特許第5934222号(P5934222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934222
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】イオン源の寿命を延長するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/02 20060101AFI20160602BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20160602BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20160602BHJP
   C23C 14/48 20060101ALI20160602BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   H01J27/02
   H01J37/08
   H01L21/265 603A
   C23C14/48 Z
   H01J37/317 Z
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-529216(P2013-529216)
(86)(22)【出願日】2011年9月12日
(65)【公表番号】特表2013-545217(P2013-545217A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】US2011051172
(87)【国際公開番号】WO2012037007
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2014年8月19日
(31)【優先権主張番号】61/383,213
(32)【優先日】2010年9月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】392032409
【氏名又は名称】プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンハ、アシュウィニ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、ロイド、エイ.
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−522966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/00−27/26,37/08,37/30−37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入装置のイオン源構成要素中の付着物の形成および/または蓄積を防止するまたは減少させるための方法であって、前記イオン源構成要素はイオン化チャンバーおよび前記イオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素を備え、
前記イオン化チャンバー中にドーパントガスであって、イオン化の間にフッ素イオン/ラジカルの形成を防止または低減するのに十分な組成物を有する前記ドーパントガスを導入することと、
前記イオン化チャンバーの内部での付着物および/または前記イオン化チャンバー内に含有される前記1つ以上の構成要素での付着物の形成および蓄積を防止または低減するのに十分な条件下で前記ドーパントガスをイオン化させることと、
を含み、
前記ドーパントガスが(i)水素含有フッ素化組成物、(ii)炭化水素含有フッ素化組成物、(iii)炭化水素含有ヒドリド組成物、(iv)フッ素化組成物以外のハライド含有組成物または(v)フッ素含有およびフッ素非含有ハライドを含むハライド含有組成物を含む
前記方法。
【請求項2】
前記ドーパントガスがモノフルオロシラン(SiHF)、ジフルオロシラン(SiH)およびトリフルオロシラン(SiHF)から選択される水素含有フッ素化組成物を含む、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記ドーパントガスがジフルオロメタン(CH)およびトリフルオロメタン(CHF)から選択される炭化水素含有フッ素化組成物を含む、請求項1に記載の方法
【請求項4】
前記ドーパントガスがモノメチルシラン(Si(CH)H)、ジメチルシラン(Si(CH)およびトリメチルシラン(Si(CHH)から選択される炭化水素含有ヒドリド組成物を含む、請求項1に記載の方法
【請求項5】
