(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934250
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】衝撃事象からの構造上の損傷を緩和するためのシステム、水平方向減衰装置および免震支承
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20160602BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20160602BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
E04H9/02 331A
F16F15/08 C
F16F15/04 P
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-547497(P2013-547497)
(86)(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公表番号】特表2014-502682(P2014-502682A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】US2011063641
(87)【国際公開番号】WO2012091864
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年12月1日
(31)【優先権主張番号】12/979,855
(32)【優先日】2010年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ローウェン,エリック・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーイーズ,ブレット・ジェイ
【審査官】
河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−185267(JP,A)
【文献】
特開平11−303927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
F16F 15/04
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃事象からの構造上の損傷を緩和するためのシステムであって、
構造物の側面と水平方向基礎との間で延びる水平方向減衰装置と、
前記構造物の台座と台座基礎の間に接続される免震支承と、
を備え、
前記構造物の前記側面は、前記水平方向基礎から分離され、
前記水平方向減衰装置は、反応性部材および回復部材を含み、
前記反応性部材は、前記構造物の前記側面と前記水平方向基礎のうちの一方の上に在り、
前記回復部材は、前記構造物の前記側面と前記水平方向基礎のうちの他方の上に在り、
前記水平方向減衰装置は、衝撃事象によって生ずる最初の変位に応じて、非係合状態から係合状態に移行し、
前記非係合状態は、前記反応性部材が前記回復部材から隔置され、前記構造物の前記側面と前記水平方向基礎とが、前記水平方向減衰装置によって連結されておらず、
前記係合状態は、前記反応性部材と前記回復部材とによって、前記構造物の前記側面と前記水平方向基礎とが、互いに保持して連結し、
前記水平方向減衰装置は、前記最初の変位に続く反対向きの反応変位の間、前記係合状態を維持する、
システム。
【請求項2】
前記水平方向減衰装置は、前記構造物の前記側面と前記水平方向基礎のうちの少なくとも1つに沿って垂直方向に間隔をあけて位置付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記回復部材と前記反応性部材は、第1の方向と反対の第2の方向に前記構造物がある距離を移動したとき、前記構造物と前記水平方向基礎を前記第1の方向で堅固に連結するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記距離は、予期される地震の間、前記第1の方向に前記構造物が移動する距離より長い所定の距離である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記距離は、おおよそ127cm(50インチ)より長い、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記免震支承は、前記構造物の前記台座に接続されるトッププレートと、前記台座基礎に接続される底部プレートと、前記トッププレートと前記底部プレートの間に接続され、前記構造物と前記台座基礎の間の相対的な運動を減衰させるように構成される抵抗性コアとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記免震支承は、第1の方向と反対の第2の方向に前記構造物がある距離を移動したとき、前記構造物と前記台座基礎を前記第1の方向で堅固に連結するように構成される捕捉組立体をさらに