されてデフ吹出口11eが閉鎖されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びベント吹出口11dから吹き出されるバイレベルモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが閉鎖されてデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がデフ吹出口11eから吹き出されるデフモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってベント吹出口11dが閉鎖されてフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びデフ吹出口11eから吹き出されるデフフットモードとなる。尚、バイレベルモードにおいては、フット吹出口11cから吹き出される空気の温度がベント吹出口11dから吹き出される空気の温度よりも高温となる温度差が生じるような、空気流通路11、フット吹出口11c、ベント吹出口11d、後述する吸熱器及び放熱器の互いの位置関係や構造となっている。
【0119】
室内送風機12の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を冷却及び除湿するための吸熱器14が設けられている。また、吸熱器14の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を加熱するための放熱器15が設けられている。吸熱器14及び放熱器15は、それぞれ内部を流通する冷媒と空気流通路11を流通する空気とを熱交換させるためのフィンとチューブ等からなる熱交換器である。
【0120】
吸熱器14と放熱器15との間の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気の放熱器15において加熱される割合を調整するためのエアミックスダンパ16が設けられている。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側に位置することによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が減少し、空気流通路11の放熱器15以外の部分側に移動させることによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が増加する。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側を閉鎖して放熱器15以外の部分を開放した状態で開度が0%となり、空気流通路11の放熱器15の上流側を開放し、放熱器15以外の部分を閉鎖した状態で開度が100%となる。
【0121】
冷媒回路20は、前記吸熱器14、前記放熱器15、冷媒を圧縮するための圧縮機21、冷媒と車室外の空気とを熱交換するための室外熱交換器22、暖房運転および第1除湿暖房運転時に室外熱交換器22に流入する冷媒を減圧するための膨張手段と除湿冷房運転時に放熱器15における冷媒の凝縮圧力を制御するための高圧冷媒流量調整弁としての凝縮圧力調整手段とを有し、膨張手段側または凝縮圧力調整手段側に冷媒流路を切換え可能な流量調整流路切換弁としての第1制御弁24と、吸熱器14における冷媒の蒸発圧力を調整するための低圧冷媒流量調整手段としての第2制御弁25と、第1〜第4電磁弁26a,26b,26c,26d、第1〜第2逆止弁27a,27b、膨張弁28、気体の冷媒と液体の冷媒を分離して液冷媒が圧縮機21に吸入されることを防止するためのアキュムレータ29を有し、これらは銅管やアルミニウム管によって接続されている。
【0122】
具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側に放熱器15の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20aが設けられている。また、放熱器15の冷媒流出側には、第1制御弁24の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20bが設けられている。第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の一端側が接続されることによって、冷媒流通路20cが設けられている。また、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の他端側が接続されることによって、冷媒流通路20dが設けられている。室外熱交換器22の他端側には、冷媒流通路20dと並列に、圧縮機21の冷媒吸入側が接続されることによって、冷媒流通路20eが設けられている。冷媒流通路20eには、冷媒流通方向の上流側から順に、第1電磁弁26a、アキュムレータ29が設けられている。冷媒流通路20bには、吸熱器14の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20fが設けられている。冷媒流通路20fには、冷媒流通方向の上流側から順に、第2電磁弁26b、第1逆止弁27a、膨張弁28が設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、冷媒流通路20eの第1電磁弁26aとアキュムレータ29との間が接続されることによって、冷媒流通路20gが設けられている。冷媒流通路20gには、第2制御弁25が設けられている。室外熱交換器22の一端側には、冷媒流通路20cと並列に、冷媒流通路20fの第1逆止弁27aと膨張弁28との間が接続されることによって、冷媒流通路20hが設けられている。冷媒流通路20hには、冷媒流通方向の上流側から順に、第3電磁弁26c、第2逆止弁27bが設けられている。冷媒流通路20aは、冷媒流通路20cと接続されることによって除霜用冷媒流路としての冷媒流通路20iが設けられている。冷媒流通路20iには、第4電磁弁26dが設けられている。
【0123】
圧縮機21及び室外熱交換器22は、車室外に配置されている。室外熱交換器22には、車両の停止時に車室外の空気と冷媒とを熱交換させるための室外送風機30が設けられている。
【0124】
室外熱交換器22は、
図14および
図15に示すように、第1制御弁24、第1電磁弁26aおよび第3電磁弁26cと一体に形成され、室外熱交換器ユニットUが構成されている。
【0125】
室外熱交換器22は、それぞれ上下方向に延びる幅方向一対のヘッダ22aと、互いに上下方向に間隔をおいて各ヘッダ22a間を接続する複数の扁平チューブ22bと、各扁平チューブ22bの間に設けられた波形状のフィン22cとを有している。
【0126】
各ヘッダ22aは、上下両端部が閉鎖された筒状の部材からなり、内部の下端側が仕切り部材22dによって上下方向に仕切られている。一方のヘッダ22aの上部側の空間には、冷媒流通路20dおよび20eが接続されている。また、一方のヘッダ22aの下部側の空間には、冷媒流通路20cおよび20hが接続されている。また、他方のヘッダ22aは、上部側の空間と下部側の空間が他方のヘッダ22aの幅方向外側に設けられた気液分離器22eを介して連通している。気液分離器22eは、上下両端が閉鎖された筒状の部材からなり、室外熱交換器22が放熱器として機能する場合に液体の冷媒を貯留可能に構成されている。室外熱交換器22が放熱器として機能する場合には、気液分離器22eにおいて貯留された液冷媒のみが他方のヘッダ22aの下部側の空間に流入する。即ち、各ヘッダ22aの下部側の空間、および、その間を接続する各扁平チューブ22bには、流通する液冷媒を過冷却の状態とするための過冷却部22fが構成されている。
【0127】
第1制御弁24は、
図16に示すように、冷媒流通路20bを流通した冷媒が流通する弁本体24aと、弁本体24a内の冷媒流路を膨張手段側または凝縮圧力調整手段側に切換えるとともに、それぞれの流路の開度を調整するための開度調整機構24bと、を有している。
【0128】
弁本体24aは、冷媒流通路20bを流通した冷媒を流入させるための冷媒流入路24cと、膨張手段側の冷媒流路24dと、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路24eと、が形成されている。
【0129】
開度調整機構24bは、コイル24fに対してプランジャ24gを直線的に往復動させるためのソレノイド24hと、冷媒流入路24c内に設けられ、冷媒流入路24cと冷媒流路24dとを連通する連通孔24iを開閉可能な第1弁体24jと、冷媒流入路24c内に設けられ、冷媒流入路24cと冷媒流路24eとを連通する連通孔24kを開閉可能な第2弁体24lと、を有している。
【0130】
ソレノイド24hは、コイル24fに通電する電流の大きさを調整することによって、コイル24fに対してプランジャ24gの位置を調整することが可能な比例ソレノイドである。プランジャ24gの先端側には、第2弁体24lの一端面に当接可能な当接部24mが設けられ、当接部24mの先端側には外周面側に第2弁体24lが位置するとともに、内周部に第1弁体24jを挿入可能な円筒形状の弁体保持部材24nが設けられている。
【0131】
第1弁体24jは、一端部が端部に向かって先細りとなる断面円形の針状部材であり、他端側が弁体保持部材24nの内周部に挿入された状態となっている。弁体保持部材24nの内周部には第1コイルスプリング24oが設けられ、第1弁体24jの一端部が連通孔24iを閉鎖する方向に第1弁体24jが付勢されている。
【0132】
第2弁体24lは、径方向中央部に弁体保持部材24nの外径と略同一寸法の内径の貫通孔24pが設けられ、貫通孔24pに弁体保持部材24nが挿し通されている。第2弁体24lは、冷媒流入路24c内に設けられた第2コイルスプリング24qによって、連通孔24kを閉鎖する方向に付勢されている。
【0133】
図16(a)は、膨張手段側の冷媒流路24dを開放し、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路24eを閉鎖した状態を示している。また、
図16(b)は、膨張手段側の冷媒流路24dを閉鎖するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路24eを閉鎖した状態を示している。さらに、
図16(c)は、膨張手段側の冷媒流路24dを閉鎖し、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路24eを開放した状態を示している。
【0134】
膨張弁28は、吸熱器14から流出する冷媒の温度に応じて弁開度を調整可能な温度膨張弁である。温度膨張弁としては、例えば、吸熱器から流出する冷媒が流通する流出冷媒流路と、流出冷媒流路を流通する温度を検出する感温棒と、弁体を移動させるためのダイヤフラムと、を一体に形成したボックス型の温度膨張弁が用いられる。
【0135】
アキュムレータ29は、
図17に示すように、上下方向に延びる圧力容器である容器本体29aを有している。容器本体29aの上部側には、冷媒流通路20eまたは冷媒流通路20gを流通する冷媒を流入させるための冷媒流入管29bが接続されている。また、容器本体29aの下部側には、容器本体29aから圧縮機21に向かって冷媒を流出させるための冷媒流出管29cが設けられている。冷媒流出管29cの端部開口は、容器本体29aの底部から所定距離上方に位置しており、液冷媒の容器本体からの流出が規制される。容器本体29a内の冷媒流入管29bの端部開口と冷媒流出管29cの端部開口との間には、冷媒流入管29bから冷媒流出管29cに冷媒が直接流入することを防止するための冷媒流通規制板29dが設けられている。また、容器本体29a内の下部に位置する冷媒流出管29cには、容器本体29a内に溜まる冷媒から分離された潤滑油を圧縮機21に戻すために設けられた油戻し孔29eが設けられている。
【0136】
さらに、車両用空気調和装置は、
図13に示すように、第1制御弁24の膨張手段側および凝縮圧力調整手段側のそれぞれの弁開度を制御するためのコントローラ40を備えている。
【0137】
コントローラ40の出力側には、第1制御弁24が接続されている。また、コントローラ40の入力側には、冷媒流通路20bを流通する高圧冷媒の温度Thpを検出するための高圧冷媒温度センサ44と、冷媒流通路20bを流通する高圧冷媒の圧力Phpを検出するための高圧冷媒圧力センサ45と、が接続されている。
【0138】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転、除霜運転が行われる。以下、それぞれの運転について説明する。
【0139】
冷房運転及び除湿冷房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側の流路を閉鎖するとともに、凝縮圧力調整手段側の流路を開放し、第3電磁弁26cを開放するとともに、第1、第2、第4電磁弁26a,26b,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図18に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20d、室外熱交換器22、冷媒流通路20h,20f、吸熱器14、冷媒流通路20g、20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、冷房運転において、室外熱交換器22において放熱して吸熱器14において吸熱する。除湿冷房運転として
図18の一点鎖線に示すようにエアミックスダンパ16が開放されると、冷媒回路20を流通する冷媒は放熱器15においても放熱する。
【0140】
このとき、冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却され、車室内の温度を目標設定温度Tsetとするために吹出口11c,11d,11eから吹き出すべき空気の温度である目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。
【0141】
目標吹出温度TAOは、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、日射量Ts等の環境条件を検出し、検出された環境条件と目標設定温度Tsetに基づいて算出されるものである。
【0142】
また、除湿冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換して冷却されることによって除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、放熱器15おいて放熱する冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0143】
除湿冷房運転において、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側の弁開度を調整することによって、放熱器15における冷媒の凝縮圧力が調整される。即ち、放熱器15における冷媒の凝縮圧力を調整することによって、放熱器15の放熱量が調整可能となる。
具体的には、放熱器15における冷媒の凝縮圧力は、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段の弁開度を大きくすると低下し、弁開度を小さくすると上昇する。これにより、放熱器15の放熱量は、凝縮圧力を低下させることによって減少し、凝縮圧力を上昇させることによって増加する。
【0144】
冷房運転および除湿冷房運転において、室外熱交換器22を流通する冷媒は、過冷却部22fにおいて液体の状態で車室外の空気と熱交換するため、過冷却の状態となる。
【0145】
また、膨張弁28では、吸熱器14から流出する冷媒の温度に基づいて弁開度が調整され、吸熱器14から流出する冷媒の過熱度が調整される。具体的には、吸熱器14から流出する冷媒の温度が低いときに弁開度が小さくなり、吸熱器14から流出する冷媒の温度が高いときに弁開度が大きくなる。
【0146】
ここで、吸熱器14から流出する冷媒の過熱度と成績係数(COP)との関係、および、冷媒の過熱度と圧縮機21から吐出される冷媒の温度との関係を
図19に示す。成績係数は、過熱度が所定範囲内において大きくなるに従って向上し、所定範囲を超えて過熱度が大きくなるに従って低下する。また、圧縮機21から吐出される冷媒の温度は、過熱度が大きくなるに従って高くなる。
【0147】
具体的には、過冷却部22fにおいて冷媒を過冷却の状態とし、吸熱器14から流出する冷媒の過熱度を所定範囲内で大きくすると、
図20に示すように、一点鎖線で示す過冷却部22fを有さず冷媒の過熱度の制御を行わない場合と比較して、吸熱器14に流入する冷媒と流出する冷媒とのエンタルピ差が大きくなり、成績係数が向上する。
【0148】
また、吸熱器14から流出する冷媒の過熱度を所定範囲以上に大きくすると、圧縮機21から吐出される冷媒の温度が上昇する。圧縮機21から吐出される冷媒の温度が上昇すると、潤滑油や冷媒の劣化を招くと共に圧縮機21の冷却が困難となり、圧縮機21における機械損失が大きくなって成績係数が低下する。
【0149】
また、室外熱交換器22から流出する冷媒の過冷却度と成績係数との関係を
図21に示す。成績係数は、過冷却度が大きくなるに従って向上する。過冷却度を大きくするためには、室外熱交換器22の各ヘッダ22aの下側の空間の間を流通する冷媒と空気との熱交換面積を大きくする必要がある。このため、過冷却度は、室外熱交換器22の外形寸法の大きさに比例して大きくなるため、室外熱交換器22の納まり上可能な外形寸法によって決定される。
