(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934237
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】ゲルマニウムおよびホウ素イオン注入のための複合ガスの利用(implementation)
(51)【国際特許分類】
H01J 27/02 20060101AFI20160602BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20160602BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
H01J27/02
H01J37/317 Z
H01L21/265 603A
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-539814(P2013-539814)
(86)(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公表番号】特表2014-502409(P2014-502409A)
(43)【公表日】2014年1月30日
(86)【国際出願番号】US2011001913
(87)【国際公開番号】WO2012067653
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年11月5日
(31)【優先権主張番号】12/948,309
(32)【優先日】2010年11月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】コルヴィン,ニール
(72)【発明者】
【氏名】シエー,ツェ−ジェン
【審査官】
佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−517304(JP,A)
【文献】
特表2010−522416(JP,A)
【文献】
特開平06−012996(JP,A)
【文献】
特開2008−294440(JP,A)
【文献】
特表2010−522966(JP,A)
【文献】
特表2008−518482(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0155619(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/00−27/26、37/04、37/06−37/08、
37/248、37/30−37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
性能を改善し、イオン注入装置内のイオンソースの有効期間を延長させるイオン注入システムであって、
ドーパントガスコントローラと、複合ガスコントローラと、イオンソース室とを備えるイオンソースアセンブリであって、上記ドーパントガスコントローラが上記イオンソース室に入るフッ素含有ドーパントガスソースの割合および流量を有効に制御し、複合ガスコントローラが上記イオンソース室に入る複合ガスであって、フッ素含有ドーパントガスと作用する上記複合ガスの割合および流量を有効に制御するイオンソースアセンブリと、
上記イオンソースからイオンビームを受け、上記イオンビームを処理するビームラインアセンブリと、
上記ビームラインアセンブリから上記イオンビームを受ける目標位置と、を備え、
複合ガスを使用せずに、必要なイオンビーム電流を提供する方法を決定した後、イオンビーム電流が減少し始めるまで、複合ガスの流量を増大させながら注入することによって、上記イオンソース室に入る上記複合ガスの割合および流量の機能的な制御は予め定められていることを特徴とするイオン注入システム。
【請求項2】
上記複合ガスコントローラは、1以上の複合ガスソースから上記イオンソース室に上記複合ガスを放出することを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項3】
上記複合ガスおよび上記フッ素含有ドーパントガスは、上記イオンソース室に同時に放出されることを特徴とする請求項2に記載のイオン注入システム。
【請求項4】
上記複合ガスおよび上記フッ素含有ドーパントガスは上記イオンソース室に連続して放出されることを特徴とする請求項2に記載のイオン注入システム。
【請求項5】
上記イオンソース室に入る上記複合ガスの割合および流量の機能的な制御は上記イオン注入システムの動作期間中に調整されることを特徴とする請求項2に記載のイオン注入システム。
【請求項6】
上記フッ素含有ドーパントガスソースは、三フッ化ホウ素、四フッ化ゲルマニウム、三フッ化リン、および、四フッ化シリコンのうち1以上を備えることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項7】
