特許第5934228号(P5934228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934228
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】多層カーボネートシート
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/28 20060101AFI20160602BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20160602BHJP
   B29C 47/12 20060101ALI20160602BHJP
   B29C 47/90 20060101ALI20160602BHJP
   B29K 69/00 20060101ALN20160602BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20160602BHJP
   B29L 24/00 20060101ALN20160602BHJP
【FI】
   B32B3/28 C
   B32B27/36 102
   B29C47/12
   B29C47/90
   B29K69:00
   B29L7:00
   B29L24:00
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-535283(P2013-535283)
(86)(22)【出願日】2010年10月26日
(65)【公表番号】特表2013-540623(P2013-540623A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2010066171
(87)【国際公開番号】WO2012055429
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2013年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】510288530
【氏名又は名称】トリンゼオ ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】マルク ブレイズ
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−521085(JP,A)
【文献】 特開2000−007905(JP,A)
【文献】 特開平08−132437(JP,A)
【文献】 特開2004−123792(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0123719(US,A1)
【文献】 特開昭57−128535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 47/12、47/90
B29K 69/00
B29L 7/00、24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形されたポリカーボネート多壁シート構造体であって、
a.少なくとも7つの概ね平行な間隔のあいた壁と、
b.押出方向に前記シートの長さを伸ばし、隣接壁を分ける複数のリブとを備え、
前記シートは、40mm以上の総厚を有し、前記ポリカーボネートは、260℃で測定された4.5超の溶融粘度比を有し、前記溶融粘度比は、せん断速度0.1s-1での粘度と、せん断速度100s-1での粘度との比である、構造体。
【請求項2】
前記ポリカーボネートが、せん断速度0.1s-1で、および260℃で10,000Pas超の溶融粘度を有する、
請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記ポリカーボネートが、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定した際に35,000から40,000の間の重量平均分子量を有する、
請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
少なくとも9つの壁を備える、
請求項1に記載の構造体。
【請求項5】
少なくとも10の壁を備える、
請求項1に記載の構造体。
【請求項6】
多壁構造体を製造する方法であって、
a.260℃で測定された4.5超の溶融粘度比を有するポリカーボネートを製造し、前記溶融粘度比は、せん断速度0.1s-1での粘度と、せん断速度100s-1での粘度との比であり、
b.260℃の溶融温度および0.5m/min以上のライン速度で前記ポリカーボネートを押出成形し、押出方向に前記シートの長さを伸ばすリブによって互いから分けられた少なくとも7つの概ね平行な間隔のあいた壁を有するシートを形成することを備える、方法。
【請求項7】
前記ポリカーボネートが、せん断速度0.1s-1で、および260℃で10,000Pas超の粘度を有する、
請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリカーボネートが、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定した際に35,000から40,000の間の重量平均分子量を有する、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記シートが、10以上の壁を有する、
請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記シートが、40mm以上の総厚を有する、
請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、光透過パネルに関し、特に、断熱性が改良された多層熱可塑性カーボネートシートまたは多層熱可塑性カーボネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの使用と持続可能性についての意識が高まるにつれ、建物内ならびに建築用途における透明パネルならびにシートに対する熱損失を限定することが重要となる。これに関しては、これらのパネルまたはシートに対する断熱性を高めることが望ましく、趨勢は、1W/m2K以下のU値を有するそのようなパネルおよびシートを提供することである。(U=1/R、ここで、Rは熱抵抗であり、R=R(放射)+R(伝導)+R(対流))。
【0003】
他の重要な問題は、天気に対する透明な構造物の抵抗に関するものである。透明な構造物の機械的特性は、あらゆる条件の天気に耐えることができなければならない。したがって、良絶縁特性、耐久性の向上、および保守の必要性の低減の組合せを有する、光透過率が増加した透明な構造物として使用するためのパネルを提供することが望ましいだろう。
【0004】
これらの問題に対する提案の一つは、ポリカーボネート多壁シート構造体である。典型的な多壁シート構造体は、約3から5層、例えば、3重壁シートを有する。3重壁シートは、2つの外壁と、1つの内壁を有する。各外壁は、外面と内面を有する。3つ以上の壁を有する多壁シートに対して、内壁の表面は、一般に、内部上面または内部下面と呼ばれる。典型的には、一連のリブがシート構造体の長さに沿って提供され、層を分け、安定性をもたらし、壁の間に絶縁層を作り出す。そのような構造体の絶縁効果が受け入れられるかもしれないが、追加の壁、つまりより高い絶縁性を提供することが望ましいであろう。より多くの、すなわち7つや8つ以上の壁または層を有するシートを作り出すことに対する限定要因は、押出成形機および押出型を通じて多壁シートを作り出すために使われる材料の加工である。したがって、3つや5つ、もしくは7つの層の多壁シートを作り出すために使われる既知のプラスチック樹脂は、7つや8つ以上の壁を有する多壁シートを作り出そうとする場合に使用されると、シート形状のたわみおよび非常に低いライン速度の原因となるであろう。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリマーから形成された、押出成形された熱可塑性多壁シート構造体を含み、少なくとも2つの概ね平行な壁を含む。各壁は、第1および第2の面を有し、シートの長さを押出方向に伸ばすリブによって、互いから分けられる。他の実施形態において、多壁シート構造体は、少なくとも7つ、8つ、9つ以上の概ね平行な壁、水平もしくはある角度未満、時には10か、場合によっては10以上の壁を含む。各壁は、シートの長さを押出方向に伸ばすリブによって、互いから分けられた第1および第2の面を有する。
【0006】
本発明のシート構造体は、PC、PET、PETG、およびPMMAのグループから選択される熱可塑性材料を備え、一般にはPCを備える。
【0007】
本発明のシート構造体は、UV吸収剤、近赤外線吸収(NIR)吸収剤、熱安定剤、着色剤、染料、加工助剤、潤滑剤、充填剤、または強化補助剤の1つまたは複数を含んでもよい。
【0008】
他の実施形態において、本発明のシート構造体はまた、1つまたは複数の熱可塑性材料もしくは熱硬化性樹脂の積層または同時押出層を含み、剥離/引っかき抵抗性、化学抵抗、紫外線(UV)放射抵抗、NIR、光拡散低減、光反射低減、汚れ蓄積低減、結露低減、抗菌性、変色からの防護、くもり形成からの防護、または亀裂からの防護を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による、多層シート構造体の押出方向に沿った断面図である。
