特許第5934229号(P5934229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノバルティス アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許5934229-眼血管疾患の処置のための投与計画 図000008
  • 特許5934229-眼血管疾患の処置のための投与計画 図000009
  • 特許5934229-眼血管疾患の処置のための投与計画 図000010
  • 特許5934229-眼血管疾患の処置のための投与計画 図000011
  • 特許5934229-眼血管疾患の処置のための投与計画 図000012
  • 特許5934229-眼血管疾患の処置のための投与計画 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934229
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】眼血管疾患の処置のための投与計画
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20160602BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20160602BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20160602BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20160602BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   A61K31/506ZMD
   A61K31/519
   A61K31/505
   A61K31/4709
   A61P27/02
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-535408(P2013-535408)
(86)(22)【出願日】2011年10月25日
(65)【公表番号】特表2013-540791(P2013-540791A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2011068682
(87)【国際公開番号】WO2012055884
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年10月20日
(31)【優先権主張番号】61/407,218
(32)【優先日】2010年10月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル・ブリゲル
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・エント
(72)【発明者】
【氏名】ビナヤク・ホサグラハラ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・ジャッフェ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・メレディス
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ニュートン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・プア
(72)【発明者】
【氏名】ユービン・チウ
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/066684(WO,A1)
【文献】 WIEGAND S. J.,VEGF TRAP BOTH PREVENTS EXPERIMENTAL CHOROIDAL NEOVASCULARIZATION AND CAUSES REGRESSION 以下備考,INVESTIGATIVE OPHTHALMOLOGY & VISUAL SCIENCE,2005年,V 46 N SUPPL.S,P1411,OF ESTABLISHED LESIONS IN NON-HUMAN PRIMATES
【文献】 Drugs,2008年,Vol.68,No.8,p.1029-36
【文献】 BENJAMIN P. NICHOLSON,A REVIEW OF CLINICAL TRIALS OF ANTI-VEGF AGENTS FOR DIABETIC RETINOPATHY,GRAEFE'S ARCHIVE FOR CLINICAL AND EXPERIMENTAL OPHTHALMOLOGY,ドイツ,SPRINGER,2010年 2月20日,V248 N7,P915-930
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 45/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼血管疾患の治療に使用するための経口医薬組成物であって、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGF−R2)阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含み、ここで、当該組成物が、連続的な投与は少なくとも5日間あけて行われる処方計画で使用され;そして前記VEGF−R2阻害剤が
5−[[4−[(2,3−ジメチル−2H−インダゾール−6−イル)メチルアミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−2−メチルベンゾルスルホンアミド;
5−((S)−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミド;
6−(6−アミノ−ピリミジン−4−イルオキシ)−ナフタレン−1−カルボン酸(3−トリフルオロメチル−フェニル)−アミド;
(−)−5−((S)−7−アセチル−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸(5−シクロプロピル−イソキサゾール−3−イル)−アミド;
5−(5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミド;
1−(2−クロロ−4−((6,7−ジメトキシキノリン−4−イル)オキシ)フェニル)−3−(5−メチルイソキサゾール−3−イル)ウレア;および
6−(6−ヒドロキシメチル−ピリミジン−4−イルオキシ)−ナフタレン−1−カルボン酸(3−トリフルオロメチル−フェニル)−アミド、
からなる群から選ばれるか、またはそれらの薬学的に許容される塩である、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記VEGF−R2阻害剤が、
5−[[4−[(2,3−ジメチル−2H−インダゾール−6−イル)メチルアミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−2−メチルベンゾルスルホンアミド;
5−((S)−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミド;及び
1−(2−クロロ−4−((6,7−ジメトキシキノリン−4−イル)オキシ)フェニル)−3−(5−メチルイソキサゾール−3−イル)ウレア
からなる群から選ばれるか、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
眼血管疾患が加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞、糖尿病網膜症、黄斑浮腫または糖尿病性黄斑浮腫である請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