前記ドーパントガスがフッ素化組成物以外のハライド含有組成物を含み、前記ハライド含有組成物がモノクロロシラン(SiHCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiClH)、四塩化ケイ素(SiCl)、ジクロロジシラン(SiCl)、クロロメタン(CHCl)、ジクロロメタン(CHCl)、トリクロロメタン(CHCl)および四塩化炭素(CCl)から選択される、請求項1に記載の方法
【請求項6】
前記ドーパントガスがフッ素含有およびフッ素非含有ハライドを含むハライド含有組成物を含み、前記ハライド含有組成物がクロロトリフルオロメタン(CClF)、ジクロロジフルオロメタン(CCl)、トリクロロフルオロメタン(CClF)、ブロモトリフルオロメタン(CBrF)およびジブロモジフルオロメタン(CBr)から選択される、請求項1に記載の方法
【請求項7】
標的にイオンを注入する方法であって、
a)イオン源構成要素を有するイオン化注入装置であって、前記イオン源構成要素がイオン化チャンバーおよび前記イオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素を備えるイオン化注入装置を提供することと、
b)注入されるイオン種源を提供するためのイオン源反応性ガスであって、イオン化の間にフッ素イオン/ラジカルの形成を防止または低減するのに十分な組成物を有するイオン源反応性ガスを提供することと、
c)前記イオン源反応性ガスを前記イオン化チャンバー中に導入することと、
d)前記イオン化チャンバーの内部でのおよび/または前記イオン化チャンバーに含有される1つ以上の構成要素への付着物の形成および/または蓄積を防止または低減するのに十分な条件下で前記イオン源反応性ガスをイオン化させて、注入されるイオンを形成することと、
e)前記イオン化チャンバーから注入されるイオンを抽出して、イオンを標的に方向付けることと、
を含み、
前記イオン源反応性ガスが(i)水素含有フッ素化組成物、(ii)炭化水素含有フッ素化組成物、(iii)炭化水素含有ヒドリド組成物、(iv)フッ素化組成物以外のハライド含有組成物または(v)フッ素含有およびフッ素非含有ハライドを含むハライド含有組成物を含む、
前記方法
【請求項8】
前記イオン源反応性ガスがモノフルオロシラン(SiHF)、ジフルオロシラン(SiH)およびトリフルオロシラン(SiHF)から選択される水素含有フッ素化組成物を含む、請求項7に記載の方法
【請求項9】
前記イオン源反応性ガスがジフルオロメタン(CH)およびトリフルオロメタン(CHF)から選択される炭化水素含有フッ素化組成物を含む、請求項7に記載の方法
【請求項10】
前記イオン源反応性ガスがモノメチルシラン(Si(CH)H)、ジメチルシラン(Si(CH)およびトリメチルシラン(Si(CHH)から選択される炭化水素含有ヒドリド組成物を含む、請求項7に記載の方法
【請求項11】
前記イオン源反応性ガスがフッ素化組成物以外のハライド含有組成物を含み、前記ハライド含有組成物がモノクロロシラン(SiHCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiClH)、四塩化ケイ素(SiCl)、ジクロロジシラン(SiCl)、クロロメタン(CHCl)、ジクロロメタン(CHCl)、トリクロロメタン(CHCl)および四塩化炭素((CCl)から選択される、請求項7に記載の方法
【請求項12】
前記イオン源反応性ガスがフッ素含有およびフッ素非含有ハライドを含むハライド含有組成物を含み、前記ハライド含有組成物がクロロトリフルオロメタン(CClF)、ジクロロジフルオロメタン(CCl)、トリクロロフルオロメタン(CClF)、ブロモトリフルオロメタン(CBrF)およびジブロモジフルオロメタン(CBr)から選択される、請求項7に記載の方法
【請求項13】
前記付着物が前記イオン化チャンバーからのおよび/または前記イオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素からのタングステンを含む、請求項7に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一部には、半導体およびマイクロエレクトロニクス製造で使用されるイオン注入装置のイオン源構成要素への付着物の形成および/または蓄積を防止または低減する方法に関する。イオン源構成要素は、イオン化チャンバーおよびイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素を含む。付着物は、イオン注入装置の正常な動作に悪影響を及ぼし、ダウンタイムを頻繁に引き起こして、ツールの利用を低下させる。
【背景技術】
【0002】