図2A】本発明による多層シート構造体の隣接壁を分けるために使用することができる例示的なリブ構造体の断面図である。
図2B】本発明による多層シート構造体の隣接壁を分けるために使用することができる例示的なリブ構造体の断面図である。
図2C】本発明による多層シート構造体の隣接壁を分けるために使用することができる例示的なリブ構造体の断面図である。
図2D】本発明による多層シート構造体の隣接壁を分けるために使用することができる例示的なリブ構造体の断面図である。
図2E】本発明による多層シート構造体の隣接壁を分けるために使用することができる例示的なリブ構造体の断面図である。
図3】既知のポリカーボネートと比較した、本発明の実施形態で使用するために適切なポリカーボネートの粘度対せん断速度の測定結果である。粘度の対数が、せん断速度の対数に対してプロットされる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
平らで、水平面で最も長い寸法(長さおよび幅)を有するシートの(図1に示すように、押出面と交差して、または垂直に切断した)断面で多壁シートを見る場合、「層」または「面」10とも呼ばれる2つ以上の概ね並行で水平の壁があり、長さ方向に沿う層の間を通り、層を分ける一連のリブ20がある。これらリブはまた、「添え骨」または「鎧板」と呼ばれることがある。リブ20は層10に垂直または直角として示されているが、図2Aから図2Eは、平行面10の間で分離する垂直材21、対角材22、または垂直材と対角材の組合せとすることができるいくつかの非限定代替リブ構造体を示す。図示したリブ設計のそれぞれは互いと組み合わせて使用することができるよう意図されているが、製造を単純にするために、多層構造体全体を通じて単一のリブ構造体を使用することが望まれる。
【0011】
図2Aから図2Dは、図1の多層シート構造体の2つの層10を示し、それぞれが代替リブ設計を図示する。図2Eは、図1の多層シート構造体の3つの層を示す。図1および図2に示すように、多層シートは、一般に互いに平行な第1の、もしくは上壁11、および第2の、もしくは下壁12として示される、一般に平らな壁を有する。少なくとも2つ以上の層を有するシート構造体は、一般に滑らかな表面を有し、「多壁」シートと総称される。例えば、図1に示す7層シート等の多層シートの場合、2つの外壁(11ならびに12)および5つの内壁13がある。各外壁は、外面14と内面15を有する。3つ以上の壁を有する多壁シートに対して、内壁の表面は、内部上面16または内部下面17と呼ばれる。
【0012】
概ね平らなものとして外壁および内壁を示したが、波型形状の壁構造体等の他の形状としてもよいことが意図される。波形という用語は、峰と溝が交互に現れるという意味である。波形形状は押出方向であり、機械方向、または押出成形されたシートの長さと呼ばれることがある。本発明の多層シートは、両側が波形形状を有する外壁を含むことができる。
【0013】
壁の厚さ50が、壁の第1の表面から、壁の第2の表面への距離として定義される。例えば、図2aに示すように、内壁13の1つの厚さ50が、内部上面16と内部下面17との間の距離である。本発明の多壁シートの壁の壁厚は、それぞれ独立に、約0.1mm以上であり、場合によっては、約0.3mm以上であり、他の場合では、約0.5mm以上である。本発明の多壁シートの壁の壁厚は、それぞれ独立に、約10mm以下であり、場合によっては、約5mm以下であり、他の場合では、約1mm以下である。
【0014】
本発明の多壁シートの壁のリブ厚は、約0.1mm以上であり、場合によっては、約0.3mm以上であり、他の場合では、約0.5mm以上である。本発明の多壁シートの壁のリブ厚は、約8mm以下であり、場合によっては、約4mm以下であり、他の場合では、約0.8mm以下である。
【0015】
所望の全体的なシートの厚さ、壁(すなわち、層または面)の数、および壁または層の間の間隔(例えば、垂直リブの高さ)は、所望のシート性能特性を提供するよう、それに応じて選択することが可能である。本発明の実施形態は、少なくとも2つの間隔のあいた壁を有し、場合によっては、少なくとも5つの壁を有し、他の場合では、少なくとも7つの壁を有し、さらに他の場合では、少なくとも10の壁を有する。3層より多くが使用される場合、内壁が互いから、および上層ならびに下層から等距離に設置され(すなわち、外壁に対し、より多くのうちの1つが中心に置かれる)てもよく、または1つの層もしくは他の層により近接してもよい。
【0016】
本発明の多壁シートは、上壁11の外面14から、下壁12の外面14への距離として定義される総厚を有する。本発明の多層シート構造体は、約30mm以上の総厚を有し、場合によっては、約40mm以上、他の場合では、約50mm以上の総厚を有する。本発明の多層シート構造体は、約100mm以下の総厚を有し、場合によっては、約80mm以下、他の場合では、約60mm以下の総厚を有する。
【0017】
リブの数と設計は、シートの構造条件に左右される可能性がある。上記のように、図に示すように、リブは垂直材21(すなわち、シート壁に垂直)、対角材22(交差する対角材23を含む)、またはそれらの組合せとすることができる。垂直材および対角材リブを両方使用した場合、対角材リブは、垂直材リブが交差するのと同じポイント24、または異なるポイント25および26で、壁と交差してもよい。垂直材リブ21が提供される場合、それらは、約10mm以上の距離で、場合によっては、約15mm以上の距離で、他の場合では、約20mm以上の距離で、互いから間隔を置く。垂直材リブのリブ間隔は、約30mm以下、場合によっては、約40mm以下、他の場合では、約50mm以下である。
【0018】
多層シートは、一般に、3.5kg/m2以上、場合によっては、4kg/m2以上、他の場合では、5kg/m2以上の面積重量を有する。適切な多層シートの面積重量は、8kg/m2以下、場合によっては、7kg/m2以下、他の場合では、6kg/m2以下である。
【0019】
当業者によって認識されるように、剛性、断熱性、光透過率、および耐候性に対する必要性により、本発明の構造体は、広範囲のプラスチック樹脂から製造することができる。いくつかの実施形態において、本発明の多壁シートは、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン‐アクリロニトリルコポリマー(SAN)、ブタジエン変性SAN(ASS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性PET(PETG)およびポリ塩化ビニル(PVC)を含む既知の硬質熱可塑性材料の一つから製造される。ある実施形態において、シート構造体は、PC、PET、PETG、およびPMMAから製造され、場合によっては、構造体は、PCから製造される。
【0020】
本発明のカーボネートポリマーは、熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートである。本発明による適切な芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは、文献から既知であり、文献から知られる方法によって製造することができる(例えば、芳香族ポリカーボネートの製造のために、Schnellによる”Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Interscience Publishers,1964、および米国特許第3,028,365号、米国特許第4,529,791号、ならびに米国特許第4,677,162号を参照し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。適切な芳香族ポリエステルカーボネートは、米国特許第3,169,121号、米国特許第4,156,069号、および米国特許第4,260,731号に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
芳香族ポリカーボネートの製造は、例えば、ホスゲン等の炭酸ハロゲン化物との、および/または芳香族ジカルボン酸ジハライド、適切にはベンゼンジカルボン酸ジハライドとのジフェノールの反応によって、相界面法によって、任意選択的に、連鎖停止剤、例えば、モノフェノールを使用して、および任意選択的に、三官能性分岐剤もしくは3より大きい官能性を有する分岐剤、例えば、トリフェノールもしくはテトラフェノールを使用して引き起こされる。
【0022】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの製造のためのジフェノールは、式IIのものであってよい。
【0023】
【化1】
【0024】
ここで、Aは、単結合、C1〜C5アルキレン、C2〜C5アルキリデン、C5〜C6シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO2−、またはC6〜C12アリーレンであり、これらは必要に応じてヘテロ原子を有する他の芳香族環と縮合することができ、または、式IIIまたは式IVの基を表す。
【0025】
【化2】
【0026】
Bは、各場合において、独立して、水素、C1〜C12アルキル、適切にはメチル、またはハロゲン、例えば、塩素および/または臭素、であり、
xは、各場合において、互いに独立して0、1または2を示し、
