【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は本発明に従い、主請求項と付帯請求項に係るスパッタヘッドによって並びに他の付帯請求項に係る方法によって解決される。他の有利な実施形はそれぞれ、従属請求項から明らかである。
【0007】
本発明の対象
本発明の範囲内で、ターゲットホルダ(本体)上にスパッタターゲット用収容面(ターゲット収容面)を有するスパッタヘッドが開発された。ターゲット収容面は任意の曲率を有することができ、この場合、実際の視点から平面の形状が多くの利点を有する。スパッタリングのために、ターゲットをターゲット収容面上に例えばろう付け、接着または焼結して固定することができる。スパッタヘッドは磁力線を有する漂遊磁界を発生するための1個または複数の磁界源を備えている。磁力線はスパッタターゲットの表面から出て、再びこの表面に入る。
【0008】
本発明では、間に漂遊磁界が形成される、少なくとも1個の磁界源の北磁極と南磁極が、10mm以下、好ましくは5mm以下、さらに好ましくは約1mmだけ互いに離隔されている。この間隔の有意義な下限は、スパッタターゲットとスパッタプラズマ(陰極暗部)との間の間隔によって決められている。スパッタガスの他の原子が電子の経路に沿ってイオン化される確率を高めるために、磁界は電子の経路をスパッタプラズマによって延長すべきである。そのために、磁界は陰極暗部を通ってスパッタプラズマ内まで達しなければならない。本発明に係るスパッタヘッドは0.5mbar以上、好ましくは1mbar以上の高圧でスパッタリングを改善することを意図している。このような圧力の場合、陰極暗部は一般的に10分の1mmにわたって延びている。プラズマに対して影響を及ぼすために、磁界はこの暗部と、ターゲット表面から永久磁石までの隔たりに打ち勝たなければならない。その際、一般的には0.8mm、好ましくは約1mmが北磁極と南磁極との間の技術的に有意義な最小間隔であると思われる。通常、ある範囲内で空間的に広がっている北磁極と南磁極との間の間隔とはその都度最短間隔を意味する。北磁極と南磁極との間の小さな間隔は磁界を局所に限定し、ターゲット収容面に沿った漂遊磁界の部分、すなわちターゲット収容面に対する漂遊磁界の投影を最大化する。
【0009】
約0.5mbarと約5mbarとの間の高圧下でのスパッタリングの際に、このように局所的に作用する磁界によって、スパッタプラズマのイオン化率、ひいてはスパッタターゲットの浸食速度を局所的に適合させることができることがわかった。そのために、本発明者は、スパッタターゲットとスパッタプラズマの間隔(陰極暗部)が、圧力に大きく左右されるスパッタガスのイオンと電子の平均自由路程によって決定されることを利用する。10
−2mbar以下だけ低い圧力の場合に、陰極暗部は数センチメートルの拡がりを有することができる。漂遊磁界内の電子の長いサイクロイド軌道は、ターゲットからの離隔距離が短い場合に既に、スパッタガスの原子と電子との間に衝突を起こす。それによって、プラズマが早くイオン化される。従って、陰極暗部が幾らか減少する。しかし、10
−2mbar以下のスパッタガス圧力の場合、陰極暗部は非常に強い磁界によって、陰極暗部の拡がりを1cm未満にほとんど抑制することができない。要求されるように局所化された磁界は、ターゲット収容部の平面に対して垂直な三次元寸法においても強く局所化され、この局所化により、磁力線の一部分だけが陰極暗部を通ってスパッタプラズマ内まで進出し、そこで磁界の強さが非常に弱くなる。それによって、スパッタターゲットの表面から放出された電子は、この磁力線に沿ってスパッタプラズマを通って案内されないので、このプラズマの更なるイオン化にはわずかしか寄与しない。
【0010】
それに対して、約0.5mbarと約5mbarとの間の圧力の場合、1mmよりも小さいかまたは0.1mmよりも小さいオーダーの陰極暗部が存在するにすぎない。この暗部には局所化された磁界によって問題なく貫通可能である。ターゲット表面から放出された電子は主として歳差運動して磁界の磁力線に対して横方向にプラズマを通って案内される(サイクロイド軌道)。それによって、プラズマ内のその路程が延長される。スパッタガスの原子または分子と電子間の衝突の数が増大することになり、それによってスパッタガスが強くイオン化される。プラスの電荷を帯びたイオンはマイナスの電荷を帯びたスパッタヘッドによって引きつけられ、材料浸食のために寄与する。高周波スパッタリング(RFスパッタリング)の場合にも、イオン化率は類似の方法で局所の漂遊磁界によって局所的に高められる。RFスパッタリングの場合、ターゲット収容部とマイナスの電位の個所の物質との間に、高周波の交番磁界が生じる。交番磁界の正の半波の間、ターゲットがその都度分極化され、負の半波の間材料が浸食される。これにより、絶縁体を成膜材料として使用することもできる。