含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記距離は、予期される地震の間、前記第1の方向に前記構造物が移動する距離より長い所定の距離である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記距離は、おおよそ127cm(50インチ)より長い、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記捕捉組立体は、前記トッププレートに接続される内側シャフトと、前記内側シャフトに垂直方向に、垂直の摺動が可能に取り付けられる外側シャフトと、前記外側シャフト上のフックと、前記抵抗性コアに取り付けられる識別ポストと、前記台座基礎に堅固に取り付けられる定置帯筋とを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記外側シャフトは、前記構造物が前記距離を移動するまで、前記識別ポスト上に位置しているように構成され、前記構造物が前記距離を移動したとき、前記フックが前記定置帯筋と係合して頑丈に連結するように、前記外側シャフトが垂直に伸びるように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記構造物の前記台座は、前記免震支承のまわりにレッジを含み、前記免震支承は、トッププレートと、前記台座基礎に接続される底部プレートと、前記トッププレートと前記底部プレートの間に接続され、前記構造物と前記台座基礎の間の相対的な運動を減衰させるように構成される抵抗性コアとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記トッププレートは、前記構造物が第1の方向と反対の第2の方向にある距離を移動したとき、前記レッジ中にぴったりと収まり、前記第1の方向の前記構造物と前記台座基礎の間の運動を減衰させるように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記距離は、予期される地震の間、前記構造物が前記第1の方向に移動する距離より長い所定の距離である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記距離は、おおよそ127cm(50インチ)より長い、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記構造物は、原子炉の格納建造物である、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
衝撃事象からの構造上の損傷を緩和するための水平方向減衰装置であって、
水平方向基礎と構造物の側面のうちの一方の上に在る回復部材と、
前記水平方向基礎と前記構造物の前記側面のうちの他方の上に在り、前記回復部材と嵌合して、前記水平方向基礎および前記構造物の前記側面と連結するように構成される反応性部材であって、第1の方向と反対の前記水平方向基礎に向かう第2の方向にある距離を前記構造物が移動したとき、前記反応性部材が前記構造物と前記水平方向基礎を前記第1の方向で連結するように構成される、反応性部材と、
を含み、
前記水平方向減衰装置は、衝撃事象によって生ずる最初の変位に応じて、非係合状態から係合状態に移行し、
前記非係合状態は、前記反応性部材が前記回復部材から隔置され、前記構造物の前記側面と前記水平方向基礎とが、前記水平方向減衰装置によって連結されておらず、
前記係合状態は、前記反応性部材と前記回復部材とによって、前記構造物の前記側面と前記水平方向基礎とが、互いに保持して連結し、
前記水平方向減衰装置は、前記最初の変位に続く反対向きの反応変位の間、前記係合状態を維持する、
水平方向減衰装置。
【請求項18】
衝撃事象からの構造上の損傷を緩和するための免震支承であって、
構造物に接続するように構成されるトッププレートと、
台座基礎に接続するように構成される底部プレートと、
前記トッププレートと前記底部プレートの間に接続され、前記トッププレートと前記底部プレートの間の相対的な運動を減衰させるように構成される抵抗性コアと、
捕捉組立体であって、
前記トッププレートに接続される内側シャフト、
前記内側シャフトに垂直方向に、垂直の摺動が可能に取り付けられる外側シャフト、
前記抵抗性コアに取り付けられる識別ポスト、および
前記トッププレートがある距離を移動したとき、前記外側シャフトを前記台座基礎に堅固に連結するように構成される連結装置を含む、
捕捉組立体と、
を含む、免震支承。
【請求項19】
前記連結装置は、第1の方向と反対の第2の方向に前記構造物がある距離を移動したとき、前記構造物と前記台座基礎を前記第1の方向で堅固に連結する、請求項18に記載の免震支承。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
