(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記真菌が以下の属:カンジダ、アスペルギルス、アルテルナリア、フザリウム、クリプトコッカスおよびトリコスポロンの1つからの病原性種である、請求項10に記載の組成物。
前記真菌、とくにカンジダ・アルビカンス、アスペルギルス・フミガタスまたはアルテルナリア・アルテルナタが侵襲性真菌感染症を引き起こし得る、請求項12に記載の組成物。
【背景技術】
【0002】
[序論]
細菌症
細菌はヒト感染症のもっとも一般的な病原体である。世界人口の3分の1超が細菌病原体に感染するおそれがあり、1年当たり200万人が細菌感染症で死亡する。米国疾病管理センター(ODC)および世界保健機関(WHO)によると、今日世界中でもっとも一般的な感染症のリストには以下の細菌感染症が含まれる。
【0003】
コレラ:これは主に汚染された飲料水および不衛生な状態によって広がる疾病である。インド亜大陸、ロシア、およびサブサハラアフリカに特有である。細菌ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)での腸の急性感染症である。主な症状は大量の下痢である。この疾病に感染した人々の5%〜10%は、嘔吐および下肢痙攣を含む重篤な症状を発症する。重症の場合には、コレラは脱水により死に至らしめうる。毎年約20万件がWHOに報告されている。
【0004】
髄膜炎:これは、多くの場合脊髄膜炎として知られる、脊髄の感染症である。通常、ウィルスまたは細菌感染の結果である。細菌性髄膜炎はウィルス性髄膜炎より重篤であり、脳障害、聴力喪失、および学習障害を引き起こし得る。例えば、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)b型、ナイセリア・メニンギディディス(Neisseria meningitidis)、またはストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)により引き起こされ得る。毎年約120万件の細菌性髄膜炎が発生し、その10分の1超が死に至る。症状としては、重度の頭痛、発熱、吐気、嘔吐、昏睡、精神錯乱、光恐怖症、および肩こりが挙げられる。
【0005】
肺炎:これには考えられる原因が多くあるが、通常は連鎖球菌(ストレプトコッカス)またはマイコプラズマ菌の感染症である。これらの細菌は、数年間感染症を引き起こすことなくヒトの体内で生き、別の病気がこの疾病に対する免疫を低下させた場合のみ表面化し得る。ストレプトコッカス・ニューモニエはもっとも一般的な種類である連鎖球菌(ストレプトコッカス)肺炎を引き起こすが、これはマイコプラズマ肺炎より重篤である。S.ニューモニエは毎年10万件超の肺炎のための入院、ならびに600万件の中耳炎および6万件超の髄膜炎のような侵襲性疾患の原因である。
【0006】
細菌性赤痢:この感染症は毎年世界中で約60万人を死亡させる。衛生不良な発展途上国でもっとも一般的である。シゲラ(Shigella)が細菌性赤痢を引き起こす。症状としては、血便の混じった下痢、嘔吐および腹部痙攣が挙げられる。
【0007】
連鎖球菌性咽頭炎:これは連鎖球菌により引き起こされる。毎年数百万件の連鎖球菌性咽頭炎が発生する。症状としては、咽頭痛、発熱、頭痛、疲労、および吐気が挙げられる。
【0008】
結核:これは毎年2百万人近くの死者を出し、WHOは、より効果的な予防手段が講じられなければ、2000年〜2020年の間に10億人近くが感染するだろうと予測する。TB菌(例えばマイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))は肺においてもっともよく見られ、胸痛および血痰を吐くひどい咳を引き起こし得る。他の症状としては、疲労、体重減少、食欲減退、寒気、発熱および寝汗が挙げられる。
【0009】
チフス:腸チフスは細菌サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)により引き起こされ、毎年1200〜1700万件のうち、約60万人を死亡させる。通常は感染した食物または水によって広がる。症状としては、急な発熱および発熱の持続、重度の頭痛、吐気、重度の食欲減退、便秘、および場合によって下痢が挙げられる。
【0010】
正確な件数は、しかしながら、とくにこれらの疾病のかなり多くが、多くの人々が現代医療へのアクセスを持たない発展途上国に特有であるため、割り出すのが難しい。毎年感染症により引き起こされるすべての死の約半分はたった3つの疾病:結核、マラリア、およびエイズによるものであり得る。これらの疾病は毎年合わせて3億件超の病気を発生させ、5百万人超を死亡させる。
【0011】
近現代の抗生物質の使用は19世紀および20世紀初期に、強力な抗微生物活性を有したペニシリウム・ノタツム(Penicillium notatum)により生成される活性成分ペニシリンの同定で始まった。しかしながら、1955年以前はその販売は制御されておらず、過度の制御されない使用は耐性細菌の発現をもたらした。抗生物質耐性は大きな問題となり、耐性ブドウ球菌(スタフィロコッカス)感染症が病院で流行しはじめた。
【0012】
20世紀初期には、スルホンアミド、ストレプトマイシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、セファロスポリンおよびテトラシクリンのような抗生物質の開発もあった。これらの化合物の多くは今日まだ用いられているが、すべて耐性の発現の問題に直面し、いくつかは毒性の問題に直面した。例えば、ストレプトマイシンは腎障害および難聴を引き起こし得、クロラムフェニコールは重篤な副作用(例えば貧血症および白血病を含む重篤な血液疾患)を引き起こし得る。
【0013】
1960年代中にさらなる研究が行われ、これは第2世代の抗生物質の開発につながった。これらとしては、メチシリン、とくにペニシリン耐性の問題を克服するように製造されたペニシリンの半合成誘導体があった。メチシリンはペニシリンに対する細菌耐性との戦いにおける大躍進として認められたが、あいにくそうではなく、現在はメチシリンに耐性がある細菌が存在する。アンピシリンもペニシリンの誘導体である。これはペニシリンが治療することができる感染症の範囲を広げるために開発され、現在は大部分のペニシリンにとって代わっている。呼吸器および尿路感染症を含む全範囲の感染症の治療における第1の選択肢であることが多い。アモキシシリンはもう1つの広く用いられるペニシリン誘導体である。アンピシリンと同様に広範囲の活性を有する。ゲンタマイシンはストレプトマイシン(1943年に発見された抗TB薬)と同じファミリーの抗生物質である。耳および腎臓に重篤な毒性副作用を有し得るので、一般的には重篤な感染症のために取ってある。
【0014】
最近、キノロンと呼ばれ、フルオロキノロンとも称される抗生物質の新規ファミリーが医薬研究所により開発された。広範囲の細菌に対して効果的であることに加え、これらの抗生物質は経口摂取すると血流中で高濃度に達することができる。これは、かつて入院が必要だった多くの感染症を現在では家庭で治療することができることを意味する。フルオロキノロンは重篤な病気の患者に、および/または長期(数週〜数か月)抗生物質が必要である場合にのみ用いられる。
【0015】
こうした第2世代化合物の開発にかかわらず、耐性の絶え間ない発現は問題であり続ける。一般的には、耐性は薬剤の使用、とくに広範囲にわたる使用または誤用後に発現し、これは結果としてヒトの病気を治療するその効果の損失をもたらす。抗微生物剤の連続使用は耐性菌株の発現、増殖、および蔓延に有利となる選択圧を増加させる。抗微生物剤の不適切で制御されない使用もこれをもたらし、過剰処方、準最適用量の投与、不十分な治療期間、薬剤の不適切な選択をもたらす誤診、および家庭、学校等における抗細菌性家庭用品の使用(とくに濫用)を含む。
【0016】
いくつかの例では、耐性はすぐに現れる(例えばオキサリンに対するスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)の耐性はたった数年で発現した)が、他の例では時間がかかる場合もある(例えばエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)はバンコマイシンに対する耐性が発現するのにほぼ30年かかった)。期間の差の理由は不明であり、おそらく多因子的である。しかしながら、細菌が抗微生物剤の殺滅作用を回避する能力は、個別の患者を治療する、および感染症の大発生を制御する能力を明らかに妨げる。例えば、WHOは、1年当たり50万件近くの新しい多剤耐性結核(MDR−TB)が発生することを予測するが、これは900万件の新しいTBのすべての型の約5%である。