連続的な投与が6、7、8または9日間あけて行われる請求項1〜のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
連続的な投与が7日間あけて行われる請求項1〜のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
VEGF−R2阻害剤が5−((S)−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミドまたはその薬学的に許容される塩である請求項1〜のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
VEGF−R2阻害剤が1−(2−クロロ−4−((6,7−ジメトキシキノリン−4−イル)オキシ)フェニル)−3−(5−メチルイソキサゾール−3−イル)ウレアまたはその薬学的に許容される塩である請求項1〜のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
VEGF−R2阻害剤が5−[[4−[(2,3−ジメチル−2H−インダゾール−6−イル)メチルアミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−2−メチルベンゾルスルホンアミドまたはその薬学的に許容される塩である請求項1〜のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼疾患の処置における血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGF−R2)阻害剤の使用に関する。より具体的には、本発明は眼血管疾患の処置において特定のVEGF−R2阻害剤を間欠投与して用いることに関する。本明細書に記載されている特定の投与計画では、VEGF−R2阻害剤は5日ごとに一度、もしくはより低い頻度、5日〜21日ごとに一度または6、7または8日ごとに一度の割合で投与される。
【背景技術】
【0002】
VEGF−R2は特定の腫瘍学および眼科学的な適応症を含む種々の増殖性および血管新生疾患処置のための標的として認識されてきた。具体的にはソラフェニブ(Bayer、4−[4−[[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイルアミノ]フェノキシ]−N−メチル−ピリジン−2−カルボキサミド)、パゾパニブ(Glaxo Smith−Kline、5−[[4−[(2,3−ジメチル−2H−インダゾール−6−イル)メチルアミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−2−メチルベンゾルスルホンアミド)、およびチボザニブ(Aveo Pharmaceuticals、1−(2−クロロ−4−((6,7−ジメトキシキノリン−4−イル)オキシ)フェニル)−3−(5−メチルイソキサゾール−3−イル)ウレア)が種々の腫瘍学的な適応症の処置について登録または臨床開発が進行している。
【0003】
ソラフェニブは経口で3人の血管新生成人黄斑変性症(AMD)の患者に単独またはベバシズマブの硝子体内投与と組み合わせて、連日または週に3回投与されてきたが、これは処置を受けた患者の数が少ないことおよび患者によっては疾患が治療なしで衰微し得ることから明確な効果は得られていない。参照:非特許文献1および非特許文献2
【0004】
VEGF−R2阻害剤を眼疾患の処置に使用することは全身毒性の懸念および眼性血管疾患の処置に必要な投与期間が長いという課題を抱えていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T.Diago,et.al.,Mayo Clin.Proc.2008;83*2):231−234
【非特許文献2】M.Kernt,et.al.,Acta Ophthamologica,2008(86)456−458
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は間欠的な処方計画および該処方計画を用いた眼血管疾患の処置または予防方法を提供するものであり、処方計画では治療の必要な患者はVEGF−R2阻害剤を5日間ごとに一度またはより低い頻度で投与される。好ましい処方計画はVEGF−R2阻害剤が5〜21日間ごとに一度、5〜14日間ごとに一度、6〜10日間ごとに一度、6、7または8日間ごとに一度または7日間ごとに一度投与される計画を含む。本発明の間欠的な処方計画は等用量のVEGF−R2阻害剤を連日投与するのに匹敵する有効性をもたらし、また連日投与と比較して、全身の安全性に対する障害の軽減も提供する。より具体的には、本発明により提供される処方計画は、眼組織内でのVEGF−R2阻害剤の連続した投与の間の期間におけるVEGF−R2阻害剤の濃度維持および、患者の血漿からのVEGF−R2阻害剤の急速な排出を示す。頻繁でない投与、血漿からの急速な排出および眼内への曝露が維持されることの組み合わせは実質的な有効性をもたらしながら、投与される薬の安全性を増大させる。
【0007】
特定の局面では、本発明は治療有効量の血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGF−R2)阻害剤を投与することで眼血管疾患を処置する治療方法であり、投与頻度は5日間ごとに一度またはそれより低い頻度、またはより好ましくは5〜21日間に一度に投与される、方法を提供する。投与頻度が減少することにより化合物の全身への曝露は血漿濃度で計測されるように減少する一方、眼内濃度は上昇したまま維持される。
【0008】
本明細書で提供される処置方法への使用に適した、特定の望ましいVEGF−R2阻害剤は一週間に一度投与された場合に有効性を与えるVEGF−R2阻害剤を含む。眼への曝露の上昇および急速な血漿排出をもたらすような化合物は本発明の方法での使用に適している。特定の局面では、本発明での使用に適した化合物はラットのレーザー誘発脈絡膜血管新生(CNV)モデルでのVEGF−R2阻害剤のスクリーニングおよびプラシーボに対して少なくとも約40%CNVのサイズを減少させる、それらの化合物の選択によって特定され得る。特に適した化合物はまたラットレーザー誘発CNVアッセイにおいて血漿から急速に排出される。急速な排出とは(1)投与48時間後にCmax10%以下の血漿濃度であること、または(2)投与72時間後に10nM以下の血漿濃度であることのいずれかとして定義される。
【0009】
一局面では、本発明は5〜21日間ごとに一度、5〜14日間ごとに一度、6〜10日間ごとに一度、6、7または8日間ごとに一度、または7日間ごとに一度患者に投与するのに適した経口医薬の製造に用いるための、VEGF−R2阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。当該医薬は眼血管疾患、例えば加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞、および他の以下に開示する眼の適応症の処置に用いるのに適している。
【0010】
本発明の医薬はまた黒色腫の処置に用いるのに適当であり得る。より具体的には、本発明の医薬は皮膚性、眼性または転移性の黒色腫の処置に用いられるのに適当であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1はラットCNVモデルにおいて化合物2の連日経口投与に対するパーセント阻害をプロットしたものである。
図2図2は実施例1、2、および3のCNVモデルでラットに異なった投与間隔で投与された2つの用量の化合物2の阻害の棒グラフである。
