(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934293
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】回転ブレード
(51)【国際特許分類】
B24D 5/00 20060101AFI20160602BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20160602BHJP
B24D 5/12 20060101ALI20160602BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
B24D5/00 Q
B24D3/00 320B
B24D5/12 Z
B24B27/06 J
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-126856(P2014-126856)
(22)【出願日】2014年6月20日
(65)【公開番号】特開2016-5851(P2016-5851A)
(43)【公開日】2016年1月14日
【審査請求日】2015年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】508133905
【氏名又は名称】ダイヤテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】和田 吉彦
【審査官】
大山 健
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06450075(US,B1)
【文献】
米国特許第05040341(US,A)
【文献】
特表2009−515715(JP,A)
【文献】
特開平11−235668(JP,A)
【文献】
特開2009−233830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 5/00, 5/12
B24B 27/06
B24D 3/00
B24D 5/12
H01L 21/78
B23D 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央位置に支持軸取り付け用の第1の透孔が形成された主基板と、
前記主基板の外周に形成された加工手段と、
前記主基板の中央位置であって表裏両面に配置された前記主基板よりも小さな一対の同形状の回転対称となる外形形状を有する小基板と、から構成され、
前記主基板に対して前記加工手段を形成させた状態でブレード本体の外形形状が構築され、前記主基板の前記小基板の外周に隣接した位置に表裏方向に透過する第2の透孔を形成するとともに、前記主基板の前記小基板に覆われた領域には前記第2の透孔と連通する第3の透孔を形成したことを特徴とする回転ブレード。
【請求項2】
複数の前記第2の透孔を回転対称性を損なわない位置に形成したことを特徴とする請求項1に記載の回転ブレード。
【請求項3】
前記第3の透孔は前記第2の透孔よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転ブレード。
【請求項4】
前記加工手段はダイヤモンド焼結体からなる切削加工又は研削加工をするための手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転ブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高速回転させて硬質のワーク、例えば、石材、金属材料、コンクリートブロック、タイル、木材等を切削や研削等の加工をするために使用する回転ブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、硬質のワーク、例えば、石材、金属材料、コンクリートブロック、タイル、木材等を加工するため、例えば切削するために外周にダイヤモンド焼結体からなる刃体を形成したダイヤモンドカッターを使用している。このように高速回転させて硬質のワークを加工するダイヤモンドカッターの一例として特許文献1を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−66932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダイヤモンドカッターのような回転ブレードで従来から問題とされるのは振動と騒音である。切削における振動と騒音の原因の1つは刃体がワークに当接する際に刃体の不連続な部分がワークと干渉することにある。例えば上記特許文献1では騒音を抑制するために基板に複数のスリットを形成する技術が開示されている。従来から回転ブレードによって加工する際に騒音や振動を抑制する様々な手段が提案されており、本発明もそのような加工の際の騒音や振動を抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、中央位置に支持軸取り付け用の第1の透孔が形成された主基板と、前記主基板の外周に形成された加工手段と、前記主基板の中央位置であって表裏両面に配置された前記主基板よりも小さな一対の同形状の回転対称となる外形形状を有する小基板と、から構成され、前記主基板に対して前記加工手段を形成させた状態でブレード本体の外形形状が構築され、前記主基板の前記小基板の外周に隣接した位置に表裏方向に透過する第2の透孔を形成したことをその要旨とする。