【0017】
メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)のいくつかの菌株は、院内感染を引き起こす特定の能力を有する。米国にあるいくつかの病院では、患者から分離されたS.アウレウスの70%超はMRSAであり、これらの菌株はバンコマイシン、リネゾリド、ダプトマイシン、およびチゲサイクリンを除くすべての認可薬に耐性であることが多い。最近、米国ではバンコマイシンに対して完全に耐性であるS.アウレウスの菌株も患者から分離され、治療をさらに複雑にしている。MRSAは多くの病院においてかなり流行し、一度病院内に入ると、この有機体は撲滅するのが非常に困難である。
【0018】
撲滅の問題は、すべての他の臨床的に認可された薬剤に耐性であることが多い、E.フェシウムのバンコマイシン耐性菌株(VRE)についても同様である。エンテロコッカスにおけるバンコマイシン耐性はプラズミド媒介性であることが多く、いくつかの特異な耐性決定因子からもたらされ得る。E.フェシウムにおけるペニシリンおよびグリコペプチド耐性の組み合わせは、効果的に治療することができない感染症を引き起こす。幸運なことに、ほとんどのVREは保菌状態であり、感染症は引き起こさない。感染症が発生する場合、抗生物質では治療できない場合がある。キノロンに対する耐性は、治療中であっても、急速に発現し得る。
【0019】
現在、いくつかの細菌は、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス、バンコマイシン耐性エンテロコッカス、およびキノロン耐性ストレプトコッカス・ニューモニエのように、「スーパーバグ」の状態に達した。これらの病原体について、治療に使用可能な抗生物質はほとんどまたはまったく存在しない。しかし驚くべきことに、この40年の間に、すべて1999年以降のストレプトグラミン系キヌプリスチン/ダルホプリスチン(Synercid)、オキサゾリジノンリネゾリド、およびリポペプチドダプトマイシンを含む、ほんのわずかのクラスの新規抗生物質しか登場していない。
【0020】
とくに抗微生物耐性の問題のため、細菌病原体により誘発される疾病を治療するための新規抗生物質の必要性が増大している。前述したように、多くの病原体は治療に用いられる強力な抗生物質に対して耐性を発現させる。驚いたことに、耐性は多くの場合単一の薬剤に制限されず、複数の抗生物質に対して耐性を有し得る。新規のより効果的な薬剤、とくに多剤耐性機構を回避するための有向スペクトルの抗生物質の探索は今日も続いている。この探索のペースは、しかしながら、現在は医薬品会社にとって新規薬剤の認可を得ることがより一層困難であるため、著しく低下している。また、かかる費用、および研究所における新規抗生物質の同定とそれを商業的に製造するための認可との間の時間遅延が大き過ぎ、いくつかの会社は市場を完全に放棄することになった。
【0021】
真菌感染症
真菌感染症の発生は、一部には免疫系機能不全を有する患者数の増加の結果として、過去30年の間に増加している。これは、免疫抑制患者の数の増加をもたらす、近年の医学、とくに癌治療における大きな進歩の直接的な結果である。真菌感染症の増加については、非経口栄養、中心静脈カテーテル、広域スペクトルの抗生物質治療、妊娠、制御されない糖尿病を有する患者、臓器移植レシピエント、エイズを有する患者、細胞毒性化学療法を行う癌患者、熱傷または好中球減少症を有する患者、および胃腸病理学を含む、いくつかの他の理由が示されている。
【0022】
真菌感染症のもっとも重篤なものは、高い死亡率に関連する侵襲性真菌感染症(IFI)(例えば血流感染症)である。カンジダ(Candida)種は30%の平均死亡率を有するIFIのもっとも一般的な病原体である。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)は侵襲性カンジダ感染症の発生件数の約50%の原因であるが、カンジダの非アルビカンス種、すなわちカンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)およびカンジダ・クルセイ(Candida krusei)の相対頻度は着実に増加している。アスペルギルス(Aspergillus)種はもっとも一般的に分離される侵襲性糸状菌であり、アスペルギルス・フミガタス(Asperigillus fumigatus)種が優勢である。カンジダ感染症同様、侵襲性アスペルギルス症は一般に重篤な患者に関連するが、その死亡率は、考慮する特定の個別感染症によって決まるにもかかわらず、はるかに高い:例えば播種性または中枢神経系疾患について85%以上、びまん性肺疾患について60%である。
【0023】
IFIの有病率および死亡率は過去30年にかけて増加した。米国のデータは、1980年にこの群の疾患が828人を死亡させ、死に至る感染症の原因の上位10番目であったことを示す。同データは、1997年には死亡者数が2370人、末期感染症の原因の上位7番目まで上昇したことを示した。最近のデータは、カンジダがエシェリキア・コリ(Escherichia coli)およびシュードモナス(Pseudomonas)種より一般的になり、現在では米国において4番目にもっとも一般的な死に至る感染症であることを示す。
【0024】
カンジダIFIも院内環境で増加しており、これらの感染症のリスク因子は増加しつづけるので、さらなる増加が予見される。カンジダ種はすべての院内IFIの8〜10%を占め、毎年米国において10万人に6〜23人の感染者の割合で発生する。侵襲性カンジダ症の主な懸念はその高い死亡率だけでなく、感染患者の入院が3〜10日と長く、米国においてカンジダ血症に起因し得る総推定コストが1年当たり約10億ドルとなることである。ポルトガル人口について最近発表された研究は、入院1000件当たり2.7件の院内真菌血症が発生し、死亡率が39.3%であることを示した。欧州におけるIFIの発生について発表された別の最近の研究によると、この数は他の欧州諸国において見出された発生件数により近く、米国人口について見出されたものよりかなり低い。別の最近の報告は、スコットランドにおいてカンジダ血症の発生が1年当たり10万人の人口について4.8件であることを示した。
【0025】
1950年代後期から、命にかかわる真菌感染症の標準的な治療はアムホテリシンBである。この化合物は真菌細胞膜中のステロールを標的とし、これに結合し、イオン孔を生成し、膜電位の損失およびその後の崩壊をもたらす。もっとも広域スペクトルの殺真菌剤は使用可能ではあるが、その高い毒性および非経口投与の要件はその使用を限定している。
【0026】
1990年代には、トリアゾール、フルコナゾールおよびイトラコナゾールとともに、アムホテリシンBの脂質製剤が導入された。トリアゾールは、CYP−450依存性ラノステロール14α−デメチラーゼの阻害によってエルゴステロールの合成に影響を及ぼすことにより作用し、細胞増殖を妨げ、最終的には細胞死をもたらす。これらの薬剤はアムホテリシンBに対して明らかな利点を示したが、それらは製剤、活性のスペクトルおよび/または耐性の発現により限定されていた。
【0027】
2000年から、拡大スペクトルのトリアゾール(ボリコナゾールおよびポサコナゾール)、およびエキノカンジン(カスポファンギン、ミカファンギンおよびアニデュラファンギン)のような既存の薬剤の強い限定を克服するため、新規抗真菌剤が開発された。エキノカンジンはβ−1,3−D−グルカンの合成を阻害し、真菌細胞壁の不安定化、細胞溶解、および細胞死をもたらす。それらはカンジダおよびアスペルギルス種に対して生体外で活性であるが、幅広い範囲の他の新興病原性真菌に対しては活性でない。これらの新規薬剤のなかでも、依然として薬物副作用(とくにボリコナゾールについて)、トリアゾールに関する薬物間相互作用、および代替製剤の不足(例えば静注用製剤はポサコナゾールについて不足し、経口製剤はエキノカンジンについて不足している)のような限定がある。
【0028】