上記複合ガスは水素を備えることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項8】
上記複合ガスは上記フッ素含有ドーパントガスと作用して、フッ化水素を作ることを特徴とする請求項7に記載のイオン注入システム。
【請求項9】
上記複合ガスはさらにクリプトンを備えることを特徴とする請求項8に記載のイオン注入システム。
【請求項10】
イオンソース室を含むイオンソースの生産性を改善する方法であって、
フッ素含有ドーパントガスをイオンソース室に注入して、プラズマを発生させるステップと、
所望のイオンビーム電流を提供するための加工方法を決定した後、イオンビーム電流の減少が検知されるまで、少なくとも1つの複合ガスを上記イオンソース室に増大させながら注入し、上記複合ガスが上記プラズマ内のフッ素イオンと有効に作用し、上記イオンソース室内の汚染物質の構造を縮小するステップと、
上記イオンソース室内の上記フッ素含有ドーパントガスを励起させて、分離されかつイオン化されたドーパントおよびフッ素ラジカル成分のプラズマを生成するステップと、
上記少なくとも1つの複合ガスと、上記分離されかつイオン化されたフッ素成分を作用させて、上記イオンソース室の汚染を減少させて、イオンソースの有効期間を増加させるステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
上記フッ素含有ドーパントガスは、三フッ化ホウ素、四フッ化ゲルマニウム、三フッ化リン、および、四フッ化シリコンのうち1以上を備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記複合ガスは水素を備えることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記複合ガスはさらにクリプトンを備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記少なくとも1つの複合ガスと、上記分離されかつイオン化されたフッ素成分を作用させるステップは、フッ化水素を作るステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
さらに、上記イオンソース室に予め定められた量の複合ガスを放出するステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、一般に半導体装置構成およびイオン注入に関し、そしてより詳しくは、性能を改善し、イオン注入装置内のイオンソースの有効期間を延長する方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
イオン注入は、半導体装置構成内で使用され、半導体および/またはウェハ材料にドーパントを選択的に注入する物理的な処理である。それゆえ、注入行為は、ドーパントと半導体材料間の化学的相互作用に依存しない。イオン注入に関して、ドーパント原子/分子は、イオン化され、加速され、ビームに形成され、分析されて、ウェハを横切って通る、すなわち、ウェハはビームによって払われる。ドーパントイオンは、物理的にウェハに衝撃を与え、その表面に侵入し、表面の下であって、それらのエネルギーに関連した深さで静止する。
【0003】
図1を参照すると、イオン注入装置またはイオン注入システムは、典型的には、(1)イオンビームを出力するイオンソースを含むイオンソース室102(2)イオンビームを質量分解する質量分析磁石(a mass analysis magnet)を含むビームラインアセンブリ110(3)半導体ウェハ114またはイオンビームによって注入される他の基板のような、ビームラインアセンブリからイオンビームを受け取る目標位置を含む処理室112、の3つのセクションまたはサブシステムを含む。半導体デバイスの小型化への傾向が続くことは、低いエネルギーで高ビーム電流を伝える機能を有するビームライン構造を必要とする。高ビーム電流は、必要な適量レベルを供給し、一方低エネルギーは、浅い注入を可能にする。半導体デバイスにおけるソース/ドレイン接合は、例えば、そのような高電流、低エネルギー適用を要する。
【0004】
イオン注入装置におけるイオンソースは、典型的には、所望のドーパント要素を成分とするソースガスをソース室102内でイオン化し、イオン化され、イオンビームとして形成されたソースガスを抽出することにより、イオンビームを発生させる。イオンソースは、典型的には高電流イオン注入装置に利用される誘導加熱陰極(IHC:inductively heated cathode)の形態をとってもよい。
【0005】
ソースガスが備える、所望のドーパント要素の例は、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、またはシリコン(Si)を含む。ソースガスは、特に、三フッ化ホウ素(BF
3)、四フッ化ゲルマニウム(GeF
4)、三フッ化リン(PF