pは、0または1を示し、
CおよびRdは、それぞれ互いに独立しており、各X1に対して個別に選択可能であり、水素またはC1〜C6−アルキルであり、適切には水素、メチルまたはエチルであり、
1は、炭素を表し、および
mは4〜7の整数、場合によっては4または5であり、ただし、RCおよびRdが少なくとも1つのX1原子のアルキルを同時に表すことを条件とする。
【0027】
適切なジフェノール類は、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)−C1〜C5アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)−C5〜C6シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、およびα,α−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、ならびに臭素化された核および/または塩素化された核を有するこれらの誘導体である。
【0028】
望ましいジフェノール類は、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、および4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ならびにそれらのジ−およびテトラ−臭素化または塩素化誘導体、例えば、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、または2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどを含む。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が適切なジフェノールの例である。ジフェノール類は個別に使用するか、または任意の混合物として使用することができる。ジフェノール類は、文献から知られており、または文献から知られた方法により得ることができる。
【0029】
芳香族ポリカーボネートの製造のための適切な連鎖停止剤の例は、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノール、または2,4,6−トリブロモフェノール、ならびに長鎖アルキルフェノール類、例えば、4−(1,3−ジメチル−ブチル)−フェノールまたはアルキル置換基において合計8〜20個のC原子を含むモノアルキルフェノール類もしくはジアルキルフェノール類、例えば、3,5−ジ−tert−ブチル−フェノール、p−イソ−オクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノール、および4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールを含む。使用される連鎖停止剤の量は、一般に、各場合に使用されるジフェノール類のモル和に対して0.1モル%から10モル%の間である。
【0030】
本発明の芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは、約20,000から約200,000の、場合によっては、約30,000から約50,000の、他の場合では、約32,000から約45,000の、さらに他の場合では、約35,000から約40,000の間の平均重量平均分子量を有することができる。特に明記のない限り、本明細書における芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの「分子量」に対する言及は、ビスフェノールAポリカーボネート規格を有するレーザ拡散技術を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって判断される重量平均分子量(Mw)に関し、モル毎のグラム(g/mol)の単位で与えられる。
【0031】
芳香族ポリカーボネートは、適切な分岐剤を混合することによって枝分かれさせることができる。本発明に対して適切な、枝分かれされたポリカーボネートは、既知の技術によって製造することができ、例えば、いくつかの適切な方法が、米国特許第3,028,365号、米国特許第4,529,791号、および米国特許第4,677,162号に開示され、それらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
使用され得る適切な分岐剤は、三官能または多官能性のカルボン酸塩化物、例えばトリメシン酸トリクロリド、シアヌル酸トリクロリド、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸テトラクロリド、1,4,5,8−ナフタレン−テトラカルボン酸テトラクロリドまたはピロメリット酸テトラクロリドを、例えば、0.01〜1.0モル%(使用されるジカルボン酸ジクロリドに対する)の量で、または三官能もしくは多官能性のフェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,4−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)、トリス(4−ヒドロキシフェニル)−フェニル−メタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェノール、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチル−ベンジル)−4−メチル−フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒロドキシフェニル)プロパン、またはテトラキス(4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−フェノキシ)−メタンである。適切な分岐剤は、THPEである。
【0033】
分岐剤は、ジフェノール類と共に反応容器内に入れることができる。酸塩化物分岐剤は、酸塩化物類と共に添加することができる。
【0034】
分岐剤は、約0.2wt%から約1wt%、場合によっては、約0.3wt%から約0.8wt%、他の場合では、約0.5wt%から約0.7%、他の場合では、約0.6wt%から約0.7wt%、例えば、約0.64wt%の量で混合してもよい。
【0035】
ホモポリカーボネートとコポリカーボネートの両方が適切である。本発明による成分(i)によるコポリカーボネートを製造するために、ヒドロキシ−アリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを(使用されるべきジフェノール類の総量に対して)1から25重量部、適切には、2.5から25重量部使用することも可能である。これらは既知(例えば米国特許第3,419,634号参照)であるか、または文献で知られている方法により生成することが可能である。
【0036】
ビスフェノールAホモポリカーボネートの他に、他のポリカーボネートは、好ましいかまたは特に好ましいと記載した他のジフェノール類、特に、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンの、ジフェノール類のモル和に対し、15モル%までのビスフェノールAの、コポリカーボネートを含む。
【0037】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造のために適切な芳香族ジカルボン酸ジハライドは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸ジクロリドである。イソフタル酸の二酸ジクロリドとテレフタル酸の二酸ジクロリドの1:20から20:1の間の比の混合物を例示する。ホスゲン等の炭酸ハロゲン化物が、ポリエステルカーボネートの製造中に、二官能性酸誘導体として結合に使用される。
【0038】
上述のモノフェノールの他に、芳香族ポリエステルカーボネートの製造のために適切な連鎖停止剤は、それらのクロロカルボン酸エステル、ならびに芳香族モノカルボン酸の酸塩化物であり、それらは任意選択的に、C1〜C22アルキル基またはハロゲン原子で置換してもよく、および脂肪族C2〜C22モノカルボン酸塩化物も含む。連鎖停止剤の量は、フェノール系連鎖停止剤の場合におけるジフェノールのモル数に対し、およびモノカルボン酸塩化物連鎖停止剤の場合におけるジカルボン酸ジクロリドのモル数に対し、各場合において0.1〜10モル%である。
【0039】
芳香族ポリエステルカーボネートはまた、添加されたヒドロキシカルボン酸を含んでもよい。芳香族ポリエステルカーボネートは直鎖または分岐されていてもよい。適切な分岐剤は、本明細書において、上記に開示される。
【0040】
芳香族ポリカーボネート中のカーボネート構造単位の比率は任意に変更することができる。カーボネート基の量は、エステル基およびカーボネート基の合計に対し、100モル%まで、特に80モル%まで、場合によっては、50モル%までとすることができる。芳香族ポリエステルカーボネートのエステルとカーボネート部分の両方は、ブロックの形状で存在することができ、または縮合ポリマー中にランダムに分布させることができる。
【0041】
芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリエステルカーボネートは、個別に使用することができ、または互いとの任意の混合で使用することができる。
