(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934239
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】真空ボックスに高真空を維持する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
F04B 37/16 20060101AFI20160602BHJP
F04C 25/02 20060101ALI20160602BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
F04B37/16 D
F04B37/16 A
F04C25/02 B
F04B49/06 341J
【請求項の数】17
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-541297(P2013-541297)
(86)(22)【出願日】2011年11月24日
(65)【公表番号】特表2014-503732(P2014-503732A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】EP2011070900
(87)【国際公開番号】WO2012072478
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年11月20日
(31)【優先権主張番号】10015125.7
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513132966
【氏名又は名称】ジーイー エナジー パワー コンバージョン テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GE Energy Power Conversion Technology Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】イングレス,マーチン,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】フェア,ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】ユージン,ジョセフ
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/031287(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/16
F04B 49/06
F04C 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ボックス(エンクロージャ)(2)内に高真空を維持するシステム(1)において、
真空ボックス(2)、
真空容器(4)、
入力端(6)を前記真空ボックス(2)に接続し、かつ出力端(8)を前記真空容器(4)に接続した高真空ポンプ(3)、および
前記真空容器(4)に接続可能な第2の真空ポンプ(5)からなり、
前記高真空ポンプ(3)を作動して前記真空ボックス(2)を高真空に維持し、そして前記第2の真空ポンプ(5)を定期的に作動させることによって前記真空容器(4)を閾値圧力未満に維持し、
前記第2の真空ポンプ(5)を作動する必要がある時にのみ、前記第2の真空ポンプ(5)を前記真空容器(4)に接続することを特徴とするシステム(1)。
【請求項2】
真空ボックス(エンクロージャ)(2)内に高真空を維持するシステム(1)において、
真空ボックス(2)、
真空容器(4)、
入力端(6)を前記真空ボックス(2)に接続し、かつ出力端(8)を前記真空容器(4)に接続した高真空ポンプ(3)、および
前記真空容器(4)に接続可能な第2の真空ポンプ(5)からなり、
前記高真空ポンプ(3)を作動して前記真空ボックス(2)を高真空に維持し、そして前記第2の真空ポンプ(5)を定期的に作動させることによって前記真空容器(4)を閾値圧力未満に維持し、
前記真空ボックスが回転クリオスタットであり、
前記回転クリオスタットと一体回転するように前記高真空ポンプおよび前記真空容器が取り付けられることを特徴とするシステム(1)。
【請求項3】
前記第2の真空ポンプ(5)を前記真空容器(4)に恒久的に接続する請求項1または2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記第2の真空ポンプ(5)が低真空ポンプである請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記第2の真空ポンプ(5)がダイヤフラム式ポンプである請求項4に記載のシステム(1)。