3)、または、四フッ化シリコン(SiF
4)のような、例えばフッ素含有ガスであってよい。
【0006】
イオンソースが分子ソースガスを伴って作動された場合、所望の化学種を加えた注入用の化学種がたいてい生成され、その結果、ソースガスが分離/イオン化されている間に発生するこれらの化学種の蓄積または腐食性質により、イオンソース破壊が生じる。これらの化学種のうちのいくつかは、非常に低い蒸気圧を有し、結果として、ソースの内部表面上に凝縮する。これらの個体の堆積物は、例えば、壁の電気特性を変化させることによって、または、イオンソース電極の孔を部分的に塞ぐことによって、イオンソースの動作中徐々に干渉する。それによって、利用可能なイオン電流が減少する。
【0007】
ゲルマニウムおよびホウ素イオン注入で使用されるイオンソースの有効期間の減少は、四フッ化ゲルマニウム(GeF
4)および三フッ化ホウ素(BF
3)ソースガスの分離期間中における、自由フッ素ラジカルの発生により引き起こされる。これらのフッ素ラジカルは、700度以上の高められた動作温度で構造的な強度を与えるためにイオンソース室の構成として一般に使用されるタングステンおよびモリブデンのような耐火金属と作用する。六フッ化タングステン(WF
6)または六フッ化モリブデン(MoF
6)分子は、高温の表面上で分解し、ハロゲン周期として知られているもので陰極表面に凝縮する。WF
6およびMoF
6分子は、それぞれ、6つの付加的な自由フッ素ラジカルを生み出し、それによって、WF
6およびMoF
6の形成が加速される。これらの分子は、フッ素原子を取り除く還元剤無しに、室表面(chamber surfaces)上で自発的に分解されない。タングステンおよびモリブデン分子は、陰極表面上に蓄積し、陰極サイズを増加させ、結果として、陰極表面からの電子放出を低下させる。
【0008】
そのうえ、イオンソース室内の過剰な自由フッ素ラジカルは、結果として、室のハウジング材料および内部の構成部分を腐食する。もろい円柱構造が築き上げられ、そして折られ、陰極またはアースへのリペラーを橋絡することによっても、放電を引き起こす抽出/抽出抑制高電界(extraction/extraction suppression high voltage field)に放射されることによっても放電が生じる。そして、この物質は、ビームラインを下って、ウェハに運ばれ得る。イオンソース室の内側に発生した物質または残骸は抽出され、基板に運ばれてもよいことを示した。これらの粒子は半導体デバイスの歩留まりに直接の影響をもたらす。
【0009】
これらの堆積物を取り除く1つの方法は、システムからイオンソースを外し、物理的にイオンソースをきれいにする処理に時間を費やすか、化学種ガスを逃がして、或る予め定められた間隔で高エネルギー粒子を衝突させてアーク室をきれいにする。この処理は効果が高くなく、どちらの場合も、器具の生産性に激しく影響を与える。他の方法は、イオンソース全体に高反応のガスを流すことによって、元の位置でソースをきれいにすることである。そこでは、フッ素ガスラジカルがイオンソースの内部および外部の構成部分を攻撃する前に、フッ素ガスラジカルが捕獲され、汲み出されるために、ガス化学種は選択される。
【0010】
〔本発明の概要〕
次に、本発明の1以上の態様の基本的な理解を提供するための簡単な概要を示す。この概要は、本発明の詳細な概観ではなく、また、本発明の重要なもしくは重大な要素を明らかにするものでなく、本発明の範囲を線引きするものでもない。むしろ、概要の主な目的は、後に示されているより詳細な説明のための前置きとして、簡単な形式で本発明のいくつかのコンセプトを示すことである。
【0011】
本発明の各態様は、イオン注入装置内のイオンソースの性能を改善する方法を供給することによってイオン注入処理を容易にする。この方法では、少なくとも1つの複合ガスが、フッ素含有ドーパントソースガスと共にイオンソース室に導入され、複合ガスは、分離されイオン化されたソースガスのフッ素成分と作用して、イオンソース室へのダメージを減らし、イオンソースの有効期間を増加させる。結合された装置およびその方法を実行するイオン注入システムはここに明らかにされる。
【0012】
前述のおよび関連する目的の完成のため、発明はこの先十分に記載される特徴であって、部分的にはクレームにおいて指摘される特徴を備える。以下の記述および添付図面は、ある実例となる態様および本発明の利用(implementations)を詳細に示す。しかしながら、これらは、本発明の原理で使用される種々の方法のうちのいくつかを示しているだけである。本発明の他の目的、有利な点および新規な特徴は、図面と共に考慮されて、以下の本発明の詳細な説明によって明らかにされるであろう。
【0013】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、1以上の本発明の態様を実行するために適当なイオン注入システムのブロック図である。