【0042】
本発明による構造体はまた、他の熱可塑性または熱硬化性樹脂をそこに積層した、もしくは共押し出ししたさらなる層を含むか有し、所望の性能結果をもたらすことができ、特に、剥離/引っかき抵抗性、化学抵抗、紫外線(UV)放射抵抗、近赤外線(NIR)吸収、光拡散低減、光反射低減、汚れ蓄積低減、結露低減、抗菌性、変色からの防護、くもり形成からの防護、亀裂からの防護等のため等の方法によってシート構造体の表面を改良することが望まれる。熱可塑性樹脂は、これらの種類の樹脂および構造体のための既知の目的のために使われる通常の種類の添加剤を含むことができ、これらに限定されないが、UV吸収剤、NIR吸収剤もしくは熱安定剤、染料等の着色剤、潤滑剤、充填剤、強化補助剤、蛍光増白剤、蛍光添加剤等の加工助剤等を含む。そのような添加剤は、これらの構造体、および/または、既知の目的に対してそれらに積層される、もしくは共押出成形される可能性がある任意の層を製造するために使われる樹脂に添加することが可能である。
【0043】
本発明の適切な実施形態において、ポリカーボネートは、温度260℃で、せん断速度0.1-1で測定した、約10,000Pa・s以上、場合によっては、約12,000Pa・sより大きい、他の場合では、約14,000Pa・sより大きい、および他の場合では、約16,000Pa・sより大きい溶融粘度を有する。
【0044】
樹脂が押出成形機から出るときの、適切な流れ加工段階の問題と所望の構造的強度の間の適切な均衡を達成するために、本発明者は、本発明において有用な適切なポリカーボネートが、定められた溶融粘度比を有することを発見した。本明細書、図面、および特許明細の範囲で使用される用語「溶融粘度比」は、260℃で測定された、せん断速度0.1-1での粘度と、せん断速度100-1での粘度の比に関する。図で示す場合(図3のように)、せん断速度の対数と粘度の対数を使用することは、しばしば有用である。本発明によれば、溶融粘度比は、約4.5以上である。場合によっては、溶融粘度比は約5以上であり、他の場合では、溶融粘度比は約5.5以上であり、他の場合では、溶融粘度比は約6以上であり、さらに他の場合では、溶融粘度比は約6.5以上である。
【0045】
IR吸収添加剤
本発明の多層製品の遮熱特性を改善するために適切なIR吸収剤は、金属ホウ化物、セシウムタングステン酸化物、アンチモンをドープした酸化錫粒子、In、Ga、Al、ならびにSbから選択された少なくとも1種の元素を含む酸化亜鉛粒子、スズをドープしたインジウム酸化物粒子、本発明のカーボネート組成物に混ぜ合わせることができるフタロシアニン系組成物、ナフタロシアニン系組成物、硫化銅、もしくは銅イオン化合物等の他の有機または無機IR吸収剤である。
【0046】
無機IR吸収添加剤は、一般に、金属ホウ化物の微粒子であり、特に、ホウ化ランタン(LaB6)、ホウ化プラセオジム(PrB6)、ホウ化ネオジム(NdB6)、ホウ化セリウム(CeB6)、ホウ化ガドリニウム(GdB6)、ホウ化テルビウム(TbB6)、ホウ化ジスプロシウム(DyB6)、ホウ化ホルミウム(HoB6)、ホウ化イットリウム(YB6)、ホウ化サマリウム(SmB6)、ホウ化ユウロピウム(EuB6)、ホウ化エルビウム(ErB6)、ホウ化ツリウム(TmB6)、ホウ化イッテルビウム(YbB6)、ホウ化ルテチウム(LuB6)、ホウ化ストロンチウム(SrB6)、ホウ化カルシウム(CaB6)、ホウ化チタン(TiB2)、ホウ化ジルコニウム(ZrB2)、ホウ化ハフニウム(HfB2)、ホウ化バナジウム(VB2)、ホウ化タンタル(TaB2)、ホウ化クロム(CrBおよびCrB2)、ホウ化モリブデン(MoB2、Mo25およびMoB)、ホウ化タングステン(W25)等、または上記ホウ化物の少なくとも1種を含む組合せで等のホウ化物である。
【0047】
無機IR吸収添加剤が、熱可塑性および/または熱硬化性ポリマー中に拡散する前に、ナノサイズ粒子の形状になることが望ましい。粒子の形状に特定の限界はなく、例えば、球状、不規則的、板状、またはウィスカ状であってもよい。ナノサイズの粒子は、一般に、約200ナノメートル(nm)以下の平均最大寸法を有することができる。一実施形態において、粒子は、約150nm以下の平均最大寸法を有してもよい。他の実施形態において、粒子は、約100nm以下の平均最大寸法を有してもよい。さらに他の実施形態において、粒子は、約75nm以下の平均最大寸法を有してもよい。さらに他の実施形態において、粒子は、約50nm以下の平均最大寸法を有してもよい。上記のように、ナノサイズの粒子は、一般に、約200nm以下の平均最大寸法を有することができる。一実施形態において、粒子の90%超は、約200nm以下の平均最大寸法を有する。他の実施形態において、粒子の95%超は、約200nm以下の平均最大寸法を有する。さらに他の実施形態において、粒子の99%超は、約200nm以下の平均最大寸法を有する。二峰性またはそれより高い粒子サイズ分布を使用してもよい。
【0048】
無機IR吸収添加剤は、一般に、約1.2×10-6グラム/平方メートル(g/m2)から約2.0g/m2の量で使用される。一実施形態において、無機IR吸収添加剤は、約6×10-6から約1.0g/m2の量で使用してもよい。他の実施形態において、無機IR吸収添加剤は、約0.09から約0.36g/m2の量で使用してもよい。さらに他の実施形態において、無機IR吸収添加剤は、約0.18から約0.9g/m2の量で使用してもよい。
【0049】
無機IR吸収添加剤は、一般に、特定の層に対するカーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約3000ppm以下、場合によっては、約2000ppm以下、場合によっては、約1500ppm以下、場合によっては、約1250ppm以下、場合によっては、約1000ppm以下、場合によっては、約750ppm以下、他の場合では、特定の層に対するカーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約500ppm重量%以下の量で使用される。無機IR吸収添加剤は、一般に、約0.02ppm以上、場合によっては、約1ppm以上、場合によっては、約1.5ppm以上、他の場合では、約2.5ppm以上の量で使用される。
【0050】
UV吸収添加剤
組成物は、1種または複数のUV吸収添加剤をさらに備えることができる。適切なUV吸収添加剤は、シアノアクリル酸化合物、トリアジン化合物、ベンゾフェノン化合物、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチルアリールオキシ)プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−クロロベンゾフェノン等;ベンゾトリアゾール化合物、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、および2−(2−ヒドロキシ−X−tert,ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等;サリチル酸塩化合物、例えば、サリチル酸フェニル、サリチル酸カルボキシフェニル、サリチル酸p−オクチルフェニル、サリチル酸ストロンチウム、サリチル酸p−tert−ブチルフェニル、サリチル酸メチル、サリチル酸ドデシル等;ならびにレソルシノールモノベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ、3−フェニルシンナマート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−2’−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)−1−n−ブチルアミン等の他の紫外線吸収剤、または上記UV吸収添加剤の少なくとも1種を含む組合せである。商業的に入手可能なUV吸収添加剤は、CibaSpecialtyChemicalsから商業的に入手可能なTINUVINTM(商標)234、TINUVIN329、TINUVIN350およびTINUVIN360;CytecIndustriesから入手可能なCYASORB(商標)UV吸収添加剤、例えば、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール(CYASORB5411);2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB531);2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)−フェノール(CYASORB1164);2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(CYASORB UV−3638);1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニル−アクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(UVINUL(商標)3030);2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン);1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニル−アクリロイル)オキシ]メチル]プロパン;2,2’−メチレン−ビス−(6−{2H−ベンゾトリアゾール−2−イル}−4−{1,1,3,3−テトラメチルブチル}フェノール)(AdekaArgus製LA−31);または2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール(CibaGeigy製Tinuvin1577)。押出によって成形される製品のためには、BASFから商業的に入手可能なUVINUL3030が、その低い揮発性のために、特に有用である。
