(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0033] 本発明のシステム、方法、および技法について説明する前に、導入概念および用語について多少説明する。本明細書において用いる場合、「磁場検知エレメント」という用語は、磁場を検知することができる様々な種類の電子エレメントを記述するために用いられる。磁場検知エレメントは、ホール効果エレメント、磁気抵抗エレメント、または磁気トランジスタ(magnetotransistor)とすることができるが、これらに限定されるのではない。周知のように、異なる種類のホール効果エレメントがある。これらのホール効果エレメントは、シリコン(Si)またはゲルマニウム(Ge)のようなIV型半導体材料、あるいは砒化ガリウム(GaAs)またはインディウム化合物、例えば、アンチモン化インジウム(InSb)のようなIII−V型半導体材料で製作することができる。
【0025】
[0034] これも公知であろうが、磁気抵抗エレメントには異なる種類があり、例えば、異方性磁気抵抗(AMR)エレメント、巨大磁気抵抗(GMR)エレメント、トンネリング磁気抵抗(TMR)エレメント、および磁気トンネル接合(MTJ)エレメントがある。
【0026】
[0035] 以上述べた磁場検知エレメントの一部は、磁場検知エレメントを支持する基板に対して平行に、最大感度の軸を有する傾向があり、前述の磁場検知エレメントの他のものは、磁場検知エレメントを支持する基板に対して垂直に最大感度の軸を有する傾向がある。具体的には、全部ではないが、多くの種類の磁気抵抗エレメントは基板に対して平行に最大感度の軸を有する傾向があり、全部ではないが、多くの種類のホール・エレメントは、基板に対して垂直に感度の軸を有する傾向がある。
【0027】
[0036] 本明細書において用いる場合、「磁場センサ」という用語は、磁場検知エレメントを含む回路を記述するために用いられる。磁場センサは、種々の用途において用いられ、電流搬送導体によって搬送される電流によって発生する磁場を検知する電流センサ、強磁性体または磁性体の物体の近接を検知する磁気スイッチまたは近接検出器、通過する強磁性体の物体、例えば、リング・マグネットの磁気ドメインまたは強磁性体ギアの歯を検知する動き検出器(例えば、回転検出器)、ならびに磁場の磁場密度を検知する磁場センサが含まれるが、これらに限定されるのではない。しかしながら、本明細書において記載する回路および技法は、物体の動きを検出することができるあらゆる磁場センサにも適用される。
【0028】
[0037] いわゆる「較正モード」における磁場センサの動作は、本明細書では「初期化モード」とも呼び、本明細書ではこれについて説明する。また、本明細書では、いわゆる「ランニング・モード」における磁場センサの動作についても言及する。較正モードは動作の開始時に(または所望に応じてときどき)行うことができ、ランニング・モードは他の時点において行われる。ランニング・モードの動作については、前述の特許の1つ以上、特に、米国特許第5,917,320号および第7,362,094号に更に詳細に説明されている。これらの特許をここで引用したことにより、その内容全体が本願にも含まれるものとする。
【0029】
[0038] 本明細書では較正モードについて論じ、ある種の判断基準によれば、この較正時間期間の終了時に、本明細書において論ずる較正モードを終了するが、示される較正時間期間の終了後に、他の較正も実行できることは認められてしかるべきである。例えば、示される較正時間期間の終了後に、自動利得制御が較正を続けることができる。示される較正時間期間の終了と必ずしも一致するとは限らないが、示される較正時間期間の終了後のある時点において、本明細書において説明する磁場センサはランニング・モードに入ることができ、その間、回路パラメータの値に対する更新は、較正モードの間とは異なる方法で更新することができる。
【0030】
[0039]
図1を参照すると、物体124の移動に応答する回路例100は、物体124に伴う磁場に比例する差動信号104A,104B(即ち、磁場信号)を生成する磁場検知エレメント104を含む。磁場検知エレメント104は、ホール効果エレメント、磁気抵抗エレメント、または磁気トランジスタを含むことができるが、これらに限定されるのではない。
【0031】
[0040] 物体124は、回転するように構成されている物体、例えば、強磁性体のギアとすることができる。回路100は、磁場検知エレメント104から差動信号104A,104Bを受け取るように結合され、信号106A(または、磁場信号)を生成するように構成されている増幅器106を含むことができる。
【0032】
[0041] また、回路100は、所定閾値検出器120も含む。実施形態の中には、所定閾値検出器120が、信号106Aを受け取るように結合され、信号122A(または、磁場信号)を生成するように構成されている増幅器122を含む場合もある。実施形態の中には、増幅器122が、自動利得制御(AGC)増幅器を含む場合、および/または回路100が自動オフセット調節(AOA)を含む場合もある。
【0033】
[0042] 所定閾値検出器120は、磁場信号122Aに応答する第1入力128A、所定の閾値130に応答する第2入力128B、および所定閾値検出器出力信号140を供給する出力128Cを含むことができる。実施形態の中には、所定の閾値130が、基準電圧値、例えば、1.5ボルトを有する電気信号である場合もある。
【0034】