【0011】
それによって、局所的に作用する磁界により、プラズマのイオン化率、ひいてはスパッタリング時の浸食速度を局所的に適合させることができる。その結果、本発明に係るスパッタヘッドによって、そのほかは同じパラメータで、従来技術のスパッタヘッドよりも均一な層厚を有する層を基板上に作ることができる。スパッタプラズマのイオン化率が従来技術のスパッタヘッドよりも均一に分布しているので、より大きなスパッタプラズマ、ひいてはより大きなスパッタターゲットを使用することができ、それによってより大きな工作物を1回の作業工程で成膜することができる。副次的な効果として、ターゲットがより均一に利用されることが挙げられる。慣用のマグネトロンスパッタリングの場合、浸食は例えば円形の溝に集中する。ターゲットがこの個所で完全に貫通するので、その全量の一部分しか浸食されていなくても、ターゲットを交換しなければならない。
【0012】
この効果は特に、スパッタターゲットと基板との間の間隔よりもはるかに大きなスパッタターゲットおよび/または基板が使用されるときに発揮される。約0.5mbarより大きなスパッタガス圧力の場合に、この間隔は約10〜30mmである。
【0013】
さらに、従来技術に係るマグネトロンスパッタの場合、不均一な浸食速度が、大きなターゲットの使用時にスパッタプラズマを不安定にする自己増幅プロセスへの出発点であることがわかった。スパッタプラズマ内には、ターゲットを加熱する熱が常時発生する。これは特に、高圧でスパッタリングされるときおよびプラズマとターゲットとの間の陰極暗部が非常に細いときに当てはまる。スパッタガスのイオンがターゲットの負の電位によって引きつけられることにより、スパッタリング時に正の流れがターゲットの方へ流れる。酸素雰囲気でスパッタリングする際には付加的に、マイナスの酸素イオンがターゲットに対して反発する。これはターゲットの方への他の正の流れ成分に相当する。ターゲットは全体流れに反作用する。この反作用は特に半導体のターゲットの場合に温度上昇につれて低下する。従って、ターゲットが既に高温である場所では、スパッタ流れのより大きな部分が集中している。そのために、他の場所からターゲットへの流れが排出される。小さなターゲットの場合には、ターゲット内の補償流れがこのプロセスに反作用する。これはより大きなターゲットの場合にはもはや十分ではないので、スパッタ流れが不足しているターゲットの場所で、スパッタプラズマが消える。本発明では最初からプラズマの均一なイオン化、ひいては均一な浸食速度がもたらされるので、スパッタ流れの不均一な分布がターゲットに生じない。この不均一な分布はこれによりそれ自体で増幅し得る。従って、本発明に係るスパッタヘッドによって、慣用のマグネトロンスパッタリングの場合よりも大きなターゲットをスパッタリングすることができる。
【0014】
本発明に係るスパッタヘッドによって、ターゲット上の領域が浸食を免れるように、スパッタターゲットの材料浸食をこの意味で特別に採寸することができる。ターゲット収容部の表面に対する各磁界源の漂遊磁界の投影において、磁界強さの少なくとも90%が集中する領域が材料浸食を免れる設定領域の完全に外側にあると有利である。材料浸食をスパッタターゲットに空間的に制限するために、スパッタターゲット用のターゲット収容面がシールドによって取り囲まれているときに、このような領域として、例えば円形のスパッタターゲットのエッジ領域(例えば20%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下)が設定可能である。その際、スパッタプラズマがターゲット収容部とシールドの間の隙間に過度に接近することは不所望である。というのは、これがアークを発生し得るからである。
【0015】
