(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934265
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】ミニメンタルステート検査24〜26点の被験者における記憶力改善
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7072 20060101AFI20160602BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20160602BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20160602BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20160602BHJP
A61K 31/335 20060101ALI20160602BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20160602BHJP
A61K 31/714 20060101ALI20160602BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20160602BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20160602BHJP
A61K 33/24 20060101ALI20160602BHJP
A61K 31/70 20060101ALI20160602BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20160602BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20160602BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
A61K31/7072
A61K31/202
A61K31/661
A61K31/14
A61K31/335
A61K31/375
A61K31/714
A61K31/4415
A61K31/519
A61K33/24
A61K31/70
A61K37/02
A61K9/08
A61P25/28
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-16605(P2014-16605)
(22)【出願日】2014年1月31日
(62)【分割の表示】特願2010-514661(P2010-514661)の分割
【原出願日】2008年6月20日
(65)【公開番号】特開2014-74076(P2014-74076A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2014年2月18日
(31)【優先権主張番号】PCT/NL2007/050306
(32)【優先日】2007年6月26日
(33)【優先権主張国】NL
(31)【優先権主張番号】PCT/NL2007/050307
(32)【優先日】2007年6月26日
(33)【優先権主張国】NL
(31)【優先権主張番号】PCT/NL2007/050310
(32)【優先日】2007年6月27日
(33)【優先権主張国】NL
(31)【優先権主張番号】07123811.7
(32)【優先日】2007年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/NL2008/050124
(32)【優先日】2008年3月4日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】508186727
【氏名又は名称】エヌ.ヴィ.ニュートリシア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カンプイス、パトリック ヨセフ ヘラルドゥス ヘンドリクス
(72)【発明者】
【氏名】グロエンエンダイク、マルティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ボンゲルス、アンケ
【審査官】
天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−504333(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/127620(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/008586(WO,A1)
【文献】
BRAIN RESEARCH,2006年,vol.1088,p.83-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/7072
A61K 9/08
A61K 31/14
A61K 31/202
A61K 31/335
A61K 31/375
A61K 31/4415