[0043] また、回路100は、追跡閾値検出器110も含む。実施形態の中には、追跡閾値検出器110が、信号106Aを受け取るように結合され、信号112A(または磁場信号)を生成するように構成されている増幅器112を含む場合もある。実施形態の中には、増幅器112がAGC増幅器を含む場合、および/または回路100がAOAを含む場合もある。
【0035】
[0044] 追跡閾値検出器110は、信号112Aを受け取るように結合され、信号112Aの正および負ピークを追跡して追跡信号117を生成するように構成されている追跡回路116を含むことができる。追跡閾値検出器110は、また、信号112Aに応答する第1入力118A、追跡信号117に関係する入力信号に応答する第2入力118B、および追跡閾値検出器出力信号145を供給する出力118Cを有する比較器118を含むことができる。
【0036】
[0045] 本明細書において以下で詳細に説明する他の実施形態では、追跡閾値検出器110は、ピーク−ピーク比率検出器(
図3)、ピーク基準検出器(
図4Aおよび
図4B)、ゼロ交差検出器(
図5)、またはこれらの組み合わせを含む。
【0037】
[0046] 実施形態の中には、検出器110,120が、物体124の回転移動を検出する回転検出器である場合もあり、一方他の実施形態の中には、検出器110,120が、物体124の並進移動を検出する並進検出器である場合もある。尚、検出器110,120は、前述した種類の物体移動の検出に限定されるのではなく、物体の回転および並進の組み合わせを含む、他の種類の物体移動も検出できることは注記してしかるべきである。
【0038】
[0047] 尚、信号104A,104B,106A,112A,122Aは全て磁場信号であり、全て、磁場検知エレメント104が受ける磁場を示すことは注記してしかるべきである。
【0039】
[0048] また、回路100は出力信号選択器150も含むことができる。出力信号選択器150は、追跡閾値検出器出力信号145に応答する第1入力150Aと、所定閾値検出器出力信号140に応答する第2入力150Bとを有し、所定の条件に基づいて所定閾値検出器出力信号140または追跡閾値検出器出力信号145の内少なくとも1つに関係する回路出力信号155を生成するように構成されている。
【0040】
[0049]
図8および
図9に関連して以下で更に詳しく説明するが、実施形態の中には、所定の条件が較正時間期間の終了に対応する場合には、出力信号選択器150が、追跡閾値検出器110の較正時間期間中には所定閾値検出器出力信号140に関係する回路出力信号を生成し、較正時間期間の後には追跡閾値検出器出力信号145に関係する回路出力信号を生成するように構成されている場合もある。
【0041】
[0050] 実施形態の中には、所定の条件が、磁場信号106Aの所定のサイクル数、例えば、3サイクルである場合もある。
【0042】
[0051] 他の実施形態では、所定の条件が、所定閾値検出器出力信号140の所定のサイクル数、例えば、3サイクルである場合もある。
【0043】
[0052] 更に他の実施形態では、所定の条件が、所定の時間、例えば、0.1秒に対応する場合もある。実施形態の中には、所定の時間が回転速度に関係がある場合、および/または回転後の所定の時間が検出される場合もある。回転速度が高い程、この時間は短くすることができるが、回転速度が低い程、この時間は長くすることができる。
【0044】
[0053] 他の実施形態では、回路100は、磁場検知エレメント104に結合され信号を処理する(信号106Aと同様でよい)ように構成されているAGCまたはAOAの内少なくとも1つを含む場合もある。これらの実施形態では、所定の条件は、AGCの条件、例えば、信号の3サイクルの間に変化しなかったAGCの利得、またはAOAの条件、例えば、AOAのオフセット値に対応する。
【0045】
[0054] 所定の条件は、以上で記載した条件に限定されるように解釈してはならず、種々のアルゴリズムに基づいて、追跡閾値検出器110を較正するときを決定し、適正な回転速度および/または方向情報を判定することもできる。
【0046】
[0055] 配置の中には、磁場検知エレメント104が物体124の動き、例えば、ギアの強磁性ギア歯の動きに応答することができる場合もある。ギア124上のギア歯124A〜124Cが、この強磁性ギア歯を表している。この目的のために、固定磁石(図示せず)を、磁場検知エレメント104に近接して配置することができ、ギアが回転すると、ギア歯が、磁石によって生成される磁場を乱すことができる。しかしながら、他の配置では、磁場検知エレメント104は、磁石上にある磁性領域、例えば、リング・マグネット126上にある磁性領域126A〜126Cの移動に応答することができる。特定的な配置の中には、リング・マグネット126およびギア124が軸等によって互いに結合されている場合もある。これらの特定の配置では、リング・マグネット126は、磁場検知エレメント104に近接することができる。
【0047】
[0056] 磁場検知エレメント104は、リング・マグネット126の近接、そして具体的には、通過する磁性領域北(N)および南(S)126A〜126Cの近接に応答する。動作において、磁場検知エレメント104は、差動磁場信号104A,104Bを(そして、磁場信号106A,112A,122Aも)生成する。これらの差動磁場信号は、リング・マグネット126が回転するときは、通常繰り返しパターンを有し、このパターンの各ピーク(正および負)が磁性領域N,Sの1つと関連付けられる。
【0048】
