(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の構成の試験装置では、実際の使用環境のようにリアルタイム(実時間)で擬似端末と通信できず、ノンリアルタイム(非実時間)での通信となってしまい、擬似端末を正確に評価できないという課題があった。
【0008】
具体的には、擬似端末をコンピュータで実現した場合は、コンピュータのハードウェア資源の制御やソフトウェア制御による処理時間が発生するので、通信専用のICを有する擬似端末よりも信号処理時間が長くなり、実際の使用環境のように、擬似端末と疑似基地局とがリアルタイムでは通信できない。
【0009】
また、コンピュータと擬似基地局との間で、ネットワークを介してパケットを送受信する構成では、パケットの遅延、消失による再送等が発生するので、実際の使用環境のように、擬似端末と疑似基地局とがリアルタイムでは通信できない。
【0010】
前述のように、擬似端末と擬似基地局との間でリアルタイムの通信ができないと、実際の使用環境とは異なってしまうので、前述の構成の試験装置は、擬似端末を正確に評価できないという課題が生じる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、リアルタイムの通信ができない擬似端末を正確に評価することができる試験装置及び試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る試験装置は、所定の通信規格に対応して無線周波数信号を送受信する移動通信端末の通信機能を模擬する擬似端末(10
0)と通信し、前記通信機能の動作を試験するための試験装置(1)であって、前記擬似端末との間で、ベースバンド信号のデジタルのデータを送受信するための送受信手段(21)と、前記送受信手段が前記擬似端末から受信した前記データであるアップリンクデータを一時的に記憶する受信バッファ(22a)と、前記送受信手段を介して前記擬似端末に送信すべき前記データであるダウンリンクデータを一時的に記憶する送信バッファ(22b)と、前記通信規格に従って、前記受信バッファから読み出した前記アップリンクデータに対する受信演算処理を行うとともに、前記通信規格に従った送信演算処理を行って前記ダウンリンクデータを生成し、この生成したダウンリンクデータを前記送信バッファに記憶する演算手段(40)と、所定の条件である第1の条件に従って、前記受信演算処理を行わせるための第1の指示を前記演算手段に通知するとともに、所定の条件である第2の条件に従って、前記送信バッファに記憶された前記ダウンリンクデータの送信を行わせるための第2の指示を前記送受信手段に通知する管理手段(3
0)と、を備え
、前記管理手段は、前記受信バッファを監視し、前記受信バッファが記憶した前記アップリンクデータのデータ量が予め定められたデータ量になったことを前記第1の条件として、前記第1の指示を前記演算手段に通知する受信バッファ監視手段(31)と、前記送信バッファを監視し、前記送信バッファが記憶した前記ダウンリンクデータのデータ量が予め定められたデータ量になったことを前記第2の条件として、前記第2の指示を前記送受信手段に通知する送信バッファ監視手段(32)と、を備えた構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の請求項1に係る試験装置は、管理手段が、所定の条件である第1の条件に従ってアップリンクデータの受信演算処理を演算手段に行わせ、所定の条件である第2の条件に従ってダウンリンクデータの送信を送受信手段に行わせることにより擬似端末との同期をとることができるので、リアルタイム性が要求されない。したがって、本発明の請求項1に係る試験装置は、リアルタイムの通信ができない擬似端末を正確に評価することができる。
【0015】
また、この構成により、本発明の請求項
1に係る試験装置は、受信バッファが記憶したアップリンクデータのデータ量が所定データ量になった時点を契機として、また、送信バッファが記憶したダウンリンクデータのデータ量が所定データ量になった時点を契機として、擬似端末との同期をとることができるので、リアルタイム性が要求されない。したがって、本発明の請求項2に係る試験装置は、リアルタイムの通信ができない擬似端末を正確に評価することができる。
【0016】
本発明の請求項
2に係る試験装置は、
所定の通信規格に対応して無線周波数信号を送受信する移動通信端末の通信機能を模擬する擬似端末(200)と通信し、前記通信機能の動作を試験するための試験装置(2)であって、前記擬似端末との間で、ベースバンド信号のデジタルのデータを送受信するための送受信手段(21)と、前記送受信手段が前記擬似端末から受信した前記データであるアップリンクデータを一時的に記憶する受信バッファ(22a)と、前記送受信手段を介して前記擬似端末に送信すべき前記データであるダウンリンクデータを一時的に記憶する送信バッファ(22b)と、前記通信規格に従って、前記受信バッファから読み出した前記アップリンクデータに対する受信演算処理を行うとともに、前記通信規格に従った送信演算処理を行って前記ダウンリンクデータを生成し、この生成したダウンリンクデータを前記送信バッファに記憶する演算手段(40)と、所定の条件である第1の条件に従って、前記受信演算処理を行わせるための第1の指示を前記演算手段に通知するとともに、所定の条件である第2の条件に従って、前記送信バッファに記憶された前記ダウンリンクデータの送信を行わせるための第2の指示を前記送受信手段に通知する管理手段(50)と、を備え、前記擬似端末は、前記演算手段が前記受信演算処理を一連で行うべき前記アップリンクデータを送信したことに伴って、前記試験装置に演算を開始させる演算開始コマンドを送信するものであり、前記管理手
