特許第5934278号(P5934278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5934278加熱手段および酸誘導体を使用してケラチン線維をストレート化するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934278
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】加熱手段および酸誘導体を使用してケラチン線維をストレート化するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/365 20060101AFI20160602BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20160602BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   A61K8/365
   A61K8/49
   A61Q5/04
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-80888(P2014-80888)
(22)【出願日】2014年4月10日
(62)【分割の表示】特願2009-511551(P2009-511551)の分割
【原出願日】2007年5月23日
(65)【公開番号】特開2014-132034(P2014-132034A)
(43)【公開日】2014年7月17日
【審査請求日】2014年5月9日
(31)【優先権主張番号】0651909
(32)【優先日】2006年5月24日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】60/814,904
(32)【優先日】2006年6月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール・マル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・パジーニ
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−194261(JP,A)
【文献】 特開2007−176826(JP,A)
【文献】 特開2005−336093(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0143173(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
DB Thomson Innovation
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つのケト酸誘導体を含む、7以下のpHを有するヘアリラクシング組成物を毛髪に適用するステップ、
(ii)加熱手段を用いて、毛髪の温度を110°Cと250°Cとの間の温度まで上昇させるステップ
を含む、毛髪をリラックスさせるための方法であって、ケト酸誘導体が、一般式(II):
【化1】
[R5は、COOH;OH、COOHまたはBr基によって任意選択で置換された直鎖状または分枝状C1〜C3アルキル基;あるいはインドリル基または
【化2】
を表す]
ならびにこれらの立体異性体、有機または無機塩および溶媒和物に対応する、方法。
【請求項2】
加熱手段を用いて、温度を、120°Cと220°Cとの間の温度に上昇させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
組成物が湿った毛髪に適用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
毛髪が部分的に予乾燥されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ケト酸誘導体のモル濃度が、2Mと8Mとの間であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(II)の化合物が:
ピルビン酸
2-ケト酪酸
β-ヒドロキシピルビン酸
3-メチル-2-オキソ酪酸
2-オキソ吉草
3-メチル-2-オキソ吉草酸
トリメチルピルビン酸
オキサロ酢酸
2-ケトグルタル
ロモピルビン
3-インドールグリオキサル酸
イミダゾロピルビン酸HCl
3-インドールピルビン酸
2-ケトグルタル酸二水和
らびにこれらの立体異性体、有機または無機塩および溶媒和物、