【0014】
図2Aは、本発明の態様に係るイオンソースアセンブリの一実施形態を描いたイオン注入システムを示す。
【0015】
図2Bは、本発明の態様に係るイオンソースアセンブリの他の実施形態を描いたイオン注入システムを示す。
【0016】
図2Cは、本発明の態様に係るイオンソースアセンブリの別の実施形態を描いたイオン注入システムを示す。
【0017】
図2Dは、本発明の態様に係るイオンソースアセンブリのさらに別の実施形態を描いたイオン注入システムを示す。
【0018】
図3は、本発明の態様に係る方法を示すフロー図である。
【0019】
図4は、複合ガスの流入割合が増加するほど、F振幅(イオン電流)が減少し、HFが増加するグラフであって、amu-19でのフッ素のピークおよびamu-20でのHFのピークを示すグラフである。
【0020】
図5は、フッ素によって粒状物の境界を腐食して、アークスリットおよびアーク室ライナーからWの円柱構造を除くことによる粒子の減少を示すグラフである。
【0021】
〔本発明の詳細な説明〕
添付の図面を参照して本発明を説明する。図面全体にわたり、同じ参照番号は、同じ要素を参照するために使用される。本発明が以降で描画および記述する例示の実行および態様に限定されないことを当業者は理解するであろう。
【0022】
はじめに、
図2を参照すると、本発明の1以上の態様の実行に適したイオン注入システム200は、ブロック図の形式で描かれている。
【0023】
システム200は、ビーム路に沿ってイオンビーム204を供給するイオンソースアセンブリ202を含む。イオンソースアセンブリ202は、例えば、電源208と接続するプラズマソース206を含む。プラズマソース206は、例えば、イオンビームが抽出され加速される、比較的長いプラズマ閉じ込め室を備える。
【0024】
フッ素含有ドーパントガスソース216の供給は、入口224経由でイオンソース室206と結合する。ドーパントガスコントローラ218は、イオンソース室206へのドーパントガスソース216の流量および割合を、有効に制御する。少なくとも1つの複合ガス220の供給は、入口224経由でイオンソース室206と結合する。複合ガスコントローラ222は、イオンソース室206へ供給される複合ガスの流量および割合を、有効に制御する。
【0025】
フッ素含有ドーパントガスは、三フッ化ホウ素(BF
3)、四フッ化ゲルマニウム(GeF
4)、三フッ化リン(PF
3)、および、四フッ化シリコン(SiF
4)のうち1以上を備えてもよい。少なくとも1つの複合ガスは、水素(H
2)およびクリプトン(Kr)のうち1以上を備えていてもよい。
【0026】
イオンソース室206の動作中、フッ素含有ドーパントガスソース216および少なくとも1つの複合ガス220は、入口224経由でイオンソース室へ導入される。フッ素含有ドーパントガスソース216は、分離され、かつ/または、イオン化されて、ドーパントイオンおよびフッ素イオンを含む帯電粒子のプラズマを形成する。自由フッ素イオンは、水素複合ガスと作用し、アークスリットおよび/またはイオンソース室本体とその構成部分との間隙から漏れることにより室206から取り除かれるフッ化水素分子を形成する。正に帯電した分子の一部は、抽出電極207によって抽出され、AMUビームガイド211へ運ばれる。両ケースにおいて、それは真空ポンプシステム234によって汲み出される。
【0027】
図2B−2Dは、本発明の他の実施形態を示す。フッ素含有ドーパントガスソースおよび少なくとも1つの複合ガスは、別々の供給から得られる、また、先の実施形態ではイオンソース室206に入る前に入口224で混合される。複合ガスが1以上の複合ガス、例えば水素およびクリプトンを含むことも考慮され、複合ガスソースが、混合前の生成物として得られてもよく、また、
図2Bに示すように単一の生成物としてイオンソース室へ供給されてもよいことも考慮される。
図2Bでは、イオン注入システム200は、フッ素含有ドーパントソースガス216と、単一のソース226に供給される複合ガスの混合物を備えるイオンソースアセンブリ202を含む。フッ素含有ドーパントソースガス216は、ドーパントガスコントローラ218がイオンソース室206に入るドーパントガスソース216の流量および割合を制御して、入口224を通じてイオンソース室206へ供給される。複合ガス226の単一ソースの混合物は、複合ガスコントローラ222がイオンソース室206に入る混合物226の流量および割合を制御して、入口224を通じてイオンソース室206へ入る。
図2Bの実施形態は、フッ素含有ドーパントガスソース216および複合ガス混合物226の両方がイオンソース室206に入る単一の入口224を示しているが、ガスソース216および複合ガス混合物226は、例えば、ガスソース216用の入口および複合ガス混合物226用の別の入口のような、別々の入口経由でイオンソース室へ入ってもよいことも考慮される。
【0028】