【0150】
前記のように、成績係数が最大となる過熱度および上限の成績係数となる過冷却度を設定することによって、冷房及び除湿冷房運転における成績係数を最大限大きくすることができる。
【0151】
暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流路を開放するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第1電磁弁26aを開放するとともに、第2〜第4電磁弁26b,26c,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図22に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、室外熱交換器22において吸熱する。
【0152】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0153】
アキュムレータ29では、冷媒が容器本体29aの内面および冷媒流通規制板29dに接触しながら容器本体29a内を流通することによって気体の冷媒と液体の冷媒とに分離される。容器本体内に29aには、過剰な液体の冷媒が貯留され、冷媒流出管29cからは、飽和蒸気に近い状態の気体の冷媒のみが流出する。また、冷媒が気体の冷媒と液体の冷媒とに分離される際に、冷媒に含まれる潤滑油も冷媒から分離されて容器本体29a内に貯留される。容器本体29a内に貯留される潤滑油は、油戻し孔29eから冷媒流出管29cに流入し、圧縮機21に戻される。
【0154】
また、暖房運転において、放熱器15から流出する冷媒は、
図23に示すように、第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を小さくすると過冷却度が大きくなり、弁開度を大きくすると過冷却度が小さくなる。
このため、第1制御弁24の膨張手段側の弁開度は、高圧冷媒温度センサ44の検出温度および高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力に基づいて、放熱器15における冷媒の過冷却度が所定の過冷却度となるように制御される。
【0155】
具体的には、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度を大きくすると、
図24に示すように、一点鎖線で示す過冷却度が小さい場合と比較して、放熱器15に流入する冷媒と流出する冷媒とのエンタルピ差が大きくなり、成績係数が向上する。
【0156】
また、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度を大きくすると、放熱器15内における液相領域が増加するため、熱交換効率が低下して高圧側の冷媒圧力が上昇する。高圧側の冷媒圧力が上昇すると、
図24に示すように、放熱器15に流入する冷媒と流出する冷媒とのエンタルピ差が大きくなる。このとき、
図25に示すように、暖房能力は、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度が大きくなるに従って向上し、車室内に吹出される空気の温度は、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度が大きくなるに従って上昇する。
【0157】
一般に、高圧側の冷媒圧力が上昇すると、圧力比が大きくなって圧縮機動力が増加するため、成績係数が低下する。しかし、本実施形態では、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度を大きくすることで、圧縮機動力の増加量以上に、放熱器15に流入する冷媒と流出する冷媒とのエンタルピ差を大きくすることができるため、成績係数を向上させることが可能となる。
【0158】
また、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度を所定範囲以上に大きくすると、圧縮機21の圧力比が大きくなり、
図26に示すように、成績係数が低下することから、所定範囲内において冷媒の過冷却度を制御することが望ましい。
【0159】
したがって、大きな暖房能力を必要とする場合には、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度が大きくなるように第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を制御し、高いエネルギー効率の暖房運転を行う場合には、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度が所定値となるように第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を制御する。
【0160】
第1除湿暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流路を開放するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第1及び第2電磁弁26a,26bを開放するとともに、第3および第4電磁弁26c,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図27に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20bを順に流通する。冷媒流通路20bを流通する冷媒の一部は、冷媒流通路20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。また、冷媒流通路20bを流通するその他の冷媒は、冷媒流通路20f、吸熱器14、冷媒流通路20g,20e、の順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14及び室外熱交換器22において吸熱する。
【0161】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0162】
また、吸熱器14における冷媒は、第2制御弁25の弁開度の調整することによって、蒸発温度が調整される。即ち、吸熱器14における冷媒は、第2制御弁25の弁開度を小さくすると蒸発温度が高くなり、第2制御弁25の弁開度を大きくすると蒸発温度が低くなる。
【0163】
第2除湿暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側および凝縮圧力調整手段側の両方の冷媒流路を閉鎖し、第2電磁弁26bを開放するとともに、第1、第3、第4電磁弁26a,26c,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図28に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20f、吸熱器14、冷媒流通路20g,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0164】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、前記第1除湿暖房運転と同様に、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。
【0165】
除霜運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の流路を膨張手段側に設定し、第1及び第4電磁弁26a,26dを開放するとともに、第2及び第3電磁弁26b,26cを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒の一部は、
図29に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20cを順に流通して室外熱交換器22に流入する。また、圧縮機21から吐出されたその他の冷媒は、冷媒流路20a,20i,20cを流通して室外熱交換器22に流入する。室外熱交換器22から流出した冷媒は、冷媒流通路20eを流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱するとともに、室外熱交換器22において放熱と同時に吸熱する。
【0166】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において放熱する冷媒と熱交換することによって加熱され、車室内に吹き出される。
【0167】
オートエアコンスイッチがオンの状態に設定されている場合に、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転、除霜運転が、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、車室外の湿度、車室内の湿度Th、日射量Ts等の環境条件に基づいて切換えられる。
【0168】
また、吹出口11c,11d,11eのモードは、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによって切換えられる。エアミックスダンパ16の開度は、吹出口11c,11d,11eから吹出される空気の温度が目標吹出温度TAOとなるように調整される。
【0169】
また、各運転において、フットモード、ベントモード、バイレベルモードの切り替えは、目標吹出温度TAOに応じて行われる。具体的には、目標吹出温度TAOが例えば40℃以上など、高温となる場合にはフットモードに設定される。また、目標吹出温度TAOが例えば25℃未満など、低温となる場合にはベントモードに設定される。さらに、目標吹出温度TAOが、フットモードが設定される目標吹出温度TAOとベントモードが設定される目標吹出温度TAOとの間の温度の場合には、バイレベルモードに設定される。
【0170】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、冷房運転および除湿冷房運転の冷媒回路20における放熱器15と室外熱交換器22との間の冷媒流路に、放熱器15から流出して室外熱交換器22に流入する冷媒の流量を調整可能な第1制御弁24を設けている。これにより、除湿冷房運転において、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側によって放熱器15における放熱量を調整することで、車室内に吹出す空気の加熱に必要な加熱量を確保することができる。したがって、車室内に供給する空気の温度を確実に設定温度Tsetとすることが可能となる。
【0171】
また、第1除湿暖房運転の冷媒回路20における吸熱器14と圧縮機21との間の冷媒流路に、吸熱器14から流出して圧縮機21に吸入される冷媒の流量を調整可能な第2制御弁25を設けている。これにより、第1除湿暖房運転において、第2制御弁25の弁開度を小さくすることによって吸熱器14における冷媒の蒸発圧力を高くすることができる。したがって、車室外の温度が低温の場合においても吸熱器14の着霜を防止することができ、吸熱器14において必要な吸熱量を確保することができる。
【0172】
また、暖房運転および第1除湿暖房運転の冷媒回路20における室外熱交換器22に流入する冷媒を膨張させる膨張手段と、除湿冷房運転の冷媒回路20における室外熱交換器22に流入する冷媒の放熱器15における凝縮圧力を調整する凝縮圧力調整手段と、冷媒流路を膨張手段側または凝縮圧力調整手段側に切換える流路切換手段と、を第1制御弁24として一体に形成している。これにより、膨張手段、凝縮圧力調整手段および流路切換え手段を、それぞれ別部品として設ける必要はなく、組付け時の部品点数の低減および組付け工数の低減を図ることができる。
【0173】
また、室外熱交換器22、第1制御弁24、第1電磁弁26aおよび第3電磁弁26cを室外熱交換器ユニットとして一体に形成している。これにより、室外熱交換器22、第1制御弁24、第1電磁弁26aおよび第3電磁弁26cを、それぞれ別部品として設ける必要はなく、組付け時の部品点数の低減および組付け工数の低減を図ることができる。
【0174】
また、圧縮機21の冷媒吸入側の冷媒流路に、アキュムレータ29を設け、暖房運転の冷媒回路20における放熱器15から流出して室外熱交換器22に流入する冷媒を膨張させる第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を調整可能に設けている。これにより、飽和蒸気に近い状態の気体の冷媒のみを圧縮機21に吸入させることができるとともに、放熱器15から流出する冷媒を最適な過冷却度とすることができる。したがって、暖房運転において暖房能力や成績係数を向上させることが可能となる。
【0175】
また、第1制御弁24の膨張手段側は、ソレノイド24hによって開度が調整される電子式の膨張弁が構成されている。これにより、暖房運転において放熱器15から流出した冷媒を、冷媒流通路20bを流通する高圧冷媒の温度Thpと、冷媒流通路20bを流通する高圧冷媒の圧力Phpと、に基づいて最適な過冷却度とすることができる。したがって、暖房運転における暖房能力や成績係数の一層の向上を図ることが可能となる。
【0176】
また、室外熱交換器22に、冷房運転および除湿冷房運転の冷媒回路20において、流通する冷媒を過冷却の状態とするための過冷却部22fを設け、吸熱器14に流入する冷媒を膨張させる膨張弁28を、吸熱器14から流出する冷媒の温度に応じて弁開度を調整可能な温度膨張弁としている。これにより、冷房運転および除湿冷房運転の冷媒回路20において、室外熱交換器22を流通する冷媒を過冷却の状態とすることで、吸熱器14に流入する冷媒と流出する冷媒とのエンタルピ差を大きくするとともに、吸熱器14から流出する冷媒の過熱度を調整することができる。したがって、冷房運転および除湿冷房運転において成績係数を向上させることが可能となる。
【0177】
また、暖房運転の冷媒回路20に、圧縮機21から吐出された冷媒の一部を放熱器15に流入させることなく、室外熱交換器22に流入させる冷媒流路20iを設けている。これにより、車室外が低温となる場合に室外熱交換器22に着霜が生じたとしても、室外熱交換器22に付着した霜を除去することができる。したがって、暖房運転における暖房能力の低下を防止することができる。
【0178】
図30および
図31は本発明の第4実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0179】
この車両用空気調和装置は、第3実施形態における第1制御弁24の代わりとして、冷媒流通路20bと冷媒流通路20cとの間に膨張弁31を設け、冷媒流通路20bと冷媒流通路20dとの間に第3制御弁32を設けている。
【0180】
膨張弁31は、流通する冷媒の温度に応じて弁開度が変化する機械式の温度膨張弁である。膨張弁31は、
図31に示すように、筒状に形成された弁本体31aと、弁本体31a内に設けられた弁体31bと、冷媒の温度を感知して弁体31bを移動させるためのパワーエレメント31cと、を有している。
【0181】
弁本体31aは、内部を冷媒が流通可能に構成されており、冷媒流通方向の上流側と下流側とを連通する連通孔31dが設けられている。
【0182】
弁体31bは、弁本体31a内の連通孔31dの上流側に配置されており、冷媒流通方向に移動自在に構成されている。弁体31bは、連通孔31d側に移動することによって一端部が連通孔31dを閉鎖し、連通孔31dと反対側に移動することによって連通孔31dを開放する。弁体31bには、弁体31bが連通孔31dを閉鎖した状態において弁本体31aの冷媒流通方向上流側と下流側を連通する連通路31eが形成されている。弁体31bは、コイルばね31fによって連通孔31dを開放する方向に付勢されている。
【0183】
パワーエレメント31cは、ダイヤフラム31gと、ダイヤフラム31gを囲むカバー部材31hとからなる。ダイヤフラム31gの一方の面(
図31中の上面)とカバー部材31hの内面との間には、感温ガスが封入された気密室31iが形成されている。また、ダイヤフラム31gの他方の面とカバー部材31hの内面との間には、弁本体31a内に流入した冷媒が流通する。弁本体31a内に流入する冷媒の温度が高くなると、気密室31i内の圧力が上昇し、ダイヤフラム31gを他方の面側に移動させることで気密室31iの体積を増加させる。この気密室31iの体積を増加させるときのダイヤフラム31gの移動によって弁体31bが、連通孔31dを閉鎖する方向に移動する。弁体31bが連通孔31dを閉鎖すると、弁本体31aの冷媒流通方向上流側と下流側は、弁体31bの連通路31eのみで連通する。
【0184】
第3制御弁32は、弁開度が可変に構成されており、除湿冷房運転時に放熱器15における冷媒の凝縮圧力を調整することが可能である。
【0185】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、暖房運転時において、放熱器15から流出する冷媒は、膨張弁31によって過冷却度が調節される。
【0186】
具体的には、放熱器15から流出する冷媒の温度が高くなると、膨張弁31の弁開度が小さくなる。また、放熱器から流出する冷媒の温度が低くなると、膨張弁31の弁開度が大きくなる。ここで、
図31(a)は、連通孔31dを開放した状態を示す。また、