図3図3は0時間の時点で30mg/kgの量を1回経口投与されたBrown Norway(BN)ラットの血漿、網膜および後部眼杯における化合物1の濃度を時間でプロットしたものである。
図4図4は0時間の時点で10mg/kgの量を1回経口投与されたBNラットの血漿、網膜および後部眼杯における化合物2の濃度を時間でプロットしたものである。
図5図5は0時間の時点で0.3mg/kgの量を1回経口投与されたBNラットの血漿、網膜および後部眼杯における化合物6の濃度を時間でプロットしたものである。
図6図6は0時間の時点で10mg/kgの量を1回経口投与されたBNラットの血漿、網膜および後部眼杯における化合物9の濃度を時間でプロットしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は連日よりも少ない処方計画のもとでVEGF−R2阻害剤を患者に投与することで安全かつ効果的に眼血管疾患を処置するための特定の処方計画に関する。より具体的には、本発明は5日間ごとに一度またはより低い頻度、5〜21日間ごとに一度、5〜14日間ごとに一度、6〜10日間ごとに一度、または6、7あるいは8日間ごとに一度VEGF−R2阻害剤が投与される処方計画に関する。驚くべきことに出願人は眼への曝露上昇の維持および全身の急速な排出を示す特定のVEGF−R2阻害剤が、本明細書に示される、一週間に一度の処方計画を含む本発明の頻繁でない処方計画において使用するのに特に適していることを発見した。選択的に眼への曝露上昇の維持を示すVEGF−R2阻害剤は治療法および、それを必要としている患者に高くない頻度で投与されるような医薬を可能にする。
【0013】
第一の局面では、本発明は眼性血管疾患に苦しむまたは罹患しやすい患者を処置する方法であって、そのような処置を必要としている患者に血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGF−R2)阻害剤またはその薬学的に許容される塩を複数の用量で投与することを含み、
(a)連続した投与は少なくとも5日間はあけて行われる;および
(b)VEGF−R2阻害剤はレーザー誘発血管新生モデルにおいて上記(a)で示された投与頻度で等用量でラットに投与される場合、血管新生領域をプラシーボ対照に対して少なくとも約40%減少させ、かつ投与72時間後のラットにおいて約10nM以下の血漿濃度を示す、
方法を提供する。
【0014】
第二の局面において、本発明は眼性血管疾患に苦しむまたは罹患しやすい患者を処置する方法であって、そのような処置を必要としている患者に血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGF−R2)阻害剤またはその薬学的に許容される塩を複数の用量で投与することを含み、
(a)連続した投与は少なくとも5日間はあけて投与される;および
(b)VEGF−R2阻害剤は、レーザー誘発血管新生モデルにおいて上記(a)で示された投与頻度で等用量でラットに投与される場合、血管新生領域をプラシーボ対照に対して少なくとも約40%減少させ、かつ投与から1〜5日間後の計測時に、ラットにおいて血漿への曝露の少なくとも5倍の後部眼杯への曝露を示す、
方法を提供する。
【0015】
第三の局面において、本発明は眼性血管疾患に苦しむまたは罹患しやすい患者を処置する方法であって、そのような処置を必要としている患者に血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGF−R2)阻害剤またはその薬学的に許容される塩を複数の用量で投与することを含み、連続した投与が少なくとも5日間あけて行われ、かつVEGF−R2阻害剤が
5−[[4−[(2,3−ジメチル−2H−インダゾール−6−イル)メチルアミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−2−メチルベンゾルスルホンアミド(パゾパニブ)、
5−((S)−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミド;
6−(6−アミノ−ピリミジン−4−イルオキシ)−ナフタレン−1−カルボン酸(3−トリフルオロメチル−フェニル)−アミド;
(−)−5−((S)−7−アセチル−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸(5−シクロプロピル−イソキサゾール−3−イル)−アミド;
5−(5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミド、1−(2−クロロ−4−((6,7−ジメトキシキノリン−4−イル)オキシ)フェニル)−3−(5−メチルイソキサゾール−3−イル)ウレア(チボザニブ);および6−(6−ヒドロキシメチル−ピリミジン−4−イルオキシ)−ナフタレン−1−カルボン酸(3−トリフルオロメチル−フェニル)−アミド、
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される、
方法を提供する。
【0016】
第四の局面において、本発明は眼血管疾患の処置において使用される経口医薬の製造のための血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGF−R2)阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、該医薬は
(a)連続した投与は少なくとも5日間はあけて行われる;かつ
(b)VEGF−R2阻害剤はレーザー誘発血管新生モデルにおいて上記(a)で示された投与頻度で等用量でラットに投与される場合、血管新生領域をプラシーボ対照に対して少なくとも約40%減少させかつ投与後72時間でラットにおいて約10nM以下の血漿濃度を示す、
投与計画での使用に適する、使用を提供する。
【0017】
第五の局面において、本発明は眼血管疾患の処置において使用される経口医薬の製造のための血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGF−R2)阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、該医薬は
(a)連続した投与は少なくとも5日間はあけて行われる;かつ
(b)VEGF−R2阻害剤はレーザー誘発血管新生モデルにおいて上記(a)で示された投与頻度で等用量でラットに投与される場合、血管新生領域をプラシーボ対照に対して少なくとも約40%減少させかつ投与から1〜5日間後の計測時に、ラットにおいて血漿への曝露の少なくとも5倍の後部眼杯への曝露を示す、
投与計画での使用に適する、使用を提供する。
【0018】
第六の局面において、本発明は眼血管疾患の処置において使用される経口医薬の製造のための血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGF−R2)阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用であって、該医薬は連続した投与が少なくとも5日間はあけて行われる投与計画での使用に適当であり、VEGF−R2阻害剤は
5−[[4−[(2,3−ジメチル−2H−インダゾール−6−イル)メチルアミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−2−メチルベンゾルスルホンアミド(パゾパニブ)、5−((S)−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミド;
6−(6−アミノ−ピリミジン−4−イルオキシ)−ナフタレン−1−カルボン酸(3−トリフルオロメチル−フェニル)−アミド;
(−)−5−((S)−7−アセチル−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸(5−シクロプロピル−イソキサゾール−3−イル)−アミド;