段は、前記擬似端末から前記演算開始コマンドを受信したことを前記第1の条件として、前記第1の指示を前記演算手段に通知する演算開始通知手段(51)と、前記演算手段が前記ダウンリンクデータの生成を終了したことを前記第2の条件として、前記第2の指示を前記送受信手段に通知する演算終了通知手段(52)と、を備えた構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の請求項
2に係る試験装置は、アップリンクデータの演算開始コマンドを受信した時点を契機として、また、ダウンリンクデータの生成を終了した時点を契機として、擬似端末との同期をとることができるので、リアルタイム性が要求されない。したがって、本発明の請求項3に係る試験装置は、リアルタイムの通信ができない擬似端末を正確に評価することができる。リアルタイムの通信ができない擬似端末を正確に評価することができる。
【0018】
本発明の請求項
3に係る試験装置は、前記管理手段は、実時間とは異なる、前記擬似端末の前記通信機能の動作における時間であるシミュレーション時間を管理するものである構成を有している。
【0019】
この構成により、本発明の請求項
3に係る試験装置は、シミュレーション時間に基づいて擬似端末を試験することができる。
【0020】
本発明の請求項
4に係る試験装置は、前記演算手段は、前記通信規格によってそれぞれの処理が規定された複数のレイヤ(41a〜41e)を含み、前記演算手段の所定のレイヤ間における通信のログデータを生成するログデータ生成手段(13)と、前記ログデータに基づいてログを表示するログ表示手段(16)と、をさらに備え、前記ログデータ生成手段は、前記シミュレーション時間における時刻情報を含む前記ログデータを生成し、前記ログ表示手段は、前記シミュレーション時間における時刻情報を含む前記ログを表示するものである構成を有している。
【0021】
この構成により、本発明の請求項
4に係る試験装置は、シミュレーション時間における時刻情報を含むログを表示することができる。
【0022】
本発明の請求項
5に係る試験装置は、前記ログデータ生成手段は、前記シミュレーション時間における時刻情報に加えて前記実時間における時刻情報を含むログデータを生成し、前記ログ表示手段は、前記シミュレーション時間における時刻情報と前記実時間における時刻情報とを併記したログを表示するものである構成を有している。
【0023】
この構成により、本発明の請求項
5に係る試験装置は、シミュレーション時間における時刻情報と実時間における時刻情報とを併記したログを表示することができる。
【0024】
本発明の請求項
6に係る試験装置は、前記擬似端末の前記通信機能は、ソフトウェアプログラムで実現されたものである構成を有している。
【0025】
この構成により、本発明の請求項
6に係る試験装置は、ソフトウェアプログラムで実現された擬似端末の通信機能を試験対象とした場合でも、擬似端末の通信機能を正確に評価することができる。
【0026】
本発明の請求項
7に係る試験装置は、前記擬似端末の前記通信機能は、半導体集積回路で実現されたものである構成を有している。
【0027】
この構成により、本発明の請求項
7に係る試験装置は、ベースバンド信号を処理する半導体集積回路を試験対象とした場合でも、その半導体集積回路の通信機能を正確に評価することができる。
【0028】
本発明の請求項
8に係る試験方法は、所定の通信規格に対応して無線周波数信号を送受信する移動通信端末の通信機能を模擬する擬似端末(10
0)と通信し、前記通信機能の動作を試験するための試験方法であって、前記擬似端末からベースバンド信号のデジタルのデータであるアップリンクデータを受信するステップ(S11)と、前記アップリンクデータを一時的に記憶するステップ(S12)と
、一時的に記憶した前記アップリンクデータの
データ量が予め定められたデータ量になったことを条件として前記アップリンクデータに対する受信演算処理を行わせるための第1の指示を通知するステップ(S14)と、前記第1の指示を受けて、前記通信規格に従って、前記アップリンクデータに対する受信演算処理を行うステップ(S15)と、前記通信規格に従って送信演算処理を行って、前記擬似端末に送信すべきベースバンド信号のデジタルのデータであるダウンリンクデータを生成するステップ(S21)と、前記ダウンリンクデータを一時的に記憶するステップ(S22)と
、一時的に記憶した前記ダウンリンクデータの
データ量が予め定められたデータ量になったことを条件として前記ダウンリンクデータの送信を行わせるための第2の指示を通知するステップ(S24)と、前記ダウンリンクデータを前記擬似端末に送信するステップ(S25)と、を含む構成を有している。
【0029】
この構成により、本発明の請求項
8に係る試験方法は、所定の条件である第1の条件に従ってアップリンクデータの受信演算処理を行い、所定の条件である第2の条件に従ってダウンリンクデータの送信を行うことにより擬似端末との同期をとることができるので、リアルタイム性が要求されない。したがって、本発明の請求項
8に係る試験方法は、リアルタイムの通信ができない擬似端末を正確に評価することができる。リアルタイムの通信ができない擬似端末を正確に評価することができる。