本発明の一般的思想は、局所的な磁界によってスパッタプラズマに局所的に影響を及ぼすことにより、スパッタプラズマの強さの不均一性を補償することである。その際、従来技術のマグネトロンスパッタリングと異なり、磁界源によって影響を受けるターゲット表面の領域が、ターゲット表面の全面積に対して小さいことが重要である。従って、本発明は、スパッタターゲットのための収容部と、漂遊磁界を発生するための1個または複数の磁界源とを備え、漂流磁界の磁力線がスパッタターゲットの表面から出て、再びこの表面に入る、スパッタヘッドに関し、このスパッタヘッドは、ターゲット収容面に対する少なくとも1個の磁界源の磁界の投影において、磁界強度の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%が、ターゲット収容面の10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下の面積部分に集中していることを特徴とする。
【0016】
局所的な磁界によるスパッタプラズマの局所的な影響は、スパッタターゲットが大きければ大きいほど、成膜の均一性をさらに改善する。従って、スパッタターゲットを収容するためのターゲット収容面が、30mm以上の直径、好ましくは50mmの以上の直径、さらに好ましくは60mm以上の直径を有するように形成されていると有利である。
【0017】
局所的な磁界によるスパッタプラズマの局所的な影響はさらに、使用されるスパッタターゲットが円形でなくてもよいという作用を有する。磁界源の位置および強さを介して、任意の形状のターゲット表面に、均一な強さを有するスパッタプラズマ、ひいては均一な材料浸食をもたらす磁界分布を発生することができる。それによって、本発明は、スパッタターゲットのための収容部と、漂遊磁界を発生するための1個または複数の磁界源とを備え、漂流磁界の磁力線がスパッタターゲットの表面から出て、再びこの表面に入る、スパッタヘッドに関し、このスパッタヘッドは、非円形ターゲット、特に楕円形、星形または多角形表面を有するターゲットを収容するように形成されていることを特徴とする。この形成は例えば、ターゲット収容面が相応する形状を有することにある。その代わりにあるいはこれと組み合わせて、スパッタターゲットの表面よりも大きくおよび/または異なるように形成されたターゲット収容面は、スパッタプラズマ寄りのターゲット収容部の表面の前に固定可能な固体絶縁体によって、材料浸食をターゲット表面またはその一部に限定するように、陰影を付けることが可能である。スパッタヘッド自体の材料浸食は行われない。特別な明細書部分には、2つの実施の形態が記載されている。この実施の形態は帯状基板を成膜するために、長方形のスパッタターゲットを使用する。この実施の形態では、浸食速度は磁界源の線状構造体によって基板の帯状形状に局所的に合わせられる。
【0018】
本発明のきわめて有利な実施形では、スパッタヘッドが、ターゲット収容面、ひいては運転中にスパッタターゲットを支持する本体と、材料浸食を空間的にスパッタターゲットに限定するための、スパッタターゲットを取り囲むシールドを備えている。本発明では、(ターゲット収容面とスパッタターゲットを備えた)本体とシールドとの間に、固体絶縁体が配置されている。ターゲット収容面とスパッタターゲットを備えた本体は一般的に電位であり、一方、シールドは設置電位である。従って、(ターゲット収容面とスパッタターゲットを備えた)本体とシールドとの間には、数百ボルトの電圧(またはRFスパッタリングの場合には交流電圧振幅)がかかる。(ターゲット収容面とスパッタターゲットを備えた)本体とシールドとの間の隙間は、平均自由路程よりも小さくなければならない。それによって、この隙間内で不所望なプラズマが形成されない。より大きな隙間内には、電子が衝突によりマイナスの電位によって加速され、ガス原子をイオン化し得る。この場合、他のイオンと電子が遊離する。それによって、シールドとターゲット収容面とスパッタターゲットを備えた本体との間の隙間内でプラズマが雪崩のように形成され、電気的なアークを生じ得る。
【0019】
スパッタガス圧力の上昇につれて、平均自由路程、ひいては許容される隙間幅が小さくなる。すなわち、同じ設計電圧の場合、隙間にわたる電界強さが増大する。同時に、特に本発明者の試験のように酸素を含む雰囲気が選択されるときに、スパッタ室の雰囲気の破壊電界強度が低下する。従って、電気的なアークの発生は、スパッタリングが実施可能な最大スパッタガス圧力のための制限要因である。固体絶縁体は酸素を含む雰囲気よりもはるかに高い破壊電界強度を有する。同時に、固体絶縁体は(ターゲット収容面とスパッタターゲットを備えた)本体とシールドとの間の容積を占める。この容積はもはや電子のための加速区間として供されない。それによって結果的に、固体絶縁体は、はるかに高い圧力までスパッタリングできるようにする。固体絶縁体が本体とシールドとの間の空間を完全に占有すればするほど、この空間内での不所望なプラズマの形成が良好に抑制される。
