特許第5934247号(P5934247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 協立化学産業株式会社の特許一覧

特許5934247貼り合せ用エネルギー線硬化型液状樹脂組成物、遮光用インク組成物及びそれらを用いる光学部品の製造方法
<>
  • 特許5934247-貼り合せ用エネルギー線硬化型液状樹脂組成物、遮光用インク組成物及びそれらを用いる光学部品の製造方法 図000005
  • 特許5934247-貼り合せ用エネルギー線硬化型液状樹脂組成物、遮光用インク組成物及びそれらを用いる光学部品の製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934247
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】貼り合せ用エネルギー線硬化型液状樹脂組成物、遮光用インク組成物及びそれらを用いる光学部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20160602BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20160602BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20160602BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20160602BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20160602BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160602BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20160602BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20160602BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20160602BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20160602BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   C09D11/101
   C09D11/00
   C09J133/00
   C09J4/02
   C09J163/00
   C09J11/06
   C09J5/00
   G06F3/041 495
   G02F1/1333 500
   G02F1/1335
   G09F9/00 302
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-545920(P2013-545920)
(86)(22)【出願日】2012年11月20日
(86)【国際出願番号】JP2012080030
(87)【国際公開番号】WO2013077306
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-253844(P2011-253844)
(32)【優先日】2011年11月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100125793
【弁理士】
【氏名又は名称】川田 秀美
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】白石 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森本 正浩
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−061623(JP,A)
【文献】 特開2009−186960(JP,A)
【文献】 特開2009−192794(JP,A)
【文献】 特開2009−025833(JP,A)
【文献】 特開2009−098187(JP,A)
【文献】 特開2009−175531(JP,A)
【文献】 特開2012−155264(JP,A)
【文献】 特開2001−089639(JP,A)
【文献】 特開2001−328174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
C09J 1/00−201/10
G02F 1/1333
G02F 1/1335
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルと表示体とを、又は遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルとタッチパネルとを、あるいは遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有するタッチパネルと表示体とを、前記遮光インク層を有する面が内側となるように、エネルギー線硬化性成分及び光重合開始剤を含むエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を介して貼り合せた光学部品の製造に使用する保護パネル又はタッチパネルの遮光用インク組成物であって、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含むことを特徴とする遮光用インク組成物であって、
エネルギー線硬化性成分は、アクリル系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、
エネルギー線硬化性成分がアクリル系樹脂である場合、
(ア)遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、有機過酸化物を含有する;又は
(イ)エネルギー線硬化型樹脂組成物は、有機過酸化物を含有し、遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、金属若しくはこれの錯体、又はアミンを含有する;あるいは
(ウ)エネルギー線硬化型樹脂組成物は、金属若しくはこれの錯体、又はアミンを含有し、遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、有機過酸化物を含有し、
エネルギー線硬化性成分がエポキシ系樹脂である場合、