イオンソース室206の動作中、フッ素含有ドーパントガスソース216および複合ガス混合物226は、入口224を通じてイオンソース室206へ放出される。フッ素含有ドーパントガスソースは、分離され、かつ/または、イオン化されて、ドーパントイオンおよびフッ素イオンを含む帯電分子のプラズマを形成する。自由フッ素イオンは、複合ガス混合物226からの水素イオンと作用して、真空ポンプシステム234によって室206から取り除かれるフッ化水素分子を形成する。複合ガス混合物226のクリプトンガスは、イオン化されて、負に帯電した陰極およびリペラーで加速される。この衝突により、陰極およびリペラーの原子は、臨界表面から放出され、イオンソース室206内の他の少ない臨界表面上に再び貯蔵される。イオン化されたクリプトンもまた、抽出電極207経由でアーク室から抽出されたイオン化されたクリプトンとしてふるまう。中性のクリプトンイオンは、アークスリットおよびアーク室の構成部品間の他の間隙から漏れ、真空ポンプシステム234によって汲み出される。
【0029】
図2Cは、別々の入口219、239、244を有する別の実施形態を示し、入口219はソースガス216用であり、入口239は水素複合ガス用であり、入口244はクリプトン複合ガス240用である。ガス216,236、240は、それからイオンソース室206内で混合される。イオンソース室206に入るフッ素含有ドーパントガスソース216の割合と流量は、ドーパントガスコントローラ218によって制御される。水素複合ガス236は入口239を通じてイオンソース室206に入り、その割合と流量は、複合ガスコントローラ238によって制御される。クリプトン複合ガス240は入口244を通じてイオンソース室206に入り、その割合と流量は、複合ガスコントローラ242によって制御される。
【0030】
イオンソースシステム200のさらに別の実施形態を
図2Dに示す。
図2Dでは、ドーパントガスソースおよび併存可能な複合ガスの混合物が単一ソース246として与えられる。フッ素含有ドーパントガスおよび複合ガスである単一ソース混合物246は、イオンソース室206に入る混合物246の流量および割合を制御するコントローラ248によって、入口250を通ってイオンソース室206に入る。
【0031】
図3は、本発明の一態様に係る方法であって、性能を改善し、注入装置内のイオンソースの有効期間を延長する方法300を示すフロー図である。方法300は、イオン注入システムの動作中に少なくとも1つの複合ガスを使用して、フッ素含有ドーパントソースガスが使用されたときに発生する自由フッ素イオン(free fluoride ions)の除去を容易にする。上述の図面および記述は、以後の説明のためにこの方法300について参照されてもよい。
【0032】
方法300は、フッ素含有ドーパントソースガスおよび少なくとも1つの複合ガスが供給されるブロック302から始まる。方法300は、フッ素含有ソースガスおよび少なくとも1つの複合ガスがイオンソース室に注入される306に続く。カソードによって放出される電子は、加速され、308で、イオンソース室内でフッ素含有ドーパントソースガスのガス分子をイオン化して、フッ素含有ドー1パントガスを裂き、所望のイオンを生成する。310では、複合ガスは、フッ素イオンに作用する。312で、イオン化されたドーパントイオン、ドーパント同位体フッ化物およびフッ化水素は、抽出される。分離され、イオン化されたフッ素イオン成分は、少なくとも1つの複合ガスに作用する。314で、複合ガスが水素を備える場合、フッ化水素分子は、形成され、イオンソース室から除去される。ガスが正の電荷ではないものは、アーク室から漏れ出し、そして真空ポンプシステムによって吸い出される。316では、抽出されたドーパントイオンは、イオンビームから、シリコンウェハのような加工部品に注入される。
【0033】
説明を簡単にするために、方法300は、連続して実行されるものとして描画および記述しているが、本発明は示された順序に限定されずに、本発明に基づいて、いくつかの態様が、異なる順序で生じる、および/または、ここで描画および記述されたものと異なる他の態様と同時に生じることを理解および認識されるべきである。例えば、フッ素含有ドーパントガスおよび少なくとも1つの複合ガスのイオンソース室への流入が同時に起こってもよいことが熟慮される。他の実施形態では、少なくとも1つの複合ガスのイオンソース室への流入に続いて、フッ素含有ドーパントガスがイオンソース室に注入されるように、これらのガスの流入が連続しておこってもよいことが熟慮される。さらに、示された特徴およびブロックの全てが、本発明の一態様に係る方法論を実行するために必要なものでなくてもよい。
【0034】