A61K 31/519
A61K 31/661
A61K 31/70
A61K 31/714
A61K 33/24
A61K 38/00
A61P 25/28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミニメンタルステート検査が24、25又は26点の被験者において、記憶力の改善、及び/又は記憶機能障害の治療若しくは予防をするための製品の製造における、
a.ウリジン又はウリジンリン酸、並びに
b.ドコサヘキサエン酸及び/又はエイコサペンタエン酸、並びにリン脂質、コリン、ビタミンE、ビタミンC、セレン、ビタミンB12、ビタミンB6及び葉酸
を含む組成物の使用であって、被験者に経腸的に投与される該組成物の、上記使用。
【請求項2】
ミニメンタルステート検査が24又は25点の被験者である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
該組成物が100ml当たり0.5〜15μgのビタミンB12及び50〜1000μgの葉酸を含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
該組成物が少なくとも3週間の期間にわたり、被験者に少なくとも1日に1回、経腸的に投与される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
該組成物が1日の投与単位当たりのウリジンをウリジン一リン酸として計算して0.1〜2g、並びに1日の投与単位当たりのDHA及びEPAを合計で400〜5000mg含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
該組成物が100ml当たり可消化炭水化物を1から50グラムの間、100ml当たりタンパク質を0.5〜10g、並びに0.2〜3kcal/ml含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
該組成物が更に100ml当たりタンパク質を0.5〜10g含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
該タンパク質が少なくとも80重量%の乳由来のタンパク質である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
該組成物が液体生成物であり、20℃で100s−1の剪断速度で測定した場合、1から100mPa.sの間の粘度を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
DHAのアラキドン酸に対する重量比が少なくとも5、及び/又は脂肪酸の総量に基づくアラキドン酸が2.5重量%未満である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
ω−6/ω−3脂肪酸の比率は、0.5未満である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記被験者が記憶障害のための投薬を受けていない被験者である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミニメンタルステート検査24〜26点の被験者において、記憶機能を改善するための組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
記憶障害は多くの人、特にアルツハイマー病患者及び/又は高齢者における重大な欠陥である。このような障害は、しばしば重大な影響、例えば、生活の質の低下、日常生活の活動の実施困難等を伴い、入院又は施設収容に至る可能性がある。
【0003】
被験者の記憶機能の改善のためにいくつもの治療法が提案されてきた。しかし、有効性が証明された方法はごくわずかである。他には、複数の栄養成分の投与も提案されてきた。
【発明の概要】
【0004】
栄養療法は、記憶障害の症状が比較的軽度、すなわち、ミニメンタルステート検査(MMSE)のスコアが24〜26点の被験者に特に望まれる。本発明者らは、この特定のサブグループにおいて、記憶力の改善は被験者の日常生活の活動及び生活の質に非常に大きな効果を示すことを認識してきた。この被験者サブグループは、病的経路が発現し始めたばかりである点が特徴的である。MMSEテストにおいては、(30点満点中)27点以上であれば、事実上、正常である。認知症患者では、20〜26点は軽度認知症を、10〜19点は中度認知症を、そして10点未満は重度認知症を意味する。20〜26点のグループ内において、24〜26点のサブグループの記憶障害は、病的経路が発現し始めたばかりであるため、可逆でさえあり得るというのが、本発明者らの信じるところであった。被験者のこのサブグループの記憶機能を改善することは、医薬による治療の必要を遅らせるか、又は投与量を減少させる可能性があるため、極めて望ましい。さらに、MMSE24〜26点の被験者での改善は、被験者を入院させるか、又は施設に収容する必要の延期、自立して生活できる期間の延長、生活の質の向上、又は日常的な活動を遂行できる能力の向上をもたらすことが可能である。