から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも:
- 110°Cと250°Cとの間の温度を与える1つの加熱手段、
- 少なくとも1つのケト酸誘導体を含む、7以下のpHを有する1つのヘアリラクシング組成物
を含む、キットであって、ケト酸誘導体が、一般式(II):
【化3】
[R5は、COOH;OH、COOHまたはBr基によって任意選択で置換された直鎖状または分枝状C1〜C3アルキル基;あるいはインドリル基または
【化4】
を表す]
ならびにこれらの立体異性体、有機または無機塩および溶媒和物に対応する、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱手段および少なくとも1つのα-ヒドロキシ酸及び/またはケト酸誘導体によってケラチン繊維をリラックスさせるための方法に関する。
【0002】
本発明のリラクシング方法は、いずれかの還元剤またはランチオナイゼーション剤を用いることなく実施される。本発明のリラクシング方法は、いかなる還元ステップまたはランチオナイゼーションステップをも含まない。
【0003】
本発明によれば、用語「ケラチン繊維」は、ヒトまたは動物由来の繊維、例えば頭髪、体毛、睫毛、ウール、アンゴラ、カシミアまたはファーなど、を意味する。本発明は特定のケラチン繊維に限定されることはないが、やはりより特に、頭髪について言及することになる。
【0004】
本発明によれば、用語「リラクシング」は、白人またはアフリカ人の毛髪を、リラクシング、ストレート化または非カール化することをその範囲に含む。
【0005】
用語「加熱手段」は、ケラチン繊維を少なくとも110℃に加熱するためのあらゆる手段、例えば加熱アイロン、例えばフラットまたはラウンドアイロン、マイクロ波発生器または赤外線照射源などを意味する。
【背景技術】
【0006】
毛髪を恒久的に再成形するために、2つの手法が使用される。これら手法は、ケラチン(シスチン)に存在するジスルフィド共有結合の開裂に基づいており:
- 第一の手法は、第一段階において、このジスルフィド結合の開裂を、還元剤を含む組成物を用いて行い、次いで、好ましくは毛髪をすすいだ後に、第二段階において、予めローラーまたは同様のものによって張力をかけられたか、あるいは他の手段によって成形または直毛化された毛髪に対して、定着剤としても知られている酸化組成物を適用することにより前記ジスルフィド結合を再構成して、頭髪に所望の形態を与えること本質とする。この手法は毛髪を、ウェービーにするか、あるいはリラックスさせるか、非カール化するかあるいは直毛化することを可能にする;
- 第二の手法は、水酸化物ファミリーに属する塩基を含む組成物を使用して「ランチオナイゼーション」操作を行うことを本質とする。このことは、ジスルフィド結合(-CH2-S-S-CH2-)をランチオニン結合(-CH2-S-CH2-)で置換することにつながる。
・第一の反応は、水酸化物イオンが引き起こすシスチンのベータ脱離が、この結合の開裂およびデヒドロアラニンの形成をもたらすことを本質とする:
【0007】
【化1】
【0008】
・第二の反応は、デヒドロアラニンとチオール基との反応である。特に、形成されたデヒドロアラニンの二重結合は、反応性の二重結合である。この二重結合は、放出されているシステイン残基のチオール基と反応して、ランチオニンブリッジまたはランチオニン結合またはランチオニン残基と称される新しい結合を形成することが可能である:
【0009】
【化2】
【0010】
還元剤を使用する第一の手法に対して、このランチオナイゼーション手法では、ランチオニンブリッジの形成が不可逆的であるために、定着ステップを必要としない。この手法は、このように、単一のステップで行われ、毛髪をウェービーにするか、あるいはリラックスさせるか、非カール化するかあるいは直毛化することを可能にする。しかし、この手法は主として、生まれつきカールのある毛髪のリラクシングのために使用される。
【0011】