原子炉では、予期しない、またはめったに起こらないプラントの事象の間、損傷のリスクおよび損傷を最小限にするために、様々な損傷防止/緩和装置および戦略が使用される。リスク緩和の重要な側面は、地震事象によって引き起こされるプラントの損傷および放射性物質が周囲環境中に逃げることを防止することである。様々な地震リスクの緩和装置および分析を使用して、地震事象の間、原子炉格納建造物が破られないこと、および他のプラント損傷が最小限になることを保証している。
【背景技術】
【0002】
知られる地震損傷およびリスク緩和装置は、建造物の基礎中に使用される免震支承である。
図1Aは、地震からの損傷を減少させるために、原子力発電所、他の建造物および構造物中で使用可能な従来の免震支承10の例示図である。
図1Aに示すように、免震支承10は、エネルギーを吸収して回復するコアポスト12によって分離される上部プレート15および下部プレート16を含み、そのポストは、弾性ゴムの環状部11および硬化プレート13など、別の同様の物質または複数の物質によって囲繞することができる。下部プレート16は、建造物の基礎または建造物の下の地盤に取り付けることができ、一方上部プレート15は、実際の建造物の構造物に取り付けることができる。
【0003】
図1Bに示すように、下部プレート16が、地震の間、振動する、または移動したとき、コアポスト12、環状部11および/または硬化プレート13は、振動エネルギーを吸収して、上部プレート15と下部プレート16の間、したがって建造物と地盤の間で非破壊的な、相対的な運動を許すことができる。従来の免震支承10は、知られるゴムのベアリング設計のものとして示されているが、他の知られるコア物質および抵抗性プレート分離器が、ここで使用可能である。免震支承10は、所望のレベルの耐震性をもたらすために、建造物の台座として、組み合わせていくつでも使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】加国特許第1206981号明細書
【発明の概要】
【0005】
例示的な実施形態によれば、航空機が衝突することを含む、衝撃事象からの構造上の損傷を緩和するためのシステムが提供される。例示的なシステムは、保護する構造物の側面と定置された水平方向基礎との間における水平方向減衰装置、および/または構造物の台座と台座基礎の間における免震支承(seismic bearing)を含む。
【0006】
例示的な実施形態の水平方向減衰装置は、構造物の側面および/または水平方向基礎に沿って等しく隔置することができ、そして航空機による衝撃などの地震でない事象の間、構造物が、最初に水平方向基礎に向けて動くとき、構造物と水平方向基礎を堅固に連結し、かつ反応運動を減衰させるように構成される回復部材および反応性部材を含むことができる。回復部材は、スプリングを含むことができ、反応性部材は、付勢面と、構造物がある距離を移動したとき、堅固に係合するように対向して位置付けられるフックとを含むことができる。
【0007】
例示的な実施形態の免震支承は、構造物の台座に接続されるトッププレートと、台座基礎に接続される底部プレートと、トッププレートと底部プレートの間に在って構造物と台座基礎の間の相対的な運動を減衰させる抵抗性コアとを含むことができる。例示的な実施形態の免震支承は、捕捉組立体を含むことができ、飛行機による衝撃の間に構造物が移動した後、捕捉組立体は、堅固に連結して、第1の方向の構造物と台座基礎の間の反応運動を減衰させる。捕捉組立体は、トッププレートに接続される内側シャフトと、垂直方向の内側シャフトに、垂直に摺動可能に取り付けられる外側シャフトと、外側シャフト上のフックと、抵抗性コアに取り付けられる識別ポストと、台座基礎に堅固に取り付けられる定置帯筋とを含むことができる。構造物が衝撃事象の間に移動するまで外側シャフトは識別ポスト上に位置してよく、フックが定置帯筋と係合するように、外側シャフトが下へ落ちる。
【0008】
構造物は、例示的な実施形態の免震支承のまわりにレッジをさらに含むことができ、トッププレートは、航空機による衝撃の間、レッジ中にぴったりと収まって構造物と台座基礎の間の反応運動を減衰させることができる。例示的な実施形態は、例示的なシステム中で、いくつでもいずれもの組み合せでも使用することができ、例示的な実施形態は、原子炉の格納建造物を含む様々な構造物を、地震と衝撃の事象の両方から保護するために使用することができる。
【0009】
例示的な実施形態は、記述、詳細には添付図面によって、さらに明らかになることになる。同様の要素は、同様の参照番号によって示され、それらは、例示する目的にためだけに与えられ、それゆえ、本明細書における例示的な実施形態を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2A】代表的な地震事象の間の構造物の台座の運動を示すグラフである。
【
図2B】シミュレートした航空機による衝撃事象の間の構造物の水平運動を示すグラフである。
【
図3】例示的な実施形態による、航空機が衝突することに対する緩和システムの例示図である。
【
図4】例示的な実施形態の水平方向減衰装置の例示図である。
【
図5A】例示的な実施形態の免震支承の例示図である。
【
