【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を実現するために、本発明による方法は、
a 基板の一方の側面上に存在する少なくとも1つの第1の導電性トラックと、この一方の側面とは反対側に位置した基板の他方の側面上に存在する少なくとも1つの第2の導電性トラックとを有する、基板を用意する段階と、
b この基板を貫通し、かつ、第1および第2のトラックの2つの互いに反対側の部分をそれぞれに貫通する、貫通穴を形成する段階と、
c 貫通穴が中を通して形成されている第1のトラックと、貫通穴が中を通して形成されている第2の穴との間に、上記貫通穴を経由して導電性接続部を形成する段階
とを含む。
【0008】
基板の2つの互いに反対側の側面上にそれぞれの導電性トラックが備えられている基板から開始することと、この2つのトラックの間にその貫通穴を経由して電気接続部が形成される貫通穴を形成することとによって、例えばRFIDの場合のように、様々な用途にとって必要であるかまたは少なくとも望ましいことがある、基板の両側面上に存在する2つの導電性トラックの間の導電性接続部が非常に効率的かつ確実に実現されることが可能である。
【0009】
本発明の枠組み内で使用される術語「導電性トラック」が、例えば銅ラミネート層のような完全なラミネート状の層を含むということが理解されるという意味で、広範囲の解釈が与えられるべきであるということに留意されたい。完璧を期するために、さらに、本発明の枠組み内において、第1のトラックおよび/または第2のトラックが必ずしも基板の自由表面上に位置している必要がないということ、および/または、これらのトラックが当初は同じ1つの基板に属していなければならなかったということに留意されたい。したがって、第1の導電性トラックと第2の導電性バックとを有する基板は、さらに、サンドイッチ状の電子部品の一部分を形成してもよく、および、このサンドイッチ状の電子部品は、その基板の間に、および、おそらくは、その基板の一方の側面上に、または、その基板の両方の側面上に存在する導電性トラックを有する、幾つかの基板を備える。本来的には、上記基板の一方の側面だけが導電性トラックを備えているだろうし、一方、こうした基板の積み重ねが、少なくとも1つの中間の基板が実際にはその2つの側面上に導電性トラックを備えている状態を生じさせる。
【0010】
貫通穴が、穿孔工具を使用して穿孔することによって形成されることが好ましい。例えば穴あけ技術または切断技術のような生産技術よりも優れている穿孔の利点が、本発明の枠組み内においてこれらの生産技術の使用を絶対的に排除することを望むことなしに、材料除去作業ではない上記穿孔の故に、導電性トラックの材料が、穿孔が開始する場所において特定の度合いで穴の中に擦り付けられる(smear out)ということである。この結果として、貫通穴の内側の少なくとも一部分が、上記穿孔作業の故にそれぞれの導電性トラックからの導電性材料によってすでに覆われている。
【0011】
この擦り付け(smearing out)は、貫通穴を経由した第1のトラックと第2のトラックとの間の導電性接続部が穿孔作業自体によってすでに実現されている程度にまでにさえ行われるだろう。
【0012】
したがって、本発明の特別な好ましい実施態様が、導電性接続部が貫通穴の穿孔によって得られるということによって特徴付けられている。これに関して大きな役割を果たす要素が、いずれの場合においても、基板の厚さと、導電性トラックの厚さである。これに加えて、穿孔工具の寸法および粗さと、材料とこの材料の表面粗さとが、大きな役割を果たす。
【0013】
別の非常に好ましい実施態様では、本発明による方法が、段階cを完遂するために、導電性材料が電解浴中で第1のトラックから貫通穴を経由して第2のトラックへと電解によって成長することを生じさせる段階を含む。この好ましい実施態様の重要な利点が、電解手段によって貫通穴を経由して第1のトラックと第2のトラックとの間に導電性接続部を実現することが可能であることと、この後で、および/または、これと同時に、このようにして電解手段によってすでに実現されている第1のトラックと第2のトラックとの間の導電性接続部を使用して、電解手段によって、同じ1つの加工処理段階の中で、少なくとも第2のトラックの厚さと必要に応じて第1のトラックの厚さとを増大させることが可能であることである。
【0014】
電解手段によって貫通穴を経由する導電性接続部を実現する時には、さらに、第1のトラックから遠方の基板の側面上にアノードが設けられており、かつ、第1のトラックがカソードに電気的に接触させられることが好ましい。このことは、アノードとカソードとの間の電界線(field line)が貫通穴を経由して延び、したがって、電解浴中の正イオンが電界線に沿って貫通穴を経由して第1のトラックに移動する傾向があり、この結果として、貫通穴内のそれぞれのイオンの付着の増大が引き起こされることが可能であり、かつ、したがってこのようにして導電性接続部が加速された速度で実現されることが可能であるということである。
