(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁性セラミックからなり柱状をなす基体と、当該基体と一体をなし通電によって抵抗発熱する抵抗発熱体と、当該抵抗発熱体と電気的に接続され後端部において前記基体の外表面へ露出形成される電極取出部とを有する、軸方向に延びるセラミックヒータと、
前記電極取出部と直接的又は間接的に接触するとともに、前記セラミックヒータの先端側を突出させつつ、前記セラミックヒータを保持する金属製の保持外筒と、
筒状をなすとともに前記セラミックヒータ及び前記保持外筒を自身の内部に収容するハウジングと、
前記保持外筒と前記ハウジングに接合されて自身の先後を気密に隔て、燃焼圧により弾性変形可能に構成される金属製の薄板からなる可動部材と、
前記セラミックヒータ、前記保持外筒及び前記可動部材よりも後端側で、且つ前記ハウジングの内部に配置され、自身に加わる圧力を検出する圧力センサと、
を備えた圧力センサ付きセラミックグロープラグであって、
前記セラミックヒータの先端を含み、前記セラミックヒータ中の全抵抗値に対して75%の抵抗値を占める先端寄り部位を発熱主部としたとき、当該発熱主部は前記保持外筒よりも先端側に位置し、
前記発熱主部の後端から更に後端へ延びる前記セラミックヒータの一部であって、自身の抵抗値と前記発熱主部の抵抗値との合計が前記全抵抗値に対して80%の抵抗値となる部位を発熱副部としたとき、軸方向長さの関係が、発熱主部<発熱副部であるとともに、
前記発熱副部よりも後端側に前記保持外筒と前記可動部材との接合部が位置することを特徴とする圧力センサ付きセラミックグロープラグ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようなセラミックグロープラグにおいて、ヒータが発する熱や燃焼ガスから受熱した熱の一部はグロープラグからエンジンヘッドへと伝熱される。その熱引きの経路(伝熱経路)はヒータから保持外筒を経由し当該保持外筒と溶接やろう付け、圧入等によって強固に接続されたハウジングを経由してエンジンヘッドへ、である。
【0006】
しかしながら、特許文献2のような、圧力センサ付きグロープラグにおいては、上述のように、ヒータとハウジングとの間に、前述のベローズやダイヤフラム等の、厚さが比較的薄い可動部材で連結される。すると、可動部材の伝熱量は比較的小さいため、ヒータから可動部材を経由してハウジング、エンジンヘッドへの伝熱経路が、特許文献1のようなセラミックグロープラグに比べて極端に少なくなる。その結果、可動部材と可動部材が取り付けられている部位との接合部に熱の影響を受けてしまい、両者の接合強度が低下する虞がある。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、セラミックヒータを用いた圧力センサ付きセラミックグロープラグを構成する際に、可動部材の伝熱量の少なくなる構成を採用しても、可動部材と可動部材と取り付けられる部位との接合部の接合強度が低下することを回避して、長期間に亘り良好な発熱が可能となる圧力センサ付きセラミックグロープラグを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の圧力センサ付きセラミックグロープラグは、
絶縁性セラミックからなり柱状をなす基体と、当該基体と一体をなし通電によって抵抗発熱する抵抗発熱体と、当該抵抗発熱体と電気的に接続され後端部において前記基体の外表面へ露出形成される電極取出部とを有する、軸方向に延びるセラミックヒータと、
前記電極取出部と直接的又は間接的に接触するとともに、前記セラミックヒータの先端側を突出させつつ、前記セラミックヒータを保持する金属製の保持外筒と、
筒状をなすとともに前記セラミックヒータ及び前記保持外筒を自身の内部に収容するハウジングと、
前記保持外筒と前記ハウジングに接合されて自身の先後を気密に隔て、燃焼圧により弾性変形可能に構成される金属製の薄板からなる可動部材と、
前記セラミックヒータ、前記保持外筒及び前記可動部材よりも後端側で、且つ前記ハウジングの内部に配置され、自身に加わる圧力を検出する圧力センサと、
を備えた圧力センサ付きセラミックグロープラグであって、
前記セラミックヒータの先端を含み、前記セラミックヒータ中の全抵抗値に対して75%の抵抗値を占める先端寄り部位を発熱主部としたとき、当該発熱主部は前記保持外筒よりも先端側に位置
し、
前記発熱主部の後端から更に後端へ延びる前記セラミックヒータの一部であって、自身の抵抗値と前記発熱主部の抵抗値との合計が前記全抵抗値に対して80%の抵抗値となる部位を発熱副部としたとき、軸方向長さの関係が、発熱主部<発熱副部であるとともに、
前記発熱副部よりも後端側に前記保持外筒と前記可動部材との接合部が位置することを特徴とする圧力センサ付きセラミックグロープラグ。
【0009】
なお、電極取出部と保持外筒との接続において「直接的又は間接的に接触」とは、圧入や各種嵌め合いにより直接当接して導通可能な状態にあるか、或いは金属薄膜やろう材を介して導通可能に接続された状態を意味する。したがって、例えば、それぞれに接続された導線により電気的に接続された状態を意味するものではない。
【0010】
また「発熱主部」は、セラミックヒータ中の導電経路の全抵抗値に対して75%の抵抗値を占める部位である。なお、発熱主部の抵抗値を測定する方法としては、セラミックヒータの常温時において、セラミックヒータの電極取出部に抵抗器を接触させて導電経路の抵抗値(つまり、セラミックヒータ中の導電経路の全抵抗値に相当)を測定する。その後、セラミックヒータを長手方向に垂直な方向に切断し、切断面に露出する導電経路に抵抗器を接触させて導電経路の抵抗値(以下、部分抵抗値という)を測定する。その後、全抵抗値に対する部分抵抗値の割合を算出し、この算出値が75%となる位置よりもセラミックヒータの先端側を発熱主部とする。
なお、「発熱副部」は、自身の抵抗値と発熱主部の抵抗値との合計が全抵抗値に対して80%の抵抗値となる部位である。この発熱副部の抵抗値を測定する方法としては、セラミックヒータの常温時において、セラミックヒータの電極取出部に抵抗器を接触させて導電経路の抵抗値(つまり、セラミックヒータ中の導電経路の全抵抗値に相当)を測定する。その後、セラミックヒータを長手方向に垂直な方向に切断し、切断面に露出する導電経路に抵抗器を接触させて導電経路の抵抗値(以下、部分抵抗値という)を測定する。その後、全抵抗値に対する部分抵抗値の割合を算出し、この算出値が75%〜80%となる位置を発熱副部とする。
【0011】
上記構成に加えて請求項2の圧力センサ付きセラミックグロープラグによれば、前記保持外筒と前記可動部材との接合部を、前記
ハウジングの内部に位置することが好ましい。