図5B】例示的な実施形態の免震支承の例示図である。
【
図6A】さらなる例示的な実施形態の免震支承の例示図である。
【
図6B】さらなる例示的な実施形態の免震支承の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例示的な実施形態の詳細な例示の実施形態を本明細書に述べる。しかし、本明細書に開示する具体的な構造上および機能上の細部は、例示的な実施形態を述べる目的のためだけに表されている。たとえば、革新的小型モジュール式原子炉(PRISM:Power Reactor Innovative Small Modular)に関して、例示的な実施形態を述べる場合があるが、例示的な実施形態は、他のタイプの原子力発電所で、および他の技術分野で使用することができる可能性があることを理解されたい。例示的な実施形態は、多くの代替形態で実施することができ、本明細書に述べる例示的な実施形態だけに限定されるものとして解釈すべきでない。
【0012】
用語「第1の(first)」、「第2の(second)」などを、様々な要素を述べるために、本明細書に使用する場合があるが、これらの要素は、これらの用語によって限定すべきでないことを理解されたい。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためだけに使用している。たとえば、例示的な実施形態の範囲から逸脱せずに、第1の要素は、第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素は、第1の要素と呼ぶことができる。用語「および/または(and/or)」は、本明細書に使用するとき、関連した列挙された項目の1つまたは複数のいずれかの組み合せ、およびすべての組み合せを含む。
【0013】
要素が、別の要素に「接続される(connected)」、「結合される(coupled)」、「嵌合される(mated)」、「取り付けられる(attached)」または「固定される(fixed)」として言及されたとき、それは、他の要素に直接接続される、または結合されることができ、または、介在する要素が存在することがあることを理解されたい。それにひきかえ、要素が、別の要素に「直接接続される」または「直接結合される」として言及されたとき、介在する要素は、存在しない。要素間の関係を述べるために使用する他の言い方は、同様に解釈されたい(たとえば、「の間に(between)」対「の間に直接(directly between)」、「隣接した(adjacent)」対「直接隣接した(directly adjacent)」など)。
【0014】
本明細書で使用する用語法は、特定の実施形態を述べる目的のためだけであり、例示的な実施形態を限定するものと意図しない。単数形「a」、「an」および「the」は、本明細書で使用するとき、言葉で明確に別段に指示されていないかぎり、複数形をまた含むものと意図する。用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」および/または「含む(including)」は、本明細書で使用するとき、述べる特徴、整数、ステップ、動作、要素および/または構成要素の存在を規定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものでないことをさらに理解されたい。
【0015】
地震などの従来の地震事象が、既存の免震装置および緩和戦略によって対処されているが、原子力発電所を含む構造物に対する爆発または直接飛行機が衝突することなど、他の大規模な事象によって課せられるリスクが、適切に対処されていない、またはそれを減少させていない恐れがあると発明者等は認識している。カリフォルニア大学バークレー校の「Civil and Environmental and Nuclear Engineering」学部のBlandford、Keldrauk、Laufer、Mieler、Wei、StojadinovicおよびPetersonによって2009年9月30日発表された「Advanced Seismic Base Isolation Methods for Modular Reactors」(以降、「UCB」レポートと言う)は、参照によってその全体がここに援用される。UCBレポートに示されているように、大規模な建造物、貯蔵サイトおよび商用原子炉の格納建造物などの強化構造物に対する商業規模の飛行機による航空機の衝突および他の巨大な衝撃事象は、様々なタイプの地震からの通常の応答に比べて、これらの構造物中に著しく異なる反応を発生させる可能性がある。
【0016】
図2Aは、1978年のイランのタバス地震で被った、モジュール式構造物中の台座の水平運動のグラフであり、一方
図2Bは、UCBレポートから引用した、ボーイング747−400が、直接モジュール式構造物の水平方向の外部表面上に衝突したときの衝撃をシミュレートし、それによって被るモジュール式構造物(PRISM原子炉格納建造物)中の台座、中間および上部のフロアのグラフである。