イオン注入は、半導体/マイクロエレクトロニクス製造において重要な処理である。イオン注入処理は、ドーパント不純物を半導体ウェハー中に導入するために集積回路の作製で使用される。所望のドーパント不純物が半導体ウェハー中に導入されて、ドープ領域を所望の深さで形成する。ドーパント不純物は、半導体ウェハー材料と結合して電荷担体を生成して、これにより半導体ウェハー材料の導電率を変化させるように選択される。導入されたドーパント不純物の濃度は、ドープ領域の導電率を決定する。多くのこのような不純物領域は必然的に生成されて、集合的に半導体デバイスとして機能するトランジスタ構造体、絶縁構造体および他の電気構造体を形成する。
【0003】
イオン注入処理では、所望のドーパント元素を含有するドーパント源材料、例えばガスが使用される。図3を参照すると、ガスがイオン源チャンバー、すなわちイオン化チャンバー中に導入され、エネルギーがチャンバー中に導入されてガスをイオン化する。イオン化によって、ドーパント元素を含有するイオンが生成される。イオン抽出システム(ion extraction system)を使用して、イオン源チャンバーからイオンを所望のエネルギーのイオンビームの形で抽出する。抽出は、引き出し電極に高圧を印加することによって行うことができる。ビームは、注入される種を選択するために質量分析装置/フィルターを通じて搬送される。イオンビームは次に、ドーパント元素の被加工物への注入のために、加速/減速され、エンドステーションに位置決めされた標的被加工物の表面まで搬送される。被加工物は、例えばイオン注入を必要とする半導体ウェハーまたは同様の標的対象物であってもよい。ビームのイオンは被加工物の表面と衝突して表面に侵入し、所望の電気的および物理的特性を持つ領域を形成する。
【0004】
イオン注入処理に関する問題は、イオン源チャンバーの表面上、ならびにイオン源チャンバー内に含有される構成要素上の付着物の形成および/または蓄積を包含する。付着物はイオン源チャンバーの正常な動作を妨害して、例えばイオン源チャンバー内での低圧絶縁体に形成された付着物から電気的短絡が生じ、そしてイオン源チャンバーの絶縁体に形成された付着物から強力な高圧火花が生じる。付着物は、イオン注入装置の正常な動作に悪影響を及ぼして、ダウンタイムを頻繁に引き起こし、ツールの利用度を低下させることがある。イオン源チャンバーおよびイオン源チャンバー内に含有される構成要素を清掃のために取り外したときに毒性または腐食性蒸気が発生する可能性があるため、安全上の問題も起きることがある。それ故に、イオン源チャンバーおよびイオン源チャンバー内に含有される構成要素の表面での付着物の形成および/または蓄積を最小化または防止することが必要であり、それによって、イオン源チャンバーの良好な動作に対するいかなる妨害も最小化させる。
【0005】
SiFをドーパント源として使用する間に、付着物がイオン注入ツールのイオン源チャンバーおよび付近の領域にて形成される。イオン源チャンバーでのイオン化の間にSiFの解離から形成されたフッ素イオン/ラジカルがチャンバー材料、主としてタングステンと反応して、揮発性フッ素化タングステン(WF)を生成するときに、付着物が発生する。これらの揮発性フッ素化物は、チャンバー内のより高温の領域に移行して、Wとして付着する。付着物が普通形成されるチャンバー構成要素としては、陰極、反射電極およびフィラメント付近の領域が挙げられる。以下の図1は、IHCイオン源の多様な構成要素を例証する概略図を示す。
【0006】
陰極への材料の蓄積によって、陰極の熱電子放出率が低下して、そのソースガス(source gas)をイオン化することが困難になる。また、これらの構成要素への過剰な付着物によって、電気的短絡が引き起こされ、ビーム電流の瞬間的降下およびイオン源の動作の中断が生じる。付着物はイオン源チャンバーの開口板上にも形成されて、これにより抽出されたイオンビームの均一性が悪化する。この領域も、これが抑制電極に近接しているために非常に感受性である。抑制電極は通常、高電圧負荷(±30kVまで)を受け、この領域の付着物によって抑制電極は電気的短絡を非常に受けやすくなる。
【0007】
イオン源の障害は、上に挙げた機構のいずれかまたは組み合せによって発生することがある。イオン源に障害が起きると、注入のユーザーは、処理を停止して、イオン源チャンバーを物理的に開いて、チャンバー内の多様な構成要素を清掃または交換する必要がある。チャンバー構成要素の清掃または交換のコスト以外に、この操作によって相当量のツールのダウンタイムがもたらされ、ツールの利用度が低下する。注入のユーザーは、このような付着物の形成および/または蓄積を防止または低減し、これによりイオン源の寿命を延長することによって、生産性の著しい改善が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故に、イオン源チャンバーおよびイオン源チャンバー内に含有される構成要素の表面への付着物の形成および/または蓄積を防止または低減することへの要求が存在する。