【請求項6】
さらに、前記真空容器(4)と前記第2の真空ポンプ(5)との間の接続部(9)に弁(10)を形成した請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記高真空ポンプ(3)がターボ分子ポンプである請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記高真空ポンプ(3)への前記入力端(6)が弁(7)を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項9】
前記真空ボックスがクリオスタット(2)である請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項10】
前記真空ボックスが回転クリオスタットである請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記回転クリオスタットと一体回転するように前記高真空ポンプおよび前記真空容器を取り付ける請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記クリオスタットの回転軸が前記高真空ポンプの回転軸と同軸となるように前記回転クリオスタットに前記高真空ポンプを取り付ける請求項2または11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2の真空ポンプを前記回転クリオスタットの回転によって付勢する請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
真空ボックス(エンクロージャ)(2)内に高真空を維持する方法であって、この真空ボックス(2)を高真空ポンプ(3)の入力端(6)に接続し、かつこの高真空ポンプ(3)の出力端(8)を真空容器(4)に接続する方法において、
前記高真空ポンプ(3)を作動して前記真空ボックス(2)内に高真空を維持する工程、および
第2の真空ポンプ(5)を定期的に作動して前記真空容器(4)を排気することによって前記真空容器(4)内の圧力を閾値圧力未満に維持する工程を含み、
前記第2の真空ポンプ(5)を作動することによって前記真空容器(4)内に前記圧力を維持する工程が、各作動前に前記第2の真空ポンプ(5)を前記真空容器(4)に接続し、かつ各作動後に前記第2の真空ポンプ(5)を前記真空容器(4)から取り外す構成である、方法。
【請求項15】
真空ボックス(エンクロージャ)(2)内に高真空を維持する方法であって、この真空ボックス(2)を高真空ポンプ(3)の入力端(6)に接続し、かつこの高真空ポンプ(3)の出力端(8)を真空容器(4)に接続する方法において、
前記高真空ポンプ(3)を作動して前記真空ボックス(2)内に高真空を維持する工程、および
第2の真空ポンプ(5)を定期的に作動して前記真空容器(4)を排気することによって前記真空容器(4)内の圧力を閾値圧力未満に維持する工程を含み、
前記真空ボックスが回転クリオスタットであり、
前記回転クリオスタットと一体回転するように前記高真空ポンプおよび前記真空容器が取り付けられる、方法。
【請求項16】
前記第2の真空ポンプ(5)を前記真空容器(4)に恒久的に接続する請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の真空ポンプ(5)が低真空ポンプ又はダイヤフラム式ポンプであり、
前記高真空ポンプ(3)がターボ分子ポンプである請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高真空ポンプ、真空容器および第2真空ポンプを使用して、クリオスタット(低温保持装置)などの真空ボックス(エンクロージャ)(vacuum enclosure)に高真空を維持する方法およびシステム(装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの用途で、真空ボックス内に高い真空を発生かつ維持することが必要である。例えば、極低温範囲内に構成素子を維持するためには、極低温に冷却された構成素子を真空ボックス内に封入し、これら素子が加熱されることを最小限に抑える必要があることが多く、結果として、高真空を維持するシステムおよび方法が必要である。
【0003】
容易に理解できるように、高真空とは、残留ガスの平均自由行程がこれらガスを含有する真空ボックスの大きさより長い任意の真空を意味する。一般に、高真空は圧力が約100 mPa以下の真空と定義されている。
