(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号19のヌクレオチド配列を含み、Tに対しUが置換される二本鎖RNAエフェクター分子を含有する、哺乳動物細胞中のB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害する剤。
配列番号19の配列を含み、Tに対しUが置換される二本鎖RNAエフェクター分子を含有する、哺乳動物細胞中のB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害する組成物。
少なくとも2個の二本鎖RNAエフェクター分子を含有し、各二本鎖RNAエフェクター分子が、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号22、および配列番号23からなる群より選択される配列を含み、Tに対しUが置換される、請求項2に記載の組成物。
配列番号19の配列を含み、Tに対しUが置換される二本鎖RNAエフェクター分子の発現能を有する少なくとも1個の発現ベクターを含有する、請求項2に記載の組成物。
哺乳動物細胞中での、少なくとも2個の二本鎖RNAエフェクター分子の発現能を有する少なくとも1個の発現ベクターを含有し、各二本鎖RNAエフェクター分子が、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号22、および配列番号23からなる群より選択される配列を含み、Tに対しUが置換される、請求項4に記載の組成物。
前記少なくとも1個の発現ベクターが、ポリメラーゼIプロモーター、ポリメラーゼIIIプロモーター、U6プロモーター、H1プロモーター、7SKプロモーター、およびミトコンドリアプロモーターからなる群より選択される少なくとも1個のプロモーターを含み、前記プロモーターが前記二本鎖RNAエフェクター分子をコードする配列に操作可能に連結される、請求項4に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
RNA干渉(RNAi)は、配列特異的な、動物および植物における転写後遺伝子サイレンシングまたは転写遺伝子サイレンシングの、サイレンシングされる遺伝子と配列上相同である二本鎖RNA(dsRNA)により開始される方法である。RNA干渉が配列特異的な様式で作用することから、薬物として使用されるRNAi分子はその標的に特異的であるに違いない。ウイルスゲノムは環境における変化に抵抗性を適応させるべく変異できる。HBVおよびHCVはRNAiにとって非常に望ましいウイルス標的であるが、ウイルスの可変性ならびに変異性およびウイルスの高転写率により、HBVおよびHCVはいずれの治療的および/または予防的アプローチにおいても非常に課題の多い標的となる。RNAiを使用してウイルスゲノム複製をノックダウンするためには、ウイルスゲノム中の保存されたかつ固有の領域を同定する必要がある。同時に、毒性を回避するため、遺伝子サイレンシング用に選択される任意の配列がヒトゲノムには存在しないことが非常に重要である。
【0035】
ヒトB型肝炎ウイルス(HBV) B型肝炎ウイルスはヘパドナウイルス科に属する。HBVゲノムは緩やかな環状で、部分的におよそ3,200塩基対の二本鎖DNAである。エンベロープ(プレS/S)、コア(プレコア/コア)、ポリメラーゼ、およびXタンパク質をコードする4個の部分的に重複するオープンリーディングフレームがある。プレS/Sオープンリーディングフレームはラージ(L)、ミドル(M)、スモール(S)表面糖タンパク質をコードする。プレコア/コアオープンリーディングフレームはプレコアポリペプチドに翻訳され、これが可溶性タンパク質のB型肝炎e抗原(HBeAg)およびヌクレオカプシドタンパク質のB型肝炎コア抗原に改変される。コアプロモーターおよびプレコア領域での突然変異はHBeAg産生を減少させる、または消失させることが明らかにされている。ポリメラーゼタンパク質はDNAポリメラーゼと同様に逆転写酵素として機能する。Xタンパク質は強力なトランスアクチベーターであるとともに肝臓癌形成において役割を果たし得る。
【0036】
HBVの複製サイクルはビリオンの肝実質細胞への付着から始まる。肝実質細胞核の内部では、HBVプラス鎖DNAの合成が完了されるとともにウイルスゲノムが共有結合閉環状DNA(cccDNA)に変換される。これまでに調べられた最も抗ウイルス性の薬剤は、cccDNAに対しほとんどまたは全く効果がなく、これは抗ウイルス療法の中断後のHBV血清DNAの急速な再出現を説明する。慢性B型肝炎の処置目的はHBV複製および/またはHBV抗原の発現の持続的抑制および肝疾患の寛解を実現することである。
【0037】
GenBank(登録商標)バージョン132.0には、4500を超えるHBV配列および340のHBV完全ゲノム配列(317個のヒト分離株、22個の他の霊長類由来分離株および1個のウッドチャックHBV分離株)がある。この可変性は、RNAiなどの配列特異的な医薬的アプローチにとって重大な課題である。RNAi応用に好適な保存配列を同定するため、全ての完全ゲノム間の比較がClustalWの修正バージョンを使用して行われた。2つの多重アラインメント計画が生成された:第1は339本全てのHBV完全ゲノム配列を含み、かつ第2は全てのヒトHBV分離株に限定された。多重アラインメント結果が解析され、かつHBVゲノム中の各位置での配列保存スコアを含むテーブルが生成された。19nt長より長い配列保存の最長領域を同定するスライディングウィンドウ検索が作成された。3個の主要な保存領域が同定され、かつGenBank(登録商標)受託番号AF090840のヒトHBV分離株にマッピングされた。HBV保存配列がヒトゲノムおよびcDNAライブラリ(ヒト染色体データベース)の双方のGenBank(登録商標)配列に対しスクリーニングされた。置換「ウィンドウ」として保存領域内から選択された21ヌクレオチドおよびそれより長いセグメントがHBVに固有である、すなわち、任意の21ntまたはそれより長いHBV保存セグメントとヒト染色体およびRNA配列の利用可能な配列データベースとの間には完全な配列一致が存在しないことが分かった。ヒト治療目的では、相同ヒト配列が過失でサイレンシングされることはないという保証が、RNAi用ウイルス保存配列の選択と同じく重要である。
【0038】
ヒトC型肝炎ウイルス HCVは小さく(直径40から60ナノメートル)、外被を有し、フラビウイルス科ヘパシウイルス属の一本鎖RNAウイルスである。ゲノムはおよそ10,000ヌクレオチドであるとともに、約3,000個のアミノ酸の単一ポリタンパク質をコードし、これは転写後に、3個の主要な構造的(C、E1、およびE2)および複数の非構造的タンパク質([NS]NS2〜NS5)を含む、10個のポリペプチドに切断される。NSタンパク質はタンパク質プロセシング(プロテアーゼ)およびウイルス複製(RNAポリメラーゼ)に必要な酵素を含む。ウイルスは急速に突然変異するため、エンベロープタンパク質中の変化はウイルスが免疫系を回避することを助長し得る。HCVには少なくとも6種の主要な遺伝子型および90種を超える亜型がある。異なる遺伝子型は異なる地理的分布を有する。米国内では遺伝子型1aおよび1bが最も一般的である(症例の約75%)。遺伝子型2aおよび2b(およそ15%)および3(およそ7%)はそれほど一般的でない。
【0039】
異なる遺伝子型に感染した患者の疾患の重症度または予後にほとんど差異はない。しかしながら、遺伝子型2および3の患者はインターフェロン処置に対しより反応し易い。ウイルスは肝内で高複製率であるとともに顕著な配列異質性を有する。慢性C型肝炎の処置の主目標は血中からの検出可能なウイルスRNAを除去することである。治療完了後6ヶ月での血中からの検出可能な慢性C型肝炎ウイルスRNAの欠如が持続性反応として知られている。研究では、持続性反応は非常に好ましい予後と同等に扱われるとともにそれが治癒に等しいといえることを示唆している。持続性反応を実現しない患者における肝瘢痕(線維症)の進行を緩徐するなど、他のより微細な処置の利点があり得る。
【0040】
GenBank(登録商標)バージョン134.0には、20,000を超えるHCV配列および93のHCV完全ゲノム配列がある。全ての完全ゲノム間の比較がClustalWの修正バージョンを使用して行われた。多重アラインメント結果が解析され、かつHCVゲノム中の各位置での配列保存スコアを含むテーブルが生成された。19nt長より長い配列保存の最長領域を同定するスライディングウィンドウ検索が作成された。3個の主要な保存領域が同定され、かつGenBank(登録商標)RefSeq(参照配列)受託番号NC_004102(これはGenBank(登録商標)によりアノテートされたHCV完全ゲノムである)にマッピングされた。3個の主要な保存領域はウイルスの3’非翻訳領域の一部を含み、ウイルス分離株のなかで高保存されていることが既に文献に記載されている。例えば、米国特許第5,874,565号明細書、「Nucleic Acids Comprising a Highly Conserved Novel 3' Terminal Sequence Element of the Hepatitis C Virus」を参照されたい。しかしながら、本開示は、これらの保存領域の包括的かつ詳細な分析を、多様な患者集団のなかのHCVをサイレンシングする治療として単独および組み合わせでの使用に好適な複数の短鎖セグメントの発見および評価が可能であった範囲で提示する。保存配列はヒトゲノムおよびcDNAライブラリ(ヒト染色体データベース)の双方のGenBank(登録商標)配列に対してスクリーニングされ、かつ20塩基長より長いヒト配列データベースと非相同性の一連の置換HCVセグメントが同定された。
【0041】
ヒト配列との非相同性
本発明に従いサイレンシングの標的とされるウイルス保存配列が、天然由来で、正常に機能し、かつ必須の任意のヒトポリヌクレオチド配列と確実に実質上非相同であることが、dsRNA分子が本発明の方法に使用される時、任意の天然由来哺乳動物必須ポリヌクレオチド配列の機能に悪影響を及ぼさないために、等しく重要である。かかる天然由来機能性哺乳動物ポリヌクレオチド配列は、所望のタンパク質をコードする哺乳動物配列、ならびに非コードながら健常哺乳動物中の必須制御配列を提供する哺乳動物配列を含む。本質的に、本発明に有用なRNA分子は、本発明の任意の方法の実施後にもその機能が妨害されないよう意図される任意の哺乳動物ポリヌクレオチド配列と配列上十分に違うものでなければならない。RNA分子ポリヌクレオチド配列と正常哺乳動物配列との間の相同性の本質的な欠如を明確にするため、コンピュータアルゴリズムが使用され得る。
【0042】
RISC(RNA誘導サイレンシング複合体)との会合能およびその活性化能を有する連続dsRNA配列の長さは一般に19〜27塩基対であると考えられることから、同定されたHBVおよびHCV保存配列が双方のヒトゲノムライブラリと、および、おそらくさらにより重要なことには、上記に記載されるとおりヒトcDNAライブラリと比較された。ヒトcDNAライブラリはmRNA中に出現する発現配列を表すことから、かかるmRNA配列は特に、細胞に提供される相同dsRNA配列によりサイレンシングを受けやすいであろう。
【0043】
以上により、HBVおよびHCV保存配列がヒトゲノムおよびcDNA配列と比較された。ヒトcDNAライブラリのHBVまたはHCV保存配列との一致は同定されなかった(一部の一致はあったが、最終的にはcDNAライブラリ内でのHBV汚染と確認された)。ヒトゲノムライブラリ配列との比較により、21ntまたはそれ以上のどの配列の一致もなく、1の20ヌクレオチドの一致、1の19ヌクレオチドの一致が明らかとなった。これらの一致は非コード領域内であるとともに、同種体がcDNAライブラリに現れなかったことからmRNAにおいてはおそらく出現しない。従って、これらは安全上のリスクであるとは考えにくいが、所望であれば取り除かれ得る。
【0044】
HBVおよびHCV由来の保存配列
HBV保存領域1
【化2】
【0053】
配列IDフォーマットで表される保存コンセンサス配列
以下の配列はWIPOスタンダード(Standard)ST.25(1998年)に
より要求されるフォーマットで表され、37CFR1.821の下で提供されるコードを
使用する。配列番号1〜配列番号10はHBVゲノムに由来する。配列番号11および配
列番号12はHCVゲノムに由来する。
【0066】
二本鎖RNA遺伝子サイレンシング/RNAi
「核酸組成物」または「ヌクレオチド」組成物により、1個またはそれ以上のリン酸分子が糖(例えば、五炭糖または六炭糖)と結合され、その糖がさらにプリン由来塩基(例えば、アデニン)およびピリミジン由来塩基(例えば、チミン)と結合される、任意の1個またはそれ以上の化合物が意味される。特定の天然由来核酸分子は、ゲノムデオキシリボ核酸(DNA)および宿主リボ核酸(RNA)、ならびに数種の形態のリボ核酸、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、およびリボソーマルRNA(rRNA)を含む。また、種々のRNA分子に相補的である種々のDNA(cDNA)も含まれる。合成DNAまたは天然由来DNAとのそのハイブリッド、ならびにDNA/RNAハイブリッド、およびペプチド核酸(PNA)分子(Gambari,Curr Pharm Des 2001 Nov;7(17):1839-62)もまた使用され得る。
【0067】
所望の核酸分子がRNAである場合に、本明細書において提供される配列中のT(チミン)はU(ウラシル)と置換されると考えられる。例えば、配列番号1〜配列番号44は本明細書においてDNA配列として開示される。当業者には、上述の任意の配列番号由来の配列を含んでなるRNAエフェクター分子はTがUで置換されるであろうことは明らかだろう。
【0068】
核酸は典型的には、2個またはそれ以上の共有結合された天然由来または修飾されたデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの配列を有する。修飾核酸としては、例えば、ペプチド核酸および非天然塩基を備えるヌクレオチドが挙げられる。
【0069】
「dsRNA」または「dsRNAエフェクター分子」とは、二本鎖構造をなす2個またはそれ以上のヌクレオチドの領域を含む核酸を意味する。本発明のウイルス保存配列は、例えば、自己相補配列を備える単一RNA鎖が二本鎖構造を呈する能力を有する「ヘアピン」またはステム−ループ二本鎖RNAエフェクター分子、または2本の別個のRNA鎖を含んでなるデュプレックスdsRNAエフェクター分子を含む、dsRNA介在性遺伝子サイレンシングまたはRNAi機序を通じて作用する当該技術分野において既知の、または後に開発される「dsRNAエフェクター分子」の多くの組成物のなかの任意のもので利用され得ることが想定される。様々な実施形態において、dsRNAは全体がリボヌクレオチドからなるか、もしくは、例えば2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレット、または1999年4月21日出願の米国仮特許出願第60/130,377号明細書により開示されるRNA/DNAハイブリッドなどの、リボヌクレオチドおよびデオキシヌクレオチドの混合物からなる。dsRNAまたはdsRNAエフェクター分子は、分子の一セグメント内のヌクレオチドが分子の他のセグメント内のヌクレオチドと塩基対合するような自己相補領域を備える単一分子であり得る。様々な実施形態において、単一分子からなるdsRNAは全体がリボヌクレオチドからなるか、もしくはデオキシリボヌクレオチド領域と相補的であるリボヌクレオチド領域を含む。あるいは、dsRNAは相互相補領域を有する2本の異種鎖を含んでもよい。様々な実施形態において、両鎖は全体がリボヌクレオチドからなる、1本の鎖は全体がリボヌクレオチドからなるとともに1本の鎖は全体がデオキシリボヌクレオチドからなる、もしくは、1本または両方の鎖はリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの混合物を含む。望ましくは、相補領域は、互いに対し、および標的核酸配列に対し、少なくとも70、80、90、95、98、または100%相補的である。望ましくは、二本鎖構造で存在するdsRNA領域は、少なくとも19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、50、75、100、200、500、1000、2000または5000個のヌクレオチドを含むか、もしくはcDNAまたはdsRNAに呈示されている他の標的核酸配列中の全てのヌクレオチドを含む。ある実施形態において、dsRNAは、一本鎖末端などの一本鎖領域はどれも含まないか、もしくはdsRNAはヘアピンである。他の実施形態において、dsRNAは1個またはそれ以上の一本鎖領域またはオーバーハングを有する。望ましいRNA/DNAハイブリッドは、アンチセンス鎖または領域である(例えば、標的核酸に対し少なくとも70、80、90、95、98、または100%の相補性を有する)DNA鎖または領域およびセンス鎖または領域である(例えば、標的核酸に対し少なくとも70、80、90、95、98、または100%の同一性を有する)RNA鎖または領域を含み、逆もまた同様である。様々な実施形態において、RNA/DNAハイブリッドはインビトロで、本明細書に記載されるもの、または2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレット、または1999年4月21日出願の米国仮特許出願第60/130,377号明細書に記載されるものなどの酵素的または化学的合成方法を使用して作製される。他の実施形態において、インビトロで合成されたDNA鎖は、インビボまたはインビトロで、DNA鎖の細胞への形質転換の前、後、またはそれと同時に作製されるRNA鎖と複合体を形成する。さらに他の実施形態において、dsRNAはセンスおよびアンチセンス領域を含む単一環状核酸であるか、もしくはdsRNAは環状核酸および第2の環状核酸または直鎖状核酸のいずれかを含む(例えば、2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレット、または1999年4月21日出願の米国仮特許出願第60/130,377号明細書を参照)。例示的な環状核酸は、ヌクレオチドの遊離5’ホスホリル基が別のヌクレオチドの2’ヒドロキシル基にループバックをなす様式で連結されるようになるラリアット構造を含む。
【0070】
他の実施形態において、dsRNAは、対応する2’位が水素またはヒドロキシル基を含む対応するdsRNAと比較してインビトロまたはインビボでのdsRNAの半減期を増加させる、糖の2’位がハロゲン(フッ素基など)を含むかもしくはアルコキシル基(メトキシ基など)を含む1個またはそれ以上の修飾ヌクレオチドを含む。さらに他の実施形態において、dsRNAは、連続するヌクレオチド間に天然由来のリン酸ジエステル結合以外の1個またはそれ以上の結合を含む。かかる結合の例として、ホスホラミド、ホスホロチオエート、およびホスホロジチオエート結合が挙げられる。dsRNAはまた、米国特許第6,673,661号明細書に教示されるとおりの化学修飾核酸であってもよい。他の実施形態において、dsRNAは、例えば、2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレット、または1999年4月21日出願の米国仮特許出願第60/130,377号明細書に開示されるとおりの、1本または2本のキャッピングされた鎖を含む。他の実施形態において、dsRNAは、コード配列または非コード配列、例えば、制御配列(例えば、転写因子結合部位、プロモーター、またはmRNAの5’または3’非翻訳領域(UTR))を含む。加えて、dsRNAは、その教示が参照により本明細書に組み込まれる、2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレットに開示される任意の少なくとも部分的なdsRNA分子(例えば、8〜22頁を参照)、ならびに2002年7月31日出願の米国仮特許出願第60/399,998号明細書、および2003年7月31日出願のPCT/US第2003/024028号明細書、および2002年10月18日出願の米国仮特許出願第60/419,532号明細書および2003年10月20日出願のPCT/US第2003/033466号明細書に開示される任意のdsRNA分子であってもよい。任意のdsRNAはインビトロまたはインビボで、本明細書に記載される方法または、2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレットに記載されるもの(例えば、16〜22頁を参照)などの標準方法を使用して発現されてもよい。ある好ましい実施形態において、本発明の複数の抗HBVおよび/または抗HCVdsRNAエフェクター分子は哺乳動物細胞中で、その教示が参照により組み込まれる2005年8月23日出願の米国仮特許出願第60/603622号明細書、米国仮特許出願第60/629942号明細書;およびPCT/US第05/29976号明細書、「Multiple Polymerase III Promoter Expression Constructs」にさらに詳細に記載されるとおりの、各々が複数のポリメラーゼIIIプロモーター発現カセットを含んでなる1個またはそれ以上の発現コンストラクトから転写される。
【0071】
dsRNA「ヘアピン」コンストラクトまたはdsRNA「ヘアピン」発現ベクター:逆方向反復配列を伴う一本鎖RNAはより効率的にdsRNAヘアピン構造を形成するため、単分子ヘアピンdsRNAをコードするコンストラクトはある適用においてデュプレックスdsRNA(すなわち、センス領域を伴う1個のRNA分子およびアンチセンス領域を伴う別個のRNA分子から構成されるdsRNA)をコードするコンストラクトより望ましい。このより高い効率性はある部分、デュプレックスdsRNAを生成する集中型プロモーターを含むベクター中で生じる転写干渉の発生に依拠する。転写干渉の結果、各RNA鎖の不完全合成が生じることにより、互いと塩基対合するとともにデュプレックスを形成することのできる完全なセンス鎖およびアンチセンス鎖の数が減少する。転写干渉は、所望であれば、(i)1個のベクターがセンスRNAをコードするとともに第2のベクターがアンチセンスRNAをコードする2個のベクター系、(ii)個々の鎖が同一プラスミドによるが別個のシストロンの使用を通じてコードされるバイシストロン性ベクター、または(iii)ヘアピンdsRNA、すなわち、センスおよびアンチセンス配列が同一RNA分子内でコードされるRNAをコードする単一プロモーターベクター、の使用を通じて克服され得る。ヘアピン発現ベクターはデュプレックスベクターと比べある利点を有する。例えば、デュプレックスRNAをコードするベクターにおいては、RNA鎖は転写直後にその相補的な対応鎖を探すとともにそれと塩基対合する必要がある。このハイブリダイゼーションが起こらない場合、個々のRNA鎖は転写鋳型から放散するとともにセンス鎖のアンチセンス鎖に対する局在濃度が低減する。この影響は、細胞ごとの鋳型レベルが低いため、インビトロで転写されるRNAと比較して細胞内転写されるRNAにおいてより大きい。その上、RNAは最近傍則によりフォールドする結果、同時転写的にフォールドされる(すなわち、それらが転写されるとフォールドされる)RNA分子となる。それゆえ完了したRNA転写のある割合は、これらの分子中の分子内塩基対合のため、相補的な第2のRNAとの塩基対合に利用できない。かかる利用不可能な分子の割合は、それらの転写後の経過時間に伴い増加する。これらの分子は、既に安定的な折り畳み構造にあるため、デュプレックスを形成することはないといってもよい。ヘアピンRNAにおいて、RNA配列はその相補RNAに対し常に物理的に近接している。RNA構造は静的ではないことから、RNAが過渡的にアンフォールドされると、その相補配列は直ちに利用可能であるとともに、非常に近いため塩基対合に関与することができる。形成されると、ヘアピン構造は元の非ヘアピン構造より安定になると予想される。特に望ましいのは、例えば、2002年7月31日出願の米国仮特許出願第60/399,998P号明細書、および2003年7月31日出願のPCT/US第2003/024028号明細書、「Double Stranded RNA Structures and Constructs and Methods for Generating and Using the Same」に教示されるとおりの、dsRNAヘアピンを形成するべくRNA依存性RNAポリメラーゼにより伸長される能力を有する部分的なヘアピンである「折れ曲がり(forced)」ヘアピンコンストラクト、ならびにミスマッチ領域を伴うヘアピンである「アダリー(udderly)」構造ヘアピン、および2002年10月18日出願の米国仮特許出願第60/419,532号明細書、および2003年10月20日出願のPCT/US第2003/033466号明細書、「Double-Stranded RNA Structures and Constructs, and Methods for Generating and Using the Same」に教示されるとおりのマルチエピトープコンストラクトである。
【0072】