【0051】
1種または複数のUV吸収添加剤は、特定の層に対するカーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約15重量%以下、場合によっては、約10重量%以下、場合によっては約7.5重量%以下、他の場合では、約5重量%以下の量で独立してカーボネートポリマー組成物中で使用することができる。1種または複数のUV吸収添加剤は、特定の層に対するカーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%以上、場合によっては、約0.1重量%以上、場合によっては、約0.5重量%以上、場合によっては、約1以上、他の場合では、約2重量%以上の量で独立してカーボネートポリマー組成物中で使用することができる。
【0052】
熱安定剤
組成物は、IR光と無機赤外線遮蔽添加剤との相互作用によってもたらされた温度上昇を補償するために1種または複数の熱安定剤を含むことができる。さらに、熱安定剤の添加は溶融混合等の加工作業中に材料を保護する。通常は、無機赤外線遮蔽添加剤を含む熱可塑性ポリマーを備える製品は、光に曝されたときに約20℃までの温度上昇を経験する可能性がある。組成物への熱安定剤の添加は、長期老化特性を改善し、製品の寿命を延ばす。
【0053】
別の実施形態において、加工中に有機ポリマーの劣化を防ぎ、製品の熱安定性を改善するために、任意選択的に、熱安定剤を組成物に添加してもよい。適切な熱安定剤には、亜リン酸塩、亜ホスホン酸エステル、ホスフィン、ヒンダードアミン、ヒドロキシルアミン、フェノール、アクリロイル変性フェノール、ヒドロペルオキシド分解剤、ベンゾフラノン誘導体等、または上記の熱安定剤の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。例としては、これだけに限らないが、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト等の亜リン酸塩;アルキル化モノフェノールもしくはポリフェノール;テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタン等のポリフェノールとジエンのアルキル化反応生成物;para−クレゾールまたはジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物;アルキル化ヒドロキノン;ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル;アルキリデン−ビスフェノール;ベンジル化合物;β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸と1価または多価アルコールとのエステル;β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸と1価または多価アルコールとのエステル;チオプロピオン酸ジステアリル、チオプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジトリデシル、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ペンタエリトリチル等のチオアルキルもしくはチオアリール化合物のエステル;4,4’−ビフェニレンジ亜ホスホン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(IRGAPHOS(商標)PEPQ);β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド等、または上記の酸化防止剤の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。商業上利用可能な適切な熱安定剤は、IRGAPHOS168、DOVERPHOS(商標)S−9228、ULTRANOX(商標)641等がある。望むなら、脂肪族エポキシ、または、両方ともCiba Specialty chemicals製のIRGANOX(商標)1076、IRGANOX1010等のヒンダードフェノール酸化防止剤等の共安定剤を、組成物の熱的安定性を向上させるために、添加してもよい。好ましい熱安定剤は亜リン酸塩である。
【0054】
1種または複数の熱安定剤は、カーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約5重量%以下、場合によっては、約3重量%以下、場合によっては、約1重量%以下、場合によっては、約1重量%以下、場合によっては、約0.5重量%以下、他の場合では、約0.1重量%以下の量でカーボネートポリマー組成物中で使用することができる。1種または複数の熱安定剤は、特定の層に対するカーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%以上、場合によっては、約0.002重量%以上、場合によっては、約0.005重量%以上、他の場合では、約0.01重量%以上の量でカーボネートポリマー組成物中で使用することができる。
【0055】
酸化防止剤
本発明において使用することができる酸化防止剤の例には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が含まれる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例には、テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリチル、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジ−イル−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスファート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリ−イル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレン−ビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオナート]、ヘキサメチレン−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリ−オン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イル−アミノ)フェノール等が含まれる。これらのなかでも、テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリチルおよび3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルが特に好ましい。これらの2種のフェノール系酸化防止剤は、それぞれ、CibaSpecialityChemicalsCorp.によって生産され、「IRGANOX1010」および「IRGANOX1076」の商品名で入手可能である。
【0056】
本発明において使用される、1種または複数の酸化防止剤を使用することができる。使用することが可能なフェノール系酸化防止剤の量は、カーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約2重量%以下、場合によっては、約1重量%以下、場合によっては、約1重量%以下、場合によっては、約0.5重量%以下、場合によっては、約0.4重量%以下、他の場合では、約0.2重量%以下の量を含む。フェノール系酸化防止剤の量は、特定の層に対するカーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%以上、場合によっては、約0.05重量%以上、他の場合では、約0.1重量%以上の量で使用することができる。フェノール系酸化防止剤の含有量が0.1重量%未満である場合、酸化防止剤の効果が不十分な場合があり、フェノール系酸化防止剤の含有量が2重量%を超える場合、酸化防止剤の効果は飽和してしまう場合がある。
【0057】
帯電防止剤
用語「帯電防止剤」とは、伝導性および総合的な物理的性能を改善するために、ポリマー樹脂の中に加工することができる、および/または材料または製品上に噴霧することができる、単量体の、オリゴマーの、またはポリマーの物質をいう。単量体の帯電防止剤の例には、グリセロールモノステアラート、グリセロールジステアラート、グリセロールトリステアラート、エトキシ化アミン、第一級、第二級および第三級アミン、エトキシ化アルコール、硫酸アルキル、アルキルアリールスルファート、アルキルホスファート、アルキルアミンスルファート、スルホン酸ステアリル・ナトリウムやベンゼンスルホン酸ドデシル・ナトリウム等のアルキルスルホナート塩、第四級アンモニウム塩、第四級アンモニウム樹脂、イミダゾリン誘導体、ソルビタンエステル、エタノールアミド、ベタイン等、または上記の単量体の帯電防止剤の少なくとも1種を含む組合せが含まれる。