【0004】
高真空を発生するためには、多段ポンプ機能が必要である。代表例を挙げると、これは、高真空ポンプと第2段真空ポンプ(second-stage vacuum pump)を併用すると実現できる。高真空ポンプはターボ分子ポンプかその他の同様なポンプであればよく、これは真空ボックスに接続できる入力端と出口端を備えている。高真空ポンプの出口端は、第2段真空ポンプの入力端に接続する。第2段真空ポンプは、周囲の環境に通気する(vented to the surrounding)出口端を有する。高真空を維持するためには、高真空ポンプと第2段ポンプの両者が連続作動するように構成する必要がある。
【0005】
代表的な2段ポンプ機能システムの場合、高真空ポンプの入り口端および真空ボックスを高真空に維持する。この場合、高真空ポンプはこのポンプに流入するガスを圧縮し、高真空ポンプの出口端の圧力を前記入り口端および真空ボックスの圧力よりも高くする。そして高真空ポンプの出口端を第2段真空ポンプの入り口端に接続する。第2段真空ポンプが作動して、高真空ポンプから流入するガスを圧縮するが、この第2段真空ポンプはその入力端よりも高い圧力の出力端を備えている。第2段真空ポンプの主目的は、確実に高真空ポンプの出口端を低圧または中圧状態に置くことである。これは、多くの高真空ポンプの場合、大気圧になるまで排気されると作用しなくなるため必要な手段である。
【0006】
このように、2つの個別の真空ポンプの連続作動により真空を維持する必要があるため、一部の用途(applications)では問題が生じる。これは、真空ポンプの良好な動作を維持するためには、真空ポンプのメンテナンスを定期的に行う必要があるからである。これは、真空ボックスをアクセス不能な位置に設ける用途において顕著になる問題である。さらに、2台の真空ポンプを使用することは、真空ボックスが作動時に静止状態にない場合問題になる。特に顕著な問題が生じる一つの用途は、超伝導風力タービンの回転クリオスタットである。これらクリオスタットは作動時回転し、そのセット場所は風力タービンタワー頂部のナセルのアクセスが全く不可能な場所である。
【0007】
現在、従来からの2段ポンプ機能システムを使用して、超伝導風力タービンの回転クリオスタットに高真空を与えることは不可能である。一つの理由は、このようなタービンのローターシャフトの伝導率が非常に低いことである。なお、従来の連続作動式2段ポンプ機能システムが全体として不都合な別な理由もある。従って、超伝導風力タービンの回転クリオスタットに高真空を与えるために現在提案されている対策では、複数のゲッターを予め排気処理した高真空ボックス内に設けている。ゲッターの場合限られた時間高真空を維持できるが、定期的な間隔をおいて再付勢が必要である。高真空内でゲッターを再付勢する場合、真空ボックスを再加圧して、ゲッターにアクセスし、ゲッターの再付勢後に外部の真空ポンプセットを使用して真空ボックスにポンプ作用を与えて、高真空を発生する必要がある。なお、非蒸発性のゲッターを使用する場合、真空ボックスを再加圧する必要はないが、その代わりにポンプ機能システムを真空ボックスに接続して、ゲッターの再付勢時に真空を真空ボックスに維持する必要がある。
【0008】
以上説明した通り、アクセス不能な位置にあり、および/または作動時静止状態にない真空ボックスに高真空を与える改良システムおよび方法が依然として求められている。このようなシステムおよび/または方法の場合、超伝導風力タービンやその他の電気装置などの回転クリオスタットに高真空を与えることができることが必要な好ましい要件である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は真空ボックス(エンクロージャ)内に高真空を維持するシステムにおいて、真空ボックス(vacuum enclosure)、真空容器(vacuum vessel)、入力端(input)を前記真空ボックスに接続し、かつ出力端(output)を前記真空容器に接続した高真空ポンプ、および前記真空容器に接続可能な第2の真空ポンプからなり、前記高真空ポンプを作動して前記真空ボックスを高真空に維持し、そして前記第2の真空ポンプを定期的に作動させることによって前記真空容器を閾値圧力未満に維持するシステムを提供するものである。
【0010】
従来の2段ポンプ機能システムの第2段ポンプを省略できる点で、本発明システムは従来技術よりも有利である。高真空ポンプの出力端を閾値圧力未満に維持された真空容器に接続することによって、第2の真空ポンプを一定作動することなく高真空ポンプを作動できる。真空容器の閾値圧力としては、高真空ポンプの作動に悪影響を与えることなく、高真空ポンプの出力が最大になる圧力が好ましい。特に、高真空ポンプの出力が、高真空ポンプの作動停止が起きない圧力に維持されていることが好ましい。