現在入手可能な抗真菌剤もカンジダ・アルビカンス保菌の予防撲滅のためには不十分である。実際、この酵母はバイオフィルム成長能力を示し、これはアゾール、ポリエンおよび5−フルオロサイトシンのような抗真菌剤に対する固有の耐性の増加を示す。この理由のため、カンジダ症は、バイオフィルム成長のため基質として作用し得る留置型医療機器(例えば、歯科インプラント、カテーテル、心臓弁、血管バイパスグラフト、接眼レンズ、人工関節、および中枢神経系シャント)に関連することが多い。カンジダ血症を有する427人の継続患者の多施設研究では、カテーテル関連カンジダ血症を有する患者の死亡率は41%であると見出された。従って、新規抗真菌剤の開発にかかわらず、院内真菌感染症の死亡率は容認できないほど高いままである。さらに、一般的には診断および治療するのがより難しく、より高い死亡率の原因となる、カンジダの非アルビカンス種およびアスペルギルスの非フミガタス種を含む、新規および新興真菌病原体のリストも増えている。
【0029】
本発明の目的は、これらの問題の解決を試みることであり、とくに例えば低い毒性を有しつつ、ヒト/動物病原体に対して強力で広域スペクトルの活性を有する代替抗微生物剤を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
Blad
Blad(「banda de Lupinus albus doce」―スイートL.アルバスからのバンド)は、β−コングルチン、ルピナス属の種中に存在する主要な貯蔵タンパク質の、安定した中間分解生成物に与えられた名称である。173個のアミノ酸残基からなり、ルピナスからのβ−コングルチンの前駆体をエンコードする遺伝子(GenBankにおいてアクセッション番号AAS97865で公表される、1791個のヌクレオチド)の内部断片(GenBankにおいてアクセッション番号ABB13526で登録される、519個のヌクレオチド)によりエンコードされる20kDのポリペプチドとして特徴づけられる。Blad末端配列をエンコードするプライマーを用いてゲノムルピナスDNAからの配列を増幅する場合、〜620bpの生成物が得られ、Bladをエンコードする遺伝子断片中のイントロンの存在を示す。自然発生Bladは、発芽の開始後4〜12日の間、ルピナス種の子葉のみに(β−コングルチンの集中的かつ限定的なタンパク質分解の後)蓄積する、210kDのグリコオリゴマーの主成分である。前記オリゴマーはグリコシル化しているが、自然発生Bladはグルコシル化していない。Blad含有グリコオリゴマーは、いくつかのポリペプチドを含み、主なものは14、17、20、32、36、48および50kDの分子量を示す。20kDのポリペプチド、Bladは、オリゴマー中でもっとも豊富なポリペプチドであり、レクチン活性を有する唯一のものであると考えられる。自然発生Bladは8日齢の植物体中の総子葉タンパク質の約80%を占める。
【0038】
L.アルバスβ−コングルチン前駆体をエンコードする配列(SEQ ID NO:1)を
図10に示す。β−コングルチン親サブユニットをコードする配列は残基70〜1668に位置する。エンコードされた、533個のアミノ酸残基のβ−コングルチン親サブユニット(SEQ ID NO:2)は:
である。
【0039】
Bladに対応するβ−コングルチン前駆体をエンコードする配列(SEQ ID NO:3)の内部断片を
図11に示す。Bladポリペプチド(SEQ ID NO:4)は:
である。
【0040】
本発明は、Bladまたはその活性変異体を含む抗微生物ポリペプチドを含む組成物に関する。従って、SEQ ID NO:4のポリペプチド配列またはその活性変異体を含む抗微生物ポリペプチドを含む組成物に関する。代替実施形態では、組成物は本質的にBladもしくはその活性変異体を含む抗微生物ポリペプチドからなる、および/または抗微生物ポリペプチドは本質的にBladもしくはその活性変異体からなる。さらなる実施形態では、Bladまたはその活性変異体を含む(または本質的にこれらからなる)抗微生物ポリペプチドは分離形態で用いることができる。
【0041】
Bladの活性変異体は、抗微生物剤として作用する能力を保持する(すなわち、抗微生物活性を有する―こうした活性のレベルおよびどのように測定するかの説明は以下参照)Bladの変異体である。「Bladの活性変異体」は、その範囲内に、SEQ ID NO:4の断片を含む。好適な実施形態では、SEQ ID NO:4の断片は、SEQ ID NO:4の長さの少なくとも10%、好適には少なくとも20%、好適には少なくとも30%、好適には少なくとも40%、好適には少なくとも50%、好適には少なくとも60%、好適には少なくとも70%、好適には少なくとも80%、好適には少なくとも90%、もっとも好適にはSEQ ID NO:4の長さの少なくとも95%であるものが選択される。Bladまたはその変異体は一般的には、少なくとも10個のアミノ酸残基、例えば少なくとも20、25、30、40、50、60、80、100、120、140、160または173個のアミノ酸残基の長さを有する。
【0042】
「Bladの活性変異体」は、その範囲内に、例えば全配列について、または少なくとも20個、好適には少なくとも30個、好適には少なくとも40個、好適には少なくとも50個、好適には少なくとも60個、好適には少なくとも80個、好適には少なくとも100個、好適には少なくとも120個、好適には少なくとも140個、もっとも好適には少なくとも160個以上の隣接するアミノ酸残基の領域について、SEQ ID NO:4との相同性、例えば少なくとも40%の同一性、好適には少なくとも60%、好適には少なくとも70%、好適には少なくとも80%、好適には少なくとも85%、好適には少なくとも90%、好適には少なくとも95%、好適には少なくとも97%、もっとも好適には少なくとも99%同一性を有するポリペプチド配列も含む。タンパク質相同性の測定方法は当技術分野において周知であり、当業者であれば、本文脈では相同性はアミノ酸同一性(「ハード相同性」と称されることもある)に基づいて計算されることを理解するだろう。
【0043】
相同活性Blad変異体は一般的には、置換、挿入または削除、例えば1、2、3、4、5〜8個以上の置換、挿入または削除によりSEQ ID NO:4のポリペプチド配列とは異なる。置換は好適には「保守的」である、すなわちアミノ酸を同様のアミノ酸で置換することができ、それによって同様のアミノ酸は以下の群:芳香族残基(F/H/W/Y)、非極性脂肪族残基(G/A/P/I/L/V)、極性非荷電脂肪族(C/S/T/M/N/Q)および極性荷電脂肪族(D/E/K/R)の1つを共有する。好適な亜群は:G/A/P;I/L/V;C/S/T/M;N/Q;D/E;およびK/Rを含む。
【0044】
(上述のような)Bladまたはその活性変異体を含む抗微生物ポリペプチドは、N末端および/またはC末端にいずれかの数のアミノ酸残基を付加したBladまたはその活性変異体からなり得るが、ただしポリペプチドは抗微生物活性を保持する(同様に、こうした活性のレベルおよびこれをどのように測定するかの説明は以下参照)。好適には、300個以下のアミノ酸残基、より好適には200個以下のアミノ酸残基、好適には150個以下のアミノ酸残基、好適には100個以下のアミノ酸残基、好適には80個、60個または40個以下のアミノ酸残基、もっとも好適には20個以下のアミノ酸残基をBladまたはその活性変異体の一端または両端に付加する。
【0045】
(上述のような)Bladまたはその活性変異体を含む(または本質的にこれからなる)抗微生物ポリペプチドは、本発明において(例えば植物、動物または微生物供給源から取り出した)精製および/または組換えタンパク質の形態で用いることができる。組換え形態の製造はBladの活性変異体の製造を可能にする。
【0046】
自然発生Bladの精製方法は当技術分野においてすでに説明されている(例えばRamos et al.(1997)Planta 203(1):26−34およびMonteiro et al.(2010)PLoS ONE 5(1):e8542)。自然発生Bladの適切な供給源は、好適には発芽の開始後約4〜約14日の間に採取された、より好適には発芽の開始後約6〜約12日の間(例えば発芽の開始から8日後)に採取された、ルピナス・アルバスのようなルピナス属の植物、好適には該植物の子葉である。当技術分野では、Bladを含む粗抽出物をもたらす総タンパク質抽出方法、およびこうした抽出物の、例えばBladを含むBlad含有グリコオリゴマーを含む部分精製抽出物をもたらすタンパク質精製方法が開示されている。Bladそのものを分離するには、SDS−PAGEおよび/または、好適にはC−18カラム上での逆相(RP)−HPLCを用いることができる。