(ア)遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、有機酸、低温加熱で酸を発生するスルホニウム塩系の酸発生剤、アミン化合物、及び低温加熱によってアミン化合物を発生する化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する;又は
(イ)エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ポリアミンを含有し、遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、三級アミンを含有する;あるいは
(ウ)エネルギー線硬化型樹脂組成物は、三級アミンを含有し、遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、ポリアミンを含有する、
遮光用インク組成物
【請求項2】
エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物がラジカル、カチオン又はアニオンを発生する化合物からなる群から選択した1種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項記載の遮光用インク組成物。
【請求項3】
エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルと表示体とを、又はエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルとタッチパネルとを、あるいはエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有するタッチパネルと表示体とを、前記遮光インク層を有する面が内側となるように、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を介して貼り合せた光学部品の製造に使用するエネルギー線硬化型液状樹脂組成物であって、エネルギー線硬化性成分及び光重合開始剤を含むことを特徴とするエネルギー線硬化型液状樹脂組成物、及び請求項1又は2記載の遮光用インク組成物を含む光学部品の貼り合せ用キットであって、
エネルギー線硬化性成分は、アクリル系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、
エネルギー線硬化性成分がアクリル系樹脂である場合、
(ア)遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、有機過酸化物を含有する;又は
(イ)エネルギー線硬化型樹脂組成物は、有機過酸化物を含有し、遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、金属若しくはこれの錯体、又はアミンを含有する;あるいは
(ウ)エネルギー線硬化型樹脂組成物は、金属若しくはこれの錯体、又はアミンを含有し、遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、有機過酸化物を含有し、
エネルギー線硬化性成分がエポキシ系樹脂である場合、
(ア)遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、有機酸、低温加熱で酸を発生するスルホニウム塩系の酸発生剤、アミン化合物、及び低温加熱によってアミン化合物を発生する化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する;又は
(イ)エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ポリアミンを含有し、遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、三級アミンを含有する;あるいは
(ウ)エネルギー線硬化型樹脂組成物は、三級アミンを含有し、遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、ポリアミンを含有する、
光学部品の貼り合せ用キット
【請求項4】
エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルと表示体とを、又はエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルとタッチパネルとを、あるいはエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有するタッチパネルと表示体とを、前記遮光インク層を有する面が内側となるように、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を介して貼り合わせた光学部品の製造方法であって、
(1)前記遮光用インク組成物を保護パネル又はタッチパネルの一面に配置し、遮光インク層を形成する工程、
(2)保護パネルの遮光インク層を有する面及び/又は表示体の少なくとも一面に、又は保護パネルの遮光インク層を有する面及び/又はタッチパネルの少なくとも一面に、あるいはタッチパネルの遮光インク層を有する面及び/又は表示体の少なくとも一面にエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を塗布する工程、
(3)保護パネル又はタッチパネルの遮光インク層を有する面を内側とした、前記保護パネルと前記表示体との間、又は前記保護パネルと前記タッチパネルとの間、あるいは前記タッチパネルと前記表示体との間に前記エネルギー線硬化型液状樹脂組成物が介した状態となるように前記保護パネルと前記表示体とを、又は前記保護パネルと前記タッチパネルとを、あるいは前記タッチパネルと前記表示体とを貼り合せる工程、及び
(4)前記保護パネルと前記表示体との間、又は前記保護パネルと前記タッチパネルとの間、あるいは前記タッチパネルと表示体との間に介在する前記エネルギー線硬化型液状樹脂組成物に遮光インク層を有する面方向からエネルギー線を照射することにより、及び前記遮光インク層とエネルギー線硬化型樹脂組成物とを接触させることにより前記エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させる工程
を含み、
エネルギー線硬化型液状樹脂組成物は、エネルギー線硬化性成分及び光重合開始剤を含み、
エネルギー線硬化性成分は、アクリル系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、
エネルギー線硬化性成分がアクリル系樹脂である場合、
(ア)遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、有機過酸化物を含有する;又は