最大ビーム電流および最良の生産性を達成するために必要な、少なくとも1つの複合ガスの選択された流入割合は、経験的に確立されてもよい。フッ素含有ドーパントソースガスの割合が非常に低い複合ガスの流入により、自由フッ素イオンを効果的に除去せず、性能の改善およびイオン注入装置内のイオンソースの有効期間の延長に利益をもたらさない。非常に高い複合ガスの流入により、プラズマ内のドーパントイオンの生成が減少し、利用可能なドーパントイオン電流が減少する場合がある。追加的に、結合されたガスの非常に高い流入割合は、ソース圧力を上昇させ、抽出電極に対するアークのリスクを増加させる。それゆえ、フッ化物ラジカルの最大総量を除去して、心身に有害なビーム電流の影響がないことが望ましい。複合ガスを使用しない必要なビーム電流を伝える配合表を規定し、そしてビーム電流が少なくなり始めるまで複合ガスの流量を増大させて注入することによって、少なくとも1つの複合ガスの流入割合を予め定めてもよい。ソースの有効期間を通じて安定したビーム電流性能を保証するために、流入を、その閾値より数パーセント下にしてもよい。追加的に、AMUビームスペクトルを実行して、所望しないガスの減少と、複合ガスと作用した後に形成され、結果として生じるガスの増加とを比較することにより、配合表は、より有効にされてもよい。この方法では、イオンソース室に入る複合ガスの割合および流量は、イオン注入システムの動作中に調整されてもよい。
【0035】
図4には、amu-19におけるフッ素ピークおよびamu-20におけるHFピークが描画されたグラフがある。このグラフでは、複合ガスの流入割合の増加するほど、F振幅(イオン電流)が減少し、HFが増加する。質量スペクトル分析(A mass spectrum analysis)は、複合ガスの流量の各レベルに対して行われた。配合表は、複合ガスを使用せずに(ガス流量0sccmによって描写されているように)、最初に最適化される。
図4を参照すると、フッ素(amu19)の最高のピークは、amu19で得られ、amu20で最小のHFピークであった。複合ガスの流量が増加するほど、Fピークは減少し、HFピークは増加した。それゆえ、複合ガスが2.5sccmにおいて、ビーム電流が減少し始めたことが分かった。そして、2sccmにおいて実行することを決定し、イオンソース室の一生を通じて安定したビーム電流を保証した。
図5は、フッ素によって粒状物の境界(grain boundaries)を腐食して、アークスリットおよびアーク室ライナー(arc chamber liners)からのWの円柱構造を除去することによる粒子の減少を示すグラフである。注入がそれぞれ測定された後、ウェハ上の0.65umより大きい粒子量が測定されるのと同様に、本発明の方法に基づいて、円柱構造を除去した後、粒子の減少(平均値)を測定する。
【0036】
本発明は、1以上の実施に関して描画および記述してきたが、この明細書および添付の図面を読み、理解することにより、当業者にとって同等の変更および改良が生じる。特に、上述の構成要素(アセンブリ、デバイス、回路、システム等)が実行する種々の機能に関して、用語(「手段」の参照を含む)は、他のものが示されていなければ、たとえ構造的に開示した構造(ここで示した本発明の実施例の機能を実行する構造)と同等でなくとも、そのような構成要素が、記述した構成要素の特定の機能を実行する任意の構成要素(例えば、機能的に同等のもの)に対応することを意図して記述されるために使用される。加えて、本発明の特別な特徴が複数の実施のうちの1つのみに関して開示されていたとしても、そのような特徴は、希望するように、および、任意のもしくは特定の適用に対して有利なように、他の実施の1以上の他の特徴と結合してもよい。そのうえ、詳細な説明および特許請求の範囲に使用される用語「含んでいる」、「含む」、「有している」、「有する」、「伴う(with)」またはそれらの変形は、ある意味、用語「備える」と同様のものを含むことを意味する。さらに、用語「例示的な」は、一例を示し、最良または優秀な態様または実施を示すことを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】1以上の本発明の態様を実行するために適当なイオン注入システムのブロック図である。
【
図2A】本発明の態様に係るイオンソースアセンブリの一実施形態を描いたイオン注入システムを示す。
【
図2B】本発明の態様に係るイオンソースアセンブリの他の実施形態を描いたイオン注入システムを示す。
【
図2C】本発明の態様に係るイオンソースアセンブリの別の実施形態を描いたイオン注入システムを示す。
【
図2D】本発明の態様に係るイオンソースアセンブリのさらに別の実施形態を描いたイオン注入システムを示す。
【
図3】本発明の態様に係る方法を示すフロー図である。
【
図4】複合ガスの流入割合が増加するほど、F振幅(イオン電流)が減少し、HFが増加するグラフであって、amu-19でのフッ素のピークおよびamu-20でのHFのピークを示すグラフである。
【
図5】フッ素によって粒状物の境界を腐食して、アークスリットおよびアーク室ライナーからWの円柱構造を除くことによる粒子の減少を示すグラフである。