イオン源チャンバーの良好な動作に対するいかなる妨害も最小化して、これによりイオン源の寿命を延長するために、イオン源チャンバーおよびイオン源チャンバー内に含有される構成要素の表面への付着物の形成および/または蓄積を防止または低減する方法を開発することが、当分野において所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一部には、イオン注入装置のイオン源構成要素における付着物の形成および/または蓄積を防止または低減する方法であって、そのイオン源構成要素はイオン化チャンバーおよびイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素を備え、
イオン化チャンバー中に、イオン化の間にフッ素イオン/ラジカルの形成を防止または低減するのに十分な組成物を有するドーパントガスを導入することと、
そのイオン化チャンバーの内部および/またはイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素での付着物の形成および蓄積を防止または低減するのに十分な条件下でドーパントガスをイオン化させることと、
を含む方法に関する。
【0010】
本発明はまた、一部には、標的中へのイオンの注入のための方法であって、
a)イオン源構成要素を有するイオン化注入装置であって、そのイオン源構成要素がイオン化チャンバーおよびイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素を備えるイオン化注入装置を提供することと、
b)注入されるイオン種源を提供するためのイオン源反応性ガスであって、イオン化の間にフッ素イオン/ラジカルの形成を防止または低減するのに十分な組成物を有するイオン源反応性ガスを提供することと、
c)そのイオン源反応性ガスをイオン化チャンバー中に導入することと、
d)そのイオン化チャンバーの内部での付着物および/またはイオン化チャンバーに含有される1つ以上の構成要素での付着物の形成および/または蓄積を防止または低減するのに十分な条件下で、イオン化チャンバー中のイオン源反応性ガスをイオン化させて、注入されるイオンを形成することと、
e)イオン化チャンバーから注入されるイオンを抽出して、イオンを標的、例えば被加工物に方向付けることと、
を含む方法にも関する。
【0011】
本発明の方法はさらに、一部には、イオン注入装置におけるイオン源構成要素の寿命を延長するための方法であって、そのイオン源構成要素がイオン化チャンバーおよびイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素を備え、
a)イオン化チャンバー中に、イオン化の間にフッ素イオン/ラジカルの形成を防止または低減するのに十分な組成物を有するドーパントガスを導入することと、
b)そのイオン化チャンバーの内部での付着物および/またはイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素での付着物の形成および蓄積を防止または低減するのに十分な条件下でドーパントガスをイオン化させることと、
を含む方法に関する。
【0012】
本発明の方法は、イオン注入のための他の公知の処理、例えばSiFをベースとする処理と比較して、イオン注入装置のイオン源構成要素での付着物の形成および/または蓄積の防止または減少の改善を提供する。本発明の方法の実施により、顧客はイオン注入装置のイオン源の平均故障間隔(MTBF)を短縮すること、およびイオン注入装置におけるイオン源の清掃前に所望のイオン注入をより長期間にわたって行うことが可能となり、それ故にツールの利用を改善することができる。このためユーザーは、清掃および構成要素の交換の間に経験するツールのダウンタイムおよび安全性の懸念を減少させることができる。
【0013】
本発明の更なる他の目的および利点は、以下の詳細な説明から当業者にただちに明らかになる。本発明は他のおよび異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細事項は、本発明から逸脱することなく、多様な明白な点で修正することができる。したがって、図面および説明は、限定的としてではなく、本質的に例証的であると見なすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】IHC(傍熱型陰極)イオン源の概略図である。
図2】各種のSi−ハライドに対する解離機構(最も低いエネルギー経路)および解離エネルギー(Prascher et al.,Chem Phy,(359),2009 pp:1−13)を示す。