【0005】
MMSEのスコアが24〜26点の被験者のサブグループには、2つの集団が含まれる。第一は、記憶障害のための投薬を受けていない被験者、すなわち、薬物未使用の被験者が含まれる。これらの被験者では、副作用と薬物介入の利点との収支がマイナスのままであるため、このサブグループの治療は、特に好ましい。マイナスの副作用が比較的ないため、これらの被験者には、栄養療法を提供することが望ましい。薬物未使用で、MMSE24〜26点の被験者の場合、医薬を投与しなければならない時点を遅らせる療法を開発することは、特に重要である。
【0006】
第二に、MMSEのスコアが24〜26点の被験者のサブグループには、極めて軽症のアルツハイマー病に罹患している被験者の集団が含まれる。栄養療法を通じた記憶力改善は、極めて軽症のアルツハイマー病に罹患している被験者には特に望ましい。記憶機能の改善を達成することができれば、著しい改善が観察された場合には、薬物介入を減らすか、さらには延期することすら可能となる。
【0007】
しかし、MMSE24〜26点のグループでは、病的経路が発現し始めたばかりであり、症状も極めて軽いため、記憶機能を効果的に改善する(栄養)組成を見つけ出すことは特に困難である。対照グループと治療グループとの差異を検出することは特に困難であり、したがって効果的な治療には、集中的なテストが必要とされる。
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、臨床研究を通じて、(a)ウリジン又はウリジンリン酸、並びに(b)ドコサヘキサエン酸及び/又はエイコサペンタエン酸を含有する組成物の投与は、MMSE24〜26点の被験者において、記憶機能の有意な改善を示すことを発見した。服薬順守及び忍容性は非常に高く、副作用は比較的低かった。本臨床データが、記憶機能の低下速度の単なる減少だけに留まらず、記憶機能の実際の改善を示したことは特に驚くべきことだった。加えて、このサブグループでは、遅延再生機能が大幅に改善されることが明らかになった。臨床研究の結果を、事例を挙げて要約する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
したがって、本発明は、
a.ウリジン又はウリジンリン酸、並びに
b.ドコサヘキサエン酸及び/又はエイコサペンタエン酸
を含み、ミニメンタルステート検査が24〜26点の被験者において、記憶力の改善及び/又は記憶機能障害の治療若しくは予防を目的とする組成物であって、被験者に経腸的に投与する上記組成物の使用に関する。
【0010】
被験者
本発明は、ミニメンタルステート検査が24、25又は26点、すなわち24〜26点の被験者に関する。ミニメンタルステート検査(MMSE)は、認知力を評価する目的に使用される、簡潔な30点満点の質問形式のテストである。約10分の時間で、記憶力及び見当識を含む様々な機能をサンプリングする。MMSEテストには、数多くの領域、すなわちテストの日時と場所、列挙した言葉の反復、言語の使用及び理解力、並びに基本的な運動技能についての単純な質問及び問題が含まれている。(30点満点中)27点以上であれば、事実上、正常であり、20〜26点は軽度の認知症を、10〜19点は中度認知症を、そして10点未満は重度認知症を意味する。MMSEは標準テストである。版権のため、本発明者らが質問表の写しを本明細書に取り込むことは許可されないが、インターネットで容易にアクセス可能であり、版権所有者であるPsychological Assessment Resources(PAR)社を通じて入手可能である。このテストは、最初にFolsteinら(Psych Res12:189、1975)によって紹介され、小さな変更が加えられながら、認知力を評価する目的に広く用いられている。
【0011】
本発明で治療される被験者は、ミニメンタルステート検査のスコアが24〜26点の、好ましくは薬物未使用者で、且つ/又は非常に軽度のアルツハイマー病の患者であり、好ましくは非常に軽度のアルツハイマー病に罹患して、MMSE24〜26点の薬物未使用の被験者である。本発明で使用される用語「薬物未使用」は、コリンエステラーゼ阻害薬、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)拮抗薬及びイチョウの葉の抽出物のうち、1つ又は複数を摂取していない被験者を指す。本明細書に提示する臨床研究により、本組成物は薬物未使用の被験者に有効であることが明らかになった。被験者はヒトであることが好ましく、高齢のヒトであることが好ましく、少なくとも50歳の年齢であることが好ましい。
【0012】
記憶力
本発明は、(i)記憶力の改善並びに/又は(ii)記憶機能障害の治療及び/若しくは予防のための本組成物の使用に関する。また、本発明は、(i)記憶力の改善並びに/又は(ii)記憶機能障害の治療及び/若しくは予防のための方法であって、その方法を必要とする被験者において、本組成物を前記被験者に投与することを含む方法を提供する。特に、本発明は、記憶機能障害の治療に関する。本組成物を被験者に投与したとき、記憶機能が実際に改善されることが明らかになった。ヒトの被験者の記憶機能は、(修正を加えた)ADAS−cog、ウェクスラー式記憶検査法(Wechsler Memory Scale)、改定版WMSを使用して、適切に判定することができる。