本発明の請求項9に係る試験方法は、所定の通信規格に対応して無線周波数信号を送受信する移動通信端末の通信機能を模擬する擬似端末(200)と通信し、前記通信機能の動作を試験するための試験方法であって、前記擬似端末からベースバンド信号のデジタルのデータであるアップリンクデータを受信するステップ(S11)と、前記アップリンクデータを一時的に記憶するステップ(S12)と、演算を開始させる演算開始コマンドを前記擬似端末から受信したことを条件として前記アップリンクデータに対する受信演算処理を行わせるための第1の指示を通知するステップ(S14)と、前記第1の指示を受けて、前記通信規格に従って、前記アップリンクデータに対する受信演算処理を行うステップ(S15)と、前記通信規格に従って送信演算処理を行って、前記擬似端末に送信すべきベースバンド信号のデジタルのデータであるダウンリンクデータを生成するステップ(S21)と、前記ダウンリンクデータを一時的に記憶するステップ(S22)と、前記ダウンリンクデータの生成を終了したことを条件として前記ダウンリンクデータの送信を行わせるための第2の指示を通知するステップ(S24)と、前記ダウンリンクデータを前記擬似端末に送信するステップ(S25)と、を含む構成を有している。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、リアルタイムの通信ができない擬似端末を正確に評価することができるという効果を有する試験装置及び試験方法を提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の試験装置を、基地局を模擬して移動通信端末の通信機能を模擬する擬似端末を試験する基地局シミュレータに適用した例を挙げて説明する。
【0033】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態における基地局シミュレータの構成について説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施形態における基地局シミュレータ1は、UE(User Equipment)シミュレータ100と通信することにより、UEシミュレータ100の通信機能を試験するものである。このUEシミュレータ100は、所定の通信規格、例えばLTE(Long Term Evolution)と呼ばれる通信規格に対応して無線周波数信号を送受信する携帯電話やモバイル端末等の通信機能を模擬するものである。
【0035】
基地局シミュレータ1は、インタフェース21、バッファ部22、シミュレーション時間管理部30、基地局模擬演算部40、シナリオ処理部12、ログデータ生成部13、ログデータ記憶部14、表示制御部15、表示部16、操作部17を備えている。この基地局シミュレータ1は、図示しないCPU、ROM、RAM、FPGA、各種インタフェースが接続される入出力回路等を備えたマイクロコンピュータを含む。すなわち、基地局シミュレータ1は、ROMに予め格納された制御プログラムを実行させることにより、マイクロコンピュータを、UEシミュレータ100を試験する基地局シミュレータとして機能させるようになっている。この基地局シミュレータ1は、本発明に係る試験装置を構成する。
【0036】
インタフェース21は、基地局模擬演算部40が生成したダウンリンクデータであるI相成分(同相成分)及びQ相成分(直交成分)のベースバンドデータ(以下、単に「IQデータ」という)をUEシミュレータ100に送信するとともに、UEシミュレータ100からのアップリンクデータであるIQデータを受信するようになっている。このインタフェース21は、本発明に係る送受信手段を構成する。
【0037】
本実施形態では、インタフェース21は、一例として、イーサネット(登録商標)のようなベストエフォート型のネットワークを介し、通信プロトコルとしてTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)を使用してUEシミュレータ100と通信するものとする。したがって、インタフェース21は、IPパケットの生成、IPアドレスの割り当て、送信元及び宛先の特定、データの伝送経路の選択、誤り訂正、再送要求等の機能を有するものとする。ただし、本発明に係る送受信手段はこれに限定されるものではなく、例えば無線LAN(Local Area Network)やUSB(Universal Serial Bus)等の公知の送受信手段を用いてもよい。
【0038】
バッファ部22は、受信バッファ22a、送信バッファ22bを備えている。受信バッファ22aは、インタフェース21がUEシミュレータ100から受信したIQデータを一時的に記憶するようになっている。送信バッファ22bは、インタフェース21からUEシミュレータ100に送信される送信待ちのIQデータを一時的に記憶するようになっている。
【0039】
シミュレーション時間管理部30は、受信バッファ監視部31、送信バッファ監視部32を備えている。このシミュレーション時間管理部30は、受信バッファ22aに一時的に記憶されたデータ量が所定データ量になった時点(後述)に応じて進行させる時刻であって、実時間の進行による現実の時刻とは異なるシミュレーション時刻を管理するようになっている。また、シミュレーション時間管理部30は、基地局シミュレータ1を統括制御するようになっている。
【0040】
ここで、シミュレーション時刻の管理について説明する。基地局シミュレータ1からIQデータを受信したUEシミュレータ100が、シミュレーション時間上で3ms後に応答のIQデータを送信する場合を想定する。この場合、UEシミュレータ100は、応答のIQデータを送信する前に、無信号(又はノイズ成分のみ)のIQデータを、経過したシミュレーション時間分、出力する。例えば、UEシミュレータ100は、1サブフレーム=1msなので、3サブフレーム分の無信号IQデータを基地局シミュレータ1に送信する。データの内容は無信号のため、基地局模擬演算部40は実質的に処理をしないが、受信バッファ監視部31は、3サブフレーム分のIQデータを受信したと判断するので、シミュレーション時間管理部30はシミュレーション時間を3ms進める。