図3】イオン注入システムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、イオン注入装置のイオン源の寿命を改善または延長する、被加工物中にイオンを注入するための処理に関する。その上、本発明の処理は、装置のスループットを付随的に低下させることなく、イオン注入装置源の寿命の改善を提供する。
【0016】
本発明は、加熱陰極型イオン源、例えば図1に示すIHC(傍熱型陰極)イオン源を使用するイオン注入装置の動作において有用である。図1に示すイオン源は、アークチャンバー112を画成するアークチャンバー壁111を含む。イオン源ガスは注入装置の動作中に、イオン源チャンバー中に導入される。ガスはイオン源チャンバー中に、例えばチャンバーの側面のガスフィード113を通じて導入することができる。イオン源はフィラメント114を含む。フィラメントは通例、タングステン含有フィラメントである。例えばフィラメントは、タングステンまたは少なくとも50%のタングステンを含有するタングステン合金を含むことがある。電流は関連する電源を通じてフィラメント114に印加されて、フィラメントを抵抗加熱する。フィラメントは、位置決めされた陰極115を熱電子放出温度近くまで間接的に加熱する。陰極115をアークチャンバー壁111から電気的に絶縁するために、絶縁体118が設けられている。
【0017】
陰極115から放出された電子は加速され、ガスフィード113によって提供されたガス分子をイオン化してプラズマ環境を生じる。反射電極116が負の電荷を蓄積して、電子を再び反発させて、アークチャンバー内でのガス分子のイオン化およびプラズマ環境を維持する。アークチャンバーハウジングはアークチャンバーからイオンビーム121を抽出するための抽出開口部117も含む。その抽出システムは、抽出開口部117の前に位置決めされた引き出し電極120および抑制電極119を含む。引き出し電極および抑制電極はどちらも、イオン注入に使用される明確なビーム121の抽出のための抽出開口部と位置合せされた開口部を有する。上記のイオン源の寿命は、フッ素含有ドーパントガス、例えばSiF、GeFおよびBFなどを用いて動作しているときには、高活性Fイオンを含有するプラズマ環境に暴露されているアークチャンバー構成要素でのWの金属成長によって限定されることがある。
【0018】
本発明は、図1のIHC型イオン源に限定されない。他の好適なイオン源、例えばベルナス型またはフリーマン型イオン源は、本発明の実施に有用なことがある。加えて、本発明は、イオン注入装置のいずれか1種類の使用に限定されない。代わりに、本発明の方法は、当分野で公知のいずれの種類のイオン注入装置での使用にも適用できる。
【0019】
本発明により、ガスまたはイオン源材料は、図1に示すイオン源チャンバー中に導入される。ガスは、注入される所望のイオンを生成するために、イオン源チャンバー中に制御量で導入することができる。上で指摘したように、あるイオン源ガスは、イオン源チャンバーおよびイオン源チャンバー内に含有される構成要素の表面での付着物の形成および/または蓄積、例えばイオン源チャンバー壁からタングステンの除去ならびにこれに限定されるわけではないが、フィラメント、陰極、開口および反射電極を含む他の領域へのタングステンの付着を引き起こすことがある。これらの付着物は、イオン注入装置の正常な動作に悪影響を及ぼして、ダウンタイムを頻繁に引き起こし、ツールの利用度を低下させる。
【0020】
本発明により、イオン注入装置のイオン源構成要素への付着物の形成および/または蓄積を防止または低減する方法であって、イオン源構成要素がイオン化チャンバーおよびイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素を含む方法が提供される。その方法は、イオン化チャンバー中にドーパントガスを導入することを含み、ドーパントガスはイオン化の間にフッ素イオン/ラジカルの形成を防止または低減するのに十分な組成物を有する。次にドーパントガスは、イオン化チャンバーの内部でのおよび/またはイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素での付着物の形成および/または蓄積を防止または低減するのに十分な条件下でイオン化される。
【0021】
特に、本発明は、ドーパント前駆体、例えばドーパントガスから少なくともケイ素含有イオンを生成するイオン源の性能を改善して、イオン源の寿命を延長するための方法であって、希釈ガスがドーパントガスと同時にイオンチャンバー中に導入されない方法が提供される。ドーパントガスのみがイオン種源として作用する。
【0022】