「短鎖dsRNA」とは、二本鎖構造にある約200、100、75、50、45、40、35、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20または19連続ヌクレオチド長を有するdsRNAを意味する。望ましくは、短鎖dsRNAは、阻害されるべき標的配列と同一の/相補的な少なくとも19連続塩基対長の二本鎖領域を含んでなる。望ましい実施形態において、二本鎖領域は、延べ19〜50、19〜40、19〜30、19〜25、20〜25、21〜23、25〜30、または30〜40連続塩基対長の間である。ある実施形態において、短鎖dsRNAは、延べ30〜50、50〜100、100〜200、200〜300、400〜500、500〜700、700〜1000、1000〜2000、または2000〜5000ヌクレオチド長の間であるとともに、延べ38〜60連続塩基対長の間である二本鎖領域を有する。一実施形態において、短鎖dsRNAは完全な二本鎖である。ある実施形態において、短鎖dsRNAは11〜30ヌクレオチド長の間であるとともに、dsRNA全体が二本鎖である。他の実施形態において、短鎖dsRNAは1個または2個の一本鎖領域を有する。ある実施形態において、短鎖dsRNAは「shRNA」または「短鎖ヘアピンRNA」または「shRNAエフェクター分子」または「dsRNAヘアピン」であり、およそ400〜500ヌクレオチド(nt)長未満、好ましくは100〜200nt長未満であるRNA分子を意味し、そのうち少なくとも約15〜100ヌクレオチド(好ましくは、17〜50nt、より好ましくは19〜29nt)の少なくとも1伸長が同一RNA分子上に位置する相補配列と塩基対合されるとともに、ここで前記配列および相補配列は、塩基相補性の2領域により作られるステム構造上に一本鎖ループを形成する少なくとも約4〜7ヌクレオチド(好ましくは約9〜約15ヌクレオチド)の非対合領域により隔てられる。shRNA分子は阻害されるべき標的配列と相同的および相補的な約17〜約100bp、約17〜約50bp、約40〜約100bp、約18〜約40bp、または約19〜約29bpの二本鎖ステム領域を含んでなる少なくとも1個のステム−ループ構造、および、塩基相補性の2領域により作られるステム構造上の一本鎖ループを形成する、少なくとも約4〜7ヌクレオチド、好ましくは約9〜約15ヌクレオチドの非対合ループ領域を含んでなる。shRNAとして挙げられるのは、二重または2フィンガー(すなわち、2個のステム−ループ構造を有する)およびマルチフィンガーヘアピンdsRNA(複数のステム−ループ構造を有する)であり、ここでRNA分子は一本鎖スペーサー領域により隔てられる2個またはそれ以上のかかるステム−ループ構造を含んでなる。ある実施形態において、発現コンストラクトが使用され、同種の複数のコピーを含む哺乳動物細胞中の1個またはそれ以上のかかるshRNA分子、および/または複数の異種を含む1個またはそれ以上の短鎖ヘアピンRNA分子を発現する。互いに「同一」であると考えられる短鎖ヘアピンRNA分子は、同一の二本鎖配列のみを含んでなるものであるとともに、互いに「異なる」と考えられる短鎖ヘアピンRNA分子は、各異なる二本鎖配列により標的とされるべき配列が同一遺伝子内かまたは異なる遺伝子か、例えば、同一遺伝子のプロモーター領域および転写領域(mRNA)の配列かまたは2個の異なる遺伝子の配列かなどに関わらず、異なる二本鎖配列を含んでなるであろう。
【0073】
特定の実施形態において、短鎖dsRNAはdsRNA介在性ストレス応答経路中でPKRまたは別のタンパク質を結合する。望ましくは、かかる短鎖dsRNAはPKRの二量化および活性を少なくとも20、40、60、80、90、または100%阻害する。ある望ましい実施形態において、短鎖dsRNAは長鎖dsRNAのPKRまたはdsRNA介在性ストレス応答経路の別の構成成分との結合を少なくとも20、40、60、80、90、または100%阻害する。dsRNA介在毒性を回避するため他のdsRNAと併用する短鎖dsRNAの利用に関して、2003年4月28日出願の米国特許出願公開第10/425,006号明細書、「Methods of Silencing Genes Without Inducing Toxicity」、Pachukの教示もまた参照されたい。しかしながら出願人は、dsRNA分子が、長鎖dsRNA分子でさえ、RNAi効果が望まれる哺乳動物(または他の脊椎動物)細胞中で細胞内発現される場合、PKRまたはインターフェロンまたは「パニック」応答を含め、一般に有意なdsRNA介在性ストレス応答を誘起するとは考えにくいことを実証している。例えば、米国特許出願第2002/0132257号明細書、「Use of post-transcriptional gene silencing for identifying nucleic acid sequences that modulate the function of a cell」を参照されたい。従って、かかる「発現干渉RNA分子」または「eiRNA」分子および「eiRNA発現コンストラクト」、すなわち、dsRNA遺伝子サイレンシングまたはRNAiが誘発される哺乳動物細胞のインビボでの細胞内または内因性発現dsRNA分子(または対応するdsRNA発現コンストラクト)が、本発明のある態様においては好ましい。
【0074】
「少なくとも19連続塩基対のヌクレオチド配列」とは、ヌクレオチド配列は、始まりの部位が少なくとも19連続塩基対のポリヌクレオチドの産生能を有する限り、開示されたうち1本の配列内の任意のヌクレオチドから始まり得ることを意味する。例えば、少なくとも19連続塩基対のヌクレオチド配列はヌクレオチド1〜ヌクレオチド19、ヌクレオチド2〜ヌクレオチド20、ヌクレオチド3〜ヌクレオチド21、および19merを産生できるその他を含んでなることができる。このように、20merはヌクレオチド1〜ヌクレオチド20、ヌクレオチド2〜ヌクレオチド21、ヌクレオチド3〜ヌクレオチド22、およびその他を含んでなることができる。保存配列内より選択される、例えば21、22、23、24、25、26、27連続等の、20連続ヌクレオチドを上回る同様の配列が想定される。少なくとも19連続ヌクレオチドのかかる配列(その相補体とともに二本鎖構造)は「少なくとも19連続塩基対の配列」であるとともに、dsRNAヘアピン内でデュプレックスdsRNAとして存在してもよく、もしくはdsRNA発現コンストラクトにコードされてもよい。
【0075】
「発現ベクター」とは、RNAを転写するよう設計される任意の二本鎖DNAまたは二本鎖RNA、例えば、下流遺伝子または目的のコード領域に操作可能に連結される少なくとも1個のプロモーターを含むコンストラクトを意味する(例えば、タンパク質をコードするcDNAまたはゲノムDNA断片、または任意の目的のRNAであって、場合により、例えば、コード領域外にある配列、アンチセンスRNAコード領域、dsRNAコード領域、またはコード領域外にあるRNA配列に操作的に連結される)。発現ベクターのレシピエント細胞へのトランスフェクションまたは形質転換により細胞は、発現ベクターによってコードされるRNAまたはタンパク質を発現することが可能となる。発現ベクターは、例えばバクテリオファージ、アデノウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、またはヘルペスウイルス由来の、遺伝子操作されたプラスミド、ウイルス、または人工染色体であってもよい。
【0076】
「発現コンストラクト」とは、RNAを転写するよう設計される任意の二本鎖DNAまたは二本鎖RNA、例えば、下流遺伝子または目的のコード領域に操作可能に連結される少なくとも1個のプロモーターを含むコンストラクトを意味する(例えば、タンパク質をコードするcDNAまたはゲノムDNA断片、または任意の目的のRNA)。発現コンストラクトのレシピエント細胞へのトランスフェクションまたは形質転換により細胞は、発現コンストラクトによってコードされるRNAまたはタンパク質を発現することが可能となる。発現コンストラクトは、例えばバクテリオファージ、アデノウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、またはヘルペスウイルス由来の、遺伝子操作されたプラスミド、ウイルス、または人工染色体であってもよい。発現コンストラクトは生細胞中で複製可能である必要はなく、合成的に作製してもよい。二本鎖RNAエフェクター分子またはdsRNA分子を発現するよう操作される発現コンストラクトまたは発現ベクターは「dsRNA発現コンストラクト」または「dsRNA発現ベクター」である。
【0077】
本発明の一実施形態において、組換え発現ベクターまたは発現コンストラクトは操作されることで、複数の、例えば、3、4、5個またはそれ以上の短鎖ヘアピンdsRNAエフェクター分子を発現し、ポリメラーゼIIIプロモーターを含んでなる異なる発現カセットから発現される各々は、1個またはそれ以上が、その全ても含め、他と異なり得る。本発明の一態様において、3、4、5個またはそれ以上の異なるshRNA分子を転写する組換え発現ベクター(各々、HBVおよび/またはHCV保存配列に由来する/と相補的な少なくとも19連続塩基対を含んでなる二本鎖「ステム」領域を含んでなる)が、B型肝炎ウイルス(HBV)および/またはC型肝炎ウイルス(HCV)の複製を阻害するため使用される。一実施形態において、各shRNA分子はポリメラーゼIIIプロモーター、例えば、7SK、H1、およびU6(これは異種の同プロモーターであり得る)の制御下で発現される。複数のポリメラーゼIII発現カセットを含んでなるかかるdsRNA発現コンストラクトは、その教示が参照により本明細書に組み込まれる、PCT/US第05/29976号明細書、「Multiple Polymerase III Promoter Expression Constructs」にさらに詳細に記載される。一態様において、本発明の組換え発現ベクターまたは発現コンストラクトは、1個またはそれ以上のポリメラーゼIIIプロモーター駆動転写ユニットからの1個またはそれ以上の2フィンガーまたはマルチフィンガーdsRNAヘアピン分子、ならびに1個またはそれ以上のポリメラーゼIIIプロモーター駆動転写ユニットからの1個またはそれ以上の単一ヘアピンdsRNA分子を発現し得る。ポリメラーゼIIIプロモーターからヘアピンdsRNAを転写する任意の前記発現コンストラクトにおいては、ヘアピンdsRNAは、単一ヘアピンdsRNAもしくは2フィンガー、またはその教示が参照により本明細書に組み込まれる、2004年4月29日発行の国際公開第2004/035765号パンフレットに記載されるとおりのマルチフィンガーdsRNAヘアピン、または2004年2月5日発行の国際公開第2004/011624号パンフレットに記載されるとおりの部分的または折れ曲がりヘアピン構造であってもよいことは理解されるであろう。
【0078】
「操作可能に連結される」とは、核酸配列または分子および1本またはそれ以上の制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リプレッサー、ターミネーター)が、RNA分子、例えば、センス、アンチセンス、dsRNAヘアピン、またはmRNAなどの一本鎖RNA分子の転写を可能にする、もしくは、然るべき分子が制御配列に結合される時、核酸分子の産物(すなわち、ポリペプチド)の発現および翻訳および/または分泌を可能にするような方法で結び付けられることを意味する。
【0079】
「プロモーター」とは、共有結合された核酸分子の転写を進めるのに十分な核酸配列を意味する。また、細胞型特異的な、組織特異的な、または時間特異的な様式で制御可能なプロモーター依存性遺伝子発現を供するのに十分な、または外部シグナルまたは薬剤により誘導可能なそれらの転写制御エレメント(例えば、エンハンサー)もこの定義に含まれ、かかるエレメントは、当業者に周知であり、遺伝子の5’または3’領域またはイントロン内に見出し得る。例えば、その教示が参照により本明細書に組み込まれる、ポリメラーゼIIエンハンサーエレメントを利用する修飾ポリメラーゼIIIプロモーターについて指南する米国特許出願公開第2005/0130184 A1号明細書、2005年6月16日、Xu et al.、ならびに調節可能なポリメラーゼIIIおよびポリメラーゼIIプロモーターについて指南する米国特許出願公開第2005/0130919 A1号明細書、2005年6月16日、Xu et al.を参照されたい。望ましくは、プロモーターは核酸配列、例えば、cDNAまたは遺伝子配列に、またはdsRNA、例えばshRNAをコードする配列に、核酸配列の発現を可能にするような方法で操作可能に連結される。
【0080】
本発明に従うRNA分子は、哺乳動物細胞または哺乳動物細胞中に存在する細胞外病原体に、dsRNAエフェクター分子または部分的二本鎖RNA配列、もしくは、Promega Protocols and Applications Guide,(3rd ed. 1996),eds. Doyle,ISBN No. 1 57などのテキストに記載される従来方法に従い例えばバクテリオファージT7、T3またはSP6RNAポリメラーゼを使用する従来の酵素的合成方法によりインビトロで作製されたRNA/DNAハイブリッドのような組成物で送達されてもよい。あるいは、これらの分子はインビトロでの化学的合成方法により作製されてもよい[例えば、Q. Xu et al.,Nucleic Acids Res.,24(18):3643-4 (Sept. 1996);N. Naryshkin et al.,Bioorg. Khim.,22(9):691-8 (Sept. 1996);J. A. Grasby et al.,Nucleic Acids Res.,21(19):4444-50 (Sept 1993);C. Chaix et al.,Nucleic Acids Res. 17:7381-93 (1989);S. H. Chou et al.,Biochem.,28(6):2422-35 (Mar. 1989);0. Odal el al.,Nucleic Acids Symp. Ser.,21:105-6 (1989);N.A. Naryshkin et al.,Bioorg. Khim,22(9):691-8 (Sept. 1996);S. Sun et al.,RNA,3(11):1352-1363 (Nov. 1997);X. Zhang et al.,Nucleic Acids Res.,25(20):3980-3 (Oct. 1997);S. M. Grvaznov el al.,Nucleic Acids Res.,2-6 (18):4160-7 (Sept. 1998);M. Kadokura et al.,Nucleic Acids Symp. Ser.,37:77-8 (1997);A. Davison et al.,Biorned. Pept. Proteins. Nucleic Acids,2(l):1-6 (1996);およびA. V. Mudrakovskaia et al.,Bioorg. Khirn.,17(6):819-22 (Jun. 1991)を参照]。
【0081】
あるいはさらに、本発明のRNA分子は組換え微生物、例えば細菌および酵母中で、または組換え宿主細胞、例えば哺乳動物細胞中で作製され得るとともに、従来技術によりその培養物から単離され得る。例えば、これらの技術を詳述する実験マニュアルの手本であるSambrook et al,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,2nd Ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989に記載される技術、および参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,824,538号明細書、同第5,877,159号明細書、および同第5,643,771号明細書に記載される技術を参照されたい。
【0082】
インビトロで調製または合成されるかかるRNA分子は、哺乳動物細胞に、またはそれらがインビトロで作製されるときには哺乳動物に、直接送達されてもよい。上記の参考文献は当業者に任意の以下の特定の実施形態を実現するために必要な技術を、本明細書に提供される教示を所与として、提供する。それゆえ、一実施形態において、組成物の「薬剤」はデュプレックス(すなわち、それは2本の鎖で作られている)、完全または部分的いずれかの二本鎖RNAである。
【0083】
別の実施形態において、薬剤は一本鎖RNAセンス鎖である。別の実施形態において、組成物の薬剤は一本鎖RNAアンチセンス鎖である。
【0084】
好ましくは、一本鎖RNAセンスまたはアンチセンス鎖は片方または双方の末端でヘアピンを形成する。望ましくは、一本鎖RNAセンスまたはアンチセンス鎖は末端間のある中間部でヘアピンを形成する。かかる一本鎖RNAセンスまたはアンチセンス鎖はまた、インビトロまたはインビボでそれ自身の上に折り畳まれて部分的に二本鎖となるように設計されてもよい。組成物において使用される有効な薬剤としての既存RNA分子のいまだ別の実施形態は、場合により非塩基対合ポリヌクレオチド配列により隔てられる、センスポリヌクレオチド配列およびアンチセンスポリヌクレオチド配列の双方を含んでなる一本鎖RNA配列である。好ましくは、この一本鎖RNA配列は、細胞中におかれると、またはその合成中にインビトロで、二本鎖となる能力を有する。望ましい実施形態において、少なくとも約19〜29個の連続する塩基対の配列には二本鎖構造が想定されるであろう。望ましい実施形態において、二本鎖領域は、下方制御または阻害されるべき標的ヌクレオチド配列と同一の/相補的な少なくとも約19連続塩基対の配列を含むであろう。
【0085】
本発明のさらに別の実施形態は、上記に記載されるとおりのRNA/DNAハイブリッドである。
【0086】
合成RNA分子のさらに別の実施形態は、場合によりロッド構造を形成する環状RNA分子である[例えば、K-S. Wang et al.,Nature 323:508-514 (1986)を参照]か、もしくは部分的に二本鎖であるとともに、全て参照により本明細書に組み込まれる、S. Wang et al.,Nucleic Acids Res.,22(12):2326-33 (June 1994);Y. Matsumoto et al.,Proc. Natl. Acad. Sci, USA,87(19):7628-32 (Oct. 1990);E. Ford & M. Ares,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 (8):3117-21 (Apr. 1994);M. Tsagris et al.,Nucleic Acids Res.,19 7):1605-12 (Apr. 1991);S. Braun et al.,Nucleic Acids Res. 24(21):4152-7 (Nov. 1996);Z. Pasman et al.,RNA,2(6):603-10 (Jun. 1996);P. G. Zaphiropoulos,Proc. Natl. Acad. Sci.,USA,93(13):6536-41 (Jun. 1996);D. Beaudry et al.,Nucleic Acids Res.,23(15):3064-6 (Aug. 1995)に記載される技術に従い調製され得る。さらに別の薬剤は、別個の鎖上に存在するか、もしくは同一鎖上に散在するRNAおよびDNAを含んでなる二本鎖分子である。
【0087】
あるいは、RNA分子はインビボで形成されることで、哺乳動物細胞または哺乳動物への薬剤の送達後インビボでかかる部分的二本鎖RNA分子を生成する「送達剤」により送達されてもよい。このように、本発明の組成物を形成する薬剤は、一実施形態において、上述のRNA分子の1つを「コードする」二本鎖DNA分子、例えば、dsRNA発現ベクターまたは発現コンストラクトである。DNA薬剤は、細胞内で転写されて二本鎖RNAとなるヌクレオチド配列を提供する。別の実施形態において、DNA配列は、細胞内で上述の一本鎖RNAセンスまたはアンチセンス鎖に転写され、場合により片方または双方の末端でヘアピンを形成するかまたはそれ自身の上に折り畳まれて部分的に二本鎖となるデオキシリボヌクレオチド配列を提供する。組成物の送達剤であるDNA分子は、場合により非塩基対合ポリヌクレオチド配列により隔てられる、センスポリヌクレオチド配列およびアンチセンスポリヌクレオチド配列の双方を含んでなる一本鎖RNAを提供できるとともに、ここで一本鎖RNA配列は二本鎖となる能力を有する。あるいは、送達剤であるDNA分子は、場合によりインビボでロッド構造または部分二本鎖を形成する上述の環状RNA分子の転写を提供する。DNA分子はまた、上記に記載されるとおりのRNA/DNAハイブリッド、または1本のRNA鎖および1本のDNA鎖を含むデュプレックスの生体内産生も提供し得る。これらの様々なDNA分子は、上記に引用されるSambrookまたは上記に引用されるPromega文献に記載されるものなどの従来技術を用いることにより設計されてもよい。
【0088】
本発明の最新の送達剤は、哺乳動物細胞中での任意の上述のRNA分子の形成が可能であり、DNA一本鎖または二本鎖プラスミドまたはベクターであり得る。インビトロまたはインビボで本明細書に記載されるとおりRNAを産生するよう設計される発現ベクターは、ミトコンドリアRNAポリメラーゼ、RNApolI、RNApolII、およびRNApolIIIを含む任意のRNAポリメラーゼ、およびウイルスポリメラーゼ、およびT7およびSp6などのバクテリオファージポリメラーゼの制御下の配列を含み得る。望ましくは、哺乳動物細胞内でのdsRNAエフェクター分子の生体内発現用に設計される発現ベクターは、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、および/またはミトコンドリアポリメラーゼなどの内因性哺乳動物ポリメラーゼを利用するよう設計されてもよい。同種のプロモーター、例えば、U6、H1、または7SKなどのポリメラーゼIIIプロモーターを利用する発現ベクターは、RNAポリメラーゼIIIによる転写をもたらすべく容易に設計され得る。約400〜500ヌクレオチド長未満の短鎖RNA分子の発現に好ましくあるのは、RNAポリメラーゼIIIプロモーターである。ある態様において、「RNAポリメラーゼIIIプロモーター」または「RNApolIIIプロモーター」または「ポリメラーゼIIIプロモーター」または「polIIIプロモーター」が好ましく、例えばヒト、マウス、ブタ、ウシ、霊長類、サル等の、任意の無脊椎動物、脊椎動物、または哺乳動物プロモーターが、細胞中のその自然状況において、RNAポリメラーゼIIIと結合または相互作用して、選択された宿主細胞中でRNAポリメラーゼIIIと相互作用して操作可能に連結された核酸配列を転写するであろう、天然のまたは操作された、その操作可能に連結された遺伝子、またはその任意の変異体を転写することを意味する。ある適用において好ましくあるのは、5’フランキング領域に存在し、TATAボックスを含み、かつ内部プロモーター配列を欠く、U6、H1、7SKおよびMRPを含むIII型RNApolIIIプロモーターである。RNAPolIIIプロモーターが操作された短鎖のRNA転写の発現に特に望ましい1つの理由は、RNAポリメラーゼII終結と異なり、RNAPolIII終結が、DNAコード鎖のチミン残基の短い一続きで、酵母および哺乳動物中で最短のPolIII終結シグナルであるT
4およびT
5といった他のタンパク質因子なしに、T
5より長く哺乳動物中では非常に稀少なオリゴ(dT)ターミネーターを伴い、効率的かつ正確に生じることである。従って、本発明の複数のポリメラーゼIIIプロモーター発現コンストラクトは、然るべきオリゴ(dT)終結シグナル、すなわち、3’がDNAコード鎖の各RNAPolIIIプロモーターに操作可能に連結される、4、5、6個またはそれ以上のTの配列を含むであろう。
【0089】
これらのベクターは本発明に従い細胞中の所望のRNA分子を転写するため使用されてもよい。ベクターは望ましくは、内因性ミトコンドリアRNAポリメラーゼ(例えば、ヒトミトコンドリアRNAポリメラーゼで、この場合かかるベクターは対応するヒトミトコンドリアプロモーターを利用してもよい)を利用するよう設計されてもよい。ミトコンドリアポリメラーゼは、インビボでキャッピングされた(キャッピング酵素の発現を通じて)、またはキャップのないメッセージを生成するため使用され得る。RNApolI、RNApolII、およびRNApolIII転写物はまた、インビボで生成されてもよい。かかるRNAはキャッピングされていてもされていなくてもよく、および所望であれば、細胞質キャッピングがワクシニアキャッピング酵素またはアルファウイルスキャッピング酵素などのキャッピング酵素の使用を含む様々な手段により達成され得る。しかしながら、全てのpolII転写物はキャッピングされる。DNAベクターはプロモーターの1つを、または複数のプロモーターを組み合わせで(ミトコンドリア、RNApolI、polII、またはpolIII、またはウイルス、細菌またはバクテリオファージプロモーターを同種のポリメラーゼと共に)含むよう設計される。好ましくは、プロモーターがRNApolIIの場合、RNA分子をコードする配列は300ntより長いオープンリーディングフレームを有するとともに核中のナンセンス変異依存性分解を阻止するための設計ルールに従わなければならない。かかるプラスミドまたはベクターは細菌、ウイルスまたはファージ由来のプラスミド配列を含むことができる。
【0090】