【0012】
上記構成に加えて請求項3の圧力センサ付きセラミックグロープラグによれば、前記発熱主部の前記抵抗
発熱体の比抵抗は、前記発熱主部以外の部位の抵抗
発熱体の比抵抗の90%〜110%であり、前記発熱主部の前記抵抗
発熱体の断面積は、前記発熱主部以外の部位の抵抗
発熱体の断面積よりも小さいことが好ましい。
【0013】
なお、発熱主部の抵抗
発熱体の断面積、及び後端側部位の抵抗
発熱体の断面積は、発熱主部、及び後端側部位を長手方向に垂直な方向に切断し、切断面に露出するそれぞれの抵抗
発熱体の面積のことを指す。また、発熱主部の抵抗
発熱体の比抵抗は、発熱主部内に設けられる抵抗
発熱体の抵抗値を、発熱主部内に配置される抵抗
発熱体の体積で除した値であり、後端側部位の抵抗
発熱体の比抵抗は、後端側部位内に設けられる抵抗
発熱体の抵抗値を、後端側部位内に配置される抵抗
発熱体の体積で除した値である。
【0014】
上記構成に加えて請求項4の圧力センサ付きセラミックグロープラグによれば、前記発熱主部の前記抵抗
発熱体の断面積が、前記発熱主部以外の部位の抵抗
発熱体の断面積の90%〜110%であり、前記発熱主部の前記抵抗
発熱体の比抵抗は、前記発熱主部以外の部位の抵抗
発熱体の比抵抗よりも大きいことが好ましい。
【0017】
上記構成に加えて請求項
5の圧力センサ付きセラミックグロープラグによれば、前記絶縁性セラミックまたは前記抵抗発熱体の1350℃での熱伝導率が15W/m℃以上であり、
且つ前記発熱主部の先端から前記保持外筒と前記可動部材との前記接合部までの軸方向最短距離が24mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、セラミックヒータ中の導電経路の全抵抗値に対して75%の抵抗値を占め、セラミックヒータの先端を含む発熱主部を、保持外筒よりも先端側に位置している。すなわち、発熱主部はセラミックヒータ先端部に集中的に形成されており、効率よく比較的高温に発熱させることが可能である。その上、発熱主部を保持外筒よりも先端側に配置しているので、発熱主部から後端へ向けて伝搬する熱が、保持外筒と可動部材との接合部に伝搬するまで間に、セラミックヒータからエンジンヘッドやプラグホールへ放熱することができる。これにより、保持外筒と可動部材との接合部での熱の影響を低減することができ、接合強度の低下を抑制することができる。その結果、燃焼ガスに対する気密性が低下することに伴って圧力センサとしての機能を損なうことを抑制できる。
また、発熱主部の抵抗値を含めてセラミックヒータ中の導電経路の全抵抗値に対して80%の抵抗値を占めるように発熱副部を設け、この発熱副部を発熱主部よりも軸方向長さを長く形成している。したがって、発熱主部から後端へ向けて伝搬する熱が、発熱副部を経由して伝搬するまで間に、発熱副部からエンジンヘッドやプラグホールへ放熱することができる。その結果、セラミックヒータの発熱副部よりも後端側の部位の温度を比較的低くすることができる。こうした構成を前提とした上で、セラミックヒータを径方向に保持する保持外筒と前記可動部材との接合部を、発熱副部よりも後端側の部位に位置するように構成している。これにより保持外筒と可動部材との接合部での熱の影響を低減することができ、接合強度の低下をより抑制することができる。その結果、燃焼ガスに対する気密性が低下することに伴って圧力センサとしての機能を損なうことをより抑制できる。
【0019】
請求項2の圧力センサ付きセラミックグロープラグによれば、発熱主部を保持外筒よりも先端側に配置する一方、接合部を
ハウジングの内部に位置させることで、発熱主部と接合部との長手方向距離がより長くなると共に、発熱主部と接合部との間のセラミックヒータの周囲を
ハウジングが取り囲むこととなり、発熱主部から後端へ向けて伝搬する熱が、接合部に伝搬するまで間に、セラミックヒータからエンジンヘッドやプラグホールへより放熱することができる。これにより、保持外筒と可動部材との接合部での熱の影響をより低減することができ、接合強度の低下をより抑制することができる。その結果、燃焼ガスに対する気密性が低下することに伴って圧力センサとしての機能を損なうことをより抑制できる。
【0020】
請求項3の圧力センサ付きセラミックグロープラグによれば、発熱主部の抵抗
発熱体の比抵抗と発熱主部以外の部位(以下、後端側部位という)の抵抗
発熱体の比抵抗とを略均一にしながら、発熱主部の抵抗
発熱体の断面積を後端側部位の抵抗
発熱体の断面積よりも小さくすることで、セラミックヒータ中の導電経路の全抵抗値に対して75%の抵抗値を占める発熱主部を、保持外筒よりも先端側に位置させることが可能となる。
【0021】
請求項4の圧力センサ付きセラミックグロープラグによれば、発熱主部の抵抗
発熱体の断面積と発熱主部以外の部位(以下、後端側部位という)の抵抗
発熱体の断面積とを略均一にしながら、発熱主部の抵抗
発熱体の比抵抗を後端側部位の抵抗
発熱体の比抵抗よりも大きくすることで、セラミックヒータ中の導電経路の全抵抗値に対して75%の抵抗値を占める発熱主部を、保持外筒よりも先端側に位置させることが可能となる。
【0023】
請求項
5の圧力センサ付きセラミックグロープラグによれば、基体を構成する絶縁製セラミックまたは抵抗発熱体の1350℃での熱伝導率が15W/m℃以上であれば、セラミックヒータの先端部(詳細には発熱主部)から後端部(接合部が設けられる部位)に向けて熱が伝搬しやすくなるが、発熱主部の先端から接合部までの軸方向最短距離を24mm以上としているため、この発熱副部の軸方向長さを比較的長く形成することができる。したがって、発熱主部から後端へ向けて伝搬する熱は発熱副部を経由して伝搬する間に、エンジンヘッドやプラグホールへ、効果的に放熱することができる。その結果、セラミックヒータの発熱副部よりも後端側の部位の温度をさらに低くすることができ、保持外筒と可動部材との接合部の接合強度の低下をさらに抑制することができる。なお、接合部が長手方向に延びるように形成される場合には、軸方向最短距離は、接合部の先端と発熱主部の先端との距離で表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を具体化した第1実施形態の圧力センサ付きグロープラグについて、
図1に基づいて説明する。本例のグロープラグ101は、金属製で概略円筒状をなすハウジング40と、その内側において先端(図示、下方端)10aを、先端側ハウジング50の先端53から突出させてなるセラミックヒータ10と、さらには、ハウジング40内においてこのセラミックヒータ10の後端から後方に延びるように配置された、電圧印加用の中軸30、及びこの中軸30の後端部においてその外周面とハウジング40の内周面との間に設けられた燃焼圧検知センサを構成する歪部材210等から構成されている。