図2Aに示すように、地震によって、地震事象中におおよそ38.1cm(15インチ)の最大変位が十分に生じるが、
図2Bに示す航空機の衝突では、衝撃事象中ほとんどすぐに、おおよそ254cm(100インチ)の最大変位が生じる。
【0017】
さらに、
図2Aに示すように、地震は、数秒間持続して、モジュール式構造物の台座レベルに対して、マグニチュードが増加し、次いで減少するいくつかの振動運動を与えるが、しかし、
図2Bに示す航空機の衝突は、衝撃後、数秒間だけ持続し、そして単一の大きい最初の変位を与え、続いて反対方向に単一の大きい、それに反応する跳ね返りが生じる。
【0018】
地震と衝撃のシナリオによる構造物の反応の間の差によって、大型航空機が、たとえば高層建造物、貯蔵サイロまたは原子炉格納建造物のようなモジュール式構造物中に墜落した場合、従来の免震装置および対策が無効にされることを発明者等は認識している。さらに、変位の開始、マグニチュード、フロア数における衝撃事象と地震の間の特性の差によって、どちらもの事象が引き起こすユニークな損傷を緩和するために、選択的な専門のアプローチが可能であることを発明者等は認識している。以下に具体的に議論する例示的な実施形態による装置およびシステムは、地震と航空機の衝突の両方または他の衝撃事象によって被る建造物の損傷を減少させる、または防止するために、UCBレポートに議論されているこれらの事象の差をうまく利用している。
【0019】
図3は、地震および/または大型航空機による衝撃から構造物を保護するための例示的な実施形態によるシステムの例示図である。
図3に示すように、構造物1000は、基礎2000中に部分的に埋め込むことができる。あるいは、構造物1000は、比較的平坦な、または部分的に囲まれた基礎上に配置することができることが理解される。構造物1000は、高層建造物、強化貯蔵サイロ、従来またはPRISMの原子炉のための格納建造物、軍用シェルタまたは掩蔽壕などを含む、地震または衝撃による損傷を受け易い、任意のタイプの大型モジュール式建造物とすることができる。基礎2000は、たとえば強化コンクリート、基盤、圧縮土壌および/または他の近隣の定置構造物を含む、任意のタイプの従来の構造上の基礎とすることができる。
【0020】
図3に示す例示的な実施形態によるシステムは、1つまたは複数の例示的な実施形態による装置を含み、それは、UCBレポート中に示されている飛行機の衝突を含む、地震および衝撃事象中、構造物1000に対する損傷を防止する、または減少させる。たとえば、
図3に示すように、いくつかの水平方向減衰装置100は、運動を減少させて、基礎2000の横面に近い構造物1000からエネルギーを吸収するように、基礎2000の横面中に、またはその上に配置することができる。例示的な実施形態の水平方向減衰装置100は、いくつかの異なる方向からの構造物1000中の運動を受け入れて、適切な力を用いて均等に減衰させるように、所望の垂直方向の位置および/または円周方向の位置に配置することができる。UCBレポートに述べられているように、航空機の衝突によって、突然の極端な構造物の変位およびその修正が引き起こされる場合があるので、例示的な実施形態の水平方向減衰装置100は、構造物1000から既知の変位dで隔置することができ、構造物1000の質量および航空機の衝突による運動量に基づく動きを受け入れて減衰させるように構成することができる。たとえば、変位dは、127cm(50インチ)を超えることができ、したがって例示的な実施形態の減衰装置100は、構造物1000のより大きい運動を引き起こす航空機による衝撃事象の間だけ、接触して係合されるが、水平方向の減衰およびエネルギー吸収を必要としない可能性がある構造物1000中のより小さくて繰り返される運動を引き起こす地震事象の間は、そうされない。
【0021】
例示的な実施形態の水平方向減衰装置100は、非破壊的に、初期のエネルギーを吸収して即時に構造物1000の運動を減衰させる、いくつかの異なる構造物を含むことができる。たとえば、水平方向減衰装置100は、強力スプリングの束を含むことができ、そのスプリングは、接触時、構造物1000中の初期の運動を吸収する/それに抵抗するのに十分なばね定数を有し、接触時、構造物1000に著しく損傷を被らせない。UCBレポートに示されているように、スプリングを含む例示的な実施形態の水平方向減衰装置100は、構造物1000の対向する位置のまわりに配置されたとき、初期の構造物1000の変位およびその後の構造物の反応する変位の両方からエネルギーを吸収し、その大きさを減少させることができる。あるいは、またはさらに、水平方向減衰装置は、プラスチック、ゴム、発泡体、エアバッグおよび/または変位の際、構造物1000中の運動を吸収する/それに抵抗することができる、いずれもの他の構造物を含むことができる。例示的な実施形態の水平方向減衰装置100は、例示的な実施形態の水平方向減衰装置100中のスプリングまたは他の吸収構造物によって引き起こされる、いずれもの追加の反応運動を減少させるために、以下に述べる追加の構造物および機能を含むことができる。以下で議論する例示的な実施形態の免震支承200は、例示的な実施形態の地震緩和システム中で使用可能な例示的な実施形態の水平方向減衰装置100と組み合わせて、構造物1000のいずれもの追加の反応運動をさらに減少させることができる。
