(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934254
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】高純度酸化スズ(II)の製造法
(51)【国際特許分類】
C01G 19/02 20060101AFI20160602BHJP
【FI】
C01G19/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-551353(P2013-551353)
(86)(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公表番号】特表2014-506554(P2014-506554A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】US2012022821
(87)【国際公開番号】WO2012103396
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2015年1月20日
(31)【優先権主張番号】61/436,695
(32)【優先日】2011年1月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/531,447
(32)【優先日】2011年9月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/358,561
(32)【優先日】2012年1月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100161595
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 梓
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シュタインベルク,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】マウラー,イェシカ
(72)【発明者】
【氏名】ズマクエ,ハリー
【審査官】
延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−050253(JP,A)
【文献】
特開平10−168666(JP,A)
【文献】
特開平02−167821(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102774879(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00 − 23/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度SnOの製造法であって、
(a)Sn塩を水性相のC2−12ジカルボン酸と反応させて、Sn−ジカルボキシレート錯体を含む懸濁液を形成させ;
(b)Sn−ジカルボキシレート錯体を水で洗浄して、1重量%未満のSn塩のアニオンを含有する洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を含む洗浄溶液を得;そして
(c)洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を塩基と反応させて、高純度SnOを形成させることを含み、
その高純度SnOは0.002cph/cm2未満のアルファ線カウントを有する
方法。
【請求項2】
高純度SnOの製造法であって、
(a)SnCl2、Sn(BF4)2、Sn(CH3SO3)2、及びそれらの混合物からなる群から選ばれるSn塩を、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる水性相のC2−12ジカルボン酸と反応させて、Sn−ジカルボキシレート錯体を含む懸濁液を形成させ;
(b)Sn−ジカルボキシレート錯体を水で洗浄して、中性のpHを有し、1重量%未満のSn塩のアニオンを含有する洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を含む洗浄溶液を得;そして
(c)洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を、アンモニア水、炭酸アンモニウム、及び尿素からなる群から選ばれる塩基と反応させて、高純度SnOを形成させることを含み、
その高純度SnOは0.002cph/cm2未満のアルファ線カウントを有する
方法。
【請求項3】
高純度SnOが、SnO2を除いて99.85重量%の量のSnOを含み、高純度SnOは、1重量%未満の量のSnO2しか含まない、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本願は、2011年1月27日出願の米国仮出願第61/436,695号及び2011年9月6日出願の米国仮出願第61/531,447号に関連し、それらに基づく優先権を主張する。両出願は引用によって本明細書に援用する。
【0002】
技術分野