【0026】
本例において、ハウジング40は、例えばSUS303からなり、概略円筒状のハウジング本体41と、その先端側に同軸で突合せ状に嵌合され、溶接された先端側ハウジング50等とから構成されている。セラミックヒータ10は円柱状をなし、先端10aがこの先端側ハウジング50の先端53から突出するように先端側ハウジング50の軸線Gと同軸状に配置されている。このセラミックヒータ10は、そのセラミック基体11(特許請求の範囲の基体に相当)の内部に先端10aにおいて折り返し状(U字状)に配置された抵抗発熱体(導電性セラミック)12を有しており、セラミックヒータ10の後端部の側面に通電用の各電極取出部16、17を露出させている。ただし、セラミックヒータ10には、その中間部位にSUS630等の金属製の保持外筒15が圧入で外嵌めされており、その後端部の内周面にて、相対的に先端側に位置する接地用の電極取出部16に電気的に接続されている。そして、この保持外筒15には、インコネル(INCO社の登録商標)などの耐熱Ni合金からなるベローズ18(特許請求の範囲の可動部材に相当)が外嵌状に遊挿されている。このベローズ18は、例えば、厚さ0.07mmの薄膜状にて形成さされており、その後端部を、先端側ハウジング50の先端部の内周面においてシール状に溶接され、その先端側を保持外筒15の外周面にシール状に溶接されている。すなわち、ベローズ18は、ハウジング40に対するヒータ10の先後動(変位)を許容すると共に、ヒータ10の接地用の電極取出部16とハウジング40との中継導通部をなし、かつ、ヒータ10をハウジング40内において保持すると共に、先端側内部を封止する役割を担っている。なお、セラミックヒータ10及びベローズ18については、後程、詳細に説明する。
【0027】
また、セラミックヒータ10の後端には、それと同軸で、電圧印加用の中軸30が配置されており、ハウジング40内において絶縁(本実施例では空気絶縁)を保持するようにして後端に向けて、ハウジング40と同軸で配置されている。ただし、セラミックヒータ10の後端と、中軸30の先端には、金属の連結パイプ19が圧入等により外嵌されており、セラミックヒータ10の相対的に後方に位置する電極取出部(正電位側端子)17は、この連結パイプ19の内周面にてその導通が保持され、中軸30に電気的に接続されている。すなわち、連結パイプ19は、セラミックヒータ10と中軸30との一体化とともに、その導通確保も担っている。
【0028】
本例では、ハウジング40は、ハウジング本体41と先端側ハウジング50等とからなり、その本体41の外周面には、図示しないエンジンヘッドのプラグホールにねじ込み方式でグロープラグを固定するためのネジ43が所定長さで形成されている。また、このハウジング本体41の後端部は、後端から先端に向けた所定範囲が、相対的に大径をなすように拡径された拡径筒部45をなしており、この拡径筒部45の後端には、後端側が相対的に小径で異径円筒状をなす後端側ハウジング60であるシール用保護筒(キャップ)が、後述するセンサ用の歪部材210の外周部を挟んで取り付けられている。なお、この歪部材210は全体としてみると円環状(又は円筒状)をなすもので、詳細は後述するが、その内周部において、絶縁リング260を介して、中軸30の後端部に固定されている。
【0029】
本例において中軸30は、その全長において先端寄り部位と後端寄り部位が部分的に太く形成されている。そして、後端がハウジング本体41の後端から後方に突出され、後端のシール用保護筒(後端側ハウジング)60の大径筒部63の先端部に位置している。また、中軸30の後端部のうち、そのハウジング本体41の拡径筒部45の先端部分に相当する位置から、その後端に向けてテーパ状の同軸で縮径されたテーパ縮径部33と、テーパ縮径部33の後端において同軸でさらに縮径された絶縁リング嵌合用軸部をなす平行縮径軸部34を有している。そして、この平行縮径軸部(絶縁リング嵌合用軸部)34の後方には、同心でこれより細い小径軸部35を有している。中軸30の後端であるこの小径軸部35の後端には、後端のシール用保護筒60内において先後方向の変位を許容する端子バネ71を介し、後端外方に突出するプラグ端子73を有する端子金具75が溶接されて接続されている。なお後端のシール用保護筒60における後端側の小径部位65内には、例えばゴムからなるシール部材69が装填されている。
【0030】
次に、圧力検知用のセンサを構成する歪部材210と中軸30とが、絶縁リング260を介して固定されている構造等について説明する。歪部材210は、ハウジング本体41の後端においてその内側と中軸30の後端部の外周との間の環状空間を先後に閉塞するよう配置されており、全体としてみると環状(円筒状)をなしている。そして、中軸30がセラミックヒータ10の先後動変位を受けて歪部材210自体が同時に変形するように設けられている。すなわち、この歪部材210は、外周に環状厚肉部212aを有しており、この環状厚肉部212aを、拡径筒部45の後端と、その後方のシール用保護筒(後端側ハウジング)60の先端とで挟む形で突合せるようにして相互に嵌合され、例えば、その各突合せ部において、外周面側から周方向にレーザ溶接で固定されている。
【0031】
一方、この歪部材210は、外周の環状厚肉部212aの内側において後方(
図2上方)に延びる外側筒部212を有しており、この外側筒部212の後端内側には環状膜部(円環状のダイヤフラム部)215を有している。そして、この環状膜部215の内側(内周側部位)においては、先方に延びる内側筒部211を有している。なお内側筒部211は外周の環状厚肉部212aよりも先端側に位置するように延びており、内側筒部211の外周面のうち、先端部211aの外径は相対的に小径とされ、その先端部211aが相対的に薄肉とされている。
【0032】
さらに、歪部材210の、例えば環状膜部(環状ダイヤフラム部)215の後端向き面側には、適数の歪センサ(特許請求の範囲の圧力センサに相当)220が取り付けられており、図示しない回路を含む装置を介して、軸部材30の先後動変位を受けて変形する歪部材210の変形に基づく歪量を検知し、それに基づく電気信号を図示しない出力取り出し用の電線を介して出力するように構成されている。これにより、本例グロープラグ101は、燃焼圧によりヒータ10及び軸部材30が一体となってその両者の軸線G方向に先後動することで歪部材210を変形させ、その歪部材210の変形から歪センサ220を用いることで燃焼圧が検知されるよう構成されている。
【0033】
次に、本発明の主要部となるセラミックヒータ10及びベローズ18について説明する。
なお、
図3は、
図1のCの拡大図を示しているが、説明の関係上、先端側ハウジング50については、割愛している。
【0034】