図31(b)は、連通孔31dを閉鎖した状態を示す。
【0187】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、前記実施形態と同様に、冷房運転および除湿冷房運転において、第3制御弁32によって放熱器15における放熱量を調整することで、車室内に吹出す空気の加熱に必要な加熱量を確保することができる。したがって、車室内に供給する空気の温度を確実に設定温度Tsetとすることが可能となる。
【0188】
また、膨張弁31は、機械式の温度膨張弁である。これにより、暖房運転において、簡単な構成により、放熱器15から流出した冷媒を最適な過冷却度とすることができるので、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0189】
図32は本発明の第5実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0190】
この車両用空気調和装置は、第3および第4実施形態における冷媒を放熱させるための放熱器15の代わりに、冷媒回路20を流通する冷媒を車両走行用のエンジンEを冷却する冷却水に対して放熱させるための水冷媒熱交換器33を有している。水冷媒熱交換器33は、冷却水を流通させるための熱媒体流路としての冷却水流路33aを有している。冷却水流路33aには、冷却水が流通する熱媒体回路としてのエンジン冷却回路60が接続されている。
【0191】
エンジン冷却回路60は、水冷媒熱交換器33、エンジンEのウォータジャケット、ラジエータ61、エンジンEのウォータジャケットとラジエータ61との間で冷却水を循環させるための第1ポンプ62、空気流通路11を流通する空気に対して冷却水の熱を放熱させるための放熱器63、水冷媒熱交換器33と放熱器63との間で冷却水を循環させるための第2ポンプ64、三方弁65、電力によって冷却水を加熱するための水加熱ヒータ66を有し、これらは銅管やアルミニウム管によって接続されている。
【0192】
具体的には、第1ポンプ62の水吐出側にエンジンEのウォータジャケットの水流入側が接続されることによって、水流通路60aが設けられている。また、エンジンEのウォータジャケットの水流出側にラジエータ61の水流入側が接続されることによって、水流通路60bが設けられている。ラジエータ61の水流出側に第1ポンプ62の水吸入側が接続されることによって、水流通路60cが設けられている。また、第2ポンプ64の水吐出側に水冷媒熱交換器33の水流入側が接続されることによって、水流通路60dが設けられている。水冷媒熱交換器33の水流出側に水加熱ヒータ66の水流入側が接続されることによって、水流通路60eが設けられている。水加熱ヒータ66の水流出側に放熱器63の水流入側が接続されることによって、水流通路60fが設けられている。放熱器63の水流出側に第2ポンプ64の水吸入側が接続されることによって、水流通路60gが設けられている。また、水流通路60bと水流通路60eを接続することによって、水流通路60hが設けられている。さらに、水流通路60cと水流通路60gを接続することによって、水流通路60iが設けられている。水流通路60gと水流通路60iとの接続部には三方弁65が設けられ、三方弁65によって放熱器63の水流出側を第1ポンプ62側または第2ポンプ64側に連通させる。
【0193】
エンジン冷却回路60は、エンジンEのウォータジャケット、ラジエータ61、第1ポンプ62からなるエンジン冷却回路に対して、水冷媒熱交換器33、放熱器63、第2ポンプ64、三方弁65、水加熱ヒータ66からなる回路を接続することにより構成可能である。
【0194】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、三方弁65によって放熱器63と第2ポンプ64とを連通させ、第2ポンプ64を運転することによって、第3及び第4実施形態と同様に、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転、除霜運転が行われる。
【0195】
また、暖房運転において、水冷媒熱交換器33において放熱量が不足する場合に、水加熱ヒータ66によって冷却水を加熱することによって、不足する熱量が補われる。
【0196】
また、三方弁65によって放熱器63と第2ポンプ64とを連通させた状態で、第1ポンプ62を運転すると、エンジンEの排熱はラジエータ61から排出される。
【0197】
また、三方弁65によって放熱器63と第1ポンプ62側に連通させた状態で、第1ポンプ62を運転することにより、水冷媒熱交換器33において放出した熱をエンジンEに伝達させて、エンジンEの暖気を促進させることが可能となる。
【0198】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、前記実施形態と同様に、冷房運転および除湿冷房運転において、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側によって水冷媒熱交換器33における放熱量を調整することで、車室内に吹出す空気の加熱に必要な加熱量を確保することができる。したがって、車室内に供給する空気の温度を確実に設定温度Tsetとすることが可能となる。
【0199】
図33および
図34は、本発明の第6実施形態を示すものである。尚、前記第3実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0200】
この車両用空気調和装置の冷媒回路20は、
図33に示すように、第3実施形態における第1制御弁24の代わりに、冷媒流入口および冷媒流出口がそれぞれ1つずつ設けられ、減圧領域と凝縮圧力調整領域のそれぞれの範囲で弁開度を調整可能な第3制御弁34を備えている。
【0201】
具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側に放熱器15の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20aが設けられている。また、放熱器15の冷媒流出側には、第3制御弁34の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20bが設けられている。第3制御弁34の冷媒流出側には、室外熱交換器22の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20cが設けられている。また、室外熱交換器22の冷媒流出側には、圧縮機21の冷媒吸入側が接続されることによって、冷媒流通路20dが設けられている。冷媒流通路20dには、冷媒流通方向の上流側から順に、第1電磁弁26a、アキュムレータ29が設けられている。冷媒流通路20bには、吸熱器14の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20eが設けられている。冷媒流通路20eには、冷媒流通方向の上流側から順に、第2電磁弁26b、第1逆止弁27a、膨張弁28が設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、冷媒流通路20dの第1電磁弁26aとアキュムレータ29との間が接続されることによって、冷媒流通路20fが設けられている。冷媒流通路20fには、第2制御弁25が設けられている。室外熱交換器22の冷媒吐出側には、冷媒流通路20dと並列に、気液分離器22eの冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20gが設けられている。冷媒流通路20gには、第3電磁弁26cが設けられている。気液分離器22eの冷媒流出側には、過冷却部22fを介して冷媒流通路20eの第1逆止弁27aと膨張弁28との間が接続されることによって、冷媒流通路20hが設けられている。冷媒流通路20hには、第2逆止弁27bが設けられている。また、冷媒流通路20aは、冷媒流通路20cと接続されることによって除霜用冷媒流路としての冷媒流通路20iが設けられている。冷媒流通路20iには、第4電磁弁26dが設けられている。
【0202】
第3制御弁34は、
図34に示すように、冷媒流通路20bを流通した冷媒が流通する弁本体34aと、弁本体34a内の冷媒流路を膨張手段または凝縮圧力調整手段に切換えるとともに、膨張手段および凝縮圧力調整手段におけるそれぞれの流路の開度を調整するための開度調整機構34bと、を備えている。
【0203】
弁本体34aには、冷媒流通路20bが接続された冷媒流入口34cと連通する冷媒流入室34dと、冷媒流通路20cが接続された冷媒流出口34eと連通する冷媒流出室34fと、が形成されている。冷媒流入室34dは、水平方向に延びる断面円形状の空間からなり、外周面の冷媒流出室34f側に冷媒流入口34cが設けられている。また、冷媒流出室34fは、冷媒流入室34dと同軸状に延びる断面円形状の空間からなり、開度調整機構34bによって開閉される第1連通孔34gを介して冷媒流入室34dと連通している。
【0204】
また、弁本体34aには、冷媒流入室34dの冷媒流出室34f側と冷媒流出室34fとを連通する膨張手段用冷媒流路34hが形成されている。膨張手段用冷媒流路34hの冷媒流出室34f側には、開度調整手段34bによって開閉される第2連通孔34iが設けられている。
【0205】
さらに、弁本体34aには、冷媒流入室34dの冷媒流出室34f側と反対側と、膨張手段用冷媒流路34hの第2連通孔34iの冷媒流入室34d側と、を連通するパイロット冷媒流路34jが形成されている。パイロット冷媒流路34jの冷媒流出室34f側には、開度調整機構34bによって開閉される第3連通孔34kが設けられている。
【0206】
開度調整機構34bは、コイルに対してプランジャを直線的に往復動させるソレノイド34lと、第1連通孔34gを開閉するための第1弁体34mと、第2連通孔34iを開閉するための第2弁体34nと、第3連通孔34kを開閉するための第3弁体34oと、を有している。
【0207】
ソレノイド34lは、コイルに通電する電流の大きさを調整することによって、コイルに対してプランジャの位置を調整することが可能な比例ソレノイドである。
【0208】
第1弁体34mは、第1連通孔34gを開閉するための弁体部34pと、冷媒流入室34d内を移動可能なピストン部34qと、弁体部34pとピストン部34qとを連結する連結部34rと、を有している。ピストン部34qには、冷媒流入室34dの冷媒流出室34f側の空間とその反対側の空間を連通する連通孔34sが設けられている。また、第1弁体34mは、ピストン部34qの冷媒流出室34fと反対側に設けられたコイルスプリング34tによって、弁体部34pが第1連通孔34gを閉鎖する方向に付勢されている。
【0209】
第2弁体34nは、一端部が先端に向かって先細りとなる断面円形の針状部材であり、プランジャの先端に固定されている。第2弁体34nは、プランジャが上方に移動するに従って第2連通孔34iの開度が大きくなる。
【0210】
第3弁体34oは、一端部が先端に向かって先細りとなる断面円形状の針状部材であり、プランジャの軸方向中央部に設けられた係合部34uが係合可能に設けられている。また、第3弁体34oは、上部に設けられたコイルスプリング34vによって第3連通孔34kを閉鎖する方向に付勢されている。第3弁体34oは、プランジャの所定以上の上方への移動で係合部34uが係合し、それ以上のプランジャの上方への移動に従い第3連通孔34kの開度が大きくなる。
【0211】
図34(a)では、第1弁体34m、第2弁体34nおよび第3弁体34oが、それぞれ第1連通孔34g、第2連通孔34iおよび第3連通孔34kを閉鎖している。
【0212】
図34(a)の状態からソレノイド34lのプランジャを上方に移動させると、
図34(b)に示すように、第1弁体34mおよび第3弁体34oがそれぞれ第1連通孔34gおよび第3連通孔34kを閉鎖した状態で、第2弁体34nが第2連通孔34iを開放する。
このとき、冷媒流入口34cから流入した冷媒流入室34d内の冷媒は、膨張手段用冷媒流路34hを介して減圧されて冷媒流出室34fに流入し、冷媒流出口34eから流出する。第1弁体34mは、コイルスプリング34tの付勢力によって第1連通孔34gを閉鎖した状態を維持する。第1連通孔34gおよび第3連通孔34kが閉鎖される状態の範囲内でソレノイド34lのプランジャを移動させることによって、膨張手段として弁開度が調整される。
【0213】
図34(b)の状態からソレノイド34lのプランジャをさらに上方に移動させると、
図34(c)に示すように、プランジャの上方への移動によって、第2弁体34nおよび第3弁体34oが、それぞれ第2連通孔34iおよび第3連通孔34kを開放する。第2連通孔34iおよび第3連通孔34kが開放されると、冷媒流入室34dの第1連通孔34g側と反対側の空間は、パイロット冷媒流路34jを介して冷媒流出室34fと連通することによって圧力が低下する。これにより、第1弁体34mは、
図34(c)に示すように、コイルスプリング34tの付勢力に抗して冷媒流入室34dの第1連通孔34g側と反対側に移動し、第1連通孔34gを開放する。第1連通孔34gが開放される状態の範囲内でソレノイド34lのプランジャを移動させることによって、凝縮圧力調整手段として弁開度が調整される。
【0214】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、前記第3乃至第5実施形態と同様に、冷房運転および除湿冷房運転において、第3制御弁34によって放熱器15における放熱量を調整することで、車室内に吹出す空気の加熱に必要な加熱量を確保することができる。したがって、車室内に供給する空気の温度を確実に設定温度Tsetとすることが可能となる。
【0215】
尚、前記実施形態では、室外熱交換器22、第1制御弁24、第1電磁弁26aおよび第3電磁弁26cを室外熱交換器ユニットとして一体に形成したものを示したが、これに限られるものではない。納まり上、室外熱交換器22の近傍に位置する部品であれば、例えば、第2電磁弁26bや第4電磁弁26d、第1および第2逆止弁27a,27bを室外熱交換器22と一体に形成するようにしてもよい。
【0216】
また、前記実施形態では、第1制御弁24の弁本体24a内の冷媒流路の切換え、および、開度の調整をソレノイド24hによって行うようにしたものを示したが、これに限られるものではない。弁本体24a内の冷媒流路の切換え、および、開度の調整が可能であれば、例えばステッピングモータによって弁本体24a内の冷媒流路の切換え、および、開度の調整を行うようにしてもよい。
【0217】
また、前記第5実施形態では、冷媒回路20の放出する熱を、水冷媒熱交換器33を介してエンジン冷却回路60を流通する冷却水に吸熱させるようにしたものを示したが、冷媒と熱交換する熱媒体としては水に限られず、エチレングリコール等が含まれる不凍液等、熱伝達が可能な流体が熱媒体として使用可能である。
【0218】
図35乃至
図45は、本発明の第7実施形態を示すものである。
【0219】
本発明の車両用空気調和装置は、
図35に示すように、車室内に設けられた空調ユニット10と、車室内および車室外に亘って構成された冷媒回路20と、を備えている。
【0220】
空調ユニット10は、車室内に供給する空気を流通させるための空気流通路11を有している。空気流通路11の一端側には、車室外の空気を空気流通路11に流入させるための外気吸入口11aと、車室内の空気を空気流通路11に流入させるための内気吸入口11bと、が設けられている。また、空気流通路11の他端側には、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の足元に向かって吹き出させるフット吹出口11cと、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の上半身に向かって吹き出させるベント吹出口11dと、空気流通路11を流通する空気を車両のフロントガラスの車室内側の面に向かって吹き出させるデフ吹出口11eと、が設けられている。
【0221】
空気流通路11内の一端側には、空気を空気流通路11の一端側から他端側に向かって流通させるためのシロッコファン等の室内送風機12が設けられている。この室内送風機12は電動モータ12aによって駆動される。
【0222】
空気流通路11の一端側には、外気吸入口11a及び内気吸入口11bの一方を開放して他方を閉鎖することが可能な吸入口切換えダンパ13が設けられている。この吸入口切換えダンパ13は電動モータ13aによって駆動される。吸入口切換えダンパ13によって内気吸入口11bが閉鎖されて外気吸入口11aが開放されると、外気吸入口11aから空気が空気流通路11に流入する外気供給モードとなる。また、吸入口切換えダンパ13によって外気吸入口11aが閉鎖されて内気吸入口11bが開放されると、内気吸入口11bから空気が空気流通路11に流入する内気循環モードとなる。さらに、吸入口切換えダンパ13が外気吸入口11aと内気吸入口11bとの間に位置し、外気吸入口11aと内気吸入口11bがそれぞれ開放されると、吸入口切換えダンパ13による外気吸入口11a及び内気吸入口11bのそれぞれの開口率に応じた割合で、外気吸入口11aと内気吸入口11bとから空気が空気流通路11に流入する内外気吸入モードとなる。
【0223】