【0047】
Bladを含むグリコオリゴマーを含む部分精製抽出物を得る代替方法は、Bladのキチン結合活性を用いることである。グリコオリゴマーは、キチン親和性クロマトグラフィー精製の一部として、キチンカラムと非常に強く結合し、0.05NのHClで溶離される。この精製方法の一例の詳細は以下のとおりである:
【0048】
8日齢のルピナス属植物から子葉を採取し、10mMのCaCl
2およびMgCl
2を含有するMilli−Q plus水(pHは8.0に調節)中に均質化する。そのホモジェネートをチーズクロスに通してろ過し、4℃で、1時間30,000gで遠心分離する。ペレットをその後、10%(w/v)のNaCl、10mMのEDTAおよび10mMのEGTAを含有するpH7.5の100mMのトリス−HCl緩衝剤中に懸濁させ、4℃で1時間撹拌し、4℃で、1時間30,000gで遠心分離する。浮遊物に含まれる総グロブリン画分を硫酸アンモニウム(561g/l)で沈殿させ、冷却しながら1時間撹拌しつづけ、4℃で、30分間30,000gで遠心分離する。得られたペレットを、pH7.5の50mMのトリス−HCl緩衝剤に溶解し、同じ緩衝剤で平衡化したPD−10カラム中で脱塩し、同じ緩衝剤で予め平衡化したキチン親和性クロマトグラフィーカラムに通す。カラムをpH7.5の50mMのトリス−HCl緩衝剤で洗浄し、結合タンパク質を0.05NのHClで溶離する。溶離した画分をすぐに2Mのトリスで中和し、ピーク画分を溜め、凍結乾燥させ、SDS−PAGEにより分析する。
【0049】
キチンカラムの製造について、粗キチンをSigmaから入手し、以下のとおり処理する:キチン試料をMilli−Q plus水のみで、その後0.05NのHClで洗浄する。次に1%(w/v)の炭酸ナトリウムで、次にエタノールで、洗浄剤の吸収度が0.05未満になるまで洗浄する。キチンを次にピペット先端に充填し、pH7.5の50mMのトリス−HCl緩衝剤で平衡化する。
【0050】
組換えタンパク質の製造方法は当技術分野において周知である。ここで適用されるこうした方法は、Bladまたはその活性変異体を含むポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチドを適切な発現ベクターに挿入するステップ、該ポリヌクレオチドの1つ以上のプロモーター(例えばT7lacのような誘導性プロモーター)との、および対象の他のポリヌクレオチドまたは遺伝子との並置を可能にするステップ、発現ベクターを適切な細胞または有機体(例えばエシェリキア・コリ)中に導入するステップ、形質転換細胞または有機体においてポリペプチドを発現するステップ、ならびに発現した組換えポリペプチドをその細胞または有機体から取り出すステップを含む。こうした精製を補助するため、発現ベクターは、ポリヌクレオチドが、例えば精製を補助することができる末端タグ:例えば、親和性精製のためのヒスチジン残基のタグをさらにエンコードするように構成することができる。組換えポリペプチドを精製した後、精製タグは、例えばタンパク質分解開裂により、ポリペプチドから取り出すことができる。
【0051】
Bladまたはその活性変異体を含む(または本質的にこれからなる)抗微生物ポリペプチドを含む組成物では、該ポリペプチドは好適には部分精製形態、より好適には精製形態である。前記ポリペプチドは、これに自然と関連する1つ以上の他のポリペプチドを有さない環境中に存在する、および/または存在する総タンパク質の少なくとも約10%に相当する場合、部分精製である。前記ポリペプチドは、これに自然と関連する他のポリペプチドをすべて、またはほとんどの有さない環境中に存在する場合、精製である。例えば、精製Bladとは、Bladが組成物中の総タンパク質の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%に相当することを意味する。
【0052】
Bladまたはその活性変異体を含む(または本質的にこれからなる)抗微生物ポリペプチドを含む組成物では、ルピナスタンパク質分は本質的にBladまたはその活性変異体を含む(または本質的にこれからなる)ポリペプチドを含むBlad含有グリコオリゴマーからなり得る。
【0053】
Bladを含む(または本質的にこれからなる)抗微生物ポリペプチドを含む組成物は、当業者により組成物に添加された別の化合物を含む製剤とすることもできる。好適な実施形態では、こうした製剤は、Bladおよび医薬的に許容可能な担体または希釈剤を含む(または本質的にこれらからなる)抗微生物ポリペプチドを含む医薬品製剤である。
【0054】
微生物標的
本発明は、抗微生物化合物としての、すなわちヒトまたは動物に病原性である微生物の増殖を阻害する、またはこれを殺滅するための、Bladの使用に関する。こうした微生物としては、とくに細菌および真菌が挙げられる。こうした病原性微生物は、ヒトおよび/または動物において感染症またはその他の健康障害(例えば食中毒、アレルギー)を引き起こし得、例えば、目、皮膚、熱傷、創傷、上気道管、肺、胃腸管、尿生殖器管、腎臓、肝臓、神経系および/または心血管系(例えば血流)に影響を及ぼし、またはこれらを感染させ得る。こうした病原性微生物は本来病原性であり得、または日和見性であり得る(すなわち健康な宿主では疾患を引き起こさないが、易感染性免疫系を有する宿主では疾患を引き起こし得る)。こうした病原性微生物は、ヒトまたは動物に毒性である化合物を放出することにより、追加で、または代わりに健康障害を引き起こし得る。
【0055】
Bladは、グラム陽性およびグラム陰性細菌病原体の両方に対する抗微生物剤として用いることができる。とくに好適な細菌標的としては、病原性シュードモナス種、例えばP.アエルギノサ、シュードモナス・オリジハビタンス(Pseudomonas oryzihabitans)およびシュードモナス・プレコグロシシダ(Pseudomonas plecoglossicida)(もっとも好適にはP.アエルギノサ)、病原性リステリア種、例えばL.モノサイトゲネスおよびリステリア・イバノビ(Listeria ivanovii)(もっとも好適にはL.モノサイトゲネス)、病原性バチルス種、例えばB.サブチリス、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)およびバチルス・セレウス(Bacillus cereus)(もっとも好適にはB.サブチリス)、病原性スタフィロコッカス種、例えばS.アウレウス(メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス[MRSA]を含む)、スタフィロコッカス・シュードインテルメジウス(Staphylococcus pseudintermedius)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・シュライフェリ(Staphylococcus schleiferi)およびスタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)(もっとも好適にはS.アウレウス)、病原性サルモネラ種、例えばサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)亜種、例えばサルモネラ・アリゾナエ(Salmonella arizonae)サルモネラ・コレラスイス(Salmonella choleraesuis)、サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis)、サルモネラ・パラチフィA(Salmonella paratyphi A)、サルモネラ・パラチフィB(Salmonella paratyphi B)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・ダブリン(Salmonella dublin)、サルモネラ・チフフィスイス(Salmonella typhisuis)およびサルモネラ・ブランデンブルグ(Salmonella brandenburg)(もっとも好適にはS.エンテリティディスまたはS.