このセラミックヒータ10は、本実施形態では、窒化珪素からなるセラミック基体11の内部に、U字状に配置され、タングステンカーバイトからなる導電性セラミックにて形成された抵抗発熱体12が設けられている。なお、セラミック基体11としては、窒化珪素に限られるものではなく、他にアルミナ、サイアロン等を用いることができる。また、抵抗発熱体12を形成する導電性セラミックにおいても、タングステンカーバイドに限られるものではなく、他に二珪化モリブデン及び二珪化タングステン等を用いることができる。この抵抗発熱体12は、上述したようにU字状をなし、そのU字の底部である先端(
図3下端)の折返しを含む先端部が、例えば、0.5mmの円断面とされた小径線部101となっている。さらに、抵抗発熱体12は、小径線部101に繋がるように、対向する内側においてテーパをなし、後端に向かうにしたがって先太り状に形成された一対のテーパ部102、さらに、テーパ部に繋がる一対の大径線部103が設けられている。なお、大径線部103は互いに平行に配置され、それぞれ直線状をなしており、横断面が同一で、例えば、直径0.9mmの円断面(或いは楕円断面)とされている。そして、大径線部103の外側に向かって、
図1に示したように、例えば円形でかつ柱状の電極取出部16、17が突出形成されている。
【0035】
このようなセラミックヒータ10は、先端部をエンジンの燃焼室内に配置させて、燃焼室内を加熱させることを考慮し、セラミックヒータ10の先端部を集中的に高温に発熱させる構成となっている。具体的には、セラミックヒータ10の全抵抗値(例えば、400mΩ)に対して、75%の抵抗値(例えば、300mΩ)となる発熱主部P1が、
図3に示すようにセラミックヒータ10のより先端部に集中して配置している(例えば、セラミックヒータ10の全部位を先端側から3等分した場合に、その3つの部位のうち、先端側の部位内に発熱主部P1を配置している)。その結果、この発熱主部P1が、保持外筒15の先端よりも先端側に位置することができる。これにより、セラミックヒータ10の先端部を効率よく集中的に高温に発熱させることができる。
【0036】
なお、発熱主部P1を、先端側に集中して配置する具体的な方法としては、上述したように、抵抗発熱体12をタングステンカーバイトからなる導電性セラミックのみで形成すると共に、抵抗発熱体12に大径線部103に比べて断面積が径小な小径線部101を設けることで、セラミックヒータ10の先端側の抵抗値をより大きな抵抗値としている。
【0037】
さらに、発熱主部P1に接続するように発熱副部P2が設けられている。この発熱副部P2は、発熱主部P1の抵抗値を含んでセラミックヒータ10の全抵抗値に対して、80%の抵抗値(例えば、320mΩ)となる部位のことである。つまり、発熱副部P2の抵抗値は、セラミックヒータ10の全抵抗値に対して5%の抵抗値となる部位である。なお、発熱副部P2は、上述したように、抵抗発熱体12に設けた大径線部103が設けられることで、セラミックヒータ10の全抵抗値に対して5%の抵抗値となる部位とすることが可能である。なお、発熱副部P2の後端側は保持外筒15の内部に配置されている。
【0038】
そして、
図3に示すように、発熱副部P2の軸方向長さを、発熱主部P1の軸方向長さよりも長く形成している。本実施形態においては、発熱主部P1の軸方向長さを7.5mm、発熱副部P2の軸方向長さを12.5mmとしている。このように、発熱副部P2の軸方向長さを発熱主部P1の軸方向長さよりも長くすることで、発熱主部P1から後端側へ向けて伝搬する熱が、発熱副部P2を経由して伝搬する間に、セラミックヒータ10からエンジンヘッドやプラグホールへより放熱することができる。その結果、セラミックヒータ10の発熱副部P2よりも後端側の部位の温度を比較的低くすることができる。
【0039】
さらに、上述したように、セラミックヒータ10には、その中間部位に保持外筒15が圧入で外嵌めされ、この保持外筒15に、金属製のベローズ18が溶接されている。ところで、ベローズ18は、例えば、厚さ0.07mmの薄膜状に形成されているため、ベローズ18自身の伝熱量は比較的小さい。このため、セラミックヒータ10からベローズ18を経由して先端側ハウジング50、エンジンヘッドへの伝熱経路が、従来構造のグロープラグに比べて極端に少なくなり、接合部110の接合強度に影響がでる虞がある。これに対し、本実施形態においては、保持外筒15とベローズ18との接合部110を、発熱副部P2よりも後端側に位置させている。これにより、保持外筒15とベローズ18との接合部110での熱の影響を低減することができ、接合部110の接合強度の低下を抑制することができる。その結果、燃焼ガスに対する気密性が低下することに伴って圧力センサとしての機能を損なうことを抑制できる。
【0040】
また、本実施形態においては、接合部110を、ハウジング40の内部に位置させている(
図1参照)。このように、発熱主部P1を保持外筒15よりも先端側に配置する一方、接合部110をハウジング40の内部に位置させることで、発熱主部P1と接合部110との長手方向距離がより長くなると共に、発熱主部と接合部との間のセラミックヒータの周囲を
ハウジング40が取り囲むこととなり、発熱主部P1から後端へ向けて伝搬する熱が、接合部110に伝搬するまでの間に、セラミックヒータ10からエンジンヘッドやプラグホールへより放熱することができる。これにより、保持外筒15とベローズ18との接合部110での熱の影響をより低減することができ、接合強度の低下をより抑制することができる。その結果、燃焼ガスに対する気密性が低下することに伴って圧力センサとしての機能を損なうことをより抑制できる。
【0041】
さらに、本実施形態においては、セラミック基体11を形成する窒化珪素の1350℃での熱伝導率が17W/m℃であり、抵抗発熱体12を形成するタングステンカーバイドの1350℃での熱伝導率が22.5W/m℃である。このように、セラミック基体11又は抵抗発熱体12の1350℃での熱伝導率が15W/m℃以上であれば、セラミックヒータ10の発熱主部P1から接合部110が設けられる後端部に向けて熱が比較的伝搬しやすくなる。これに対し、本実施形態では、発熱主部P1の先端(つまり、セラミックヒータ10の先端)から接合部110までの距離T1を24mmとしている。このように、発熱主部P1の先端から接合部110までの軸方向距離を24mm以上としているため、この発熱副部P2の軸方向長さを比較的長く形成することができる。したがって、発熱主部P1から後端へ向けて伝搬する熱は発熱副部P2を経由して伝搬する間に、エンジンヘッドやプラグホールへ、効果的に放熱することができる。その結果、セラミックヒータ10の発熱副部P2よりも後端側に設けた接合部110の温度をさらに低くすることができ、接合部110の接合強度の低下をさらに抑制することができる。なお、発熱主部P1の先端から接合部110までの軸方向距離が長ければ長いほど、発熱副部P2の軸方向長さを長くできるため、より効果的に放熱することが可能となるが、発熱主部P1の先端から接合部110までの軸方向距離が40mmを越えると、グロープラグ101の昇温性能が下がるため、この軸方向距離を40mm以下とすることが好ましい。