5−(5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミド、1−(2−クロロ−4−((6,7−ジメトキシキノリン−4−イル)オキシ)フェニル)−3−(5−メチルイソキサゾール−3−イル)ウレア(チボザニブ);および6−(6−ヒドロキシメチル−ピリミジン−4−イルオキシ)−ナフタレン−1−カルボン酸(3−トリフルオロメチル−フェニル)−アミド
またはその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される、使用を提供する。
【0019】
本発明の第一、第二、第三、第四、第五または第六の局面のいずれかの方法または使用において、眼血管疾患は加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞、糖尿病網膜症、黄斑浮腫、または糖尿病性黄斑浮腫である。
【0020】
本発明の第一、第二、第三、第四、第五または第六の局面のいずれかの方法または使用において、連続した投与は6、7、8または9日間あけて行われる。特定の態様では、連続した投与は7日間あけて行われる。
【0021】
本発明の第一、第二、第三、第四、第五または第六の局面のいずれかの方法または使用において、患者はヒトである。
【0022】
本発明の方法における使用に適当であり得る特定の化合物はWO2010/066684およびWO2006/059234において開示された化合物を含み、これらは各々言及することにより本明細書に包含される。一週間に一度の治療において有効な、出願‘684および‘234の特定の望ましい化合物はWO2010/066684の実施例54−B、54−Q、57−S、135−A、137−N、および137−Oの化合物およびWO2006/059234の実施例26および52の化合物を含む。本発明の一週間に一度の投与方法での使用に適当である、特定の他の化合物はパゾパニブ(WO2007/064753)、チボザニブ(WO2002/088110)を含む。特定の態様では、VEGF−R2阻害剤は5−((S)−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミド(すなわち、WO2010/066684の実施例54−B)、パゾパニブ、およびチボザニブ、またはその薬学的に許容される塩から選択される。
【0023】
特定の態様において、VEGF−R2阻害剤は5−((S)−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミドまたはその薬学的に許容される塩であり、またはVEGF−R2阻害剤は1−(2−クロロ−4−((6,7−ジメトキシキノリン−4−イル)オキシ)フェニル)−3−(5−メチルイソキサゾール−3−イル)ウレアまたはその薬学的に許容される塩であり、またはVEGF−R2阻害剤は5−[[4−[(2,3−ジメチル−2H−インダゾール−6−イル)メチルアミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−2−メチルベンゾルスルホンアミドまたはその薬学的に許容される塩である。
【0024】
5−((S)−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミドおよび1−(2−クロロ−4−((6,7−ジメトキシキノリン−4−イル)オキシ)フェニル)−3−(5−メチルイソキサゾール−3−イル)ウレアまたはその薬学的に許容される塩は特に本発明の方法および使用において用いるのに適当である。
【0025】
周期が連日よりも少ない周期的なVEGF−R2阻害剤の経口投与、例えば4日間ごとに一度、5日間ごとに一度、6日間ごとに一度の投与、週ごとの投与または隔週ごとの投与、は加齢黄斑変性症を含む眼血管疾患に対して効果を示すが、連日投与と比較して全身、例えば、血漿での化合物への曝露を軽減させる。理論に束縛されるものではないが、全身への曝露の減少はVEGF−R2阻害剤の経口投与に関連する全身性の副作用を軽減させることが予期される。例えば6または7日間ごとに経口投与される化合物2は連日投与、2日間ごとに投与、または4日ごとに投与される化合物2と比較して向上した安全性プロファイルを有する。下記の実施例6〜9を参照のこと。
【0026】
本発明はまたVEGF−R2阻害剤を毎週投与することを含む、患者の眼血管疾患を処置または予防する方法であり、週ごとの用量は約0.1mg〜約800mgの間、またはより好ましくは0.5〜500mgの間である、方法を含む。好ましい週ごとの用量は、投与される具体的なVEGF−R2阻害剤および患者の大きさに依存して変わりうる。特定の態様においては、週ごとで効果的なパゾパニブのヒトの用量は約5mg〜約800mgの間、または好ましくは約30mg〜約400mgの間であり、およびチボザニブのヒトの週ごとの用量は約0.1mg〜約5mgの間、または好ましくは約0.5mg〜約2mgの間である。他の態様においては、5−((S)−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミドまたは5−(5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸[5−(1−メチル−シクロプロピル)−2H−ピラゾール−3−イル]−アミドの有効な週ごとのヒトの用量は約30mg〜約300mgの間、または好ましくは約50mg〜約200mgの間である。他の態様においては、6−(6−アミノ−ピリミジン−4−イルオキシ)−ナフタレン−1−カルボン酸(3−トリフルオロメチル−フェニル)−アミド、5−(6−メチルアミノメチル−ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸(1−メチル−5−トリフルオロメチル−1H−ピラゾール−3−イル)−アミドまたは5−(6−メチルアミノメチル−ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸(5−シクロプロピル−1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−アミドの有効な週ごとのヒトの用量は約5mg〜約100mgの間である。他の態様においては、6−(6−ヒドロキシメチル−ピリミジン−4−イルオキシ)−ナフタレン−1−カルボン酸(3−トリフルオロメチル−フェニル)−アミドまたは5−(6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸(5−シクロプロピル−イソキサゾール−3−イル)−アミドの週ごとで有効なヒトの用量は約1mg〜約50mgの間である。他の態様では、(−)−5−((S)−7−アセチル−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−イルオキシ)−インドール−1−カルボン酸(5−シクロプロピル−イソキサゾール−3−イル)−アミドの週ごとで有効なヒトの用量は約0.1mg〜約5mgの間である。
【0027】
本明細書で使用する用語「眼血管疾患」は、異常または過剰な血管またはリンパ管に関連する脈絡膜、強膜、網膜または関連組織の眼疾患を意味することを意図している。本発明の方法によって処置または予防され得る特定の眼血管疾患は、血管新生および萎縮型加齢黄斑変性症、地図状萎縮、中心性漿液性網膜症、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病網膜症、増殖性糖尿病網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、光彩血管新生、未熟児の網膜症、中心または分枝網膜静脈閉塞、炎症性/感染性の網膜の血管新生/浮腫(例えば後部ブドウ膜炎、サルコイド、トキソプラズマ症、ヒストプラズマ症、フォークト−小柳−原田病、多巣性脈絡膜炎、慢性ブドウ膜炎、結核、梅毒症、点状および多巣性脈絡膜内層症)、網膜芽細胞腫、黒色腫、眼腫瘍、網膜剥離、近視性血管新生、網膜色素線条、イールズ病、コーツ病、ソースビー眼底変性症、虚血性網膜症(網膜動脈閉塞、高安病、頚動脈閉塞)、および脈絡膜破裂を含む。特定の態様においては、本発明の治療方法は、滲出型および萎縮型加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞および網膜分枝静脈閉塞の処置に適当である。
