特許第5934328号(P5934328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934328
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20160602BHJP
   H01L 31/05 20140101ALI20160602BHJP
   H01L 31/068 20120101ALI20160602BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20160602BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20160602BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   H01L31/04 260
   H01L31/04 570
   H01L31/06 300
   H01L21/28 301R
   H01L21/288 E
   H01L21/285 S
【請求項の数】17
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-227286(P2014-227286)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-95653(P2015-95653A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0135649
(32)【優先日】2013年11月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ナム ジョンボム
(72)【発明者】
【氏名】チュン イルヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リ ウンジュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ドファン
【審査官】 清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0133729(US,A1)
【文献】 特開2001−010847(JP,A)
【文献】 特開2011−155229(JP,A)
【文献】 特開2012−049193(JP,A)
【文献】 特開平10−229210(JP,A)
【文献】 特開昭59−110175(JP,A)
【文献】 特開2009−275236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02 − 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の同じ側に形成される第1導電型領域及び第2導電型領域を含む光電変換部と、
前記光電変換部上に形成される電極であって、前記光電変換部の前記第1導電型領域及び前記第2導電型領域のそれぞれの上に直接形成される接着層及び前記接着層上に形成され、少なくとも1層を含む電極層を含む、電極と、を含み、
前記接着層の熱膨張係数が、前記光電変換部の前記第1導電型領域及び前記第2導電型領域のそれぞれの熱膨張係数よりも大きく、前記電極層の熱膨張係数よりも小さ
前記接着層はチタン(Ti)又はタングステン(W)で形成され
前記接着層は前記電極層の前記少なくとも1層のそれぞれより薄い厚さであり
前記接着層に近接する前記電極層の一部は前記接着層とは異なる金属を含む、太陽電池。
【請求項2】
前記接着層が透過性を有する、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記電極層が複数の層を含み、
前記接着層の厚さが、前記電極層の前記複数の層のそれぞれの厚さよりも薄い、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記接着層の厚さが50nm以下である、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記光電変換部は、半導体基板及び半導体層のうち少なくとも一つを含み、
前記半導体基板または前記半導体層がシリコン(Si)を含み、
記接着層に近接する前記電極層の一部が、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)及びこれらの合金のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記電極層は、前記接着層上に位置し、反射物質を含む第1電極層と、前記第1電極層上に形成され、リボンと接続される第2電極層とを含む、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第1電極層が、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)及びこれらの合金のうち少なくとも一つを含む、請求項に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第1電極層に対する前記接着層の厚さの比率が、1:2〜1:60の範囲内である、請求項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第1電極層が50nm〜300nmの厚さを有する、請求項に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第2電極層が、スズ及びニッケル−バナジウム合金のうち少なくとも一つを含む、請求項に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記第2電極層が、スパッタリングにより形成され、50nm〜300nmの厚さを有する、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第2電極層が、メッキにより形成され、5μm〜10μmの厚さを有する、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記電極層は、第3電極層を更に含み
前記第3電極層は、前記第1電極層と前記第2電極層との間で、前記第1電極層上に形成され、前記第1及び第2電極層よりも厚い厚さを有、前記第1電極層よりも大きい面積を有す、請求項に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記第3電極層が、メッキにより形成され、銅を含む、請求項13に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記第1電極層は、前記第1電極層と前記第3電極層との間に位置するシード電極層をさらに含む、請求項13に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記シード電極層が、スパッタリングにより形成され、銅を含む、請求項15に記載の太陽電池。
【請求項17】
光電変換部の同じ側に形成される第1導電型領域及び第2導電型領域を含む光電変換部と、
前記光電変換部上に形成される電極であって、前記光電変換部の前記第1導電型領域及び前記第2導電型領域のそれぞれの上に直接形成される接着層及び前記接着層上に形成され、少なくとも1層を含む電極層を含む、電極と、を含み、
前記接着層が、チタンまたはタングステンを含
前記接着層は、前記電極層の前記少なくとも1層のそれぞれより厚さが薄く、
前記接着層に近接する前記電極層の一部は前記接着層とは異なる金属を含む、太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に係り、より詳細には、電極構造を改善した太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、石油や石炭のような既存エネルギー資源の枯渇が予想されながら、これらに代わる代替エネルギーへの関心が高まっている。その中でも、太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する次世代電池として脚光を浴びている。
【0003】
このような太陽電池は、様々な層及び電極を設計に応じて形成することによって製造することができる。ところで、このような様々な層及び電極の設計に応じて太陽電池の効率が決定され得る。太陽電池の商用化のためには、低い効率を克服しなければならないので、様々な層及び電極が太陽電池の効率を最大化できるように設計されることが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、効率を向上させることができる太陽電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施例に係る太陽電池は、同じ側に形成される第1導電型領域及び第2導電型領域を含む光電変換部と、光電変換部上に形成され、光電変換部上に形成される接着層及び接着層上に形成される電極層を含む電極と、を含み、接着層の熱膨張係数が、光電変換部の熱膨張係数よりも大きく、電極層の熱膨張係数よりも小さい。
【0006】
接着層の熱膨張係数が、第1導電型領域及び第2導電型領域の熱膨張係数よりも大きくてもよい。
【0007】
接着層は透過性を有することができる。
【0008】
接着層が金属を含むことができる。
【0009】
接着層がチタン(Ti)またはタングステン(W)を含むことができる。
【0010】
電極層が複数の層を含み、接着層の厚さが、電極層の複数の層のそれぞれの厚さよりも薄くてもよい。
【0011】
接着層の厚さが50nm以下であってもよい。
【0012】
半導体基板または半導体層がシリコン(Si)を含み、電極層において接着層に隣接した部分が銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)及びこれらの合金のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0013】