[0002]本発明は、高純度低アルファ線放出酸化スズ(II)及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]次世代の集積回路(IC)コンピュータチップの製造には標準的なリソグラフィー法は適切でない。構造寸法の縮小は、量子効果及び単一導電素子間の干渉があると実現不可能である。そこで、エレクトロニクス産業は、いわゆる3Dチップ、又はフリップチップを考案した。これらは、相互に積み重ねられたいくつかのICチップからなる。素子間の距離の縮小は、よりコンパクト、より複雑、及びより速いプロセッサを可能にする。ますます多くの大衆消費電子製品(consumer electronics)、例えばコンピュータ、携帯電話、及びその他の携帯用大衆消費電子機器が、高処理能力を有するより小型のコンポーネントを必要としているので、そのようなチップの市場は指数関数的に拡大することが予想される。
【0004】
[0004]これらの積層エレメントは、非常に厳しい許容範囲内で、そしてまたIC素子の機能を損なわないように、相互にはんだ付けされねばならない。はんだ付けはスズ(Sn)又は鉛(Pb)化合物をはんだとして使用することによって達成される。しかしながら、積層ICチップ間の距離の縮小は、ICチップ近傍における材料からのアルファ線の影響のためにソフトエラーが発生しうるというかなりのリスクを伴う。そこで、はんだ材料及びはんだの前又は後に電子デバイス上に堆積される追加の機能層は、当該技術分野で公知の通り、アルファ線(専門的には荷電ヘリウム核、He
2+)を放出しないことを意味する“低アルファ”でなければならない。つまり、Snの場合、Pb汚染のない非常に高純度Sn及びSn化合物を使用せねばならないことを確実にすることを意味している。なぜならば、Pbは、アルファ線放出体であるポロニウムを通って崩壊する同位体を有するからである。その他の典型的なアルファ線放出汚染物質はウラン及びトリウムであり、これらも最小含有量に低減されねばならない。
【0005】
[0005]酸化スズ(II)(SnO)は、例えばICチップの製造時に使用されるスズ化合物である。US2010/0116674及びその中で引用されている特許に開示されているように、電子デバイスは、Sn又はSn基合金で電気めっきされる。スズ(II)化合物の酸溶液が電気めっきプロセスに使用される。コンポーネント部分に堆積されるSnの量は、品質変動のない定常運転を可能にするために定期的又は連続的に補給される必要がある。SnOがその用途にとってSn(II)の最良の供給源である理由がUS2010/0116674に教示されている。
【0006】
[0006]これまでに報告されている酸化スズ(II)の一つの製造法は、スズ塩の酸性水溶液とpH11〜12.5の水酸化アルカリ溶液とを反応させることを含む。次に、炭酸アルカリを混合物に添加して酸化スズ(II)を得る。JP3223112 A参照。しかしながら、水酸化アルカリと水溶液中で酸性のスズ塩との反応を実施すると、スズ塩のアニオンのような不純物が生じ、これが最終生成物の中に残る。さらに、pHレベルが高いと、外来カチオンによる汚染を導入する炭酸アルカリの添加と同様、低純度酸化スズ(II)が生成する。
【0007】
[0007]従って、積層ICチップを電気めっきするような一定の用途の場合、SnOは高純度でなければならない。これは、ハロゲン化物のような腐食性アニオンを本質的に含まない、微量金属不純物を本質的に含まない、及び前述のようなアルファ線放出体を本質的に含まない、ということを含む。さらに、酸化スズ(IV)(SnO
2)が低濃度であることも必須である。なぜならば、SnO
2は電気めっき浴に使用される大部分の酸に溶解しないからである。それどころか、何らかの酸化スズ(IV)が存在すると浴にスラッジが形成され、それを除去するためにおそらくは煩雑な機械的手段が必要となる。本発明は、とりわけ、これらのニーズに対処している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US2010/0116674
【特許文献2】JP3223112 A
【発明の概要】
【0009】
[0008]本明細書において高純度酸化スズ(II)の製造法を提供し、該方法は、(a)Sn塩を水性相のC
2−12ジカルボン酸と反応させて、Sn−ジカルボキシレート錯体を含む懸濁液を形成させ;(b)Sn−ジカルボキシレート錯体を水で洗浄して、Sn塩のアニオンを本質的に含まない洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を含む洗浄溶液を得;そして(c)洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を塩基と反応させて、高純度SnOを形成させることを含み、その高純度SnOは約0.002cph/cm
2未満のアルファ線カウントを有する。
【0010】
[0009]一定の態様において、Sn塩は高純度スズ金属を高純度非酸化性酸に溶解することによって製造される。一定の他の態様において、方法はさらに、Sn−ジカルボキシレート錯体を洗浄するステップの前に、ろ過によってSn−ジカルボキシレート錯体を単離するステップを含む。一定の態様において、方法はさらに、ろ過によって高純度SnOを単離し、任意に高純度SnOを真空下約60℃〜約120℃の温度で乾燥させるステップを含む。
【0011】