第一の手法に関して、パーマネントウェービングまたはヘアリラクシング作業の第一のステップのために一般に使用される還元組成物は、還元剤として、チオール、亜硫酸塩(サルファイト)または重亜硫酸塩(ビサルファイト)を含む。これらの薬剤は一般に、ジスルフィド結合の良好な開裂を得るために、0.5Mと1Mとの間の濃度で、本質的に水性媒体中で使用される。チオールの中で、通常使用されるものは、チオグリコール酸、システアミン、モノチオグリコール酸グリセリル、チオ乳酸およびシステインである。チオグリコール酸は、ケラチンのジスルフィド結合をアルカリ性のpHにおいて還元する際に、とりわけチオグリコール酸アンモニウムの形態で、特に効率的であり、かつ、パーマネントウェービング(「ヘアウェービング」)において最も高頻度で使用される製品を構成する。しかし、チオグリコール酸は、満足のいく強度のカールを得ようとする場合には、十分に塩基性の媒体中で(実際には8.5と9.5との間のpHで)使用しなければならないことが判明している。においをマスキングするために程度の差はあれ効率的な香料の使用を必要とする不快なにおいを放出するという欠点の他に、アルカリ性pHでのチオールの使用はまた、繊維の分解および最も特に人工的着色の低下をももたらす。
【0012】
サルファイトまたはビサルファイトは、主として毛髪のリラクシングのために使用される。これらは、チオールの欠点と同様の欠点を有し、効果はより少ない。
【0013】
チオールおよびサルファイト(またはビサルファイト)はまた、水性溶液中での安定性に劣るという欠点をも有する。
【0014】
一般に、ジスルフィドでの還元と続いての定着によって、チオールおよびサルファイトにより得られる再成形効果の持続性は、ランチオナイゼーション手法により得られる持続性よりもはるかに低いものと判定される。
【0015】
第二の手法に関して、ランチオナイゼーションを行うために一般に使用される組成物は、塩基として、水酸化ナトリウム、水酸化グアニジニウムまたは水酸化リチウムなどの水酸化物を含む。これらのランチオナイゼーション活性剤は、ベータ脱離メカニズムを介してジスルフィド結合を開裂させるが、一般に、油中水エマルションとして、0.4Mと0.6Mとの間の濃度で、一般に室温で10から15分間作用させることにより使用される。水酸化ナトリウムは、依然として最も高頻度で使用される薬剤である。水酸化グアニジニウムは、現在、数多くの組成物にとって好ましい化合物である。これら2つの水酸化物、水酸化ナトリウムおよび水酸化グアニジニウムは、生まれつきカールのある毛髪のリラクシングまたは非カール化のために使用される2つの主要な薬剤である。これら薬剤は、チオグリコール酸アンモニウムおよび亜硫酸アンモニウムに比べて、特に不快なにおいがないこと、1回の作業ステップしか必要としない(処理時間がより短い)点および毛髪の再形成の持続性および有効性がはるかに大きいことで、いくつかの優位性がある。
【0016】
しかし、これらの水酸化物は、腐食性であるという大きな欠点を有する。この腐食性は、時として重篤なこともある刺激を引き起こすことにより、頭皮に影響を与える。このことは、しばしば「ベース」または「ベースクリーム」と称される脂肪性保護クリームを予め頭皮に塗布することによって部分的に改善することができる。この場合「ベース」という語は、化学的な意味の塩基性薬剤という意味は有さない。保護クリームが水酸化物と単一の組成物に組み合わせられている場合、一般に、上記の名称の対語として「ノーベース」と称される。この「ノーベース」手法は好ましい。
【0017】
水酸化物の腐食性はまた、第一に毛髪にざらつき感を与えることにより、かつ第二に毛髪をはるかに脆弱にすることにより毛髪の状態にも影響を及ぼす。この脆弱性は、処理が長期にわたる場合には、場合により、毛髪の破砕または崩壊またさらには溶解にさえ至る。特定の場合においては、水酸化物はまた、毛髪の本来の色の脱色をも引き起こす。
【0018】
水酸化ナトリウムを含む処方は一般に、「苛性アルカリリラクサー」と称され、水酸化ナトリウムを含まない処方は「非苛性アルカリリラクサー」と称される。
【0019】
「非苛性アルカリ」リラクサーとして知られる主要なリラクシング処方は、水酸化グアニジニウムを使用する。水酸化グアニジニウムは、不安定であるため、炭酸グアニジニウムを水酸化カルシウムなどの難溶性の水酸化物源と、使用時に混合することにより生成する。これら2つの化合物の間の反応は、水酸化グアニジニウムおよび炭酸カルシウムの生成をもたらし、炭酸カルシウムは組成物中に沈殿する。この沈殿物の存在が、毛髪の最終的すすぎをきわめて困難にし、かつ毛髪および頭皮に鉱物粒子を残し、このことがざらつき感およびフケに類似した非審美的な外観をもたらす。近年水酸化ナトリウム(「苛性アルカリ」)に比べて水酸化グアニジニウム(「非苛性アルカリ」)が成功しているのは、リラクシング効果がより優れていることおよび皮膚の耐性がよりよいことに起因すると思われる。しかし、水酸化物ファミリーの塩基を使用するこれらの手法は、毛髪および頭皮に対して依然として非常に攻撃性があり、かつ、毛髪を崩壊にまで至らしめる可能性がある過度の刺激および損傷を回避するために、非常に厳密な適用期間の制御を必要とする。水酸化物の腐食性から生じるこの攻撃性は、毛髪の直毛化またはヘアリラクシングのためだけではなく、パーマネントウェービング(ヘアウェービング)のためにこれらのヘアランチオナイゼーション組成物を使用しないことを正当化する根拠である。