【0015】
別の好ましい実施態様では、別のアノードが、第1のトラックが上に存在する基板の側面上に備えられている。このようにして、第1のトラックの厚さの電解成長が、貫通穴を経由した第1のトラックと第2のトラックとの間の導電性接続部の形成と同時に、第1のトラックの厚さの電解成長がすでに生じることが可能である。この方法の有用な実施の適切な具体例が、第1のトラックがコイルアンテナを形成するRFIDの大量生産である。第2のトラックは、この場合には、コイル端部の相互間の接続部を形成することが意図されている。
【0016】
あるいは、この代わりに、第1のトラックから遠方の誘電性基板の側面上だけにアノードが備えられていることが、他の用途のために非常に有利なことがある。これは、特に、本発明による方法によって生産される当該製品の最終的な機能性が特に第2のトラックの厚さに関係しており、かつ、第1のトラックの厚さが当該製品の機能性には関係していない場合に当てはまる。
【0017】
このような状態が、別の好ましい実施態様において、本発明による方法が、段階cの後に行われることになっている段階dの最中に第2のトラックの厚さを電解的に増大させる段階を含む場合に、いずれにせよ生じるだろう。この文脈において、第1のトラックは、いずれにせよ、第2のトラックが電解浴中の金属イオンを引き寄せることを可能にするように、カソードから第2のトラックへの導電性接続部を実現する機能を果たす。
【0018】
第1のトラックが原理的に後者の機能だけしか持たない場合には、段階dの後に行われることになっている段階である、基板から少なくとも部分的に第1のトラックを取り除く段階を含むことが好ましい。基板内の幾つかの貫通穴を経由して同じ第1のトラックに接続されている幾つかの第2のトラックが備えられている状態では、この第2のトラックは、第1のトラックを基板から取り除くことによって、こうして互いから電気的に絶縁されている。しかしながら、このようにして、第2のトラックから開始しかつ従来技術では(容易に)電解成長することが不可能である、小型RFIDのためのアンテナのような、例えば最大で25mm台の主寸法を有する比較的小さいパターンが、電解によって実現されることが可能である。
【0019】
電解浴が使用される場合には、カソードが電解浴中で第1のトラックと接触することが好ましい。このようにして、この接触は、電解浴の外側にカソードが配置されている場合に比較して、イオンの沈殿が望ましい場所の可能な限り近くで生じる。
【0020】
トラック上でカソードが引きずられてトラックを損傷させる可能性なしに、連続プロセスの形の大量生産を可能にするために、カソードが第1のトラックの上を転がることが好ましい。したがって、重要な追加の利点が、こうして1つのトラック上の固定された接触点という問題点が存在せず、したがってこのトラックの厚さの電解成長が原理的にこのトラックの全長に沿って可能であるということである。
【0021】
連続的な生産プロセスを可能にするために、電解浴を使用する時には、段階c中に電解浴の中を通して基板を移動させることが一般的に好ましい。
【0022】
上述した3つの好ましい実施態様の枠組み内では、米国特許出願US 2005/0189226 A1が参照され、この文献は、上述の実施態様に類似した形で、カソードが電解浴中で上記トラック上を転がるのと同時に、かつ、基板が電解浴中を通過させられるのと同時に、カソードを導電性トラックに接触させることを可能にする、方法と装置とを説明している。この米国特許出願は、フレキシブル基板の一方の側面上に存在する導電性トラックの厚さが電解手段によって増大させられることが可能である方法を説明するだけであり、この場合にカソードとアノードの両方は当該導電性トラックの側面上に存在する。上記米国特許出願の内容は、この特定の引用によって本明細書に組み入れられていると見なされるべきである。
【0023】
さらに、本発明による方法が、段階aを行うためにロールから基板を繰り出す段階と、段階cを行うために基板の繰り出し部分を電解浴の中を通して搬送する段階と、段階bを行うためにロールと電解浴との間の所定の位置において基板内に貫通穴を形成する段階とを含む。したがって、基板が電解浴の中を通過する形で搬送される直前に基板内に貫通穴が形成されるので、(大量)生産プロセスがより一層効率的に行われることが可能である。
【0024】
貫通穴を形成することに関して、この方法が、基板内に貫通穴が形成されている間に一時的に基板の繰り出し部分の搬送を局所的に中断する段階を含むことが好ましい。このことが、貫通穴が中に形成されることになっている基板の一部分が上記貫通穴の形成中に静止していると同時に、電解浴内に存在するその基板の下流部分が中断なしに電解浴の中を通過させられ続け、したがって電解浴が可能な限り均一に進行するだろうということを意味する。
【0025】