【0041】
受信バッファ監視部31は、受信バッファ22aを監視し、受信バッファ22aに一時的に記憶されたデータ量を把握できるようになっている。また、受信バッファ監視部31は、受信バッファ22aに一時的に記憶されたデータ量が所定データ量になったとき、アップリンクデータに対する受信演算処理を行わせるための指示(第1の指示)を基地局模擬演算部40に通知するようになっている。ここで、所定データ量とは、演算対象となる一定のデータ量をいい、例えばLTEの通信規格での1サブフレーム分のデータ量をいう。なお、受信バッファ監視部31は、本発明に係る受信バッファ監視手段を構成する。
【0042】
送信バッファ監視部32は、送信バッファ22bを監視し、送信バッファ22bに一時的に記憶されたデータ量を把握できるようになっている。また、送信バッファ監視部32は、送信バッファ22bに一時的に記憶されたデータ量が所定データ量(例えば1サブフレーム)になったとき、ダウンリンクデータの送信を行わせるための指示(第2の指示)をインタフェース21に通知するようになっている。この送信バッファ監視部32は、本発明に係る送信バッファ監視手段を構成する。
【0043】
前述のように、本実施形態における基地局シミュレータ1は、IPパケット通信によりUEシミュレータ100を試験する構成となっているので、実際の通信のようなリアルタイム性を求めることはできない。
【0044】
そこで、シミュレーション時間管理部30は、受信バッファ監視部31を備え、受信バッファ22aが所定データ量のIQデータを記憶した時点を演算開始のタイミングとし、記憶したIQデータを使用して所定のシミュレーション時間だけ基地局模擬演算部40に演算を実施させるようになっている。すなわち、シミュレーション時間管理部30は、例えば受信バッファ22aに1サブフレーム分のIQデータが記憶された時点でシミュレーション時間管理部30はシミュレーション時刻を進め、所定のシミュレーション時間だけ基地局模擬演算部40に演算を実施させる。
【0045】
したがって、基地局シミュレータ1は、実際の基地局が行う各処理を、実時間よりも低速度でシミュレーション処理することができる。例えば、基地局シミュレータ1は、UEシミュレータ100から1サブフレーム分のIQデータを受信した後に、1サブフレーム分の応答データをUEシミュレータ100に返すというように、UEシミュレータ100との間で同期をとることができる。
【0046】
なお、実際の基地局では例えば10MHzのクロック周波数に基づいて信号処理を行う構成となっているが、基地局シミュレータ1では例えば1kHzのクロック周波数での信号処理(スロークロック処理)を行う構成としてシミュレーション処理を行うこともできる。
【0047】
基地局模擬演算部40は、レイヤ処理部41、メッセージ処理部42を備えている。この基地局模擬演算部40は、所定の通信規格に従って、UEシミュレータ100からのアップリンクデータを受信バッファ22aから読み出して受信演算処理を行うとともに、通信規格に従った送信演算処理を行ってダウンリンクデータを生成し、この生成したダウンリンクデータを送信バッファ22bに記憶するようになっている。なお、基地局模擬演算部40は、本発明に係る演算手段を構成する。
【0048】
レイヤ処理部41は、PHY層(Physical Layer、物理層)の処理を行うPHY41a、その上位のMAC層(Medium Access Control Layer、媒体アクセス制御層)の処理を行うMAC41b、その上位のRLC層(Radio Link Control Layer、無線リンク制御層)の処理を行うRLC41c、その上位のPDCP層(Packet Data Convergence Protocol Layer、パケットデータ収束層)の処理を行うPDCP41d、その上位のRRC層(Radio Resource Control Layer、無線リソース制御層)の処理を行うRRC41eを備えている。これらの各層は、本発明に係るレイヤを構成する。
【0049】
レイヤ処理部41は、所定の通信規格に対応して各レイヤの通信プロトコル処理を行うよう構成され、インタフェース21からの通信データを処理してメッセージ処理部42に送るとともに、メッセージ処理部42からのメッセージを処理してインタフェース21に送るようになっている。この際、レイヤ処理部41は、各レイヤで処理を行うごとに、レイヤ間の通信の内容である通信データをログデータ生成部13に出力するようになっている。
【0050】
メッセージ処理部42は、シナリオ処理部12からの制御により、UEシミュレータ100に送信すべきメッセージを生成してレイヤ処理部41に送るとともに、UEシミュレータ100からインタフェース21及びレイヤ処理部41を介して受けたメッセージを処理するようになっている。
【0051】
シナリオ処理部12は、予め試験シナリオを記憶したシナリオ記憶部12aから試験シナリオを読み出して、メッセージ処理部42を含む基地局模擬演算部40の各部を制御するようになっている。
【0052】
図2に試験シナリオの例を概念的に示す。試験シナリオには、UEシミュレータ100との通信内容および通信順序を示す通信シーケンスや、基地局シミュレータ1の各部の設定が記述されている。この設定には、初期設定の他に、試験実行中に基地局シミュレータ1の設定を変更するものも含まれる。
図2では、設定の一例として、PDCP層の暗号化について、初期設定及び試験実行中の設定変更が記述されている。
【0053】
ログデータ生成部13は、時刻生成部13a、ID生成部13bを備え、レイヤ処理部41より出力された通信データからログデータを生成するようになっている。このログデータ生成部13は、本発明に係るログデータ生成手段を構成する。