かかるベクターは、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体エレメント、およびウイルスに由来するベクターといった、染色体、エピソーム、およびウイルス由来ベクター、プラスミドおよびバクテリオファージ遺伝因子、コスミドおよびファージミドに由来するものなど、それらの組み合わせに由来するベクターを含む。
【0091】
このように、一例示的ベクターは、一本または二本鎖ファージベクターである。別の例示的ベクターは、一本または二本鎖RNAまたはDNAウイルスベクターである。かかるベクターは、ポリヌクレオチド、好ましくはDNAとして、DNAおよびRNAを細胞に導入するための周知の技術により細胞に導入されてもよい。ファージおよびウイルスベクターの場合、ベクターは、パッケージングまたはキャプシド形成されたウイルスとして感染および形質導入用の周知の技術により細胞に導入されてもよく、かつ好ましくは導入される。ウイルスベクターは複製コンピテントまたは複製欠損であってもよい。後者の場合、ウイルス増殖は一般的に、相補的な宿主細胞中でのみ生じる。
【0092】
別の実施形態において、送達剤は1種より多いDNAまたはRNAプラスミドまたはベクターを含んでなる。一例として、第1のDNAプラスミドが上記に記載されるとおりの一本鎖RNAセンスポリヌクレオチド配列を提供できるとともに、第2のDNAプラスミドが上記に記載されるとおりの一本鎖RNAアンチセンスポリヌクレオチド配列を提供でき、ここでセンスおよびアンチセンスRNA配列は塩基対合するとともに二本鎖となる能力を有する。かかるプラスミドは、他の従来のプラスミド配列、例えばタンパク質の組換え発現用のプラスミドおよびベクターを構築するために使用される周知の配列などの細菌配列を含んでなることができる。しかしながら、タンパク質発現が可能な配列、例えばコザック領域等はこれらのプラスミド構造に含まれないことが望ましい。
【0093】
本発明のdsRNAを産生するよう設計されるベクターは望ましくは、標的配列と相同かつ相補的な多くの異なるものを含め2個またはそれ以上のdsRNAを生成するよう設計されてもよい。このアプローチは、単一ベクターが多くの、非依存的に操作可能なdsRNAを産生し得るという点で、単一転写ユニットからのおよび多数の異なるdsRNAの産生による単一dsRNA分子より望ましく、最適な有効性のために自己選択することが可能である。これを実現するため、自己触媒配列ならびにランダムなおよび/または既定のスプライス部位を作成するための切断用配列を含め、様々な手段が用いられ得る。
【0094】
哺乳動物細胞中の上述の所望のRNA分子の形成に必要な情報を提供する他の送達剤としては、本発明の所要のRNA分子に必要な配列を含むよう設計される、生きている、弱毒のまたは死菌の、不活性化された組換え細菌が挙げられる。かかる組換え細菌細胞、真菌細胞などは、参照により本発明に組み込まれる米国特許第5,824,538号明細書、第5,877,159号明細書、および第5,643,771号明細書に記載されるような従来技術を使用して調製されることができる。これらの送達剤を調製するのに有用な微生物は、大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌、およびシュードモナス属、ストレプトマイセス属、およびブドウ球菌属の様々な種を限定なしに含め、上記に引用される文献中に列挙されるものが挙げられる。
【0095】
哺乳動物細胞中の所望の上述のRNA分子の形成に必要な情報を提供するさらに他の送達剤としては、生きている、弱毒のまたは死菌の、不活性化されたウイルス、および特に上記で考察される所要のRNAポリヌクレオチド配列を保有する組換えウイルスが挙げられる。かかるウイルスは、現在遺伝子治療のための遺伝子を細胞に送達するため使用される組換えウイルスと同様に設計されてもよいが、好ましくはタンパク質またはタンパク質の機能性断片を発現する能力を有しない。所要のRNA分子を哺乳動物細胞にインビボで提供するよう操作され得る有用なウイルスまたはウイルス配列のなかには、限定なしに、アルファウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、デルタウイルス、ポックスウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、パポバウイルス(SV40など)、ポリオウイルス、仮性狂犬病ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、陽性および陰性鎖RNAウイルス、ウイロイド、およびウイルソイド、またはその部分がある。これらの様々なウイルス送達剤は、本発明の教示を伴い、他のなかでもとりわけ、M. Di Nocola et al.,Cancer Gene Ther.,5(6):350-6 (1998)に記載されるような従来技術を適用することにより、設計されてもよい。
【0096】
用語「インビボで」は、細胞のDNAまたはRNA複製機構がインタクトな、好ましくは、組織培養系、組織外植体を含む無傷生細胞内、および単細胞または多細胞生物内の、任意の系を含むことが意図される。
【0097】
「多重セキトープdsRNA」または「マルチセキトープdsRNA」または「多重エピトープdsRNA」とは、複数の標的核酸由来のセグメントを有するか、もしくは同じ標的核酸由来の非連続セグメントを有するRNA分子を意味する。例えば、多重セキトープdsRNAは(i)単一生物体の複数の遺伝子を呈示する配列、(ii)様々な異なる生物体由来の1個またはそれ以上の遺伝子を呈示する配列、および/または(iii)特定の遺伝子の異なる領域を呈示する配列(例えば、プロモーター由来の1本またはそれ以上の配列またはmRNA由来の1本またはそれ以上の配列)由来のセグメントを有してもよい。望ましくは、各セグメントは標的核酸の対応する領域との実質的な配列同一性を有する。様々な望ましい実施形態において、標的核酸の対応する領域との実質的な配列同一性を有するセグメントは、少なくとも19、20、21、22、23、24、25、26、27、30、40、50、100、200、500、750、またはそれ以上の塩基長である。望ましい実施形態において、多重エピトープdsRNAは、少なくとも2、4、6、8、10、15、20個またはそれ以上の標的遺伝子の発現を、少なくとも20、40、60、80、90、95、または100%阻害する。ある実施形態において、多重エピトープdsRNAは、天然由来の5’から3’の順序のセグメントにあってもなくてもよい同一標的遺伝子由来または同一標的ポリヌクレオチド由来の非連続セグメントを有するとともに、dsRNAは標的核酸の発現をセグメントのうち1個のみを備えるdsRNAより少なくとも50、100、200、500、または1000%多く阻害する。
【0098】
「セキトープ」とは、RISC(RNA誘導サイレンシング複合体)と結合できるとともにそれを活性化できる二本鎖ポリリボヌクレオチドの連続配列、通常は延べ19〜27塩基対の間の連続配列を意味する。ここで同定される1個またはそれ以上のHBVおよび/またはHCV保存ヌクレオチド配列内由来の少なくとも1個のセキトープを含んでなる配列が、本明細書で教示されるとおりdsRNA介在性遺伝子サイレンシングに利用されてもよい。
【0099】
多重エピトープ/多重セキトープdsRNA 2002年10月18日出願の米国仮特許出願第60/419,532号明細書および2003年10月20日出願のPCT/US第2003/033466号明細書に教示されるとおりの多重エピトープまたはマルチセキトープ二本鎖RNAアプローチの利点が、本発明のHBVおよび/またはHCV保存配列の利用に適用可能である。dsRNAの単一種は同時に多くの標的遺伝子(例えば、単一の病原体、または複数の疾患に付随する遺伝子由来の複数の病原体、複数の遺伝子または配列)をサイレンシングできるため、多重エピトープdsRNAは同一被験体中の多くの異なる指標に使用されてもよく、もしくは一被験体中の指標のサブセットおよび別の被験体中の別の指標のサブセットに使用されてもよい。かかる適用において、dsRNAストレス応答を惹起することなしに長鎖dsRNA分子(例えば、複数の遺伝子由来の配列を伴うdsRNA分子)を発現する能力は極めて望ましい。例えば、各々が例えば19〜21ヌクレオチドと同程度に短く、望ましくは100〜600ヌクレオチド、またはかかる配列の全長が選択されたプラスミドの最大容量内(例えば、20キロベース長)であるべく容易に1、2,3、4、5キロベース、またはそれ以上までの、一連の配列を使用することにより、単一のかかる医薬組成物が、比較的低価格かつ低毒性で、数多くの病原体および/または毒素、例えばHBV、HCV、HIV等に対する保護を提供できる。
【0100】
HBVおよび/またはHCVなどの高度に変異可能または急速に突然変異する病原体の複数の株および/または変異体由来の同一ポリヌクレオチドまたは遺伝子の1個またはそれ以上の遺伝子および/または異なる重複および/または非連続配列に由来する多重エピトープまたはセキトープの使用もまた、非常に有利であり得る。例えば、HBVおよび/またはHCVの複数の株および/または変異体を認識するとともに標的とする単一のdsRNA種は、HBVおよび/またはHCVの様々な株/変異体用ワクチンまたは汎用的処置として使用され得る。
【0101】
HBVおよび/またはHCVなどの特定の病原体の複数の遺伝子をサイレンシングする能力は、この場合HBVおよび/またはHCV「逃避変異体」の選択を阻止する。対照的に、1個の遺伝子またはタンパク質を標的とするのみの典型的な小分子処置またはワクチン治療は結果として標的遺伝子またはタンパク質中での持続性突然変異を有する病原体の選択を招くとともに、こうして病原体は治療に対し抵抗性となる。本発明の多重エピトープアプローチを使用して病原体および/または病原体の広範な領域の多くの遺伝子または配列を同時に標的とすることにより、かかる「逃避変異体」の出現は有効に妨げられる。
【0102】
例えば、HCV配列番号11および配列番号12の双方および配列番号27由来の配列の混合物、すなわち、HCV配列番号11由来の1本またはそれ以上の配列(例えば、各々少なくとも19、20、21、22、23、24、25、26、27〜29連続ヌクレオチド)をHCV配列番号12由来および配列番号27由来の1本またはそれ以上の配列(例えば、各々少なくとも19、20、21、22、23、24、25、26、27〜29連続ヌクレオチド)と共に、単一dsRNA分子、dsRNA分子の混合物、または患者へのかかる分子の同時投与を通じて(または細胞内にかかるdsRNA分子を産生する1個またはそれ以上のdsRNA発現コンストラクトの投与により)のいずれかで含むことは、生存可能な逃避変異体を生成するウイルスの能力を低減するために、特に有利であると考えられる。同様に、多くのHBV保存配列を含んでなるdsRNA分子の混合物を、ある場合には1本またはそれ以上の本発明のHCV保存配列との組み合わせで、提供することが有利であろう。
【0103】
同様に、2本またはそれ以上のHBV配列番号1、配列番号2、および配列番号3を、単一dsRNAコンストラクト、コンストラクトの混合物、または患者へのかかるコンストラクト(またはかかるdsRNA分子を産生するdsRNA発現コンストラクト)の同時投与を通じて、使用することが望ましくあり得る。配列番号1、配列番号2、および配列番号3はHBV表面抗原遺伝子に位置する。HBVmRNAの重複する性質により、次のmRNA:表面Ag(sAg)mRNA、プレコア、コアおよびポリメラーゼmRNAは1本またはそれ以上のこれらの配列により標的とされるであろう。しかしながら、sAgmRNAは最も多量であることから、遺伝子サイレンシング機構が可飽和性である場合、これらのmRNAが標的とされるであろう可能性が高い。しかしながら、列挙された全てのmRNAが標的とされるであろう可能性もある。表面Agの減少は幾つかの理由から望ましい:a)表面Agは感染性ウイルスの組織化に必要とされる、b)感染中の表面Agの過剰発現は慢性HBV感染中に生じる免疫アネルギーに寄与すると考えられる、およびc)感染した個体(ウイルス不在において、すなわち宿主ゲノムへ組み込まれたsAg配列由来でさえ)の肝中でのHBVsAgの発現は肝炎を誘発する。それゆえ、sAgの減少はウイルス力価を低減し、免疫アネルギーを克服し、かつ肝炎を低減/阻止する可能性がある。
【0104】
HBV配列番号4はプレコアおよびコアの固有領域に位置するとともに特にこれらのmRNAを標的とするであろう。コアタンパク質は機能性ビリオンを作製するのに必要とされるとともに、そこからこのmRNAの下方制御はウイルス力価を低減すると予想される。表面、ポリメラーゼまたはXmRNAに対するこれらのエフェクターRNAの競合があってはならない。
【0105】
HBV配列番号5〜配列番号8はポリメラーゼ遺伝子に位置する。エフェクターRNAはプレコア/コアおよびポリメラーゼ転写のみを標的とすると予想される。sAgまたはXmRNAとの競合があってはならない。ポリメラーゼはウイルスゲノムの合成に必要とされるとともに、それゆえポリメラーゼが低減されると、ウイルス粒子力価は低減すると期待される。
【0106】
HBV配列番号9はX遺伝子に位置する。全てのHBVmRNAの末端重複性により、これらのエフェクターRNAは、全てのHBVウイルスmRNAを標的とする可能性を有する。Xタンパク質は多くの帰すべき(証明されていない)機能を有する。しかしながら、X遺伝子発現は肝細胞発癌と関連し、部分的に原発腫瘍部位外の細胞の剥離および移動の促進に関係するという証拠が現れている。X遺伝子は活性肝炎を伴うおよび伴わない個体中に組み込まれたHBV配列中に多く見られることから、X遺伝子発現の下方制御は、肝細胞癌の発生を含め、疾患を寛解すると予想される。
【0107】
一般に、使用される同定された異なる配列由来の配列またはセキトープ(例えば、配列番号1、配列番号2、および/または配列番号3、加えて配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10由来の配列)が多くなるほど、ウイルスが生存可能な逃避変異体を生成することができる可能性は低くなる。また、標的とされ得るmRNAが異なるほど、ウイルス力価の低下および疾患寛解はより有意となるであろう。
【0108】
マルチエピトープまたはマルチセキトープdsRNA発現コンストラクトまたはdsRNAエフェクター分子、dsRNA発現コンストラクトまたはdsRNAエフェクター分子の混合物、または異なるdsRNA発現コンストラクトまたはdsRNAエフェクター分子の同時投与のための望ましい組み合わせとしては、次が挙げられる:配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号4由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号5由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号6由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号7由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号8由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号9由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号10由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号4および配列番号5由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号4および配列番号6由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号4および配列番号7由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号4および配列番号8由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号4および配列番号9由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号4および配列番号10由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号5および配列番号6由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号5および配列番号7由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号5および配列番号8由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号5および配列番号9由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号5および配列番号10由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号6および配列番号7由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号6および配列番号8由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号6および配列番号9由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号6および配列番号10由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号7および配列番号8由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号7および配列番号9由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号7および配列番号10由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号8および配列番号9由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号8および配列番号10由来の配列;配列番号1、配列番号2、または配列番号3由来の配列に加えて配列番号9および配列番号10由来の配列;配列番号4および配列番号5由来の配列;配列番号4および配列番号6由来の配列;配列番号4および配列番号7由来の配列;配列番号4および配列番号8由来の配列;配列番号4および配列番号9由来の配列;配列番号4および配列番号10由来の配列;配列番号5および配列番号6由来の配列;配列番号5および配列番号7由来の配列;配列番号5および配列番号8由来の配列;配列番号5および配列番号9由来の配列;配列番号5および配列番号10由来の配列;配列番号6および配列番号7由来の配列;配列番号6および配列番号8由来の配列;配列番号6および配列番号9由来の配列;配列番号6および配列番号10由来の配列;配列番号7および配列番号8由来の配列;配列番号7および配列番号9由来の配列;配列番号7および配列番号10由来の配列;配列番号8および配列番号9由来の配列;配列番号8および配列番号10由来の配列;配列番号9および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5;および配列番号6由来の配列;
配列番号4、配列番号5;および配列番号7由来の配列;
配列番号4、配列番号5;および配列番号8由来の配列;
配列番号4、配列番号5;および配列番号9由来の配列;
配列番号4、配列番号5;および配列番号10由来の配列;
配列番号4、配列番号6;および配列番号7由来の配列;
配列番号4、配列番号6;および配列番号8由来の配列;
配列番号4、配列番号6;および配列番号9由来の配列;
配列番号4、配列番号6;および配列番号10由来の配列;
配列番号4、配列番号7;および配列番号8由来の配列;
配列番号4、配列番号7;および配列番号9由来の配列;
配列番号4、配列番号7;および配列番号10由来の配列;
配列番号4、配列番号8;および配列番号9由来の配列;
配列番号4、配列番号8;および配列番号10由来の配列;
配列番号4、配列番号9;および配列番号10由来の配列;
配列番号5、配列番号6;および配列番号7由来の配列;
配列番号5、配列番号6;および配列番号8由来の配列;
配列番号5、配列番号6;および配列番号9由来の配列;
配列番号5、配列番号6;および配列番号10由来の配列;
配列番号5、配列番号7;および配列番号8由来の配列;
配列番号5、配列番号7;および配列番号9由来の配列;
配列番号5、配列番号7;および配列番号10由来の配列;
配列番号5、配列番号8;および配列番号9由来の配列;
配列番号5、配列番号8;および配列番号10由来の配列;
配列番号5、配列番号9;および配列番号10由来の配列;
配列番号6、配列番号7;および配列番号8由来の配列;
配列番号6、配列番号7;および配列番号9由来の配列;
配列番号6、配列番号7;および配列番号10由来の配列;
配列番号6、配列番号8;および配列番号9由来の配列;
配列番号6、配列番号8;および配列番号10由来の配列;
配列番号6、配列番号9;および配列番号10由来の配列;
配列番号7、配列番号8;および配列番号9由来の配列;
配列番号7、配列番号8;および配列番号10由来の配列;
配列番号7、配列番号9;および配列番号10由来の配列;
配列番号8、配列番号9;および配列番号10由来の配列;
配列番号4、配列番号5;配列番号6;および配列番号7由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、および配列番号8由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、および配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号6;および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号7;および配列番号8由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号7;および配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号7;および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号8;および配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号8;および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号9;および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号6;配列番号7;および配列番号8由来の配列;配列番号4、配列番号6;配列番号7;および配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号6;配列番号7;および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号7;配列番号8;および配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号7;配列番号8;および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号7;配列番号9;および配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号9由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6;配列番号8;および配列番号9由来の配列;配列番号5、配列番号6;配列番号8;および配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6;配列番号9;および配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号7;配列番号8;および配列番号9由来の配列;配列番号5、配列番号7;配列番号8;および配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号7;配列番号9;および配列番号10由来の配列;配列番号6、配列番号7、配列番号8、および配列番号9由来の配列;配列番号6、配列番号7、配列番号8、および配列番号10由来の配列;配列番号6、配列番号7、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号6、配列番号8、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号8、および配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号8、および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、および配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、および配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、および配列番号9由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、および配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号8、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、および配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号8、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10由来の配列;および配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10由来の配列。ある態様において好ましくあるのは、配列番号6を加える、配列番号7を加える、配列番号8を加える、配列番号5由来のセキトープの組み合わせを含む、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8由来の配列である。