(イ)エネルギー線硬化型樹脂組成物は、有機過酸化物を含有し、遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、金属若しくはこれの錯体、又はアミンを含有する;あるいは
(ウ)エネルギー線硬化型樹脂組成物は、金属若しくはこれの錯体、又はアミンを含有し、遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、有機過酸化物を含有し、
エネルギー線硬化性成分がエポキシ系樹脂である場合、
(ア)遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、有機酸、低温加熱で酸を発生するスルホニウム塩系の酸発生剤、アミン化合物、及び低温加熱によってアミン化合物を発生する化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する;又は
(イ)エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ポリアミンを含有し、遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、三級アミンを含有する;あるいは
(ウ)エネルギー線硬化型樹脂組成物は、三級アミンを含有し、遮光用インク組成物は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として、ポリアミンを含有する、
ことを特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項5】
エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物がラジカル、カチオン又はアニオンを発生する化合物からなる群から選択した1種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項記載の光学部品の製造方法。
【請求項6】
光学部品を含む光学表示装置の製造方法であって、前記光学部品は請求項4又は5記載の方法で製造する、製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護パネル、タッチパネル、表示体等の貼り合せ用のエネルギー線硬化型液状樹脂組成物、保護パネルやタッチパネル等の遮光用インク組成物、及びそれを用いる光学部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示体等の表示体は、薄いガラス基板を使用しているために、ガラス基板の保護を目的として、空気層を介して保護パネルが設置されている。また、アプリケーションの拡大に伴い、表示パネルの前面には保護パネルだけでなく、タッチパネルが設置されることが多くなった。
【0003】
近年、空気層が原因で起こる視認性の低下と表示体の補強を同時に満たす方法として、保護パネルあるいはタッチパネルを直接表示体に貼り合わせることが行われている。貼り合わせには、シート状の両面粘着シート(特許文献1)や液状樹脂が用いられる。また、保護パネルとタッチパネルの貼り合わせも同様の方法で行われている。
【0004】
保護パネルとタッチパネル又は表示体との貼り合せやタッチパネルと表示体との貼り合せに光硬化型の液状樹脂を用いた場合、保護パネルの遮光インク層等によって光が遮光されるため、硬化不良が生じることが問題視されている。遮光部の硬化不良に対して、光硬化と熱硬化の併用タイプが提案(特許文献2)されている。図1は、従来の実施態様を示す。図1に示すように、例えば保護パネル又はタッチパネル1と、表示体(パネル)又はタッチパネル4との貼り合せに、従来のエネルギー線硬化型樹脂組成物3を用いた場合、光源10からの光が透過した部分は、エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化部分5が形成される。しかし、図1に示すように、従来の実施態様において、保護パネル1の遮光インク層2によって、光源10からの光が遮光された部分は、硬化不良となり、エネルギー線硬化型樹脂組成物の未硬化部分6が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−692530号公報
【特許文献2】特開2010−26539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の熱硬化併用タイプでは、酸素阻害による硬化不良の問題や光学フィルムの保証条件のために熱硬化温度に上限(80℃)があるため十分な硬化状態を得られないといった問題がある。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、保護パネルの遮光インク下と表示体もしくはタッチパネル、あるいはタッチパネルの遮光インク下と表示体とによってできるような、光が届かない箇所の液状樹脂を低温で十分に硬化することができる、保護パネルと表示体もしくはタッチパネル、あるいはタッチパネルと表示体との貼り合せ用液状樹脂組成物及び保護パネルもしくはタッチパネルの遮光用インク組成物並びにそれらを含む貼り合せ用キット及びそれらを用いる光学部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、遮光用インク組成物中に貼り合わせ用のエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を添加しておき、これから形成した遮光インク層と貼り合わせ用液状樹脂組成物とが接触すると、エネルギー線の非存在下で低温でも液状樹脂組成物の硬化が始まることを知見したことにより達成された。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
・エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光性インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルと表示体とを、又はエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光性インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルとタッチパネルとを、あるいはエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光性インク組成物から形成した遮光インク層を有するタッチパネルと表示体とを、前記遮光インク層を有する面が内側となるように、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を介して貼り合せた光学部品の製造に使用するエネルギー線硬化型液状樹脂組成物であって、光重合開始剤を含むことを特徴とするエネルギー線硬化型液状樹脂組成物。
・エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物がラジカル、カチオン又はアニオンを発生する化合物からなる群から選択した1種以上の化合物を含むことを特徴とする、上記のエネルギー線硬化型液状樹脂組成物。
・遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルと表示体とを、又は遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルとタッチパネルとを、あるいは遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有するタッチパネルと表示体とを、前記遮光インク層を有する面が内側となるように、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を介して貼り合せた光学部品の製造に使用する保護パネル又はタッチパネルの遮光用インク組成物であって、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含むことを特徴とする遮光用インク組成物。
・エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物がラジカル、カチオン又はアニオンを発生する化合物からなる群から選択した1種以上の化合物を含むことを特徴とする、上記の遮光用インク組成物。
・上記のエネルギー線硬化型液状樹脂組成物、及び上記の遮光用インク組成物を含む光学部品の貼り合せ用キット。
・エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルと表示体とを、又はエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルとタッチパネルとを、あるいはエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有するタッチパネルと表示体とを、前記遮光インク層を有する面が内側となるように、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を介して貼り合わせた光学部品の製造方法であって、
(1)前記遮光用インク組成物を保護パネル又はタッチパネルの一面に配置し、遮光インク層を形成する工程、
(2)保護パネルの遮光インク層を有する面及び/又は表示体の一面に、又は保護パネルの遮光インク層を有する面及び/又はタッチパネルの一面に、あるいはタッチパネルの遮光インク層を有する面及び/又は表示体の一面にエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を塗布する工程、
(3)保護パネル又はタッチパネルの遮光用インク層を有する面を内側とした、前記保護パネルと前記表示体との間、又は前記保護パネルと前記タッチパネルとの間、あるいは前記タッチパネルと前記表示体との間に前記エネルギー線硬化型液状樹脂組成物が介した状態となるように前記保護パネルと前記表示体とを、又は前記保護パネルと前記タッチパネルとを、あるいは前記タッチパネルと前記表示体とを貼り合せる工程、及び
(4)前記保護パネルと前記表示体との間、又は前記保護パネルと前記タッチパネルとの間、あるいは前記タッチパネルと表示体との間に介在する前記エネルギー線硬化型液状樹脂組成物に遮光インク層を有する面方向からエネルギー線を照射することにより、及び前記遮光インク層とエネルギー線硬化型樹脂組成物とを接触させることにより前記エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させる工程
を含むことを特徴とする光学部品の製造方法。
・エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物がラジカル、カチオン又はアニオンを発生する化合物からなる群から選択した1種以上の化合物を含むことを特徴とする、上記の光学部品の製造方法。
・上記の方法で製造した光学部品。
・上記の光学部品を含む光学表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保護パネルの遮光インク下と表示体もしくはタッチパネルとによって、あるいはタッチパネルの遮光インク下と表示体とによってできるような、光が届かない箇所のエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を低温下でも十分に硬化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の遮光用インク組成物及びエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を用いる光学部品の製造方法の概略を示す図である。
図2】本発明の遮光用インク組成物及びエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を用いる光学部品の製造方法の一例の概略を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、光学部品の貼り合せ用エネルギー線硬化型液状樹脂組成物、光学部品における保護パネル又はタッチパネルの遮光用インク組成物、並びにそれらから製造した光学部品及び光学表示装置に関する。
【0013】
<エネルギー線硬化型液状樹脂組成物>
本発明は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルと表示体とを、又はエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルとタッチパネルとを、あるいはエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有するタッチパネルと表示体とを、前記遮光インク層を有する面が内側となるように、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を介して貼り合せた光学部品の製造に使用するエネルギー線硬化型液状樹脂組成物であって、光重合開始剤を含むことを特徴とするエネルギー線硬化型液状樹脂組成物である。
【0014】