【0058】
例示的なポリマーの帯電防止剤には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール部分ポリアルキレン酸化物単位を含む、ある種のポリエステルアミドポリエーテル−ポリアミド(ポリエーテルアミド)ブロックコポリマー、ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマー、ポリエーテルエステル、またはポリウレタンが含まれる。そのようなポリマーの帯電防止剤は、商業的に入手可能であり、例えば、Pelestat(商標)6321(Sanyo)またはPebax(商標)MH1657(Atofina)、Irgastat(商標)P18およびP22(Ciba−Geigy)がある。帯電防止剤として使用することができる他のポリマー物質は、ポリアニリン(PanipolからPANIPOL(商標)EBの名称で商業的に入手可能)、ポリピロールおよびポリチオフェン(Bayerから商業的に入手可能)等の本質的に導電性のポリマーであり、それらは高温で溶融加工した後もそれらの真性導電率のいくらかを保持している。一実施形態において、炭素繊維、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ、カーボンブラックまたはそれらの任意の組合せを、組成物を静電気消散性にするために化学帯電防止剤を含むポリマー樹脂の中で使用してもよい。
【0059】
本明細書で使用するために適切な帯電防止剤には、スルホン酸アルキルのオニウム塩、特にペルフルオロ化スルホン酸アルキルのアルキル化およびアリール化オニウム塩が含まれる。例示的なオニウム塩は、ホスホニウム、アンモニウム、スルホニウム、イミダゾリニウム、ピリジニウム、またはトロピリウム塩である。適切な例は、ペルフルオロ化スルホン酸アルキルのアルキル化アンモニウムおよびホスホニウム塩であり、特に、アルキル化ホスホニウムスルホナートである。特に有用なホスホニウムスルホナートには、有機スルホナート陰イオンおよび有機ホスホニウム陽イオンを含むフルオロカーボンを含むことができるフッ素化ホスホニウムスルホナートが含まれる。そのような有機スルホナート陰イオンの適切な例には、これだけに限らないが、ペルフルオロメタンスルホナート、ペルフルオロブタンスルホナート、ペルフルオロヘキサンスルホナート、ペルフルオロヘプタンスルホナート、ペルフルオロオクタンスルホナート、これらの1種または複数を含む組合せ等が含まれる。上記のホスホニウム陽イオンの適切な例には、これだけに限らないが、脂肪族ホスホニウム、例えば、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチルエチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリメチルブチルホスホニウム トリメチルオクチルホスホニウム、トリメチルラウリルホスホニウム、トリメチルステアリルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、および芳香族ホスホニウム、例えば、テトラフェニルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム、トリフェニルベンジルホスホニウム、トリブチルベンジルホスホニウム、上記の1種または複数を含む組合せ等が含まれる。上記のアンモニウム陽イオンの適切な例には、これだけに限らないが、脂肪族アンモニウム、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、トリブチルエチルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルラウリルアンモニウム、トリメチルステアリルアンモニウム、トリエチルオクチルアンモニウム、および芳香族アンモニウム、例えば、テトラフェニルアンモニウム、トリフェニルメチルアンモニウム、トリフェニルベンジルアンモニウム、トリブチルベンジルアンモニウム、上記の1種または複数を含む組合せ等が含まれる。上記の帯電防止剤の少なくとも1種を含む組合せもまた、使用することができる。
【0060】
1種または複数の帯電防止剤は、特定の層に対してカーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約0.0001から約5.0重量%の量で独立して使用することができる。
【0061】
離型剤
本発明において有用な離型剤の例には、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル、200〜15000の数平均分子量を有する脂肪族炭化水素化合物、およびポリシロキサン系シリコーンオイルから選択される少なくとも1種が含まれる。
【0062】
上記の脂肪族カルボン酸の例には、飽和または不飽和脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸、およびトリカルボン酸を含むことができる。ここで、脂肪族カルボン酸はまた、脂環式カルボン酸も包含する。これらの脂肪族カルボン酸のなかでも、C6からC36モノカルボン酸またはジカルボン酸が好ましく、C6からC36脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。そのような脂肪族カルボン酸の具体例には、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、およびアゼライン酸を含むことができる。
【0063】
脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールのエステルを構成する脂肪族カルボン酸成分として、上記したのと同じ脂肪族カルボン酸を使用することができる。また、脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族アルコール成分として、飽和または不飽和の一価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を使用することができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうちでも、30個以下の炭素原子を有する飽和の一価または多価アルコールが好ましく、30個以下の炭素原子を有する多価アルコールまたは脂肪族飽和一価アルコールがより好ましい。ここで、脂肪族アルコールはまた、脂環式アルコールも包含する。アルコールの具体例には、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、ペンタエリトリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、およびジペンタエリトリトールを含むことができる。これらの脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールのエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含んでいてもよく、または複数の化合物の混合物の形態をしていてもよい。
【0064】
脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールのエステルの具体例は、蜜ろう(主成分としてパルミチン酸ミリシルを含む混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセロールモノパルミタート、グリセロールモノステアラート、グリセロールジステアラート、グリセロールトリステアラート、ペンタエリトリトールモノパルミタート、ペンタエリトリトールモノステアラート、ペンタエリトリトールジステアラート、ペンタエリトリトールトリステアラート、ペンタエリトリトールテトラステアラート等を含むことができる。
【0065】
200から15000の数平均分子量を有する脂肪族炭化水素化合物として、液体パラフィン、パラフィンろう、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュろう、C6からC12α−オレフィンオリゴマー等がある。ここで、脂肪族炭化水素化合物はまた、脂環式炭化水素化合物も包含し、脂環式炭化水素化合物も包含する。さらに、これらの炭化水素化合物は部分酸化されていてもよい。これらのうちでも、パラフィンろう、ポリエチレンワックス、およびポリエチレンワックスの部分酸化生成物が好ましく、パラフィンろうおよびポリエチレンワックスがより多く好ましい。脂肪族炭化水素化合物の数平均分子量は好ましくは200から5000である。これらの脂肪族炭化水素化合物は、単独で、または主要な構造体が上記の範囲内の特性を有する限り、様々な成分および分子量を有する2種以上の化合物の混合物として使用することができる。
【0066】
ポリシロキサン系シリコーンオイルとして、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーンオイル等がある。これらは、単独でまたは2種以上の混合物として使用することができる。
【0067】