【0020】
さらに、水酸化物は、アミド官能基を加水分解するためには良好な薬剤であることが知られており(例えば、March’s Advanced Organic Chemistry、第5版、Wiley Interscience、New York、「Hydrolysis of Amides」、474頁以下を参照のこと)、したがって直接求核攻撃によってペプチド結合の開裂に導く。したがって、毛髪および広い意味におけるケラチン物質に観察される損傷は、おそらくは大部分、ケラチンのアミド結合の部分的加水分解によるものであろうと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特許出願CA 1315204
【特許文献2】特許出願US 3 847 165
【特許文献3】特許出願NL 6410355
【特許文献4】特許出願JP 2000/229 819
【特許文献5】特許出願WO 2002/003 937
【特許文献6】特許出願WO 2001/064 171
【特許文献7】特許US 5 641 477
【特許文献8】特許出願WO 02/085 317
【特許文献9】特許US 5 957 140
【特許文献10】特許US 5 046 516
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Biochemistry 2(1)、47〜57頁、1963年
【非特許文献2】March’s Advanced Organic Chemistry、第5版、Wiley Interscience、New York、「Hydrolysis of Amides」、474頁以下
【非特許文献3】M. Wong、G. Vis-surelおよびJ. Epps、J. Soc. Cosmet. Chem. (1994年)、45、347〜352頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、毛髪に対して著しく攻撃性の少ないリラクシング組成物に対する現実的な必要性が存在する。
【0024】
還元剤(第一の手法)および/または水酸化物(第二の手法)の欠点を両方ともに克服するために、種々の研究が行われてきた。
【0025】
したがって、チオグリコール酸を置き換えるための数多くの還元剤が提案されてきたが、チオグリコール酸アンモニウムの形態のチオグリコール酸は、毛髪の成形のみならず直毛化のためにも、依然として、参照用化合物および化粧用配合物に最も広く使用される化合物の両方である。
【0026】
数多くの特許において、成形のみならずリラクシングのためにも、毛髪に対して引き起こされる刺激および損傷を低減するために、一般的な還元剤(チオール、サルファイトまたはビサルファイト)を尿素またはアルキル尿素と組み合わせることもまた提案されてきた。例えば:
- 毛髪を成形するための、チオグリコール酸アンモニウム(5.5〜11.5%)および尿素またはモノアルキル尿素(1〜3%)を含む組成物について記述している特許出願CA 1315204、
- 酸性のpHにおいて毛髪を成形するための、チオグリコール酸アンモニウム(1.2〜1.4 M)および尿素(2.0〜2.7 M)を含む組成物について記述している特許出願US 3 847 165、
- 毛髪を成形およびリラクシングするための、サルファイト(0.8〜1.5 M)および尿素(0.6〜3.0 M)を含む組成物について記述している特許出願NL 6410355、
- 毛髪を成形およびリラクシングするための、サルファイトまたはビサルファイト(0.5〜15%)、尿素(0.5〜15%)およびアルコール(エタノールおよび/またはイソプロパノール、1〜30%)を含む組成物について記述している特許出願JP 2000/229 819、
が挙げられるであろう。
【0027】
数多くの特許において、ランチオナイゼーション活性剤として作用する水酸化物を、一般に毛髪を保護するのに役立つある種の添加剤を組み合わせることもまた提案されてきた。例えば:
- C3〜C5単糖類を含む組成物について記述している特許出願WO 2002/003 937、
- 錯化剤を含む組成物について記述している特許出願WO 2001/064 171、
- 水添デンプン加水分解物を含む組成物について記述している特許US 5 641 477、