本発明におけるエネルギー線としては、電子線、X線、紫外線、低波長領域の可視光等エネルギーの高い電子線若しくは電磁波が挙げられるが、通常装置の簡便性及び普及性から紫外線や低波長領域の可視光が好ましい。
【0015】
本発明のエネルギー線硬化型液状樹脂組成物は、エネルギー線硬化性成分と光重合開始剤を含有する。
【0016】
エネルギー線硬化性成分としては、任意の公知の成分を使用することができる。アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂組成物等が例示できるが、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が好ましい。
【0017】
本発明における光重合開始剤は、エネルギー線を照射することによりラジカル、カチオン又はアニオン等を発生し、これによりエネルギー線硬化性成分を硬化する化合物である。光重合開始剤の量は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物に対して、0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、特に1〜10重量%である。
【0018】
ラジカル発生剤としては、例えば、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド類;2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステルなどのアシルフォスフィン酸エステル類;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ2−2プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル1,4−(メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、4−ジフェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどのアセトフェノン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ジフェノキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
カチオン発生剤としては、アリールジアゾニウム塩、ジアリールハロニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリホスホニウム塩、鉄アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノールアルミニウム錯体などのイオン性光酸発生剤;ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、燐酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナートなどの非イオン性光酸発生剤などがあげられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
アニオン発生剤としては、1,10−ジアミノデカン、4,4’−トリメチレンジピペラジン、カルバメート類及びその誘導体、コバルト−アミン錯体類、アミノオキシイミノ類、アンモニウムボレート類等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
本発明のエネルギー線硬化型液状樹脂組成物は、後述するように、遮光用インク組成物がエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として(b)化合物を含む場合、光重合開始剤に加えて、(c)化合物を含む必要があり、また、遮光用インク組成物がエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として(c)化合物を含む場合、光重合開始剤に加えて、(b)化合物を含む必要がある。前者の場合、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物中、(c)化合物は、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.05〜15重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%含まれ、後者の場合、(b)化合物は、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、特に好ましくは1〜10重量%含まれる。
【0022】
<遮光用インク組成物>
本発明は、遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルと表示体とを、又は遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルとタッチパネルとを、あるいは遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有するタッチパネルと表示体とを、前記遮光インク層を有する面が内側となるように、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を介して貼り合せた光学部品の製造に使用する保護パネル又はタッチパネルの遮光用インク組成物であって、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含むことを特徴とする遮光用インク組成物である。
【0023】
本発明における遮光用インク組成物は、遮光性の膜を形成する任意のインクにエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を加えたものであり得る。従来から公知の遮光用インクとしては、例えば、水性インク、溶剤型インク、熱硬化型インク、エネルギー線硬化性インクが挙げられる。
【0024】
水性インク、溶剤型インク、熱硬化型インクは、オーブンなどの加熱により溶剤が蒸発又は熱重合することにより塗膜を形成するインクのことである。市販のものとしては、例えば、帝国インキ製造社製溶剤型インキシリーズ(GLS、INQ、IPX、ISX、MRXなど)、機能型インキシリーズ(MIR、TOC、MIB、MIXなど)、セイコーアドバンス社製溶剤インキシリーズ(HAC、MS8、HF、#1690Nなど)、機能性インキシリーズ(鏡面インキ、OSA、IRなど)、十条ケミカル社製反応型インキシリーズ(エピライト、APなど)が挙げられる。
【0025】