【0109】
別の実施形態において、少なくとも19連続塩基対長のセキトープの組み合わせおよび任意の上述の配列(例えば、配列番号1〜配列番号12)内由来のより長い配列は、単一のdsRNA発現コンストラクトまたはdsRNAエフェクター分子、dsRNA発現コンストラクトまたはdsRNAエフェクター分子の混合物で、または患者へのかかるdsRNA発現コンストラクトまたはdsRNAエフェクター分子の同時投与を通じてのいずれかにおいて利用され得る。「少なくとも19連続塩基対長」の配列により、19連続塩基長の配列またはセキトープが、二本鎖構造で、または二本鎖RNAエフェクター分子内に存在することが意味される。
【0110】
本明細書の別の箇所で考察されるとおり、本発明の特に好ましい実施形態は、dsRNA発現コンストラクトまたはベクターを利用して、本発明のdsRNA、特に上記に記載される複数の異なる配列の内因的送達を実現する。これらのdsRNAは、例えば、プラスミドなどの発現コンストラクトの同一シストロン上、発現コンストラクトの異なるシストロン上、または異なる発現コンストラクトまたはプラスミド上、例えば、1個またはそれ以上のプラスミドおよび/またはウイルスベクターを含む1個またはそれ以上のベクター上に提供されてもよい。shRNAエフェクター分子など異なるdsRNAエフェクター分子の組み合わせが、異なるプロモーター、例えばRNAポリメラーゼIプロモーターおよび/またはRNAポリメラーゼIIIプロモーター、例えばU6、H1、7SK、またはMRPなどの3型RNAポリメラーゼIIIプロモーターにより駆動される異なる発現カセットから転写される各dsRNAエフェクター分子を伴い、プラスミドなどの単一発現コンストラクトからの生体内発現により哺乳動物細胞に提供されてもよい。ある実施形態において、かかる異なる各発現カセットは、異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーター、これは同じでも異なってもよいが、およびRNAポリメラーゼIII終結配列を含んでもよい。別の実施形態において、shRNAエフェクター分子などの異なるdsRNAエフェクター分子の組み合わせが、複数の異なるプロモーター、例えばRNAポリメラーゼIプロモーターおよび/または、例えばU6、H1、7SK、またはMRPなどの3型RNAポリメラーゼIIIプロモーターといった、RNAポリメラーゼIIIプロモーター(ここでかかるプロモーターの各々は異なるdsRNAエフェクター分子を転写する)を含んでなる発現カセットを含んでなるプラスミドまたはウイルスベクターなどの単一の発現コンストラクトからの生体内発現により哺乳動物細胞に提供されてもよい。かかる複数の異なるdsRNAエフェクター配列はまた、1個またはそれ以上のdsRNA構造、デュプレックスおよび/またはヘアピンの任意の異なる混合物で、および/または1個またはそれ以上の内因的に発現されたdsRNA構造との組み合わせで、哺乳動物体内細胞へ外因的に提供されてもよい。
【0111】
望ましい核酸投与の方法 本発明のDNAおよび/またはRNAコンストラクト、例えばdsRNAエフェクター分子は、いかなるトランスフェクション促進剤も伴わない医薬賦形剤で調合される、「裸の」DNA、RNA、またはDNA/RNAとして宿主細胞/組織/生物体に投与されてもよい。より効率的な送達が、DNAおよびRNA送達の当業者に既知のとおり、例えば、RNAおよび/またはDNA送達の当業者に既知のかかるポリヌクレオチドトランスフェクション促進剤を使用して実現されてもよい。以下は例示的薬剤である:ブピバカインなどの局所麻酔薬を含むカチオン両親媒性物質、カチオン脂質、リポソームまたは脂質粒子、ポリリジンなどのポリカチオン、デンドリマーなどの分枝三次元ポリカチオン、糖、デタージェント、または塩化ベンザルコニウムなどのベンジルアンモニウム化合物界面活性剤を含む界面活性剤。本発明に有用なかかる促進剤または共薬剤の非排他的な例は、その教示が本明細書によって参照により組み込まれる、米国特許第5,593,972号明細書、第5,703,055号明細書、第5,739,118号明細書、第5,837,533号明細書、第5,962,482号明細書、第6,127,170号明細書、第6,379,965号明細書、および第6,482,804号明細書、および国際特許出願PCT/US第98/22841号明細書に記載される。米国特許第5,824,538号明細書、第5,643,771号明細書、および第5,877,159号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)は、ポリヌクレオチド組成物以外の組成物、例えば本発明のdsRNAコード化組成物を含むトランスフェクトされたドナー細胞または細菌の送達を教示する。
【0112】
ある実施形態において、dsRNAまたはdsRNA発現ベクターは、米国特許第4,897,355号明細書(Eppstein et al.、1987年10月29日出願)、米国特許第5,264,618号明細書(Felgner et al.、1991年4月16日出願)または米国特許第5,459,127号明細書(Felgner et al.、1993年9月16日出願)に開示される組成物のように1個またはそれ以上のカチオン脂質またはカチオン両親媒性物質と複合体形成される。他の実施形態において、dsRNAまたはdsRNA発現ベクターはカチオン脂質を含むリポソーム/リポソーム組成物と複合体形成されるとともに、場合により中性脂質など別の組成物を含む(例えば、米国特許第5,279,833号明細書(Rose)、米国特許第5,283,185号明細書(Epand)、および米国特許第5,932,241号明細書を参照)。
【0113】
肝実質細胞への標的送達のためを含め、医薬応用のための本発明のオリゴヌクレオチド組成物の送達に特に望ましい方法および組成物が、その教示が参照により本明細書に組み込まれる2003年5月6日出願のPCT/US第03/14288号明細書に記載される。
【0114】
研究および他の非治療目的のための細胞の形質転換/トランスフェクションは、リポフェクション、DEAEデキストラン介在性トランスフェクション、微量注入、リン酸カルシウム沈澱、ウイルスまたはレトロウイルス送達、電気穿孔、または微粒子銃形質転換を含むが限定はされない様々な手段を通じて起こり得る。RNAまたはRNA発現ベクター(DNA)は裸のRNAまたはDNAまたは局所麻酔性複合型RNAまたはDNAであってもよい(上記の米国特許第6,217,900号明細書および第6,383,512号明細書、「Vesicular Complexes and Methods of Making and Using the Same,Pachuk et al.を参照)
医薬応用のための本発明のdsRNAまたはdsRNA発現コンストラクト用の別の望ましい送達技術は、シクロデキストリン含有ポリカチオンに基づく自己組織化シクロサート(Cyclosert)(商標)2構成成分核酸送達系であり、これはインサート・セラピュティクス(Insert Therapeutics)、カリフォルニア州パサディナ(Pasadena,CA)から入手可能である(Bioconjug Chem 2003 May-Jun; 14 (3): 672-8; Popielarski et al.;「Structural effects of carbohydrate-containing polycations on gene delivery. 3. Cyclodextrin type and functionalization」、ならびにBioconjug Chem 2003 Jan-Feb;14 (1):247-54および255-61を参照)。第1の構成成分は、直線状の、シクロデキストリン含有ポリカチオンポリマーであり、DNAと混合されると、核酸の「骨格」リン酸に結合して、DNAを縮合するとともに血清中においてDNAをヌクレアーゼ分解から保護する均一なコロイドナノ粒子に組織化する。第2の構成成分は末端アダマンタンPEG分子を伴う表面修飾剤であり、シクロデキストリンポリマーと結合されると表面シクロデキストリンと包接複合体を形成するとともに凝集を阻止し、安定性を亢進するとともに全身投与を可能にする。加えて、細胞表面受容体の標的リガンドは、目的の標的細胞へのDNAの直接的な標的送達を提供する修飾因子に付着され得る。肝実質細胞はHBVおよびHCV感染を起こしやすいことから、本発明のdsRNA発現コンストラクトの肝細胞への標的送達にこの方法を利用することは特に有利と考えられる。例えば、哺乳動物肝実質細胞上のアシアロ糖タンパク質受容体(ASGP−R)は、ガラクトシル化ポリマーなどのガラクトシル化またはラクトシル化残基を伴う合成リガンドの使用により標的とされ得る。
【0115】
一般に、本発明のdsRNAコンストラクトの選択的送達は肝実質細胞を標的とすることが好ましい。肝実質細胞を標的とすることは、肝実質細胞特異的受容体のリガンドと共役することにより実現されてもよい。例えば、アシアロ−オロソムコイド、(ポリ)L−リジン−アシアロ−オロソムコイド、または他の任意の肝アシアロ糖タンパク質受容体のリガンド(Spiess, Biochemistry 29(43):10009-10018, 1990; Wu et al., J. Biol. Chem. 267(18): 12436-12439, 1992; Wu et al., Biotherapy 3:87-95, 1991)。同様に、オリゴヌクレオチドは、肝実質細胞特異的受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体に共役させることにより肝実質細胞を標的としてもよい。オリゴヌクレオチドはまた、以下に記載されるとおり、特異的ベクターを使用して肝実質細胞を標的としてもよい。
【0116】
本発明のdsRNAまたはdsRNA発現コンストラクトの送達に特に好ましい組成物は、2003年5月6日出願のPCT/US第03/14288号明細書に記載されるとおりの多機能性組成物であり、これは肝実質細胞のASG受容体を標的とするためのリガンドとしてトリラクトシルスペルミンを含み得る。本発明のオリゴヌクレオチドを伴うトリラクトシルコレステリルスペルミン共複合体はインビボで肝実質細胞をトランスフェクトするため記載されるとおり調製および使用されてもよい。
【0117】
本発明のdsRNAオリゴヌクレオチドは、例えば細胞外で調製されるとともに哺乳動物肝実質細胞へと送達されるなど、外因的に標的肝実質細胞に提供されてもよい。あるいは、dsRNAは、dsRNAをコードする配列に操作可能に連結されるプロモーター配列を含んでなる核酸分子の転写により標的細胞内で産生されてもよい。この方法において、核酸分子は、非複製直鎖状または環状DNAまたはRNA分子内に含まれるか、もしくは自己複製プラスミドまたはウイルスベクター内に含まれるか、もしくは宿主ゲノムへと組み込まれる。肝実質細胞をトランスフェクトできる任意のベクターが本発明の方法に使用されてもよい。好ましいベクターは、複製欠損肝炎ウイルス(例えば、HBVおよびHCV)、レトロウイルス(例えば、国際公開第89/07136号パンフレット; Rosenberg et al., N. Eng. J. Med. 323(9):570-578, 1990を参照)、アデノウイルス(例えば、Morsey et al., J. Cell. Biochem., Supp. 17E, 1993; Graham et al., in Murray, ed., Methods in Molecular Biology: Gene Transfer and Expression Protocols. Vol. 7, Clifton, N.J.: the Human Press 1991: 109-128を参照)、アデノ随伴ウイルス(Kotin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2211-2215, 1990)、複製欠損ヘルペスシンプレックスウイルス(HSV;Lu et al., Abstract, 66頁, Abstracts of the Meeting on Gene Therapy, Sep. 22-26, 1992, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N. Y.)、およびこれらのベクターの任意の修飾型由来のものを含む、ウイルスベクターである。発現ベクターを構築する方法は当該技術分野において周知である(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook et al., eds., Cold Spring Harbor Laboratory, 2nd Edition, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989を参照)。
【0118】
然るべき制御配列が、当業者に周知の方法、例えば相同組換え(Graham et al., J. Gen. Virol. 36:59-72, 1977)、または他の然るべき方法(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook et al., eds., Cold Spring Harbor Laboratory, 2nd Edition, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)を使用して、本発明のベクターに挿入され得る。
【0119】
本発明における組換えDNAプラスミドdsRNA発現ベクターの組織化において、細菌は大量の最終ベクターを産生する「工場」として使用される。細菌の大腸菌はプラスミド発酵に頻用されるとともに、例えば、その教示が参照により本明細書に組み込まれる、Blattner et al.、米国特許出願公開第2005/0032225号明細書に記載されるとおりの減少させたゲノムを有する大腸菌株をこの目的に用いることは有利であり得る。この方法で製造され、当該技術分野において周知の方法に従い単離および精製されるベクターは、上記に記載される方法および組成物を含め、総じて「トランスフェクション」として知られる、様々な方法で生細胞中に導入され得る。細胞中に入ると、プロモーターエレメントは遺伝子転写に利用可能な細胞機構により認識されるとともにRNAエフェクター分子、例えばshRNAが産生されるであろう。
【0120】
本発明のプラスミド発現ベクターを増殖するために有利であり得る他の細菌株としては、インビボジェン(InvivoGen)、カリフォルニア州サン・ディエゴ(San Diego,CA)から市販されている大腸菌GT116コンピテント細胞が挙げられる。GT116は、ヘアピンRNAである1個またはそれ以上のdsRNAエフェクター分子を発現するよう操作される本発明のプラスミドなどの、ヘアピン構造を保有するプラスミドDNAの成長を補助するよう特異的に操作されるsbcCD欠失株である。ヘアピン構造は、ヘアピンを認識するとともに切断するSbcCDと称されるタンパク質複合体によるそれらの排除により、大腸菌中で不安定であることが知られている(Connelly et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:7969-74 (1998))。sbcCDおよびsbcD遺伝子は大腸菌GT116中で除去され、これはヘアピンまたは他の回文含有構造のプラスミドをクローニングするためのその有用性を改善する。
【0121】
プロモーター プロモーターは、それらが、dsRNAオリゴヌクレオチドをコードする核酸配列に、典型的だが常にというわけではなく、操作可能に連結される5’であるようベクターに挿入される。真核細胞中での転写開始を主導する能力を有する任意のプロモーターが本発明に使用されてもよい。例えば、サイトメガロウイルス(DeBemardi et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9257-9261,1991、およびそのなかの参考文献)、マウスメタロチオニンI遺伝子(Hammer, et al.,J. MoI. Appl. Gen. 1:273-288,1982)、HSVチミジンキナーゼ(McKnight,Cell 31:355-365 1982)、および初期SV40(Benoist et al., Nature 290:304-310, 1981)プロモーターなどの非組織特異的プロモーターが使用されてもよい。非組織特異的プロモーターは、ウイルス配列用の本発明のHBVおよびHCVdsRNAの特異性から、非組織特異的プロモーターにより主導される非肝細胞中のHBVおよび/またはHCVdsRNAの発現は非肝細胞に対し無害であるはずなので、本発明に使用されてもよい。しかしながら、本発明における使用に好ましいプロモーターは肝実質細胞特異的プロモーターであり、その使用により確実にRNAは肝実質細胞中で一次的に発現される。好ましい肝実質細胞特異的プロモーターとしては、アルブミン、アルファ−フェトプロテイン、アルファ−1−アンチトリプシン、レチノール結合タンパク質、およびアシアロ糖タンパク質受容体プロモーターが挙げられるが、限定はされない。サイトメガロウイルス、ヘルペスシンプレックスウイルス(I型およびII型)、肝炎ウイルス(A、B、およびC)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV;Fang et al.,Hepatology 10:781-787,1989)由来のものなどのウイルスプロモーターおよびエンハンサーもまた本発明に使用されてもよい。
【0122】
dsRNA発現ベクターとしては、HCMV、SCMV、MCMV、RSV、EF2a、TKを含むが限定はされないRNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII用プロモーターおよび他のICP6、ICP4およびICP0プロモーターなどのHSVプロモーター、HBVプレゲノムプロモーター、RNApolIIIプロモーター、特に7SK、U6、およびH1を含むが限定はされない3型RNAポリメラーゼIIIプロモーター、ならびにミトコンドリア軽鎖および重鎖プロモーターが挙げられ得る。望ましくは、dsRNA発現ベクターは、少なくとも1個のRNAポリメラーゼIIプロモーター、例えばヒトCMV最初期プロモーター(HCMV−IE)またはサルCMV(SCMV)プロモーター、少なくとも1個のRNAポリメラーゼIプロモーター、または少なくとも1個のRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含んでなる。プロモーターはまた、T7プロモーターであってもよく、この場合、細胞はさらにT7RNAポリメラーゼを含んでなる。あるいは、プロモーターはSP6プロモーターであってもよく、この場合、細胞はさらにSP6RNAポリメラーゼを含んでなる。プロモーターはまた、1個の集中型T7プロモーターおよび1個の集中型SP6RNAプロモーターであってもよい。細胞は、該細胞をT7ポリメラーゼまたはSP6ポリメラーゼ発現プラスミドで形質転換することにより、それぞれT7またはSP6ポリメラーゼを含むよう作製され得る。ある実施形態において、T7プロモーターまたはRNAポリメラーゼIIIプロモーターは短鎖dsRNA(例えば、200、150、100、75、50、または25塩基長未満であるdsRNA)をコードする核酸に操作可能に連結される。他の実施形態において、プロモーターは、ベクター中の核酸の細胞質転写を可能にするミトコンドリアプロモーターである(例えば、2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレット、および2001年1月9日出願の国際公開/米国特許出願公開第2002/00543号明細書に記載されるミトコンドリアプロモーターを参照)。あるいは、プロモーターは、lac(Cronin et al.Genes & Development 15:1506-1517,2001)、ara(Khlebnikov et al.,J Bacteriol.2000 Dec;182(24):7029-34)、エクジソン(Rheogeneのウェブサイト)、RU48(ミフェプリストン(mefepristone))(副腎皮質ステロイドアンタゴニスト)(Wang XJ,Liefer KM,Tsai S,O'Malley BW,Roop DR,Proc Natl Acad Sci U S A.1999 Jul 20;96(15):8483-8)、またはtetプロモーター(Rendal et al.,Hum Gene Ther. 2002;13(2):335-42およびLarnartina et al.,Hum Gene Ther. 2002; 13(2):199-210)などの誘導プロモーターまたは2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレットに記載されるプロモーターである。また、本発明の方法および組成物に有用であるのは、2003年4月22日出願の米国仮特許出願第60/464,434号明細書に教示される構造的およびキメラのプロモーターである。本発明の方法および組成物に特に望ましいと考えられる、Pachuk, C.、およびSatishchandran, C,「Multiple-Compartment Eurkaryotic Expression Systems」、米国仮特許出願第60/497,304号明細書、2003年8月22日出願に教示されるプロモーター系もまた参照されたい。
【0123】
本発明のdsRNA発現コンストラクトに有用な肝特異的プロモーターとしては、アルブミンプロモーター、アルファ−フェトプロテインプロモーター(特に肝癌細胞中で)、アルファ−1−アンチトリプシンプロモーター、例えば、コア、e抗原、ポリメラーゼおよびXタンパク質を含む抗原遺伝子用プロモーターを含むB型肝炎プロモーターといったB型肝炎プロモーターが挙げられる。
【0124】
T7プロモーター/T7ポリメラーゼ発現系 本発明の望ましい方法は、T7dsRNA発現系を利用して脊椎動物細胞(例えば、哺乳動物細胞)中でのdsRNA(例えば、長鎖または短鎖dsRNA分子)の細胞質発現を実現する。T7発現系は、T7プロモーターを利用して所望のdsRNAを発現する。転写はT7RNAポリメラーゼにより駆動され、第2のプラスミドまたは同一プラスミド上に提供され得る。バクテリオファージT7RNAポリメラーゼ(T7Pol)はT7遺伝子1の産物であり、その応答プロモーター配列を特異的に認識できるとともに高い転写酵素活性を示すことができる。T7ゲノムの完全配列は、バクテリオファージの異なる領域についての詳細情報とともに、プロモーター配列を含め、Dunn & Studier,1983,J. Mol. Biol. 166(4),477-535に開示される(NCBI「ゲノム(Genome)」データベース、受託番号NC 00 1 604もまた参照されたい)。T7プロモーターは、バクテリオファージT7のポリメラーゼ以外の他のいかなるRNAポリメラーゼによっても利用され得ず、これはプロモーターのストリンジェントな特異性を示している(Chamberlin et al.,1970,Nature 228:227-231)。dsRNAの発現にT7発現系を利用する時、例えば、集中型T7プロモーターの制御下でセンスおよびアンチセンス鎖の双方を発現する第1のプラスミドコンストラクトおよびRSVプロモーターの制御下でT7RNAポリメラーゼを発現する第2のプラスミドコンストラクトが使用され得る。特にdsRNAが、鎖において少なくとも部分的な二本鎖領域を伴うステム−ループまたはヘアピン構造の想定を可能にする逆方向反復または自己相補的領域を伴う単一RNA鎖から形成される時、単一のバイシストロン性プラスミドコンストラクトからdsRNAおよびT7RNAポリメラーゼの双方が有利に発現され得るであろう。dsRNAを形成するため自己組織化する個々のセンスおよびアンチセンス鎖は、例えば選択された転写されるべき配列の相補鎖の5’および3’末端のそれぞれに配置されるバクテリオファージT7プロモーターなどの集中型プロモーターを使用して単一のプラスミドコンストラクトにより合成され得る。例えば、T7dsRNA発現系に関する国際公開第0063364号パンフレットの教示、ならびに2002年7月31日出願の米国仮特許出願第60/399,998P号明細書および2002年10月18日出願の米国仮特許出願第60/419,532号明細書もまた参照されたい。
【0125】