特に、基板の一方の側面上に存在する導電性材料の比較的に小さくかつ互いに絶縁されているパターンを生産するためには、この方法が、段階aを行うために、互いに電気的に絶縁されている少なくとも2つの第2の導電性トラックを有する基板を用意する段階と、段階bを行うために、一方における同じ1つの第1のトラックの2つの互いに反対側に位置した部分と、他方における2つの第2のトラックのそれぞれの2つの互いに反対側に位置した部分とを貫通して基板内に2つの貫通穴を形成する段階と、段階cを行うために、一方における2つの貫通穴が中を貫通してすでに形成されている第1のトラックと、他方におけるそれぞれの2つの貫通穴が中を貫通してすでに形成されている第2のトラックとの間の、2つの貫通穴を経由して、2つの導電性接続部を実現する段階とを含むことが好ましい。この場合における小さい導電性パターンの形成が、厚さが電解によって増大させられている第2のトラックから開始する。上述の好ましい実施態様においては、第1のトラックが、第2のトラックの厚さが電解プロセスによって増大させられ終わった後に、例えばエッチングまたは引っ掻きによって、基板から少なくとも部分的に取り除かれるので、当該の小さいパターンは互いに絶縁されることが可能である。
【0026】
さらに明確に述べると、上述の好ましい実施態様は、第2のトラックの主寸法が35mmより小さく、または、さらに好ましくは、25mmより小さい場合に,有利である。主寸法が25mmよりも小さい場合には、従来の電解によってトラックの層厚さを増大させることが実質的に不可能であり、一方、本発明の好ましい実施態様の利点は、最大で35mmの主寸法を使用する時にも得られる。
【0027】
さらに明確に述べると、RFIDと組み合わせて使用する場合には、本発明による方法が、段階bを行うために、それぞれに、同じ1つの第1のトラックの2つの互いに反対側に位置した部分と、同じ1つの第2のトラックの2つの互いに反対側に位置した部分との中を貫通して基板内に幾つかの貫通穴を形成する段階と、段階cを行うために、2つの貫通穴が中を通してすでに形成されている第1のトラックと、貫通穴が中を通してすでに形成されている第2のトラックとの間に、2つの貫通穴を経由して導電性接続部を形成する段階とを含むことが有利である。当該の部分がそれぞれのトラックの末端に位置していることが好ましい。
【0028】
貫通穴が基板の平面に対して垂直に方向配置されていることが好ましい。一方では、こうして貫通穴が最小の長さを有することが可能である。他方では、このことが、貫通穴の形成中に横方向の力が基板に作用せず、または、少なくとも作用する必要がないという利点を実現する。
【0029】
導電性接続部が貫通穴の壁に沿って延びることが好ましい。当該壁は、この場合に、その壁の上に保持するために、導電性接続部何かの材料のための要素として非常に適切に働くだろうし、したがって高信頼性の導電性接続部が生じさせられることが可能であり、および、原理的に、貫通穴の位置における基板の材料の変形がまったく生じることがない。
【0030】
さらに、この貫通穴は、第1のトラックおよび/または第2のトラックの周縁の内側を延びることが好ましい。このことが、一方における貫通穴と他方における第1のトラックおよび/または第2のトラックとの間の境界端縁を経由して導電性接続部を実現するために、この境界端縁を十分に使用することを可能にする。このようにして、一方における導電性接続部と他方における第1のトラックおよび/または第2のトラックとの間の接触が、一方における貫通穴および/または他方における第2のトラックの間の周縁境界線の全長に沿って生じさせられることが可能である。これに加えて、導電性接続部を実現するために基板上の第1のトラックおよび/または第2のトラックの外側の空間が使用されるということがない。
【0031】
貫通穴の中央軸線に対して垂直な2つの異なる方向で測定した貫通穴の寸法の間の比率が最大で2であることが好ましい。例えば正方形の穴がこの範囲内に含まれるだろうが、例えばWO 03/043394 A1に説明されている切れ目はこの範囲内には含まれないだろう。
【0032】
貫通穴が円形の横断面を有することが好ましい。鋭角の移行部分が存在しないので、このことは、導電性接続部の信頼性に関する有利な効果を有するだろうし、一方、これに加えて、円形の横断面を有する比較的単純な工具が貫通穴を形成するために使用されるだろう。
【0033】
特に、この枠組み内において、貫通穴が例えば針またはパンチのようなピン形の要素によって形成されることが好ましい。
【0034】
本発明は、さらに、上述の本発明による方法で使用するための装置にも関し、この装置は、誘電性基板を貫通して、かつ、この基板の2つの互いに反対側に位置した側面上に存在する導電性トラックを貫通して貫通穴を形成する穴形成手段であって、上記貫通穴がこの支持手段の中に形成されている間に基板を支持するための支持手段を備える穴形成手段と、幾つかの穴形成手段を備えているフレームと、基板がフレームと支持手段との間に存在する最中にフレームおよび/または支持手段を互いに対して相対的に移動させるための移動手段とを備える。このように構成されている装置を使用する時には、貫通穴は高い精度で誘電性基板内に形成されることが可能であり、したがって、上記貫通穴が基板の2つの互いに反対側に位置した側面上に存在する導電性トラックの中を通って延びるだろうということが確実にされる。