【0028】
特定の局面では、本発明の処置方法はまた、黒色腫の処置または予防にも適当である。
【0029】
本明細書で使用する用語「後部眼杯」は、網膜色素上皮、脈絡膜および強膜の複合体を意味する。
【0030】
本明細書で使用する用語「等用量」は、患者または対象において同様に効果的な用量、例えばヒトにおいて同様に効果的な用量、と相関するラットにおける用量を意味する。例えば、ヒトの等用量はラットとヒトの間で体表面領域の概算または他の尺度となる要素に基づいて相関しうる。一つの限定されない例ではラットにおける10mg/kgの経口投与用量は70kgのヒトにおける100mgの用量に相関すると推定される。ラットと対象種(すなわち、ヒト)の間の最終的な用量の相関は薬物動態学的性質、代謝、生物学的利用能など当該分野で既知のものを含む多くの生物学的性質に依存しうる。
【0031】
本明細書で使用する用語「塩(複数も可)」は、本発明の化合物の酸付加または塩基付加塩を意味する。「塩」は具体的には「薬学的に許容される塩」を含む。用語「薬学的に許容される塩」はこの発明の化合物の生物学的有効性および特性を維持し、かつ典型的に生物学的または他の点で望ましくないものではない塩を意味する。多くの場合、本発明の化合物は、アミノおよび/またはカルボキシル基またはそれに似た基の存在によって酸および/または塩基塩を形成しうる。
【0032】
薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸、例えば酢酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベシル酸、臭化物/臭化水素酸、重炭酸/炭酸、重硫酸/硫酸、カンファースルホン酸、塩化物/塩酸、クロルテオフィロナート、クエン酸、エタンジスルホン酸、フマル酸、グルセプト酸、グルコン酸、グルクロン酸、馬尿酸、ヨウ化水素酸/ヨウ化物、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリル硫酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、メシル酸、メチル硫酸、ナフトエ酸、ナプシル酸、ニコチン酸、硝酸、オクタデカン酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸/リン酸水素/リン酸二水素、ポリガラクツロ酸、プロピオン酸、ステアリン酸、コハク酸、スルホサリチル酸、酒石酸、トシレートおよびトリフルオロ酢酸塩と形成されうる。
【0033】
塩が由来しうる無機酸は、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを含む。
【0034】
塩が由来しうる有機酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸などを含む。
【0035】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」は、当業者に既知のように、溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩類、防腐剤、薬物安定化剤、結合剤、添加物、分解剤、滑剤、甘味剤、風味剤、色素などおよびそれらの組み合わせ剤のいずれかおよびすべてを含む。(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、18th Ed、Mack Printing Company、1990、pp,1289−1329を参照のこと)。任意の従来の担体は、有効成分と適合しない限りをのぞき、治療または医薬組成物における使用が期待される。
【0036】
用語、本発明の化合物の「治療有効量」は、対象の生物学的または医学的な応答、例えば酵素あるいは蛋白質活性の減少あるいは阻害、または症状の改善、適応症の軽減、疾患進行の減速あるいは遅延、または疾患の予防などを引き起こすであろう本発明の化合物の量を意味する。一つの限定されない態様においては、用語「治療有効量」は、対象に投与される場合に、(1)(i)VEGF−R2を介する、または(ii)VEGF−R2活性に関連する、または(iii)(通常または異常な)VEGF−R2活性に特徴づけられる適応症、障害または疾患を少なくとも部分的に緩和、阻害、予防、および/または改善する;または(2)VEGF−R2活性を減少させるあるいは阻害する;または(3)VEGF−R2の発現を減少させるあるいは阻害するのに効果的な本発明の化合物の量を意味する。また別の限定されない態様では、用語「治療有効量」は細胞あるいは組織、または非細胞生物学的物質あるいは培地に投与される場合に、少なくとも部分的にVEGF−R2活性を減少させるあるいは阻害する;または少なくとも部分的にVEGF−R2の発現を減少させるあるいは阻害するのに効果的な本発明の化合物の量を意味する。VEGF−R2について上記の態様で示されたように、用語「治療有効量」の意味はまた同じ方法で他の任意の関連蛋白質/ペプチド/酵素、例えばVEGF−R2または他のVEGF−R2などにも適用される。
【0037】
本明細書で使用する用語「対象」は動物を意味する。典型的には動物は哺乳動物である。対象はまた、例えば霊長類(例えばヒト、男性または女性)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚、鳥などを意味する。特定の態様では、対象は霊長類である。さらに他の態様においては、対象はヒトである。
【0038】
本明細書で使用される用語「阻害する」、「阻害」または「阻害している」は、特定の適応症、症状、または障害または疾患の軽減あるいは抑制、または生物学的活性または過程のベースライン活性での有意な低下を意味する。
【0039】
本明細書で使用される用語、任意の疾患または障害を「処置する」、「処置している」または「処置」は、一つの態様において、疾患または障害を改善する(すなわち、疾患またはその医学的な症状の少なくとも一つの進行を遅延あるいは停止または軽減させる)ことを意味する。他の態様においては「処置する」、「処置している」または「処置」は、患者に認識され得なくてよいものを含む身体的なパラメーターを少なくとも一つ緩和または改善することを意味する。さらにまた別の態様では、「処置する」、「処置している」または「処置」は、身体的に(例えば、認識できる症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体的パラメーターの安定化)のいずれか、または両方で疾患または障害を調節することを意味する。さらに別の態様においては、「処置する」、「処置している」または「処置」は、疾患または障害の発症または発達または進行を予防あるいは遅らせることを意味する。
【0040】
本明細書で使用される場合、対象が生物学的、医学的にまたは生活の質において処置から益を得うるならば、その対象はそのような処置を「必要」としている。
【0041】
本明細書で、本発明の文脈(特に特許請求の範囲の文脈)で用いられる用語「単数表現」および類似語は本明細書内で特記しない限りまたは明らかに文脈に矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0042】