本発明の治療組成物 本発明のdsRNA、およびそれらをコードする核酸配列を含む組換えベクターは、HCVおよび/またはHBV感染の予防または処置用治療組成物に使用されてもよい。本発明の治療組成物は単独または混合物で、または他の抗ウイルス剤を含む1個またはそれ以上の物質との化学的併用で、使用されてもよい。現在、ラミブジン、アデホビルジピボキシル、およびインターフェロンアルファがHBVの処置に認可されているとともに、本発明の組成物がこれらの、およびエムトリシタビン(FTC)およびエンテカビルを含むHBVに対し活性を有する他の薬物との組み合わせで使用され得ることが予測される。HBVおよび/またはHCVに対するdsRNAは新規の機序(dsRNA介在性遺伝子サイレンシング/RNAi)を通じて作用することから、本発明の薬剤および他の抗ウイルス剤の併用治療が、薬物耐性の発生、例えば長期ラミブジン治療の主要な懸案問題であるラミブジン耐性の発生を実質的に低減しながら治療の有効性を有意に増加させると期待される。現在、HBV同様に、インターフェロンおよびリバビリンがHCVの処置に許可されているとともに、本発明の組成物がこれらの、およびHCVに対し活性を有する他の薬物との併用で使用され得ることが予測される。かかる複数の薬剤に伴う治療に関する特異的投薬レジメンは臨床医学の当業者により所定の実験を通じて決定され得る。
【0126】
製剤は望ましくは、オリゴヌクレオチドまたは組換えベクターの生物学的安定性を増加させる物質、または肝実質細胞に選択的に侵入する治療組成物の能力を増加させる物質を含むであろう。本発明の治療組成物は製薬上許容できる担体(例えば、生理食塩水)で投与されてもよいが、これは投与の様式および経路、および標準的な薬務に基づいて選択される。当業者はオリゴヌクレオチドまたは遺伝子コンストラクトを含んでなる医薬組成物を容易に調合できる。ある場合、等張製剤が使用される。一般的に、等張性のための添加剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトールおよびラクトースを挙げることができる。ある場合、リン酸緩衝食塩水などの等張液が好ましい。安定剤としては、ゼラチンおよびアルブミンが挙げられる。ある実施形態において、血管収縮剤が製剤に添加される。本発明に従う薬剤調製は無菌およびパイロジェンフリーで提供される。好適な医薬担体、ならびに医薬製剤での使用における医薬必需品は、当該分野において標準的な参考テキストであるRemington: The Science and Practice of Pharmacy(旧Remington's Pharmaceutical Sciences),Mack Publishing Co.およびUSP/NFに記載される。
【0127】
投与経路としては、筋肉内、腹腔内、皮内、皮下、静脈内、動脈内、眼内および経口ならびに経皮的にまたは吸入または坐薬によるものが挙げられるが、限定はされない。好ましい投与経路としては、静脈内、筋肉内、経口、腹腔内、皮内、動脈内および皮下注射が挙げられる。
【0128】
HBVおよび/またはHCVに対するdsRNAの送達のためのインビボでの肝実質細胞の標的とされるトランスフェクションは、ラクトシルスペルミン(モノまたはトリラクトシル化)およびコレステリルスペルミン(対DNA電荷比0.8のスペルミンを含有する)の混合物(例えば、35%/65%の比率)と複合体形成される本明細書に記載されるとおりのDNAまたはRNA発現ベクターを含んでなる組成物を伴うIV注射を通じて達成されてもよい。かかる組成物は特に、医薬応用に有用であるとともに、好適な無菌の、非パイロジェン賦形剤、例えば注入用、例えばIV(IV輸液を含む)、IM、SCといった非経口投与用、および腹腔内投与用、ならびに吸入を介する肺送達用エアロゾル製剤用緩衝食塩水に容易に調合され得る。特定の製剤において、本発明のDNA発現コンストラクトは、標的スペルミンのない、コレステリルスペルミン単独のようなエンドソームスペルミンと複合体形成されてもよく、腹腔内注入または点滴などのある投与経路は、有効な肝送達および本発明のDNAコンストラクトのトランスフェクション、および、RNAエフェクター分子、例えばHBVおよび/またはHCVに対し有効な複数のdsRNAヘアピンの発現を実現し得る。
【0129】
特別に調合された送達賦形剤中のHBVおよび/またはHCVに対するdsRNAエフェクター分子を提供するdsRNAエフェクター分子および/またはdsRNA発現コンストラクトを含んでなる無菌医薬組成物の腹腔内投与(例えば、超音波誘導腹腔内注入)は、肝実質細胞肝を含む肝細胞による取込を促進するために有利な送達経路であり得る。ある組成物においてdsRNA発現コンストラクトは、然るべきトランスフェクション促進剤、例えば、ラクトシルスペルミン(モノまたはトリラクトシル化)およびコレステリルスペルミンと複合体形成されてもよく、もしくは、標的スペルミンのない、コレステリルスペルミン単独などのエンドソームスペルミンを伴う他の組成物中にあってもよい。医薬組成物の容量、濃度、および製剤ならびに投薬レジメンは、炎症反応などの毒性を最小化しながら細胞送達を最大化するよう特異的に個別化されてもよい。例えば、低い活性成分濃度に対応する比較的大きな容量(5、10、20、50mlまたはそれ以上)、ならびに副腎皮質ステロイドなどの抗炎症化合物の包接が、所望であれば利用されてもよい。薬剤学の当業者に周知の製剤もまた、本発明のdsRNAエフェクター分子および/またはdsRNA発現コンストラクトの徐放を提供するため利用されてもよい。
【0130】
dsRNAまたはdsRNA発現コンストラクトは、従来式シリンジ、無針注入デバイス、または「微粒子衝撃遺伝子銃」を含むが、限定はされない手段により投与されてもよい。腹腔内注入は、例えば、従来式シリンジ、超音波に有利に誘導される針の穿刺または同様の技術で達成されてもよい。あるいは、dsRNAおよび/またはdsRNA発現コンストラクトは、様々な手段で個体から除去される細胞中に導入されてもよい。かかる手段としては、例えば、生体外トランスフェクション、電気穿孔、微量注入および微粒子衝撃が挙げられる。遺伝子コンストラクトが細胞により摂取された後、それらは個体中へ再移植される。宿主細胞が元来別の個体から採取された場合においても、そこに組み込まれる遺伝子コンストラクトを有する他の非免疫原性細胞が個体中に移植され得ると考えられる。
【0131】
HBV感染した個体において、本発明のdsRNA組成物が、ウイルスに対する追加免疫をするよう設計される治療ワクチン接種プロトコルと併用する前処置として有用であり得ることが予測される。本発明のdsRNA組成物が、職業上または他の被曝可能性によりHBVおよび/またはHCVへの曝露の危険性が高いと考えられる個体、例えば消防、救急、および医療職員への定期的投与レジメンにおける予防に有用であり得ることも予測される。かかる有効な予防的レジメンとしては、例えば毎週、隔週、毎月、隔月、毎3ヶ月、毎4ヶ月、毎半年、または毎年など、臨床医学の当業者により所定の実験を通じて決定され得るとおりの、本発明のHBVおよび/またはHCVdsRNAを提供する組成物投与が挙げられ得る。数週間から数ヶ月の範囲であると期待される、比較的長期間にわたり本発明のdsRNAを発現するためのプラスミドまたはウイルスベクターなどのdsRNA発現ベクターの能力は、本適用および他の適用に有利であると考えられる。
【0132】
dsRNAの投薬量 dsRNA(例えば、毒性を阻害する短鎖dsRNAまたは遺伝子をサイレンシングする短鎖または長鎖dsRNA)の動物への投与としては、典型的には10mg〜100mg、1mg〜10mg、500μg〜1mg、または5μg〜500μgの間のdsRNAが90〜150ポンドの人間/動物に対し投与される(優先度の増加する順)。dsRNA(例えば、毒性を阻害する短鎖dsRNAまたは遺伝子をサイレンシングする短鎖または長鎖dsRNA)をコードするベクターの動物への投与としては、典型的には100mg〜300mg、10mg〜100mg、1mg〜10mg、500μg〜1mg、または50μg〜500μgの間のdsRNA発現ベクターまたはコンストラクトが90〜150ポンドの人間/動物に対し投与される(優先度の増加する順)。投薬量は動物の体重に基づき調整されてもよい。ある実施形態において、約1〜10mg/kgまたは約2〜2.5mg/kgが投与される。臨床医学の当業者により所定の実験を通じて決定されるとき、他の投薬量が使用されてもよい。
【0133】
無傷動物、例えばHBVおよび/またはHCVに感染したヒト被験者における投与としては、1mg〜100mgの間、典型的には1mg〜10mgの間、10ng〜50μgの間、50ng〜100ngの間、または100ng〜5μgの間の1個またはそれ以上のdsRNAまたはdsRNAエフェクター分子をコードするDNAが使用される。望ましい実施形態において、およそ10μgのDNAまたは5μgのdsRNAが動物に投与される。望ましい実施形態において、非経口投与用医薬組成物は、本発明のプラスミドdsRNA発現コンストラクト10mg(ある製剤においてはコレステリルスペルミンなどの然るべきトランスフェクション促進剤またはコレステリルスペルミン/トリラクトシルスペルミンの混合物と複合体形成される)を標準食塩注射、D5W、D5%/0.45%NaCl、D5%/0.2%NaCl等の注入用の好適な無菌賦形剤25ml中に含むよう調製されるとともに、超音波により誘導される針穿刺または同様の技術をもって5〜10分にわたり腹腔内注入される。投与は周期的に、必要に応じて例えば毎週または毎月、反復されてもよい。本発明の方法に関して、細胞または動物へのdsRNAをコードするdsRNAまたはDNAの投与が、特定の投与様式、投薬量、または投薬頻度に限定されることは意図されない。本発明は、遺伝子発現を阻害するのに適した用量を提供し、疾患を予防し、または疾患を処置するのに十分な全ての投薬様式を考慮する。
【0134】
所望であれば、短鎖dsRNAは、さもなければ細胞毒性を誘発すると予期され得るdsRNA(例えばさらに長鎖のdsRNA)の外因的送達の前、最中、または後に送達される。2003年4月28日出願の米国特許出願公開第10/425,006号明細書、「Methods of Silencing Genes Without Inducing Toxicity」,Pachukの教示を参照されたい。
【0135】
世界的疾患発生およびウイルス変異性に関する本発明の治療利点
C型肝炎ウイルスゲノム、およびより少ないが有意な程度のB型肝炎ウイルスゲノムの突然変異性は、これらのウイルス媒介物に対する核酸ベース治療の設計への課題の提示として上記されている。本発明者らは、元来世界中に幅広く散在する地理的地域からの何千ものヒトウイルス分離株に由来する、何千もの個体のHCVおよびHBV配列を綿密にアラインメントしてきた。そうすることで本発明は、単独で、およびHCVおよび/またはHBVのゲノムの最小変異可能領域を標的とするdsRNAエフェクター分子中の組合せで利用される好ましい配列を同定および特定した。
【0136】
これに対する二重の理論的根拠、第一には患者のHBVまたはHCVへの感染の経過中に、疾患の経過中所与の患者中でウイルスが変異したときでさえ、確実に本発明の治療がウイルスに対し強力であり続けるであろう点が上記で考察されてきた。しかしながら、dsRNAベースの治療応用の設計用の高度保存配列を送達および使用するためのこの理論的根拠の第二点目は、これもまた本発明の治療用dsRNAエフェクター分子、特にHBVおよび/またはHCVに対するdsRNAエフェクター分子において高度保存配列の組合せを利用する本発明の方法および組成物が、かかる因子に基づくウイルス変異体群の顕在化として知られる世界中様々な異なる祖先、遺伝子構成、および地理的分布に由来する個体中に存在するウイルス感染を処置できるであろう確実性を増加させることである。このように、本発明の治療有用性および新規性の重要な特徴は、好ましい配列および実施形態の導出の方法にあり、単純に、任意の特定のHCVまたはHBVdsRNA配列が研究室実験において、すなわち、世界中のHBVおよび/またはHCVウイルスの幅広い多様性を必ずしも反映しない細胞系または動物モデルにおいて、さらには感染経過にわたり特別に感染した個体中において、1個または数個の選ばれたウイルス分離株(またはそれらと同種のレプリコン)のウイルス複製を阻害できるという実証にあるのではない。
【0137】
例えば、B型肝炎ウイルスは4種の表面抗原の亜型、すなわちadw、ayw、adrおよびayrを有する。ラミブジンが慢性B型肝炎の有効な治療と考えられる一方、HBV耐性の最近の研究は、亜型aywと比較して、亜型adwにおける20倍の耐性増加を実証した。B Zollner et al. 「20-fold Increase in Risk of Lamivudine [Epivir HBV] Resistance in Hepatitis B Virus Subtype adw」;The Lancet,2001; 357: 934-935。かかる従来の抗ウイルス剤と対照的に、かかる地理的遺伝的変異体にわたって高度に保存されるHBVおよび/またはHCV配列を利用する本発明のdsRNA薬剤(例えば、本発明のdsRNAエフェクター分子および発現コンストラクト、特に本明細書に教示されるとおりの組合せで使用される時)は、極めて有利な抗ウイルス活性を示すと期待される。
【0138】
同様に、HCVもまた、広い範囲の地理的に散在するウイルス遺伝子型、亜型、擬似種を、以下の現在一般的な遺伝子型および亜型の大域的パターンを伴い有することで知られる:
1a−北米および南米で最も見られる:オーストラリアでも一般的
1b−ヨーロッパおよびアジアで最も見られる。
【0139】
2a−日本および中国で最も一般的な遺伝子型2である。
【0140】
2b−米国および北欧で最も一般的な遺伝子型2である。
【0141】
2c−西欧および南欧で最も一般的な遺伝子型2。
【0142】
3a−ここオーストラリア(症例の40%)および南アジアで極めて蔓延。
【0143】
4a−エジプトで極めて蔓延
4c−中央アフリカで極めて蔓延
5a−南アフリカのみで極めて蔓延
6a−香港、マカオおよびベトナムに限定されている
7aおよび7b−タイで一般的
8a、8bおよび9a−ベトナムで蔓延
10aおよび11a−インドネシアで見られる
従って、本発明の高度保存配列は、1a、1b、2a、2b、および2cを含め、これらの世界中に散在するHCV遺伝子型および亜型の全てではないがほとんどの間で保存されると期待され、例えばdsRNAエフェクター分子、特にその組合せ、およびかかるdsRNAの発現能を有するdsRNA発現ベクターとして利用される時、極めて有効な治療薬と考えられる。
【0144】
出願人は具体的に、全ての引用文献の内容全体を本開示中に組み込む。さらに、量、濃度、または他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値のリストのいずれかとして与えられる時、これは、範囲が個別に開示されるか否かに関わらず、任意の範囲上限または好ましい上限値と任意の範囲下限または好ましい下限値との任意の対から形成される具体的に開示する全ての範囲として理解されるべきである。数値の範囲が本明細書に列挙される場合、別段に述べない限り、範囲はその端点、および範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図される。本発明のスコープが範囲を定義する時に列挙される特定の値に限定されることは意図されない。
【実施例】
【0145】
実施例
以下の実施例は実例としてのみ提供される。本開示内で説明される全ての参考文献は参照によりその全体が具体的に本明細書に組み込まれる。
【0146】
実施例1
複製コンピテント細胞培養モデルにおけるHBV複製および発現のサイレンシング
細胞培養モデルの簡単な説明:Huh7細胞系などのヒト肝由来細胞系は、全てのウイルスRNAの転写能および感染性ウイルスの産生能を有する末端重複ウイルスゲノムからなるHBVの感染性分子クローンをトランスフェクトされる[1〜3]。これらの研究に使用されるレプリコンはGenBank受託V01460に求められるウイルス配列に由来する。肝実質細胞への内部移行および核局在化に続き、数個のウイルスプロモーター由来の感染性HBVプラスミドの転写がHBV複製を反映する事象のカスケードを開始することが示されている。これらの事象としては、転写されたウイルスmRNAの翻訳、転写されたプレゲノムRNAのコア粒子へのパッケージング、プレゲノムRNAの逆転写、およびビリオンおよびHBsAg(B型肝炎表面抗原)粒子のトランスフェクト細胞の培地への組織化および分泌が挙げられる。このトランスフェクションモデルは感染した肝細胞内でのHBV複製のほとんどの態様を再現するとともに、それゆえHBV発現および複製のサイレンシングを調べるための優れた細胞培養モデルである。
【0147】
このモデルを使用して、細胞がHBVの感染性分子クローンおよび様々なeiRNAコンストラクト(dsRNA発現コンストラクト)をコトランスフェクトされた。次に細胞は、下記に記載されるとおりHBV発現および複製の欠損についてモニタされた。本実験において使用されるベクターおよびコードされたRNAについての詳細は本実施例の末尾に提供される。
【0148】
実験1:
以下は、GenBank(登録商標)受託番号V01460由来の配列をコードするeiRNAベクター(dsRNA発現ベクター)を使用して実施された実験の例である。これらの記載されたeiRNAベクター中のHBV配列は本明細書中で別記されるとおり同定される高度保存配列であったが、siRNAとしての活性もまた示した(Pachuk, C.,「Methods and Constructs for Evaluation of RNAi targets and Effector Molecules」,PCT/US第2004/005065号明細書、2004年2月25日出願を参照)。本実験用に用いられた特定のeiRNAバックボーンベクターは、コードされたRNAの発現を駆動するためのU6プロモーターを含む専用ベクターであった。各ベクターは1個の短鎖ヘアピンRNA(shRNA)のみをコードした。shRNAコード配列にはRNApolIII終結配列が続いた。U6プロモーター、RNApolIII終結シグナル、およびコードされたshRNAの配列は全て実施例の末尾に示される。U6プロモーターおよびRNApolIII終結シグナルを含む同様のベクターは、ウィスコンシン州マディソン(Madison,Wis.)のプロメガ社(Promega,Inc.)製の「siLentGene−2 Cloning Systems」ベクターのように市販されている。当業者はまた本明細書に提供される情報に従いそれらを作成することもできる。他の発現およびプロモーター系、特に、U6ではなく、例えばH1プロモーターまたは7SKプロモーターであるRNApolIIIプロモーターを伴うこれらのベクターを使用しても同様の結果がまた得られるであろうことが期待される。
【0149】
実験手順:トランスフェクション
RPMI−1640培地中で培養されたHuh7細胞が密度3×10
5細胞/ウェルで6ウェルプレートに播種された。全てのトランスフェクションは細胞播種の翌日に、リポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)(インビトロジェン(InVitrogen)、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,Cal.))を使用して製造者の指示に従い実施された。本実験において、細胞は500ngの感染性HBVプラスミドayw亜型(「pHBV2」)(GenBank(登録商標)受託番号V01460)および500ng、300ng、250ng、120ng、100ng、50ng、または10ngのeiRNAコンストラクトをトランスフェクトされた。DNAは不活性プラスミドDNAのpGL3−ベーシック(Basic)(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン(Madison Wis.))をトランスフェクションにおけるDNA総量が2.5μgとなる量で含むことにより2.5μgで一定/トランスフェクションが保たれた。例えば、500ngのHBV−DNAおよび500ngのeiRNAコンストラクトを受け取るトランスフェクションにおいて、1.5μgのpGL3がトランスフェクションに添加された。トランスフェクションに先立って、培地が細胞から除去され、かつ該細胞はOpti−MEM(登録商標)(インビトロジェン・ライフ・テクノロジーズ(InVitrogen Life Technologies)、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,Cal.))で洗浄された。次に800μgのOpti−MEM(登録商標)が細胞の各ウェルに添加され、トランスフェクション混合物の添加が続いた。トランスフェクション後17〜19時間で、トランスフェクション混合物およびOpti−MEM(登録商標)が細胞から除去され、かつ2mLの培地/培養ウェルと交換された。トランスフェクションから3、6、および10日後、培地は細胞から除去され、かつ−70℃で貯蔵された。培地は、3および6日目に2mLの新鮮培地と交換された。全てのトランスフェクションは重複して行われた。2組の対照トランスフェクションもまた実施された:HBV−DNA単独(500ngのHBV−DNAに加えて2μgのpGL3)およびeiRNAコンストラクトを伴うHBV−DNA(500ngのHBV−DNA、1μgの対照eiRNAコンストラクト、および1.0μgのpGL3DNA)。
【0150】
HBV発現の欠損に関する細胞のモニタリング
トランスフェクションに続き、細胞がHBV発現および複製の欠損または低下についてHBsAg分泌を測定することによりモニタされた。細胞はトランスフェクト細胞の培地(および培地対照)を、トランスフェクション後3、6、10日でアッセイすることによりモニタされた。アボット・ラボラトリーズ(Abbott Labs)(イリノイ州アボット・パーク(Abbott Park,Ill.))から市販されているAuszyme(登録商標)ELISAが表面Ag(sAg)を検出するため製造者の指示事項に従い使用された。表面Agは、ウイルス複製だけでなく、トランスフェクトされた感染性HBVクローン中およびインビボでの感染中に産生されるHBVcccDNAからのRNAポリメラーゼIIにより開始される表面Agシストロンの転写にも関連することから、sAgが測定された。表面Ag合成はHBV複製の不在下においても有害な影響が続くことから、ウイルス複製だけでなくsAgの複製非依存的合成も下方制御することが重要である。
【0151】
結果:
本実施例の末尾に記載されるHBV特異的eiRNAコンストラクトをトランスフェクトされた細胞は全て、対照に比べsAgレベルの減少を誘発した。阻害レベルは、表2〜8に見られるデータに対応する添付
図2〜8に示される。788〜808および807〜827と同定される配列のみが、用量500ngで表面Agレベルをそれぞれ30%および50%低下させたことに留意されたい。これらはsAgmRNAを標的としない唯2つのeiRNAである;その代わりにこれらは3.1KbのHBVmRNAを標的とするとともに、それゆえsAgレベルを間接的に低減する。これらの他のHBV−RNAが標的とされる時観測されるsAgの30%〜50%の低減は、これらのeiRNAコンストラクトが効果的であることを強く示唆するものと考えられる。本実験ではHBV特異的eiRNAが使用された。
【0152】
eiRNAベクターは表1に列挙されるHBV配列をコードする。配列はGenBank(登録商標)受託番号V01460上のそれらの地図座標とともに示される。表の最右部分には配列番号があり、これらの配列はその範囲内に位置する。コードされたRNAの配列は5’GGTCGAC(それ自体は重要でないが、使用される特定のベクターのポリリンカー配列に由来する配列)であり、その後に第1のセンスまたはアンチセンスHBV配列、その後にループ配列(表1の下線箇所)、その後に第1のHBV配列の相補体である第2のHBV配列が続く。ループ構造は固定的な配列または長さである必要はないとともに、我々はeiRNAコンストラクトの機能に何ら有意な影響を及ぼさない数本のループ配列を使用したことに留意されたい。第2のHBV配列の後には、RNApolIIIの終結シグナルとして機能するT残基の一続き、例えば1、2、3、またはそれ以上のTが続く。
【0153】
【表1】
【0154】
転写されたRNA構造の図が
図9に示される。配列番号13はU6プロモーターのヌクレオチド配列である。RNApolIIIターミネーターのヌクレオチド配列:5’−TTTTT−3’。表1のHBVセキトープ(それらのそれぞれの相補配列なしおよび「ヘアピン」またはステム−ループdsRNAエフェクター分子に利用される「ループ」またはリンカー配列なし)が下表1Aに示される。かかる各HBVセキトープが、その相補配列と共に、場合により本明細書で教示されるとおりの然るべきループまたはリンカー配列と共に、本発明のdsRNAエフェクター分子(例えば、デュプレックスdsRNAまたはヘアピンdsRNAエフェクター分子、またはdsRNA発現ベクター内にコードされるもの)に利用されてもよい。一態様において、複数の(例えば2、3、4、5、6、またはそれ以上の)かかるdsRNA短鎖ヘアピンエフェクター分子は単一発現ベクター、例えばプラスミド発現ベクター内に、各々異なるプロモーター、例えばポリメラーゼIIIプロモーターの制御下で、本明細書中で別記されるとおり、コードされる。
【0155】
【表2】
【0156】
表およびグラフ.