チフィスイス)、ならびに病原性カンピロバクター種、例えばカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)およびカンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)(もっとも好適にはC.ジェジュニ)が挙げられる。好適な実施形態では、Bladは、全身性炎症および敗血症(例えばP.アエルギノサ)、コレラ(例えばV.コレラエ)、髄膜炎(例えばL.モノサイトゲネス、ヘモフィルス・インフルエンザエb型、ナイセリア・メニンギティディス、またはストレプトコッカス・ニューモニエ)、肺炎(例えばS.ニューモニエ、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)またはS.アウレウス)、細菌性赤痢(例えばシゲラ・ボイディ(Shigella boydii)、シゲラ・ディセンテリエ(Shigella dysenteriae)、シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ソネイ(Shigella sonnei))、連鎖球菌性咽頭炎(例えばストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes))、結核(例えばマイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウム・アフリカヌム(Mycobacterium africanum)、マイコバクテリウム・カネッティ(Mycobacterium canetti)およびマイコバクテリウム・ミクロティ(Mycobacterium microti))、チフス(S.チフィ)、または食中毒(例えば以下の属:リステリア、スタフィロコッカスおよびサルモネラの1つからの病原性種)を引き起こし得る病原体に対して用いられる。
【0056】
Bladは、単細胞(酵母)および多細胞(糸状)真菌病原体の両方に対する抗微生物剤として用いることができる。とくに好適な真菌標的としては、病原性カンジダ種、例えばC.アルビカンス、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaneae)、カンジダ・パラプシローシス、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・クルセイおよびカンジダ・ドゥブリニエンシス(Candida dubliniensis)、病原性アルテルナリア種、例えばA.アルテルナタおよびアルテルナリア・モレスタ(Alternaria molesta)、病原性アスペルギルス種、例えばA.フミガタス、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)およびアスペルギルス・クラバタス(Aspergillus clavatus)、病原性フザリウム種、例えばフザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・ベルチシリオイデス(Fusarium verticillioides)、およびフザリウム・プロリフェラツム(Fusarium proliferatum)、病原性クリプトコッカス種、例えばクリプトコッカス・ネオフォルマンス、クリプトコッカス・ラウレンティ(Cryptococcus laurentii)、クリプトコッカス・アルビダス(Cryptococcus albidus)およびクリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)、ならびに病原性トリコスポロン種、例えばトリコスポロン・オボイデス(Trichosporon ovoides)、トリコスポロン・インキン(Trichosporon inkin)、トリコスポロン・アサヒ(Trichosporon asahii)、トリコスポロン・ムコイデス(Trichosporon mucoides)、トリコスポロン・アステロイデス(Trichosporon asteroides)、およびトリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cutaneum)(すべて以前はトリコスポロン・ベイゲリ(Trichosporon beigelii)の一般名で認識されていた)、トリコスポロン・デルマチス(Trichosporon dermatis)、トリコスポロン・ドハエンセ(Trichosporon dohaense)およびトリコスポロン・ロウビエリ(Trichosporon loubieri)が挙げられる。好適な実施形態では、Bladは、(表層、局所、良性、自己限定性真菌性疾患とは対照的に)重篤である、および/または命にかかわる場合の多い全身性および内臓真菌感染症と通常定義される、侵襲性真菌感染症(IFI)を引き起こし得る病原体に対して用いられる。とくに好適なIFIを引き起こす真菌としては、上記で定義したような病原性カンジダ、アスペルギルスまたはアルテルナリア種、好適にはC.アルビカンス、A.フミガタスまたはA.アルテルナタ、もっとも好適にはC.アルビカンスまたはA.フミガタスが挙げられる。
【0057】
当業者であれば、日常的な方法によって、いずれかの特定の背景において抗微生物剤としてBlad(またはその活性変異体)を含む(または本質的にこれからなる)抗微生物ポリペプチドを用いるのに適した濃度を識別することができるだろう。好適には、例えば、Bladは少なくとも1μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも20μg/ml、少なくとも50μg/ml、または少なくとも100μg/ml、および500μg/mlまで、600μg/mlまで、1mg/mlまで、2.5mg/mlまで、5mg/mlまでまたは10mg/mlまでの濃度で用いられる。好適には、選択されるBladの濃度は10μg/ml〜5mg/ml、より好適には50μg/ml〜2.5mg/ml、より好適には100μg/ml〜1mg/ml、さらにより好適には100μg/ml〜600μg/ml(例えば約250μg/ml)である。本発明者らは、Bladが少なくとも400μg/mlまでは宿主に非毒性である証拠(実施例4および5を参照)を提供した。
【0058】
本発明者らは、驚くべきことに、Bladのキレート剤(例えばEDTA)との組み合わせが相乗的な抗微生物効果を生むことを見出した。従って、好適には、キレート剤はBlad(またはその活性変異体)を含む(または本質的にこれからなる)ポリペプチドの抗微生物活性を向上させるのに用いられ、こうしたキレート剤の使用は特定のレベルの抗微生物活性を達成するのに必要な前記抗微生物ポリペプチドの濃度を低下させることができる。キレート剤(別名、金属イオン封鎖剤)は、金属イオンと結合し、非共有複合体を形成し、イオンの活性を低減するいずれかの化合物である。適切なキレート剤としては、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)およびEGTA(エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸)のようなポリアミノカルボキシレートが挙げられる。好適には、EDTAはキレート剤として、好適には少なくとも10μg/ml、少なくとも50μg/ml、または少なくとも100μg/ml、および500μg/mlまで、1mg/mlまで、5mg/mlまで、10mg/mlまで、または20mg/mlまでの濃度で用いられる。好適には、EDTAは0.1mg/ml〜1mg/mlの濃度で用いられる。
【0059】
成果
Blad(またはその活性変異体)を含む(または本質的にこれからなる)抗微生物ポリペプチドを用い、ヒト/動物病原性微生物の増殖を阻害する(静微生物活性を有することを意味する)、および/または該微生物を殺滅する(殺微生物活性を有することを意味する)ことができる。当業者であれば、微生物のとくに所望の増殖阻害または殺滅を達成するのに適した用量および/または濃度を識別することができる。
【0060】
好適には、静微生物剤として用いる場合、抗微生物ポリペプチドは、抗微生物ポリペプチドが存在しない同等の条件と比べて、増殖率を10%、より好適には50%、より好適には75%、より好適には90%、より好適には95%、より好適には98%、より好適には99%、さらにより好適には99.9%低減する。もっとも好適には、抗微生物ポリペプチドは微生物のいかなる増殖も予防する。