他の局面において本発明は、本発明の化合物および経口投与のための薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。加えて、本発明の医薬組成物は、(制限なくカプセル、錠剤、丸剤、顆粒、粉末または坐薬を含む)固体形で、または(制限なく溶液、懸濁液またはエマルジョンを含む)液体形で作り上げられ得る。医薬組成物は滅菌操作のような通常の薬学的な操作を受け得、および/または慣用の不活性希釈剤、滑剤、または緩衝剤、ならびにアジュバント、例えば防腐剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤および緩衝剤などを含みうる。
【0043】
典型的に、医薬組成物は有効成分を
a)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;
b)滑剤、例えば、シリカ、滑石、ステアリン酸、そのマグネシウムまたはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤についてはまた
c)結合剤、例えば、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドン;望ましければ
d)崩壊剤、例えば、デンプン類、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩、または起沸性混合物;および/または
e)吸収剤、着色剤、香味剤および甘味剤
とともに含む錠剤またはゼラチンカプセルである。
【0044】
錠剤は、当該分野で既知の方法によりフィルムコーティングまたは腸溶性コーティングのいずれかをされうる。
【0045】
経口投与に適当な組成物は錠剤、トローチ剤、水性あるいは油性懸濁液、分散性の粉末または顆粒、エマルジョン、硬あるいは軟カプセル、またはシロップまたはエリキシルの形態で有効量の本発明の化合物を含む。経口使用を意図した組成物は医薬組成物の製造について当該分野で既知の任意の方法によって調製され、かつかかる組成物は薬学的に洗練されてかつのみやすい製剤を提供するために甘味剤、風味剤、着色剤および防腐剤からなる群から選択された一つ以上の剤を含みうる。錠剤は有効成分を、錠剤の製造に適当な毒性を示さない薬学的に許容される添加物との混合で含んでいてよい。これらの添加物は、例えば不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;造粒および崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチンまたはアカシア;および滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクである。錠剤は胃腸管での分解および吸収を遅らせ、それ故により長期間にわたり活性を維持させるために、既存の技術によってコーティングされないもしくはコーティングされる。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような時間遅延物質が用いられ得る。経口使用のための製剤は有効成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合される硬ゼラチンカプセル、または有効成分が水または油媒体、例えばピーナツ油、流動パラフィンまたはオリーブ油と混合される、軟ゼラチンカプセルとして示されうる。
【0046】
本発明による化合物の活性は、以下のインビトロおよびインビボ手法により評価されうる。
【実施例】
【0047】
以下は実施例のみを記述したものである。
【表1】
【0048】
実施例1:ラットレーザー誘発脈絡膜血管新生(CNV)モデル;連日投与
3月齢のBNラットはプラシーボもしくは表1の有効剤を以下の表2に示された投与濃度および製剤でレーザー処理に約1時間先だって投与された。ラットの眼は一滴のフェニレフリンおよびシクロペントレート(Altaire Pharmaceuticals inc.Aquebogue、NYおよびAkorn Inc.Lake Forest、IL)により散大されその後固定化された。それぞれの眼はOculight GLx 532nMレーザー(Iridex)を用いて4箇所、視神経から2−3乳頭径のレーザー熱傷処理がされた。各試験グループは10匹のラット、20個の眼および80個のデータポイントを有した。レーザー光硬化は成功すると蒸気泡を誘発した。
【0049】
レーザー障害の後、ラットはプラシーボまたは表1の化合物を表2に示された投与濃度および製剤で連日、1日目〜11日目または12日目まで投与された。眼を回収する直前に、2,000kdのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)デキストラン血管標識が静注された。組織は最後の投与が行われてから約24時間後に回収された。
【0050】
眼は4%パラホルムアルデヒドで固定され網膜色素上皮(RPE)/脈絡膜/強膜複合体が切断されスライドガラスにのせられた。各CNV病変の蛍光像がキャプチャーされ、病変領域はAxiovisionソフトウェア(バージョン4.5 Zeiss)を用いてマスキングをかけたデータで定量化された。グループ間の違いはニューマン−ケウルス事後分析(Prism v.4.02、GraphPad Software,Inc.La Jolla CAによる)を用いて、一元配置分散分析(ANOVA)によって分析された。本実施例で有効性はプラシーボと比較した処置後のCNV領域の減少%を意味することを定義される。
【0051】
図1は実施例1のラットモデルにおいて化合物2の連日投与のED50/ED90をプロットした図である。化合物2は連日投与により濃度依存的な阻害を示す。連日投与の処方計画では、化合物2のED50は3.3mg/kgであり、ED90は13.0mg/kgであった。ED50はCNV領域が溶媒処理された対照のCNV領域よりも50%小さいことを意味し、およびED90は同様に90%小さいことを意味する。nは具体的な用量の化合物2について完了している個々のラットCNV試験の数を意味する。各グループは10匹のラット、4個のレーザー熱傷/眼、および80のデータポイント/グループからなっていた。アッセイの長さはレーザー後11または12日間にわたった(1mg/kg n=2、3mg/kg n=5、10mg/kg n=7、30mg/kg n=1)。
【表2】
A=水中0.5%メチルセルロース、0.1%tween80
B=10%エタノール 90%PEG400
有効性は化合物で処理された動物における溶媒対照と比較したCNV領域の減少%として計測される。
【0052】
実施例2:ラットレーザー誘発脈絡膜血管新生(CNV)モデル;2、4、6日ごとの投与
3月齢のBNラットはレーザー処理に約1時間先だってプラシーボまたは0.5%メチルセルロースおよび0.1%Tween80水溶液中の3あるいは10mg/kgいずれかの化合物2の懸濁液を投与された。ラットの眼は1滴のフェニレフリンおよびシクロペントレート(Altaire Pharmaceuticals inc.Aquebogue、NYおよびAkorn Inc.Lake Forest、IL)で散大されその後固定化された。それぞれの眼はOculight GLx 532nMレーザー(Iridex)を用いて4箇所、視神経から2−3乳頭径のレーザー熱傷処理がされた。レーザー光硬化は成功すると蒸気泡を誘発した。各試験グループは10匹のラット、20の眼および80のデータポイントを有した。
【0053】