エネルギー線硬化型インクは、UVやEBなどのエネルギー線を照射することにより、反応硬化させ、塗膜を形成するインクのことである。市販のものとしては、例えば、十条ケミカル社製レイキュアーインキシリーズ(4300OP、4700VX、4700LPなど)、帝国インキ製造社製UV型インキシリーズ(UV−PALなど)、セイコーアドバンス社製UVタイプインキシリーズ(HUG、RIG FPなど)が挙げられる。
【0026】
本発明におけるエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物は、エネルギー線の非存在下、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物と混合すると、80℃以下の温度(以下、「低温」という)、好ましくは60℃以下の温度、特に常温でラジカル、カチオン又はアニオンを発生し、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させる化合物をいう。エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物は、(a)エネルギー線の非存在下、低温で後述の(b)化合物及び(c)化合物を含まないエネルギー線硬化型液状樹脂組成物と混合しても、これを硬化させる化合物、(b)エネルギー線の非存在下、低温で後述の(c)化合物を含むエネルギー線硬化型液状樹脂組成物と混合しても活性化され、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させる化合物、及び(c)エネルギー線の非存在下、低温で(b)化合物を含有するエネルギー線硬化型液状樹脂組成物と混合しても(b)化合物を活性化し、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させる化合物から選択したいずれかの化合物をいう。
【0027】
上記(a)化合物としては、有機過酸化物(例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートなど)、ルイス酸(三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズなど)、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)など)、酸(有機酸または低温加熱で酸を発生するスルホニウム塩系の酸発生剤など)、塩基(脂肪族ポリアミン等のポリアミン、イミダゾール、ヒドラジド及びケチミン等のアミン化合物、低温加熱によってアミン化合物を発生する化合物など)、ポリアミド樹脂、ポリメルカプタン、及び白金族系金属化合物又はその錯体(塩化白金(IV)、塩化白金酸六水和物、ビス(アルキニル)ビス(トリフェニルホスフィン)白金錯体など)等が挙げられる。エネルギー線硬化型液状樹脂組成物の種類や反応性、温度によっては後述の(b)化合物を(a)化合物として使用することができる。
【0028】
(a)化合物は、エネルギー線の非存在下、低温でエネルギー線硬化型液状樹脂組成物と混合しても、これを硬化させるので、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物と混合して一液化することはできない。
【0029】
(a)化合物は、遮光用インク組成物中に、好ましくは0.01〜80重量%、より好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは1〜30重量%含まれる。
【0030】
上記(b)化合物としては、有機過酸化物(例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルなど)、ポリアミン、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)など)、酸無水物(無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸など)、芳香族アミン、ヒドラジド、アミンアダクト類、ジシアンジアミド、ポリスルフィド樹脂等が挙げられる。エネルギー線硬化型液状樹脂組成物の種類や反応性、温度によっては前述の(a)化合物を(b)化合物として使用することができる。
【0031】
遮光用インク組成物がエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として(b)化合物を含む場合、(c)化合物をエネルギー線硬化型液状樹脂組成物に含ませる必要がある。
【0032】
(b)化合物は、遮光用インク組成物中に、好ましくは0.01〜80重量%、より好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは1〜30重量%含まれる。
【0033】
上記(c)化合物としては、金属又はその錯体、アミン、三級アミン、ホウ酸エステル、ルイス酸、イミダゾール等が挙げられる。
【0034】
金属としては、例えば、鉄(Fe)、アルミニウム(Al) 、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、チタン(Ti)が挙げられ、金属錯体としては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、カルボン酸、アルコキシド、アミン化合物、アミド化合物、ヒドロキシメート酸、ケトン化合物、イミン化合物、チオール化合物等の錯化剤と前記金属との錯体、具体的には、アセチルアセトンとバナジウムの錯体であるアセチルアセトンバナジル(日本化学産業社製:ナーセムバナジル)、バナジウムアルコキシドであるバナジウムオキシトリイソブトキシド(日亜化学社製))等が挙げられる。
【0035】
遮光用インク組成物がエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物として(c)化合物を含む場合、(b)化合物をエネルギー線硬化型液状樹脂組成物に含ませる必要がある。
【0036】
(c)化合物は、遮光用インク組成物中に、好ましくは0.01〜80重量%、より好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは1〜30重量%含まれる。
【0037】
エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物は、エネルギー線硬化型樹脂組成物の成分に応じて、適宜選択することができる。エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物は、例えば、エネルギー線硬化型樹脂組成物がアクリル系樹脂の場合やエポキシ樹脂の場合は、以下の通りである。