回転ブレードの加工手段がワークに当接するとその加工手段の形状にも左右されるが回転ブレードの径方向だけでなく回転軸と交差する方向にも力が作用する。これによって回転する回転ブレードのブレが生じ、ワークと加工手段との干渉が生じて振動と騒音の原因になると想定できる。本願発明のように構成とすると、回転ブレードが高速で回転すると第2の透孔と段差のある小基板との相互作用によってその周辺の表裏面に乱気流が発生することとなり回転ブレードのブレが抑制されることとなる。その結果、加工に伴う振動と騒音が抑制されることとなる。
ここに「主基板」は回転を付与する支持軸を取り付けるための第1の透孔が形成されており、その外周に加工手段を取り付けることでブレード本体が構築される。ブレード本体は回転対称となる形状とすることが振動と騒音の抑制のためによい。回転対称は主基板に形成した透孔等の位置を含めて回転対称とすることがもっともよいが、透孔の影響が大きくなければ特に加工手段が形成されている外周の形状について回転対称であればよい。
「加工手段」とは切削手段及び研削手段を含むものである。加工手段は主基板の外周に焼結材料を配置して一体的に焼結する場合や、別途ダイヤモンド焼結体や超硬合金材等からなる刃体や砥石を溶接等で後付けする場合の両方を含むものである。
表裏に配置される「小基板」は回転対称となる外形形状を有し同じ形状であることが必要である。同形状に構成することで表裏に均等に乱気流を発生させるためである。小基板の回転対称性は刻印や塗装のような表面のわずかな違いで左右されるものではない。主基板を回転対称とする場合も同様である。
【0006】
また、複数の第2の透孔は回転対称性を損なわない位置に形成することがよい。「回転対称性を損なわない」とは、例えば、第2の透孔が2つならば180度の対向位置に、第2の透孔が3つならば120度ずつ位相のずれた位置というようにバランスのとれた回転対称となる位置に配置されることを意味する。複数の第2の透孔は同じ形状であることがよい。
また、主基板の小基板に覆われた領域には第2の透孔と連通する第3の透孔を形成することがよい。これによって、第2の透孔をそれほど大きくしなくとも(つまり、大きく構成すると主基板の強度に影響がある)大きな乱気流を発生させることができる。また、第3の透孔を形成することで回転ブレード全体として中心寄りの荷重を周囲よりも軽量とすることができ、回転時の安定した回転に寄与する。また、第3の透孔を第2の透孔よりも大きくすることがよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の回転ブレードでは、加工に伴う振動と騒音が抑制されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態のダイヤモンドカッターの正面図。
【
図3】同じ実施の形態のダイヤモンドカッターの主基板と小基板を説明する説明図。
【
図4】同じ実施の形態のダイヤモンドカッターの斜視図とダイヤチップの部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の回転ブレードの一例としてダイヤモンドカッターの実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1〜
図3に示すように、本実施の形態のダイヤモンドカッター1は、炭素工具鋼からなる円板形状の主基板2を備えている。主基板2の外周には加工手段としてのダイヤチップ3が形成されている。ダイヤチップ3はCu、F、Ni、Ti及びダイヤモンドを主原料とする焼結材料を主基板2とともに金型に配置して同時焼結で成形したダイヤモンド焼結体である。主基板2にダイヤチップ3が形成された状態でブレード本体4が構成される。主基板2は表裏平面に形成され厚みは8mmに構成されており、ダイヤチップ3の厚みは11mmに構成されている。ダイヤチップ3は均等な幅(約7.5mm)で主基板2を外周から包囲している。ダイヤチップ3では一方の面で凹溝と凸条が交互に配置されその裏面で凹溝と凸条の関係が逆転するように切削部3aが形成されている。凹溝と凸条の延出方向は直径に対して所定の角度(本実施の形態では29度)で配置されている。ダイヤチップ3はこのような構成であるため、