離型剤の量は、特定の層に対するカーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約2重量%以下、場合によっては、約1重量%以下、場合によっては、約1重量%以下、場合によっては、約0.5重量%以下、場合によっては、約0.4重量%以下、他の場合では、約0.2重量%以下の量で組成物中で使用することができる。離型剤の量は、特定の層に対するカーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%以上、場合によっては、約0.05重量%以上、他の場合では、約0.1重量%以上の量で組成物中で使用することができる。これらの離型剤は、単独で、または2種以上の混合物として、使用することができる。
【0068】
染料
光学用途のポリカーボネート組成物は典型的には色補正される、すなわちそれらはポリカーボネートのいかなるわずかな色合いをも、典型的には黄色を補償するために色を調節する染料を含む。
【0069】
ポリカーボネート中で色の調節のために使用することができる染料は、原則としては、それらはポリカーボネートの加工温度で分解しないように、少なくとも300℃までの十分な高熱安定性を有するあらゆる染料である。さらに、染料は塩基性の官能基を有するべきではなく、それは、ポリカーボネートのポリマー鎖の劣化をもたらす。
【0070】
適切な染料には、次の種類の染料、つまり、アンタントロン、アントラキノン、ベンゾイミダゾール、ジケトピロロピロール、イソインドリノール、ペリノン、ペリレン、フタロシアニン、キナクリドン、およびキノフタロンが含まれる。
【0071】
本発明において使用する適切な染料は、有機物質であり、例えば、クマリン460(ブルー)、クマリン6(グリーン)、ナイルレッド等のクマリン染料;ランタニド錯体;炭化水素および置換炭化水素染料;多環式芳香族炭化水素染料;オキサゾールまたはオキサジアゾールの染料等のシンチレーション染料;アリール−またはヘテロアリール−置換ポリ(C2-8)オレフィン染料;カルボシアニン染料;インダントロン染料;フタロシアニン染料;オキサジン染料;カルボスチリル染料;ナフタレンテトラカルボン酸染料;ポルフィリン染料;ビス(スチリル)ビフェニル染料;アクリジン染料;アントラキノン染料;シアニン染料;メチン染料;アリールメタン染料;アゾ染料;インジゴイド染料、チオインジゴイド染料、ジアゾニウム染料;ニトロ染料;キノンイミン染料;アミノケトン染料;テトラゾリウム染料;チアゾール染料;ペリレン染料、ペリノン染料;ビス−ベンゾオキサゾリルチオフェン(BBOT);トリアリールメタン染料;キサンテン染料;チオキサンテン染料;ナフタルイミド染料;ラクトン染料;近赤外線波長を吸収し、可視光線波長を放射する反ストークスシフト染料等の蛍光物質;7−アミノ−4−メチルクマリン等の発光染料;3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン;2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール;2,5−ビス(4−ビフェニリル)−オキサゾール;2,2’−ジメチル−p−クアテルフェニル;2,2−ジメチル−p−テルフェニル;3,5,3””,5””−テトラ−t−ブチル−p−キンクエフェニル;2,5−ジフェニルフラン;2,5−ジフェニルオキサゾール;4,4’−ジフェニルスチルベン;4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン;1,1’−ジエチル−2,2’−カルボシアニンヨージド;3,3’−ジエチル−4,4’,5,5’−ジベンゾチアトリカルボシアニンヨージド;7−ジメチルアミノ−1−メチル−4−メトキシ−8−アザキノロン−2;7−ジメチルアミノ−4−メチルキノロン−2;2−(4−(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−3−エチルベンゾチアゾリウム・ペルクロラート;3−ジエチルアミノ−7−ジエチルイミノフェノキサゾニウム・ペルクロラート;2−(1−ナフチル)−5−フェニルオキサゾール;2,2’−p−フェニレン−ビス(5−フェニルオキサゾール);ローダミン700;ローダミン800;ピレン;クリセン;ルブレン;コロネン等、または上記の染料の少なくとも1種を含む組合せを含むことができる。
【0072】
Lanxess製MACROLEX(商標)染料は、ポリカーボネートを着色するのに非常に適切に使用することができる。多数の様々な染料がこの生産ラインから入手可能であり、例えば、メチン染料MACROLEX Yellow 6G Gran、アゾ染料MACROLEX Yellow 4G、ピラゾロン染料MACROLEX Yellow 3G Gran、キノフタロン染料MACROLEX Yellow G Gran、ペリノン染料MACROLEX Orange 3G Gran、メチン染料MACROLEX Orange R Gran、ペリノン染料MACROLEX Red E2G GranおよびMACROLEX Red EG Gran、ならびにアントラキノン染料MACROLEX Red G Gran、MACROLEX Red 5B Gran、MACROLEX Red Violet R Gran、MACROLEX Violet B Gran、MACROLEX Blue 3R Gran、MACROLEX Blue 2B Gran、MACROLEX Green 5B GranおよびMACROLEX Green G Granが入手可能である。
【0073】
国際公開第99/13007号には、さらに、例えば、ポリカーボネートを染色するために適切なインディゴ誘導体が記載されている。
【0074】
独国特許第19747395号明細書には、例えば、ポリマー、とりわけポリカーボネートに可溶な染料として使用することができるベンゾ(de)イソキノリノベンゾ(1,2−d:4,5−d’)ジイミダゾール−2,12−ジオンが記載されている。
【0075】
適切な染料は、色がバイオレットおよび/またはブルーであるか、または本発明のカーボネートポリマー組成物中でバイオレットおよび/またはブルーを生ずるものであり、例えば、Macrolex Violet 3R Gran(これはバイオレット染料であり、Solvent Violet 36と呼ばれる場合もある)、およびアントラキノン染料であるMacrolex Blue RR Gran(これはブルー染料であり、Solvent Blue 97と呼ばれる場合もある)として入手可能な1,4−ビス[(2,6−ジエチル−4−メチルフェニル)アミノ]−9,10−アントラセンジオンである。そのようなバイオレット染料とブルー染料は、25:75から75:25の比で組み合わせて使用することができる。
【0076】
1種または複数の染料を独立にまたは組み合わせて使用することができ、各染料は、特定の層に対してカーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約1ppm以上、場合によっては、約10ppm以上、場合によっては、約25ppm以上、他の場合では、約50ppm以上の量で独立して存在する。1種または複数の染料を独立にまたは組み合わせて使用することができ、各染料は、特定の層に対してカーボネートポリマー組成物の全重量に基づいて、約10,000ppm以下、場合によっては、約5,000ppm以下、場合によっては、約1,000ppm以下、場合によっては、約750ppm以下、他の場合では、約500ppm以下の量で独立して存在する。
他の添加剤
【0077】
上記下添加剤に加えて、透明なポリカーボネート組成物中で典型的に使用される他の添加剤も用いることができる。例えば、難燃剤、蛍光増白剤、ブロッキング防止剤、潤滑剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス等。例えば、組成物を透明にしておく難燃剤添加剤は1つまたは複数の層の組成物中で使用することができる。好ましい難燃剤添加剤は、シリコーン系難燃剤、リン系難燃剤、20重量%以内の含有量の臭素化ビス−Aオリゴマー(例えば、CHEMTURAから入手可能なBC−52)等の臭素化難燃剤、1500ppm以内のC4チャー形成形塩(C4 charring salts)(Lanxessから入手可能なペルフルオロブタンスルホン酸カリウム)、1.0重量%以内のKSS(ジフェニルスルホン−3−スルホン酸、カリウム塩、Seal Sandsから入手可能)の、単独または組合せである。UV安定剤が存在する場合に使用することができる他の添加剤は、蛍光増白剤である。例えば、CIBAからUVITEX(商標)OBとして入手可能な2,2’−(2,5−チオフェンジイル)ビス[5−tert−ブチルベンゾオキサゾール]、EASTMANからEASTOBRITE(商標)OB−1として入手可能な2,2’−(1,2−エテンジイルジ−4,1−フェニレン)ビスベンゾオキサゾール、CLARIANTからHOSTALUX KS−Nとして入手可能な2−[4−[4−(2−ベンゾオキサゾリル)スチリル]フェニル]−5−メチルベンゾオキサゾール。蛍光増白剤は、典型的には、1から10000ppm、場合によっては、2から1000ppm、他の場合では、5から500ppmの量で使用される。
【0078】
本発明の多壁シート構造体は、異形押し出しダイを介した押出によって製造される。波形表面は、例えば、波形キャリブレータユニットを使用することによって、またはエンボスローラを使用することによりシートをポストエンボスする(post embossing)ことによって、押出処理中に本発明の多壁シート構造体上に生成することができる。あるいは、波形フィルムは、多壁シートの1つまたは複数の壁の1つまたは複数の表面上に積層する、または共押出成形することができる。