【0061】
好適には、殺微生物剤として用いる場合、抗微生物ポリペプチドは、抗微生物ポリペプチドが存在しない同等の条件と比べて、微生物の集団の10%、より好適には該集団の50%、より好適には該集団の75%、より好適には該集団の90%、より好適には該集団の95%、より好適には該集団の98%、より好適には該集団の99%、さらにより好適には該集団の99.9%を殺滅する。もっとも好適には、抗微生物ポリペプチドは微生物の集団のすべてを殺滅する。
【0062】
ヒトまたは動物中またはその上で感染症を予防または治療するのに用いる場合、抗微生物ポリペプチドは好適には治療効果的な量、すなわち、臨床的に検出可能なレベルの感染症予防または撲滅が達成されるようなレベルの増殖阻害および/または殺滅をもたらす量で用いられる。好適には、治療効果的な量の抗微生物ポリペプチドはヒトまたは動物の対象に非毒性である。前記治療効果的な量の抗微生物ポリペプチドは、抗微生物ポリペプチドを含む組成物の一部として投与される場合に治療効果的であることを意図している。
【0063】
本発明者らは、驚くべきことに、同様の濃度(質量による)で、Bladが(殺真菌および静真菌活性に関して)C.アルビカンスおよびA.フミガタスに対してほぼアムホテリシンBと同様に強力であり、フルコナゾールより強力であることを見出した。これは、(i)BladがアムホテリシンBおよびフルコナゾールの比較的小さい有機分子と比べてかなり大きな分子量を有すること、ならびに(ii)Bladの性質がヒトおよび他の動物に非毒性であり、食用であることを考えると、顕著な結果である。
【0064】
医療使用および方法
本発明者らは、治療または予防によるヒトまたは動物の体の処置方法において用いられる、Bladまたはその活性変異体を含む抗微生物ポリペプチドを含む組成物を提供する。この目的のため、彼らは、それを必要とする対象に治療効果的な量のBladまたはその活性変異体を含む抗微生物ポリペプチドを含む組成物を投与するステップを含む、ヒトまたは動物の治療方法も提供する。
【0065】
本発明者らは、微生物によるヒトまたは動物の対象中またはその上での感染症の予防または治療方法において用いられる、Bladまたはその活性変異体を含む抗微生物ポリペプチドを含む組成物も提供する。この目的のため、彼らは;
―それを必要とする対象に治療効果的な量のBladまたはその活性変異体を含む抗微生物ポリペプチドを含む組成物を投与するステップを含む、微生物による感染症の予防または治療方法;ならびに
―Bladまたはその活性変異体を含む抗微生物ポリペプチドを含む組成物の、微生物によるヒトまたは動物の対象中またはその上での感染症の予防または治療のための薬剤の製造における使用
も提供する。
【0066】
前記組成物は、注射(例えば皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、および腹腔内)、経皮粒子送達、吸引、局所、経口、または経粘膜(例えば鼻、舌、膣または腸)投与することができる。
【0067】
好適には、前記組成物は医薬的に許容可能な担体または希釈剤を含む。こうした医薬組成物は従来の医薬製剤として製剤することができる。これは、当業者に利用可能な標準的な医薬製剤化学および方法を用いて行うことができる。例えば、Blad(またはその活性変異体)を含む抗微生物ポリペプチドを1つ以上の医薬的に許容可能な担体または希釈剤と組み合わせ、液体製剤をもたらすことができる。湿潤または乳化剤、pH緩衝物質等のような、補助物質も存在し得る。
【0068】
担体、希釈剤および補助物質は一般的には、過度の毒性なしに投与することができ、そのものとしては組成物を受け入れる個体において免疫応答を誘発しない医薬品である。医薬的に許容可能な担体としては、これらに限定されないが、水、食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロールおよびエタノールのような液体が挙げられる。医薬的に許容可能な塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、等のような鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩、等のような有機酸の塩もその中に含むことができる。必要ではないが、製剤は、安定剤として作用し、とくにBladのようなポリペプチドを含む組成物について有利な、医薬的に許容可能な担体を含有することも好ましい。ポリペプチドの安定剤としても作用する適切な担体の例としては、限定なしに、医薬品グレードのデキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストラン、等が挙げられる。他の適切な担体としては、同様に限定なしに、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウムまたはカルシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、高分子量ポリエチレングリコール(PEG)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0069】
製剤後、組成物は、さまざまな既知の経路および技術を用いて対象に生体内で送達させることができる。例えば、液体製剤は注射溶液、懸濁液またはエマルジョンとして提供し、従来の針および注射器を用いる、または液体ジェット注射システムを用いる、非経口、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、骨内または腹腔内注射によって投与することができる。液体製剤は、目、皮膚、毛髪もしくは粘膜組織(例えば鼻、舌、膣もしくは腸)に局所投与する、または経呼吸器もしくは経肺投与に適した微細噴霧として提供することもできる。他の投与形態としては、経口投与、坐剤、および活性または不活性経皮送達技術が挙げられる。好適な実施形態では、抗微生物ポリペプチドは局所ローション、ハンドクリーム、目薬、シャンプーまたはコンディショナーとして適した組成物に製剤される。
【0070】
抗微生物ポリペプチドを必要とする対象は、いずれかのヒトまたは動物の個体とすることができる。好適な実施形態では、抗微生物ポリペプチドを用い、若者(例えば年齢が5歳、3歳、2歳、1歳、6か月または1か月未満の個人のような、年齢が16歳未満の個人)、高齢者(例えば年齢が80歳または90歳超の個人のような、年齢が70歳超の個人)、易感染性免疫系を有する人々(先天性免疫不全を有する人々、後天性免疫不全を有する人々(例えばエイズを有する人々)および化学療法または免疫抑制薬剤の投与のような治療の結果として抑制された免疫系を有する人々)、重篤な人々、または病原性微生物への曝露の可能性がとくに高い人々(例えば医療専門家)のような、微生物による感染症に罹患するという特定のリスクを有する対象における感染症を予防すること、および/または医療介入なしに微生物感染症を撃退することができないという特定のリスクを有する対象における感染症を治療することができる。
【0071】
他の抗微生物剤の使用および方法
本発明者らは、ヒトまたは動物の体上またはその中ではない場所でヒトまたは動物に病原性である微生物を殺滅する、またはその増殖を阻害するための、Bladまたはその活性変異体を含む抗微生物ポリペプチドを含む組成物の使用も提供する。この目的のため、彼らは、ヒトまたは動物の体上またはその中ではない場所でのヒトまたは動物に病原性である微生物の殺滅、またはその増殖の阻害方法も提供するが、該方法は該場所に効果的な量のBladまたはその活性変異体を含む抗微生物ポリペプチドを含む組成物を投与するステップを含む。前記効果的な量は、検出可能なレベルの微生物の保菌の予防または撲滅が達成されるようなレベルの微生物の増殖阻害および/または殺滅をもたらす量である。好適には、効果的な量の抗微生物ポリペプチドはヒトまたは動物の対象に非毒性である。前記効果的な量の抗微生物ポリペプチドは抗微生物ポリペプチドを含む組成物の一部として投与される場合に効果的であることを意図している。
【0072】
これらの実施形態では、ヒトもしくは動物が摂取する、もしくはその上もしくはその中に直接配置する物品上、またはそれを必要とする表面(例えばヒトまたは動物と直接または間接的に接触し得る表面)上での病原性微生物の増殖を予防する、および/またはこれを殺滅するため、