【0038】
アクリル系のエネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた場合は、
(ア)エネルギー線硬化型樹脂組成物に光重合開始剤を加え、遮光用インク組成物中には、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物である(a)化合物として、有機過酸化物、又はアゾ化合物を含有させるのが好ましく;又は
(イ)エネルギー線硬化型樹脂組成物に、光重合開始剤に加えて、(b)化合物としての前述の有機過酸化物、又は前述のアゾ化合物を含有させ、遮光用インク組成物中には、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物である(c)化合物として、前述したような金属若しくはこれの錯体、又は前述したようなアミンを含有させるのが好ましく;あるいは
(ウ)エネルギー線硬化型樹脂組成物に、光重合開始剤に加えて、(c)化合物としての前述の金属若しくはこれの錯体、又は前述したようなアミンを含有させ、遮光用インク組成物中には、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物である(b)化合物として、前述の有機過酸化物、又は前述のアゾ化合物を含有させるのが好ましい。
【0039】
エポキシ系のエネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた場合は、
(ア)エネルギー線硬化型樹脂組成物に光重合開始剤を加えて、遮光用インク組成物中には、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物である(a)化合物として、前記した酸や塩基、特に、酸としては、有機酸または低温加熱で酸を発生するスルホニウム塩系の酸発生剤、塩基としては、ポリアミン、イミダゾール、ヒドラジド等のアミン化合物、低温加熱によってアミン化合物を発生する化合物を含有させるのが好ましく;又は
(イ)エネルギー線硬化型樹脂組成物に、光重合開始剤に加えて、(b)化合物としての前述のポリアミンを含有させ、遮光用インク組成物中には、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物である(c)化合物として、前述したような三級アミンを含有させるのが好ましく;あるいは
(ウ)エネルギー線硬化型樹脂組成物に、光重合開始剤に加えて、(c)化合物としての前述の三級アミンを含有させ、遮光用インク組成物中には、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物である(b)化合物として、前述のポリアミンを含有させるのが好ましい。
【0040】
<貼り合せ用キット>
本発明は、上記のエネルギー線硬化型液状樹脂組成物、及び上記の遮光用インク組成物を含む光学部品の貼り合せ用キットである。本キットは、それぞれ別々の容器に入ったエネルギー線硬化型液状樹脂組成物及び上記の遮光用インク組成物を含む形態であり得る。
【0041】
本発明の貼り合せ用キットにおいて、遮光用インク組成物は、保護パネル又はタッチパネルの遮光インク層を形成するために使用され、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物は、遮光インク層を有する保護パネルと表示体とを、又は遮光インク層を有する保護パネルとタッチパネルとを、あるいは遮光インク層を有するタッチパネルと表示体とを、前記遮光インク層を有する面が内側となるように、貼り合わせるために使用される。したがって、本キットにおいては、遮光用インク組成物が(a)化合物を含み、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物が光重合開始剤を含むか;遮光用インク組成物が(b)化合物を含み、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物が光重合開始剤及び(c)化合物を含むか;あるいは、遮光用インク組成物が(c)化合物を含み、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物が光重合開始剤及び(b)化合物を含む。
【0042】
<光学部品の製造方法>
本発明は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルと表示体とを、又はエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有する保護パネルとタッチパネルとを、あるいはエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物から形成した遮光インク層を有するタッチパネルと表示体とを、前記遮光インク層を有する面が内側となるように、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を介して貼り合わせた光学部品の製造方法であって、以下の工程を含む。
【0043】
(1)前記遮光用インク組成物を保護パネル又はタッチパネルの一面に配置し、遮光インク層を形成する工程、
(2)保護パネルの遮光インク層を有する面及び/又は表示体の一面に、又は保護パネルの遮光インク層を有する面及び/又はタッチパネルの一面に、あるいはタッチパネルの遮光インク層を有する面及び/又は表示体の一面にエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を塗布する工程、
(3)保護パネル又はタッチパネルの遮光インク層を有する面を内側とした、前記保護パネルと前記表示体との間、又は前記保護パネルと前記タッチパネルとの間、あるいは前記タッチパネルと前記表示体との間に前記エネルギー線硬化型液状樹脂組成物が介した状態となるように前記保護パネルと前記表示体とを、又は前記保護パネルと前記タッチパネルとを、あるいは前記タッチパネルと前記表示体とを貼り合せる工程、及び
(4)前記保護パネルと前記表示体との間、又は前記保護パネルと前記タッチパネルとの間、あるいは前記タッチパネルと表示体との間に介在する前記エネルギー線硬化型液状樹脂組成物に遮光インク層を有する面方向からエネルギー線を照射することにより、及び前記遮光インク層とエネルギー線硬化型樹脂組成物とを接触させることにより前記エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させる工程。
【0044】