[0010]一定の好適な態様において、高純度SnOは、SnO
2を除いて約99.85重量%の量のSnOを含む。好ましくは、高純度SnOは、約1重量%未満の量のSnO
2を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0011]出願人らは、驚くべきことに、高純度低アルファ線放出SnOの製造法を見出した。さらに詳しくは、出願人らは、SnO生成物の品質に悪影響を及ぼす高pHに反応溶液を調整する必要なしに高純度SnOを製造する方法を見出した。理論に拘束されることは望まないが、出願人らは、Sn−ジカルボキシレート錯体の形成は懸濁液を生じるので、これによって、出発材料中に見出される望まざる不純物、特にアルファ線を放出する不純物の沈殿又は結晶化による除去が可能になると考えている。このステップは高pHレベルを回避するので、SnO
2への望まざる副反応も回避される。さらに、このステップは何らかの外来アニオンも大部分除去する。
【0013】
[0012]化学分野で一般に理解されているとおり、用語“酸化第一スズ(stannous oxide)”は酸化スズ(II)、SnOのことを言い、“酸化第二スズ(stannic oxide)”は酸化スズ(IV)、SnO
2のことを言う。本発明の目的上、用語“高純度”及び“高度に純粋な”は、存在する何らかのSnO
2を除いて、少なくとも約99重量%、好ましくは少なくとも約99.5%、さらに好ましくは少なくとも約99.85重量%、さらに好ましくは少なくとも約99.9重量%、なおさらに好ましくは少なくとも約99.99%、なおさらに好ましくは少なくとも約99.999重量%の純度を包含する。本発明の目的上、用語“本質的に含まない”とは、SnO
2を除いて、1重量%未満、好ましくは0.1%未満、さらに好ましくは0.5%未満、なおさらに好ましくは0.01%未満、なおさらに好ましくは0.001重量%未満しか含有しないことを意味する。SnO
2の含有量は、10重量%未満、好ましくは5%未満、さらに好ましくは1%未満、なおさらに好ましくは0.1%未満、最も好ましくは0.01重量%未満である。本発明の一つの好適な態様において、SnO
2の含有量は約1重量%未満である。アルファ線放出体による汚染に関して、本発明の高純度酸化スズ(II)は、好ましくは1cm
2あたり0.002カウント毎時未満の放射線カウントを有する。
【0014】
[0013]従って、本明細書において高純度SnOの製造法を提供し、該方法は、(a)Sn塩を水性相のC
2−12ジカルボン酸と反応させて、Sn−ジカルボキシレート錯体を含む懸濁液を形成させ;(b)Sn−ジカルボキシレート錯体を水で洗浄して、Sn塩のアニオンを本質的に含まない洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を含む洗浄溶液を得;そして(c)洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を塩基と反応させて、低アルファ線放出高純度SnOを形成させることを含む。好ましくは、高純度SnOは、約0.02cph/cm
2未満、好ましくは約0.01cph/cm
2未満、さらに好ましくは約0.005未満、なおさらに好ましくは約0.002cph/cm
2、なおさらに好ましくは0.001cph/cm
2未満の量のアルファ線しか放出しない。
【0015】
[0014]Sn塩は溶液に可溶性である。一定の好適な態様において、Sn塩は、SnCl
2、Sn(BF
4)
2、Sn(CH
3SO
3)
2、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる。他の適切なSn塩の例は当業者には容易に明らかであり、公知である。
【0016】
[0015]本発明のジカルボン酸は、2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜5個の炭素原子を含有するジカルボン酸を含む。一定の好適な態様において、ジカルボン酸は、酒石酸及びリンゴ酸のようなヒドロキシジカルボン酸でありうる。一定の好適な態様において、本発明のジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる。理論に拘束されることは望まないが、出願人らは、ジカルボン酸の溶解度が低下すると、比生成物収率も低下すると考えている。また、短鎖(すなわちC
2−12)ジカルボン酸は、Sn(II)と結晶化合物をより形成しやすく、Sn−ジカルボン酸錯体の精製がやりやすくなるとも考えられている。
【0017】
[0016]一定の態様において、Sn塩をジカルボン酸と反応させるステップは、低pH、好ましくは約5未満のpH、さらに好ましくは約3未満のpH、なおさらに好ましくは約1以下のpHで実施される。Sn塩とジカルボン酸との反応は、加熱下での約1〜約5時間の連続撹拌下、約20℃〜約100℃、好ましくは約40℃〜約80℃、なおさらに好ましくは約60℃で実施することもできる。
【0018】
[0017]一定の態様において、Sn−ジカルボキシレート錯体を洗浄及びデカントして洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を得る。一定の態様において、Sn−ジカルボキシレート錯体は、洗浄ステップの前に単離される。好ましくは、Sn−ジカルボキシレート錯体の単離は、ろ過又は遠心分離によって達成される。他の単離法は当業者には公知である。