- 第二のステップにおいて水酸化物によって形成されるデヒドロアラニンと反応して、新たなブリッジを形成する有機求核剤を含む組成物について記述している特許出願WO 02/085 317、
が挙げられるであろう。
【0028】
これらの提案は全て、程度の差はあれ顕著な改善をもたらすが、これらは水酸化物の著しい腐食性に付随する損傷を十分に低減することはできない。
【0029】
先に示したように、還元剤の使用は毛髪のリラクシングまたは直毛化の持続性に乏しくすることにつながり、かつ水酸化物の使用は、その腐食性により、ヘアリラクシングの分野でのその使用を限定的なものにする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
相当な研究をした後、全く驚くべきことにかつ予想外に、α-ヒドロキシ酸及び/またはケト酸誘導体の作用および110℃を超える温度への加熱手段の作用を組み合わせることによって、毛髪は永続的にリラックスされうることが今般、見出された。このようにして、リラクシング、毛髪の美容特性および繊維の完全性に関して優れた結果が得られる。
【0031】
理論に束縛されることなく、出願人は、ケラチン繊維において、α-ヒドロキシ酸及び/またはケト酸誘導体および加熱手段の共同作用があり、それが繊維を効率的かつ永続的にリラックスさせると考えている。
【0032】
出願人は、
- 少なくとも1つのα-ヒドロキシ酸及び/またはケト酸誘導体を含む、9以下のpHを有するヘアリラクシング組成物をケラチン繊維に適用するステップ、
- 加熱手段を用いて、ケラチン繊維の温度を110℃と250℃との間の温度まで上昇させるステップ
を含む、ケラチン繊維をリラックスさせるための方法を実施することにより、先行技術の欠点を克服し、かつ上記の目的を満足させることが可能であることを見出している。
【0033】
かくして本発明は、
- 少なくとも1つのα-ヒドロキシ酸及び/またはケト酸誘導体を含む、9以下のpHを有するヘアリラクシング組成物をケラチン繊維に適用するステップ、
- 加熱手段を用いて、ケラチン繊維の温度を110℃と250℃との間の温度まで上昇させるステップ
を含む、ケラチン繊維をリラックスさせるための方法に関する。
【0034】
有利には、温度を、加熱手段を用いて120℃と220℃との間、より有利には140℃と220℃との間の温度に上昇させる。
【0035】
好ましくは、前記組成物は湿ったケラチン繊維に適用される。
【0036】
例えばタオルを用いて、過剰な組成物を除去することを意図したステップもまた、組成物を適用するステップと温度を上昇させるステップとの間に導入されてよい。
【0037】
一般式(I)のα-ヒドロキシ酸誘導体の定義:
【0038】
【化3】
【0039】
R1は、H、OH、NH2、CH2-COOHまたは直鎖状もしくは分枝状C1〜C4アルキル基を表し、
R2は、H、COOH、CHOH-COOH、CF3、CH=CH2、NHCONH2;OH、Cl、NH2、COOH、CF3およびSCH3から選択される基によって任意選択で置換された直鎖状、分枝状または環状C1〜C8アルキル基;あるいは1つのOHまたはOCH3基によって任意選択で置換されたフェニルまたはベンジル基;あるいは別法として、基
【0040】
【化4】
【0041】
を表し、
R1およびR2はまた、一緒になって、それらを保持する炭素原子とともに、オキソ基(=O)またはシクロプロピル、シクロブチル、ヒドロキシシクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル環、あるいは別法として基
【0042】
【化5】
【0043】
を形成してよく、
R1=Hのとき、R2はまた、(CHOH)2CH2OHまたは(CHOH)3CH2OH基であってよく、
Rは、OHあるいは式中R3、R4=Hまたは1つもしくは2つのOH基によって任意選択で置換された直鎖状もしくは分枝状C1〜C4アルキル基であるNR3R4を表す、
の化合物およびこれらの立体異性体、有機または無機塩および溶媒和物から選択されるあらゆる誘導体を意味する。
【0044】
式(I)の好ましい化合物には:
グリコール酸
シュウ酸
乳酸
1-ヒドロキシ-1-シクロプロパンカルボン酸
2-ヒドロキシ-3-ブテン酸
2-ヒドロキシイソ酪酸
2-ヒドロキシ-n-酪酸
イソセリン
グリセリン酸
2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸
2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸
2-ヒドロキシ吉草酸
4-アミノ-2-ヒドロキシ酪酸
1-ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸
ジヒドロキシフマル酸
シトラマル酸
酒石酸
クエン酸
2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)酪酸
マンデル酸
2-ヒドロキシ-3-メチル吉草酸
グリオキシル尿素
β-イミダゾール乳酸
2-トリフルオロメチル-2-ヒドロキシプロピオン酸
ヘキサヒドロマンデル酸
2-ヒドロキシオクタン酸
アラビン酸
3-フェニル乳酸
ヒドロキシフェニルグリシン
3-ヒドロキシマンデル酸
4-ヒドロキシマンデル酸
2-ヒドロキシノナン酸
L-アルギン酸
3-メトキシマンデル酸
4-メトキシマンデル酸
3-(4-ヒドロキシフェニル)乳酸
タルトロン酸
酒石酸
β-クロロ乳酸
1-シクロペンタノール-1-カルボン酸
1,2-ジヒドロキシシクロブタンカルボン酸
2-エチル-2-ヒドロキシ酪酸
α-ヒドロキシイソカプロン酸
α-ヒドロキシカプロン酸
2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸
リンゴ酸
ヒドロキシタルトロン酸
グルコン酸
ラクタミド
N-メチルラクタミド
N-エチルラクタミド
N,N-ジメチルラクタミド
N-2-ヒドロキシエチルラクタミド
ならびにこれらの立体異性体、有機または無機塩および溶媒和物
が含まれる。
【0045】
特に好ましい式(I)の化合物は:
グリコール酸
シュウ酸
L-乳酸
DL-乳酸
D-乳酸
リンゴ酸
酒石酸
DL-グリセリン酸
アラビン酸
グルコン酸
ヒドロキシタルトロン酸
ラクタミド
N-メチルラクタミド
N-エチルラクタミド
N-2-ヒドロキシエチルラクタミド
から選択される。
【0046】
一般式(II)のα-ケト酸誘導体の定義:
【0047】
【化6】
【0048】
R5は、COOH;OH、COOHまたはBr基によって任意選択で置換された直鎖状または分枝状C1〜C6アルキル基;OHまたはCOOH基によって任意選択で置換されたフェニルまたはベンジル基;あるいはインドリル基または
【0049】
【化7】
【0050】
を表し、ならびにこれらの立体異性体、有機または無機塩および溶媒和物。
【0051】
好ましい式(II)の化合物は:
ピルビン酸
2-ケト酪酸
β-ヒドロキシピルビン酸
3-メチル-2-オキソ酪酸
2-オキソ吉草酸
ケトマロン酸
3-メチル-2-オキソ吉草酸
トリメチルピルビン酸
オキサロ酢酸
2-ケトグルタル酸
ベンジルギ酸
2-オキソオクタン酸
2-オキソアジピン酸
フェニルピルビン酸
ブロモピルビン酸
2-ケトピメリン酸
4-ヒドロキシフェニルピルビン酸
3-インドールグリオキサル酸
イミダゾロピルビン酸HCl
2-ケト-L-グロン酸
2-カルボキシ-α-オキソベンゼン酢酸
3-インドールピルビン酸
2-ケトグルタル酸二水和物
ピルブアミド
N-メチルピルブアミド
N-エチルピルブアミド
N,N-ジメチルピルブアミド
N-2-ヒドロキシエチルピルブアミド
ならびにこれらの立体異性体、有機または無機塩および溶媒和物、
から選択される。
【0052】
特に好ましい式(II)の化合物は:
ピルビン酸
2-ケト酪酸
β-ヒドロキシピルビン酸
ケトマロン酸
オキサロ酢酸
2-ケトグルタル酸
2-ケト-L-グロン酸
2-ケトグルタル酸二水和物
ピルブアミド
から選択される。
【0053】
操作濃度
操作モル濃度は、好ましくは2Mと8Mとの間、有利には4Mと8Mとの間である。
【0054】
pH
操作pHは、好ましくは7以下である。
【0055】
本発明の組成物は、毛髪をできる限り直線的に保つために、水性溶液の形態または増粘させたクリームの形態のいずれかである。これらのクリームは「濃厚な(heavy)」エマルションの形態に調製される。
【0056】
これらの組成物は、少なくとも一つの式(I)のα-ヒドロキシ酸誘導体及び/または少なくとも一つの式(II)のケト酸誘導体及び/または全ての割合のそれらの混合物を含む。
【0057】
有利には、本発明の組成物は、唯一のヘアリラクング活性剤として、前記ヒドロキシ酸及び/またはケト酸誘導体を含む。
【0058】
ケラチン繊維の美容的特性の改善またはケラチン繊維の劣化を低減または回避する目的で、本発明に従って使用される組成物はまた、1つまたは複数の追加的な化粧用活性剤をも含んでよい。
【0059】