空気流通路11の他端側のフット吹出口11c、ベント吹出口11d及びデフ吹出口11eのそれぞれには、各吹出口11c,11d,11eを開閉するための吹出口切換えダンパ13b,13c,13dが設けられている。この吹出口切換えダンパ13b,13c,13dは、図示しないリンク機構によって連動するように構成され、電動モータ13eによってそれぞれ開閉される。ここで、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11cが開放されてベント吹出口11dが閉鎖され、デフ吹出口11eが僅かに開放されると、空気流通路11を流通する空気の大部分がフット吹出口11cから吹き出されると共に残りの空気がデフ吹出口11eから吹き出されるフットモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが閉鎖されてベント吹出口11dが開放されると、空気流通路11を流通する空気の全てがベント吹出口11dから吹き出されるベントモードとなる。さらに、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが開放されてデフ吹出口11eが閉鎖されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びベント吹出口11dから吹き出されるバイレベルモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが閉鎖されてデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がデフ吹出口11eから吹き出されるデフモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってベント吹出口11dが閉鎖されてフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びデフ吹出口11eから吹き出されるデフフットモードとなる。尚、バイレベルモードにおいては、フット吹出口11cから吹き出される空気の温度がベント吹出口11dから吹き出される空気の温度よりも高温となる温度差が生じるような、空気流通路11、フット吹出口11c、ベント吹出口11d、後述する吸熱器及び放熱器の互いの位置関係や構造となっている。
【0224】
室内送風機12の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を冷却及び除湿するための吸熱器14が設けられている。また、吸熱器14の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を加熱するための放熱器15が設けられている。吸熱器14及び放熱器15は、それぞれ内部を流通する冷媒と空気流通路11を流通する空気とを熱交換させるためのフィンとチューブ等からなる熱交換器である。
【0225】
吸熱器14と放熱器15との間の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気の放熱器15において加熱される割合を調整するためのエアミックスダンパ16が設けられている。エアミックスダンパ16は電動モータ16aによって駆動される。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側に位置することによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が減少し、空気流通路11の放熱器15以外の部分側に移動させることによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が増加する。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側を閉鎖して放熱器15以外の部分を開放した状態で開度が0%となり、空気流通路11の放熱器15の上流側を開放し、放熱器15以外の部分を閉鎖した状態で開度が100%となる。
【0226】
冷媒回路20は、前記吸熱器14、前記放熱器15、冷媒を圧縮するための圧縮機21、冷媒と車室外の空気とを熱交換するための室外熱交換器22、放熱器15および室外熱交換器22の少なくとも放熱器15から流出する冷媒と吸熱器14から流出する冷媒とを熱交換させるための内部熱交換器23、暖房運転時に室外熱交換器22に流入する冷媒を減圧するための膨張手段と除湿冷房運転時に放熱器における冷媒の凝縮圧力を制御するための凝縮圧力調整手段とを有する第1制御弁24と、吸熱器14における冷媒の蒸発圧力を調整するための蒸発圧力調整手段としての機能を有する第2制御弁25と、第1〜第3電磁弁26a,26b,26c、第1〜第2逆止弁27a,27b、膨張弁28、気体の冷媒と液体の冷媒を分離して液冷媒が圧縮機21に吸入されることを防止するためのアキュムレータ29を有し、これらは銅管やアルミニウム管によって接続されている。
【0227】
具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側に放熱器15の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20aが設けられている。また、放熱器15の冷媒流出側には、第1制御弁24の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20bが設けられている。第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の一端側が接続されることによって、冷媒流通路20cが設けられている。また、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の他端側が接続されることによって、冷媒流通路20dが設けられている。室外熱交換器22の他端側には、冷媒流通路20dと並列に、圧縮機21の冷媒吸入側が接続されることによって、冷媒流通路20eが設けられている。冷媒流通路20eには、冷媒流通方向の上流側から順に、第1電磁弁26a、アキュムレータ29が設けられている。冷媒流通路20bには、内部熱交換器23の高圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20fが設けられている。冷媒流通路20fには、冷媒流通方向の上流側から順に、第2電磁弁26b、第1逆止弁27aが設けられている。内部熱交換器23の高圧冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側接続されることによって、冷媒流通路20gが設けられている。冷媒流通路20gには、膨張弁28が設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、内部熱交換器23の低圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20hが設けられている。冷媒流通路20hには、第2制御弁25が設けられている。内部熱交換器23の低圧冷媒流出側には、冷媒流通路20eの第1電磁弁26aとアキュムレータ29との間が接続されることによって、冷媒流通路20iが設けられている。室外熱交換器22の一端側には、冷媒流通路20cと並列に、冷媒流通路20fの第1逆止弁27aの冷媒流通方向の下流側が接続されることによって、冷媒流通路20jが設けられている。冷媒流通路20jには、冷媒流通方向の上流側から順に、第3電磁弁26c、第2逆止弁27bが設けられている。
【0228】
圧縮機21及び室外熱交換器22は、車室外に配置されている。また、圧縮機21は電動モータ21aによって駆動される。室外熱交換器22には、車両の停止時に車室外の空気と冷媒とを熱交換させるための室外送風機30が設けられている。室外送風機30は、電動モータ30aによって駆動される。
【0229】
第1制御弁24は、
図36に示すように、冷媒流通路20bを流通した冷媒が流通する弁本体24aと、弁本体24a内の冷媒流路を膨張手段側または凝縮圧力調整手段側に切換えるとともに、それぞれの流路の開度を調整するための開度調整機構24bと、を有している。
【0230】
弁本体24aは、冷媒流通路20bを流通した冷媒を流入させるための冷媒流入路24cと、膨張手段側の冷媒流路24dと、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路24eと、が形成されている。
【0231】
開度調整機構24bは、コイル24fに対してプランジャ24gを直線的に往復動させるためのソレノイド24hと、冷媒流入路24c内に設けられ、冷媒流入路24cと冷媒流路24dとを連通する連通孔24iを開閉可能な第1弁体24jと、冷媒流入路24c内に設けられ、冷媒流入路24cと冷媒流路24eとを連通する連通孔24kを開閉可能な第2弁体24lと、を有している。
【0232】
ソレノイド24hは、コイル24fに通電する電流の大きさを調整することによって、コイル24fに対してプランジャ24gの位置を調整することが可能な比例ソレノイドである。プランジャ24gの先端側には、第2弁体24lの一端面に当接可能な当接部24mが設けられ、当接部24mの先端側には外周面側に第2弁体24lが位置するとともに、内周部に第1弁体24jを挿入可能な円筒形状の弁体保持部材24nが設けられている。
【0233】
第1弁体24jは、一端部が端部に向かって先細りとなる断面円形の針状部材であり、他端側が弁体保持部材24nの内周部に挿入された状態となっている。弁体保持部材24nの内周部には第1コイルスプリング24oが設けられ、第1弁体24jの一端部が連通孔24iを閉鎖する方向に第1弁体24jが付勢されている。
【0234】
第2弁体24lは、径方向中央部に弁体保持部材24nの外径と略同一寸法の内径の貫通孔24pが設けられ、貫通孔24pに弁体保持部材24nが挿し通されている。第2弁体24lは、冷媒流入路24c内に設けられた第2コイルスプリング24qによって、連通孔24kを閉鎖する方向に付勢されている。
【0235】
図36(a)は、膨張手段側の冷媒流路24dを開放し、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路24eを閉鎖した状態を示している。また、
図36(b)は、膨張手段側の冷媒流路24dを閉鎖するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路24eを閉鎖した状態を示している。さらに、
図36(c)は、膨張手段側の冷媒流路24dを閉鎖し、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路24eを開放した状態を示している。
【0236】
さらに、車両用空気調和装置は、車室内の温度及び湿度を設定された温度及び設定された湿度とする制御を行うためのコントローラ40を備えている。
【0237】
コントローラ40は、CPU、ROM,RAMを有している。コントローラ40は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0238】
コントローラ40の出力側には、
図37に示すように、室内送風機12駆動用の電動モータ12a、吸入口切換えダンパ13駆動用の電動モータ13a、吹出口切換えダンパ13b,13c,13d駆動用の電動モータ13e、エアミックスダンパ16駆動用の電動モータ16a、圧縮機21駆動用の電動モータ21a、第1制御弁24、第2制御弁25、第1〜第3電磁弁26a,26b,26c、室外送風機30駆動用の電動モータ30aが接続されている。
【0239】
コントローラ40の入力側には、
図37に示すように、車室外の温度Tamを検出するための外気温度センサ41、車室内の温度Trを検出するための内気温度センサ42、日射量Tsを検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ43、冷媒流通路20bを流通する高圧冷媒の温度Thpを検出するための高圧冷媒温度センサ44、冷媒流通路20bを流通する高圧冷媒の圧力Phpを検出するための高圧冷媒圧力センサ45、圧縮機21に吸入される冷媒流通路20eを流通する低圧冷媒の温度Tlpを検出するための低圧冷媒温度センサ46、圧縮機21に吸入される冷媒流通路20eを流通する冷媒の圧力Plpを検出するための低圧冷媒圧力センサ47、吸熱器14における冷媒の蒸発温度Teを検出するための吸熱器温度センサ48、目標設定温度Tsetや運転の切換えに関するモードを設定するための操作部49、運転状態や車室内の温度Tr等を表示するための表示部50が接続されている。
【0240】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転が行われる。以下、それぞれの運転について説明する。
【0241】
冷房運転及び除湿冷房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側の流路を閉鎖するとともに、凝縮圧力調整手段側の流路を開放し、第3電磁弁26cを開放するとともに、第1及び第2電磁弁26a,26bを閉鎖し、圧縮機21を運転する。ここで、第1制御弁24の膨張手段側は、流路を閉鎖しているが、膨張手段側の流路の面積が凝縮圧力調整手段側の流路と比較して極めて小さく、膨張手段側の流路が開放されていたとしても冷媒の大部分は凝縮圧力調整手段側を流通する。このため、冷房運転および除湿冷房運転において、膨張手段側の流路を必ず閉鎖する必要はない。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図38に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20d、室外熱交換器22、冷媒流通路20j,20f、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20i,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、冷房運転において、室外熱交換器22において放熱して吸熱器14において吸熱する。除湿冷房運転として
図38の一点鎖線に示すようにエアミックスダンパ16が開放されると、冷媒回路20を流通する冷媒は放熱器15においても放熱する。
【0242】
このとき、冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却され、車室内の温度を目標設定温度Tsetとするために吹出口11c,11d,11eから吹き出すべき空気の温度である目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。
目標吹出温度TAOは、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、日射量Ts等の環境条件を、外気温度センサ41、内気温度センサ42、日射センサ43等によって検出し、検出された環境条件と目標設定温度Tsetに基づいて算出されるものである。
【0243】
また、除湿冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換して冷却されることによって除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、放熱器15おいて放熱する冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0244】
暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流路を開放するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第1電磁弁26aを開放するとともに、第2および第3電磁弁26b,26cを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図39に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、室外熱交換器22において吸熱する。
【0245】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0246】
第1除湿暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流路を開放するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第1及び第2電磁弁26a,26bを開放するとともに、第3電磁弁26cを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図40に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20bを順に流通する。冷媒流通路20bを流通する冷媒の一部は、第1制御弁24、冷媒流通路20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。また、冷媒流通路20bを流通するその他の冷媒は、冷媒流通路20f、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20iの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14及び室外熱交換器22において吸熱する。
【0247】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0248】