(i)ヒトもしくは動物が該病原性微生物に感染する;または
(ii)ヒトまたは動物が病原性微生物により放出される毒素と接触する
リスクを低減するように、抗微生物ポリペプチドを消毒剤として用いることを意図している。
【0073】
好適な実施形態では、抗微生物ポリペプチドは、食品上もしくはその中のヒト/動物病原性微生物の増殖を予防する、または食品上もしくはその中にすでに存在するヒト/動物病原性微生物を殺滅するため、食品中またはその上で用いられる。この場合、抗微生物ポリペプチドを用い、ヒトもしくは動物が病原性微生物に感染する、またはヒトもしくは動物が食品を摂取した結果として病原性微生物から放出される毒素を摂取するリスクを低減することができる。これらの実施形態では、前記病原性微生物が(例えば直接または放出毒素によって)食中毒を引き起こし得ることがとくに好適である。食品の語により、栄養または楽しみを理由に消費されるいずれかの液体または固体物質を意味することを意図している。抗微生物ポリペプチドを含む組成物は、例えば、食品の調理中に食品の他の成分と混合することができ、または例えば、食品の表面に(例えば液体膜または噴霧として)用いてもよい。これらの実施形態において考慮される特定の食品としては、水、フルーツジュースのようなソフトドリンク、アルコールドリンク、生肉、調理鳥肉、卵、ミルク、クリーム、アイスクリーム、チーズ、生野菜および果物、加工食品(とくに例えばL.モノサイトゲネス、V.コレラエ、病原性スタフィロコッカス種、病原性サルモネラ種および病原性カンピロバクター種に関する)、ナッツ、ならびにパン、米および芋のようなデンプン質食品(とくに病原性アスペルギルス種に関する)が挙げられる。
【0074】
代替の好適な実施形態では、抗微生物ポリペプチドは医療装置または器具―診断、治療または手術機能を行うために体の上またはその中に配置するいずれかの装置―例えば人工生体組織、ペースメーカー、ステント、スカフォード、弁、温度計、注射器、皮下注射針、モニター装置、人工呼吸器、除細動器、人工心肺、EEGおよびECGユニット、超音波装置、ドリル、ノコギリ、ナイフ、外科用メス、トング、ハサミ、クリップ、ステッチ等内またはその上に用いられる。こうした方法では、抗微生物ポリペプチドを用い、医療手順中に装置または器具と接触する体の感染症を予防することができる。
【0075】
代替の好適な実施形態では、抗微生物ポリペプチドはそれを必要とする表面(例えばヒトまたは動物と直接または間接的に接触し得る表面)上に用いられる。抗微生物ポリペプチドを用いることができる表面は:
(a)健康診断、診察もしくは治療が行われる;
(b)食品が調理、取扱もしくは保存される;
(c)個人的な洗浄および/もしくは衛生が行われる;ならびに/または
(d)(i)微生物による感染症に罹患する;および/もしくは
(ii)医療介入なしに微生物感染症を撃退することができない
という特定のリスクを有する個人(こうした人々の例は上述した)がいる環境中にあり得る。
こうした表面の例としては、食品工場内のいずれかおよび食品スーパーマーケット内の棚/ベンチが挙げられる。
【0076】
抗微生物ポリペプチドを用いることができる表面は、建物(またはその部屋)の床もしくは壁または該部屋または建物内の物品の表面とすることができる。想定される特定の建物としては、病院および他の医療施設、学校および他の保育施設、介護施設、レストランおよび他の飲食店、食品調理、加工および/または保存場所(例えば市場、食品店、スーパーマーケット、および食品工場)、ならびに個人の住所が挙げられる。想定される特定の部屋としては、医療現場内のものすべて、とくに手術室、事故および救急部、集中治療および患者病棟、ならびに台所、浴室、トイレ、レストランおよび食品調理/加工ホールが挙げられる。
【実施例】
【0077】
以下の実施例では、BLADは、Ramos et al.(1997)Planta 203(1):26−34:文献のMaterials and Methodsセクションの“Plant material and growth conditions”および“Purification of proteins”部分参照、に従って精製した20kDのBladポリペプチドを含む自然発生Blad含有グリコオリゴマーを示す。
【0078】
定義:
MIC―最小阻害濃度:微生物の目に見える増殖を阻害するもっとも低い抗微生物剤の濃度
MFC/MBC―最小殺真菌/殺細菌濃度(または最小致死濃度):標準の条件下、24時間後に初期接種の99.9%を殺滅するのに必要なもっとも低い抗微生物剤の濃度
時間−殺滅曲線:制御された条件下での一定の時間にわたる1つ以上の抗微生物剤による分離株の「殺滅」の測定は、時間−殺滅方法として知られる。これは、固定接種の殺滅の速度を、特定の時間間隔で、対照(有機体、薬剤なし)および抗微生物剤含有チューブまたはフラスコをサンプリングし、各サンプルを寒天板上に分散させ、生存コロニー数(cfu/ml)を測定することにより測定する、ブイヨン培地の方法である。
【実施例1】
【0079】
BLADの殺細菌活性
[各種細菌種についてのBLADのMICおよびMBC(ミューラー・ヒントン培地を用いる)]
【表1】
【0080】
(A)リステリア・モノサイトゲネスおよび(B)シュードモナス・アエルギノサでのBLADの時間−殺滅曲線:
図1を参照されたい。
【0081】
L.モノサイトゲネスおよびP.アエルギノサに対して、BLADは100μg/mlで静細菌性であり、250μg/mlで殺細菌性である。
【0082】
(A)スタフィロコッカス・アウレウス、(B)バチルス・サブチリス、(C)シュードモナス・アエルギノサ、および(D)リステリア・モノサイトゲネスに対するBLADの阻害ハロデータ:
図2を参照されたい。
【0083】
PCA上でのすべての試験した細菌種の増殖は、処理ディスク上のBLAD量を20μg(右下のディスク)から100μg(左下のディスク)まで、および200μg(上のディスク)まで増加させることによりますます阻害された(24時間培養―効果は数日間見られた)。
【実施例2】
【0084】
BLADの殺真菌活性
[カンジダ種についてのBLADのMICおよびMFC(RPMI培地を用いる)]
【表2】
【0085】
[カンジダ種についてのBLADのMICおよびMFC(pH7.5のPDB培地を用いる)]
【表3】
【0086】
[各種糸状菌についてのBLADのMICおよびMFC(RPMI培地を用いる)]
【表4】
備考―クリプトコッカス・ネオフォルマンスのMICは0.25〜1.0μg/mlと測定された。
【0087】
PDB培地におけるカンジダ・アルビカンスでのBLADの時間−殺滅曲線(A)および増殖曲線(B):
図3を参照されたい。
【0088】
C.アルビカンスに対して、BLADは10μg/mlで静真菌性であり、100μg/mlで殺真菌性である。
【0089】
pH7のPDB培地におけるカンジダ・アルビカンスでのBLADの増殖曲線:
図4を参照されたい。
【0090】
C.アルビカンスに対して、BLADおよびアムホテリシンBは10μg/mlで静真菌性である。100μg/mlではフルコナゾールはほとんど増殖を遅延しない。
【0091】
カンジダ・アルビカンスに対する(AおよびB)BLADならびに(C)アムホテリシンBまたはフルコナゾールの阻害ハロデータ:
図5を参照されたい。
【0092】
pH7.5のポテトデキストロース寒天(PDA)(3日培養)上でのC.アルビカンスの増殖は、処理ディスク上のBLAD量を20μg(A、下のディスク)から50μg(B、下のディスク)まで、100μg(B、上のディスク)までおよび200μg(A、上のディスク)まで増加させることにより阻害された。これは20μgのアムホテリシンB(C、上のディスク)および25μgのフルコナゾール(C、下のディスク)で達成される阻害よりも非常に好ましい。
【0093】
(A)PDAおよび(B)pH7.5のPDA(3日培養)上のクリプトコッカス・ネオフォルマンスに対するBLADの阻害ハロデータ:
図6を参照されたい。
【0094】
C.ネオフォルマンスの増殖は、PDA上ではより効果が大きいが、両方の培地上で処理ディスク上のBLAD量を増加させることにより阻害された。I―上のディスク200μg、下のディスク10μg;II―左上のディスク50μg、右上のディスク20μg、下のディスク100μg。
【0095】