【0020】
スパッタガス圧力の上限は、圧力上昇につれて過大に低下する平均自由路程によって生じる。約5mbarを超えた側では、スパッタターゲットから少しだけ離して(約1mm以下)スパッタプラズマが形成される。というのは、スパッタガスのさらに離れた領域では、電子がもはや、スパッタガスの原子をイオン化するのに十分なエネルギーを有していないからである。プラズマがターゲットの近くで発生していると、このプラズマの向こう側では他のイオン化は生じない。なぜなら、アースに対するスパッタターゲットの電位が実質的に既に陰極暗部を越えてプラズマまで低下しているからである。プラズマの向こう側では、電子はもはや加速されない。従って、プラズマ内で発生した熱は小さな領域に集中する。ターゲット表面はきわめて不均一に加熱され、スパッタプラズマは不安定になる。本発明では、少なくとも1個の磁界源の磁極が最小では互いに約1mmしか離れていない。これは約5mbarよりも上のスパッタガス圧力の場合に、約1mmの細いスパッタプラズマの安定化を非常に困難にする。
【0021】
磁界源が少なくとも1個の永久磁石を備え、この永久磁石の磁界が透磁性材料からなるヨークを通ってターゲット収容面まで案内されていると有利である。このようなヨークは例えば鉄のような金属からなっていると、大きな磁界強度の小型永久磁石を作るための代表的な材料よりもはるかに簡単に所望な形状に機械加工可能である。これは特に、複数の永久磁石の磁束が1つの同じヨークを通って案内されている本発明の他の有利な実施形に当てはまる。この実施形では、ヨークは複雑な機械的形状を有する。本発明の実施の形態は鉄製ヨークと銅製ホルダを備え、このホルダには小型の永久磁石を収容するための穴が穿設されている。鉄と銅はそれぞれ問題なく機械加工することができる。これに対して、永久磁石は希土類合金の焼結された粉末からなり、非常に脆いので、機械加工を試みると砕ける。永久磁石は銅製ホルダの穴内に装着可能である。永久磁石は磁界をターゲット収容部の方に誘導する。磁界は鉄製ヨーク内でターゲット収容面から永久磁石の後方の極へ戻される。全漂遊磁界はターゲット収容面の近くでのみ発生する。
【0022】
磁界源は少なくとも1個の電磁石を備えていてもよい。これは、浸食速度を局所的に適合させるために、磁界源の磁界強度をその位置で真空状態を壊さずに変更可能であるという利点がある。もちろん、必要な磁界強度を非常に狭い空間で発生することは技術的に難しい。というのは、これが多数のコイルまたは高い電流を必要とするからである。
【0023】
1個または複数のリング状、ハニカム状または線状の磁界源構造体が設けられていると有利である。その際、個々の磁界源は異なる磁界強度を有していてもよい。この構造体によって、浸食速度をターゲット表面にわたって均一にするかまたは他の方法に合わせることができる。磁界源が本発明に従ってそれぞれ局所的に作用する磁界だけを発生するので、その磁界強度は浸食速度の所望な分布に合わせて互いに独立して最適化可能である。そのために、隣接する磁界源の間隔が、各源の磁界のそれぞれ90%が集中している領域がオーバーラップしないように選択されている。
【0024】
本発明者の試験では、従来技術に係る円形スパッターゲットが使用されたときに、30mmの直径を有する円形基板に被覆された層厚は、基板の表面にわたって50%まで変化した。それに対して、同じターゲットが磁界源のリング状構造体を1個だけ備えた本発明に係るスパッタヘッドと共に使用したときには、層厚は10%までしか変化しなかった。層厚の均一な分布は特に、横方向構造を有する多層システムを製作するために重要である。このような製作プロセスは一般的に、例えばイオンカノン砲からのイオン砲撃による、面をカバーするエッチングステップを含んでいる。このイオンカノン砲はそれ自体制限されないで、加工すべき層のエッチングの後で適時に積極的に停止しなければならない。層厚が変化すると、層が若干の個所で完全にエッチング除去されず、および/または他の個所でその下にある層が傷つけられる。
【0025】
磁界強度を最適化する際に、専門家はフィードバックを必要とする。専門家は例えば、磁界源の構造体によって層を基板に堆積させて、基板にわたって層厚の分布を調べることにより、このフィードバックを手に入れることができる。1個所の層厚が所望な結果と異なっていると、これは、スパッタターゲットの所定の個所で浸食速度を高めるべきであるかまたは低下させるべきであるという信号である。