【0054】
時刻生成部13aは、実際の時刻又は試験開始からの経過時刻である時刻情報を生成するようになっている。ID生成部13bは、それぞれのログを識別する識別子情報(ID)として試験開始からの追番を生成するようになっている。
【0055】
ログデータ生成部13が生成したログデータには、時刻生成部13aが生成した時刻情報及びID生成部13bが生成した識別子情報を含む。なお、ログデータ生成部13が、シミュレーション時間管理部30からシミュレーション時間情報を入力する構成としてもよい。この構成では、ログデータ生成部13が生成したログデータには、時刻生成部13aが生成した実時間の時刻情報に加えてシミュレーション時間情報が含まれることとなり、試験者は、基地局シミュレータ1における各処理を実時間での時刻とシミュレーション時間での時刻とで比較することができる。
【0056】
ログデータ記憶部14は、例えばHDD(ハードディスクドライブ)やフラッシュメモリ等の大容量記憶媒体で構成され、ログデータを記憶するようになっている。
【0057】
表示制御部15は、ログを表示するための表示画面を生成し、操作部17の操作内容に従って、ログデータ記憶部14からログデータを読み出し、それに含まれる情報に基づいてログを表示部16に表示するようになっている。
【0058】
表示部16は、表示制御部15の制御に従って、ログを画面に表示するようになっている。この表示部16は、本発明に係るログ表示手段を構成する。
【0059】
操作部17は、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、試験条件等を表示するディスプレイ、これらを制御する制御回路やソフトウェア等で構成され、各試験条件の入力や、表示部16の表示内容を設定するため、試験者が操作するものである。
【0060】
UEシミュレータ100は、インタフェース101と、レイヤ処理部102及び処理部103を有する模擬演算部104と、を備えている。本実施形態では、模擬演算部104は、UEシミュレータ100が模擬するUEの通信機能を構成するものであり、ソフトウェアプログラムで実現されたものとする。
【0061】
インタフェース101は、基地局シミュレータ1のインタフェース21と同様な構成を有し、IQデータを含むIPパケットを基地局シミュレータ1に送信するとともに、基地局シミュレータ1からのIPパケットを受信するようになっている。なお、UEシミュレータ100が、基地局シミュレータ1と同様に、受信バッファ及び送信バッファを備える構成としてもよい。
【0062】
レイヤ処理部102は、基地局シミュレータ1のレイヤ処理部41と同様に、PHY層の処理を行うPHY102a、その上位のMAC層の処理を行うMAC102b、その上位のRLC層の処理を行うRLC102c、その上位のPDCP層の処理を行うPDCP102d、その上位のRRC層の処理を行うRRC102eを備えている。
【0063】
処理部103は、基地局シミュレータ1に送信すべきメッセージを生成してレイヤ処理部102に送るとともに、基地局シミュレータ1からインタフェース101及びレイヤ処理部102を介して受けたメッセージを処理するようになっている。
【0064】
次に、表示部16が表示するログの一例について
図3を用いて説明する。
【0065】
表示制御部15は、ログデータ記憶部14から表示対象のログデータを読み出し、ログ表示のための表示情報を作成し、表示部16に出力する。これにより、表示部16の表示画面には、
図3に例示するようなログ表示60が表示される。
【0066】
ログ表示60は、ログ番号表示(No.)61、レイヤ表示(PHY,MAC,RLC,PDCP,RRC/TE)62、プリミティブ種別表示(Primitive)63、BTS(基地局)番号表示(BTS)64、チャネル情報(Channel)65、メッセージ名表示(Message)66、シミュレーション時刻情報表示(Simulation Time)67、実時刻情報表示(Progress Time)68を有する。
【0067】
ログ表示60の上部には、各処理のログがシミュレーション時刻情報表示67及び実時刻情報表示68の時刻順に時系列にテーブル状に表示される。ログ表示60の下部には、試験者等によって選択されハイライト表示された指定ログのデータ内容を示す内容表示69が表示される。内容表示69の下端部には、16進の値で表した実データが表示される。
【0068】
ログ番号表示61は、ログデータに含まれるID情報に基づき、各処理のログを識別するための番号を表示する情報表示である。レイヤ表示62は、ログデータの送信元レイヤ及び宛先レイヤに基づき、レイヤ処理部41におけるプリミティブの情報の流れ(送信元と宛先のレイヤ)を矢印線によって示す情報表示である。プリミティブ種別表示63は、ログデータのプリミティブ名に基づき、プリミティブの種類及び名称を示す情報表示である。
【0069】
BTS番号表示64は、基地局シミュレータ1が複数の基地局模擬演算部40を有して複数の基地局の動作を模擬する場合に、ログデータのBTS番号に基づき、通信を行う基地局の番号を示す情報表示である。チャネル情報表示65は、ログデータのチャネル情報に基づき、通信を行うチャネルを示す情報表示である。メッセージ名表示66は、ログデータのレイヤ間通信データ内のメッセージ記述情報に基づき、レイヤ間で送受されるメッセージの名称を示す情報表示である。なお、メッセージ名表示66は、ログデータによっては表示が省略される。シミュレーション時刻情報表示67は、シミュレーション時間管理部30が管理するシミュレーション時刻情報に基づき、各処理のデータ送受がなされた時刻を示す情報表示である。実時刻情報表示68は、ログデータの時刻情報に基づき、各処理のデータ送受がなされた時刻を示す情報表示である。