電極層は、接着層上に位置し、反射物質を含む第1電極層と、第1電極層上に形成され、リボンと接続される第2電極層とを含むことができる。
【0014】
第1電極層が、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)及びこれらの合金のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0015】
第1電極層に対する接着層の厚さの比率が、1:2〜1:60の範囲内に属することができる。
【0016】
第1電極層に対する接着層の厚さの比率が、1:10〜1:30の範囲内に属することができる。
【0017】
第1電極層が50nm〜300nmの厚さを有することができる。
【0018】
第2電極層が、スズ(錫)及びニッケル−バナジウム合金のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0019】
第2電極層が、スパッタリングにより形成され、50nm〜300nmの厚さを有することができる。
【0020】
第2電極層が、メッキにより形成され、5μm〜10μmの厚さを有することができる。
【0021】
第1電極層と第2電極層との間に、第1電極層上に形成され、第1及び第2電極層よりも厚い厚さを有しながら、第1及び第2電極層よりも大きい面積を有する第3電極層を含むことができる。
【0022】
第3電極層が、メッキにより形成され、銅を含むことができる。
【0023】
第1電極層と第3電極層との間に位置するシード電極層をさらに含むことができる。
【0024】
シード電極層が、スパッタリングにより形成され、銅を含むことができる。
【0025】
本発明の他の実施例に係る太陽電池は、同じ側に形成される第1導電型領域及び第2導電型領域を含む光電変換部と、光電変換部上に形成され、光電変換部上に形成される接着層及び接着層上に形成される電極層を含む電極と、を含み、接着層が、チタンまたはタングステンを含む。
【発明の効果】
【0026】
本実施例に係る太陽電池は、電極が伝導性及び透過性を有し、一定範囲の熱膨張係数を有する接触層を備えることで、優れた特性を有することができる。すなわち、接触層が伝導性及び透過性を有するので、電極の伝導度を優れた状態に維持しながら、これに隣接する電極層(一例として、第1電極層)において反射を誘導することができる。これによって、第1電極層が反射電極層として機能して長波長の反射を増加させることで、光電変換に使用される光の量を増加させることができる。そして、接触層が半導体基板(または半導体層)と電極層との間の熱膨張係数を有することで、半導体基板(または半導体層)と電極層との熱膨張係数の差を減少させることによって、半導体基板(または半導体層)と電極との接触特性を向上させることができる。このように、太陽電池の様々な特性を向上させることで、太陽電池の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例に係る太陽電池モジュールを示した背面斜視図である。
図2】本発明の実施例に係る太陽電池の断面図である。
図3図2に示した太陽電池の部分背面平面図である。
図4】本発明の実施例に係る太陽電池の電極とリボンとの付着構造の様々な例を拡大して示した概略図である。
図5】本発明の他の実施例に係る太陽電池に使用できる電極を示した図である。図5には、図1の拡大円に対応する部分を示した。
図6】本発明の他の実施例に係る太陽電池に使用できる電極を示した図である。図6には、図1の拡大円に対応する部分を示した。
図7】本発明の更に他の実施例に係る太陽電池の部分背面平面図である。
図8】本発明の更に他の実施例に係る太陽電池の断面図である。
図9】本発明の実施例1〜3、そして比較例1及び2に係る太陽電池の電極において、波長による反射度を測定した結果を示したグラフである。
図10】(a)及び(b)のそれぞれは、本発明の実施例1において後面パッシベーション膜の亀裂を低減するための熱処理前の太陽電池の背面写真、及び熱処理後の太陽電池の背面写真である。
図11】(a)及び(b)のそれぞれは、本発明の比較例1において後面パッシベーション膜の亀裂を低減するための熱処理前の太陽電池の背面写真、及び熱処理後の太陽電池の背面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、添付の図面を参照して、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではなく、様々な形態に変形可能であることは勿論である。
【0029】
図面では、本発明を明確且つ簡略に説明するために、説明と関係のない部分の図示を省略し、明細書全体において同一又は極めて類似の部分に対しては同一の図面参照符号を使用する。そして、図面では、説明をより明確にするために、厚さ、幅などを拡大または縮小して示しており、本発明の厚さ、幅などは図面に示したものに限定されない。
【0030】
そして、明細書全体において、ある部分が他の部分を「含む」とするとき、特に反対の記載がない限り、他の部分を排除するのではなく、他の部分をさらに含むことができる。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとするとき、これは、他の部分の「直上に」ある場合のみならず、その中間に他の部分が位置する場合も含む。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「直上に」あるとするときは、中間に他の部分が位置しないことを意味する。
【0031】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施例に係る太陽電池及びそれに使用される電極について詳細に説明する。まず、太陽電池モジュールを詳細に説明した後、それに含まれる太陽電池及びそれに使用される電極について詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施例に係る太陽電池モジュールを示す背面斜視図である。
【0033】
図1を参照すると、本発明の一実施例に係る太陽電池モジュール100は、太陽電池150と、太陽電池150の前面上に位置する第1基板(以下、「前面基板」という)121と、太陽電池150の後面上に位置する第2基板(以下、「後面シート」という)122とを含むことができる。また、太陽電池モジュール100は、太陽電池150と前面基板121との間の第1密封材131、及び太陽電池150と後面シート122との間の第2密封材132を含むことができる。これについてより詳細に説明する。
【0034】
まず、太陽電池150は、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換部と、光電変換部に電気的に接続される電極とを含んで形成される。本実施例では、一例として、半導体基板(一例として、シリコンウエハ)または半導体層(一例として、シリコン層)を含む光電変換部を適用することができる。このような構造の太陽電池150を、図2及び図3を参照して詳細に後述する。
【0035】
このような太陽電池150はリボン144を含み、リボン144によって電気的に直列、並列または直並列に接続可能である。これを、互いに隣接する第1及び第2太陽電池151,152を例に挙げて説明する。すなわち、リボン144は、第1太陽電池151の第1電極(図2及び図3の参照符号42、以下同様)と、隣接する第2太陽電池152の第2電極(図2及び図3の参照符号44、以下同様)とを接続することができる。リボン144と、第1太陽電池151の第1電極42及び第2太陽電池152の第2電極44との接続構造などは、様々な構造を適用することができる。一例として、第1及び第2太陽電池151,152において、第1電極42が、第1縁部においてこれに沿って互いに接続され、第2電極44が、第1縁部と反対の第2縁部においてこれに沿って互いに接続されてもよい。すると、リボン144は、第1太陽電池151の第1縁部に位置した第1電極42と、これに隣接する第2太陽電池152の第2縁部に位置した第2電極44とを接続するように、第1及び第2太陽電池151,152にわたって形成され、第1及び第2縁部に沿って延びて形成され得る。このとき、リボン144と第1及び第2太陽電池151,152との不必要なショートを防止するために、リボン144と第1及び第2太陽電池151,152との間に部分的に絶縁フィルム142が位置し、リボン144において絶縁フィルム142よりも突出した部分が第1または第2電極42,44に接続されるようにすることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0036】
また、バスリボン145は、リボン144によって連結された一つの列の太陽電池150のリボン144の両端を交互に連結する。バスリボン145は、一つの列をなす太陽電池150の端部においてこれと交差する方向に配置することができる。このようなバスリボン145は、太陽電池150が生産した電気を集め、電気が逆流することを防止するジャンクションボックス(図示せず)と連結される。
【0037】
第1密封材131は、太陽電池150の受光面に位置し、第2密封材132は、太陽電池150の裏面に位置することができ、第1密封材131と第2密封材132とはラミネーションにより接着して、太陽電池150に悪影響を及ぼし得る水分や酸素を遮断し、太陽電池150の各要素が化学的に結合できるようにする。
【0038】
このような第1密封材131及び第2密封材132は、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、ポリビニルブチラール、ケイ素樹脂、エステル系樹脂、オレフィン系樹脂などを使用することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、第1及び第2密封材131,132は、その他の様々な物質を用いて、ラミネーション以外の他の方法により形成することができる。