レーザー障害の後、ラットはプラシーボまたは3あるいは10mg/kgの化合物2を2日間ごと、4日間ごとまたは6日間ごとに一度投与された。眼を回収する直前に、2,000kdのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)デキストラン血管標識が静注された。組織は最後の投与が行われてから約24時間後に回収された。2日間ごとに投与した場合、試験はレーザー後11日目で完了した。4日間ごとまたは6日間ごとに投与した場合、試験はレーザー後13日目に完了した。
【0054】
眼は4%パラホルムアルデヒドで固定され、RPE/脈絡膜/強膜複合体が切断されスライドガラスにのせられた。各CNV病変の蛍光像がキャプチャーされ、病変領域はAxiovisionソフトウェア(バージョン4.5 Zeiss)を用いてマスキングをかけたデータで定量化された。グループ間の違いはニューマン−ケウルス事後分析(Prism v. 4.02 GraphPad Software、Inc.La Jolla CAによる)を用いて一元配置分散分析(ANOVA)によって分析された。
【0055】
本実施例で有効性はプラシーボと比較した処置後のCNV領域の減少%を意味することを定義される。
【0056】
実施例3:ラットレーザー誘発脈絡膜血管新生(CNV)モデル;週ごとに投与
3月齢のBNラットはレーザー処理に約1時間先だってプラシーボまたは表1の有効剤を上記表2に示された投与濃度および製剤で投与された。ラットの眼は1滴のフェニレフリンおよびシクロペントレート(Altaire Pharmaceuticals inc.Aquebogue、NYおよびAkorn Inc.Lake Forest、IL)で散大されその後固定化された。それぞれの眼はOculight GLx 532nMレーザー(Iridex)を用いて4箇所、視神経から2−3乳頭径のレーザー熱傷処理がされた。各試験グループは10匹のラット、20の眼および80のデータポイントを有した。レーザー光硬化は成功すると蒸気泡を誘発した。
【0057】
レーザー障害の後、ラットは表2に示されたように製剤された表1の化合物またはプラシーボを6日目および13日目に投与された。眼を回収する直前に、2,000kdのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)デキストラン血管標識が静注された。組織は最後の投与が行われてから約24時間後に回収された。
【0058】
眼は4%パラホルムアルデヒドで固定され、RPE/脈絡膜/強膜複合体が切断されスライドガラス上に置かれた。各CNV病変の蛍光像がキャプチャーされ、病変領域はAxiovisionソフトウェア(バージョン4.5 Zeiss)を用いてマスキングをかけたデータで定量化された。グループ間の違いはニューマン−ケウルス事後分析(Prism v.4.02、GraphPad Software、Inc.La Jolla CAによる)を用いて一元配置分散分析(ANOVA)によって分析された。本実施例で有効性はプラシーボと比較した処置後のCNV領域の減少%を意味することを定義される。
【0059】
図2は実施例1、2、および3のCNVモデルにおいて異なる投与間隔でラットに投与された、2つの用量の化合物2の阻害を棒グラフにしたものである。溶媒対照に対しp<0.001の統計学的信頼性がすべての10mg/kgの投与計画および連日または2日ごとの3mg/kgの投与について観察された。4、6または7日間ごとの3mg/kgの投与では溶媒対照と比較して統計学的に有意な差は全くみられなかった。
【0060】
2日間ごと、4日間ごと、6日間ごとに10mg/kgで投与された化合物2は、実施例1および2のラットCNVモデルにおける連日の投与と同等の有効性をもたらした。化合物2の週ごとの投与は10mg/kg量の連日投与に比較してわずかに低い有効性を示した。
【0061】
試験は化合物2の連日よりも少ない投与が有効性を示しうるかどうかを調べるために行われた。図2は実施例1、2および3のラットレーザーCNVモデルにおける3mg/kgまたは10mg/kgでの化合物2の投与について、有効性の結果をまとめた棒グラフである。化合物2はラットレーザーCNVモデルにおいて連日または2、4、6および7日間ごとに3および10mg/kg投与された。各試験で、最終投与は組織回収の24時間前になされた。実施例1−3に示されたように試験の長さは11〜14日間にわたった。溶媒対照に対するp<0.001の統計学的信頼性はすべての10mg/kgの投与計画および連日ならびに2日間ごとの3mg/kgの投与で観察された。4、6および7日ごとの3mg/kgの投与について、溶媒対照に対するp>0.05の統計学的信頼性が観察された。
【0062】
実施例1および3で試験されたすべての化合物は週ごとに投与された場合、連日投与の場合と比べて幾らかの有効性を示す。化合物の連続的な投与と投与の間の期間が長くなると、化合物1、2、3および6が最も高いレベルの有効性を示す。化合物8、9および10は週ごとの処方計画で投与された場合に最も低い有効性を示した。
【0063】
実施例4:ラットレーザー誘発脈絡膜血管新生(CNV)モデル;一回投与
三月齢のBNラットはレーザー処理をされ、かつ最初にプラシーボまたは有効剤での処理は行われなかった。ラットの眼は1滴のフェニレフリンおよびシクロペントレート(Altaire Pharmaceuticals inc.Aquebogue、NYおよびAkorn Inc.Lake Forest、IL)で散大されその後固定化された。それぞれの眼はOculight GLx 532nMレーザー(Iridex)を用いて4箇所、視神経から2−3乳頭径のレーザー熱傷処理がなされた。各試験グループは10匹のラット、20の眼および80のデータポイントを有した。レーザー光硬化は成功すると蒸気泡を誘発した。
【0064】
レーザー障害後13日目または21日目のいずれかに、ラットはプラシーボまたは0.5%メチルセルロースおよび0.5%および0.1%Tween80水溶液中での10mg/kgの化合物2の懸濁液を投与された。眼を回収する直前に、2,000kdのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)デキストラン血管標識が静注された。組織は一回の投与が行われてから約24時間後に回収された、すなわち試験はレーザー処理後から14日目または22目のいずれかに完了した。
【0065】
眼は4%パラホルムアルデヒドで固定され、RPE/脈絡膜/強膜複合体が切断されスライドガラスにのせられた。各CNV病変の蛍光像がキャプチャーされ、病変領域はAxiovisionソフトウェア(バージョン4.5 Zeiss)を用いてマスキングをかけたデータで定量化された。グループ間の違いはニューマン−ケウルス事後分析(Prism v.4.02、GraphPad Software、Inc.La Jolla CAによる)を用いて一元配置分散分析(ANOVA)によって分析された。本実施例で有効性はプラシーボと比較した処置後のCNV領域の減少%を意味することを定義される。
【0066】
化合物2またはプラシーボはレーザー後13日目または21日目のいずれかに一回経口投与された。CNV領域は二つの実験で14日目および22日目に測定された。CNVはプラシーボを投与されたラットに比べてそれぞれ49%(13日目に一回投与)および43%(21日目に一回投与)阻害された(p<0.001、溶媒対照に対する)。
【0067】
実施例5:一回の経口投与後のBNラットにおける眼の薬物動態
三月齢のBNラットは表1の有効剤を以下の表3に示される投与濃度および製剤で経口投与された。眼組織および血漿は有効剤あたり2匹のラットから、投与後6、24、48、72、96、120および144時間の時点で回収された。回収された眼組織は網膜および後部眼杯であった。各タイムポイントで4つの個々の網膜、4つの個々の後部眼杯および2つの個々の血漿サンプルで薬剤レベルが測定された。
【0068】