(A)ミューラー・ヒントン培地(rule M44−A)、(B)PDAまたは(C)pH7.5のPDA(3日培養)上でのアスペルギルス・フミガタスに対するBLADの阻害ハロデータ:
図7を参照されたい。左のパネルは上から見たプレートを示し;右のパネルは下から見たプレートを示す。
【0096】
A.フミガタスの増殖は、pH7.5のPDA上ではより効果が大きいが、処理ディスク上のBLAD量を増加させることにより、すべての培地上で阻害された。I―上のディスク200μg、下のディスク10μg;II―左上のディスク50μg、右上のディスク20μg、下のディスク100μg。
【0097】
pH7.5のPDA(6日培養)上でのアスペルギルス・フミガタスに対する(AおよびB)BLADならびに(C)アムホテリシンBまたはフルコナゾールの阻害ハロデータ:
図8を参照されたい。
【0098】
pH7.5のPDA上でのA.フミガタスの増殖は、処理ディスク上のBLAD量を20μg(A、下のディスク)から50μg(B、下のディスク)まで、100μg(B、上のディスク)まで、および200μg(A、上のディスク)まで増加させることにより阻害された。これは10mgのアムホテリシンB(C、上のディスク)および100mgのフルコナゾール(C、下のディスク)で達成される阻害よりも非常に好ましい。非常に似た結果がトリコスポロン・クタネウムについて見られた(データは図示せず)。
【実施例3】
【0099】
ヒト病原体に対する殺細菌/殺真菌活性に関するEDTAのBLADとの相同効果
(A)リステリア・モノサイトゲネス、(B)シュードモナス・アエルギノサおよび(C)カンジダ・アルビカンスでのBLADおよび/またはEDTAの時間−殺滅曲線:
図9を参照されたい。
【0100】
L・モノサイトゲネスに対して、10μg/mlのBLADも0.1mg/mlのEDTAのいずれも増殖を阻害しないが、2つの組み合わせは静細菌性である。P.アエルギノサに対して、50μg/mlのBLADまたは1mg/mlのEDTAは増殖を阻害する(すなわち両方とも静細菌性である)が、2つの組み合わせは殺細菌性である。C.アルビカンスに対して、10μg/mlのBLADまたは0.1mg/mlのEDTAは増殖を阻害する(すなわち両方とも静真菌性である)が、2つの組み合わせは殺真菌性である。
【実施例4】
【0101】
モルモットにおけるBLADの経皮毒性実験
化学物質の試験のためのOECDガイドライン、No.402、急性経皮毒性を用いて、Instituto Superior de Agronomiaによりリスボン工科大学獣医学部で行われた機密実験(2006年7月18日〜2006年8月1日)。実験は優良実験室規範および動物福祉に従って行われた。
【0102】
BLADの急性経皮毒性は、経皮毒性実験に適した動物として広く受け入れられている、モルモットへの単回投与後に評価された。BLADを、各10匹の2群の無毛皮膚に、それぞれ200μg/mlおよび400μg/ml投与した。投与後、動物を15日間観察し続け、その間の体重、罹患率および死亡率を記録した。
【0103】
材料および方法
1.材料
試験項目:BLADを5mg/mlで用意し(黄色がかった不透明な液体、0〜4℃)、−80℃で保存した。
動物:アルビノモルモット;系統:バルセロナのHarlan Ibericaによるダンキン・ハートレイ(HsdPoc:DH)
用いた動物の数:30;体重:400〜449g;齢:6週
ハウス:動物を消毒した木粉(リグノセル)が入ったポリエチレンの箱に個別に入れた。
周囲条件:
a)光周期:12時間毎の明/暗のサイクル
b)制御環境:19/22℃の平均温度および60%の平均湿度
適応:動物は試験の開始前の7日間、試験の環境条件下に置いた。
食糧:バルセロナのHarlan Ibericaにより供給されるGlobal Diet2014、Rodent Maintenance Diet;水、適宜
【0104】
2.方法
投与:動物を試験の48時間前に剃毛し、病変のない皮膚を持つ動物のみに実験を行った。1mlのアリコート(200μg/mlまたは400μg/ml)を各動物の剃毛した皮膚に投与した。
実験デザイン:実験の30匹の動物を4つの群、各10匹の2群および各5匹の2群に分けた。1つの群の10匹には200μg/mlでBLADを投与し(試験群1)、もう1つの群の10匹にはBLADを400μg/mlで投与した(試験群2)。5匹の2群は対照とした:1つの群には水(1mlアリコート)を投与し、もう1つの群はすべての他の群と同様に扱ったが、いずれの投与も行わなかった。
成果:投与後、動物を15日間毎日観察し、罹患のいずれかの兆候、または死亡を記録した。罹患に関して、投与部位での皮膚病変の発症および正常な行動パターンの変化のような一般的な毒性の兆候にとくに注意を払った。体重は投与前および試験期間の終わりに個別に測定した。
【0105】
結果
どちらの濃度のBLADでも、経皮投与領域におけるいずれかの物理的な変化または飲水/摂食もしくは一般行動の変化の兆候は見られなかった。BLAD投与後、副作用も死亡も起こらなかった。体重の増加はすべての群において同様だった(こうした幼齢の動物の成長から予想される増加と一致していた)。
【0106】
結論
400μg/mlまでの(あるいはこれより高い)濃度のBLADは経皮毒性を示さない。
【実施例5】
【0107】
アルビノラットにおけるBLADの経口毒性実験
化学物質の試験のためのOECDガイドライン、No.401、急性経口毒性を用いて、Instituto Superior de Agronomiaによりリスボン工科大学獣医学部で行われた機密実験。実験は優良実験室規範および動物福祉に従って行われた。
【0108】
BLADの急性経口毒性は、経口毒性実験に適した動物として広く受け入れられている、ラットへの単回投与後に評価された。BLADは強制給餌により、各10匹の2群に、それぞれ200μg/mlおよび400μg/mlで投与した。投与後、動物を15日間観察し続け、その間の体重、罹患率および死亡率を記録した。観察期間後、動物は安楽死させ、剖検を行った。
【0109】
材料および方法
1.材料
試験項目:BLADを5mg/mlで用意し(黄色がかった不透明な液体、0〜4℃)、−80℃で保存した。
動物:ラタス・ノルベジカス(Rattus norvegicus);系統:バルセロナのHarlan Ibericaからリスボンの獣医学部の動物飼育場が入手したウィスター・ハノーバー
用いた動物の数:30;体重:250〜300g;齢:10週
ハウス:動物は消毒した木粉(リグノセル)が入ったポリエチレンの箱に個別に入れた。
周囲条件:
a)光周期:12時間毎の明/暗のサイクル
b)制御環境:19/22℃の平均温度および60%の平均湿度
適応:動物は試験の開始前の7日間、試験の環境条件下に置いた。
食糧:バルセロナのHarlan Ibericaより供給されるGlobal Diet2014、Rodent Maintenance Diet;水、適宜
【0110】
2.方法
投与:1mlのアリコート(200μg/mlまたは400μg/ml)を各動物に、胃一般的には強制給餌として知られる経口(経口腔食道)挿管法により投与した。投与は用いた動物の種に適した金属プローブで行った。動物は投与前の18時間は絶食させ、投与の3時間後に給餌した。
実験デザイン:実験の30匹の動物を4つの群、各10匹の2群および各5匹の2群に分けた。1つの群の10匹には200μg/mlでBLADを投与し(試験群1)、もう1つの群の10匹にはBLADを400μg/mlで投与した(試験群2)。5匹の2群は対照とした:1つの群には水(1mlアリコート)を投与し、もう1つの群はすべての他の群と同様に扱ったが、いずれの投与も行わなかった。
成果:投与後、動物を15日間毎日観察し、罹患の兆候、または死亡を記録した。体重は投与前および試験期間の終わりに個別に測定した。観察期間後、動物は、その後の剖検のため、(二酸化炭素で飽和した雰囲気下での窒息により)安楽死させた。
【0111】
結果
どちらの濃度のBLADでも、いずれかの物理的な変化または飲水/摂食もしくは一般行動の変化の兆候も見られなかった。BLAD投与後、副作用も死亡も起こらなかった。体重の増加はすべての群において同様だった(こうした幼齢の動物の成長から予想される増加と一致していた)。剖検/胸腔および腹腔の器官の肉眼観察でそれに変化がないことがわかった。
【0112】
結論
400μg/mlまでの(あるいはこれより高い)濃度のBLADは経口毒性を示さない。