【0070】
図3に示したログ表示60の第1行の列(番号「132」のログ情報)は、シミュレーション時刻「000.01.13.750」、実時刻「000.05.41.000」に1番の基地局からUEシミュレータ100へのデータとして、「LTE#DL#DTCH 0」(Downlink(下り)のDedicate Traffic Channelの0番)のチャネルにおいて、RRC41eからPDCP41dに、「LTE#PDCP#DATA#REQ」(PDCPへのデータ要求)のプリミティブの処理が実行され、「RRC Connection Reconfiguration」(RRCのコネクションの再定義)のメッセージが伝送されたことを表している。
【0071】
次に、本実施形態における基地局シミュレータ1の受信処理及び送信処理の動作について説明する。
【0072】
まず、基地局シミュレータ1の受信処理について
図1及び
図4を用いて説明する。
【0073】
インタフェース21は、UEシミュレータ100が所定の通信規格に従って生成したベースバンド信号のデジタルデータであるアップリンクデータを受信する(ステップS11)。
【0074】
受信バッファ22aは、インタフェース21が受信したアップリンクデータを一時的に記憶する(ステップS12)。
【0075】
受信バッファ監視部31は、受信バッファ22aを監視し、1サブフレーム(1SF)分のアップリンクデータが受信バッファ22aに記憶されたか否かを判断する(ステップS13)。ここで、1サブフレーム分のデータ量は一例であって、本発明はこれに限定されない。
【0076】
ステップ13において、1サブフレーム分のアップリンクデータが受信バッファ22aに記憶されたと判断されなかった場合はステップS11に戻る。
【0077】
一方、ステップ13において、1サブフレーム分のアップリンクデータが受信バッファ22aに記憶されたと判断された場合は、受信バッファ監視部31は、アップリンクデータに対する受信演算処理を行わせるための指示(第1の指示)を基地局模擬演算部40に通知する(ステップS14)。
【0078】
基地局模擬演算部40は、受信バッファ22aから受信演算処理対象の1サブフレーム分のアップリンクデータを読み出し、所定の通信規格に従って、アップリンクデータに対する受信演算処理を行う(ステップS15)。
【0079】
ステップS15の処理において、レイヤ処理部41に含まれるPHY41a、MAC41b、RLC41c、PDCP41d、RRC41eの5つのレイヤの各レイヤ間で通信される各通信データはログデータ生成部13に順次出力され、ログデータ生成部13がログデータを生成する。そして、レイヤ処理部41からのデータはメッセージ処理部42に渡され、シナリオ処理部12からの制御によって所定の処理がなされる。ステップS15の処理が終了するとステップS11に戻る。
【0080】
次に、基地局シミュレータ1の送信処理について
図1及び
図5を用いて説明する。
【0081】
基地局模擬演算部40は、シナリオ処理部12からの制御により、所定の通信規格に従った送信演算処理を行って、UEシミュレータ100に送信すべきデータであるダウンリンクデータを生成する(ステップS21)。
【0082】
ステップS21の処理において、レイヤ処理部41に含まれるRRC41e、PDCP41d、RLC41c、MAC41b、PHY41aの5つのレイヤの各レイヤ間で通信される各通信データはログデータ生成部13に順次出力され、ログデータ生成部13がログデータを生成する。
【0083】
送信バッファ22bは、基地局模擬演算部40が生成したダウンリンクデータを一時的に記憶する(ステップS22)。
【0084】
送信バッファ監視部32は、送信バッファ22bを監視し、1サブフレーム(1SF)分のダウンリンクデータが送信バッファ22bに記憶されたか否かを判断する(ステップS23)。ここで、1サブフレーム分のデータ量は一例であって、本発明はこれに限定されない。
【0085】
ステップ23において、1サブフレーム分のダウンリンクデータが送信バッファ22bに記憶されたと判断されなかった場合はステップS21に戻る。
【0086】
一方、ステップ23において、1サブフレーム分のダウンリンクデータが送信バッファ22bに記憶されたと判断された場合は、送信バッファ監視部32は、ダウンリンクデータの送信を行わせるための指示(第2の指示)をインタフェース21に通知する(ステップS24)。
【0087】
インタフェース21は、送信バッファ22bから送信対象の1サブフレーム分のダウンリンクデータを読み出してUEシミュレータ100に送信する(ステップS25)。ステップS25の処理が終了するとステップS21に戻る。
【0088】
次に、
図6に示すタイミングチャートを用いて基地局シミュレータ1の受信処理及び送信処理の動作を説明する。
【0089】
まず、基地局シミュレータ1の受信処理について説明する。この例では、UEシミュレータ100は、1サブフレーム分のアップリンクデータとして、n個のIQ
1〜IQ
nのIQデータを基地局シミュレータ1に送信するものとする。
【0090】
図6に示すように、UEシミュレータ100は、IQ
1〜IQ
nのIQデータをそれぞれ含むn個のIPパケットをインタフェース21に順次送信すると、インタフェース21は、IPパケットのペイロード部に格納されたIQデータを取り出す。取り出されたIQデータは受信バッファ22aに順次一時的に記憶される。
【0091】