【0042】
次に、本発明を具体化した第2実施形態の圧力センサ付きグロープラグについて、
図4、
図5に基づいて説明する。本例のグロープラグ301は、金属製で概略円筒状をなすハウジング340と、その内側において先端(図示、下方端)410aを、先端側ハウジング342の先端343から突出させてなるセラミックヒータ410と、さらには、ハウジング340内においてこのセラミックヒータ410の後端から後方に延びるように配置された、電圧印加用の中軸330、中軸330の周囲に設けられた圧力伝達チューブ360、圧力伝達チューブ360の後端部においてその外周面とハウジング340の内周面との間に設けられた燃焼圧検知センサを構成する歪部材350等から構成されている。
【0043】
本例において、ハウジング340は、例えばSUS303からなり、概略円筒状のハウジング本体341と、その先端側に同軸で突合せ状に嵌合され、溶接された先端側ハウジング342と、ハウジング本体341の後端部に外嵌され、溶接された中間ハウジング344等とから構成されている。セラミックヒータ410は円柱状をなし、先端410aがこの先端側ハウジング342の先端343から突出するように先端側ハウジング342の軸線Gと同軸状に配置されている。このセラミックヒータ410は、
図5に示すように、そのセラミック基体411(特許請求の範囲の基体に相当)の内部に先端410aにおいて折り返し状(U字状)に配置された抵抗発熱体(導電性セラミック)412を有しており、セラミックヒータ410の後端部の側面に通電用の各電極取出部416、417を露出させている。ただし、セラミックヒータ410には、その中間部位にSUS630等の金属製の保持外筒315が圧入で外嵌めされており、その後端部の内周面にて、相対的に先端側に位置する接地用の電極取出部416に電気的に接続されている。そして、この保持外筒315には、ステンレス鋼、又はインコネル(INCO社の登録商標)などの耐熱Ni合金からなる金属弾性膜(メンブレン)418(特許請求の範囲の可動部材に相当)が外嵌状に遊挿されている。この金属弾性膜418は、厚さ0.3mmの薄膜状にて形成されており、その後端部を、先端側ハウジング342の先端部の内周面においてシール状に溶接され、その先端側を保持外筒515の外周面にシール状に溶接されている。すなわち、金属弾性膜418は、ハウジング340に対するヒータ410の先後動(変位)を許容すると共に、ヒータ410の接地用の電極取出部416とハウジング340との中継導通部をなし、かつ、ヒータ410をハウジング340内において保持すると共に、先端側内部を封止する役割を担っている。なお、セラミックヒータ410及び金属弾性膜418については、後程、詳細に説明する。
【0044】
また、セラミックヒータ410の後端には、それと同軸で、電圧印加用の中軸330が配置されており、ハウジング340内において絶縁(本実施例では空気絶縁)を保持するようにして後端に向けて、ハウジング340と同軸で配置されている。ただし、セラミックヒータ410の後端と、中軸330の先端には、金属の連結パイプ319が圧入等により外嵌されており、セラミックヒータ410の相対的に後方に位置する電極取出部(正電位側端子)417は、この連結パイプ319の内周面にてその導通が保持され、中軸330に電気的に接続されている。すなわち、連結パイプ319は、セラミックヒータ410と中軸330との一体化とともに、その導通確保も担っている。
【0045】
本例では、ハウジング340は、ハウジング本体341と先端側ハウジング342等とからなり、そのハウジング本体341の外周面には、図示しないエンジンヘッドのプラグホールにねじ込み方式でグロープラグを固定するためのネジ346が所定長さで形成されている。また、このハウジング本体341の後端部には、略円筒状の中間ハウジング344が外嵌めされ、さらに、この中間ハウジング344の後端には、後端側が相対的に小径で異径円筒状をなす後端側ハウジング345であるシール用保護筒(キャップ)が、後述するセンサ用の歪部材350の外周部を挟んで取り付けられている。なお、この歪部材350は全体としてみると円環状(又は円筒状)をなすもので、詳細は後述するが、その内周部において、圧力伝達チューブ360に接合されている。
【0046】
本例において中軸330は、その後端がハウジング本体341の後端から後方に突出され、後端のシール用保護筒(後端側ハウジング)345の大径筒部363の先端部に位置している。そして、中軸330の後端には、後端のシール用保護筒345内において先後方向の変位を許容する端子バネ371を介し、後端外方に突出するプラグ端子373を有する端子金具375が溶接されて接続されている。なお後端のシール用保護筒345における後端側の小径部位365内には、例えばゴムからなるシール部材369が装填されている。
【0047】
次に、圧力検知用のセンサを構成する歪部材350と圧力伝達チューブ360とが、固定されている構造等について説明する。圧力伝達チューブ360の先端は、保持外筒315の後端部に接合され固定されている。そして、中軸330とハウジング本体341との間隙を、中軸330及びハウジング本体341と離間しつつ、先後方向に延びるように設けられている。圧力伝達チューブ360の後端部は中間ハウジング344内に配置され、この外周面に歪部材350の内周面が接合されている。
【0048】
歪部材350は、中間ハウジング344の後端においてその内側と圧力伝達チューブ360の後端部の外周との間の環状空間を先後に閉塞するよう配置されており、全体としてみると環状(円筒状)をなしている。そして、圧力伝達チューブ360がセラミックヒータ410の先後動変位を受けて歪部材350自体が同時に変形するように設けられている。すなわち、この歪部材350は、外周に環状厚肉部352aを有しており、この環状厚肉部352aを、中間ハウジング344の後端と、その後方のシール用保護筒(後端側ハウジング)345の先端とで挟む形で突合せるようにして相互に嵌合され、例えば、その各突合せ部において、外周面側から周方向にレーザ溶接で固定されている。
【0049】
一方、この歪部材350は、外周の環状厚肉部352aの内側において後方(