第2除湿暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側および凝縮圧力調整手段側の両方の冷媒流路を閉鎖し、第2電磁弁26bを開放するとともに、第1及び第3電磁弁26a,26cを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図41に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20f、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20i,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0249】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、前記第1除湿暖房運転と同様に、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。
【0250】
コントローラ40は、オートエアコンスイッチがオンの状態に設定されている場合に、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転を、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、車室外の湿度、車室内の湿度Th、日射量Ts等の環境条件に基づいて切換える運転切換え制御処理を行う。
【0251】
また、コントローラ40は、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによって吹出口11c,11d,11eのモードを切換えるとともに、吹出口11c,11d,11eから吹出される空気の温度を目標吹出温度TAOとするために、エアミックスダンパ16の開度を制御する。
【0252】
また、コントローラ40は、運転切換え制御処理によって切り換えられる各運転において、目標吹出温度TAOに応じてフットモード、ベントモード、バイレベルモードの切り替えを行う。具体的には、目標吹出温度TAOが例えば40℃以上など、高温となる場合にフットモードに設定する。また、コントローラ40は、目標吹出温度TAOが例えば25℃未満など、低温となる場合にベントモードに設定する。さらに、コントローラ40は、目標吹出温度TAOが、フットモードが設定される目標吹出温度TAOとベントモードが設定される目標吹出温度TAOとの間の温度の場合にバイレベルモードに設定する。
【0253】
また、コントローラ40は、暖房運転および除湿暖房運転において、運転状態に応じて第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を制御する膨張手段制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図42のフローチャートを用いて説明する。
【0254】
(ステップS61)
ステップS61においてCPUは、運転が暖房運転または除湿暖房運転であるか否かを判定する。暖房運転または除湿暖房運転であると判定した場合にはステップS62に処理を移し、暖房運転または除湿暖房運転であると判定しなかった場合には膨張手段制御処理を終了する。
【0255】
(ステップS62)
ステップS61において運転が暖房運転または除湿暖房運転であると判定した場合に、ステップS62においてCPUは、低圧冷媒温度センサ46の検出温度Tlpおよび低圧冷媒圧力センサ47の検出圧力Plpに基づいて冷媒の過熱度SHを算出する。
【0256】
(ステップS63)
ステップS63においてCPUは、ステップS32において算出された過熱度SHが所定値以上か否かを判定する。過熱度SHが所定値以上と判定した場合にはステップS69に処理を移し、過熱度SHが所定値以上と判定しなかった場合にはステップS64に処理を移す。
【0257】
(ステップS64)
ステップS63において過熱度SHが所定値以上と判定しなかった場合に、ステップS64においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて目標過冷却度SCtを設定する。例えば、目標吹出温度TAOが所定値(例えば、60℃)以上の場合には第1目標過冷却度SCt1(例えば、15℃)に設定し、目標吹出温度TAOが所定値未満の場合には第2目標過冷却度SCt2(例えば、12℃)に設定する。
【0258】
(ステップS65)
ステップS65においてCPUは、ステップS64において設定された目標過冷却度SCtに対して、室内送風機12の風量Qaに基づく補正量H1および冷媒回路20を流通する冷媒の流量Qrに基づく補正量H2を算出する。
具体的には、室内送風機12の風量Qaが所定風量以上の場合には補正量H1をゼロとし、風量Qaが所定風量未満の場合には風量Qaに応じて過冷却度SCが小さくなる補正量H1(例えば、−10≦H1≦0)とする。また、冷媒回路20の高圧側を流通する冷媒の流量Qrが所定流量以上の場合には流量Qrに応じて過冷却度が大きくなる補正量H2(例えば、0≦H2≦5)とし、流量Qrが所定流量未満の場合には流量Qrの減少に応じて過冷却度SCが小さくなる補正量H2(例えば、−5≦H2<0)とする。冷媒回路20の高圧側を流通する冷媒の流量Qrは、冷媒回路20の高圧側の圧力の上昇に従って多くなり、圧力の下降に従って少なくなる関係にあることから、高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて算出される。
【0259】
(ステップS66)
ステップS66においてCPUは、目標過冷却度SCtに補正量H1,H2を加えることで補正目標過冷却度SCtc(SCtc=SCt−(H1+H2))を算出する。
【0260】
(ステップS67)
ステップS67においてCPUは、高圧冷媒温度センサ44の検出温度Thpおよび高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて冷媒の過冷却度SCを算出する。
【0261】
(ステップS68)
ステップS68においてCPUは、過冷却度SCが補正目標過冷却度SCtcとなるように第1制御弁24の弁開度を制御し、膨張手段制御処理を終了する。
【0262】
(ステップS69)
ステップS63において過熱度SHが所定値以上と判定した場合に、ステップS69においてCPUは、低圧冷媒の過熱度SHを目標過熱度SHtとなるように第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を制御する過熱度制御処理を行い、膨張手段制御処理を終了する。
【0263】
また、コントローラ40は、除湿冷房運転において、吸熱器14の吸熱能力および放熱器15の放熱能力を制御するための除湿冷房能力制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図43のフローチャートを用いて説明する。
【0264】
(ステップS71)
ステップS71においてCPUは、運転が除湿冷房運転であるか否かを判定する。除湿冷房運転であると判定した場合にはステップS72に処理を移し、除湿冷房運転であると判定しなかった場合には除湿冷房能力制御処理を終了する。
【0265】
(ステップS72)
ステップS71において除湿冷房運転であると判定した場合に、ステップS72においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて高圧冷媒の目標圧力Phptを算出する。
【0266】
(ステップS73)
ステップS73においてCPUは、高圧冷媒の目標圧力Phptと高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側の弁開度を制御する。
具体的には、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段の弁開度を、全閉を除く大と小の2段階を切換えることによって行う。この場合、弁開度を小から大に切換えると高圧冷媒の圧力Phpは低下し、弁開度を大から小に切換えると高圧冷媒の圧力Phpが上昇する。
【0267】
(ステップS74)
ステップS74においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて吸熱器14における冷媒の目標蒸発温度Tetを算出する。
【0268】
(ステップS75)
ステップS75においてCPUは、吸熱器14における冷媒の蒸発温度Teが目標蒸発温度Tetとなるように、吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて圧縮機21の電動モータ21aの回転数を制御し、除湿冷房能力制御処理を終了する。
【0269】
また、コントローラ40は、第1除湿暖房運転において、運転状態に応じて第2制御弁25の弁開度を制御する蒸発器温度制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図44のフローチャートを用いて説明する。
【0270】
(ステップS81)
ステップS81においてCPUは、運転状態が第1除湿暖房運転か否かを判定する。第1除湿運転と判定した場合にはステップS82に処理を移し、第1除湿暖房運転と判定しなかった場合には蒸発器温度制御処理を終了する。
【0271】
(ステップS82)
ステップS81において第1除湿暖房運転であると判定した場合に、ステップS82においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて吸熱器14における冷媒の目標蒸発温度Tetを算出する。
【0272】
(ステップS83)
ステップS83においてCPUは、目標蒸発温度Tetと吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて第2制御弁25の弁開度を制御する。
具体的には、目標蒸発温度Tetよりも吸熱器温度センサ48の検出温度Teが低い場合には第2制御弁25の弁開度を小さくし、目標蒸発温度Tetよりも検出温度Teが高い場合には弁開度を大きくする。
【0273】
また、コントローラ40は、暖房運転および第1除湿暖房運転において、冷媒回路20に封入された冷媒量が適正か否かを判定する冷媒量判定処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図45のフローチャートを用いて説明する。
【0274】
(ステップS91)
ステップS91においてCPUは、車室外の温度Tam、室内送風機12の風量Qa、圧縮機21の電動モータ21aの回転数Nc等、冷媒回路20の冷媒量を判定可能な熱負荷条件であるか否かを判定する。冷媒量を判定可能な熱負荷条件であると判定した場合にはステップS92に処理を移し、冷媒量を判定可能な熱負荷条件であると判定しなかった場合には冷媒量判定処理を終了する。
【0275】
(ステップS92)
ステップS91において冷媒量を判定可能な熱負荷条件であると判定した場合に、ステップS92においてCPUは、低圧冷媒温度センサ46の検出温度Tlpおよび低圧冷媒圧力センサ47の検出圧力Plpに基づいて冷媒の過熱度SHを算出する。
【0276】
(ステップS93)
ステップS93においてCPUは、高圧冷媒温度センサ44の検出温度Thpおよび高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて冷媒の過冷却度SCを算出する。
【0277】
(ステップS94)
ステップS94においてCPUは、ステップS62において算出された冷媒の過熱度SHと、ステップS93において算出された冷媒の過冷却度SCと、第1制御弁24の膨張手段側の弁開度と、に基づいて冷媒回路20の冷媒量が適正か否かを判定する。冷媒量が適正と判定した場合には冷媒量判定処理を終了し、冷媒量が適正と判定しなかった場合にはステップS95に処理を移す。
冷媒回路20の冷媒量が適正か否かの判定は、ステップS92において算出された冷媒の過熱度SHと、ステップS93において算出された冷媒の過冷却度SCと、第1制御弁24の膨張手段側の弁開度と、がそれぞれ適正の範囲内であるか否かを判断することによって行われる。
【0278】
(ステップS95)
ステップS94において冷媒量が適正と判定しなかった場合に、ステップS95においてCPUは、冷媒回路20の冷媒量が不足または過剰である旨を表示部50に表示して冷媒量判定処理を終了する。
【0279】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、暖房運転において第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖して膨張手段側の弁開度を制御するとともに、除湿冷房運転において膨張手段側の冷媒流路を閉鎖して凝縮圧力調整手段側の弁開度を制御するようにしている。これにより、除湿冷房運転のときに放熱器15における冷媒の凝縮圧力を調整することによって放熱器15の放熱量を調整することができるので、車室内に吹出す空気の加熱に必要な加熱量を確保することができ、車室内に供給する空気の温度を確実に設定温度とする制御が可能となる。
【0280】
また、除湿冷房運転時において、目標圧力Phptと高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側の弁開度を制御し、吸熱器14における冷媒の蒸発温度Teが目標蒸発温度Tetとなるように、吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて圧縮機21の電動モータ21aの回転数を制御している。これにより、吸熱器14における吸熱量と放熱器15における放熱量をそれぞれ確実に目的の吸熱量および放熱量とすることができるので、車室内の温度および湿度を良好な状態に保持することが可能となる。
【0281】
また、膨張手段と凝縮圧力調整手段とを一体に構成した第1制御弁24を備えている。これにより、部品点数を減らすことができるので、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0282】
また、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段の弁開度を、開度の異なる2種類の弁開度を切り換えることによって制御するようにしている。これにより、弁開度を二段階に切換える簡単な制御となるため、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0283】
図46乃至
図48は本発明の第8実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0284】
本実施形態の車両用空気調和装置は、
図46に示すように、第6実施形態における第1制御弁24の代わりに、弁開度が後述する減圧領域と凝縮圧力調整領域のそれぞれの範囲で調整可能な流量調整弁としての第3制御弁34が設けられている。第3制御弁34の冷媒流入側には、冷媒流通路20bが接続されている。また、第3制御弁34の冷媒流出側には、室外熱交換器22の他端側が接続され、冷媒流通路20kが設けられている。また、圧縮機21の冷媒吸入側には、第6実施形態における冷媒流通路20eの代わりに、室外熱交換器22の一端側が接続され、冷媒流通路20lが設けられている。
【0285】
第3制御弁34は、暖房運転のときに冷媒を減圧可能な弁開度の範囲である減圧領域と、弁開度が最大のときに上流側または下流側の冷媒流路と略同一の開口面積を有し、除湿冷房運転のときに放熱器の凝縮圧力を調整可能な弁開度の範囲である凝縮圧力調整領域と、を有している。第3制御弁34は、凝縮圧力調整領域において弁開度の異なる大小2種類の弁開度のいずれかに設定される。
【0286】
コントローラ40の出力側には、
図47に示すように、第6実施形態の第1制御弁24の代わりに第3制御弁34が接続されている。
【0287】
以上のように構成された車両用空気調和装置において、第3制御弁34は、暖房運時時および第1除湿暖房運転時に弁開度が減圧領域に設定され、冷房運転時および除湿冷房運転時に弁開度が凝縮圧力調整領域に設定される。放熱器15から流出する冷媒は、暖房運転時および第1除湿暖房運転時に、第1実施形態の場合と異なり、室外熱交換器22を他端側から一端側に向かって流通し、冷媒流通路20lを介して圧縮機21に吸入される。冷房運転時および除湿冷房運転時には、第6実施形態と同様に冷媒が室外熱交換器22の他端側から一端側に向かって流通し、吸熱器14を介して圧縮機21に吸入される。
【0288】
コントローラ40は、除湿冷房運転時において、吸熱器14の吸熱能力および放熱器15の放熱能力を制御するための除湿冷房能力制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図48のフローチャートを用いて説明する。
【0289】
(ステップS101)
ステップS101においてCPUは、運転が除湿冷房運転であるか否かを判定する。除湿冷房運転であると判定した場合にはステップS102に処理を移し、除湿冷房運転であると判定しなかった場合には除湿冷房能力御処理を終了する。
【0290】
(ステップS102)
ステップS101において除湿冷房運転であると判定した場合に、ステップS102においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて高圧冷媒の目標圧力Phptを算出する。
【0291】
(ステップS103)