HBsAgが上記に記載されるとおり測定されるとともに表2〜8のデータに対応する
図2〜8にプロットされた。eiRNAコンストラクト量はeiRNAコンストラクト名の後に括弧書きで示されるとともにμg量である。例えば、2791(0.5)は、0.5μgまたは500ngのeiRNAコンストラクト2791〜2811(表1を参照)がトランスフェクションに使用されたことを意味する。対照と比べた阻害割合もまた下表に示されるとともに、これは10日目の測定について特異的である。1299が500ngで評価された本実施例における第4番目のデータセットは、10日目に評価が行われなかったため、3および6日目の2時点のみを有することに留意されたい。本実験の阻害割合は6日目のデータについて示された。データは、sAgを測定するため使用されるオーザイム(Auszyme)ELISAアッセイキットの製造者により記載されるとおり収集された未加工ODデータとして示される。2791〜2811についての50ngのデータおよび1907〜1927についての10ngのデータは示されていない。これらの用量の各々は、HBsAg発現を対照と比べ約50%阻害した。
【0157】
【表3】
【0158】
【表4】
【0159】
【表5】
【0160】
【表6】
【0161】
【表7】
【0162】
【表8】
【0163】
【表9】
【0164】
実験2:
背景:2個のeiRNAコンストラクトの添加の相加効果を評価するため、同一の細胞培養モデルが使用された。本実験においては2791〜2811および2919〜2939が評価された。これらは2種の用量で個別に、すなわち10ngおよび25ngで、および10ng(5ngの2791〜2811に加え5ngの2919〜2939)と25ng(12.5ngの2791〜2811および12.5ngの2919〜2939)との組合せで評価された。相加効果が、例えば、25ngの2791〜2811で認められる阻害の半分に加え25ngの2919〜2939で認められる阻害の半分が、25ngの組合せ用量に認められる阻害とほぼ等しくなる時、観測される。これは、25ng用量の単一eiRNAコンストラクトの使用では阻害が得られないかもしれないとき、2個またはそれ以上のeiRNA配列の使用がウイルス逃避変異体の生成を予防するにおいて非常に重要であることから、重要である。
【0165】
実験手順:トランスフェクション
Huh7細胞が密度3×10
5細胞/ウェルで6ウェルプレートに播種された。全てのトランスフェクションは細胞播種の翌日に、リポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)(インビトロジェン(InVitrogen))を使用して製造者の指示に従い実施された。本実験において、細胞は500ngの感染性HBVプラスミドayw亜型(GenBank(登録商標)受託番号V01460)および25ngまたは10ngの2種の別個のeiRNAコンストラクトまたは総量25ngまたは10ngのこれら2種のeiRNAコンストラクトの組合せをトランスフェクトされた。DNAは不活性プラスミドDNAのpGL3をトランスフェクションにおけるDNA総量が2.5μgとなる量で含むことにより2.5μgで一定/トランスフェクションが保たれた。例えば、500ngのHBV−DNAおよび10ngのeiRNAコンストラクトを受け取るトランスフェクションにおいて、次に1.99μgのpLUCがトランスフェクションに添加された。トランスフェクションに先立って、培地が細胞から除去され、かつ該細胞はOpti−MEM(登録商標)(インビトロジェン・ライフ・テクノロジーズ(InVitrogen Life Technologies))で洗浄された。次に800μgのOpti−MEM(登録商標)が細胞の各ウェルに添加され、トランスフェクション混合物の添加が続いた。トランスフェクション後17〜19時間で、トランスフェクション混合物およびOpti−MEM(登録商標)が細胞から除去され、かつ2mLの培地/培養ウェルと交換された。トランスフェクションから4、8、および11日後、培地は細胞から除去され、かつ−70℃で貯蔵された。培地は、4および8日目に2mLの新鮮培地と交換された。全てのトランスフェクションは重複して行われた。2組の対照トランスフェクションもまた実施された:HBV−DNA単独(500ngのHBV−DNAに加え2μgのpGL3)、および対照eiRNAコンストラクトを伴うHBV−DNA(500ngのHBV−DNA、500ngの対照eiRNAコンストラクトおよび1.5μgのpGL3.DNA)。
【0166】
結果:
結果が表9に示されるとともに、対応するグラフが
図10に見られる。2791〜2811および2919〜2939の組合せは、2791〜2811または2919〜2939単独の投与と少なくとも等しい効果を示した。同一のおよび/または異なるHBV遺伝子由来の異なるHBV配列を照準とする2個またはそれ以上のdsRNAを組み合わせることにより同様の利点が見られるであろうことが期待される。
【0167】
【表10】
【0168】
実験3および4
マウスモデルにおけるHBVのサイレンシング
要約:確認実験1に記載される2個のeiRNAベクターが、マウスモデル中のHBVレプリコンをサイレンシングするその能力について評価された。これらのベクターは2791〜2811および1907〜1927ベクターであった。双方のベクターが、細胞培養モデル中でそれらがサイレンシングしたのと同程度までマウスモデル中のHBVをサイレンシングすることが認められた。他の治療法によるマウス中の本HBVレプリコンをサイレンシングする能力はヒト有効性の予測因子であることが実証されている[4]。
【0169】
動物モデルの背景:
チンパンジーはヒトHBV感染力を研究する唯一の動物モデルを表す。しかしながら、HBV発現および複製が生じるマウスモデルは利用可能である。本モデルは、標的とされるウイルス複製に対するだけでなく抗原のRT非依存性発現に対する抗HBV治療剤の評価にも貴重とされてきた。本モデルでは、複製コンピテントHBVはエピソームHBV−DNAから一時的に発現される。このモデルは、流体力学的送達により複製コンピテントHBV−DNAをマウス肝に導入することにより作成される[1]。
【0170】
以下の実験の目的は、細胞培養物とマウスモデルとの間にHBV配列に関連する有効性の差異があるとは予測されていなかったものの、実験1でマウスモデル中での有効性について評価されたHBV特異的配列をコードするベクターのうち2個を試験することであった。本実験は、複製コンピテントHBVaywプラスミド(実施例1、確認実験1)をエフェクターHBV特異的eiRNA発現ベクターとともに同時送達する方法として流体力学的送達を利用した。流体力学的送達は、結果として核酸の肝への有効な送達となるため、これらの一次研究に理想的である[5]。
【0171】
実験
流体力学的送達の研究:実験3.
全ての動物は流体力学的に7.5μgの感染性HBVaywプラスミド(確認実験1に記載される)を注入された。肝実質細胞への内部移行および核局在化に続き、数個のウイルスプロモーター由来HBVaywプラスミドの転写がHBV複製を反映する事象のカスケードを開始することが示された[1]。これらの事象としては、転写されたウイルスmRNAの翻訳、転写されたプレゲノムRNAのコア粒子へのパッケージング、プレゲノムRNAの逆転写、およびビリオンおよびHBsAg粒子の注入された動物の血清への組織化および分泌が挙げられる。実験動物は10μgの2791〜2811を同時注入された。対照動物の第2群が無関係なeiRNAコンストラクト10μgを注入された。全ての動物はまた、2.5μgのGFPレポータープラスミド(クロンテック(Clontech)、カリフォルニア州パロ・アルト(Palo Alto,Cal.))も同時注入された。正規化するための対照として供される注入されたマウスの肝中でのGFPmRNAの発現は、マウスモデルトランスフェクション有効性に反する結果となる。動物に注入された全DNAは、不活性フィラーDNAのpGL3(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン(Madison,Wis.))を含むことにより20μgで一定に保たれた。全てのDNAが、Yang et al.[1]に記載される方法に従い調合および注入された。各群5動物であった。DNAおよび各動物に注入されるDNA量が表10に示される。
【0172】
【表11】
【0173】
流体力学的送達後のマウス中でのHBVaywプラスミド複製の動態を詳述する、チザリ(Chisari)博士研究室の公表結果[1]に基づき、分析時点が選択された。血清が注入後1、2、3、および4日目にHBsAgの存在についてアッセイされた。アッセイはHBV複製の細胞培養モデルについて記載されたとおり実施された。肝試料中のHBV−RNAの存在がチザリ(Chisari)博士研究室で開発された手順[1]を使用して注入後2日目にノーザンブロット分析により確認され、かつ従来技術または標準技術を使用するsAgコード配列を含むHBV−RNAについての定量RT−PCRアッセイを使用して内因性GAPDH−RNAレベルおよびGFPmRNAレベルに対し正規化された。RT−PCRはノーザンブロット分析より定量的であるとともにノーザンブロット分析の有するより大きなダイナミックウィンドウを有する。
【0174】
ノーザンブロット分析によるHBV−RNAおよびHBsAgの双方の下方制御が2791〜2811を注入されたマウスに認められた。
図11を参照されたい。また、図示されないが、定量RT−PCRは対照マウスの肝中に867個のHBV−RNA分子および2791〜2811処置マウス中に15倍の下方制御となるHBV−RNAの57個の分子の存在を実証した。
【0175】
【表12】
【0176】
【表13】
【0177】
流体力学的送達の研究:実験4
本実験は、2個のeiRNAコンストラクト、2791〜2811および1907〜1927が評価されたことを除き、実施例1の実験3と同様であった。本実験において、HBsAgが本明細書に既述されたアッセイを使用して1および4日目に測定された。
【0178】
【表14】
【0179】
B型肝炎RNA産生および複製を低減するshRNAの産生用4−プロモーターRNAポ
リメラーゼIIIベース発現コンストラクト
2005年8月23日出願のPCT/US第05/29976号明細書にさらに詳細に記載されるとおり、4個のポリメラーゼIIIプロモーター短鎖ヘアピンdsRNA発現カセットを含むプラスミド発現ベクターのpHB4が構築された。各発現カセットは、短鎖ヘアピンdsRNAをコードする配列に操作可能に連結されるポリメラーゼIIIプロモーター、およびポリメラーゼIII終結配列を含んだ。ポリメラーゼIIIプロモーターはU6、7SK、および7SK−4Aと命名される2個の7SK配列変異プロモーターの複製物であった。各短鎖ヘアピンdsRNA配列は、本明細書に教示されるとおりのHBV高度保存配列と相同および相補的な二本鎖ステム領域を含んでなった。4個のdsRNAエフェクター分子は、それぞれ配列番号62、配列番号59、配列番号55、および配列番号54を含んでなる、配列番号49、配列番号23、配列番号19、および配列番号18の配列を含んでなった。しかしながら、PCT/US第05/29976号明細書の実施例1にさらに詳細に記載されるとおり、dsRNAヘアピンエフェクター分子をコードする配列は制限部位でプラスミド発現ベクターの発現カセットに挿入され、結果的に事実上最終転写の5’末端に付加される数個の追加的なヌクレオチドとなった。予想されたdsRNAヘアピンを含む転写は、実際には追加的な5’および3’配列を含む:6塩基からなる5’リーダー(例えば、SalIまたはHindIIIまたは他の選ばれた認識配列)の後にdsRNAヘアピン配列が、その後に転写終結中に組み込まれる通常2個(1、2、3、または4個)のU残基である短い3’末端Uトラクトが続く。これらのdsRNAヘアピンに隣接する5’および3’転写配列の長さおよび構成の差異が、dsRNA介在性サイレンシングをもたらすためのdsRNAヘアピンの能力に不利に影響したようには思われなかったが、これは、合成dsRNAデュプレックスとは異なり、内因的に発現されたdsRNAヘアピンコンストラクトが、例えば約19〜29bpの間のdsRNA「ステム」の長さ、一本鎖ループの長さおよび構成、追加的な短い5’および/または3’配列の存在または不在といった数々の点で変化するにも関わらず、有効であることを示唆する。
【0180】
PCT/US第05/29976号明細書の実施例1および2004年9月10日公表の国際公開第04/076629号パンフレット,「Methods and Constructs for Evaluation of RNAi Targets a
nd Effector Molecules」に教示されるとおりのルシフェラーゼアッセイは、4個全てのプロモーター/shRNAカセットがベクターおよびアッセイ可能な基質を供給された細胞中でそれらの標的配列をサイレンシングする活性を有したことを示した。IC50値は、1個のプロモーター/shRNAカセットベクターから4個のプロモーター/shRNAカセットを含むpHB4発現ベクターに増加させた時、実質的に減少した。IC50値はまた、各shRNA分子の相対力価および転写レベルによっても影響され得たであろうとともにベクターのみの濃度との単純な関係は反映しなかったが、これは細胞に入り4個のコードされたdsRNA分子を発現した後は事実上4個の薬物として振る舞った。言い換えれば、増加した力価は、ベクターにより生成されたより多量のshRNA転写総量だけでなく、各shRNAが標的ウイルスRNA分子の分解を介してsAgまたはeAg産生の低減に効果を及ぼす必要がある個々の力価もまた反映した。shRNAカセットの連続的添加は、明らかに定量的様式でベクターの力価を増加させ、さらにはHBV標的の4箇所の異なる部位を阻害することによりHBV標的に対する薬理学的活性を増加させた。しかしながら、複数の個々の抗ウイルスdsRNAヘアピン分子を発現する複数のポリメラーゼIII発現コンストラクトの能力は、「力価」の関連する増加のためだけでなく、それ自体有意な値であることを認識することは重要である。抗ウイルス有効性レベルが高い場合、各追加的dsRNA分子に伴い認められるウイルス阻害における増加性定量的増加は、ウイルス耐性の発達に対し高い耐性であるという固有の利点から、事実上多剤レジメンであるものを送達するコンストラクトの能力よりもそれ自体は重要性が低くなり得る。
【0181】
HBVおよび/またはHCV高度保存ポリヌクレオチド配列を標的とする複数のdsRNAエフェクター分子を送達するよう設計される発現ベクターは、ウイルス感染細胞に送達される時、ウイルス核酸産物を直接破壊する固有の能力を有する。さらに、これらの複数のプロモーターベクター(これはウイルスゲノムの異なる部分を標的とする複数の異なる阻害性短鎖ヘアピンdsRNAを発現する)の設計および企図に固有のおよび不可欠であるのは、複数の異なるウイルスアンタゴニストを同時に生成する特性である。アンタゴニスト(短鎖ヘアピンdsRNAエフェクター分子)はウイルスゲノム中の異なるゲノム配列を標的とする。ウイルスを無能力化するにはこれらのアンタゴニストのうち1個でおそらく十分であろう。しかしながら、重複性は、ウイルス配列が1個のアンタゴニストを不活性にするべく突然変異した場合に、2、3、4個、またはそれ以上の追加的なアンタゴニストが利用可能であるような「バックアップ」機序として役立つ。加えて、ウイルスゲノム中の複数部位を標的とすることにより、疾患病態において異なる役割を果たすウイルスの異なるDNAまたはRNA産物が同時に攻撃され得る。
【0182】
例えばB型肝炎の場合、一実施形態において、本発明は次の配列より選択される4、5個、またはそれ以上のshRNA分子および本明細書に教示されるとおりの他のHBV高度保存配列を使用する:例えば、「799」(配列番号49);「1907」(配列番号19);「2791」(配列番号23);「1737」(配列番号18)、「1991」(配列番号22)、「1943」(配列番号21)。本明細書に開示される他のHBV保存配列は、例えば「799」、「1907」、「2791」、「1737」、「1991」、または「1943」の全てまたは一部を含んでなる19〜29ヌクレオチドの配列を含め、複数のポリメラーゼIII発現ベクターを含む複数のプロモーターを含んでなる発現ベクターにより発現されるべきdsRNAヘアピンエフェクター分子への包接のため選択されてもよい。HBV遺伝子発現の性質および重複転写産物により、複数のRNA転写を標的とすること、ならびに1個より多いウイルスタンパク質の複製および発現を妨げるであろう複製可能なウイルスの鋳型が可能となる。shRNA分子の1つ「1737」(配列番号18)は、Xタンパク質(HbX)として知られる産物をコードするRNAを独自に無能力化できる。Xタンパク質が肝癌の定着および/または維持に役割を果たすという強力な証拠が生物医学文献に存在する。ある程度ウイルス複製を阻害できる既存の薬物は、ウイルスゲノムの組み込まれたまたは他の残存するコピーまたは部分の細胞を排除できないため、感染性HBVの「治癒した」患者であっても、これらの薬物はHbXの産生を止められず、それゆえ休眠HbXにより媒介されるいかなる癌の発生率も直接低減できない。本発明の複数の抗HBVdsRNAヘアピン発現コンストラクトは、ウイルスの複製と、炎症性傷害を引き起こし、結果として特徴的だが完全には解明されていない機序を介して肝細胞癌を促進すると考えられている肝炎および他のHbXなどをもたらすものもある全てのウイルスタンパク質の発現との双方を攻撃できる。本明細書に教示される原理は、Hbxおよび任意の他の残存HBV抗原に対するdsRNAを発現する、特にかかる「感染後」患者を処置するべく調整された本発明のコンストラクトを設計するために使用され得ることが認められている。
【0183】
本発明のHBV標的配列が、多数の異なるHBVの分離株(株)のなかからそれらの高度な保存性または同一性を呈示するべく明示的に選ばれたが、参照目的のため、同定された配列、例えばshRNA配列がHBV分離株AYWに再マッピングされ得る。それゆえ、本発明のdsRNAおよびdsRNA発現コンストラクトは、HBV−AYWおよび関連ウイルス株に対してのみならず、広く分散した地理的地域における感染ヒト集団中で遭遇するHBV株の全てとはいえないがほぼ全てに対しても有効であると期待されることが認識されるべきである。
【0184】
実施例2
C型肝炎−RNAi治療展開のための配列
実験1
簡単な紹介:
C型肝炎ウイルス(HCV)は非A、非B型輸血後肝炎の第一原因であるとともに、世界の2億を超える肝炎症例を占める。HCVゲノムは高度の配列変異性を有する。50種を超える亜型を含んでなる6種の主要遺伝子型があるとともに擬似種により特徴付けられる有意な異種性が患者に見出されてきた。組換えポリメラーゼまたは細胞ベースサブゲノムレプリコン系を使用することにより、HCV複製の理解には大きな進展がなされてきた。レプリコン細胞系を使用することにより、HCV特異的siRNAはHCVタンパク質発現およびRNA複製を抑制できることが実証されている。5’NTRおよび構造的と非構造的との双方の遺伝子の配列が成功裏に標的とされている。3’NTR配列はその高度に保存された性質によりsiRNAベース治療にとって極めて魅力的な標的となる。しかしながら、3’NTR使用の実現可能性を調査する研究は何ら行われていない。我々はここに、サブゲノムレプリコン系においてHCVタンパク質発現を阻害できる数個のsiRNAの設計および試験を報告する。外因的に合成されたHCV特異的siRNAが下記に記載されるとおりHCVレプリコン細胞系にトランスフェクトされた。
【0185】
細胞培養および培地:
肝細胞腫Huh7細胞中のHCVレプリコンが、10%ウシ胎仔血清(インビトロジェン(Invitrogen))、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、1%非必須アミノ酸および0.5mg/mLジェネティシン含有ダルベッコ変法イーグル培地(「DMEM」)(インビトロジェン(Invitrogen))中で培養された。細胞は開裂に先立ち75%培養密度まで成長させた。
【0186】
ウエスタンブロット分析:
レプリコン細胞由来の全細胞ライセートが1×LDS緩衝液(インビトロジェン(Invitrogen))中のレプリコン細胞から回収された。ライセートは、10%トリスグリシンポリアクリルアミドゲル(インビトロジェン(Invitrogen))での電気泳動前に、ベータメルカプトエタノールの存在下において90℃で5分間加熱された。タンパク質はPVDF(インビトロジェン(Invitrogen))膜に移された。移した後、膜は0.5%Tween−20含有PBS(PBS−Tween)で1回リンスされ、かつ5%脱脂乳含有PBS−Tween中に1時間固定された。PBS−Tweenでの洗浄後、膜は1:1500希釈のα−NS5A一次抗体(チェン・リュウ(Chen Liu)博士よりの供与)とともに1時間、室温にてインキュベートされた。1:5000希釈のHRP結合αマウスIgG二次抗体(アマシャム(Amersham))を伴うインキュベーションに先立ち、ブロットがPBS−Tween20中で洗浄された。二次抗体のインキュベーションに続き、ブロットは再洗浄され、かつECL(アマシャム(Amersham))で製造者のプロトコルに従い処置された。
【0187】
ノーザンブロット:
全細胞RNAがRneasy(登録商標)キット(キアゲン(Qiagen))を使用することにより抽出された。ノーザンブロット分析がグオ(Guo)らのプロトコルに従い行われた。簡潔には、5μgの全RNAが2.2Mホルムアルデヒド含有1.0%アガロースゲルを介して電気泳動され、ナイロン膜に移され、かつUV架橋(ストラタジーン(Stratagene))により固定化された。50%脱イオンホルムアミド、5×SSC(750mM塩化ナトリウム、750mMクエン酸ナトリウム)、デンハート液、0.02Mリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.2%ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)、100μgの変性剪断サケ精子DNA/ml、および100μgの酵母RNA/ml含有溶液中において58℃で16時間、α−[
32P]CTP標識ネオマイシンRNAを使用してハイブリダイゼーションが実行された。膜は、2×SSC/0.1%SDS中において室温で30分間、1回洗浄され、かつ0.1×SSC/0.1%SDS中において68℃で30分間、2回洗浄された。膜はX線フィルムに曝露された。
【0188】
siRNAのレプリコン細胞へのトランスフェクション:
siRNAのレプリコン細胞へのトランスフェクションのため、リポフェクタミン(Lipofectamine)(登録商標)2000試薬(インビトロジェン(Invitrogen))がユーザーマニュアルに従い使用された。簡潔には、トランスフェクション前日に0.5mLのDMEM中の2×10
4個の細胞が24ウェルプレートに播種された。指示されたsiRNA量が50μLのOptiMEM中に希釈され、かつ希釈リポフェクタミン(Lipofectamine)(登録商標)2000試薬(Optimem50μL中1μL)と混合された。混合物は細胞単層上に加えられる前に、室温で20分間インキュベートされた。トランスフェクション後48〜72時間で、細胞はPBS中で洗浄され、かつ100μLのSDS試料緩衝液中に溶解された。
【0189】
【表15】
【0190】
3’UTRを標的とする上記で表14に同定されるHCV配列(各場合において、最初の21塩基が本発明のHCV保存配列を構成し、続く8塩基の「アダプター」配列「CCTGTCTC」は合成に使用されるアンビオン(Ambion)キットから付加されるが、これはdsRNAエフェクター分子中には現れない)を含んでなる数個の短鎖デュプレックスdsRNA、HCV−NS5B遺伝子を標的とするsiRNA#12(陽性対照)、同定されたHCVコアsiRNA(陽性対照)、および同定されたラミンsiRNA(陰性対照)が、カタログ番号1620のサイレンサーsiRNA作成キット(アンビオン社(Ambion Inc.)、テキサス州オースティン(Austin,Tex.))を使用して合成された。DNAオリゴヌクレオチドがIDT(アイオワ州コーラルヴィル(Coralville,Iowa))により合成された。
【0191】
【表16】
【0192】
3’UTRを標的とする上記で表14に同定されるHCV配列を含んでなる数個のsiRNA、HCV−NS5B遺伝子を標的とするsiRNA#12(陽性対照)、同定されたHCVコアsiRNA(陽性対照)、および同定されたラミンsiRNA(陰性対照)が、カタログ番号1620のサイレンサーsiRNA作成キット(アンビオン社(Ambion Inc.)、テキサス州オースティン(Austin,Tex.))を使用して合成された。DNAオリゴヌクレオチドがIDT(アイオワ州コーラルヴィル(Coralville,Iowa))により合成された。