【0039】
前面基板121は、太陽光を透過するように第1密封材131上に位置し、外部の衝撃などから太陽電池150を保護するために強化ガラスであることが好ましい。また、太陽光の反射を防止し、太陽光の透過率を高めるために、鉄分が少なく含有された低鉄分強化ガラスであることがより好ましい。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、前面基板121が他の物質などからなってもよい。
【0040】
後面シート122は、太陽電池150の裏面で太陽電池150を保護する層であって、防水、絶縁及び紫外線遮断の機能をする。後面シート122は、フィルムまたはシートなどの形態で構成することができる。後面シート122は、TPT(Tedlar/PET/Tedlar)タイプであるか、またはポリエチレンテレフタレート(PET)の少なくとも一面にポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDF)樹脂などが形成された構造であってもよい。ポリフッ化ビニリデンは、(CH2CF2)nの構造を有する高分子であって、ダブル(Double)フッ素分子構造を有するので、機械的性質、耐候性、耐紫外線性に優れる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、後面シート122が他の物質などからなってもよい。このとき、後面シート122は、前面基板121側から入射した太陽光を反射して再利用できるように、反射率に優れた材質であってもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、後面シート122が、太陽光熱が入射できる透明材質(例えば、ガラス)で形成されて、両面受光型太陽電池モジュール100を具現することもできる。
【0041】
上述した太陽電池150の構造を、図2及び図3を参照して詳細に説明する。
【0042】
図2は、本発明の実施例に係る太陽電池150の断面図であり、図3は、図2に示した太陽電池150の部分背面平面図である。
【0043】
図2及び図3を参照すると、本実施例に係る太陽電池150は、ベース領域110を含む半導体基板10と、半導体基板10の一面(一例として、半導体基板10の後面)側に位置するトンネル層20と、トンネル層20上に位置する導電型領域32,34と、導電型領域32,34に接続される電極42,44とを含む。そして、太陽電池150は、パッシベーション膜24、反射防止膜26、絶縁層(または後面パッシベーション膜)40などをさらに含むことができる。これについてより詳細に説明する。
【0044】
半導体基板10は、第2導電型ドーパントを相対的に低いドーピング濃度で含むベース領域110を含むことができる。本実施例のベース領域110は、第2導電型ドーパントを含む結晶質(単結晶または多結晶)シリコンを含むことができる。一例として、ベース領域110は、第2導電型ドーパントを含む単結晶シリコン基板(一例として、単結晶シリコンウエハ)で構成されてもよい。そして、第2導電型ドーパントはn型またはp型であってもよい。n型ドーパントとしては、リン(P)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)などの5族元素を使用し、p型ドーパントとしては、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などの3族元素を使用することができる。一例として、ベース領域110がn型を有すると、ベース領域110と光電変換によってキャリアを形成する接合(一例として、トンネル層20を挟んだpn接合)を形成するp型の第1導電型領域32を広く形成して、光電変換面積を増加させることができる。また、この場合には、広い面積を有する第1導電型領域32が、移動速度が相対的に遅い正孔を効果的に収集することで、光電変換効率の向上にさらに寄与することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0045】
そして、半導体基板10は、前面側に位置する前面電界領域130を含むことができる。前面電界領域130は、ベース領域110と同じ導電型を有しながら、ベース領域110よりも高いドーピング濃度を有することができる。
【0046】
本実施例では、前面電界領域130が、半導体基板10に第2導電型ドーパントを相対的に高いドーピング濃度でドーピングして形成されたドーピング領域で構成された場合を例示した。これによって、前面電界領域130が、第2導電型を有する結晶質(単結晶または多結晶)半導体を含んで半導体基板10を構成するようになる。一例として、前面電界領域130は、第2導電型を有する単結晶半導体基板(一例として、単結晶シリコンウエハ基板)の一部分として構成されてもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、半導体基板10と異なる別個の半導体層(例えば、非晶質半導体層、微結晶半導体層、または多結晶半導体層)に第2導電型ドーパントをドーピングして前面電界領域130を形成してもよい。または、前面電界領域130が、半導体基板10に隣接して形成された層(例えば、パッシベーション膜24及び/または反射防止膜26)の固定電荷によってドープされたものと類似の役割を果たす電界領域で構成されてもよい。その他の様々な方法により様々な構造の前面電界領域130を形成することができる。
【0047】
本実施例において、半導体基板10の前面は、テクスチャリング(texturing)されて、ピラミッドなどの形状の凹凸を有することができる。このようなテクスチャリングにより半導体基板10の前面などに凹凸が形成されて表面粗さが増加すると、半導体基板10の前面を介して入射する光の反射率を低下させることができる。したがって、ベース領域110と第1導電型領域32によって形成されたpn接合まで到達する光の量を増加させることができるので、光損失を最小化することができる。
【0048】
そして、半導体基板10の後面は、鏡面研磨などによって前面よりも低い表面粗さを有する、相対的に滑らかで且つ平坦な面からなることができる。本実施例のように、半導体基板10の後面側に第1及び第2導電型領域32,34が共に形成される場合には、半導体基板10の後面の特性に応じて太陽電池150の特性が大きく変化することがあるからである。これによって、半導体基板10の後面にはテクスチャリングによる凹凸を形成しないことで、パッシベーション特性を向上させることができ、これによって、太陽電池150の特性を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、場合によって、半導体基板10の後面にテクスチャリングによる凹凸を形成してもよい。その他の様々な変形も可能である。
【0049】
半導体基板10の後面上にはトンネル層20が形成される。トンネル層20によって、半導体基板10の後面の界面特性を向上させることができ、光電変換によって生成されたキャリアがトンネル効果によって円滑に伝達されるようにする。このようなトンネル層20は、キャリアをトンネリングすることができる様々な物質を含むことができ、一例として、酸化物、窒化物、半導体、伝導性高分子などを含むことができる。例えば、トンネル層20は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、真性非晶質シリコン、真性多結晶シリコンなどを含むことができる。このとき、トンネル層20は、半導体基板10の後面に全体的に形成することができる。これによって、半導体基板10の後面を全体的にパッシベーションすることができ、別途のパターニングなしに容易に形成することができる。
【0050】
トンネル効果を十分に具現できるように、トンネル層20の厚さT1は、絶縁層40の厚さよりも薄くすることができる。一例として、トンネル層20の厚さT1が10nm以下であってもよく、0.5nm〜10nm(より具体的には、0.5nm〜5nm、一例として、1nm〜4nm)であってもよい。トンネル層20の厚さT1が10nmを超えると、トンネリングが円滑に起こらないため、太陽電池150が作動しないことがあり、トンネル層20の厚さT1が0.5nm未満であると、所望の品質のトンネル層20を形成しにくいことがある。トンネル効果をさらに向上させるためには、トンネル層20の厚さT1が0.5nm〜5nm(より具体的に1nm〜4nm)であってもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、トンネル層20の厚さT1が様々な値を有することができる。
【0051】
トンネル層20上には導電型領域32,34が位置することができる。より具体的に、導電型領域32,34は、第1導電型ドーパントを有して第1導電型を示す第1導電型領域32と、第2導電型ドーパントを有して第2導電型を示す第2導電型領域34とを含むことができる。そして、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間にバリア領域36が位置することができる。
【0052】
第1導電型領域32は、トンネル層20を挟んでベース領域110とpn接合(またはpnトンネル接合)を形成して、光電変換によってキャリアを生成するエミッタ領域を構成する。
【0053】
このとき、第1導電型領域32は、ベース領域110と反対の第1導電型ドーパントを含む半導体(一例として、シリコン)を含むことができる。本実施例では、第1導電型領域32が、半導体基板10上(より明確には、トンネル層20上)で半導体基板10と別個に形成され、第1導電型ドーパントがドープされた半導体層で構成される。これによって、第1導電型領域32は、半導体基板10上に容易に形成できるように、半導体基板10と異なる結晶構造を有する半導体層で構成することができる。例えば、第1導電型領域32は、蒸着などの様々な方法により容易に製造することができる非晶質半導体、微結晶半導体、または多結晶半導体(一例として、非晶質シリコン、微結晶シリコン、または多結晶シリコン)などに第1導電型ドーパントをドープして形成することができる。第1導電型ドーパントは、半導体層を形成する工程において半導体層に共に含まれるか、または、半導体層を形成した後に熱拡散法、イオン注入法などの様々なドーピング方法により半導体層に含まれてもよい。