【0011】
容易に理解できるように、高真空ポンプが作動すると、真空容器に高真空ポンプの出力が放出するため、真空容器の圧力が徐々に高くなる。ところが、封止された真空ボックス内にいったん高真空が設定されると、昇圧率が比較的低くなる結果、第2の真空ポンプを使用して真空容器を定期的に排気するだけでよくなる。第2段真空ポンプを連続作動する必要がなくなるため、従来システムと比較した場合、ポンプ機能システムの技術的な複雑性および所要のメンテナンスが大幅に小さくなる。
【0012】
第2の真空ポンプの定期的な作動は、真空容器の圧力を閾値圧力未満に維持するために必要である。当業者ならば理解できるように、本発明システムを作動して真空容器を再排気するために必要な時間は、本システムの第1回作動時の真空容器の容積および真空容器の圧力に依存する。本発明によれば、これは任意の具体的なシステムに応じて容易に設定できる。すなわち、第2の真空ポンプの場合、真空容器内の圧力が予め設定された限界を超えた時点に従って定期的に作動すればよい。あるいは、第2の真空ポンプを予め設定された時間間隔に従って作動させることも可能である。いずれにせよ必要なことは、第2の真空ポンプの定期的な作動によって真空容器内の圧力を閾値圧力未満に維持することである。
【0013】
第2の真空ポンプの場合、真空容器に恒久的に接続してもよく、あるいは真空容器から取り外せるように構成してもよい。第2の真空ポンプを真空容器から取り外せるように構成した場合には、第2の真空ポンプを作動して真空容器の圧力を閾値圧力未満に維持することが必要な時にのみ真空容器に接続することが好ましい。第2の真空ポンプを真空容器から取り外せるように構成した場合、当業者にとって自明な任意の好適な手段によって真空容器に接続すればよい。
【0014】
本発明のシステムの場合、さらに必要な時に第2の真空ポンプを作動させるコントローラを備えていてもよい。
【0015】
第2の真空ポンプとしては低真空ポンプを使用することが好ましい。当業者にとって自明なように、この低真空ポンプは適正な真空を維持するために従来システムに好適に使用されている任意の低真空ポンプであればよい。なお、低真空ポンプとしてはダイヤフラム式ポンプが好ましい。
【0016】
真空容器に定期的にポンプ作用を加えるためには、本発明システムの場合、真空容器と第2の真空ポンプとの間の接続部に弁手段を設けることが有利である。真空容器内に好適な圧力を維持するためには、第2の真空ポンプが真空容器に作動接続していない時に、および/または作動していない時に、この弁手段を閉じればよい。第2の真空ポンプが真空容器に接続している時にのみ弁手段を開き、真空容器内の圧力を閾値圧力未満に維持するために弁手段を作動する。弁手段は、当業者にとって公知な任意の好適な弁手段であればよい。本発明システムの場合、この弁手段を制御するコントローラを備えることができる。弁手段コントローラは分離独立した制御手段でもよく、あるいは第2の真空ポンプの任意のコントローラと一体的な制御手段でもよい。
【0017】
高真空ポンプは、高真空を維持するために従来のシステムに使用するのに好適な任意の高真空ポンプであればよいが、例えば角度の付いたブレードを備えた急速回転ローターを使用して排気端または出口端の方向に気体分子に勢い(運動量)を与える形式のターボ分子ポンプを使用することが好ましい。
【0018】
また、高真空ポンプに対する入力端に弁を設けることが有利である。この弁を設けると、必要に応じて真空ボックスを高真空ポンプからシールすることができる。これは、高真空ポンプの定期的な作動を利用して真空ボックス内に好適な圧力を維持できるため有利である。あるいは、またはこれに付加して、真空ボックスと高真空ポンプとの間に弁を設けてもよく、真空ボックスを排気する必要なく高真空ポンプを維持することができる。本発明システムの場合、高真空ポンプの間欠的な作動を制御するコントローラを備えることも可能である。このコントローラは分離独立した制御手段でもよく、あるいはシステムの他の任意の制御手段と一体化された制御手段でもよい。
【0019】
真空ボックスとしては、例えば超伝導電気装置のクリオスタットなどのクリオスタットを使用することができる。真空ボックスがクリオスタットの場合、これは回転クリオスタットであればよい。
【0020】
真空ボックスが回転クリオスタットの場合には、システムの高真空ポンプ、真空容器およびその他の構成素子を回転クリオスタットとともに(回転基準フレーム内で)一体回転できるように取り付けることが好ましい。これら構成素子が回転クリオスタットと一体回転するため、静止素子と回転素子との間に回転結合を設ける必要がない。