本発明により、イオン注入装置内のイオン源構成要素の寿命を延長するための方法であって、イオン源構成要素がイオン化チャンバーおよびイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素を含む方法が提供される。その方法は、イオン化チャンバー中にドーパントガスを導入することを含み、ドーパントガスはイオン化の間にフッ素イオン/ラジカルの形成を防止または低減するのに十分な組成物を有する。次にドーパントガスは、イオン化チャンバーの内部でのおよび/またはイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素での付着物の形成および/または蓄積を防止または低減するのに十分な条件下でイオン化される。
【0023】
ドーパント源としては、イオン化の間にフッ素イオン/ラジカルの形成を防止または低減するのに十分な組成物を有するドーパント源が挙げられる。例証となるドーパント源としては、例えば(i)水素含有フッ素化組成物、(ii)炭化水素含有フッ素化組成物、(iii)炭化水素含有ヒドリド組成物、(iv)フッ素化組成物以外のハライド含有組成物または(v)フッ素含有およびフッ素非含有ハライドを含むハライド含有組成物を含む、ドーパントガスが挙げられる。特にドーパントガスは、モノフルオロシラン(SiHF)、ジフルオロシラン(SiH)、トリフルオロシラン(SiHF)、モノクロロシラン(SiHCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiClH)、四塩化ケイ素(SiCl)、ジクロロジシラン(SiCl)、ジフルオロメタン(CH)、トリフルオロメタン(CHF))、クロロメタン(CHCl)、ジクロロメタン(CHCl)、トリクロロメタン(CHCl)、四塩化炭素(CCl)、モノメチルシラン(Si(CH)H)、ジメチルシラン(Si(CH)およびトリメチルシラン(Si(CHH)、クロロトリフルオロメタン(CClF)、ジクロロジフルオロメタン(CCl)、トリクロロフルオロメタン(CClF)、ブロモトリフルオロメタン(CBrF)およびジブロモジフルオロメタン(CBr)などから選択することができる。
【0024】
例証となる水素含有フッ素化組成物としては、例えばモノフルオロシラン(SiHF)、ジフルオロシラン(SiH)、トリフルオロシラン(SiHF)などが挙げられる。
【0025】
例証となる炭化水素含有フッ素化組成物は、例えばジフルオロメタン(CH)、トリフルオロメタン(CHF)などが挙げられる。
【0026】
例証となる炭化水素含有ヒドリド組成物としては、例えばモノメチルシラン(Si(CH)H)、ジメチルシラン(Si(CH)およびトリメチルシラン(Si(CHH)が挙げられる。
【0027】
例証となるフッ素化組成物以外のハライド含有組成物としては、例えばモノクロロシラン(SiHCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiClH)、四塩化ケイ素(SiCl)、ジクロロジシラン(SiCl)、クロロメタン(CHCl)、ジクロロメタン(CHCl)、トリクロロメタン(CHCl)、四塩化炭素(CCl)などが挙げられる。
【0028】
例証となるフッ素含有およびフッ素非含有ハライドを含むハライド含有組成物としては、例えばクロロトリフルオロメタン(CClF)、ジクロロジフルオロメタン(CCl)、トリクロロフルオロメタン(CClF)、ブロモトリフルオロメタン(CBrF)およびジブロモジフルオロメタン(CBr)などが挙げられる。
【0029】
水素含有フッ素化組成物は、1分子当たりのFの量を減少させて、またイオン化時にHイオン/ラジカルを発生する。Hイオン/ラジカルは、発生したFイオン/ラジカルと反応して、チャンバー構成要素に対するフッ素の攻撃をさらに減少させて、イオン源の寿命を延長する。水素含有フッ素化組成物は、未希釈SiFと比較して、単位ガス流当たりのドーパント原子、例えばSiを同じ数に維持する。
【0030】
フッ素化組成物以外のハライド含有組成物(例えば塩素化組成物)は、F原子をCl原子で完全に置換する。これらは解離時にClイオンまたはラジカルを生成する。Clイオンまたはラジカルは、Wとの反応時にWClを生成し、Wは、FイオンまたはラジカルとWとの反応中に生成される対応するWFよりも揮発性が著しく低い。例えば20℃におけるWFの蒸気圧は925トルであるのに対して、WClは20℃にて、および180℃においても固体であり、これの蒸気圧はわずか2.4トルである。F環境と比較してCl環境におけるエッチング生成物の揮発性が著しく低いため、ClはFほどただちにWをエッチングしないので、生成する揮発性WClはより少量である。揮発性タングステンハライドの量の減少により、Wの付着物がより少なくなり、これによりイオン源の寿命が延長される。
【0031】