【0054】
このとき、第1導電型ドーパントは、ベース領域110と反対の導電型を示すことができるドーパントであれば足りる。すなわち、第1導電型ドーパントがp型である場合には、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などの3族元素を使用することができる。第1導電型ドーパントがn型である場合には、リン(P)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)などの5族元素を使用することができる。
【0055】
第2導電型領域34は、後面電界(back surface field)を形成して、半導体基板10の表面(より正確には、半導体基板10の後面)で再結合によってキャリアの損失が発生することを防止する後面電界領域を構成する。
【0056】
このとき、第2導電型領域34は、ベース領域110と同一の第2導電型ドーパントを含む半導体(一例として、シリコン)を含むことができる。本実施例では、第2導電型領域34が、半導体基板10上(より明確には、トンネル層20上)で半導体基板10と別個に形成され、第2導電型ドーパントがドープされた半導体層で構成される。これによって、第2導電型領域34は、半導体基板10上に容易に形成できるように、半導体基板10と異なる結晶構造を有する半導体層で構成することができる。例えば、第2導電型領域34は、蒸着などの様々な方法により容易に製造できる非晶質半導体、微結晶半導体、または多結晶半導体(一例として、非晶質シリコン、微結晶シリコン、または多結晶シリコン)などに第2導電型ドーパントをドープして形成することができる。第2導電型ドーパントは、半導体層を形成する工程において半導体層に共に含まれるか、または、半導体層を形成した後に熱拡散法、イオン注入法などの様々なドーピング方法により半導体層に含まれてもよい。
【0057】
このとき、第2導電型ドーパントは、ベース領域110と同じ導電型を示すことができるドーパントであれば足りる。すなわち、第2導電型ドーパントがn型である場合には、リン(P)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)などの5族元素を使用することができる。第2導電型ドーパントがp型である場合には、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などの3族元素を使用することができる。
【0058】
そして、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間にバリア領域36が位置して、第1導電型領域32と第2導電型領域34とを互いに離隔させる。第1導電型領域32と第2導電型領域34が互いに接触する場合には、シャント(shunt)が発生して太陽電池150の性能を低下させることがある。そのため、本実施例では、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間にバリア領域36を位置させることで、不必要なシャントを防止することができる。
【0059】
バリア領域36は、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間でこれらを実質的に絶縁することができる様々な物質を含むことができる。すなわち、バリア領域36として、ドープされていない(即ち、アンドープ)絶縁物質(一例として、酸化物、窒化物)などを使用することができる。または、バリア領域36が真性(intrinsic)半導体を含むこともできる。このとき、バリア領域36が、第1導電型領域32及び第2導電型領域34と同一平面上に形成され、実質的に同一の厚さを有し、同一の半導体(一例として、非晶質シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン)で構成されるが、実質的にドーパントを含まなくてもよい。一例として、半導体物質を含む半導体層を形成した後、半導体層の一部の領域に第1導電型ドーパントをドープして第1導電型領域32を形成し、他の領域の一部に第2導電型ドーパントをドープして第2導電型領域34を形成すると、第1導電型領域32及び第2導電型領域34が形成されていない領域がバリア領域36を構成するようになる。これによれば、第1導電型領域32、第2導電型領域34及びバリア領域36の製造方法を単純化することができる。
【0060】
しかし、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、バリア領域36を第1導電型領域32及び第2導電型領域34と別途に形成した場合には、バリア領域36と第1導電型領域32及び第2導電型領域34とが互いに異なる厚さを有することができる。一例として、第1導電型領域32及び第2導電型領域34のショートをより効果的に防止するために、バリア領域36が第1導電型領域32及び第2導電型領域34よりも厚い厚さを有してもよい。または、バリア領域36を形成するための原料を低減するために、バリア領域36の厚さを第1導電型領域32及び第2導電型領域34の厚さよりも薄くしてもよい。その他の様々な変形が可能であることは勿論である。また、バリア領域36の基本構成物質が、第1導電型領域32及び第2導電型領域34と異なる物質を含むこともできる。または、バリア領域36が、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間に位置した空き空間(例えば、トレンチ)として構成されてもよい。
【0061】
そして、バリア領域36が、第1導電型領域32と第2導電型領域34との境界の一部のみを離隔させるように形成されてもよい。これによれば、第1導電型領域32と第2導電型領域34との境界の他の一部は互いに接触することもできる。また、バリア領域36を必ず備えなければならないわけではなく、第1導電型領域32と第2導電型領域34とが全体的に接触して形成されることも可能である。その他の様々な変形が可能である。
【0062】
ここで、ベース領域110と同じ導電型を有する第2導電型領域34の面積よりも、ベース領域110と異なる導電型を有する第1導電型領域32の面積を広く形成することができる。これによって、ベース領域110と第1導電型領域32との間でトンネル層20を通じて形成されるpn接合をさらに広く形成することができる。このとき、ベース領域110及び第2導電型領域34がn型の導電型を有し、第1導電型領域32がp型の導電型を有する場合に、広く形成された第1導電型領域32によって、移動速度が相対的に遅い正孔を効果的に収集することができる。このような第1導電型領域32、第2導電型領域34及びバリア領域36の平面構造は、図3を参照してより詳細に後述する。
【0063】
本実施例では、導電型領域32,34がトンネル層20を挟んで半導体基板10の後面上に位置することを例示した。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、トンネル層20を備えずに、導電型領域32,34が、半導体基板10にドーパントをドープして形成されたドーピング領域で構成されることも可能である。すなわち、導電型領域32,34が、半導体基板10の一部を構成する単結晶半導体構造のドーピング領域で構成されてもよい。このような構造については、図8を参照してより詳細に後述する。その他の様々な方法により導電型領域32,34を形成することができる。
【0064】
第1導電型領域32及び第2導電型領域34とバリア領域36上に絶縁層40を形成することができる。絶縁層40は、第1導電型領域32及び第2導電型領域34が接続されてはならない電極(すなわち、第1導電型領域32の場合には第2電極44、第2導電型領域34の場合には第1電極42)と接続されることを防止し、第1導電型領域32及び第2導電型領域34をパッシベーションする効果も奏することができる。絶縁層40は、第1導電型領域32を露出する第1開口部402と、第2導電型領域34を露出する第2開口部404とを備える。
【0065】
このような絶縁層40は、トンネル層20と同一またはそれより厚い厚さに形成することができる。これによって、絶縁特性及びパッシベーション特性を向上させることができる。絶縁層40は、様々な絶縁物質(例えば、酸化物、窒化物など)からなることができる。一例として、絶縁層40は、シリコン窒化膜、水素含有シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、Al23、MgF2、ZnS、TiO2及びCeO2からなる群から選択されたいずれか一つの単一膜、または2つ以上の膜が組み合わされた多層膜構造を有することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、絶縁層40が様々な物質を含むことができることは勿論である。
【0066】
半導体基板10の後面に位置する電極42,44は、第1導電型領域32に電気的及び物理的に接続される第1電極42と、第2導電型領域34に電気的及び物理的に接続される第2電極44とを含む。
【0067】
このとき、第1電極42は、絶縁層40の第1開口部402を通して第1導電型領域32に接続され、第2電極44は、絶縁層40の第2開口部404を通して第2導電型領域34に接続される。このような第1及び第2電極42,44としては様々な金属物質を含むことができる。そして、第1及び第2電極42,44は、互いに電気的に接続されずに第1及び第2導電型半導体層32,34にそれぞれ接続されて、生成されたキャリアを収集して外部に伝達できる様々な平面形状を有することができる。すなわち、本発明が第1及び第2電極42,44の平面形状に限定されるものではない。