図2上方)に延びる外側筒部352を有しており、この外側筒部352の後端内側には環状膜部(円環状のダイヤフラム部)355を有している。そして、この環状膜部355の内側(内周側部位)においては、先方に延びる内側筒部351を有している。なお内側筒部351は外周の環状厚肉部352aよりも先端側に位置するように延びている。
【0050】
さらに、歪部材350の例えば環状膜部(環状ダイヤフラム部)355の後端向き面側には、適数の歪センサ(特許請求の範囲の圧力センサに相当)320が取り付けられており、図示しない回路を含む装置を介して、圧力伝達チューブ360の先後動変位を受けて変形する歪部材350の変形に基づく歪量を検知し、それに基づく電気信号を図示しない出力取り出し用の電線を介して出力するように構成されている。これにより、本例グロープラグ301は、燃焼圧によりヒータ410及び圧力伝達チューブ360が一体となってその両者の軸線G方向に先後動することで歪部材350を変形させ、その歪部材350の変形から歪センサ320を用いることで燃焼圧が検知されるよう構成されている。
【0051】
次に、本発明の主要部となるセラミックヒータ410及び金属弾性膜(メンブレン)418について説明する。
なお、
図5は、
図4のグロープラグ301のうち、先端側のDの拡大図を示しているが、以下の説明の関係上、先端側ハウジング342については、割愛している。
また、セラミックヒータ410については、実施形態1のセラミックヒータ10と同様のセラミックヒータであるため、説明を省略または簡略して説明する。
【0052】
このセラミックヒータ410は、第1実施形態と同様に、窒化珪素からなるセラミック基体411の内部に、U字状に配置され、タングステンカーバイトからなる導電性セラミックにて形成された抵抗発熱体412が設けられている。この抵抗発熱体412は、U字状をなし、先端から直径0.5mmの円断面とされた小径線部401、一対のテーパ部402、直径0.9mmの円断面(或いは楕円断面)とされた一対の大径線部403の順に配置されている。そして、大径線部403の外側に向かって、
図4に示したように、例えば円形でかつ柱状の電極取出部416、417が突出形成されている。
【0053】
このセラミックヒータ410においても、セラミックヒータ410の先端部を集中的に高温に発熱させる構成となっており、具体的には、セラミックヒータ410の全抵抗値(例えば、400mΩ)に対して、75%の抵抗値(例えば、300mΩ)となる発熱主部P41が、
図5に示すようにセラミックヒータ410のより先端部に集中して配置している(例えば、セラミックヒータ410の全部位を先端側から3等分した場合に、その3つの部位のうち、先端側の部位内に発熱主部P41を配置している)。その結果、この発熱主部P41が、保持外筒315の先端よりも先端側に位置することができる。これにより、セラミックヒータ410の先端部を効率よく集中的に高温に発熱させることができる。
【0054】
なお、発熱主部P41を、先端側に集中して配置する具体的な方法としては、上述したように、抵抗発熱体412をタングステンカーバイトからなる導電性セラミックのみで形成すると共に、抵抗発熱体412に大径線部403に比べて断面積が径小な小径線部401を設けることで、セラミックヒータ10の先端側の抵抗値をより大きな抵抗値としている。
【0055】
さらに、発熱主部P41に接続するように発熱副部P42が設けられている。この発熱副部P42は、発熱主部P41の抵抗値を含んでセラミックヒータ410の全抵抗値に対して、80%の抵抗値(例えば、320mΩ)となる部位のことである。つまり、発熱副部P42の抵抗値は、セラミックヒータ410の全抵抗値に対して5%の抵抗値となる部位である。なお、発熱副部P42の後端側は保持外筒315の内部に配置されている。
【0056】
そして、
図5に示すように、発熱副部P42の軸方向長さを、発熱主部P41の軸方向長さよりも長く形成している。本実施形態においては、発熱主部P41の軸方向長さを7.5mm、発熱副部P42の軸方向長さを12.5mmとしている。このように、発熱副部P42の軸方向長さを発熱主部P41の軸方向長さよりも長くすることで、発熱主部P41から後端側へ向けて伝搬する熱が、発熱副部P42を経由して伝搬する間に、セラミックヒータ410からエンジンヘッドやプラグホールへのより放熱することができる。その結果、セラミックヒータ410の発熱副部P42よりも後端側の部位の温度を比較的低くすることができる。
【0057】
さらに、上述したように、セラミックヒータ410には、その中間部位に保持外筒315が圧入で外嵌めされ、この保持外筒315に、金属弾性膜(メンブレン)418が溶接されている。ところで、金属弾性膜418は、例えば、厚さ0.3mmの薄膜状に形成されているため、金属弾性膜418自身の伝熱量は比較的小さい。このため、セラミックヒータ410から金属弾性膜418を経由してハウジング340、エンジンヘッドへの伝熱経路が、従来構造のグロープラグに比べて極端に少なくなり、接合部510の接合強度に影響がでる虞がある。これに対し、本実施形態においては、保持外筒315と金属弾性膜418との接合部510を、発熱副部P42よりも後端側に位置させている。これにより、保持外筒315と金属弾性膜418との接合部510での熱の影響を低減することができ、接合部510の接合強度の低下を抑制することができる。その結果、燃焼ガスに対する気密性が低下することに伴って圧力センサとしての機能を損なうことを抑制できる。
【0058】
また、本実施形態においては、接合部510を、ハウジング340の内部に位置させている(
図1参照)。このように、発熱主部P31を保持外筒315よりも先端側に配置する一方、接合部510をハウジング340の内部に位置させることで、発熱主部P41と接合部510との長手方向距離がより長くなると共に、発熱主部と接合部との間のセラミックヒータの周囲を
ハウジング340が取り囲むこととなり、発熱主部P41から後端へ向けて伝搬する熱が、接合部510に伝搬するまでの間に、セラミックヒータ10からエンジンヘッドやプラグホールへより放熱することができる。これにより、保持外筒315と金属弾性膜418との接合部510での熱の影響をより低減することができ、接合強度の低下をより抑制することができる。その結果、燃焼ガスに対する気密性が低下することに伴って圧力センサとしての機能を損なうことより抑制できる。
【0059】