【0019】
[0018]一定の好適な態様において、洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体はSn塩のアニオンを本質的に含まない。本発明の目的上、“本質的に含まない”とは、洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体が約1重量%未満のアニオンしか含有しないことを意味する。好ましくは、Sn−ジカルボキシレート錯体は、約0.1重量%未満、さらに好ましくは約0.5重量%未満、なおさらに好ましくは約0.01重量%未満のアニオンしか含有しない。一定の態様において、Sn−ジカルボキシレートの洗浄ステップは、洗浄溶液が中性のpHを有するようになるまで続ける。
【0020】
[0019]一定の態様において、洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体と反応させるのに使用される塩基は、洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を含む混合物を少なくとも5のpHに上げる任意の化合物である。好ましくは、塩基は、中性及びプロトン化形で水溶性であり、高純度及び低毒性のものである。一定の好適な態様において、塩基は、アンモニア水、炭酸アンモニウム、及び尿素からなる群から選ばれる。その他の適切な塩基の例は当業者には公知であろう。好ましくは、塩基はアルカリ塩基でない。理論に拘束されることは望まないが、出願人らは、アルカリ塩基の使用は外来カチオンによる汚染を導入すると考えている。一定の態様において、洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を塩基と反応させるステップは、中性に近いpH、好ましくは約5〜約8のpH範囲、さらに好ましくは約6〜約7のpH範囲で実施される。洗浄Sn−ジカルボキシレート錯体を塩基と反応させるステップは、連続撹拌下、約20℃〜約80℃、好ましくは約40℃〜約65℃の温度で実施することもできる。
【0021】
[0020]一定の態様において、Sn塩は高純度スズ金属を高純度非酸化性酸に溶解することによって製造される。非酸化性酸は、水素の生成下か又は酸素のような酸化剤の助けを借りて、スズ金属を溶解する任意の化合物又はイオンである。一定の好適な態様において、適切な酸は、酸化剤及び/又は高めた温度の助けを借りてスズを溶解するのに十分強力なブレンステッド−ローリー酸であり、可溶性スズ塩を形成する。一定の好適な態様において、非酸化性酸のアニオンはSn塩のアニオンと同じである。例えば、SnCl
2が所望の出発Sn塩の場合、適切な非酸化性酸はHClであろう。好ましくは、非酸化性酸は、塩酸、フルオロホウ酸、及びメタンスルホン酸からなる群から選ばれる。
【0022】
[0021]一定の態様において、高純度SnOは単離及び乾燥される。高純度SnOの単離は、例えばろ過又は遠心分離によって達成できる。他の単離法は当業者には公知である。高純度SnOの乾燥は、例えば、高純度SnOを約60℃〜約120℃の温度に約2〜約48時間加熱することによって達成できる。好ましくは、乾燥は真空下又は不活性ガス雰囲気中で実施される。
【実施例】
【0023】
[0022]以下の実施例は、本発明を例示する目的のために提供されるが、その範囲を制限することはない。
実施例1.シュウ酸と塩化スズ(II)との反応によるシュウ酸スズ(II)の製造
[0023]600mLのビーカーで、約63gの高純度シュウ酸二水和物を約150gの蒸留水に約60℃に加熱しながら溶解し、無色透明の溶液を得た。約211.5gの高純度塩化スズ(II)水溶液(約44.8%SnCl
2;遊離酸最大10%)を撹拌しながら約60℃の温度で約1時間かけて滴加した。得られた溶液は高酸性であった(pH約1)。混合物を室温(約26℃)に約60分間冷却し、シュウ酸Sn(II)の粗白色結晶をろ過により取り出した。固体を、塩化物イオンが本質的になくなるまで、小分けにした合計約500mLの蒸留水で濯いだ。ろ液からさらに3.5gの生成物を単離した。真空乾燥後の総収量は約77.4gであった。
【0024】
全Sn分析
[0024]全Sn含有量は錯滴定によって測定した。約0.25gの真空乾燥生成物を300mLのエーレンマイヤーフラスコに入れた。約25mLのIDRANAL III、0.1Mを加え、混合物を透明溶液が形成されるまで加熱沸騰させた。溶液を水で150mLに希釈し、室温に冷却した。ヘキサメチレンテトラミンでpHを約5〜6に調整し、溶液を標準0.1M硫酸亜鉛溶液でキシレノールオレンジ終点まで逆滴定した。全Sn含有量は約55.4重量%と決定された。
【0025】
Sn(II)分析
[0025]Sn(II)分析はヨウ素滴定によって実施した。約50mLの標準ヨウ素溶液(約0.05M)を約0.25gの真空乾燥生成物に加えて300mLのコニカルフラスコに入れた。約2mLの約25%塩酸を加え、フラスコを直ちに栓で密封した。超音波を用いて混合物を1分以内に溶解させた。次に、残留ヨウ素を標準0.1Mチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。Sn(II)含有量は約54.9重量%と決定された。