【0013】
これらの被験者において、遅延再生機能が改善されたことが特に明らかになった。遅延再生機能は、30分遅延間隔の散文再生課題(prose recall task)により測定することができる。散文の一節の遅延再生は、アルツハイマー型の非常に軽度な認知症と正常な老化とを明確に区別する手段ではない。したがって、本組成物は、アルツハイマー病を(まだ)患っていない被験者が、遅延再生機能を改善する上で有利に役立つ可能性もある。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、遅延再生の改善並びに/又は遅延再生機能障害の治療及び/若しくは予防のための方法を提供する。
【0014】
ウリジン
好ましくは、本組成物はウリジン及び/又はウリジンリン酸を含む。好ましくは、本組成物は、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)及びウリジン三リン酸(UTP)から選択される1つ又は複数のウリジンリン酸を含む。
【0015】
最も好ましくは、本組成物はUMPを含む。本組成物のウリジンのうち、UMPによって供給される割合は少なくとも50重量%であることが好ましく、少なくとも75重量%であることがより好ましく、少なくとも95重量%であることが最も好ましい。本方法は、ウリジン(ウリジン、デオキシウリジン、ウリジンリン酸、ウラシル及びアシル化ウリジンの誘導体の累積量)の投与を含むことが好ましく、その投与量は、1日当たり0.08〜3g、好ましくは1日当たり0.1〜2g、より好ましくは1日当たり0.2〜1gである。本方法は、ウリジンを含む組成物の投与を含むことが好ましく、UMPの投与量は、液体生成物100ml当たり0.08〜3g、好ましくは液体生成物100ml当たり0.1〜2g、より好ましくは液体生成物100ml当たり0.2〜1gである。1日当たり、体重1kg当たり1〜37.5mgのUMPを投与することが好ましい。重量に基づく同等物の必要な用量は、同等物及びUMPの分子量(後者は324ダルトンである)を用いて、等モル量を得ることにより、UMPの投与量から計算することができる。
【0016】
ドコサヘキサエン酸及び/又はエイコサペンタエン酸
本組成物は、少なくともドコサヘキサエン酸(22:6、ω−3、DHA)及び/又はエイコサペンタエン酸(20:5、ω−3、EPA)を含むことが好ましく、DHAとEPAとを含むことが好ましい。DHA及び/又はEPAは、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、遊離脂肪酸又はそれらの塩又はエスエル、リン脂質、リゾリン脂質、グリセロールエーテル、リポタンパク質、セラミド、糖脂質又はそれらの組合せとして供給されることが好ましい。本組成物は少なくともトリグリセリドの形のDHAを含むことが好ましい。
【0017】
本方法は、(DHA+EPA)を1日当たり400〜5000mg、より好ましくは1日当たり500〜3000mg、最も好ましくは1日当たり1000〜2500mg投与することを含むことが好ましい。本組成物に存在する脂肪酸の総量における(DHA+EPA)の割合は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜45重量%、最も好ましくは15〜40重量%である。本方法は、DHAの投与を含むことが好ましく、その投与量は、好ましくは1日当たり300〜4000mg、より好ましくは1日当たり500〜2500mgである。
【0018】
本組成物は、極めて少量のアラキドン酸(AA)を含むことが好ましい。好ましくは、本組成物におけるDHA/AAの重量比は、少なくとも5であり、好ましくは少なくとも10であり、より好ましくは少なくとも15であり、好ましくは、例えば60又は30までである。本方法は、脂肪酸の総量に基づき、アラキドン酸を5重量%未満、より好ましくは2.5重量%未満、例えば最少で0.5重量%を含有する組成物の投与を含むことが好ましい。本生成物におけるω−6/ω−3脂肪酸の比率は、0.5未満であることが好ましく、0.2未満、例えば最少で0.05又は0.1であることがより好ましい。本生成物におけるω−6/ω−3脂肪酸(C20以上)の比率は、0.3未満であることが好ましく、0.15未満、例えば最少で0.03又は0.06であることがより好ましい。
【0019】
本明細書に記載する場合の1日当たりの量は、本発明の組成物によって提供される1日の投与単位の量を意味する。このような1日の用量単位は、単回投与であってもよいが、1日の用量を2回若しくは3回に、又はさらに多くの回数に分けることもできる。好ましい実施形態による組成物を、1単位として投与することを意図する場合、本明細書に記載するような1日当たりの量は、(好ましくは包装された)組成物単位に存在する量であることが好ましい。治療は1日当たり1回、2回又は3回の投与を伴うことが好ましく、少なくとも3週間の期間にわたり、1日1回の投与を伴うことがより好ましい。