さらに、本実施形態においては、セラミック基体411を形成する窒化珪素の1350℃での熱伝導率が17W/m℃であり、抵抗発熱体412を形成するタングステンカーバイドの1350℃での熱伝導率が22.5W/m℃である。このように、セラミック基体411又は抵抗発熱体412の1350℃での熱伝導率が15W/m℃以上であれば、セラミックヒータ410の発熱主部P41から接合部510が設けられる後端部に向けて熱が比較的伝搬しやすくなる。これに対し、本実施形態では、発熱主部P41の先端(つまり、セラミックヒータ410の先端)から接合部510までの距離T41を24mmとしている。このように、発熱主部P41の先端から接合部510までの軸方向距離を24mm以上としているため、この発熱副部P42の軸方向長さを比較的長く形成することができる。したがって、発熱主部P41から後端へ向けて伝搬する熱は発熱副部P42を経由して伝搬する間に、エンジンヘッドやプラグホールへ、効果的に放熱することができる。その結果、セラミックヒータ410の発熱副部P42よりも後端側に設けた接合部510の温度をさらに低くすることができ、接合部510の接合強度の低下をさらに抑制することができる。なお、発熱主部P41の先端から接合部510までの軸方向距離が長ければ長いほど、発熱副部P42の軸方向長さを長くできるため、より効果的に放熱することが可能となるが、発熱主部P41の先端から接合部510までの軸方向距離が40mmを越えると、昇温性能が低下するので、この軸方向距離を40mm以下とすることが好ましい。
【0060】
次に、本発明を具体化した第3実施形態の圧力センサ付きグロープラグについて、
図6に基づいて説明する。なお、第3実施形態のグロープラグ701は、第1実施形態のグロープラグ101とは、セラミックヒータの構成が異なるのみであり、以下の説明では、セラミックヒータに関連する部位について詳細に説明し、その他の部位は、簡略、省略する。また、以下の説明において、第1実施形態のグロープラグ101と同部位については、同符号を用いて説明する。
【0061】
図6に示すように、セラミックヒータ710は、第1実施形態のセラミックヒータ10とは異なり、窒化珪素からなるセラミック基体711の先端側の内部に、U字状に配置され、基体711の後端側に延びる抵抗発熱体712が設けられている。この抵抗発熱体712は、U字状をなし、そのU字の底部である先端(
図3下端)の折返しを含む先端部701と、該先端部につながるように、2本のリード部703にて形成されている。この先端部701は、断面が略楕円形状となっており、セラミックヒータ710に対する先端部701の断面積(先端部701の合計値)は12%となっている。一方、リード部703は、断面が略円形状となっており、セラミックヒータ710に対するリード部703全体の断面積は18%となっている。つまり、先端部701の断面積とリード部703の断面積とが略均一である。
【0062】
一方、先端部701は、窒化物セラミックにて形成されているのに対し、リード部703は、タングステンにて形成されている。つまり、先端部701の比抵抗(20μΩcm)が、リード部の比抵抗(5μΩcm)よりも大きくされている。なお、セラミック基体711としては、窒化珪素に限られるものではなく、他にアルミナ、サイアロン等を用いることができる。また、先端部701としては、窒化物セラミックに限られるものではなく、例えば、窒化ケイ素質セラミック、サイアロン及び窒化アルミニウムセラミックスのうちのいずれかのみから構成されてもよく、また、窒化ケイ素セラミック、サイアロン及び窒化アルミニウムセラミックのうちの少なくとも一種を主成分として用いることができる。さらに、リード部703においても、タングステンに限られるものでなく、金属(例えば、タンタル等)を用いることができる。
【0063】
このようなセラミックヒータ710は、先端部をエンジンの燃焼室内に配置させて、燃焼室内を加熱させることを考慮し、セラミックヒータ710の先端部を集中的に高温に発熱させる構成となっている。具体的には、セラミックヒータ710の全抵抗値(例えば、400mΩ)に対して、75%の抵抗値(例えば、300mΩ)となる発熱主部P71が、
図6に示すようにセラミックヒータ710のより先端部に集中して配置している(例えば、セラミックヒータ710の全部位を先端側から3等分した場合に、その3つの部位のうち、先端側の部位内に発熱主部P71を配置している)。その結果、この発熱主部P71が、保持外筒15の先端よりも先端側に位置することができる。これにより、セラミックヒータ710の先端部を効率よく集中的に高温に発熱させることができる。
【0064】
なお、発熱主部P71を、先端側に集中して配置する具体的な方法としては、上述したように、先端部701とリード部703の面積を略均一にすると共に、先端部701の比抵抗に比べて、リード部703の比抵抗を大きくすることで、セラミックヒータ710の先端側の抵抗値をより大きな抵抗値としている。
【0065】
さらに、発熱主部P71に接続するように発熱副部P72が設けられている。この発熱副部P72は、発熱主部P71の抵抗値を含んでセラミックヒータ10の全抵抗値に対して、80%の抵抗値(例えば、320mΩ)となる部位のことである。つまり、発熱副部P72の抵抗値は、セラミックヒータ710の全抵抗値に対して5%の抵抗値となる部位である。なお、発熱副部P72は、上述したように、抵抗発熱体712に設けたリード部703が設けられることで、セラミックヒータ710の全抵抗値に対して5%の抵抗値となる部位とすることが可能である。なお、発熱副部P72の後端側は保持外筒15の内部に配置されている。
【0066】
そして、
図6に示すように、発熱副部P72の軸方向長さを、発熱主部P71の軸方向長さよりも長く形成している。本実施形態においては、発熱主部P71の軸方向長さを7.5mm、発熱副部P72の軸方向長さを12.5mmとしている。このように、発熱副部P72の軸方向長さを発熱主部P71の軸方向長さよりも長くすることで、発熱主部P71から後端側へ向けて伝搬する熱が、発熱副部P72を経由して伝搬するまでの間に、セラミックヒータ710からエンジンヘッドやプラグホールへより放熱することができる。その結果、セラミックヒータ10の発熱副部P72よりも後端側の部位の温度を比較的低くすることができる。
【0067】
さらに、上述したように、セラミックヒータ710には、その中間部位に保持外筒15が圧入で外嵌めされ、この保持外筒15に、金属製のベローズ18が溶接されている。ところで、ベローズ18は、例えば、厚さ0.07mmの薄膜状に形成されているため、ベローズ18自身の伝熱量は比較的小さい。このため、セラミックヒータ710からベローズ18を経由して先端側ハウジング50、エンジンヘッドへの伝熱経路が、従来構造のグロープラグに比べて極端に少なくなり、接合部110の接合強度に影響がでる虞がある。これに対し、本実施形態においては、保持外筒15とベローズ18との接合部110を、セラミックヒータ710後端側に位置させている。これにより、保持外筒15とベローズ18との接合部110での熱の影響を低減することができ、接合部110の接合強度の低下を抑制することができる。その結果、燃焼ガスに対する気密性が低下することに伴って圧力センサとしての機能を損なうことを抑制できる。