【0022】
例示的な実施形態の水平方向減衰装置100は、非破壊的に、反応するエネルギーを吸収して構造物1000の反応運動を減衰させる、いくつかの異なる構造物を含むことができる。たとえば、
図4に示すように、例示的な実施形態の水平方向減衰装置100は、構造物1000および基礎2000上の対向する位置に、またはその逆に配置される付勢部材120および反応性部材110を含むことができる。
図4に示すように、構造物1000が、水平方向の飛行機の墜落などの衝撃事象に続いて距離dを移動したとき、反応性部材110は、付勢部材120と係合することができ、それによって、構造物1000のその後の反応する変位を防止する、または減衰させる。たとえば、付勢部材120は、傾斜表面を含むことができ、それは、反応性部材110と接触したとき、反応性部材110を回転させて、付勢部材120上の対応するラッチとフックを係合させる。もちろん、反応性部材110および付勢部材120は、対向する位置に置くことができる。同様に、構造物1000を基礎2000に保持する、または、距離dにわたって構造物1000が変位したことに続く構造物1000の反応運動を減衰させるために、センサおよび係合変換器、接着剤、磁石、ロックおよびキー装置など、他の選択的な係合装置を基礎2000および/または構造物1000上に配置することができる。構造物1000中の初期および反応する運動の両方を減少させるために、例示的な実施形態の水平方向減衰装置100中に、スプリング、発泡体、ゴム軸受け、および他の可塑性または弾性の部材を単独で、または付勢部材120および反応性部材110と組み合わせて使用することができる。
【0023】
関心がある航空機の衝突または他の事象中だけで遭遇する変位をdと設定し、たとえば、UCBレポートから代表的な航空機の衝突について、dを127cm(50インチ)より大きいと設定すると、例示的な実施形態の水平方向減衰装置100は、航空機の衝突シナリオ中だけで係合して、反応運動を防止することができ、そのとき、構造物1000中に、単一で即時の実質的な跳ね返りが、予期される。このように、いくつかの小さくなる振動による変位を伴う地震では、例示的な実施形態の水平方向減衰装置100が、係合して構造物1000を基礎2000に保持することができない。特定の構造物について予期される地震と所与の構造物に対する空中衝突の間の予期される差に基づき、他の距離dを設定することができ、それによって、実際に起きると予想されるような両方のシナリオのユニークな特性間を事実上区別して応答することを理解されたい。予期される地震特性は、地震活動レポート、歴史上の地震データ、および/または断層タイプ、土壌状況、建造物パラメータなどの関連パラメータを明らかにする断層解析から正確に決定することができ、それによって、予期される地震の間の最大の台座変位を事実上決定する。
【0024】
図3に示すように、例示的な実施形態によるシステムは、基礎2000と構造物1000の間に堅固にまたは可動に接続される例示的な実施形態の免震支承200を含むことができる。例示的な実施形態の免震支承200は、従来の免震支承10(
図1Aおよび1B)の構造および機能性をすべて含むことができる、および/または例示的な実施形態の水平方向減衰装置100とともに使用することができる。または、さらに、例示的な実施形態の免震支承200は、構造物1000の横面上への大型ジェット旅客機による衝撃などの変位事象の場合、追加として構造物1000の損傷を防止するために、追加の構造および機能性を含むことができる。
【0025】
図5Aに示すように、例示的な実施形態の免震支承200は、識別ポスト240、内側シャフト260、外側シャフト250、フック251および/または定置帯筋270を含む捕捉組立体に加えて、従来の免震支承の特徴を含むことができる。内側シャフト260は、上部プレート215に取り付けることができ、外側シャフト250は、外側シャフト250の上部表面上の穴を通して、可動に内側シャフト260の上を摺動させることができる。内側シャフト260および外側シャフト250は、それらが相対的に垂直方向に摺動することを可能にするが、しかし、それらが全体的に分離しないように防止するフランジまたは他の構造物を含むことができる。
図5Aに示す基本位置では、外側シャフト250および内側シャフト260は、垂直方向の位置が実質的に重なり、外側シャフト250が、例示的な実施形態の免震支承200の環状部211に接続される識別ポスト240上に位置している。
【0026】