【0035】
生産性を高めるために、この装置が、フレームと支持手段との間で基板を搬送するための搬送手段を備えることが好ましい。
【0036】
本発明が、さらに、搬送手段が移動手段の動作中に作動しないようにその装置を制御する制御手段を備えることが好ましい。こうすることによって、貫通穴が形成されている最中に基板が静止状態のままであることが確実なものにされる。
【0037】
穴形成手段がフレーム内の幾つかの互いに平行な列として備えられていることが好ましく、したがって基板上に存在する導電性トラックの幾つかの互いに平行な列の形に貫通穴が同時に形成されることが可能である。
【0038】
その基板上に存在する異なる導電性トラックを有する基板を取り扱うことにこの装置を適合化させるためには、穴形成手段が、幾つかの穴形成手段がそのスライド軸に沿って移動させられることが可能である、フレームに連結されている幾つかのスライド軸と、所望の縦方向位置においてそれぞれのスライド軸に穴形成手段を着脱自在に固定するための固定手段とを備えることがさらに有利である。
【0039】
同じ理由から、互いに平行な列の各列の間の距離を調整するための調整手段を穴形成手段が備えることが好ましい。
【0040】
貫通穴の形成の精度をさらに向上させるように、かつ、この点に関するヒューマンファクターを減少させるように、基板上のトラックを検出するための、かつ、移動手段の作動の前にこの検出に基づいて基板に対するフレームの相対的位置を適合化させるための、センサ手段が備えられていることが好ましい。このようにして、貫通穴が基板内に形成される位置が、導電性トラックの実際位置に適合させられる。
【0041】
穴形成手段がピン形の要素(好ましくは針)を備え、および、このピン形要素が、移動手段の作動中に、基板を貫通して延び、かつ、基板の2つの互いに反対側の側面上に存在するトラックを貫通して延びることが好ましい。すでに上述したように、針が使用される時にトラック材料が貫通穴内に擦り付けられており、この結果として、第1のトラックと第2のトラックとの間の導電性接続部がより迅速に形成される。
【0042】
本発明に関して、基板と第1および第2のトラックとに形成される穴が貫通穴であることが非常に重要である。この理由から、支持手段が,基板に面している側面上に弾性層を備えていることが好ましく、したがって、穴形成手段がこの弾性層の中に延びることが可能であり、かつ、穴が実際に貫通穴であることが確実にされることが可能である。
【0043】
移動手段が4棒機構(four−rod mechanism)を備えることが好ましく、したがって、非常に精密でなければならないガイドを使用する必要がないだろう。
【0044】
本発明の別の側面によって、本発明は、上述した本発明による方法と共に使用するための装置に関し、この装置は、電解浴と、誘電性基板の一方の側面上に存在する少なくとも1つの第1の導電性トラックとこの一方の側面とは反対側に位置した基板の他方の側面上に存在する少なくとも1つの第2の導電性トラックとを有し、かつ、この基板を貫通しかつ第1および第2のトラックの2つの互いに反対側に位置した部分とをそれぞれに貫通して貫通穴がすでに形成されている誘電性基板を、電解浴の中を通して搬送するための搬送手段と、第1のトラックとの導電性接触を実現するためのカソードと、第1のトラックから遠方の基板側面上において電解浴中に配置されているアノードとを備える。
【0045】
これに関連して、カソードが上記電解浴中で第1のトラックと接触するように電解浴中に配置されていることが、さらに好ましい。
【0046】
さらに、基板が電解浴内を通して搬送されている最中にカソードが基板上を転がることが好ましい。
【0047】
本発明の後者の側面によるこのような装置の使用の利点が、本発明による方法に関する上述の内容の中ですでに説明されている。この装置は、例えば、上述の米国特許出願US 2005/0189226 A1の中で説明されている形で形状構成されるだろうが、これは、この特許出願の中で説明されている導電性箔基板4の内側の側面または外側の側面の上にだけ電解浴中において1つのアノードまたは幾つかのアノードが備えられているということを理解する。
【0048】
最後に、本発明は、基板の両方の側面上に導電性トラックを有する基板に関し、この導電性トラックは、上述した本発明にしたがった方法によって基板内の貫通穴を経由してすでに電気的に相互接続されている。
【0049】
本発明は、添付図面が参照されている本発明の好ましい実施形態の説明によってさらに詳細に説明されないだろう。