シミュレーション時間管理部30の受信バッファ監視部31は、受信バッファ22aの記憶状態を監視しており、受信演算処理を一連で行うべき1サブフレーム分のIQデータを受信バッファ22aが記憶したことを条件として、受信演算処理を行わせるための指示(第1の指示)を基地局模擬演算部40に通知する。
【0092】
基地局模擬演算部40は、受信バッファ22aから受信演算処理対象の1サブフレーム分のIQデータを読み出し、所定の通信規格に従って、IQデータに対する受信演算処理を行う。
【0093】
次に、基地局シミュレータ1の送信処理について説明する。この例では、基地局シミュレータ1は、1サブフレーム分のダウンリンクデータとして、m個のIQ
1〜IQ
mのIQデータをUEシミュレータ100に送信するものとする。
【0094】
基地局模擬演算部40は、シナリオ処理部12からの制御により、所定の通信規格に従った送信演算処理を行って、UEシミュレータ100に送信すべきダウンリンクデータであるIQデータを生成し、送信バッファ22bに出力する。送信バッファ22bは、IQデータを一時的に記憶する。
【0095】
シミュレーション時間管理部30の送信バッファ監視部32は、送信バッファ22bの記憶状態を監視しており、送信バッファ22bが1サブフレーム分のIQデータを記憶したことを条件として、IQデータの送信を行わせるための指示(第2の指示)をインタフェース21に出力する。
【0096】
インタフェース21は、送信バッファ22bから1サブフレーム分のIQデータを読み出し、IPパケット化してUEシミュレータ100に送信する。
【0097】
以上のように、本実施形態における基地局シミュレータ1は、受信バッファ22aが記憶した送信データのデータ量が所定データ量になったら演算を開始して応答データを生成して送信バッファ22bに記憶し、送信バッファ22bが記憶した応答データのデータ量が所定データ量になったら試験対象のUEシミュレータ100に送信することができる。
【0098】
したがって、本実施形態における基地局シミュレータ1は、試験対象のUEシミュレータ100との同期をとることができるのでリアルタイム性が要求されず、リアルタイムの通信ができないUEシミュレータ100を正確に評価することができる。
【0099】
なお、前述の実施形態において、試験対象であるUEシミュレータ100の通信機能がソフトウェアプログラムで実現されたものとして説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、試験対象の装置が、ハードウェアで構成され、処理速度が比較的遅くかつ処理時間にばらつきがある通信装置であっても同様な効果が得られる。
【0100】
また、UEシミュレータ100の模擬演算部104が、無線通信機器に搭載されてベースバンド信号を処理する半導体集積回路であってもよい。この場合、基地局シミュレータ1は、無線通信機器に組み込まれる前の半導体集積回路を単体の状態で通信試験を実行することができるので、半導体集積回路の性能向上に寄与することができ、半導体集積回路及び無線通信機器の開発期間や開発コストを大幅に短縮することができる。
【0101】
(第2実施形態)
まず、第2実施形態における基地局シミュレータの構成について説明する。
【0102】
図7に示すように、本実施形態における基地局シミュレータ2は、第1実施形態におけるシミュレーション時間管理部30(
図1参照)に代えて、シミュレーション時間管理部50を備えたものである。したがって、シミュレーション時間管理部50の構成について説明し、第1実施形態における試験装置1と同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略する。なお、基地局シミュレータ2は、本発明に係る試験装置を構成する。
【0103】
シミュレーション時間管理部50は、演算開始通知部51、演算終了通知部52を備えている。
【0104】
演算開始通知部51は、UEシミュレータ200からIPパケットに含まれて送信される演算開始コマンドを受信したとき、受信バッファ22aに記憶されているIQデータを読み出す指示を行うようになっている。この演算開始通知部51は、本発明に係る演算開始通知手段を構成する。なお、演算開始コマンドは、受信バッファ22aには記憶されず、インタフェース21からシミュレーション時間管理部50に出力される。
【0105】
演算終了通知部52は、基地局模擬演算部40から所定データ量の演算が終了したことを示す演算終了の通知を受領したとき、演算結果のIQデータをUEシミュレータ200に送信するための指示をインタフェース21に通知するとともに、インタフェース21からUEシミュレータ200に向けて演算開始コマンドを送信させるようになっている。この演算終了通知部52は、本発明に係る演算終了通知手段を構成する。
【0106】
また、本実施形態におけるUEシミュレータ200は、管理部201を備える。管理部201は、任意のデータ量のアップリンクデータがUEシミュレータ200から基地局シミュレータ2に送信されると、演算開始コマンドをインタフェース101から基地局シミュレータ2に送信させる。また、管理部201は、基地局シミュレータ2からインタフェース101を介して演算開始コマンドを受信したときに、基地局シミュレータ2から受信していたダウンリンクデータに対する演算をレイヤ処理部102に開始させる。
【0107】
次に、本実施形態における基地局シミュレータ2の受信処理及び送信処理の動作について説明する。
【0108】
まず、基地局シミュレータ2の受信処理について
図7及び
図8を用いて説明する。なお、第1実施形態における基地局シミュレータ1の受信処理と同様な動作には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0109】