図5Bに示すように、構造物1000を著しく移動させる航空機の衝突事象の場合など、例示的な実施形態の免震支承200の上部プレート215が、著しい距離を移動したとき、外側シャフト250は、識別ポスト240から離れて水平方向に移動する。外側シャフト250は、内側シャフト260と水平方向に連結することができ、および/または外側シャフト250が、航空機の衝突事象中で遭遇する大きい突然の水平方向の偏移に続いて識別ポスト240から完全に離れて移動することを可能にするのに十分に、外側シャフト250と識別ポスト240の間の摩擦係数を低くすることができる。外側シャフト250と内側シャフト260の間の垂直に可動な関係のために、外側シャフト250は、識別ポスト240から離れて移動した後、下方に落ちることができる。外側シャフト250が下方に落ちたとき、フック251は、基礎2000に、または別の非常に重い定置構造物に付けることができる定置帯筋270と係合することができる。
図5Bに示すように、一度フック251と帯筋270が係合すると、内側シャフト260、外側シャフト250およびフック251は、反対の方向で上部プレート215の反応する変位を防止する、または減衰させることができる。
【0027】
識別ポスト240の長さは、航空機の衝突事象の場合など、大きい変位の場合だけ外側シャフト250を落とすように選ぶことができる。たとえば、例示的な実施形態の免震支承200の全体高さおよび変形プロフィールを知ると、識別ポスト240には、航空機による衝撃に典型的である、上部プレート215が突然最初に約127cm(50インチ)以上移動した後だけ、外側シャフト250を落とすことになる長さを与えることができる。このように、帯筋270は、地震でないシナリオの場合だけ、フック251を捕えて、追加として反応運動を減衰させることができ、その場合、例示的な実施形態によるシステムおよび装置によって保護されない、または減少されないかぎり、その後の構造上の反応は、特に破壊的になる恐れがある。もちろん、例示的な実施形態の免震支承200は、また、地震事象の場合、従来の免震支承と完全に同じように機能することができ、これらの事象に対する異なる反応に基づき、ユニークな地震および航空機による衝撃に対して応答する。
【0028】
図5Aおよび5Bに示す例示的な実施形態の免震支承200は、いずれもの弾力性がある、または可塑的に変形する物質から組み立てることができ、その物質は、所望のレベルのエネルギーを吸収する、または所望の量の構造物1000中の運動を防止する。外側シャフト250、内側シャフト260、フック251および識別ポスト240を含む捕捉組立体を使用する、例示的な実施形態の免震支承200を
図5Aおよび5Bに示しているが、他の構造物によって、所望の航空機による衝撃の際に特定に係合させて緩和することができることを理解されたい。たとえば、磁石、接着剤、ロックおよびキーの関係および他の構造物を使用して、いずれもの所望のタイプおよび量で、例示的な実施形態の免震支承200を基礎2000などの定置台座に連結する、および/または固定し、それによって、構造物1000に対する損傷を防止する、または減少させることができる。
【0029】
図6Aは、
図3の例示的な実施形態によるシステムおよび
図5Aおよび5Bの例示的な実施形態の免震支承200のいずれもの他の特徴と組み合わせて使用可能な、別の例示的な実施形態の免震支承200の例示図である。
図6Aに示すように、例示的な実施形態の免震支承200は、トッププレート215と支持される構造物1000の台座の間の関係を除き、従来の免震支承10(
図1Aおよび1B)と実質的に同様に構成することができる。窪みまたはレッジ290などの捕捉形状が、例示的な実施形態の免震支承200の上部プレート215の近くで構造物1000中に形成される。構造物1000が最初のドラマチックな変位Iを経たとき、トッププレート215が、レッジ290中にぴったりと収まる、またはさもなければ、それに捕えられる、またはそこに固定されることになるように、トッププレート215の長さ、レッジ290の位置、および/またはトッププレート215と構造物1000の台座の間の分離または摩擦係数を適合させる。
図6Bに示すように、構造物が反応運動Rを開始したとき、例示的な実施形態の免震支承200は、追加のエネルギーを吸収し、R方向の構造物1000の運動を減衰させる。
【0030】
図6Aおよび6Bに示す例示的な実施形態の免震支承200は、航空機の衝突事象の間、選択的に係合され、追加として反応して減衰させるように構成することができる。たとえば、基礎2000と構造物1000の間にいくつかのより小さい振動を引き起こす地震の間、例示的な実施形態の免震支承200は、上部プレート215と構造物1000の台座の間の摩擦係数がより低いこと、またはその間で分離されることのどちらかで、より少なくエネルギーを吸収して減衰させることができ、そのとき、上部プレート215は、レッジ290中に係合されない。航空機による衝撃の間、最初の突然の変位Iが構造物1000中で著しく大きいとき、プレート215およびレッジ290は、選択的に係合することができ、レッジ290と上部プレート215の横面の接触によって、例示的な実施形態の免震支承200に、追加としてエネルギーを吸収させ、R方向の構造物1000の運動を減衰させることができる。このように、レッジ290および係合された例示的な実施形態の免震支承200は、衝撃シナリオの場合だけ、追加として反応運動を減衰させることができ、その場合、その後の構造物の反応は、例示的な実施形態によるシステムおよび装置が防止しない、または減少させないかぎり、特に破壊的になる恐れがある。もちろん、例示的な実施形態の免震支承200は、また、地震事象の場合、いくつかの従来の免震支承の機能性を提供することができ、これらの事象に対する異なる反応に基づき、ユニークな地震および航空機による衝撃に対する応答がもたらされる。