【0068】
以下では、図2の拡大円を参照して第1及び/または第2電極42,44の積層構造を詳細に説明した後、図3を参照して第1及び/または第2電極42,44の平面構造を詳細に説明する。図2の拡大円及び以下の説明では第1電極42を例に挙げて説明したが、第2電極44もこれと同一または極めて類似の構造を有することができる。これによって、後述する第1電極42の積層構造は第2電極44にも適用することができる。
【0069】
図2の拡大円を参照すると、第1電極42は、半導体層で構成された第1導電型領域32(第2電極44の場合には第2導電型領域34)を構成する半導体層(以下、半導体層)に接触して形成され、透過性及び伝導性を有する接着層420と、接着層420上に形成される電極層422とを含むことができる。ここで、電極層422は、光電変換によって生成されたキャリアを収集して外部に伝達する電極の基本的な役割を果たし、接着層420は、第1導電型領域32と電極層422との接着特性を向上させるなどの役割を果たすことができる。
【0070】
接着層420は、半導体層と電極層422との間でこれらに接触して形成され得る。接着層420は、伝導性を有すると共に、半導体層との接触特性に優れた金属を含むことができる。これによって、第1電極42の伝導性が低下しないと共に、半導体層と電極層422との接着特性を向上させることができる。接着層420が半導体層との接触特性を向上させることができるように、接着層420の熱膨張係数が、半導体層の熱膨張係数と、電極層422において接着層420に隣接した部分の熱膨張係数との間の値を有することができる。
【0071】
これをより詳細に説明すると、半導体層と第1電極42との熱膨張係数の差が大きいと、太陽電池150を形成するための様々な熱処理工程時に、半導体層と第1電極42との間の界面接触特性が低下することがある。これによって、半導体層と第1電極42との間のコンタクト抵抗が高くなることがある。これは、半導体層または第1電極42の線幅を減少させて半導体層と第1電極42との接触面積が減少する場合にもっと大きな問題となり得る。これによって、本実施例では、第1電極42において半導体層に接触する接着層420の熱膨脹係数を限定して、半導体層と第1電極42との熱膨張係数の差を減少させることで、界面接触特性を向上させる。
【0072】
半導体層がシリコンを含む場合に熱膨張係数が約4.2ppm/Kであり、電極層422において接着層420に隣接した部分(一例として、本実施例では、第1電極層422a)を構成することができる銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)などの熱膨張係数が略14.2ppm/K以上である。より具体的に、銅の熱膨張係数が約16.5ppm/Kで、アルミニウムの熱膨張係数が約23.0ppm/Kで、銀の熱膨張係数が約19.2ppm/Kで、金の熱膨張係数が約14.2ppm/Kである。
【0073】
これを考慮して、接着層420を構成する物質(一例として、金属)の熱膨張係数が約4.5ppm/K〜約14ppm/Kであればよい。熱膨張係数が4.5ppm/K未満であるか、または14ppm/Kを超えると、半導体層との熱膨張係数の差を減少させて接着特性を向上させる効果が十分でないことがある。これを考慮して、接着層420は、熱膨張係数が約8.4ppm/Kであるチタン(Ti)または熱膨張係数が約4.6ppm/Kであるタングステン(W)を含むことができ、一例として、チタンまたはタングステンからなることができる。
【0074】
このように、接着層420がチタンまたはタングステンを含む場合、半導体層と第1電極42との熱膨張係数の差が減少することによって、接触特性を向上させることができる。そして、チタンまたはタングステンは、電極層422において接着層420に隣接した部分(一例として、本実施例では第1電極層422a)を構成する物質(例えば、銅など)のバリアとして機能することができるので、これらが半導体層または半導体基板10に拡散することを防止することができる。これによって、電極層422を構成する物質が半導体層または半導体基板10に拡散して発生し得る問題を防止することができる。
【0075】
このとき、本実施例に係る接着層420は、光が透過できる透過性を有することができる。接着層420が金属を含む場合にも、厚さが薄ければ透過性を有することができるので、本実施例では、接着層420の厚さを一定水準以下に限定して、接着層420が透過性を有することができるようにする。このように、接着層420が透過性を有すると、接着層420を通過した光を、接着層420上に形成される電極層422または電極層422の一部を構成する層(例えば、第1電極層422a)で反射させて、再び半導体基板10の内部に向かうようにすることができる。これによって、光を第1電極42で反射させて、半導体基板10に存在する光の量及び残留時間を増加させることで、太陽電池150の効率を向上させることができる。
【0076】
ここで、透過性とは、光を100%透過する場合だけでなく、光の一部を透過する場合を含む。すなわち、接着層420は、金属透過膜または金属半透過膜で構成することができる。例えば、接着層420は50%〜100%の透過度を有することができ、より具体的には、80%〜100%の透過度を有することができる。接着層420の透過度が50%未満であると、電極層422で反射される光の量が十分でないため、太陽電池150の効率を十分に向上させることが難しい。接着層420の透過度が80%以上であれば、電極層422で反射される光の量をさらに増加させることができるので、太陽電池150の効率の向上にさらに寄与することができる。
【0077】
そのために、接着層420の厚さは、電極層422の厚さよりも薄くすることができる。そして、本実施例のように電極層422が複数の層(例えば、第1電極層422a、第2電極層422b、第3電極層422d、シード電極層422c)で構成される場合には、電極層422を構成する複数の層のそれぞれの厚さよりも薄くすることができる。これによって、接着層420が透過性を有するように形成することができる。
【0078】
具体的に、接着層420の厚さは50nm以下であってもよい。接着層420の厚さが50nmを超えると、接着層420の透過度が低下して、電極層422に向かうようにする光の量が十分でないことがある。接着層420の厚さを15nm以下とすることで、接着層420の透過度をさらに向上させることができる。ここで、接着層420の厚さが5nm〜50nm(一例として、5nm〜15nm)であってもよい。接着層420の厚さが5nm未満の場合には、接着層420が半導体層上で均一に形成されにくく、接着層420による接着特性向上の効果が十分でないことがある。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、接着層420の厚さなどは物質、工程条件などを考慮して変化可能である。
【0079】
接着層420上に形成される電極層422は、様々な特性などを向上させることができるように複数の層を含むことができる。本実施例において電極層422は、接着層420上に形成され、反射物質を含む第1電極層422aと、第1電極層422a上に形成され、リボン144と接続(一例として、接触)する第2電極層422bとを含む。そして、第1電極層422aと第2電極層422bとの間に形成されるシード電極層422c、第3電極層422dなどをさらに含むことができる。以下では、積層順序に従って電極層422を構成する複数の層について説明する。
【0080】
接着層420上に形成される第1電極層422aは、接着層420と接触して形成され得る。第1電極層422aは、電極層422を構成する物質などが半導体層または半導体基板10に向かうことを防止するバリアの役割と共に、反射物質によって反射が行われるようにする役割を果たす。すなわち、第1電極層422aは、バリア層としての役割及び反射電極層としての役割を共に果たすことができる。このような第1電極層422aは、反射特性に優れた金属で構成することができ、一例として、銅、アルミニウム、銀、金、またはこれらの合金を含むことができる。第1電極層422a上に、銅などを含むか、または銅からなるシード電極層422cが位置する場合には、第1電極層422aが、アルミニウム、銀、金、またはこれらの合金を含むか、またはアルミニウム、銀、金、またはこれらの合金からなることができる。
【0081】
第1電極層422aは、接着層420よりも大きい厚さを有しながら、50nm〜300nmの厚さを有することができる。一例として、第1電極層422aの厚さが100nm〜300nmであってもよい。第1電極層422aの厚さが50nm未満であると、バリア層及び反射電極層の役割を果たすことが難しい。第1電極層422aの厚さが300nmを超えると、反射特性などが大きく向上できないにもかかわらず製造コストは増加することがある。第1電極層422aの厚さが100nm〜300nmであると、バリア層及び反射電極層としての機能をさらに向上させることができる。
【0082】
そして、第1電極層422aに対する接着層420の厚さの比率が1:2〜1:60であってもよい。より具体的には、第1電極層422aに対する接着層420の厚さの比率が1:10〜1:30であってもよい。上述した厚さの比率が1:2未満であると、接着層420の厚さが厚いため透過度が低下したり、第1電極層422aの厚さが薄いため反射特性などが低下したりすることがある。上述した厚さの比率が1:60を超えると、第1電極層422aの厚さが厚いため製造コストが増加し得る。上記比率が1:10〜1:30であると、接着層420の特性及び第1電極層422aの特性を共に向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、厚さの比率などは多様に変形することができる。
【0083】