【0020】
本組成物は、脂肪酸の総量に基づいて1〜40重量%のDHAを、好ましくは脂肪酸の総量に基づいて3〜36重量%のDHAを、より好ましくは脂肪酸の総量に基づいて10〜30重量%のDHAを含むことが好ましい。本組成物は、脂肪酸の総量に基づいて0.5〜20重量%のEPAを、好ましくは脂肪酸の総量に基づいて2〜10重量%のEPAを、より好ましくは脂肪酸の総量に基づいて5〜10重量%のEPAを含むことが好ましい。上記の量は、味(例えば、LCPレベルが高過ぎると、味が低下し、服薬順守の低下に繋がる)を含めた、いくつもの面を考慮に入れ、最適化したものである。
【0021】
本組成物は、魚油、藻油及び卵脂質から選択される少なくとも1種類の油を含むことが好ましい。本組成物は、DHA及びEPAを含有する魚油を含むことが好ましい。
【0022】
飽和脂肪酸及び一価不飽和脂肪酸
本組成物は、好ましくは飽和脂肪酸及び/又は一価不飽和脂肪酸を含む。飽和脂肪酸の量は、脂肪酸の総量に基づいて6〜60重量%であることが好ましく、12〜40重量%であることが好ましく、脂肪酸の総量に基づいて20〜40重量%であることがより好ましい。特に、C14:0(ミリスチン酸)+C16:0(パルミチン酸)の量は脂肪酸の総量に基づいて5〜50重量%であることが好ましく、8〜36重量%であることが好ましく、15〜30重量%であることがより好ましい。オレイン酸及びパルミトレイン酸等の一価不飽和脂肪酸の総量は、5から40重量%であることが好ましく、15から30重量%であることがより好ましい。これらの好ましい量を有する組成物は非常に効果的であることが明らかになった。
【0023】
リン脂質
好ましくは、本組成物は、リン脂質を含むことが好ましく、脂質の総重量に基づいて0.1〜50重量%のリン脂質を含むことが好ましく、より好ましくは脂質の総重量に基づいて0.5〜20重量%、さらに好ましくは1から10重量%の間、最も好ましくは1から5重量%の間のリン脂質を含む。脂質の総量は、乾燥物質に対して10から30重量%の間及び/又は液体組成物の場合、100ml当たり脂質が2から10gの間であることが好ましい。本組成物は、100ml当たり0.01から1グラムのレシチンを含むことが好ましく、100ml当たり0.05から0.5グラムのレシチンを含むことがより好ましい。これらの好ましい量を有する組成物は非常に効果的であることが明らかになった。
【0024】
コリン
好ましくは、本組成物はコリン及び/又はホスファチジルコリンを含む。本方法は1日当たり50mgを超える量、好ましくは1日当たり80〜2000mg、より好ましくは1日当たり120〜1000mg、最も好ましくは1日当たり150〜600mgのコリンの投与を含むことが好ましい。本組成物は液剤100ml当たり50mgから3グラムのコリンを含むことが好ましく、100ml当たり200mg〜1000mgのコリンを含むことがより好ましい。
【0025】
ビタミン
本組成物は、有利には、ビタミンを含むこともでき、好ましくはビタミンC、ビタミンE及びビタミンBを、より好ましくはビタミンC、ビタミンE、ビタミンB6、ビタミンB12及び葉酸を含むことができる。有利には、ビタミンB12及び葉酸は含まれる。本組成物は、液体生成物100ml当たり葉酸を好ましくは50〜1000μg、より好ましくは150〜750μg、最も好ましくは200〜500μg含む。本方法は、好ましくは1日当たり50〜1000μg、より好ましくは1日当たり150〜750μg、最も好ましくは1日当たり200〜500μgの葉酸を投与することを含む。本組成物は、液体生成物100ml当たりビタミンB12を好ましくは0.5〜15μg、より好ましくは1〜10μg、最も好ましくは1.5〜5μg含む。本方法は、好ましくは1日当たり0.5〜15μg、より好ましくは1日当たり1〜10μg、最も好ましくは1.5〜5μgのビタミンB12を投与することを含む。
【0026】
本組成物は、リン脂質、コリン、ビタミンE、ビタミンC、セレン、ビタミンB12、ビタミンB6及び葉酸の1つ又は複数を含むことが好ましく、リン脂質、コリン、ビタミンE、ビタミンC、セレン、ビタミンB12、ビタミンB6及び葉酸を含むことがより好ましい。
【0027】
生成物
本組成物は、すぐに使える液状、固体状又は半液状の生成物であることが好ましい。本組成物は、経腸投与することが好ましく、経口投与することがより好ましい。本組成物はストローを使って投与することが最も好ましい。すぐに使える液状であるときは、1日の液体量は、1日当たり又は1単位当たり75から200mlの間であることが好ましく、1日当たり90から150mlの間であることが最も好ましい。
【0028】
本発明の方法及び組成物から利益を得ることができる被験者は、多くの場合、摂食に問題を経験している。彼らの知覚能力及び/又は筋肉の制御並びに、場合によっては、適切な食習慣を用いる意思が正しく働かなくなっている可能性もある。嚥下及び/又は咀嚼が困難になっている場合もあり得る。したがって、本組成物はストローを使って摂取することが可能な飲料の形で提供されることが好ましい。