【0079】
例えば、1種または複数の添加剤(すなわち、IR吸収添加剤、UV吸収添加剤、離型剤、酸化防止剤、熱安定剤、染料、他の添加剤等)は、カーボネートポリマーの重合段階において、もしくはカーボネートポリマーの重合の終わりに混合してもよいし、または、添加剤は、混練工程において、カーボネートポリマーの溶融状態下で混合してもよいし、または、添加剤は、(通常、粉末、ペレット、またはフレーク状の)固体状態のカーボネートポリマーと(特定の添加剤に応じて固体または液体のいずれかの形で)、(ミキサまたは他の手段で)混合され(時にはドライブレンドされるという。)、混合物は、溶融され、そして押出成形機(単軸および二軸スクリュー)、往復式混練機(Buss−kneader)、ヘリコーン(helicones)、WARING BLENDER(商標)、HENSCHEL(商標)ミキサ、BANBURY(商標)ミキサ、ロールミル等を使用して混練され、そして、製品、例えば(多層)押出成形されたシート、(多層)押出成形された構造体シートに直接変換されるか、またはペレットに粉砕された後に製品、例えば(多層)押出成形されたシートに変換されるかのいずれかである。
【0080】
あるいは、各カーボネートポリマー層組成物のための添加剤はマスターバッチの中に混合されてもよい。マスターバッチは、多層構造体を製造するためのカーボネート系ポリマーと共に使用するために製造することができる。本明細書で使用される場合、用語「マスターバッチ」とは、担体樹脂中に粒子を拡散させたものをいい、典型的には混合/押出プロセス等の混合プロセスを使用して形成されたペレットまたはビーズの形をしている。マスターバッチの製造は、担体樹脂、および例えばIR吸収添加剤、UV吸収添加剤、酸化防止剤、離型剤、染料、熱安定剤等の1種または複数の所望の追加成分を含む混合物またはドライブレンドを溶融混合することを含む。一実施形態において、担体樹脂はポリカーボネート樹脂である。マスターバッチは、カーボネートポリマー層組成物を形成するために、カーボネート系ポリマーおよび他の添加剤と溶融混合することができる。一実施形態において、ベースポリマーは、ポリカーボネート樹脂である。他の実施形態において、ベースポリマーは、マスターバッチを製造するために使用した担体樹脂と同一である。マスターバッチは、ミキサを使用して、上記のベースポリマーと結合され、押出成形されることができる。一実施形態において、マスターバッチとベースポリマーは押出成形機の供給口でホッパーの中で結合される。他の実施形態において、ベースポリマーは押出成形機の供給口でホッパーに加えられ、マスターバッチは押出成形機の下流の供給口に加えられる。
【0081】
カーボネートポリマー層組成物から多層シート構造体を生成するためのプロセスの1つは、カーボネートポリマーと、カーボネートポリマーペレットならびに固体/液体状態の形態の添加剤を使用した所望の添加剤との混合物もしくはドライブレンドを独立して生成し、次いで、複数の層の組成物を多層シート等の多層製品に共押出成形することである。これら混合物もしくはドライブレンドは、共押出成形の前にペレット/添加剤の物理的に溶融混合された混合物として生成および分離することができるか、または、混合物は、例えば、(投与機械もしくは供給装置を介して)押出成形機の供給口で供給ホッパー内に成分を計量しながら供給することによって、さらに、混合物を分離しない場合は、混合物を直接、多層製品に共押出することによって、本来の位置で生成することができ、分離しないこともできる。
【0082】
多層フィルム、多層シートまたは1枚または複数のフィルムと1枚または複数のシートとの組合せは、一般に、押出、次いでロールミルまたはロールスタックでフィルムまたはシートを積層することによって製造することができる(これは固体フィルム/シートの場合であり、構造的なシートの場合は、押出の後に、相対する対のキャリブレーションプレートを通すキャリブレーションが続く)。多層フィルムまたは多層シートの識別された層の押出は、単軸スクリュー押出成形機または二軸スクリュー押出成形機で行うことができる。単軸または二軸スクリュー押出成形機で層を押し出し、ロールミルで層を積層することが望ましい。単軸スクリュー押出成形機または二軸スクリュー押出成形機で層を共押出する方がより望ましい。共押出装置は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の層を有する多層製品を同時に共押出することができる。あるいは、2つ以上の層を有する多層製品を共押出しし、前記多層製品に、例えば、ロールミルでさらに1つまたは複数の層を積層してもよい。ロールミルは、要望に応じて、2ロールミル、3ロールミル、4ロールミルのいずれでもよい。相対する対のキャリブレーションプレートは、1対、2対、または3対からなることができる。所望により、層は、多層フィルムまたはシートの製造用の単軸スクリュー押出成形機を使用して、共押出することができる。
【0083】
本発明の多層製品を製造する1つの方法において、多層製品の層は共押出される(すなわち、多層共押出によって製造される)。一実施形態において、多層のシートの共押出の1つの方法においては、様々な押出成形機からの溶融物流れ(押出物)は、様々な溶融流れが押出型に入る前に組み合わせられる供給原料ブロック押出型の中に供給される。他の実施形態において、様々な押出成形機からの溶融物流れは、多重多岐管内部組合せ押出型の中に供給される。異なる溶融物流れは、別々に押出型に入り、ちょうど最後の押出型オリフィスの内部で合流する。さらに他の実施形態においては、様々な押出成形機からの溶融物流れは、多重多岐管外部組合せ押出型の中に供給される。外部組合せ押出型は、異なる溶融物流れのための完全に分離した多岐管を有するとともに、流れが別々に押出型から出るときに通る別個のオリフィスを有し、流れは押出型出口を出た直後に合流する。層は、まだ溶融している間に、そして押出型のすぐ下流で、組み合わせられる。多層シートの製造に使用される例示的な押出型は、供給原料ブロック押出型である。例示的な実施形態において、多層シートのそれぞれの層の共押出に使用される押出成形機は、それぞれ単軸スクリュー押出成形機である。望むならば、共押出されたシートは、ロールミルで任意選択的にカレンダー処理されてもよい。
【0084】
上記した押出方法において、プロセスのライン速度は約0.5m/min以上、場合によっては、約1m/min以上、場合によっては、2m/min以上、場合によっては、2.5m/min以上とするべきである。ライン速度は、約5m/min以下、場合によっては、約4m/min未満、場合によっては、約3m/min未満とするべきである。
【0085】
上記した押出方法において、押出型の温度は、245℃以上、場合によっては、約255℃超、場合によっては、約265℃超とするべきである。押出型の温度は、約300度以下、場合によっては、約290℃未満、場合によっては、約280℃未満とするべきである。
【実施例】
【0086】
XZR−993と呼ばれるポリカーボネートは、0.64wt%THPEを使用して、本発明により製造され、分子量37,000、260℃、せん断速度0.1s-1での溶融粘度14,800Pa・s、および260℃での溶融粘度比6.4を有するポリカーボネートをもたらす。ポリカーボネートXZR−993の溶融粘度比は、本発明の一部ではない、以下の市販されているポリカーボネートと比較される。結果は表1に示し、図3にグラフを示す。
【0087】
【表1】
【0088】
多壁シートを作るための、上記したXZR−993の適合性を検討した。XZR−993は、ライン速度0.9m/minで溶融温度260℃を用いて、Bexsol押出型を有する150mmOmipa押出成形機で押出成形し、押出型は、総厚55mm、面積重量5kg/m2を有する垂直リブを有する10壁シートを製造した。得られた生成物は、いかなるたわみも示さず、リブは垂直(すなわち、真っ直ぐ)であり、シート構造体は対称的であった。
【0089】
2つの市販されているポリカーボネート、50%Calibre603−3および503−5の混合物が、0.2wt%THPEを用いて製造され、分子量31,500、260℃、せん断速度0.1s-1での溶融粘度4,800Pa・s、および溶融粘度比2.5を有するポリカーボネートを得た。このポリカーボネートは、上記のXZR−993と同一条件下で押出成形した。しかしながら、このポリカーボネートは完全に崩壊し、存続可能なシート構造体を製造しなかった。
【0090】
市販されているポリカーボネート、Calibre603−3は、0.4wt%THPE、分子量33,500、260℃、せん断速度0.1s-1での溶融粘度6,500Pa・s、溶融粘度比3.7を有して製造された。このポリカーボネートは、上記のXZR−993と同一条件下で押出成形した。603−3は、シート構造体のたわみ、垂直ではないリブ、およびシート構造体が対称的ではない等のダイアモンド形状壁を呈した。このシート構造体は、商業用途には適切ではなかった。
【0091】
本発明はいくつかの形態で開示してきたが、続く特許請求の範囲に述べられるような本発明とその等価物との精神および範囲から逸脱せずに、そこに多くの修正、追加および削除をなすことができることは、当業者には明らかであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3