ステップS103においてCPUは、高圧冷媒の目標圧力Phptと高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて第3制御弁34の凝縮圧力調整領域において弁開度を制御する。
具体的には、第3制御弁34の凝縮圧力調整領域における弁開度を、大と小の2段階を切換えることによって行う。この場合、弁開度を小から大に切換えると高圧冷媒の圧力Phpは低下し、弁開度を大から小に切換えると高圧冷媒の圧力Phpが上昇する
【0292】
(ステップS104)
ステップS104においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて吸熱器14における冷媒の目標蒸発温度Tetを算出する。
【0293】
(ステップS105)
ステップS105においてCPUは、吸熱器14における冷媒の蒸発温度Teが目標蒸発温度Tetとなるように、吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて圧縮機21の電動モータ21aの回転数を制御し、除湿冷房能力制御処理を終了する。
【0294】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、第3制御弁34の弁開度を、暖房運転において減圧領域内で制御するとともに、除湿冷房運転において凝縮圧力調整領域内で制御するようにしている。これにより、除湿冷房運転のときに放熱器15における冷媒の凝縮圧力を調整することによって放熱器15の放熱量を調整することができるので、車室内に吹出す空気の加熱に必要な加熱量を確保することができ、車室内に供給する空気の温度を確実に設定温度とする制御が可能となる。
【0295】
また、除湿冷房運転時において、目標圧力Phptと高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて第3制御弁34の凝縮圧力調整領域において弁開度を制御し、吸熱器14における冷媒の蒸発温度Teが目標蒸発温度Tetとなるように、吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて圧縮機21の電動モータ21aの回転数を制御している。これにより、吸熱器14における吸熱量と放熱器15における放熱量をそれぞれ確実に目的の吸熱量および放熱量とすることができるので、車室内の温度および湿度を良好な状態に保持することが可能となる。
【0296】
また、第3制御弁34の凝縮圧力調整領域における弁開度を、開度の異なる2種類の弁開度を切り換えることによって制御するようにしている。これにより、弁開度を二段階に切換える簡単な制御となるため、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0297】
図49および
図50は、本発明の第9実施形態を示すものである。尚、前記第7実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0298】
この車両用空気調和装置の冷媒回路20は、
図49に示すように、第7実施形態における第1制御弁24の代わりに、冷媒流入口および冷媒流出口がそれぞれ1つずつ設けられ、減圧領域と凝縮圧力調整領域のそれぞれの範囲で弁開度を調整可能な第3制御弁34を備えている。
【0299】
具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側に放熱器15の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20aが設けられている。また、放熱器15の冷媒流出側には、第3制御弁34の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20bが設けられている。第3制御弁34の冷媒流出側には、室外熱交換器22の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20cが設けられている。また、室外熱交換器22の冷媒流出側には、圧縮機21の冷媒吸入側が接続されることによって、冷媒流通路20dが設けられている。冷媒流通路20dには、冷媒流通方向の上流側から順に、第1電磁弁26a、アキュムレータ29が設けられている。冷媒流通路20bには、内部熱交換器23の高圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20eが設けられている。冷媒流通路20eには、冷媒流通方向の上流側から順に、第2電磁弁26b、第1逆止弁27aが設けられている。内部熱交換器23の高圧冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20fが設けられている。冷媒流通路20fには、膨張弁28が設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、内部熱交換器23の低圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20gが設けられている。冷媒流通路20gには、第2制御弁25が設けられている。内部熱交換器23の低圧冷媒流出側には、冷媒流通路20dの第1電磁弁26aとアキュムレータ29との間が接続されることによって、冷媒流通路20hが設けられている。室外熱交換器22の冷媒流出側には、冷媒流通路20dと並列に、気液分離器22eの冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20iが設けられている。冷媒流通路20iには、第3電磁弁26cが設けられている。気液分離器22eの冷媒流出側には、過冷却部22fを介して冷媒流通路20eの第1逆止弁27aの冷媒流通方向下流側が接続されることによって、冷媒流通路20jが設けられている。冷媒流通路20jには、第2逆止弁27bが設けられている。また、冷媒流通路20aは、冷媒流通路20cと接続されることによって除霜用冷媒流路としての冷媒流通路20kが設けられている。冷媒流通路20kには、第4電磁弁26dが設けられている。
【0300】
第3制御弁34は、
図50に示すように、冷媒流通路20bを流通した冷媒が流通する弁本体34aと、弁本体34a内の冷媒流路を膨張手段または凝縮圧力調整手段に切換えるとともに、膨張手段および凝縮圧力調整手段におけるそれぞれの流路の開度を調整するための開度調整機構34bと、を備えている。
【0301】
弁本体34aには、冷媒流通路20bが接続された冷媒流入口34cと連通する冷媒流入室34dと、冷媒流通路20cが接続された冷媒流出口34eと連通する冷媒流出室34fと、が形成されている。冷媒流入室34dは、水平方向に延びる断面円形状の空間からなり、外周面の冷媒流出室34f側に冷媒流入口34cが設けられている。また、冷媒流出室34fは、冷媒流入室34dと同軸状に延びる断面円形状の空間からなり、開度調整機構34bによって開閉される第1連通孔34gを介して冷媒流入室34dと連通している。
【0302】
また、弁本体34aには、冷媒流入室34dの冷媒流出室34f側と冷媒流出室34fとを連通する膨張手段用冷媒流路34hが形成されている。膨張手段用冷媒流路34hの冷媒流出室34f側には、開度調整手段34bによって開閉される第2連通孔34iが設けられている。
【0303】
さらに、弁本体34aには、冷媒流入室34dの冷媒流出室34f側と反対側と、膨張手段用冷媒流路34hの第2連通孔34iの冷媒流入室34d側と、を連通するパイロット冷媒流路34jが形成されている。パイロット冷媒流路34jの冷媒流出室34f側には、開度調整機構34bによって開閉される第3連通孔34kが設けられている。
【0304】
開度調整機構34bは、コイルに対してプランジャを直線的に往復動させるソレノイド34lと、第1連通孔34gを開閉するための第1弁体34mと、第2連通孔34iを開閉するための第2弁体34nと、第3連通孔34kを開閉するための第3弁体34oと、を有している。
【0305】
ソレノイド34lは、コイルに通電する電流の大きさを調整することによって、コイルに対してプランジャの位置を調整することが可能な比例ソレノイドである。
【0306】
第1弁体34mは、第1連通孔34gを開閉するための弁体部34pと、冷媒流入室34d内を移動可能なピストン部34qと、弁体部34pとピストン部34qとを連結する連結部34rと、を有している。ピストン部34qには、冷媒流入室34dの冷媒流出室34f側の空間とその反対側の空間を連通する連通孔34sが設けられている。また、第1弁体34mは、ピストン部34qの冷媒流出室34fと反対側に設けられたコイルスプリング34tによって、弁体部34pが第1連通孔34gを閉鎖する方向に付勢されている。
【0307】
第2弁体34nは、一端部が先端に向かって先細りとなる断面円形の針状部材であり、プランジャの先端に固定されている。第2弁体34nは、プランジャが上方に移動するに従って第2連通孔34iの開度が大きくなる。
【0308】
第3弁体34oは、一端部が先端に向かって先細りとなる断面円形状の針状部材であり、プランジャの軸方向中央部に設けられた係合部34uが係合可能に設けられている。また、第3弁体34oは、上部に設けられたコイルスプリング34vによって第3連通孔34kを閉鎖する方向に付勢されている。第3弁体34oは、プランジャの所定以上の上方への移動で係合部34uが係合し、それ以上のプランジャの上方への移動に従い第3連通孔34kの開度が大きくなる。
【0309】
図50(a)では、第1弁体34m、第2弁体34nおよび第3弁体34oが、それぞれ第1連通孔34g、第2連通孔34iおよび第3連通孔34kを閉鎖している。
【0310】
図50(a)の状態からソレノイド34lのプランジャを上方に移動させると、
図50(b)に示すように、第1弁体34mおよび第3弁体34oがそれぞれ第1連通孔34gおよび第3連通孔34kを閉鎖した状態で、第2弁体34nが第2連通孔34iを開放する。
このとき、冷媒流入口34cから流入した冷媒流入室34d内の冷媒は、膨張手段用冷媒流路34hを介して減圧されて冷媒流出室34fに流入し、冷媒流出口34eから流出する。第1弁体34mは、コイルスプリング34tの付勢力によって第1連通孔34gを閉鎖した状態を維持する。第1連通孔34gおよび第3連通孔34kが閉鎖される状態の範囲内でソレノイド34lのプランジャを移動させることによって、膨張手段として弁開度が調整される。
【0311】
図50(b)の状態からソレノイド34lのプランジャをさらに上方に移動させると、
図50(c)に示すように、プランジャの上方への移動によって、第2弁体34nおよび第3弁体34oが、それぞれ第2連通孔34iおよび第3連通孔34kを開放する。第2連通孔34iおよび第3連通孔34kが開放されると、冷媒流入室34dの第1連通孔34g側と反対側の空間は、パイロット冷媒流路34jを介して冷媒流出室34fと連通することによって圧力が低下する。これにより、第1弁体34mは、
図50(c)に示すように、コイルスプリング34tの付勢力に抗して冷媒流入室34dの第1連通孔34g側と反対側に移動し、第1連通孔34gを開放する。第1連通孔34gが開放される状態の範囲内でソレノイド34lのプランジャを移動させることによって、凝縮圧力調整手段として弁開度が調整される。
【0312】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、暖房運転において第3制御弁34の第1連通孔34gを閉鎖して膨張手段用冷媒流路34hの第2連通孔34iの開度を制御するとともに、除湿冷房運転において第1連通孔34gの開度を制御するようにしている。これにより、除湿冷房運転のときに放熱器15における冷媒の凝縮圧力を調整することによって放熱器15の放熱量を調整することができるので、車室内に吹出す空気の加熱に必要な加熱量を確保することができ、車室内に供給する空気の温度を確実に設定温度とする制御が可能となる。
【0313】
尚、前記実施形態では、暖房運転のときに室外熱交換器22に流入する冷媒を減圧するための膨張手段と、除湿冷房運転のときに放熱器15における冷媒の凝縮圧力を調整するための凝縮圧力調整手段と、が一体に設けられた第1制御弁24を示したが、これに限られるものではない。例えば、膨張手段としての電子式膨張弁と、凝縮圧力調整手段としての凝縮圧力調整弁を互いに並列に室外熱交換器22の冷媒流通方向上流側に接続するようにしても前記実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0314】
また、前記実施形態では、第1制御弁24の弁本体24a内の冷媒流路の切換え、および、開度の調整をソレノイド24hによって行うようにしたものを示したが、これに限られるものではない。弁本体24a内の冷媒流路の切換え、および、開度の調整が可能であれば、例えばステッピングモータによって弁本体24a内の冷媒流路の切換え、および、開度の調整を行うようにしてもよい。
【0315】
また、前記実施形態では、室外熱交換器22の上流側に位置する第1制御弁24の膨張手段の弁開度を制御することによって、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度SCを制御するようにしたものを示したが、吸熱器14の上流側に位置する膨張弁28の代わりに電子式膨張弁を設け、この電子式膨張弁の弁開度を制御することによって、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度SCを制御するようにしてもよい。
【0316】
また、前記実施形態では、除湿冷房能力制御処理を、高圧冷媒の目標圧力Phptと高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側の弁開度、および、第3制御弁34の凝縮圧力調整領域における弁開度を制御するようにしたものを示したがこれに限られるものではない。例えば、高圧冷媒の目標温度Thptと高圧冷媒温度センサ44の検出温度Thpに基づいて第1制御弁24および第3制御弁34を制御するようにしても同様の効果を得ることが可能である。
【0317】
また、前記実施形態では、除湿冷房能力制御処理を、吸熱器14における冷媒の蒸発温度Teが目標蒸発温度Tetとなるように、吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて圧縮機21の電動モータ21aの回転数を制御するようにしたものを示したがこれに限られるものではない。例えば、吸熱器14における冷媒の蒸発温度の代わりに、吸熱器14で冷却された後の空気の温度が目標温度となるように、圧縮機21の電動モータ21aの回転数を制御するようにしても同様の効果を得ることが可能である。
【0318】
また、前記第7実施形態では、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段の弁開度を、全閉を除く大と小の2段階を切換えることによって行うようにしたものを示している。また、前記第8実施形態では、第3制御弁34の凝縮圧力調整領域における弁開度を、大と小の2段階を切換えることによって行うようにしたものを示している。しかし、凝縮圧力調整手段の弁開度および第3制御弁34の凝縮圧力調整領域における弁開度を、放熱器の流入側の冷媒の圧力と流出側の冷媒の圧力との圧力差を調整する状態と、全開とする状態と、を互いに切換えるようにしてもよい。この場合、高圧冷媒の目標圧力Phptと高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて放熱器における冷媒の凝縮圧力を最適な圧力とすることができるので、より確実に車室内に吹出す空気の加熱に必要な加熱量を確保することができる。
【0319】
図51乃至
図61は、本発明の第10実施形態を示すものである。
【0320】
本発明の車両用空気調和装置は、
図51に示すように、車室内に設けられた空調ユニット10と、車室内および車室外に亘って構成された冷媒回路20と、を備えている。
【0321】
空調ユニット10は、車室内に供給する空気を流通させるための空気流通路11を有している。空気流通路11の一端側には、車室外の空気を空気流通路11に流入させるための外気吸入口11aと、車室内の空気を空気流通路11に流入させるための内気吸入口11bと、が設けられている。また、空気流通路11の他端側には、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の足元に向かって吹き出させるフット吹出口11cと、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の上半身に向かって吹き出させるベント吹出口11dと、空気流通路11を流通する空気を車両のフロントガラスの車室内側の面に向かって吹き出させるデフ吹出口11eと、が設けられている。
【0322】
空気流通路11内の一端側には、空気を空気流通路11の一端側から他端側に向かって流通させるためのシロッコファン等の室内送風機12が設けられている。この室内送風機12は電動モータ12aによって駆動される。
【0323】