また、例えばSi含有ドーパントガスの場合、Si−ClおよびSi−H結合を解離させるのに必要なエネルギーは、Si−F結合と比較してより小さい。図2を参照のこと。それ故にユーザーは、SiFと比較してより低い負荷(すなわちより低いフィラメント電流およびアーク電圧)でイオン源を動作させて、同様のSiビーム電流を得ることができる。このことはイオン源の寿命を延長することにも役立つ。
【0032】
ジクロロジシランは、1分子当たり2個のSi原子を有する。この分子を使用すると、同じ量のガス流でSiビーム電流をさらに増加させるという、追加の利点を提供することができる。ビーム電流の増加により、ウェハーを処理するサイクル時間を短縮する機会が提供される。
【0033】
本発明で有用なドーパントは、イオン源として作用する希釈ガスなしで使用することができる。
【0034】
注入の間に形成される付着物は、通例、処理チャンバー内の位置に応じて変化する量のタングステン(W)を含有する。Wは、イオン化チャンバーおよびイオン化チャンバー内に含有される構成要素を構築するための一般的な材料である。付着物は、ドーパントガスからの元素も含有することがある。
【0035】
従来技術で議論された方法は、付着物形成を低減する2つの機構に依存している。注入ガスと混合された不活性物質は、形成された付着物を、これらが形成される間に物理的にスパッタリングして除去する。加えて、本発明によって示されるように、水素混合によって活性フッ素の濃度が低下して、チャンバー構成要素に対するフッ素攻撃が緩和される。水素はFラジカル/イオンと反応して、HFを形成する。
【0036】
しかし、注入ガスとその他のガスとの同時流動によっても混合物の注入ガスの濃度が物理的に希釈され、ゆえに所与の注入ガス流に対する注入イオン(例えばSi)の濃度はより低くなる。これにより、イオン注入に利用可能なビーム電流がより低くなる。ユーザーは、未希釈処理と同様のドーズ量を達成するために、ウェハーをより長く処理する必要がある。これにより処理サイクル時間が延長され、このためツールのスループット速度の低下が引き起こされる。それゆえ、イオン注入ツールの性能全体がなお損なわれている。重原子、例えばXe、KrまたはAsの使用も、重度の物理スパッタリングの作用による陰極薄肉化のリスクのために望ましくない。
【0037】
これらの方法とは対照的に、本発明は、代わりのドーパントを使用して、他のドーパント、例えばSiFに直面するイオン源寿命問題を解決する。特に本発明は、水素をドーパント源組成物中に取り込むドーパントを使用する。例えばSi含有ドーパントの場合、本発明で有用な好適なドーパント分子としては、モノフルオロシラン(SiHF)、ジフルオロシラン(SiH)、トリフルオロシラン(SiHF)などが挙げられる。このような分子はすべて、イオン化時にHおよびFを生成する。水素はFスカベンジャとして作用して、チャンバー構成要素に対するフッ素攻撃を低減する。従来技術の方法とは異なり、本発明の方法は注入ガス流を希釈せず、このため未希釈SiFと比較して、単位ガス流当たりのドーパント原子、例えばSiを同じ数に維持する。
【0038】
実施形態において、本発明は、塩素化分子をドーパント源として使用する。Si含有ドーパント源に好適なドーパント分子としては、例えばモノクロロシラン(SiHCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiClH)、四塩化ケイ素(SiCl)、ジクロロジシラン(SiCl)などが挙げられる。これらの分子は、イオン化時にCl原子を生成する。Wは、フッ素プラズマと比較して、塩素プラズマ中でより低い速度でエッチングする。それゆえチャンバー壁からのWの除去ならびにイオン源チャンバー中/付近の別の位置へのWの移動は、塩素化分子をドーパント源として使用するときに著しく低減される。また、注入ガス流の希釈はない。それゆえ、ユーザーは未希釈SiF処理と同様のビーム電流を達成して、さらにイオン源の寿命延長を達成することができる。
【0039】
希釈によって、単位ガス流当たりの利用可能なドーパント原子(例えばSi)の量がより少ないために、より長いサイクル時間がもたらされる。本発明の方法により、サイクル時間を一切損失することなく、イオン源の寿命が延長される。希釈ガスを用いる方法では、各希釈ガスに追加のガススティック(流量制御デバイス、圧力監視デバイス、弁および電子インタフェース)が必要である。本発明によって、追加のガススティックが一切必要なくなり、追加のガススティックを提供するために必要な資本経費が節約される。さらに、結合解離エネルギーは、ユーザーがSiFと比較してより少ないエネルギーを使用して、本発明の代わりのドーパント分子をイオン化できることを示す。図2を参照のこと。
【0040】