図4に示すように、先端(周方向端面)においては台形が表裏で交互に繰り返すようなジグザグ形状として現れる。このような形状のダイヤチップ3において高速回転で固いワークに当接すると凹凸形状による振動とその振動に基づく騒音が発生することとなる。
【0010】
図2に示すように、主基板2の中央には例えばディスクカッター装置の支持軸(回転軸)が挿入される第1の透孔としての円形形状の軸取り付け孔5が形成されている。軸取り付け孔5の周囲には4つの異形透孔6が形成されている。異形透孔6は切削部3aよりも軸取り付け孔5に近い位置に配置されている。異形透孔6は主基板2の中心から等距離で、かつ90度ずつ位相のずれた位置にバランスよく配置されている。異形透孔6は主基板2の半径方向に沿って中心から外方に向かって伸びる小判形状のスリット部6aとスリット部6aの基部側と一体となった軸取り付け孔5の周方向に左右均等に張り出した膨出部6bとから構成される孔である。この異形透孔6は主基板2においてダイヤチップ3よりも軸取り付け孔5に近い位置に形成する必要がある。主基板2のダイヤチップ3寄りには8つの円形の小透孔8が形成されている。各小透孔8は45度ずつ位相のずれた位置にバランスよく配置されている。また、小透孔8はスリット部6aと離間した位置に配置され、かつ主基板2とスリット部6aを通る直径上には配置されない。
図1〜
図3に示すように、主基板2の表裏には一対の小基板9が配設されている。小基板9は炭素工具鋼からなるリング状の部材であり、主基板2の軸取り付け孔5と同形状の円形形状の透孔10が形成されており、透孔10の周囲は同幅に形成されている。小基板9は表裏平面に形成され厚みは8mmに構成されている。小基板9は主基板2の表裏面に対してスポット溶接によって固定されている。小基板9によって主基板2は挟まれることとなり、小基板9によって異形透孔6の大部分は表裏から包囲され、
図1に示すようにスリット部6aの先端が覆われずに略半円形形状にわずかに露出する。異形透孔6のこのわずかに露出したスリット部6aの先端が第2の透孔に相当し、小基板9によって被覆された部分が第3の透孔に相当する。
【0011】
このような構成のダイヤモンドカッター1では、使用時に高速回転させた場合に表裏両面の小基板9の外縁のわずかに露出したスリット部6aの先端(第2の透孔)の周囲に乱気流が発生する。この実施の形態では表裏各面のスリット部6aの先端(第2の透孔)の中心として各4カ所にバランスよく発生する。この乱気流によって発生する圧力がダイヤモンドカッター1を保持する力となり、加工時に支持軸(回転軸)の軸方向と交差する力を抑制する効果が発現すると考えられる。
そのため、切削加工においてワークとの間で発生する振動及び騒音が抑制される。
また、本実施の形態では小基板9内部に実際に露出する以上の空間が連通されているため、スリット部6aの露出量が小さいにも関わらず乱気流を大きく(強く)する作用がある。露出は大きい方が乱気流が大きくなるが、その反面主基板2の剛性が低下するため、振動の原因になってしまう。そのため、このような構成とすることがよい。また、小基板9が異形透孔6の大部分を覆う主基板2の中心寄りに配置されているため、異形透孔6の形成によって軽量化を図ることができると同時に、この主基板2の中心寄り領域の剛性を向上させることができる。
【0012】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記主基板2、ダイヤチップ3、小基板9の形状は一例であって、他の形状で実施することも自由である。例えば、主基板2にダイヤチップ3が形成されたブレード本体4の外郭形状(正面視における周囲形状)は円形であったが、円形でなくとも回転対称となる外周形状(つまりダイヤチップ3より外側が回転対称)であればよい。主基板2の側面に形成される小透孔8の有無やその他の形状や数への変更も自由である。小基板9も回転対称であって外縁に露出する第2の透孔がバランスよく配置されるのであれば形状は問わない。また、塗装の有無も問わない。
・上記異形透孔6の形状や数も上記に限定されるものではない。第2の透孔の露出量も変更は自由である。また、主基板2内に透孔が形成されないような構成でもよい。
・また、加工手段としては他のダイヤモンド焼結体や超硬合金材等からなる刃体や砥石を溶接等で後付けするようにしてもよい。上記では切削するためのダイヤモンドカッター1で実現したが、例えばディスクグラインダー装置に使用する研削用の回転ブレードに適用するようにしてもよい。
その他本発明はその趣旨を逸脱しない態様で変更して実施することは自由である。
【符号の説明】
【0013】
1…回転ブレードとしてのダイヤモンドカッター、2…主基板、3…加工手段としてのダイヤチップ、5…第1の透孔としての軸取り付け孔、9…小基板、6a…第2の透孔としてのスリット部。