【0026】
所定の1個所で基板に堆積した材料は、磁石が存在するスパッタターゲットの多数の個所から浸食された材料の重なりである。最初のアプローチでは、ターゲット上の所定の個所「K」から出る材料によって生じる、基板上の1点の局所的な堆積速度の部分が、個所「K」の局所的なイオン化率または局所的な磁界強度に比例する。この認識によって、基板上の堆積速度の所望な空間的分布のために必要な最適な磁界強度分布をシミュレーションして、それに相応して磁界源を位置決めすることができる。そのために例えば一次方程式をたてることができる。この方程式では、局所的な磁界強度が求められ、所望な局所的堆積速度が右辺に記載されている。磁界源の強い局所化された作用は結果として、個々の方程式の間の複雑な非線形結合項が存在しないことになる。
【0027】
層厚の分配は特に高圧でのスパッタリングの際にこの方法で最適化可能である。というのは、基板がスパッタターゲットに対して比較的に小さな離隔距離(約20mm)にあり、スパッタターゲットから放出される原子または分子がほぼ直線に沿って基板の方へ移動するからである。低い圧力でのスパッタリングの際には、陰極暗部とプラズマ自体が明確に大きくなり、それによって原子または分子がスパッタターゲットから基板まではるかに長い距離を進む。基板上の所定の個所に堆積した材料がスパッタターゲット上のどの個所から出ているのかを理解することは困難である。
【0028】
シールドの近くに位置するスパッタターゲットのエッジ領域は、前に位置する磁界の寸法合わせだけによっては、材料浸食から除外することができない。その代わりにあるいは従来の上記手段と組み合わせて、本発明は、スパッタターゲットのための収容部と、材料の浸食をスパッタターゲットに空間的に制限するための、ターゲット収容部を取り囲むシールドとを備えたスパッタヘッドに関し、スパッタプラズマの方に向いた、スパッタターゲットまたはターゲット収容部の表面の前に固定可能な固体絶縁体が設けられ、この固体絶縁体が運転中、シールドに最も近いところにあるこの表面の20%以下、好ましくはシールドに最も近いところにあるこの表面の10%以下、さらに好ましくはシールドに最も近いところにあるこの表面の5%以下を、材料浸食から除外することができる。
【0029】
この手段は、ターゲット収容部とシールドとの間の隙間にスパッタプラズマを近づけすぎることによって生じるアークを防止する。この領域が固体絶縁体によって遮蔽されることにより、利用可能なターゲット表面の小さな犠牲によってプラズマの安定性が大幅に改善される。
【0030】
本発明の中心思想は、スパッタガス高圧下でスパッタリングする際に、スパッタターゲットの材料浸食の局所的な影響によって、得られる層の品質および特に層厚の均一性を改善することである。この中心思想は、スパッタガス高圧下でスパッタリングする際に、スパッタターゲットと基板の離隔距離が比較的に短いので、スパッタターゲット上の所定の個所の材料浸食と、基板上の所定の個所の材料堆積との間の理解できる因果関係が存在するという認識に基づいている。磁界源の適当な構造体によって影響を生じることができる。これに組み合わせて、スパッタターゲットの前に固定可能な固体絶縁体によって影響を有利に生じることができる。
【0031】
この中心思想は、0.5mbar以上、好ましくは1mbar以上のスパッタガス圧力で基板上にターゲット材料をスパッタ堆積させるための本発明に係る方法においても実現される。この方法の場合、ターゲット表面と基板との間にスパッタガスのプラズマが形成される。本発明では、ターゲット表面からプラズマの方に放出される電子が1個または複数の磁界源の磁力線によってプラズマ内で方向を変えられる。この磁界源の北磁極と南磁極は10mm以下、好ましくは5mm以下、さらに好ましくは約1mmだけ互いに離れている。
【0032】
これにより、スパッタヘッドの上記説明と同様に、スパッタプラズマのイオン化率、ひいてはターゲットからの材料浸食の速度を局所的に適合させることができる。これはスパッタプラズマの安定性を改善し、従って大きなスパッタターゲットの使用を可能にすると同時に、特に方法の有利な実施形において本発明に係るスパッタヘッドが使用されるときに、基板上で得られる層厚の均一性を改善することができる。
【0033】
特別な明細書部分
次に、本発明の対象を限定することなく、図に基づいて本発明の対象を詳しく説明する。