【0068】
また、本実施形態においては、接合部110を、ハウジング40の内部に位置させている(
図1参照)。このように、発熱主部P71を保持外筒15よりも先端側に配置する一方、接合部110をハウジング40の内部に位置させることで、発熱主部P71と接合部110との長手方向距離がより長くなると共に、発熱主部と接合部との間のセラミックヒータの周囲を
ハウジング40が取り囲むこととなり、発熱主部P71から後端へ向けて伝搬する熱が接合部110に伝搬するまでの間に、セラミックヒータ710からエンジンヘッドやプラグホールへより放熱することができる。これにより、保持外筒15とベローズ18との接合部110での熱の影響をより低減することができ、接合強度の低下をより抑制することができる。その結果、燃焼ガスに対する気密性が低下することに伴って圧力センサとしての機能を損なうことをより抑制できる。
【実施例】
【0069】
上記第1実施形態にて説明した構成を有する実施例のグロープラグ101と、第1実施形態のグロープラグ101のうち、
図7に示すように、発熱主部P1a及び発熱副部P2aの軸方向長さを変えた比較例のグロープラグ101aとにおいて、接合部110、110aの温度について測定した。なお、
図7は
図3と同様に、セラミックヒータ110a、保持外筒15、及びベローズ18のみについて図示している。
なお、上述したように、実施例のグロープラグ101における、発熱主部P1の軸方向長さを7.5mm、発熱副部P2の軸方向長さを12.5mmとし、さらに、セラミックヒータ10の先端から接合部110までの軸方向距離を24mmとした。一方、比較例のグロープラグ101aにおける、発熱主部P1aの軸方向長さを15mm、発熱副部P2aの軸方向長さを5mmとし、さらに、セラミックヒータ10aの先端から接合部110aまでの軸方向距離T1を24mmとした。つまり、発熱副部P2、P2aの後端の位置、及び軸方向距離T1については、実施例、比較例共に同じ位置としている。
なお、比較例のグロープラグ10aにおいては、導電性セラミックの材料を変更したり、導電性セラミックの断面積を変更することで、発熱主部P1a、発熱副部P2aの軸方向長さを実施例のグロープラグ10と変えることが可能である。なお、導電性セラミックの材料変更とは、単一材料を用いてもよいし、複数材料を組み合わせてもよい。
さらに、セラミック基体11、11aは直径3.1mmとし、更に、保持外筒15、15aの厚みを0.45mm、ベローズ18の厚みを0.07mmとしている。
【0070】
この実施例、比較例のグロープラグ101、101aについて、1000℃に到達する時間を2秒、その後1350℃に到達するように通電制御にて加熱し、2分後の接合部110、110aの温度を熱電対にて計測した。その結果、実施例のグロープラグ101における接合部110の温度は570℃となり、比較例のグロープラグ101aにおける接合部110aの温度は、690℃となった。このように、発熱副部P2の軸方向長さを、発熱主部P1の軸方向長さよりも長くすることで、発熱副部P2にてエンジンヘッドやプラグホールへ放熱することができ、接合部110での温度を低減することができる。なお、ベローズ18を耐熱Ni合金にて形成しているため、ベローズ18に対する溶接強度の低下が発生しない600℃以下の温度に溶接部110を制御することが好ましく、この点からも実施例のグロープラグ101が好ましいことが分かる。
【0071】
次に、上述の第1実施形態のグロープラグ101において、セラミックヒータ110の先端から溶接部110までの軸方向距離を異ならせた場合の、溶接部110の接合強度について評価した。
具体的には、セラミックヒータ110の先端から溶接部110までの軸方向距離を20mm、22mm、24mm、26mmとした4本のグロープラグ101を準備した。なお、実施例のグロープラグ101における発熱主部P1の軸方向長さは、7.5mm、発熱副部P2の軸方向長さは12.5mmとし、さらに、セラミック基体11を窒化珪素、抵抗発熱体12をタングステンカーバイド、保持金具15をSUS316、ベローズ18を耐熱Ni合金にて形成している。
さらに、セラミック基体11は直径3.1mmとし、更に、保持外筒15の厚みを0.45mm、ベローズ18の厚みを0.07mmとしている。
【0072】
この4本のグロープラグ101を450℃の雰囲気内に配置し、素子先端温度を1350℃(発熱主部P1の最高温度)にした状態で、セラミックヒータ110を
図3の上下方向に振動させて、ベローズ18が破断するまでの振動サイクルを測定した。なお、振動サイクルの1サイクルとは、セラミックヒータ110の先端に300N(21MPa)の圧力を加え、その後、圧力を解放するまでのサイクルを指す。
【0073】
その結果、セラミックヒータ110の先端から溶接部110までの軸方向距離を20mmとしたグロープラグ100では2×10
7サイクル、軸方向距離を22mmとしたグロープラグ100では3×10
7サイクル、軸方向距離を24mmとしたグロープラグ100では2×10
8サイクルでそれぞれ破断した。他方、軸方向距離を26mmとしたグロープラグ100では、1×10
9サイクルの振動を加えても、ベローズ18が破断しなかった。このように、セラミックヒータ110の先端から溶接部110までの軸方向距離を24mm以上にすることで、接合部110の接合強度の低下をさらに抑制することができる。
【0074】
本発明のグロープラグは、上記した各例のものに限定されるものでなく、適宜に変更して具体化できる。例えば、上記第1実施形態では、歪部材を、縦断面において、半径方向の片側が、後方において折り返す形状、構造のものとしたが、歪部材は、ヒータが燃焼圧によって先端から後方に押されることによって発生する先後動により変形し、センサにてその変形から燃焼圧を検知可能のものであればよく、したがって、円環板状の単なるダイヤフラム(薄膜)とするなど適宜の形状、構造のものとすることができる。また、上記第1実施形態、第2実施形態では、センサとして歪ゲージを用いたが、ピエゾ抵抗体を備えた半導体素子のような、半導体歪ゲージや、圧電素子など各種のセンサ(センサ素子)を用いることができる。さらに、上記第1実施形態、第2実施形態では、歪部材を、ハウジング本体の後端と、中軸の後端寄り部位に位置する部位で配置した場合を例示したが、歪部材は、ハウジングや中軸における先後方向の中間部位において設けることもできる。なお、上記第1実施形態のグロープラグにおいては、ベローズについて、その後端部を、先端側ハウジングの先端部の内周面にシール状に溶接されているという構成のものとして説明したが、このベローズの後端部は、先端側ハウジングの後端とハウジング本体の先端とのつなぎ目(突合せ部)に挟み込ませて溶接する。