空気流通路11の一端側には、外気吸入口11a及び内気吸入口11bの一方を開放して他方を閉鎖することが可能な吸入口切換えダンパ13が設けられている。この吸入口切換えダンパ13は電動モータ13aによって駆動される。吸入口切換えダンパ13によって内気吸入口11bが閉鎖されて外気吸入口11aが開放されると、外気吸入口11aから空気が空気流通路11に流入する外気供給モードとなる。また、吸入口切換えダンパ13によって外気吸入口11aが閉鎖されて内気吸入口11bが開放されると、内気吸入口11bから空気が空気流通路11に流入する内気循環モードとなる。さらに、吸入口切換えダンパ13が外気吸入口11aと内気吸入口11bとの間に位置し、外気吸入口11aと内気吸入口11bがそれぞれ開放されると、吸入口切換えダンパ13による外気吸入口11a及び内気吸入口11bのそれぞれの開口率に応じた割合で、外気吸入口11aと内気吸入口11bとから空気が空気流通路11に流入する外内気吸入モードとなる。
【0324】
空気流通路11の他端側のフット吹出口11c、ベント吹出口11d及びデフ吹出口11eのそれぞれには、各吹出口11c,11d,11eを開閉するための吹出口切換えダンパ13b,13c,13dが設けられている。この吹出口切換えダンパ13b,13c,13dは、図示しないリンク機構によって連動するように構成され、電動モータ13eによってそれぞれ開閉される。ここで、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11cが開放されてベント吹出口11dが閉鎖され、デフ吹出口11eが僅かに開放されると、空気流通路11を流通する空気の大部分がフット吹出口11cから吹き出されると共に残りの空気がデフ吹出口11eから吹き出されるフットモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが閉鎖されてベント吹出口11dが開放されると、空気流通路11を流通する空気の全てがベント吹出口11dから吹き出されるベントモードとなる。さらに、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが開放されてデフ吹出口11eが閉鎖されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びベント吹出口11dから吹き出されるバイレベルモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが閉鎖されてデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がデフ吹出口11eから吹き出されるデフモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってベント吹出口11dが閉鎖されてフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びデフ吹出口11eから吹き出されるデフフットモードとなる。尚、バイレベルモードにおいては、フット吹出口11cから吹き出される空気の温度がベント吹出口11dから吹き出される空気の温度よりも高温となる温度差が生じるような、空気流通路11、フット吹出口11c、ベント吹出口11d、後述する吸熱器及び放熱器の互いの位置関係や構造となっている。
【0325】
室内送風機12の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を冷却及び除湿するための吸熱器14が設けられている。また、吸熱器14の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を加熱するための放熱器15が設けられている。吸熱器14及び放熱器15は、それぞれ内部を流通する冷媒と空気流通路11を流通する空気とを熱交換させるためのフィンとチューブ等からなる熱交換器である。
【0326】
吸熱器14と放熱器15との間の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気の放熱器15において加熱される割合を調整するためのエアミックスダンパ16が設けられている。エアミックスダンパ16は電動モータ16aによって駆動される。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側に位置することによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が減少し、空気流通路11の放熱器15以外の部分側に移動させることによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が増加する。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側を閉鎖して放熱器15以外の部分を開放した状態で開度が0%となり、空気流通路11の放熱器15の上流側を開放し、放熱器15以外の部分を閉鎖した状態で開度が100%となる。
【0327】
冷媒回路20は、前記吸熱器14、前記放熱器15、冷媒を圧縮するための圧縮機21、冷媒と車室外の空気とを熱交換するための室外熱交換器22、放熱器15および室外熱交換器22の少なくとも放熱器15から流出する冷媒と吸熱器14から流出する冷媒とを熱交換させるための内部熱交換器23、暖房運転時に室外熱交換器22に流入する冷媒を減圧するための膨張手段と除湿冷房運転時に放熱器における冷媒の凝縮圧力を制御するための凝縮圧力調整手段とを有する第1制御弁24と、吸熱器14における冷媒の蒸発温度を調整するための蒸発温度調整弁としての第2制御弁25と、第1〜第3電磁弁26a,26b,26c、第1〜第2逆止弁27a,27b、膨張弁28、気体の冷媒と液体の冷媒を分離して液冷媒が圧縮機21に吸入されることを防止するためのアキュムレータ29を有し、これらは銅管やアルミニウム管によって接続されている。
【0328】
具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側に放熱器15の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20aが設けられている。また、放熱器15の冷媒流出側には、第1制御弁24の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20bが設けられている。第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の一端側が接続されることによって、冷媒流通路20cが設けられている。また、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の他端側が接続されることによって、冷媒流通路20dが設けられている。室外熱交換器22の他端側には、冷媒流通路20dと並列に、圧縮機21の冷媒吸入側が接続されることによって、冷媒流通路20eが設けられている。冷媒流通路20eには、冷媒流通方向の上流側から順に、第1電磁弁26a、アキュムレータ29が設けられている。冷媒流通路20bには、内部熱交換器23の高圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20fが設けられている。冷媒流通路20fには、冷媒流通方向の上流側から順に、第2電磁弁26b、第1逆止弁27aが設けられている。内部熱交換器23の高圧冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側接続されることによって、冷媒流通路20gが設けられている。冷媒流通路20gには、膨張弁28が設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、内部熱交換器23の低圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20hが設けられている。冷媒流通路20hには、第2制御弁25が設けられている。内部熱交換器23の低圧冷媒流出側には、冷媒流通路20eの第1電磁弁26aとアキュムレータ29との間が接続されることによって、冷媒流通路20iが設けられている。室外熱交換器22の一端側には、冷媒流通路20cと並列に、冷媒流通路20fの第1逆止弁27aの冷媒流通方向の下流側が接続されることによって、冷媒流通路20jが設けられている。冷媒流通路20jには、冷媒流通方向の上流側から順に、第3電磁弁26c、第2逆止弁27bが設けられている。
【0329】
圧縮機21及び室外熱交換器22は、車室外に配置されている。また、圧縮機21は電動モータ21aによって駆動される。室外熱交換器22には、車両の停止時に車室外の空気と冷媒とを熱交換させるための室外送風機30が設けられている。室外送風機30は、電動モータ30aによって駆動される。
【0330】
第1制御弁24には、膨張手段側の冷媒流路と凝縮圧力調整手段側の冷媒流路がそれぞれ形成されている。膨張手段側および凝縮圧力調整手段側の冷媒流路は、それぞれ冷媒流路の開度を調整する弁によって完全に閉鎖可能に構成されている。
【0331】
第2制御弁25は、
図52に示すように、冷媒流通路20hを流通する冷媒が流通する弁本体25aと、弁本体25a内に形成された冷媒流路の開度を調整するための開度調整機構25bと、を有している。
【0332】
弁本体25aは、冷媒が流入する冷媒流入部25cと、流出する冷媒が流通する冷媒流出部25dと、を有している。冷媒流入部25cと冷媒流出部25dとの間には、冷媒流入部25cと冷媒流出部25dとを連通する円形状の連通孔25eが設けられている。
【0333】
開度調整機構25bは、コイル25fに対してプランジャ25gを直線的に往復動させるソレノイド25hと、プランジャ25gに連結され、弁本体25aの連通孔25eを開閉する弁体25iと、を有している。
【0334】
弁体25iは、連通孔25eの内径と略同一の外形を有しており、プランジャ25gの往復動に伴い上下方向に移動する。弁体25iは、下方に移動して連通孔25e内に挿入されることで、連通孔25eを閉鎖する。弁体25iは、コイルスプリング25jによって連通孔25eを開放する方向である上方に付勢されている。弁体25iには、弁体25iが連通孔25eを閉鎖した状態で、連通孔25eの開口面積よりも小さい開口面積で冷媒流入部25cと冷媒流出部25dとを連通する冷媒流通孔25kが設けられている。
【0335】
第2制御弁25は、
図52(a)に示すように連通孔25eを開放し、
図52(b)に示すように連通孔25eを閉鎖して冷媒流通孔25kのみによって冷媒流入部25cと冷媒流出部25dとを連通する。第2制御弁25は、弁体25iによって連通孔25eを開閉させることにより、冷媒流通路20hを流通する冷媒の流量を2段階に調整することが可能である。
【0336】
さらに、車両用空気調和装置は、車室内の温度及び湿度を設定された温度及び設定された湿度とする制御を行うためのコントローラ40を備えている。
【0337】
コントローラ40は、CPU、ROM,RAMを有している。コントローラ40は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0338】
コントローラ40の出力側には、
図53に示すように、室内送風機12駆動用の電動モータ12a、吸入口切換えダンパ13駆動用の電動モータ13a、吹出口切換えダンパ13b,13c,13d駆動用の電動モータ13e、エアミックスダンパ16駆動用の電動モータ16a、圧縮機21駆動用の電動モータ21a、第1制御弁24、第2制御弁25、第1〜第3電磁弁26a,26b,26c、室外送風機30駆動用の電動モータ30aが接続されている。
【0339】
コントローラ40の入力側には、
図53に示すように、車室外の温度Tamを検出するための外気温度センサ41、車室内の温度Trを検出するための内気温度センサ42、日射量Tsを検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ43、冷媒流通路20bを流通する高圧冷媒の温度Thpを検出するための高圧冷媒温度センサ44、冷媒流通路20bを流通する高圧冷媒の圧力Phpを検出するための高圧冷媒圧力センサ45、圧縮機21に吸入される冷媒流通路20eを流通する低圧冷媒の温度Tlpを検出するための低圧冷媒温度センサ46、圧縮機21に吸入される冷媒流通路20eを流通する冷媒の圧力Plpを検出するための低圧冷媒圧力センサ47、吸熱器14における冷媒の蒸発温度Teを検出するための吸熱器温度センサ48、目標設定温度Tsetや運転の切換えに関するモードを設定するための操作部49、運転状態や車室内の温度Tr等を表示するための表示部50が接続されている。
【0340】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転が行われる。以下、それぞれの運転について説明する。
【0341】
冷房運転及び除湿冷房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側の流路を閉鎖するとともに、凝縮圧力調整手段側の流路を開放し、第3電磁弁26cを開放するとともに、第1及び第2電磁弁26a,26bを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図54に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20d、室外熱交換器22、冷媒流通路20j,20f、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20i,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、冷房運転において、室外熱交換器22において放熱して吸熱器14において吸熱する。除湿冷房運転として
図54の一点鎖線に示すようにエアミックスダンパ16が開放されると、冷媒回路20を流通する冷媒は放熱器15においても放熱する。
【0342】
このとき、冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却され、車室内の温度を目標設定温度Tsetとするために吹出口11c,11d,11eから吹き出すべき空気の温度である目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。
目標吹出温度TAOは、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、日射量Ts等の環境条件を、外気温度センサ41、内気温度センサ42、日射センサ43等によって検出し、検出された環境条件と目標設定温度Tsetに基づいて算出されるものである。
【0343】
また、除湿冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換して冷却されることによって除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、放熱器15おいて放熱する冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0344】
暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流路を開放するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第1電磁弁26aを開放するとともに、第2および第3電磁弁26b,26cを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図55に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、室外熱交換器22において吸熱する。
【0345】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0346】
第1除湿暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流路を開放するとともに、凝縮圧力調整手段側の冷媒流路を閉鎖し、第1及び第2電磁弁26a,26bを開放するとともに、第3電磁弁26cを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図56に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20bを順に流通する。冷媒流通路20bを流通する冷媒の一部は、第1制御弁24、冷媒流通路20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。また、冷媒流通路20bを流通するその他の冷媒は、冷媒流通路20f、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20iの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14及び室外熱交換器22において吸熱する。
【0347】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0348】
第2除湿暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の膨張手段側および凝縮圧力調整手段側の両方の冷媒流路を閉鎖し、第2電磁弁26bを開放するとともに、第1及び第3電磁弁26a,26cを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図57に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20f、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20i,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0349】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、前記第1除湿暖房運転と同様に、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。