【0029】
本発明による組成物は、粘度が低いことが好ましく、20℃において100sec
−1の剪断速度で測定される粘度が1から2000mPa.sの間であることが好ましく、20℃において100sec
−1の剪断速度で測定される粘度が1から100mPa.sの間であることがより好ましい。本組成物は、摂取をより容易にし、服薬順守を向上するために、ストローを使っての摂取が可能な飲料の形式で提供することがより好ましい。好ましい実施形態において、本組成物は、20℃において毎秒100の剪断速度で1〜80mPasの粘度を有し、より好ましくは20℃において毎秒100の剪断速度で1〜40mPasの粘度を有する。これらの粘度測定値は、例えば平板及び円錐の構造を用いて実施することができる。
【0030】
被験者によって最適に受け入れられるためには、本組成物のオスモル濃度は300から800mOsm/kgであることが好ましい。しかし、本生成物のエネルギー密度は正常な食習慣を妨げるほど高くならないことが好ましい。液状のとき、本生成物は0.2から3kcal/mlを含むことが好ましく、0.5から2kcal/ml、0.7から1.5kcal/mlを含むことがより好ましい。
【0031】
本組成物は、可消化炭水化物を含むのが有利である。本組成物は、可消化炭水化物を液体生成物100ml当たり1から50グラムの間含むことが好ましく、100ml当たり5から30グラムの間含むことがより好ましく、100ml当たり炭水化物を10〜30グラム含むことがさらに好ましい。可消化炭水化物の総量は乾燥物質に対し25から80重量%であることが好ましく、乾燥物質に基づいて40〜80重量%であることが好ましい。
【0032】
本組成物は、さらに100ml当たり0.5〜10gのタンパク質を含むこともでき、より好ましくは100ml当たり1〜6グラムのタンパク質を含むこともでき、最も好ましくは100ml当たり2〜6グラムのタンパク質を含むこともできる。本組成物は、タンパク質の総量に基づいて少なくとも80重量%の乳由来のタンパク質(例えば乳清及び/又はカゼイン)を含むことが好ましい。タンパク質は、とりわけ虚弱な高齢者に適した、口当たりの良い生成物の製造を可能にする。
【実施例】
【0033】
(例1)
125ml当たりに、以下を含む包装された組成物:
エネルギー125kcal、タンパク質3.9g、炭水化物16.5g、脂肪4.9g。
【0034】
脂肪には、1.5gのDHA+EPA及び106mgのリン脂質(大豆レシチン)、コリン400mg、UMP(ウリジン一リン酸)625mg、ビタミンE40mgα−TE、ビタミンC80mg、セレン60μg、ビタミンB12 3μg、ビタミンB6 1mg、葉酸400μgが含まれる。
【0035】
ミネラル及び微量元素:ナトリウム125mg、カリウム187.5mg、塩化物156.3mg、カルシウム100mg、リン87.5mg、マグネシウム25mg、鉄2mg、亜鉛1.5mg、銅225μg、マンガン0.41mg、モリブデン12.5μg、クロム8.4μg、ヨード16.3μg。ビタミン:ビタミンA200μg−RE、ビタミンD3 0.9μg、ビタミンK6.6μg、チアミン(B1)0.19mg、リボフラビン(B2)0.2mg、ナイアシン(B3)2.25mg−NE、パントテン酸(B5)0.66mg、ビオチン5μg。
【0036】
(例2)
臨床研究
記憶機能に障害のある被験者における栄養の役割を示す証拠が増加している。本研究は、薬物未使用で、非常に軽度のアルツハイマー病(AD)を患っている被験者における医療食品による介入の効果を評価する目的で実施された。MMSE24〜26点の、薬物未使用で、非常に軽度のAD被験者は、12週間の二重盲検試験に無作為に割り当てられ、(a)例1による処方(有効な生成物)又は(b)例1によるが、EPA、DHA、リン脂質、コリン、UMP、ビタミンE、ビタミンC、セレン、ビタミンB12、ビタミンB6及び葉酸を抜いた、等カロリーの対照飲料(対照生成物)を含む、125ml(125kcal)の、乳主体の飲料を1日1回摂取した。
【0037】
結果の尺度は、(遅延)言語記憶課題(改定版ウェクスラー式記憶検査法に由来)であった。
【0038】
結果:
ベースラインでは、有効生成物で処置されたグループと対照生成物で処置されたグループの間に、有意な差はなかった。しかし、ベースラインから治療の12週間後までの間の遅延言語記憶課題(改定版ウェクスラー式記憶検査法(WMS−r)に由来)における変化では、2つのグループの間に有意な差が生じた。対照生成物を摂取したグループ(n=60)は、0を含む95%の信頼区間(−0.938から0.610)での低下平均値は−0.164であったのに対し、有効な生成物を摂取したグループ(n=60)は、WMS−rに由来した遅延言語記憶検査で、0より上の95%の信頼区間(0.214から1.752)で、平均0.983ポイントの改善が見られた。
【0039】
この研究は、有効な生成物による、12週間の介入は、MMSE24〜26点の被験者において、記憶力、特に遅延再生機能を改善することを実証している(表1を参照)。
表1
【表1】