【0021】
システムの構成素子を回転クリオスタットと一体回転するように取り付ける場合、クリオスタットの回転軸が高真空ポンプの回転軸(および場合によっては第2真空ポンプの回転軸)と同軸になるように高真空ポンプ(および場合によっては第2真空ポンプ)を回転クリオスタットに取り付けることが好ましい。これは、このように真空ポンプ(複数の場合もある)を取り付けると、システムの作動時に真空ポンプ(複数の場合もある)へ悪影響があるジャイロスコープ効果を最小限に抑えることができるからである。
【0022】
本発明システムを回転クリオスタットと併用する場合、あるいは回転クリオスタットで構成する場合、第2の真空ポンプの作動が回転クリオスタットの回転によって付勢されるように第2の真空ポンプを取り付けることができる。これは、当業者にとって自明な任意の方法で行うことができる。
【0023】
なお、本発明のシステムを使用して超伝導風力タービン(あるいはその他の電気装置)の回転クリオスタットに高真空を維持した場合、ゲッターを使用して同じ装置に高真空を維持する場合よりもかなり有利である。特に、ゲッターは定期的な間隔で(例えば六カ月ごとに)再付勢する必要があるが、本発明システムの場合、相当な長期間にわたって使用することができ、その後にメンテナンスを行えばよい。この場合でも、メンテナンスを最も必要とすると考えられる素子は第2の真空ポンプであり、従ってクリオスタットを加圧操作してメンテナンスを行う必要はない。
【0024】
前記のように、高真空を維持するための従来のシステムは回転クリオスタットとは併用できなかった。本発明システムは回転クリオスタットと併用することができる上に、回転クリオスタットと一体回転できるように取り付けることができる。本発明システムは、真空容器を備えるが、このシステムは従来技術(すなわち、中間真空容器を付設していない、従来の2段真空維持ポンプ機能システム)に取り付け、回転クリオスタットと一体回転できるように構成できる。これは、当業者にとって自明な方法で行うことができる。
【0025】
従来の高真空維持システムを取り付けて、回転クリオスタットと一体回転できるようにした場合、一方のポンプまたは両方のポンプを回転クリオスタットの回転によって付勢するのが好ましい。これは、当業者にとって自明な方法で行うことができる。なお、従来システムの2段ポンプの場合、単純な機械的手段を使用するクリオスタットの回転によって付勢することができる。
【0026】
また、本発明は、真空ボックス内に高真空を維持する方法であって、この真空ボックスを高真空ポンプの入力端に接続し、かつこの高真空ポンプの出力端を真空容器に接続する方法において、前記高真空ポンプを作動して前記真空ボックス内に高真空を維持する工程、および第2の真空ポンプを定期的に作動して前記真空容器を排気することによって前記真空容器内の圧力を閾値圧力未満に維持する工程からなる方法を提供するものでもある。
【0027】
本発明のシステムと同様に、本発明方法は第2の真空ポンプの連続作動により真空ボックス内に高真空を維持する必要がない点で従来技術よりも有利である。代わりに、高真空ポンプの出力端と第2の真空ポンプの入力端との間に中間真空容器を設け、かつ真空容器の圧力を閾値圧力未満に維持することによって、第2の真空ポンプを定期的に作動するだけでよい。
【0028】
本発明方法を実施するためには、第2の真空ポンプを真空容器に恒久的に接続するか、あるいは真空容器から取り外すことができるように構成すればよい。第2の真空ポンプを真空容器から取り外すことができる場合には、本発明の方法はさらに、第2の真空ポンプを作動する前にこれを真空容器に接続し、そして第2の真空ポンプの作動後にこれを真空容器から取り外す工程を有する。これは、真空ボックスが作動時静止状態にない場合に特に有利である。第2の真空ポンプを相当な長期間にわたって真空ボックスから取り外しておくことができ、そしてこれらの期間、真空ボックスは第2の真空ポンプを真空ボックスに物理的に接続したままにした場合には不可能な態様で作動できる。例えば、真空ボックスを高速で回転させることが可能である。これらの状態では、第2の真空ポンプを真空ボックスに接続する必要があるときに、真空ボックスの回転を停止できる。
【0029】