【0350】
コントローラ40は、オートエアコンスイッチがオンの状態に設定されている場合に、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転を、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、車室外の湿度、車室内の湿度Th、日射量Ts等の環境条件に基づいて切換える運転切換え制御処理を行う。
【0351】
また、コントローラ40は、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによって吹出口11c,11d,11eのモードを切換えるとともに、吹出口11c,11d,11eから吹出される空気の温度を目標吹出温度TAOとするために、エアミックスダンパ16の開度を制御する。
【0352】
また、コントローラ40は、運転切換え制御処理によって切り換えられる各運転において、目標吹出温度TAOに応じてフットモード、ベントモード、バイレベルモードの切り替えを行う。具体的には、目標吹出温度TAOが例えば40℃以上など、高温となる場合にフットモードに設定する。また、コントローラ40は、目標吹出温度TAOが例えば25℃未満など、低温となる場合にベントモードに設定する。さらに、コントローラ40は、目標吹出温度TAOが、フットモードが設定される目標吹出温度TAOとベントモードが設定される目標吹出温度TAOとの間の温度の場合にバイレベルモードに設定する。
【0353】
また、コントローラ40は、暖房運転および第1除湿暖房運転において、運転状態に応じて第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を制御する膨張手段制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図58のフローチャートを用いて説明する。
【0354】
(ステップS111)
ステップS111においてCPUは、運転が暖房運転または除湿暖房運転であるか否かを判定する。暖房運転または除湿暖房運転であると判定した場合にはステップS112に処理を移し、暖房運転または除湿暖房運転であると判定しなかった場合には膨張手段制御処理を終了する。
【0355】
(ステップS112)
ステップS111において運転が暖房運転または除湿暖房運転であると判定した場合に、ステップS112においてCPUは、低圧冷媒温度センサ46の検出温度Tlpおよび低圧冷媒圧力センサ47の検出圧力Plpに基づいて冷媒の過熱度SHを算出する。
【0356】
(ステップS113)
ステップS113においてCPUは、ステップS112において算出された過熱度SHが所定値以上か否かを判定する。過熱度SHが所定値以上と判定した場合にはステップS119に処理を移し、過熱度SHが所定値以上と判定しなかった場合にはステップS114に処理を移す。
【0357】
(ステップS114)
ステップS113において過熱度SHが所定値以上と判定しなかった場合に、ステップS114においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて目標過冷却度SCtを設定する。例えば、目標吹出温度TAOが所定値(例えば、60℃)以上の場合には第1目標過冷却度SCt1(例えば、15℃)に設定し、目標吹出温度TAOが所定値未満の場合には第2目標過冷却度SCt2(例えば、12℃)に設定する。
【0358】
(ステップS115)
ステップS115においてCPUは、ステップS114において設定された目標過冷却度SCtに対して、室内送風機12の風量Qaに基づく補正量H1および冷媒回路20を流通する冷媒の流量Qrに基づく補正量H2を算出する。
具体的には、室内送風機12の風量Qaが所定風量以上の場合には補正量H1をゼロとし、風量Qaが所定風量未満の場合には風量Qaに応じて過冷却度SCが小さくなる補正量H1(例えば、−10≦H1≦0)とする。また、冷媒回路20の高圧側を流通する冷媒の流量Qrが所定流量以上の場合には流量Qrに応じて過冷却度が大きくなる補正量H2(例えば、0≦H2≦5)とし、流量Qrが所定流量未満の場合には流量Qrの減少に応じて過冷却度SCが小さくなる補正量H2(例えば、−5≦H2<0)とする。冷媒回路20の高圧側を流通する冷媒の流量Qrは、冷媒回路20の高圧側の圧力の上昇に従って多くなり、圧力の下降に従って少なくなる関係にあることから、高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて算出される。
【0359】
(ステップS116)
ステップS116においてCPUは、目標過冷却度SCtに補正量H1,H2を加えることで補正目標過冷却度SCtc(SCtc=SCt−(H1+H2))を算出する。
【0360】
(ステップS117)
ステップS117においてCPUは、高圧冷媒温度センサ44の検出温度Thpおよび高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて冷媒の過冷却度SCを算出する。
【0361】
(ステップS118)
ステップS118においてCPUは、過冷却度SCが補正目標過冷却度SCtcとなるように第1制御弁24の弁開度を制御し、膨張手段制御処理を終了する。
【0362】
(ステップS119)
ステップS113において過熱度SHが所定値以上と判定した場合に、ステップS119においてCPUは、低圧冷媒の過熱度SHを目標過熱度SHtとなるように第1制御弁24の膨張手段側の弁開度を制御する過熱度制御処理を行い、膨張手段制御処理を終了する。
【0363】
また、コントローラ40は、除湿冷房運転において、吸熱器14の吸熱能力および放熱器15の放熱能力を制御するための除湿冷房能力制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図59のフローチャートを用いて説明する。
【0364】
(ステップS121)
ステップS121においてCPUは、運転が除湿冷房運転であるか否かを判定する。除湿冷房運転であると判定した場合にはステップS122に処理を移し、除湿冷房運転であると判定しなかった場合には除湿冷房能力御処理を終了する。
【0365】
(ステップS122)
ステップS121において除湿冷房運転であると判定した場合に、ステップS122においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて高圧冷媒の目標圧力Phptを算出する。
【0366】
(ステップS123)
ステップS123においてCPUは、高圧冷媒の目標圧力Phptと高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側の弁開度を制御する。
具体的には、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段の弁開度を、全閉を除く大と小の2段階を切換えることによって行う。この場合、弁開度を小から大に切換えると高圧冷媒の圧力Phpは低下し、弁開度を大から小に切換えると高圧冷媒の圧力Phpが上昇する
【0367】
(ステップS124)
ステップS124においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて吸熱器14における冷媒の目標蒸発温度Tetを算出する。
【0368】
(ステップS125)
ステップS125においてCPUは、吸熱器14における冷媒の蒸発温度Teが目標蒸発温度Tetとなるように、吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて圧縮機21の電動モータ21aの回転数を制御し、除湿冷房能力制御処理を終了する。
【0369】
また、コントローラ40は、第1除湿暖房運転のときに第2制御弁25の弁開度を他の運転のときの弁開度以下とすることで吸熱器14における冷媒の蒸発温度の低下を防止するための蒸発温度制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図60のフローチャートを用いて説明する。
【0370】
(ステップS131)
ステップS131においてCPUは、運転状態が第1除湿暖房運転か否かを判定する。第1除湿暖房運転と判定した場合にはステップS132に処理を移し、第1除湿暖房運転と判定しなかった場合には蒸発温度制御処理を終了する。
【0371】
(ステップS132)
ステップS131において第1除湿暖房運転であると判定した場合に、ステップS132においてCPUは、目標吹出温度TAOに基づいて吸熱器14における冷媒の目標蒸発温度Tetを算出する。
【0372】
(ステップS133)
ステップS133においてCPUは、目標蒸発器温度Tetと吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて第2制御弁25の弁開度を調整し、蒸発温度制御処理を終了する。
具体的には、目標蒸発温度Tetよりも吸熱器温度センサ48の検出温度Teが低い場合には第2制御弁25の弁開度を2段階のうちの開度小に設定し、目標蒸発温度Tetよりも検出温度Teが高い場合には開度大に設定する。
【0373】
また、コントローラ40は、暖房運転および第1除湿暖房運転において、冷媒回路20に封入された冷媒量が適正か否かを判定する冷媒量判定処理を行う。このときのコントローラ40の動作を
図61のフローチャートを用いて説明する。
【0374】
(ステップS141)
ステップS141においてCPUは、車室外の温度Tam、室内送風機12の風量Qa、圧縮機21の電動モータ21aの回転数Nc等、冷媒回路20の冷媒量を判定可能な熱負荷条件であるか否かを判定する。冷媒量を判定可能な熱負荷条件であると判定した場合にはステップS142に処理を移し、冷媒量を判定可能な熱負荷条件であると判定しなかった場合には冷媒量判定処理を終了する。
【0375】
(ステップS142)
ステップS141において冷媒量を判定可能な熱負荷条件であると判定した場合に、ステップS142においてCPUは、低圧冷媒温度センサ46の検出温度Tlpおよび低圧冷媒圧力センサ47の検出圧力Plpに基づいて冷媒の過熱度SHを算出する。
【0376】
(ステップS143)
ステップS143においてCPUは、高圧冷媒温度センサ44の検出温度Thpおよび高圧冷媒圧力センサ45の検出圧力Phpに基づいて冷媒の過冷却度SCを算出する。
【0377】
(ステップS144)
ステップS144においてCPUは、ステップS142において算出された冷媒の過熱度SHと、ステップS143において算出された冷媒の過冷却度SCと、第1制御弁24の膨張手段側の弁開度と、に基づいて冷媒回路20の冷媒量が適正か否かを判定する。冷媒量が適正と判定した場合には冷媒量判定処理を終了し、冷媒量が適正と判定しなかった場合にはステップS145に処理を移す。
冷媒回路20の冷媒量が適正か否かの判定は、ステップS142において算出された冷媒の過熱度SHと、ステップS143において算出された冷媒の過冷却度SCと、第1制御弁24の膨張手段側の弁開度と、がそれぞれ適正の範囲内であるか否かを判断することによって行われる。
【0378】
(ステップS145)
ステップS144において冷媒量が適正と判定しなかった場合に、ステップS145においてCPUは、冷媒回路20の冷媒量が不足または過剰である旨を表示部50に表示して冷媒量判定処理を終了する。
【0379】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、第1除湿暖房運転時に第2制御弁25の弁開度を制御するようにしている。これにより、第1除湿暖房運転のときに吸熱器14における冷媒の蒸発温度を高くすることができるので、車室外の温度が低温の場合においても吸熱器14に着霜が生じることはなく、吸熱器14において必要な冷媒の吸熱量を確保することが可能となる。
【0380】
また、第2制御弁25の弁開度を、異なる2種類の弁開度を切換え可能とし、2種類の弁開度の一方に設定するようにしている。これにより、第2制御弁25の弁開度を開度大または開度小のどちらか一方に設定すればよいため、制御の構成が簡単となり、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0381】
また、目標蒸発温度Tetと吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて第2制御弁25の弁開度を制御している。これにより、吸熱器14における冷媒の蒸発圧力を確実に所定の圧力とすることができるので、吸熱器14における冷媒の吸熱量が不足することはない。
【0382】
図62は、本発明の第11実施形態を示すものである。
【0383】
この車両用空気調和装置は、第2制御弁35が、弁開度を任意に設定することができるものであり、弁開度を調整することによって吸熱器14における冷媒の蒸発温度が調整される。
【0384】
以上のように構成された車両用空気調和装置において、コントローラ40は、第1除湿暖房運転のときに第2制御弁35の弁開度を他の運転のときの弁開度以下とすることで吸熱器14における冷媒の蒸発温度の低下を防止するための蒸発温度制御処理を行う。
具体的には、目標蒸発温度Tetよりも吸熱器温度センサ48の検出温度Teが低い場合には第2制御弁35の弁開度を小さくし、目標蒸発温度Tetよりも検出温度Teが高い場合には弁開度を大きくする。このとき、第2制御弁35の弁開度は、吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて任意の開度に設定される。
【0385】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、第10実施形態と同様に、第1除湿暖房運転時に第2制御弁35の弁開度を制御するようにしている。これにより、第1除湿暖房運転のときに吸熱器14における冷媒の蒸発温度を高くすることができるので、車室外の温度が低温の場合においても吸熱器14に着霜が生じることはなく、吸熱器14において必要な冷媒の吸熱量を確保することが可能となる。
【0386】
また、第2制御弁35の弁開度は、任意の開度に設定可能に構成されている。これにより、吸熱器14における吸熱量を任意に設定することができるので、吸熱器14における吸熱量の制御の精度を向上させることが可能となる。
【0387】
尚、前記実施形態では、圧縮機21から流出する冷媒が、暖房運転および第1除湿暖房運転時に、室外熱交換器22を一端側から他端側に向かって流通するようにしたものを示したがこれに限られるものではない。例えば、
図63に示すように、圧縮機21から流出する冷媒が、暖房運転および第1除湿暖房運転時に、室外熱交換器22を他端側から一端側に向かって流通するようにしてもよい。
【0388】
図63の車両用空気調和装置では、第10実施形態における冷媒流通路20cの代わりに、第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流出側と室外熱交換器22の他端側とを接続する冷媒流通路20kが設けられている。また、車両用空気調和装置は、第8実施形態における冷媒流通路20eの代わりに、室外熱交換器22の一端側と圧縮機21の冷媒吸入側とを接続する冷媒流通路20lが設けられている。
【0389】
以上のように構成された車両用空気調和装置において、放熱器15から流出する冷媒は、暖房運転および第1除湿暖房運転時に、第10実施形態の場合と異なり、室外熱交換器22を他端側から一端側に向かって流通する。その他の運転については、第10実施形態と同様に冷媒が流通する。
【0390】
また、前記実施形態では、暖房運転時に室外熱交換器22に流入する冷媒を減圧するための膨張手段と、除湿冷房運転時に放熱器における冷媒の凝縮圧力を調整するための凝縮圧力調整手段と、が一体に設けられた第1制御弁24を示したが、これに限られるものではない。例えば、膨張手段としての電子式膨張弁と、凝縮圧力調整手段としての凝縮圧力調整弁を互いに並列に室外熱交換器22の冷媒流通方向上流側に接続するようにしても前記実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0391】
また、前記実施形態では、室外熱交換器22の上流側に位置する第1制御弁24の膨張手段の弁開度を制御することによって、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度SCを制御するようにしたものを示したが、吸熱器14の上流側に位置する膨張弁28の代わりに電子式膨張弁を設け、この電子式膨張弁の弁開度を制御することによって、放熱器15から流出する冷媒の過冷却度SCを制御するようにしてもよい。
【0392】
また、前記実施形態では、目標蒸発温度Tetと吸熱器温度センサ48の検出温度Teに基づいて第2制御弁25,35の弁開度を調整するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、吸熱器14において熱交換した後の空気の温度や、吸熱器14の冷媒の圧力を検出し、その検出結果に基づいて第2制御弁25,35の弁開度を調整するようにしても同様の効果を得ることが可能である。