【0193】
対照siRNA
1.HCVコア(陽性対照):配列番号45
2.#12、表14に示され、HCV−NS5B遺伝子を標的とする、これも陽性対照
3.ラミン配列(陰性対照):配列番号46
3種のsiRNAが対照として使用された:陰性対照用に細胞遺伝子ラミンを標的とするsiRNA、陽性対照としてHCVのコア配列を標的とするsiRNA、陽性対照としてHCV−NS5B遺伝子を標的とするsiRNA。2種の各siRNA濃度(9および20ピコモル)が使用され、かつ結果がsiRNA無しのトランスフェクションと比較された。従って、
図13のウエスタンブロットは、0、9、および20ピコモルの同定されたsiRNAを表す。siRNA#22、32、42、62、および72が、HCV−NS5Aタンパク質発現の抑制において著しく活性であった。おそらくは、コアの陽性対照siRNAに伴い以前得られた結果に基づけば、HCVRNAレベルもまた減少している。試験された濃度では数個のsiRNAが最小限の影響を有したが、より高い濃度で評価されるべきである。これらとしては、#12(標的NS5B)、#102、#52、および#82が挙げられる。
【0194】
実験2
実験2が、下表15に記載される配列(およびそれらの相補体)を含んでなるsiRNAのR1〜R8がトランスフェクションに使用されたことを除き、RNAi治療展開のためのC型肝炎配列の実験1に記載されるとおり実施された。ここで実施されたウエスタンブロットアッセイは、実施例2の実験1に記載されるとおりであった。陽性対照として使用される対照HCVコアsiRNAは前出のHCV実験1に記載されるsiRNAである。0、3および9ピコモルのレベルでトランスフェクトされた対照「コア」siRNAを除く全てのsiRNAが0、9および20ピコモルの濃度でトランスフェクトされた。R1、R2、R3、R5、R7、およびR8全てが、
図14のウエスタンブロットに見られるとおりHCVの有意な阻害を示した。
【0195】
【表17】
【0196】
評価される全てのsiRNAはHCVゲノムの3’UTRに位置するとともにHCV遺伝子型および擬似種の中に保存されている。配列番号27は、時に「X」領域と称される、この101ntのHCV3’UTR配列を表す。
【0197】
実施例3
複製コンピテント細胞培養モデルにおけるHBV複製および発現のサイレンシング
細胞培養モデルの簡単な説明:
Huh7細胞系などのヒト肝由来の細胞系が、全てのウイルスRNAの転写能および感染性ウイルスの産生能を有する末端重複ウイルスゲノムで構成されるHBVの感染分子クローンをトランスフェクトされる[1〜3]。これらの研究で使用されるレプリコンはGenBank受託番号V01460およびJ02203に認められるウイルス配列に由来する。肝実質細胞への内部移行および核局在化に続き、数個のウイルスプロモーター由来感染性HBVプラスミドの転写がHBV複製を反映する事象のカスケードを開始することが示されている。これらの事象としては、転写されたウイルスmRNAの翻訳、転写されたプレゲノムRNAのコア粒子へのパッケージング、プレゲノムRNAの逆転写、およびビリオンおよびHBsAg(B型肝炎表面抗原)粒子のトランスフェクト細胞の培地への組織化および分泌が挙げられる。このトランスフェクションモデルは感染した肝細胞内のHBV複製のほとんどの態様を再現するとともに、それゆえHBV発現および複製のサイレンシングを調べるための優れた細胞培養モデルである。
【0198】
本モデルにおいて、細胞はHBVの感染性分子クローンおよび評価されるべき個々のエフェクターRNAコンストラクトをコトランスフェクトされる。次に細胞はHBV発現および複製の欠損について下記に記載されるとおりモニタされる。
【0199】
以下は配列番号1および配列番号5に由来する配列をコードするeiRNAベクターを使用する実験例である。本実験用の特定のeiRNAベクターは、T7RNAポリメラーゼベースであり(例えば、T7dsRNA発現系に関して国際公開第0063364号パンフレット、ならびに2002年7月31日出願の米国仮特許出願第60/399,998P号明細書および2002年10月18日出願の米国仮特許出願第60/419,532号明細書の教示を参照)、かつヘアピンRNA構造(特に望ましいのは、例えば、2002年7月31日出願の米国仮特許出願第60/399,998P号明細書および2003年7月31日出願のPCT/US第2003/024028号明細書に教示されるとおりの、dsRNAヘアピンを形成するべくRNA依存性RNAポリメラーゼにより伸長される能力を有する部分ヘアピンである「折れ曲がり」ヘアピンコンストラクト、ならびに、ミスマッチ領域を伴うヘアピンである「アダリー」構造ヘアピン(例えば、マルチヘアピン長鎖dsRNAベクターおよびマルチ短鎖ヘアピン構造)、および2002年10月18日出願の米国仮特許出願第60/419,532号明細書および2003年10月20日出願のPCT/US第2003/033466号明細書に教示されるとおりのマルチエピトープコンストラクトである)をコードする。他の発現およびプロモーター系、例えば、上記に記載されるとおりの、および/または代替のdsRNA構造(すなわち、デュプレックス)をコードするベクターを使用して、同様の結果が得られるであろうことが期待される。
【0200】
実験手順:トランスフェクション.
Huh7細胞が、トランスフェクションの時点で80〜90%の間の培養密度であるよう6ウェルプレートに播種される。全てのトランスフェクションはリポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)(インビトロジェン(Invitrogen))を使用して製造者の指示に従い実施される。本実験において、細胞は、50ngの感染性HBVプラスミド、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミド(下記プラスミドの説明)、600ngの配列番号1由来の配列からなるヘアピンRNAをコードするeiRNAベクター(下述)および600ngの配列番号5由来の配列からなるヘアピンRNAをコードするeiRNAベクター(下述)をトランスフェクトされる。対照細胞は、50ngのHBVプラスミドおよび1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミドをトランスフェクトされる。不活性フィラーDNAであるpGL3ベーシック(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン(Madison Wis.))が、DNA総量/トランスフェクションが2.5μgDNAとなるよう全てのトランスフェクションに添加される。
【0201】
HBV発現の欠損についての細胞モニタリング
トランスフェクションに続き、細胞は、HBsAg分泌およびDNA含有ウイルス粒子分泌を測定することにより、HBVの発現および複製における欠損または低減についてモニタされる。細胞は、dsRNA投与後2日目に始めるとともにその後隔日で3週間の期間、トランスフェクト細胞の培地をアッセイすることによりモニタされる。B型肝炎表面抗原(HBsAg)を検出するため、アボット・ラボラトリーズ(Abbott Labs)(イリノイ州アボット・パーク(Abbott Park,Ill))から市販されているオーザイム(Auszyme)ELISAが使用される。HBsAgはウイルス複製のみならずトランスフェクトされた感染性HBVクローン中のRNAポリメラーゼIIにより開始される表面Agシストロンの転写にも関係することから、HBsAgが測定される。HBsAg合成はHBV複製の不在下においても続行できることから、ウイルス複製のみならずHBsAgの複製非依存的合成も下方制御することが重要である。キャプシド形成されたHBVゲノムDNAを含むビリオン粒子の分泌もまた測定される。キャプシド形成されたDNAを含むビリオン粒子の欠損はHBV複製の欠損の指標である。ビリオン分泌の分析は、裸と未成熟コア粒子と外被感染性HBVビリオンとの間を識別する技術に関わる[6]。簡潔には、培養細胞の培地由来のペレット状ウイルス粒子が、プロテイナーゼK消化に供されコアタンパク質を分解する。プロテイナーゼKの不活性化後、試料はRQ1DNアーゼ(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン(Madison Wis.))とともにインキュベートされコア粒子から遊離されるDNAを分解する。試料はSDSの存在下でプロテイナーゼKにより再び消化されDNアーゼを不活性化するとともに感染性外被ビリオン粒子を破壊および分解する。次にDNAはフェノール/クロロホルム抽出およびエタノール沈殿により精製される。HBV特異的DNAがゲル電気泳動により検出され、サザンブロット分析が続く。
【0202】
結果は望ましくは、HBVプラスミドおよびT7RNAポリメラーゼ発現プラスミドのみをトランスフェクトされる細胞に比べ、HBVプラスミド、T7RNAポリメラーゼ発現プラスミドおよびeiRNAコンストラクトをトランスフェクトされる細胞の培地中では、HBsAgおよびウイルス粒子分泌の双方において70〜95%の減少を示すであろう。
【0203】
実験に使用されるベクター
T7RNAポリメラーゼ遺伝子の配列
配列番号47は、pCEP4(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,Cal.))などの哺乳動物発現ベクターにクローニングされるT7RNAポリメラーゼ遺伝子を表す。クローニングは当業者により容易に行われ得る。当業者はまた、コザック配列を伴うリーダー配列がT7RNAポリメラーゼ遺伝子から上流に直接クローニングされる必要があることも承知しているであろう。
【0204】
配列番号1由来のRNAヘアピンをコードするeiRNAベクター
ベクターは上記に記載されるとおりT7ベースである。インサートは、GenBank(登録商標)受託番号V01460およびJ02203の座標3004〜2950(約55bp)から位置付けられる配列からなる単分子ヘアピンをコードする。ヘアピンの一領域は配列のセンスバージョンをコードするとともにヘアピンの第2の領域は該配列のアンチセンスバージョンをコードする。ヘアピンは当業者により容易に設計および作製され得る。
【0205】
配列番号5由来のRNAヘアピンをコードするeiRNAベクター
ベクターは上記に記載されるとおりT7ベースである。インサートは、GenBank(登録商標)受託番号V01460およびJ02203の座標730〜786から位置付けられる配列からなる単分子ヘアピンをコードする。ヘアピンは配列番号1由来配列をコードするヘアピンについて記載されるとおり設計される。
【0206】
実験1
マウスモデルの理論的根拠:
チンパンジーはヒトHBV感染力を研究するための唯一の動物モデルを表す。しかしながら、ヒトHBV発現および複製が生じるマウスモデルは利用可能である。本モデルは、抗HBV治療剤の評価に貴重とされてきたとともにヒトにおけるこれらの薬剤の有効性についての予測因子であることが示されてきた[4]。これらのモデルの第1はトランスジェニックマウスモデルであり,HBVゲノムまたは選択されたHBV遺伝子が発現される[7、8]。HBVはマウスゲノムに組み込まれるため,これらの動物はウイルス複製用のみならず抗原のRT非依存性発現用としても役立つ。複製コンピテントHBVがエピソームHBV−DNAから一時的に発現される同様のモデルが存在する。本モデルは複製コンピテントHBV−DNAをマウス肝に流体力学的送達により導入することにより作成される[1]。トランスジェニック動物と異なり、これらのマウスはHBV抗原に対し免疫寛容性ではないとともにHBVトランスフェクト肝実質細胞の免疫介在性クリアランスが研究され得る。
【0207】
ウッドチャック肝炎(WHBV)およびアヒル肝炎(DHBV)の研究用にはそれぞれウッドチャックおよびアヒルモデルが存在するものの、我々は幾つかの理由からこれらのモデルを使用しないことを選んだ。1)ヒトHBVはこれらのモデルでは研究できない。我々は究極的にはヒトHBVの発現を下方制御することに関心があるため,これらのモデルの使用はある時点でヒトHBVに特異的なベクターおよび/またはRNAの再設計および評価が必要になるであろう。2)マウスはアイソジェニックであるとともに、それゆえ系内での遺伝子的変動によるノイズが生じない。3)ヒトHBVと異なり、これらそれぞれの動物モデルと平行して研究され得る検証済みのWHBV/DHBV細胞培養モデルがない。
【0208】
下記に記載される実験は、複製コンピテントHBVaywプラスミドを様々なエフェクターdsRNA(eiRNA)発現ベクターで同時送達する方法として流体力学的送達を利用する。流体力学的送達は、結果として核酸の肝への有効な送達となるため、本実験に理想的である[5]。同一製剤中でのdsRNAエフェクタープラスミドと複製コンピテントHBVプラスミドとの組合せは、双方のプラスミドが同一細胞により摂取される可能性が増加する。発現エフェクターdsRNAは複製のHBVプラスミドを有する細胞の大多数に存在するため、観測結果は、送達効率の差異よりもむしろエフェクタープラスミドの能力に起因し得る。本実験は特定のeiRNAが感染肝中で有効であることのみを実証する。製剤および送達は本実施例によっては対応されない。eiRNAベクターの製剤、投薬および送達は、トランスジェニックマウスが使用される例において可能である。
【0209】
実験手順:
対照B10.D2マウスが、全てのウイルスRNA転写能および感染性ウイルス産生能を有する末端重複ウイルスゲノムからなるHBV(ayw亜型)の感染性分子クローンを流体力学的に注入される[1、2、3]。肝実質細胞への内部移行および核局在化に続き、数個のウイルスプロモーター由来HBVaywプラスミドの転写がHBV複製を反映する事象のカスケードを開始することが示されている[1]。これらの事象としては、転写されたウイルスmRNAの翻訳、転写されたプレゲノムRNAのコア粒子へのパッケージング、プレゲノムRNAの逆転写、およびビリオンおよびHBsAg粒子の注入された動物の血清への組織化および分泌が挙げられる。動物はHBVレプリコンプラスミドの4種の用量(1μg、3μg、5μg、および10μg)を注入される。これらの用量は、流体力学的送達後のレポータープラスミドの検出可能な発現を取り除く能力を有する非飽和用量を表すため、選ばれる。動物は、各群の動物が10〜19μg用量の特定のエフェクターコンストラクトを総DNA用量が20μgとなるよう受け取るように、エフェクターdsRNA発現ベクター(eiRNA)を同時注入される。例えば、3μg用量のHBVレプリコンを受け取るマウスにおいては、全20μgの注入DNAのために、選ばれたeiRNAベクター17μgが注入される。それゆえこの用量は、使用されるHBVプラスミドの用量に依存する。対照動物は、eiRNAベクターではなくHBVレプリコンを注入される。代わりに対照マウスは、製剤中DNA総量が20μgとなるよう不活性フィラーDNAであるpGL3ベーシック(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン(Madison,WI.))を同時注入される。本研究のeiRNAベクターは、例えばアンビオン社(Ambion,Inc.)、米国テキサス州オースティン(Austin,TX,USA.)の、U6ベース発現プラスミドである。これらのベクターは、配列番号1および配列番号4由来の短鎖ヘアピンRNAをコードする。これらのベクターによりコードされる正確な配列は下記に記載される。ベクターは等量(重量による)で同時注入される。本明細書中で別記されるとおりの他の発現およびプロモーター系および/または代替の構造(すなわち、デュプレックス)をコードするベクターを使用して同様の結果が得られるであろうことが期待される。
【0210】
配列番号1由来の配列をコードするU6ベースeiRNAベクターの説明:ベクターは受託番号V01460およびJ02203の座標2905〜2929に位置する配列を含むヘアピンをコードする(すなわち、ヘアピンは、ループ構造TTCAAAAGAにより隔てられる、この配列のセンスおよびアンチセンスバージョンを含む)。U6ベースベクター配列の説明は、Lee et al.[9]に見出され得る。本実験において使用される第2のeiRNAベクターは、配列番号4由来のヘアピンをコードするとともに受託番号V01460およびJ02203の座標1215〜1239に位置する配列をコードする。
【0211】
肝試料は注入後1日目に注入された動物から採取されるとともにHBV−RNAの存在について分析される。この時点は、流体力学的送達後のマウス中のHBVaywプラスミド複製の動態を詳述するとともに流体力学的送達後1日目に肝中にピークRNA発現が生じることを実証するチザリ(Chisari)博士研究室の公表結果に基づき選択された[1]。肝試料中のHBV−RNAの存在はノーザンブロット分析により確認される。肝組織は、HBV−RNA発現の下方制御について評価されるであろう。加えて,HBVsAgおよびDNA含有ウイルス粒子の測定用に4日目マウスから血清が収集されるであろう。アッセイは細胞培養レプリコン実験(実施例3)について、およびYang et al.[1]に記載されるとおりであろう。各ベクターおよび対照群は、各組が収集時点に対応する2組の動物からなるであろう。各群5動物である。
【0212】
結果:
HBVレプリコンおよびeiRNAコンストラクトを注入されるマウスは、対照動物と比較したとき、HBV特異的RNA、およびHBsAgならびにHBVウイルス粒子が減少しているであろう。個々の動物において、減少は約70%から100%近くまでの幅をとるであろう。
【0213】
実験2
トランスジェニックマウス研究:背景
我々はチザリ(Chisari)博士研究室で開発されるHBVトランスジェニックマウスモデルを使用しているであろう[8]。これらのマウスは多量のHBVDNAを複製するとともにヒト有効性の予測因子である抗ウイルス選別としてのそれらの有用性が実証されてきた[4]。これらの動物はまた、抗原のHBV組込み体介在性発現用モデルである点においても理想的であるとともに、それゆえウイルス複製用のみならず抗原のRT非依存性発現用モデルとしても役立ち得る。我々はウイルス複製のみならず組込み体介在性抗原発現も同様に標的とすることに関心があるため、これは重要である。
【0214】
これらの実験は、臨床的に関連性のある核酸送達方法を使用して動物にエフェクタープラスミドが投与される点において、流体力学的送達実験とは異なる。本モデルにおける有効性は、マウス肝実質細胞へのエフェクタープラスミドの有効な送達を実証する。
【0215】
実験
参考文献[8]に記載されるマウスは、流体力学的送達の例に記載されるeiRNAベクターを含む製剤を静脈内注入されるであろう。これらは、配列番号1および配列番号4由来の配列を含むヘアピンをコードするU6ベースeiRNAベクターである。
【0216】
注入されるDNAの製剤
DNAは、PCT/US第03/14288号明細書、「Methods for Delivery of Nucleic Acids」,Satishchandran,2003年5月6日出願に記載されるとおりトリラクトシルスペルミンおよびコレステリルスペルミンで調合される。簡潔には、3種の製剤が作製され、全て電荷比1.2(負電荷に対する正電荷)を使用する。しかしながら、電荷比0.8〜1.2の間の製剤は全て有効性を示すと期待されることは留意されるべきである。各プラスミド用DNA出発原液は4mg/mlである。2種のプラスミド原液が、各プラスミドが2mg/mlとなるよう共に等量で混合される。このプラスミド混合液は最終製剤に使用される。製剤はPCT/US第03/14288号明細書(上記)に記載のとおりである:製剤A)35%トリラクトシルスペルミン、65%コレステリルスペルミン、製剤B)50%トリラクトシルスペルミン、50%コレステリルスペルミンおよび製剤C)80%トリラクトシルスペルミン、20%コレステリルスペルミン。以上で結果として生じる全製剤は各プラスミドを1mg/mlで含む。
【0217】
マウスは100μlの調合DNAを静脈内注入された。マウスのある群は製剤Aを受け、第2群は製剤Bを受け、および第3群は製剤Cを受ける。対照マウスの3群が同様に、対照DNAであるpGL3ベーシック(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン(Madison WI))を含む製剤の、製剤D、EおよびFを注入される。注入は4日間連続して1日1回実行される。1〜3日目の注入は効果的であるが、4日目の注入プロトコルに伴いより強い有効性が見られる。
【0218】
投与に続き、HBV−RNAおよびHBsAgの血清レベルおよびウイルス粒子を含むDNAが、最初の注入後5および9日目に定量化されるであろう。全ての分析は流体力学的送達についての記載のとおりであろう。
【0219】
結果:
HBV特異的RNAレベル、HBsAgおよびウイルス含有DNA粒子は製剤A、BおよびC群における対照に比べ減少しているであろう。
【0220】
実施例#4
複製コンピテント細胞培養モデルにおけるHBV複製および発現サイレンシング
細胞培養モデルの簡単な説明:
Huh7細胞系などのヒト肝由来の細胞系が、全てのウイルスRNAの転写能および感染性ウイルスの産生能を有する末端重複ウイルスゲノムからなるHBVの感染性分子クローンをトランスフェクトされる[1〜3]。これらの研究に使用されるレプリコンはGenBank(登録商標)受託番号AF090840に認められるウイルス配列に由来する。肝実質細胞への内部移行および核局在化に続き、数個のウイルスプロモーター由来感染性HBVプラスミドの転写がHBV複製を反映する事象のカスケードを開始することが示されている。これらの事象としては、転写されたウイルスmRNAの翻訳、転写されたプレゲノムRNAのコア粒子へのパッケージング、プレゲノムRNAの逆転写、およびビリオンおよびHBsAg粒子のトランスフェクト細胞の培地への組織化および分泌が挙げられる。このトランスフェクションモデルは感染した肝細胞内でのHBV複製のほとんどの態様を再現するとともに、それゆえHBV発現および複製のサイレンシングを調べるための優れた細胞培養モデルである。
【0221】
本モデルにおいて、細胞はHBVの感染性分子クローンおよびeiRNAコンストラクトをコトランスフェクトされた。次に細胞はHBV発現および複製の欠損について下記に記載されるとおりモニタされた。
【0222】
以下は配列番号1および配列番号2の双方に由来する配列をコードするeiRNAベクターを使用して実施された実験例である。本実験に使用される特定のeiRNAベクターは、T7RNAポリメラーゼベースであるとともに約650bpのデュプレックスRNAをコードする(例えば、2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレットを参照)。本明細書中で別記されるとおりの他の発現およびプロモーター系、および/または代替の構造(すなわち、デュプレックス)をコードするベクターを使用して、同様の結果が得られるであろうことが期待される。
【0223】
実験手順:トランスフェクション
Huh7細胞が、トランスフェクションの時点で80〜90%の間の培養密度であるよう6ウェルプレートに播種された。全てのトランスフェクションはリポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)(インビトロジェン(InVitrogen))を使用して製造者の指示に従い実施された。本実験において、細胞は、A)50ngの感染性HBVプラスミドadw亜型、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミド(実施例3におけるプラスミドの説明)、および1.5μgのHBV特異的eiRNAベクター(下記に記載される)、B)50ngの感染性HBVプラスミド、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミドおよび1.5μgの無関係なdsRNA発現ベクター、C)125ngの感染性HBVプラスミド、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミドおよび1.4μgのHBV特異的eiRNAベクター、およびD)125ngの感染性HBVプラスミド、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミドおよび1.4μgの無関係なdsRNA発現ベクター、をトランスフェクトされた。全てのトランスフェクションは重複して行われた。本実験のトランスフェクションBおよびDは対照として機能する。トランスフェクション後4日目、培地がトランスフェクト細胞から取り除かれ、かつHBsAgの存在についてアッセイされた(下記参照)。非トランスフェクト細胞からの培地もまた背景対照としてアッセイされた。
【0224】
HBV発現の欠損に関する細胞のモニタリング.