第1電極層422a上に位置するシード電極層422cは、シード電極層422c上に形成される第3電極層422d(第3電極層422dを備えない場合、第2電極層422b、以下同様)のシードの役割を果たし、第3電極層422dを容易に形成できるようにする。すなわち、シード電極層422cは、第1電極層422aと第3電極層422dとの間に位置し、これらに接触して形成され得る。
【0084】
第3電極層422dは、メッキなどによって形成されてもよいが、第3電極層422dがメッキによってうまく形成されるようにするために、第1電極層422aと第3電極層422dとの間にシード電極層422cを形成する。第3電極層422dが銅を含む場合には、シード電極層422cが銅を含むか、または銅からなることができる。これによって、メッキによって銅を含むように形成される第3電極層422dが、シード電極層422cをシードとして容易に且つ優れた特性を有するように形成することができる。
【0085】
シード電極層422cは50nm〜200nmの厚さを有することができる。シード電極層422cの厚さが50nm未満であると、シード電極層422cによる効果が十分でないことがあり、シード電極層422cの厚さが200nmを超えると、製造コストなどが増加し得る。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、シード電極層422cの厚さなどは様々な変形が可能である。
【0086】
上述した 接着層420、第1電極層422a及びシード電極層422cはスパッタリング法などにより形成することができる。すなわち、半導体層からなる第1及び第2導電型領域32,34、そしてバリア領域36上に形成された絶縁層40の開口部402(第2電極44の場合には開口部404)を充填するように、接着層420、第1電極層422a及びシード電極層422cのそれぞれを構成する金属層を全体的に形成した後に、金属層をパターニングすることによって、第1電極42(及び/または第2電極44)の接着層420、第1電極層422a及びシード電極層422cを形成することができる。パターニング方法としては様々な方法を適用することができ、一例として、レジストとエッチング溶液を用いた方法により行うことができる。
【0087】
このように、スパッタリングにより形成された接着層420、第1電極層422a及びシード電極層422cは、一般的に厚さ方向に積層されるので、均一な厚さを有するように積層される。そして、接着層420、第1電極層422a及びシード電極層422cが、これに該当する金属層を順に全体的に形成した後、これらを同一のレジスト(またはマスク)を用いて共にパターニングして形成されるので、接着層420、第1電極層422a及びシード電極層422cのうち少なくとも一部の側面の断面が互いに連続的に形成され得る。そして、接着層420、第1電極層422a及びシード電極層422cのうち少なくとも一部の面積の誤差範囲が10%以内(例えば、5%以内)の値を有することができる。このような厚さ、形状、面積の差などによって、接着層420、第1電極層422a及びシード電極層422cがスパッタリング法によって形成されて共にパターニングされたことがわかる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、 接着層420、第1電極層422a及びシード電極層422cが様々な方法により形成されてもよい。
【0088】
第3電極層422dが、シード電極層422c上でシード電極層422cに接触して形成され得る。第3電極層422dは、電極層422の抵抗を下げ、電気伝導度を向上させる役割を果たすことで、実質的に電流を伝達する伝導層の役割を果たすことができる。第3電極層422dは、安価で、伝導度に優れた金属(例えば、銅)を含むことができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、第3電極層422dとして、公知の様々な金属を使用することができる。
【0089】
このような第3電極層422dは、接着層420、第1電極層422a、シード電極層422c及び第2電極層422bよりも厚い厚さを有することができる。例えば、第3電極層422dは20μm〜30μmの厚さを有することができる。第3電極層422dの厚さが20μm未満であると、抵抗を十分に下げることが難しく、第2電極層422bの厚さが30μmを超えると、工程時間が増加して製造コストが増加し得る。
【0090】
第3電極層422dは、シード電極層422cをシードとしてメッキにより形成することができる。このように、第3電極層422dをメッキにより形成する場合、十分な厚さを有する第3電極層422dを短時間で形成することができる。このようにメッキにより形成された第3電極層422dは、厚さ方向だけでなく側面方向にも成長して、接着層420、第1電極層422a及びシード電極層422cよりも大きい面積を有するように膨らんで形成されて、ラウンド状の表面を有することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、第3電極層422dの形成方法、形状などは多様に変形可能である。
【0091】
第3電極層422d上に第2電極層422bを形成することができる。一例として、第2電極層422bが第3電極層422d上に接触して形成され得る。第2電極層422bは、リボン144と接続する部分であって、リボン144との接続特性に優れた物質を含むことができる。第2電極層422bとリボン144とが接続される構造の様々な例を、図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施例に係る太陽電池150の第1電極42とリボン144との付着構造の様々な例を拡大して示した図である。明確かつ簡略な説明のために、図4において、第1電極42の形状は図2の拡大円に示した形状を基準として示した。
【0092】
一例として、図4の(a)に示すように、第2電極層422b上に、一例として、鉛(Pb)と錫を共に含むリボン144を位置させた後に熱を加えて、リボン144を第2電極層422b上に直接付着することができる。または、図4の(b)に示すように、第2電極層422bとリボン144との間にペースト(例えば、錫とビスマスなどを含むペースト)が位置した状態で熱を加えて、ペースト層146を媒介として第2電極層422bとリボン144とを付着することもできる。または、図4の(c)に示すように、第2電極層422bとリボン144との間に伝導性フィルム148などが位置した状態で加圧して、伝導性フィルム148を媒介として第2電極層422bとリボン144とを付着することもできる。伝導性フィルム148は、導電性に優れた金、銀、ニッケル、銅などで形成された導電性粒子がエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などで形成されたフィルム内に分散されたものであってもよい。このような伝導性フィルムを熱を加えながら圧着すると、導電性粒子がフィルムの外部に露出され、露出された導電性粒子によって太陽電池150とリボン144とが電気的に接続可能である。このように、伝導性フィルム(図示せず)によって複数の太陽電池150を接続してモジュール化する場合には、工程温度を低下させることができるので、太陽電池150の反りを防止することができる。その他にも様々な方法により第2電極層422bとリボン144とを付着及び接続することができる。
【0093】
第2電極層422bは、錫(Sn)またはニッケル−バナジウム合金(NiV)を含むことができる。錫は、リボン144またはこれとの接続のためのペーストなどとの接合特性に優れるという長所がある。そして、ニッケル−バナジウム合金は、リボン144またはこれとの接続のためのペーストとの接合特性に優れる。より具体的に、錫及びビスマスを含むペーストの場合に、ペーストの錫とニッケル−バナジウム合金のニッケルとの接合特性が非常に優れる。そして、ニッケル−バナジウム合金は、融点が約1000℃以上として非常に高い水準であるので、電極層422を構成する他の層の物質よりも高い融点を有する。これによって、リボン144との接合工程または太陽電池150の製造工程中に変形せず、電極層422を構成する他の層を保護するキャッピング膜の役割を十分に行うことができる。
【0094】
このような第2電極層422bは、様々な方法により形成することができ、本実施例では、第2電極層422bがメッキにより形成された錫を含むことを例示した。このように形成された第2電極層422bは、5μm〜10μmの厚さを有することができ、第1電極層422aを覆いながら凸状のラウンド状に形成され得る。第2電極層422bが5μm未満であると、第2電極層422bを均一に形成しにくく、第2電極層422bが10μmを超えると、製造コストが増加し得る。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。第2電極層422bが、スパッタリングにより形成された錫またはニッケル−バナジウム合金を含む例については、図6を参照して詳細に後述する。
【0095】
以下では、図3を参照して、第1導電型領域32及び第2導電型領域34、バリア領域36、そして、第1及び第2電極42,44の平面形状を詳細に説明する。
【0096】
図3を参照すると、本実施例では、第1導電型領域32及び第2導電型領域34はそれぞれ、ストライプ状をなすように長く形成されると共に、長手方向と交差する方向において互いに交互に位置している。第1導電型領域32と第2導電型領域34との間に、これらを離隔させるバリア領域36が位置することができる。図示していないが、互いに離隔した複数の第1導電型領域32が一側縁部において互いに接続され、互いに離隔した複数の第2導電型領域34が他側縁部において互いに接続可能である。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0097】