前記本発明システムの選択的な特徴は、本発明方法にも利用可能である。特に、第2の真空ポンプとして低真空ポンプを使用することができ、高真空ポンプとしてターボ分子ポンプを使用することができ、そして真空ボックスとしてクリオスタットを使用することができる。真空ボックスがクリオスタットの場合には、回転クリオスタットを使用することができ、そして真空ボックス、高真空ポンプおよび第2の真空ポンプの一部または全部を、場合によっては任意の、あるいは各素子を回転クリオスタットと同軸設定することによって、回転クリオスタットと一体回転できるように構成することができる。
【0030】
本発明システムの具体的な実施態様を以下に説明するとともに、添付図面に示す。本システムは、本発明方法によって作動する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明方法に従って作動する本発明システムの一実施態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に、本発明の高真空維持システムを示す。本システム1は静止クリオスタット2、ターボ分子ポンプ3(あるいは高真空ポンプ)、真空容器4およびダイヤフラム式ポンプ5(あるいは第2の真空ポンプ)からなる。ターボ分子ポンプ3の入り口端6はクリオスタット2に接続する。ターボ分子ポンプ3の入り口端6は、必要に応じて入り口端を開きかつシールする弁7を有する。ターボ分子ポンプ3の出口端8は真空容器4に接続する。ダイヤフラム式ポンプ5の入り口端9は真空容器4に接続可能である(
図1では作動接続している)。また、ダイヤフラム式ポンプの入り口端9は弁10を備えているため、ダイヤフラム式ポンプを真空容器に接続するさいに必要に応じて入り口端部を開きかつシールすることができる。
【0033】
システム1は次のように作動してクリオスタット2内に高真空を維持できる。正常作動時、ターボ分子ポンプ3の入り口端6の弁7が開動作し、ターボ分子ポンプが連続作動して、クリオスタット2内の圧力を従来通り高真空範囲内に維持する。ターボ分子ポンプ3の出口端8によりターボ分子ポンプからの排気ガスが真空容器4に向けて方向を変える。正常作動時、弁10は閉じ、ダイヤフラム式ポンプ5は真空容器4に作動接続しない。
【0034】
初期作動前で、クリオスタット2が高真空に排気された後、ダイヤフラム式ポンプ5を使用して真空容器4を排気し、ターボ分子ポンプ3の出口端8に好適な圧力にする。なお、真空容器4に好適な圧力とは、ターボ分子ポンプ3が良好に作動する圧力を意味する。特に、真空容器4の圧力は、例えば、ターボ分子ポンプ3の作動が停止することがないように十分低くなければならない。真空容器4の排気後、弁10を閉じると、ダイヤフラム式ポンプ5が真空容器4から作動離脱する。次に、従来通りターボ分子ポンプ3を作動してクリオスタット2内に高真空を維持する。
【0035】
ターボ分子ポンプ3が作動している間、ガスがターボ分子ポンプ3の排気端から真空容器4に流れ込むため、真空容器4の圧力が経時的に上昇する。真空容器4の圧力が第1の予め設定された限界値(すなわち閾値圧力)まで上昇すると、ダイヤフラム式ポンプ5が真空容器4に作動接続する。ダイヤフラム式ポンプ5の入り口端9の弁10が開動作し、ダイヤフラム式ポンプ5が作動して真空容器を再排気する。ダイヤフラム式ポンプ5の作用によって真空容器4内の圧力が第2の予め設定された限界値まで下がると、ダイヤフラム式ポンプ5の入り口端9の弁10が閉動作し、ダイヤフラム式ポンプが停止し、真空容器4からダイヤフラム式ポンプが作動離脱する。このようにして、真空容器4内の圧力を第1の予め設定された限界値(閾値圧力に等しいかそれよりも低い)と第2の予め設定された限界値との間に恒久的に維持できる。ダイヤフラム式ポンプ5の作動時および作動後、ターボ分子ポンプ3を作動してクリオスタット2内に高真空を維持する。必要ならば、このダイヤフラム式ポンプ5は真空容器4から物理的に取り外すことができる。
【0036】
容易に理解できるように、第1および第2の予め設定された限界値の正確な値は、具体的な個々のシステムの必要条件に依存する値である。一般に、第2の予め設定された限界値は、ダイヤフラム式ポンプ5またはその他の従来のポンプ機能手段によって真空容器内に合理的に達成できる最も低い圧力であり、そして第1の予め設定された限界値は、ターボ分子ポンプ3の出口端8において維持することができる圧力の上限値、すなわち真空容器の閾値圧力である。
【0037】
クリオスタットとしては回転クリオスタットを利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1:高真空維持システム
2:真空ボックス(真空エンクロージャ)、クリオスタット
3:高真空ポンプ、ターボ分子ポンプ
4:真空容器
5:第2真空ポンプ、ダイヤフラム式ポンプ
6:入り口端、入力端
7:弁
8:出口端、出力端
9:入り口端、接続部
10:弁