トランスフェクションに続き、細胞はHBV発現および複製の欠損または低下について、HBsAg分泌を測定することによりモニタされた。細胞はトランスフェクト細胞の培地(および培地対照)を、dsRNA投与後4日目にアッセイすることによりモニタされた。B型肝炎表面抗原(HBsAg)を検出するため、アボット・ラボラトリーズ(Abbott Labs)(イリノイ州アボット・パーク(Abbott Park,IL))から市販されているオーザイム(Auszyme)ELISAが使用された。HBsAgはウイルス複製だけでなく、トランスフェクトされた感染性HBVクローン中のRNAポリメラーゼIIにより開始される表面Agシストロンの転写にも関連することから、HBsAgが測定された。HBsAg合成はHBV複製の不在下でも続行できることから、ウイルス複製だけでなくHBsAgの複製非依存的合成も下方制御することが重要である。
【0225】
結果:
HBV特異的eiRNAコンストラクトをトランスフェクトされた細胞は、対照トランスフェクションに比べ4日目の時点でHBsAgに82〜93%の減少を示した。
【0226】
本実験に使用されるHBV特異的eiRNA
eiRNAベクターはGenBank(登録商標)受託番号AF090840の座標2027〜2674に位置するdsRNAをコードする。それゆえ配列は配列番号1および配列番号2の双方に由来する配列を含む。より具体的には、配列は配列番号2の全ておよび配列番号1由来の134bpを含む。
【0227】
実施例5
細胞培養レプリコンモデルにおけるHCVの下方制御
簡単な説明
本実験において、機能性HCVレプリコンを発現する細胞系が作成される。細胞系の作成はLohmann et al.[10]に詳述されるとおりである。本実験において、親細胞系としてHuh7細胞が使用されるが、理論上は任意のヒト肝実質細胞由来細胞系が使用され得る。次に細胞はHCV特異的eiRNAベクターをトランスフェクトされる。HCV特異的RNAの存在は、Lohmann et al.[10]に記載されるとおりeiRNAのトランスフェクション後3〜7日目でノーザンブロット分析により確認される。
【0228】
実験プロトコル:トランスフェクション
HCVレプリコンを発現するHuh7細胞が、トランスフェクションの時点で80〜90%の間の培養密度であるよう6ウェルプレートに播種される。全てのトランスフェクションはリポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)(インビトロジェン(InVitrogen))を使用して製造者の指示に従い実施される。本実験において、細胞は1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミド(実施例3に記載されるプラスミド)および配列番号11由来の配列を含んでなるヘアピンRNAをコードする1.5μgのT7ベースeiRNAベクター(実施例の末尾に記載されるベクター)をトランスフェクトされる。対照細胞は、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミドおよび実施例3に記載される1.5μgのHBV特異的(配列番号1に特異的)T7ベースeiRNAベクターをトランスフェクトされる。非トランスフェクトレプリコン発現HuhH7細胞は第2の対照として含まれる。各トランスフェクション混合は、10個のトランスフェクションが実施/混合される結果として全20個のトランスフェクション(各混合につき10個)となり得るように行われる。3、4、5、6、および7日目に、2個の細胞/各トランスフェクションのウェルが溶解されるとともに標準技術を使用してRNAが抽出される。試料はLohmann et al.[10]に記載されるとおりHCV特異的RNAの存在についてノーザンブロット分析により同時に分析される。
【0229】
結果:
HCV特異的eiRNAベクターをトランスフェクトされる細胞は、分析される毎時点において対照細胞に比べ減少したHCV特異的RNAを示すであろう。
【0230】
HCV特異的eiRNAベクター
eiRNAベクターはT7ベースであるとともにヘアピンRNAをコードする。ヘアピンの片側は配列番号48を含んでなる。
【0231】
この配列は後に9個のTのループ構造が続く。ヘアピンの第2の側はヘアピンの第1の側に相補的である配列を含む。当業者はヘアピンコンストラクトを容易に設計および作成し得る。注意:他のプロモーターにより駆動されるとともに他のタイプのRNA構造をコードする他のタイプのeiRNAベクターは同様の効果を有するであろうことが予想される。
【0232】
実施例#6
HBV/HCV同時注入処置
簡単な説明
本実施例において、HBVおよびHCVレプリコンの双方を複製している細胞が、HBVおよびHCVの双方に特異的なeiRNAをコードするeiRNAベクターを注入される。
【0233】
実験プロトコル:
HBVおよびHCVレプリコンの双方を含む細胞系の作成
初めにHuH7細胞が機能性HCVレプリコンを発現するよう操作される。細胞系の作成はLohmann et al.[10]に記載されるとおりである。細胞系が樹立された後、細胞は、実施例3および下記「細胞のトランスフェクション」項に記載されるとおり、感染性HBVレプリコンプラスミドをトランスフェクトされる。本実施例において、レプリコンはGenBank(登録商標)受託番号V01460およびJ02203に求められるウイルス配列に由来する。理論的には、初めにHBVレプリコンを安定的に発現する細胞系を作成するとともに、次に該細胞系を使用して同様にHCVレプリコンを発現する細胞系を作成することもまた可能である。HBVおよびHCVの双方を細胞に同時にトランスフェクトするとともにHBVおよびHCVレプリコンの双方を複製している細胞を選択および拡張することもまた可能である。
【0234】
細胞のトランスフェクション
本実施例において、HBVおよびHCVeiRNAは同一ベクター内の別個のシストロンによりコードされる。しかしながら、eiRNAが同一シストロン内でコードされるかまたは別個のベクターにより提供される場合には、同様の結果が期待される。本実施例において、各シストロンからの転写はT7RNAポリメラーゼプロモーターおよびT7RNAポリメラーゼにより駆動される。各プロモーターは後にヘアピンeiRNAが続き、その後に今度はT7ターミネーターが続く(
図1)。本実施例におけるシストロンは集中しているが、分散しているシストロンも使用できよう。これらのRNAを産生するため他の発現系(ウイルス性を含む)を使用できるであろうとともに、有効性に有意に影響を及ぼすことなしにこれらのRNAの発現を駆動するため、例えば本明細書中で別記されるとおりの、他のプロモーターもまた使用できるであろうことにも留意されるべきである。然るべき発現系およびプロモーターの選択は当該分野の技術の範囲内である。また、例えば本明細書中で別記されるとおり、他のeiRNA構造ならびに当該領域の文献に記載されるその他のものを発現できるであろう。本実施例において、HBVeiRNAベクターは配列番号1由来の配列をコードするとともにHCVeiRNAベクターは配列番号11由来の配列をコードする。ベクターインサートの説明は本実施例の末尾に位置する。
【0235】
Huh7細胞が、トランスフェクションの時点で80〜90%の間の培養密度であるよう6ウェルプレートに播種される。全てのトランスフェクションはリポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)(インビトロジェン(Invitrogen))を使用して製造者の指示に従い実施される。本実験において、細胞は、50ngの感染性HBVプラスミド、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミド(プラスミドの説明は実施例3にある)、600ngの配列番号1由来の配列からなるヘアピンRNAをコードするeiRNAベクター(下記および実施例3に記載される)、および600ngの配列番号11由来の配列からなるヘアピンRNAをコードするeiRNAベクター(下記に記載される)をトランスフェクトされる。対照細胞は、50ngのHBVプラスミドおよび1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミドをトランスフェクトされる。不活性フィラーDNAであるpGL3ベーシック(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン(Madison WI)が、DNA総量/トランスフェクションが2.5μgDNAになるよう全てのトランスフェクションに添加される。各トランスフェクション混合は、10個のトランスフェクションが実施/混合される結果として結果として全20個のトランスフェクション(各混合につき10個)となり得るように行われる。
【0236】
分析
トランスフェクションに続き、細胞はHBV発現および複製の欠損または低下について、HBsAg分泌およびDNA含有ウイルス粒子分泌を測定することによりモニタされる。細胞はトランスフェクト細胞の培地を、dsRNA投与後2日目から始めるとともにその後隔日で3週間の期間、アッセイすることによりモニタされる。B型肝炎表面抗原(HBsAg)を検出するため、アボット・ラボラトリーズ(Abbott Labs)(イリノイ州アボット・パーク(Abbott Park,IL))から市販されているオーザイム(Auszyme)ELISAが使用される。HBsAgはウイルス複製だけでなく、トランスフェクトされた感染性HBVクローン中のRNAポリメラーゼIIにより開始される表面Agシストロンの転写にも関連することから、HBsAgが測定された。HBsAg合成はHBV複製の不在下で続行できることから、ウイルス複製だけでなくHBsAgの複製非依存的合成も下方制御することが重要である。キャプシド形成されたHBVゲノムDNAを含むビリオン粒子の分泌もまた測定される。キャプシド形成されたDNAを含むビリオン粒子の欠損はHBV複製の欠損の指標である。ビリオン分泌の分析は、裸と未成熟コア粒子と外被感染性HBVビリオンとの間を識別する技術に関わる[6]。簡潔には、培養細胞の培地由来のペレット状ウイルス粒子が、プロテイナーゼK消化に供されコアタンパク質を分解する。プロテイナーゼKの不活性化後、試料はRQ1DNアーゼ(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン(Madison WI))とともにインキュベートされコア粒子から遊離されたDNAを分解する。試料はSDSの存在下でプロテイナーゼKにより再び消化されDNアーゼを不活性化するとともに感染性外被ビリオン粒子を破壊および分解する。次にDNAはフェノール/クロロホルム抽出により精製されるとともに沈殿される。HBV特異的DNAがゲル電気泳動により検出され、サザンブロット分析が続く。
【0237】
3、4、5、6および7日目に、2個の細胞/各トランスフェクションのウェル(実験用および対照用)が溶解されるとともに標準技術を使用してRNAが抽出される。試料はまた、Lohmann et al.[10]に記載されるとおりHCV特異的RNAの存在についてノーザンブロット分析により分析もされる。
【0238】
結果
HBV−HCV特異的eiRNAベクターをトランスフェクトされた細胞は、分析される毎時点において対照細胞に比べ減少したHCV特異的RNAレベルを示すであろう。加えて、HBsAgおよびHBVウイルス粒子のレベルもまた、対照トランスフェクションに比べ減少するであろう。
【0239】
HCV特異的eiRNA配列
eiRNAベクターはT7ベースであるとともにヘアピンRNAをコードする。ヘアピンの片側は配列番号48を含んでなる。
【0240】
この配列は後に9個のTのループ構造が続く。ヘアピンの第2の側はヘアピンの第1の側に相補的である配列を含む。当業者はヘアピンコンストラクトを容易に設計および作成し得る。注意:RNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む他のプロモーターにより主導されるとともに、様々なヘアピン構造を含む他のタイプのRNA構造をコードする他のタイプのeiRNAベクターは同様の効果を有するであろうことが予想される。特に望ましいのは、例えば、2002年7月31日出願の米国仮特許出願第60/399,998P号明細書および2003年7月31日出願のPCT/US第2003/024028号明細書に教示されるとおりの、dsRNAヘアピンを形成するべくRNA依存性RNAポリメラーゼにより伸長される能力を有する部分ヘアピンである「折れ曲がり」ヘアピンコンストラクト、ミスマッチ領域を伴うヘアピンである「アダリー」構造ヘアピン(例えば、マルチヘアピン長鎖dsRNAベクターおよびマルチ短鎖ヘアピン構造)、および2002年10月18日出願の米国仮特許出願第60/419,532号明細書および2003年10月20日出願のPCT/US第2003/033466号明細書に教示されるとおりのマルチエピトープコンストラクト、ならびに当業者に周知の他の多様なdsRNA構造である。
【0241】
HBV特異的eiRNA−配列番号1
ベクターは上記に記載されるとおりT7ベースである。インサートは、GenBank(登録商標)受託番号V01460およびJ02203の座標3004−2950(約55bp)から位置付けられる配列からなる単分子ヘアピンをコードする。ヘアピンの一領域は配列のセンスバージョンをコードするとともにヘアピンの第2の領域は配列のアンチセンスバージョンをコードする。ヘアピンは当業者により容易に設計および作製され得る。
【0242】
実施例#7
複数のプロモーターベクター中のHBV特異的eiRNAの組合せを使用する複製コンピテント細胞培養モデル(実施例1を参照)におけるHBV複製および発現サイレンシング
その教示が参照により本明細書に組み込まれる、2005年8月23日出願のPCT/US第05/29976号明細書および「Multiple RNA Pol III Promoter Expression Constructs」と題する米国仮特許出願(2004年8月23日出願の米国仮特許出願第60/603622号明細書、および2004年11月22日出願の同第60/629942号明細書)に開示されるとおり、表1に示される2本またはそれ以上の(好ましくは3、4、5、6本またはそれ以上の)shRNA配列および配列番号49が、個別の各shRNA用プロモーターの制御下において個別のシストロン内の同一プラスミドベクターにコードされ得る。配列番号49は:
【0243】
【化23】
【0244】
配列番号49はHBV保存領域を標的とするshRNA分子をコードするDNA配列のコード鎖を表す。上記配列の最初の21塩基は、HBVゲノムの位置799〜779位由来のHBVmRNAのセンス配列と同一の、AYW株である(GenBank(登録商標)受託番号V01460に与えられる相補鎖に従い番号付けされる)。この配列は後に、shRNAのループ部分を表す9塩基(すなわち、AGAGAACTT)が続き、その後に最初の21塩基と逆相補配列の21塩基が続く。(ループ配列は二本鎖「ステム」を形成する相補配列に結合することのみに供されるとともに、それゆえ長さおよびヌクレオチド配列におけるかなりの変動がループ領域内で許容されることは理解されるであろう)。好ましい実施形態において、このDNA配列は、好ましくは7SK、U6等のRNAポリメラーゼIIIプロモーターといったプロモーターの制御下において操作可能に然るべき発現ベクター中に配置されるであろう。結果として生じるRNA転写:
【0245】
【化24】
【0246】
は二本鎖構造の21塩基対を有するヘアピンまたはステム−ループ構造であることが想定されるであろう。
【0247】
分子生物学の当業者により一般的に用いられる方法を使用して、2個またはそれ以上の、好ましくは3個またはそれ以上の、より好ましくは4個またはそれ以上の、5個またはそれ以上の、または配列番号49、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号22、および配列番号23の全てをコードする単一ベクターが構築される。HBV標的のdsRNA介在性サイレンシングの医薬応用に特に好ましい実施形態は、個別のRNAポリメラーゼIIIプロモーターの制御下に、少なくとも配列番号19、配列番号23、および配列番号18、および場合により、配列番号49および/または配列番号21に対応するshRNAをコードする単一発現コンストラクトを含んでなる。かかるshRNA発現ベクターが有利には、幾つかの代替的適応および組合せにおいて、U6、7SK、およびH1プロモーターを含む、1個またはそれ以上のRNAポリメラーゼIIIプロモーターを利用してもよい。特に好ましいコンストラクトは、米国仮特許出願第60/603622号明細書および同第60/629942号明細書に教示されるとおりの1個またはそれ以上の7SKプロモーターを利用するであろう。本実施例はこのように、1個のベクターを1個のshRNAとともに同時に導入する代わりに出願人が複数のshRNAを発現する単一プラスミドコンストラクトを送達することを除き、実施例1の実験1と類似している。
【0248】
dsRNAサイレンシングの治療応用への本アプローチの利点は主に、経済性、単純性および各々がHBVゲノムの異なる部位を標的とする複数の異なるshRNAを含んでなる単一薬物体の協調された送達にある。ウイルスゲノムの複数の部位を同時に標的とする能力は、薬物耐性(ウイルス突然変異による)の広範な現象を臨床的に阻止する点において極めて有利であるとともに、単一送達剤中(本発明のプラスミドベクター)にこれらの異なる標的部位に対するdsRNA薬物体を組み合わせる能力によりこの概念的アプローチは独自に実行可能なものとなる。例えば化学合成または生体内発現を通じ、shRNA、例えば配列番号49、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号22、および配列番号23に対応するRNAが産生されてもよく、および単独および組合せで動物細胞中に送達されてもよいが、ある適用においては、動物細胞内で単一発現ベクター由来の複数のshRNAを発現することに有意な利点がある。本実施例において、複数のshRNA発現ベクターの効力は、同様のアッセイにより測定されたとき、実験1で使用された単一ベクターの任意の1個を有意に上回った。
【0249】
実施例#8
dsRNAエフェクター分子によるHCVの感染性ビリオンの阻害
HCV標的dsRNAのさらなる例として、表16に与えられる配列は、HCVの5’および3’非翻訳領域由来の高度保存コード領域セキトープを表す。各配列はコード鎖として記載されるとともに、本明細書中で別記されるとおりのループまたはリンカー配列によりその逆相補体に連結される表16に示されるとおりのコード配列を含んでなる短鎖ヘアピンdsRNAエフェクター分子の設計を具体化するため使用される。示される配列は、新規に利用可能な感染性ビリオン全体の産生能を有するHCV複製系においてインビトロで試験されたため(Wakita T,Pietschmann T,Kato T,Date T,Miyamoto M,Zhao Z,Murthy K,Habermann A,Krausslich HG,Mizokami M,Bartenschlager R,Liang TJ.,"Production of infectious hepatitis C virus in tissue culture from a cloned viral genome",Nat Med 2005 Jul;11(7):791-6;およびZhong J,Gastaminza P,Cheng G,Kapadia S,Kato T,Burton DR,Wieland SF,Uprichard SL,Wakita T,Chisari FV.,"Robust hepatitis C virus infection in vitro",Proc Natl Acad Sci USA 2005 Jun 28;102(26):9294-9に開示される)、抗ウイルス治療剤として特に効果的であると予想される。この系においては、自然感染と同じく、全てのウイルスタンパク質およびウイルス核酸配列が細胞中に存在する。完全性の低いレプリコン系においては、dsRNAサイレンシング分子は新規系におけるほど厳密には試験され得ない。1個またはそれ以上の(2、3、4、5個、またはそれ以上の)HCVセキトープおよびそれらの相補体が、デュプレックスdsRNAエフェクター分子、短鎖ヘアピンdsRNAエフェクター分子として利用され得る、および/またはヒト細胞または生物体を含む哺乳動物細胞のインビボでの発現能を有するdsRNA発現ベクターにコードされ得るであろうことが期待される。
【0250】
【表18】
【0251】
表17中の配列は、追加的な好ましい、ウイルス(配列番号11)の5’UTR由来の高度に保存された少なくとも19連続塩基対のHCV配列を表す。本発明のdsRNAエフェクター分子を生成するため、これらの配列が、それらの逆相補体および、場合により、ヘアピンdsRNAエフェクター分子を形成することが望ましい時には、配列をその逆相補体に結合するループまたはリンカー配列と併用される。前記5’UTR保存配列(配列番号11由来)を含んでなる1個またはそれ以上の二本鎖RNA分子は、例えば3’UTR(配列番号27由来)由来の1本またはそれ以上の高度保存配列および/または配列番号12由来の少なくとも19連続塩基対の配列を含む、1個またはそれ以上の本発明の他のdsRNAエフェクター分子との組合せで有利に使用されてもよい。
【0252】
【表19】
【0253】
参考文献
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