このとき、第1導電型領域32の面積を第2導電型領域34の面積よりも大きくすることができる。一例として、第1導電型領域32及び第2導電型領域34の面積は、これらの幅を異ならせることによって調節することができる。すなわち、第1導電型領域32の幅W1を第2導電型領域34の幅W2よりも大きくすることができる。これによって、エミッタ領域を構成する第1導電型領域32の面積を十分に形成して、光電変換が広い領域で起こるようにすることができる。このとき、第1導電型領域32がp型を有する場合に、第1導電型領域32の面積を十分に確保して、移動速度が相対的に遅い正孔を効果的に収集することができる。
【0098】
そして、第1電極42が、第1導電型領域32に対応してストライプ状に形成され、第2電極44が、第2導電型領域34に対応してストライプ状に形成され得る。第1及び第2開口部402,404のそれぞれが、第1及び第2電極42,44に対応して第1及び第2電極42,44の全面積に形成されてもよい。これによれば、第1及び第2電極42,44と第1導電型領域32及び第2導電型領域34との接触面積を最大化して、キャリア収集効率を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。第1及び第2開口部402,404が、第1及び第2電極42,44の一部のみを第1導電型領域32及び第2導電型領域34にそれぞれ接続するように形成されてもよいことは勿論である。例えば、第1及び第2開口部402,404が複数のコンタクトホールで構成されてもよい。そして、図示していないが、第1電極42が一側縁部において互いに接続されて形成され、第2電極44が他側縁部において互いに接続されて形成されてもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0099】
再び図2を参照すると、半導体基板10の前面上(より正確には、半導体基板10の前面に形成された前面電界領域130上)にパッシベーション膜24及び/または反射防止膜26が位置することができる。本発明の実施例に従って、半導体基板10上にパッシベーション膜24のみ形成されてもよく、半導体基板10上に反射防止膜26のみ形成されてもよく、または半導体基板10上にパッシベーション膜24及び反射防止膜26が順に位置してもよい。図面では、半導体基板10上にパッシベーション膜24及び反射防止膜26が順に形成されて、半導体基板10がパッシベーション膜24と接触形成されることを例示した。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、半導体基板10が反射防止膜26に接触形成されることも可能であり、その他の様々な変形が可能である。
【0100】
パッシベーション膜24及び反射防止膜26は、実質的に半導体基板10の前面に全体的に形成することができる。ここで、全体的に形成するということは、物理的に完璧に全てに形成されたことのみならず、不可避に一部の除外された部分がある場合を含む。
【0101】
パッシベーション膜24は、半導体基板10の前面に接触して形成されて、半導体基板10の前面またはバルク内に存在する欠陥を不活性化させる。これによって、少数キャリアの再結合サイトを除去して、太陽電池150の開放電圧を増加させることができる。反射防止膜26は、半導体基板10の前面に入射する光の反射率を減少させる。これによって、半導体基板10の前面を介して入射する光の反射率を低下させることによって、ベース領域110と第1導電型領域32との界面に形成されたpn接合まで到達する光量を増加させることができる。これによって、太陽電池150の短絡電流(Isc)を増加させることができる。このように、パッシベーション膜24及び反射防止膜26によって太陽電池150の開放電圧と短絡電流を増加させることで、太陽電池150の効率を向上させることができる。
【0102】
パッシベーション膜24及び/または反射防止膜26は、様々な物質で形成することができる。一例として、パッシベーション膜24は、シリコン窒化膜、水素含有シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、アルミニウム酸化膜、MgF2、ZnS、TiO2及びCeO2からなる群から選択されたいずれか一つの単一膜、または2つ以上の膜が組み合わされた多層膜構造を有することができる。一例として、パッシベーション膜24はシリコン酸化物を含み、反射防止膜26はシリコン窒化物を含むことができる。
【0103】
本実施例に係る太陽電池150に光が入射されると、ベース領域110と第1導電型領域32との間に形成されたpn接合での光電変換によって電子と正孔が生成され、生成された正孔及び電子は、トンネル層20をトンネリングして、それぞれ第1導電型領域32及び第2導電型領域34に移動した後、第1及び第2電極42,44に移動する。これによって、電気エネルギーを生成するようになる。
【0104】
本実施例のように、半導体基板10の後面に電極42,44が形成され、半導体基板10の前面には電極が形成されない後面電極構造の太陽電池150においては、半導体基板10の前面でシェーディング損失(shading loss)を最小化することができる。これによって、太陽電池150の効率を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。半導体基板10の前面に第1電極42が位置する構造の太陽電池150に(特に、太陽電池150の後面に位置する第2電極44に)本実施例の電極42,44の構造が適用されてもよい。
【0105】
上述した構造の太陽電池150は、電極42,44が、伝導性及び透過性を有し、一定範囲の熱膨張係数を有する接着層420を備えることで、優れた特性を有することができる。すなわち、接着層420が、伝導性を有しながら透過性を有するので、電極42,44の伝導度の優れた状態に維持しながら、それに隣接する電極層422(一例として、第1電極層422a)で反射を誘導することができる。これによって、第1電極層422aが反射電極層として機能して、長波長の反射を増加させることで、光電変換に使用される光の量を増加させることができる。そして、接着層420が、第1又は第2導電型領域32,34を構成する半導体層と電極層422との間の熱膨張係数を有して、第1又は第2導電型領域32,34または半導体層と電極層422との熱膨張係数の差を減少させることによって、第1又は第2導電型領域32,34または半導体層と第1又は第2電極42,44との間の接触特性を向上させることができる。このように、太陽電池150の様々な特性が向上して、太陽電池150の効率を向上させることができる。
【0106】
以下、本発明の他の実施例に係る太陽電池及びそれに使用される電極について詳細に説明する。上述した説明と同一または極めて類似の部分については詳細な説明を省略し、互いに異なる部分についてのみ詳細に説明する。そして、以下の説明及び図面では第1電極42を例示として説明したが、下記の説明は第2電極44にも適用することができる。
【0107】
図5は、本発明の他の実施例に係る太陽電池に使用できる電極を示した図である。図5には、図1の拡大円に対応する部分を示した。
【0108】
図5を参照すると、本実施例に係る太陽電池の第1電極42は、シード電極層(図2の参照符号422c、以下同様)を備えずに、第1電極層422a上に第3電極層422dが接触して形成される。本実施例では、シード電極層422cを備えないので、製造工程を単純化し、製造コストを低減することができる。
【0109】
図6は、本発明の他の実施例に係る太陽電池に使用できる電極を示した図である。図6には、図1の拡大円に対応する部分を示した。
【0110】
図6を参照すると、本実施例に係る太陽電池の第1電極42は、シード電極層(図2の参照符号422c、以下同様)及び第3電極層(図2の参照符号422d、以下同様)を備えずに、第1電極層422a上に第2電極層422bが接触して形成される。すなわち、第1電極42が、互いに接触して形成される接着層420、第1電極層422a及び第2電極層422bからなることができる。このとき、第2電極層422bは、スパッタリングにより形成されたスパッタ層であって、錫またはニッケル−バナジウム合金を含むことができる。
【0111】
このように、接着層420、第1電極層422a及び第2電極層422bを含む第1電極42は、スパッタリングなどにより形成することができる。すなわち、半導体基板10の後面上に形成された絶縁層40の開口部402(第2電極44の場合には開口部404)を充填するように、接着層420、第1電極層422a及び第2電極層422bのそれぞれを構成する金属層を全体的に形成した後に、金属層をパターニングすることによって、第1電極42及び/または第2電極44の接着層420、第1電極層422a及び第2電極層422bを形成することができる。パターニング方法としては様々な方法を適用することができ、一例として、レジストとエッチング溶液を用いた方法によって行われてもよい。
【0112】
このように、スパッタリングにより形成された接着層420、第1電極層422a及び第2電極層422bは、一般的に厚さ方向に積層されるので、それぞれ均一な厚さを有するように積層される。そして、接着層420、第1電極層422a及び第2電極層422bが、これに該当する金属層を順に全体的に形成した後、これらを同一のレジスト(またはマスク)を用いて共にパターニングして形成される。これによって、接着層420、第1電極層422a及び第2電極層422bのうち少なくとも一部の側面が連続的な形状を有するようになる。そして、接着層420、第1電極層422a及び第2電極層422bのうち少なくとも一部の面積の誤差範囲が10%以内(例えば、5%以内)の値を有することができる。このような厚さ、形状、面積の差などによって、接着層420、第1電極層422a及び第2電極層422bがスパッタリング法により形成されて、共にパターニングされたことがわかる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、接着層420、第1電極層422a及び第2電極層422bが様々な方法によって形成されてもよい。
【0113】