眼組織はホモジナイズされかつ血漿蛋白質は沈殿化され、薬剤濃度がLC−MS/MSにより分析された。網膜、後部眼杯(PEC)および血漿への化合物1、2、6および9の曝露は表4に曲線下面積(AUC)として記載されている。
【表3】
A=水中0.5%メチルセルロース、0.1%tween80
B=10%エタノール 90%PEG400
【0069】
図4は後部眼杯、網膜および血漿における化合物2の濃度をプロットしたものである。化合物2は眼組織(例えば、網膜およびPEC)では7日間実質的に一定の濃度で維持されるが、血漿からは比較的急速に排除された。これら4つの化合物についての血漿に対する網膜への曝露の比は化合物2が最も高かった。化合物2の薬物動態学的プロファイルは眼組織で薬理学的有効性を少なくとも7日間維持するための遊離薬物を提供する。化合物2の血漿からの急速な除去はVEGF−R2阻害に関連する望ましくない全身性の副作用を最小化することが期待される。理論に束縛されるものではないが、全身(例えば、血漿)への曝露を局所的な眼への曝露から分けることは化合物2の全身濃度を減少させることにより標的での全身性副作用のリスクを最小化させる一方で、眼血管疾患の処置において局所的な有効性の維持を提供すると考えられる。
【0070】
図3は化合物1の後部眼杯、網膜および血漿での濃度をプロットしたものである。化合物1は後部眼杯組織における眼への曝露が少なくとも一週間維持されることを示す。しかしながら化合物1はまた、投与後一週間の期間を通じて血漿への曝露が増加していることも示す。
【0071】
図5は後部眼杯、網膜および血漿での化合物6の濃度をプロットしたものである。化合物6は化合物2に最も近い眼性プロファイルを有する。しかし、化合物6は化合物2よりも低い血漿に対する網膜への曝露の比を示す。0.3mg/kgでは化合物6は週ごとの投与では連日投与に対して有効性を39%失う。対照的に、化合物2は10mg/kgでは週ごとの投与では連日投与に比べて16%の有効性を失う。表2を参照のこと。
【0072】
図6は後部眼杯、網膜および血漿における化合物9の濃度をプロットしたものである。化合物9の後部眼杯、網膜および血漿濃度は実質的に各サンプリングのタイムポイントにおいて類似している。理論に束縛されるものではないが、化合物9が一週間に一度の処方計画で投与される場合に有効性が欠如するのは、一週間の過程を通じて血漿および眼への曝露が類似していること、および眼への曝露が定常的に減少することによると考えられる。
【表4】
【0073】
実施例6−8 化合物2を経口投与されたBNラットでの組織病理学的試験
化合物2または溶媒が0.5%メチルセルロースおよび0.1%Tween80中の懸濁液として3〜30mg/kgの範囲の用量でBNラットに経口投与された。1つの処方計画では、3、10および30mg/kgの用量で14日間連日与えられた。このグループの動物は最後のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)デキストラン血管標識の静注を受けなかった。
【0074】
その他の処方計画、すなわち、2、4または6日間ごとの投与では、ラットは実施例2に記載されたようにレーザー誘発CNVを受けた。限定剖検ならびにCNVの解析が同じラット個体のそれぞれにおいて行われた。0日目(前述したようにレーザー処理の日)からはじまり10mg/kgの化合物2が2日間ごとに11日間、4日間ごとに13日間、または6日間ごとに13日間(表5にまとめられているように)投与された。溶媒は化合物2が投与されなかった日に投与された。試験の最後に、動物は安楽死の約10分前にPBSに溶解させた2,000kdのFITC−デキストラン(12.5mg/mL)500μLの静注を受けた。ラットへの注入は記載されたようにCNVの脈管構造領域の評価を可能にするために行われた。
【0075】
限定剖検はこれらの各試験からグループあたり5〜6匹のラットについて行われた。腎臓、心臓、脳、胃腸管(胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、大腸、および直腸)、膵臓、および腸間膜リンパ節はすべての動物から回収された。組織は10%緩衝ホルマリンで固定され常にスライドガラスへと処理された。すべての組織は顕微鏡によって調べられた。
【0076】
【表5】
数字は各グループのラットに与えられたmg/kgでの投与量を示す。「溶媒」はその日には溶媒が経口投与されたことを示す。「回収」はサンプルがラットから回収されたことを示す。上付き文字(a)は実施例6を意味し、上付き文字(b)は実施例7を意味し、および上付き文字(c)は実施例8を意味する。
【0077】
実施例6 化合物2を連日14日間与えられたBNラットにおける組織病理学的発見
BNラットは表5の日程(a)により3、10または30mg/kgの用量を14日間連日投与された。試験項目関連性の変化は膵臓においては3mg/kg/日以上の用量であらわれ、かつ腎臓および脳の脈絡叢では10mg/kg/日以上の用量であらわれた。腎臓では試験項目関連性の糸球体症が10mg/kg/日以上の用量であらわれ、一方30mg/kg/日の濃度では重症度の増大した尿細管好塩基球増加症および炎症性浸潤があらわれた。膵外分泌腺(腺房細胞および、場合によっては導管細胞)の単細胞壊死は3mg/kg/日以上の用量でおこった。脳では、脈絡叢間質のヒアリン化/浮腫および小動脈/細動脈に影響を及ぼす細胞残屑が10mg/kg/日以上の用量であらわれた。さらなる膵臓の変化は10mg/kg/日以上の用量における腺房細胞萎縮および酵素原顆粒の減少を含んだ。
【0078】
実施例7 化合物2を2日間おきに11日間投与されたBNラットにおける組織病理学的発見
BNラットは表5の日程(b)にしたがい10mg/kg用量を連日11日間投与された。2日おきの投与のグループにおいては試験項目関連性の変化は脈絡叢細動脈に関連する微小炎症性浸潤を含んだ。腎臓では微小から軽度の糸球体症があらわれた。さらに対照と比較して重症度の増大した尿細管好塩基球増加症がおこり、かつ炎症性細胞浸潤の頻度も増加した。膵臓では、膵臓腺房細胞および、場合によっては導管細胞の単細胞壊死が明らかだった。
【0079】
実施例8 化合物2を4日または6日間ごとに13日間投与されたBNラットにおける組織病理学的発見
BNラットは表5の日程(c)にしたがい10mg/kgの用量で連日13日間投与された。4日ごとの投与グループの試験では、試験項目関連性の変化は微小から軽度の糸球体症、微小な脈絡叢の変化(細胞残屑および/またはヒアリン化/浮腫)および/または膵外分泌腺の微小なアポトーシスを含んだ。さらに、4日間ごとの10mg/kgのグループの一動物は散在性に周囲に分布する固有層の増大によって特徴づけられる、大腸の浮腫を有していた。4日間ごと、10mg/kgのグループの他の一動物は試験項目によるものであると考えられる直腸の筋層における局所的な領域の出血および炎症を有した。
【0080】
本試験条件下では、6日間ごとに10mg/kgを投与された動物は何ら試験項目関連性の変化を持たなかった。
【0081】
実施例9 化合物2を週ごとに4週間投与されたBNラットにおける組織病理学的発見
化合物2または溶媒は0.5%メチルセルロースおよび0.1%Tween80中の懸濁液として未処理のBNラットに3〜30mg/kg/週の用量で経口投与された(1、8、15、22および29日目での投与、n=5匹のラット/グループ、詳細は表6に概約)。
【表6】
xは投与された日を示す
【0082】
試験の最後に、対照および30mg/kg投与量のグループから、完全剖検が行われ選択されたリストの組織および器官が分析された。すべての動物から肉眼的病変および潜在的標的組織(腎臓、脳、心臓および膵臓を含む)が調べられた。試験項目関連性の変化は顕微鏡的には全くあらわれていなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6