上記(1)工程は、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物を含む遮光用インク組成物を、例えば印刷などの手段により、保護パネルの一面に配置した後、例えば加熱して溶媒を揮発させ又は重合させて遮光インク塗膜層を形成する工程である。遮光用インク組成物の塗布厚みは、例えば0.5μmt〜100μmt、好ましくは1μmt〜50μmtである。
【0045】
上記(2)工程は、保護パネルと表示体の場合、保護パネルの遮光インク層を有する面にエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を塗布するか、表示体の一面にエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を塗布するか、又は保護パネルの遮光インク層を有する面と表示体の一面の両方にエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を塗布する工程である。保護パネルとタッチパネルの場合、及びタッチパネルと表示体の場合も同様である。エネルギー線硬化型液状樹脂組成物の塗布厚みは、例えば20μmt〜1000μmt、好ましくは50μmt〜500μmtである。
【0046】
上記(3)工程は、遮光インク層を有する面が内側となるように、保護パネルと表示体とを、又は保護パネルとタッチパネルとを、あるいはタッチパネルと表示体とをエネルギー線硬化型樹脂組成物を介して貼りあわせる工程であり、これにより、保護パネル又はタッチパネルに配置した遮光インク層とエネルギー線硬化型樹脂組成物が接触することになる。
【0047】
上記(4)工程は、前記保護パネルと前記表示体との間、又は前記保護パネルと前記タッチパネルとの間、あるいは前記タッチパネルと表示体との間に介在する前記エネルギー線硬化型液状樹脂組成物に、保護パネル又はタッチパネルの遮光インク層を有する面方向からエネルギー線を照射することにより、露光部の前記エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ、かつ、前記遮光インク層とエネルギー線硬化型樹脂組成物とを接触させ、遮光インク層に含まれるエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物の作用により、遮光部の前記エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させる工程である。この工程における硬化温度は、遮光インク層に含まれるエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物及び場合によりエネルギー線硬化型液状樹脂組成物に含まれるエネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る化合物の種類に応じて適宜設定され得る。硬化温度は、室温又は常温、あるいは低温(例えば、40℃〜80℃)である。
【0048】
図2は、本発明の好適な一実施態様を示す。図2に示すように、例えば保護パネル又はタッチパネル1と、表示体(パネル)又はタッチパネル4との貼り合せに、本発明の遮光用インク組成物から形成した遮光インク層20と、エネルギー線硬化型樹脂組成物30をと用いた場合は、光源10からの光が透過した部分において、エネルギー線硬化型樹脂組成物30の硬化部分5が形成される。さらに、図2に示すように、本発明の好適な一実施形態において、保護パネルの遮光インク層20によって、光が遮光された部分においても、エネルギー線硬化型樹脂組成物30は、遮光インク層20との接触により、エネルギー線硬化型樹脂組成物の接触部分40の硬化反応が開始し、十分に硬化して硬化部分5が形成される。
【0049】
本発明は、上記の方法で製造した、保護パネルと表示体とを貼り合せた光学部品、又は保護パネルとタッチパネルとを貼り合せた光学部品、あるいはタッチパネルと表示体とを貼り合せた光学部品である。
【0050】
さらに、本発明は、上記の光学部品を含む光学表示装置である。
【実施例】
【0051】
以下に実施例により本発明を説明する。
【0052】
実施例1〜3及び比較例1
<遮光インク組成物>
表1に示した組成(重量部)を有するインク組成物を常法により調製した。ナーセムバナジル及びバナジウムオキシトリイソブトキシドは、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る(c)化合物である。
【0053】
【表1】
【0054】
<エネルギー線硬化型樹脂組成物A(貼り合せ用樹脂)>
表2に示す組成(重量部)を有するエネルギー線硬化型樹脂組成物Aを常法により調製した。I-184とルシリンTPOは、光重合開始剤であり、カヤクメンHは、エネルギー線硬化型液状樹脂組成物を硬化させ得る(b)化合物である。
【0055】
【表2】
【0056】
試験例
実施例1〜3及び比較例1で調製したインク組成物をガラス基板(50×40×0.7mm)の外周5mmに塗布厚み100μmtで印刷塗布し、150℃のオーブン内で60分間乾燥させ、遮光インク層付ガラス基板とした。
【0057】
遮光インク層付ガラス基板とガラス(45×35×0.7mm)とを、遮光インク層が内側になるように、エネルギー線硬化型樹脂組成物Aを用いて厚さ200μmtで貼り合わせた後、遮光インク層を有するガラス基板側からUVを照射して硬化させた。
【0058】
UV硬化後、所定時間(1時間又は24時間)室温で放置し、インク下の遮光部の樹脂組成物Aの硬化状態を触診にて確認した。結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、保護パネルの遮光インク下と表示体もしくはタッチパネル、あるいはタッチパネルの遮光インク下と表示体とによってできるような、光が届かない箇所のエネルギー線硬化型樹脂組成物を低温で十分に硬化することができるので、保護パネルと表示体又はタッチパネル、あるいはタッチパネルと表示体とをエネルギー線硬化型樹脂組成物を介して貼り合せた光学部品等の製造に有用である。
【0061】
[符号の説明]
1:保護パネルまたはタッチパネル
2:従来の遮光用インク組成物から形成した遮光インク層
3:従来のエネルギー線硬化型樹脂組成物
4:表示パネル又はタッチパネル
5:エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化部分
6:エネルギー線硬化型樹脂組成物の未硬化部分
10:光源
20:本発明の遮光用インク組成物から形成した遮光インク層
30:本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物
40:本発明の遮光インク層と本発明のエネルギー線硬化型樹脂組成物との接触部分
図1
図2