フッ素化組成物以外のハライド含有組成物、例えば塩素化組成物は、イオン源分子からのフッ素原子が完全に置換されていることおよび解離エネルギーがより低いことにより、好ましいドーパントである。本発明での使用に好ましいドーパントは、ジクロロシラン(DCS)である。SiFを置換するために使用され得る他の好ましいドーパント源としては、例えばSi(CH)H、Si(CHおよびSi(CHHが挙げられる。
【0041】
本発明の好ましい方法において、DCSの制御流がイオン注入ツールのイオン源チャンバーに供給される。DCSは、高圧シリンダまたは準大気圧送達パッケージ、例えばアップタイム(登録商標)準大気圧送達システムにパッケージすることができる。準大気圧パッケージは、高い安定性のために、ガスの送達に好ましい様式である。DCSの流量は、1−20sccm、さらに好ましくは1−5sccmの範囲に及ぶことができる。市販のイオン注入装置でよく使用されるイオン源としては、フリーマンおよびベルナス型源、間接加熱陰極源ならびにRFプラズマ源が挙げられる。圧力、フィラメント電流およびアーク電圧などを含むイオン源動作パラメータは、DCSの望ましいイオン化を達成するために調整される。イオン、例えばSiまたはSi含有陽イオンは、引き出しアセンブリに負のバイアスを提供することによって抽出され、磁場を使用してフィルタリングされる。抽出されたビームは次に磁場で加速されて、基材に注入される。
【0042】
上で指摘したように、本発明は、一部は、標的中にイオンを注入する方法に関する。その方法は、イオン源構成要素を有するイオン注入装置であって、イオン源構成要素がイオン化チャンバーおよびイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素を備えるイオン化注入装置を提供することを含む。イオン源反応性ガスは、注入されるイオン種源を提供する。イオン源反応性ガスは、イオン化の間にフッ素イオン/ラジカルの形成を防止または低減するのに十分な組成物を有する。イオン源反応性ガスは、イオン化チャンバー中に導入される。イオン源反応性ガスはイオン化チャンバー中でイオン化されて、注入されるイオンを形成する。イオン化は、イオン化チャンバーの内部でのおよび/またはイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素での付着物の形成および/または蓄積を防止または低減するのに十分な条件下で行われる。注入されるイオンは次に、イオン化チャンバーから抽出されて、標的、例えば被加工物に向けられる。
【0043】
イオン注入装置は、当分野で公知の従来的な方法によって動作させることができる。半導体処理分野の当業者は、具体的なドーパントについて較正された具体的な流量制御デバイス(例えばマス・フロー・コントローラ(MFC)、圧力変換器、弁など)および監視システムが実際の動作に必要であることを認識するであろう。加えて、フィラメント電流、アーク電圧、引き出し電圧および抑制電圧などを含む注入処理パラメータの調整は、特定のドーパントを使用して処理を最適化するために必要である。調整スキームには、所望のドーパントドーズを達成するために、ビーム電流およびその安定性を最適化することが含まれる。ひとたびイオンビームが抽出されたら、下流処理での変更が要求されるべきではない。
【0044】
イオン化条件は、大きく変化することがある。イオン化チャンバーおよびの内部からの/またはイオン化チャンバー内に含有される1つ以上の構成要素からの付着物の形成を防止または低減するのに十分であるこのような条件のいずれの好適な組み合せも、本明細書で用いることができる。イオン化チャンバー圧は、約0.1から約10ミリトルの、好ましくは約0.5から約2.5ミリトルの範囲に及ぶことができる。イオン化チャンバー温度は約25℃から約1000℃の、好ましくは約400℃から約600℃の範囲に及ぶことができる。ドーパントガス流量は、約0.1から約20sccmの、さらに好ましくは約0.5から約3sccmの範囲に及ぶことができる。
【0045】
本発明の方法を用いることにより、イオン注入装置のイオン源の寿命を延長することができる。このことがイオン注入産業における進歩に相当するのは、これによりツールを修復または清掃するのに必要となるシャットダウン時間が短縮されるためである。
【0046】
本発明の方法は、イオン注入が必要とされる広範囲の用途での使用に好適である。本発明の方法は、半導体ウェハー、チップまたは基材に源領域/ドレイン領域を提供するために、基材の半導体ウェハーをプレアモルファス化するために、または基材の半導体ウェハーを表面改質するために、半導体産業での使用に大いに適用可能である。
【0047】
本発明の様々な修正および変更は当業者に明らかとなり、このような修正および変更が本出願の範囲に、ならびに請求項の精神および範囲に包含されることが理解されるべきである。
図1
図2
図3