【0026】
実施例2.シュウ酸とテトラフルオロホウ酸スズ(II)との反応によるシュウ酸スズ(II)の製造
[0026]600mLのビーカーで、約63gの高純度シュウ酸二水和物を約150gの蒸留水に約60℃に加熱しながら溶解し、無色透明の溶液を得た。約329.1gの高純度テトラフルオロホウ酸スズ(II)水溶液(約44.4%Sn(BF
4)
2)を撹拌しながら約60℃の温度で約1時間かけて溶液に滴加した。得られた溶液は高酸性であった(pH約1)。混合物を室温に冷却し、その温度で約60分間撹拌した。シュウ酸Sn(II)の白色結晶をろ過により取り出した。固体を、中性になるまで、小分けにした合計約500mLの蒸留水で濯いだ。真空乾燥後のシュウ酸Sn(II)の総収量は約108.9gであった。全Sn及びSn(II)含有量はそれぞれ約52.3%及び約52.0%と決定された。上記のように、全Sn含有量は錯滴定によって測定され、Sn(II)含有量はヨウ素滴定によって決定された。
【0027】
実施例3.シュウ酸スズとアンモニア水との反応による酸化スズ(II)の製造
[0027]500mLのビーカーで、実施例1又は2で製造された約95gのシュウ酸スズ(II)を約300gの蒸留水と混合して白色懸濁液を形成させる。約58.5gのアンモニア水(25%NH
3)を約15分かけて加える。温度は約20分かけて約60℃に上昇し、さらに30分間その温度を維持する。SnOの黒色沈殿物を沈降させ、大部分の液体をデカントして除去する。追加の150gの温蒸留水をSnO懸濁液に加え、デカントして除去する。SnOをろ過により取り出し、500mLの蒸留水で洗浄する。乾燥後の総収量は55.4gである。全Sn及びSn(II)含有量は、上記のようにして、それぞれ88.05%及び86.5%と決定された。
【0028】
実施例4.シュウ酸アンモニウムと塩化スズ(II)との反応によるシュウ酸スズ(II)の製造
[0028]1000mLのビーカーで、63gのシュウ酸と68gのアンモニア溶液(25%NH
3)を450gの60℃蒸留水に添加することによってシュウ酸アンモニウムの溶液を製造する。これに225.6gの高純度塩化スズ(II)水溶液(42.1%SnCl
2;遊離酸8.5%)を約60℃で撹拌しながら約45分間かけて滴加した。得られた溶液は酸性であった(pH1〜2)。混合物を室温(約20℃)に約60分間冷却し、シュウ酸Sn(II)の粗白色結晶をろ過により取り出した。固体を、塩化物イオンが本質的になくなるまで、小分けにした合計約800mLの蒸留水で濯いだ。真空乾燥後の総収量は約96.9gであった。全Sn及びSn(II)含有量は、それぞれ54.0%及び53.7%と決定された。
【0029】
実施例5.シュウ酸スズとアンモニア水との反応による酸化スズ(II)の製造
[0029]約66kgの水(脱イオン)中約9.31kgのシュウ酸二水和物の懸濁液を、約10.06kgのアンモニア溶液(25%)と約60分間混合する。温度は約60℃に上昇する。約40.70kgの塩化スズ溶液(含有量約34.4%)を連続撹拌しながら50分かけて溶液に徐々に加える。塩化スズ溶液の4分の1を添加後、白色沈殿物が認められる。懸濁液を65℃で約30分撹拌した後、約14時間以内に約22℃に冷却する。シュウ酸スズを真空ろ過によって液体から分離する。それを176kgの脱イオン水で洗浄する。約17kgのシュウ酸スズを回収し、約47.8kgの水中に懸濁させる。約9.34kgのアンモニア溶液(25%)を約15分かけて加える。温度は約45℃に上昇し、懸濁液は黒色に変色する。約58℃で約30分間撹拌後、SnOを加圧フィルター上に分離する。固体のSnOを約33kgの温水で2回、約110kgの冷水で1回洗浄する。酸化スズを真空下80℃で乾燥させる。収量は12.7kgのSnOである。分析により、化学的純度>99.99%、α値<0.002カウント/cm
2/hであることが示された。
【0030】
実施例6.シュウ酸スズとアンモニア水との反応による酸化スズ(II)の製造
[0030]約1300kgの水(脱イオン)中約390kgのシュウ酸二水和物の懸濁液を、約408kgのアンモニア溶液(25%)と約60分間混合する。温度は約65℃に上昇する。約1200kgの塩化スズ溶液(含有量43.9%)を連続撹拌しながら3時間かけて溶液に徐々に加える。溶液の4分の1を添加後、白色沈殿物が認められる。懸濁液を約60℃で約1時間撹拌した後、約25℃に冷却する。シュウ酸スズを4回のデカンテーションによって精製する。精製シュウ酸スズ懸濁液を追加の水で希釈して約2000kgにする。1.5時間以内に、約348kgのアンモニア溶液(25%)を加える。温度は約40℃に上昇する。懸濁液は黒色懸濁液に変わる。65℃で約1.5時間の撹拌後、SnOを沈降させる。シュウ酸アンモニウム溶液をデカントして除去し、固体を温水で3回洗浄する。洗浄された酸化スズを400rpmでの遠心分離によって分離し、約30分間の遠心分離中にさらに洗浄する。遠心機での予備乾燥後、酸化スズを真空下約100℃で12時間乾燥させる。約320kgの酸化スズが回収される。分析により、化学的純度>99.99%、α値<0.002カウント/cm
2/hであることが示された。