図8に示すように、ステップS12において、受信バッファ22aがアップリンクデータを一時的に記憶した後に、演算開始通知部51は、UEシミュレータ200から演算開始コマンド(cmd)を受信したか否かを判断する(ステップS31)。
【0110】
ステップS31において、UEシミュレータ200から演算開始コマンドが受信されたと判断されなかった場合はステップS11に戻る。
【0111】
一方、ステップ31において、UEシミュレータ200から演算開始コマンドが受信されたと判断された場合は、演算開始通知部51は、アップリンクデータに対する受信演算処理を行わせるための指示(第1の指示)を基地局模擬演算部40に通知する(ステップS14)。
【0112】
次に、基地局シミュレータ2の送信処理について
図9を用いて説明する。なお、第1実施形態における基地局シミュレータ1の送信処理と同様な動作には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0113】
図9に示すように、ステップS22において、送信バッファ22bがダウンリンクデータを一時的に記憶した後に、演算終了通知部52は、基地局模擬演算部40から演算終了の通知を受領したか否かを判断する(ステップS41)。
【0114】
ステップS41において、基地局模擬演算部40から演算終了の通知が受領されたと判断されなかった場合はステップS21に戻る。
【0115】
一方、ステップ41において、基地局模擬演算部40から演算終了の通知が受領されたと判断された場合は、演算終了通知部52は、ダウンリンクデータの送信を行わせるための指示(第2の指示)をインタフェース21に通知する(ステップS24)。また、インタフェース21がダウンリンクデータを送信した後に、演算終了通知部52は、インタフェース21からUEシミュレータ200に演算開始コマンドを送信させる。
【0116】
次に、
図10に示すタイミングチャートを用いて基地局シミュレータ2の受信処理及び送信処理の動作を説明する。
【0117】
まず、基地局シミュレータ2の受信処理について説明する。この例では、UEシミュレータ200は、n個のIQ
1〜IQ
nのIQデータをそれぞれ含むn個のIPパケットをインタフェース21宛に順次送信するものとする。インタフェース21は、IPパケットのペイロード部に格納されたIQデータを取り出す。取り出されたIQデータは受信バッファ22aに順次一時的に記憶される。
【0118】
また、UEシミュレータ200は、最後のIQデータであるIQ
nを送信した後に演算開始コマンド(cmd)を含めたIPパケットを基地局シミュレータ2宛に送信する。
【0119】
シミュレーション時間管理部50の演算開始通知部51は、演算開始コマンドを受信したことを条件として、受信演算処理を行わせるための指示(第1の指示)を基地局模擬演算部40に通知する。
【0120】
基地局模擬演算部40は、受信バッファ22aからn個のIQデータを読み出し、所定の通信規格に従って、IQデータに対する受信演算処理を行う。
【0121】
次に、基地局シミュレータ2の送信処理について説明する。この例では、基地局シミュレータ2は、ダウンリンクデータとして、m個のIQ
1〜IQ
mのIQデータをUEシミュレータ200に送信するものとする。
【0122】
基地局模擬演算部40は、シナリオ処理部12からの制御により、所定の通信規格に従った送信演算処理を行って、UEシミュレータ200に送信すべきダウンリンクデータであるIQデータを生成し、送信バッファ22bに出力するとともに、演算が終了した旨をシミュレーション時間管理部50の演算終了通知部52に通知する。送信バッファ22bは、IQデータを一時的に記憶する。
【0123】
シミュレーション時間管理部50の演算終了通知部52は、基地局模擬演算部40から演算終了の通知を受領したことを条件として、IQデータの送信を行わせるための指示(第2の指示)をインタフェース21に出力する。
【0124】
インタフェース21は、送信バッファ22bから送信対象のIQデータを読み出し、IPパケット化してUEシミュレータ200に送信する。また、インタフェース21は、演算終了通知部52から演算開始コマンドを受けて、IPパケット化してUEシミュレータ200に送信する。
【0125】
なお、上述した演算開始コマンドは、シミュレーション時間上の時刻情報を含むようになっていてもよい。この場合、シミュレーション時間管理部50は、UEシミュレータ200から演算開始コマンドを受けたときに、この演算開始コマンドに含まれる時刻情報を、対応するアップリンクデータの受信時刻として取得する。また、シミュレーション時間管理部50は、UEシミュレータ200に演算開始コマンドを送出するときに、対応するダウンリンクデータの送信時刻として、時刻情報をこの演算開始コマンドに含めて送出する。これと同様の機能をUEシミュレータ200の管理部201に持たせておくことにより、基地局シミュレータ2は、シミュレーション時間を管理することが可能となる。
【0126】
以上のように、本実施形態における基地局シミュレータ2は、UEシミュレータ200が送信データを送信した後に送信する演算開始コマンドを受信したら演算を開始して応答データを生成して送信バッファ22bに記憶し、演算が終了したことを示す演算終了コマンドをインタフェース21が受信したら送信バッファ22bが記憶した応答データを試験対象のUEシミュレータ200に送信することができる。
【0127】
したがって、本実施形態における基地局シミュレータ2は、試験対象のUEシミュレータ200との同期をとることができるのでリアルタイム性が要求されず、リアルタイムの通信ができないUEシミュレータ200を正確に評価することができる。