一般に、前記追加的な化粧用活性剤は、化粧用組成物の全重量に対して、0.01重量%から30重量%、好ましくは0.1重量%から10重量%に相当する。
【0060】
一般に、ケラチン繊維に適用される組成物は、乾燥したケラチン繊維1グラム当り、0.05gから20g、好ましくは0.1gから10gの組成物量で適用される。
【0061】
組成物を適用した後、および加熱手段を用いてケラチン繊維の温度を上昇させる前に、前記組成物を一般的に30秒から60分間、好ましくは5分から45分間、作用させてよい。
【0062】
本発明の方法は、組成物を適用するステップの後に、加熱手段を用いてケラチン繊維の温度を110℃と250℃との間の温度まで上昇させるステップを含む。
【0063】
有利には、加熱手段としてアイロンを使用する。
【0064】
本発明において、用語「アイロン」は、前記繊維を置いて加熱装置を接触させる、ケラチン繊維を加熱するための装置を意味する。
【0065】
毛髪と接触するアイロンの末端は一般に、2つの平坦な表面を有する。これら2つの平坦な表面は、金属製であってよい。2つの平坦な表面は、滑らかであるかまたはひだ状であってよい。
【0066】
本発明の方法において使用されてよいアイロンの例として、あらゆるタイプのフラットアイロン、特に、非限定的な意味において、特許US 5 957 140およびUS 5 046 516に記載のアイロンを挙げることができる。
【0067】
アイロンは、数秒間の連続的な別個の接触により、または毛房に沿って徐々に移動させるかまたはスライドさせることにより適用してよい。
【0068】
好ましくは、本発明の方法において、アイロンは根元から末端まで、1つまたは複数の経路で、連続的な動きによって適用する。
【0069】
本発明の方法はまた、スタイリストの手および個人の頭皮にやけどを負わせることがある蒸気の実質的な発生を回避するために、温度を上昇させるステップの前に、ケラチン繊維を部分的に予乾燥する追加的ステップをも含んでよい。この予乾燥ステップは、例えばヘアドライヤー、フードを用いて、または別法として外気中で乾燥させることにより行ってよい。
【0070】
本発明はまた、少なくとも:
- 110℃と250℃との間の温度を与える1つの加熱手段、
- 少なくとも1つのα-ヒドロキシ酸及び/またはケト酸誘導体を含む、9以下のpHを有する1つのヘアリラクシング組成物、
を含む、キットにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明は、続いての非限定的な実施例によって、より明確に理解することができる。非限定的実施例は、本発明の組成物の優先的な実施形態を構成する。
【実施例1】
【0072】
ヘアリラクシング活性剤として、水中に8Mの濃度のDL-乳酸を含む、簡素化されたヘアリラクシング組成物を調製する。この組成物を生まれつきカールのあるアフリカ人の毛髪に40℃の温度で15分間適用し、次いで毛髪を速やかにタオルドライする。
【0073】
次いで、頭髪の毛房ごとの直毛化を、180℃に加熱したフラットアイロンを用いて、10から15秒間、実施する。毛髪は効率的にリラックスし、かつソフトに感じられる。
【実施例2】
【0074】
ヘアリラクシング活性剤として、水中に8Mの濃度のピルビン酸を含む、簡素化されたヘアリラクシング組成物を調製する。この組成物を生まれつきカールのあるアフリカ人の毛髪に40℃の温度で15分間適用し、次いで毛髪を速やかにタオルドライする。
【0075】
次いで、頭髪の毛房ごとの直毛化を、180℃に加熱したフラットアイロンを用いて、10から15秒間、実施する。毛髪は効率的にリラックスし、かつソフトに感じられる。
【実施例3】
【0076】
ヘアリラクシング活性剤として、水中に4Mの濃度のピルビン酸を含む、簡素化されたヘアリラクシング組成物を調製する。この組成物を生まれつきカールのあるアフリカ人の毛髪に40℃の温度で25分間適用し、次いで毛髪を速やかにタオルドライする。
【0077】
次いで、頭髪の毛房ごとの直毛化を、180℃に加熱したフラットアイロンを用いて、10から15秒間、実施する。毛髪は効率的にリラックスし、かつソフトに感じられる。
【実施例4】
【0078】
ヘアリラクシング活性剤として、水中に4Mの濃度のL-乳酸を含む、簡素化されたヘアリラクシング組成物を調製する。この組成物を生まれつきカールのあるアフリカ人の毛髪に40℃の温度で25分間適用し、次いで毛髪を速やかにタオルドライする。
【0079】
次いで、頭髪の毛房ごとの直毛化を、180℃に加熱したフラットアイロンを用いて、10から15秒間、実施する。毛髪は効率的にリラックスし、かつソフトに感じられる。