【0031】
図6Aおよび6Bに、トッププレート215を捕えるレッジ290を使用する例示的な実施形態の免震支承200を示しているが、例示的な実施形態の免震支承および構造物を選択的にロックする他の構造物によって、所望の航空機による衝撃の際に特に係合させて緩和することができることを理解されたい。たとえば、センサによって動作する変換器、接着剤、ロックおよびキーの関係および他の構造物は、いずれもの所望のタイプおよび量で、例示的な実施形態の免震支承200を構造物1000に連結する、および/またはそれに固定するために使用することができる。
【0032】
下部プレート216、コアポスト212、環状部211およびプレート213を含む、例示的な実施形態の免震支承200のそれぞれの他の構成要素は、従来の免震支承10(
図1Aおよび1B)と同様に構成することができる。あるいは、下部プレート216、コアポスト212、環状部211およびプレート213のいずれも、例示的な実施形態の免震支承200中で再構成する、または省くことができる。たとえば、コア212および環状部211の高さは、識別ポスト240の機能を達成することに、または所望の程度の耐変位抵抗性および剛性を可能にすることにもっとも適合する、所望の例示的な実施形態の免震支承200の全体高さを実現するように修正することができる。または、たとえば、下部プレート216、ポスト212、環状部211およびプレート213は、たとえば、上部プレート215が
図6Aおよび6Bのレッジ290中にぴったりと収まった後に経る変位など、一方向の変位に対して追加として運動を減衰させ、エネルギーを吸収するように、片側を厚くする、または様々な物質から組み立てることができる。このように、例示的な実施形態の免震装置200は、さらに、構造物1000中により厳格ですぐに反応するプロフィールを備えて、非地震事象によって引き起こされる損傷に具体的に対処しそれを緩和するように構成することができる。
【0033】
したがって、
図3のシステムなど、例示的な実施形態によるシステム中に様々な例示的な実施形態の免震支承200および/または水平方向減衰装置100を使用することによって、例示的な実施形態は、従来のように地震を隔離しそれから保護し、さらに、追加として選択的でユニークな機能性および構造をもたらし、それは、直接の衝撃事象を含む、より極端な事象によって引き起こされる損傷を緩和する。例示的な実施形態の水平方向減衰装置100および免震支承200は、戦闘機による衝撃からの損傷に対する追加の構造物を有する、従来の器具または装置から組み立てることができ、それによって、例示的な実施形態による装置のコストおよび複雑さを減少させ、既存の地震対策を備える例示的な実施形態による装置を使用することが可能になる。同様に、例示的な実施形態による装置およびシステムは、いずれもの構造物のために、地震と衝撃事象の両方で構造物を保護するように、いくつでもどのような組み合せでも使用可能である。たとえば、埋め込み基礎2000が、実施形態の水平方向減衰装置100を使用する際に利用できない場合、例示的なシステム中に、例示的な実施形態の免震支承200だけを用いることができる。包括的な構造物1000を用いて例示的な実施形態を述べてきたが、構造物は、原子炉格納建造物、高密度の市内の高層商用建造物、戦略兵器格納庫、クリティカルな社会基盤など、クリティカルな地震および衝撃からの保護を必要とする、いずれもの特定の構造物とすることができ、また、構造物は、家屋、工場、スタジアムなどを含む、そのようなクリティカルな重要性を有さない、いずれもの特定の構造物とすることができることを理解されたい。
【0034】
このように例示的な実施形態を述べてきたが、例示的な実施形態は、さらなる発明活動をせずに通常の実験を通じて変更することができることを、当業者は理解されたい。変形形態は、例とする実施形態の趣旨および範囲から逸脱するものと見なすべきでなく、当業者に明らかになるような、そのような修正形態は、すべて、次の請求項の範囲内に含まれるものと意図する。
【符号の説明】
【0035】
d 変位、距離
I 変位
R 反応運動
10 従来の免震支承
11 環状部
12 コアポスト
13 硬化プレート
15 上部プレート
16 下部プレート
100 水平方向減衰装置
110 反応性部材
120 付勢部材
200 免震支承
211 環状部
212 コアポスト
213 プレート
215 上部プレート、トッププレート
216 下部プレート
240 識別ポスト
250 外側シャフト
251 フック
260 内側シャフト
270 帯筋
290 レッジ
1000 構造物
2000 基礎