第2電極層422bは、ナノ水準の厚さ、例えば、50nm〜300nmの厚さを有することができる。第2電極層422bの厚さが50nm未満であると、リボン144との接合特性が低下し、300nmを超えると、製造コストが増加することがある。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、第2電極層422bの厚さなどは多様に変化可能である。
【0114】
このように、本実施例では、第1電極42をメッキ工程を使用せずに形成することができる。第1電極42の一部をメッキによって形成すると、絶縁層40にピンホール、スクラッチなどの欠陥がある場合に、その部分にもメッキが行われてしまい、望まない部分がメッキされることがある。そして、メッキ工程において使用するメッキ溶液が酸またはアルカリであるため、絶縁層40に損傷を与えるか、または絶縁層40の特性を低下させることがある。本実施例では、メッキ工程を除去することによって絶縁層40の特性を向上させることができ、簡単な工程により第1電極42を形成することができる。
【0115】
図7は、本発明の更に他の実施例に係る太陽電池150の部分背面平面図である。
【0116】
図7を参照すると、本実施例に係る太陽電池150では、第2導電型領域34が、島状を有しながら互いに離隔して複数備えられ、第1導電型領域32は、第2導電型領域34及びこれを取り囲むバリア領域36を除外した部分に全体的に形成されてもよい。
【0117】
すると、第1導電型領域32として機能する第1導電型領域32が最大限広い面積を有しながら形成されて、光電変換効率を向上させることができる。そして、第2導電型領域34の面積を最小化しながらも、半導体基板10に全体的に第2導電型領域34が位置するようにすることができる。すると、第2導電型領域34によって表面再結合を効果的に防止すると共に、第2導電型領域34の面積を最大化することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、第2導電型領域34が、第2導電型領域34の面積を最小化することができる様々な形状を有していてもよいことは勿論である。
【0118】
図面では、第2導電型領域34が円形の形状を有することを例示したが、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、第2導電型領域34が、それぞれ楕円形、または三角形、四角形、六角形などの多角形の平面形状を有していてもよいことは勿論である。
【0119】
絶縁層40に形成された第1及び第2開口部402,404は、第1導電型領域32及び第2導電型領域34のそれぞれの形状を考慮して、互いに異なる形状を有することができる。すなわち、第1開口部402は、第1導電型領域32上で長く形成されてもよく、複数の第2開口部404が第2導電型領域34に対応して互いに離隔して形成されてもよい。第1電極42は、第1導電型領域32上にのみ位置し、第2電極44は、第1導電型領域32と第2導電型領域34上に共に位置することを考慮したものである。すなわち、絶縁層40において、第2導電型領域34上に位置した部分に対応して第2開口部404が形成され、第2開口部404によって第2電極44と第2導電型領域34とが連結される。そして、第1導電型領域32上に該当する絶縁層40の部分には第2開口部404が形成されないので、第2電極44と第1導電型領域32とが互いに絶縁された状態を維持できるようにする。第1電極42は、第1導電型領域32上にのみ形成されるので、第1開口部402が第1電極42と同一または類似の形状を有することができ、これによって、第1電極42が第1導電型領域32上に全体的にコンタクトできるようにする。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、第1開口部402が、第2開口部404と類似の形状を有する複数のコンタクトホールとして構成されてもよい。
【0120】
図8は、本発明の更に他の実施例に係る太陽電池の断面図である。
【0121】
図8を参照すると、本実施例に係る太陽電池150は、トンネル層(図2の参照符号20、以下同様)を備えずに、第1及び第2導電型領域32,34を半導体基板10の内部に形成されるドーピング領域で構成する。すなわち、第1及び第2導電型領域32,34のそれぞれが、半導体基板10に第1または第2導電型ドーパントを相対的に高いドーピング濃度でドープして形成されたドーピング領域で構成される。これによって、第1及び第2導電型領域32,34が、第1又は第2導電型を有する結晶質(単結晶または多結晶)半導体を含んで半導体基板10を構成するようになる。一例として、第1及び第2導電型領域32,34のそれぞれは、第1または第2導電型を有する単結晶半導体基板(一例として、単結晶シリコンウエハ基板)の一部分として構成されてもよい。
【0122】
このような実施例では、第1電極42の接触層(図2の参照符号420参照)が、半導体基板10(または半導体基板10の一部を構成する第1導電型領域32)に接触して形成され、第2電極44の接触層が、半導体基板10(または半導体基板10の一部を構成する第2導電型領域34)に接触して形成される。上述した説明において、第1及び第2電極42,44の接着層420が半導体層の代わりに半導体基板10に接触する点にのみ差があるので、これについての詳細な説明は省略する。
【0123】
以下、本発明の実験例に基づいて本発明をより詳細に説明する。以下の実験例は、本発明の例示のために提示したものに過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
【0124】
[実施例1]
【0125】
n型であるベース領域を有する半導体基板を準備した。半導体基板の後面の一領域にイオン注入法によりボロン(B)をドープしてエミッタ領域を形成し、半導体基板の後面の他の領域にイオン注入法によりリン(P)をドープして後面電界領域を形成した。
【0126】
半導体基板の前面に反射防止膜を形成し、半導体基板の後面に後面パッシベーション膜を形成した。そして、後面パッシベーション膜上に5nmの厚さのチタン層(接触層)、200nmの厚さの銅層(第1電極層)をそれぞれスパッタリングにより形成した後、パターニングして、エミッタ領域に電気的に接続される第1電極、及び後面電界領域に電気的に接続される第2電極を形成した。そして、後面パッシベーション膜のクラックを減少させる工程(いわゆる、キュアリング(curing)工程)を、250℃の温度での熱処理によって行った。これによって、太陽電池を製造した。
【0127】
参考までに、本実施例では、接触層と第1電極層による特性のみを測定するために、第2電極層などを形成せずに、接触層と第1電極層のみを形成した。
【0128】
[実施例2]
【0129】
チタン層の厚さが10nmという点を除いては、実施例1と同様の方法で太陽電池を製造した。
【0130】
[実施例3]
【0131】
チタン層の厚さが30nmという点を除いては、実施例1と同様の方法で太陽電池を製造した。
【0132】
[比較例1]
【0133】
チタン層を形成しなかった点を除いては、実施例1と同様の方法で太陽電池を製造した。
【0134】
[比較例2]
【0135】
チタン層の厚さが200nmという点を除いては、実施例1と同様の方法で太陽電池を製造した。
【0136】
実施例1〜3、そして、比較例1〜2に係る太陽電池の電極において波長による反射度を測定して、その結果を図9に示した。
【0137】
図9を参照すると、チタン層の厚さが増加するほど、第1電極の反射度(特に、長波長の反射度)が大きく低下することがわかる。これは、接触層であるチタン層の厚さが増加するほど、チタン層の透過度が低下して、第1電極層での反射があまり起こらないからであると思われる。このとき、チタン層の厚さが50nm以下である実施例1〜3に係る太陽電池では、1200nmの波長の光に対する反射度が30%以上の値を有する。したがって、長波長の光を反射によって再利用することができる。反面、チタン層の厚さが200nmである比較例2では、1200nmの波長の光に対する反射度が20%以下として非常に低い数値を有するため、長波長の光を反射によって再利用しにくいことがわかる。
【0138】
また、実施例1において、後面パッシベーション膜の亀裂を減少させるための熱処理前の太陽電池の背面写真、及び熱処理後の太陽電池の背面写真をそれぞれ、図10の(a)及び(b)に示した。そして、比較例1において、後面パッシベーション膜の亀裂を減少させるための熱処理前の太陽電池の背面写真、及び熱処理後の太陽電池の背面写真をそれぞれ、図11の(a)及び(b)に示した。ここで、図10及び図11の写真は、暗室で第1及び第2電極にバイアスを印加して、電子と正孔とが再結合するときに発生する光をカメラで検出して撮影した写真である。このように、太陽電池の原理と反対に、第1及び第2電極にバイアスを印加して発生する再結合が多いと、太陽電池でのように、光が入射すると、光電変換が活発に起こることができることがわかる。
【0139】
図10を参照すると、実施例1では、熱処理前及び熱処理後の背面写真がいずれも明るいことがわかる。これから、第1及び第2電極が半導体基板と優れた接触特性を有しながら接着され、後続の熱処理などでも優れた接触特性が維持されたことがわかる。反面、図11を参照すると、比較例1では、熱処理前に比べて熱処理後の背面写真の明るさが大きく低下したことがわかる。これは、比較例1のように接着層を備えていない場合には、熱処理工程によって半導体基板と第1及び第2電極との間の接触特性が低下することがわかる。
【0140】
上述したような特徴、構造、効果などは、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれ、必ずしも一つの実施例にのみ限定されるものではない。さらに、各実施例で例示した特徴、構造、効果などは、実施例の属する分野における通常の知識を有する者によって、他の実施例に対しても組み合わせ又は変形して実施可能である。したがって、このような組み合わせ及び変形に係わる内容は、本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11