[0057] これより
図2を参照すると、更に他の実施形態において、回路200は、第1所定閾値検出器220A、第2所定閾値検出器220B、および追跡閾値検出器210Aを含む。また、回路200は、第1対の磁場検知エレメント205Aも含むことができる。第1対の磁場検知エレメント205Aは、磁場検知エレメント204Aおよび磁場検知エレメント204Cを含み、物体224に伴う磁場に比例する差動磁場信号274A,274B,294A,294Bを供給するように動作する。実施形態の中には、回路200が増幅器206Aを含むことができる場合もある。増幅器206Aは、第1対の磁場検知エレメント205Aから差動信号274A,274Bを受け取るように結合され、信号276A(または、磁場信号)を生成するように構成されている。
【0049】
[0058] 実施形態の中には、第1所定閾値検出器220Aが増幅器222Aを含むことができる場合もある。増幅器222Aは、信号276Aを受け取るように結合され、信号272B(または、磁場信号)を生成するように構成されている。実施形態の中には、増幅器222AがAGC増幅器を含む場合、および/または回路100がAOAを含む場合もある。
【0050】
[0059] 第1所定閾値検出器220Aは、比較器228Aを含むことができる。比較器228は、磁場信号272Bに応答する第1入力278A、所定の閾値230Aに応答する第2入力278B、および第1所定閾値検出器出力信号240Aを供給する出力278Cを有する。所定の閾値230Aは、複数の所定の閾値、例えば、第1所定の閾値および第2所定の閾値を含むことができる。
【0051】
[0060] また、回路200は、第2対の磁場検知エレメント205Bも含むことができる。第2対の磁場検知エレメント205Bは、磁場検知エレメント204Bおよび磁場検知エレメント204Cを含み、物体224に伴う磁場に比例する第2差動磁場信号284A,284B,294A,294Bを供給するように動作する。実施形態の中には、回路200が増幅器206Bを含むことができる場合もある。増幅器206Bは、第2対の磁場検知エレメント205Bから差動信号284A,284B,294A,294Bを受け取るように結合され、信号286A(または、磁場信号)を生成するように構成されている。
【0052】
[0061] 更に他の実施形態では、第2所定閾値検出器220Bが増幅器222Bを含む。増幅器220Bは、信号286Aを受け取るように結合され、信号282B(または、磁場信号)を生成するように構成されている。更にまた他の実施形態では、増幅器222BがAGC増幅器を含む、および/または回路100がAOAを含む。
【0053】
[0062] また、第2所定閾値検出器220Bは比較器228Bも含むことができる。比較器228Bは、磁場信号282Bに応答する第1入力288A、所定の閾値230Bに応答する第2入力288B、および第2所定閾値検出器出力信号240Bを供給する出力288Cを有する。実施形態の中には、検出器220Bの所定の閾値230Bが、検出器220Aの所定の閾値230Aと同一である場合もあり、一方他の実施形態の中には、所定の閾値230A,230Bが異なる場合もある。
【0054】
[0063] 実施形態の中には、回路200の追跡閾値検出器210Aが増幅器212Aを含む場合もある。増幅器212Aは、信号276Aを受け取るように結合され、信号272A(または、磁場信号)を生成するように構成されている。実施形態の中には、増幅器212AがAGC増幅器を含む場合、および/または回路100がAOAを含む場合もある。
【0055】
[0064] 追跡閾値検出器210Aは、追跡回路216Aを含むことができる。追跡回路216Aは、信号272Aを受け取るように結合され、信号272Aの正および負のピークを追跡し、追跡信号277Aを生成するように構成されている。また、追跡閾値検出器210Aは、比較器218Aも含むことができる。比較器218Aは、信号272Aに応答する第1入力278A、追跡信号277Aに関係する入力信号に応答する第2入力278B、および第1追跡閾値検出器出力信号245Aを供給する出力278Cを有する。
【0056】
[0065] また、回路200は出力信号選択器250(
図1に関連して説明した出力信号選択器150と同様でよい)も含むことができる。出力信号選択器250は、追跡閾値検出器出力信号245Aに応答する第1出力250A、第1閾値検出器出力信号240Aに応答する第2入力250B、および第2所定閾値検出器出力信号240Bに応答する第3入力250Cを有する。出力信号選択器250は、第1所定閾値検出器出力信号240A、追跡閾値検出器出力信号245A、または第2所定閾値検出器出力信号240Bの内少なくとも1つに関係する回路出力信号255を、所定の条件に基づいて生成するように構成されている。
【0057】
[0066] 出力信号選択器250は、所定の条件に基づいて、信号245A,245B,240A,240Bを選択し、例えば、これらの信号の1つ以上に基づいて、速度および/または方向、および/または振動情報を決定するロジックを含む。例えば、信号のエッジ・レートが高い程、相対的に速い物体の移動に対応することができ、信号のエッジ・レートが低い程、相対的に遅い物体の移動に対応することができる。例えば、物体が回転ギアである実施形態では、信号周波数がギアの回転速度を示す。これらの信号の内2つの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの相対的位相シーケンスを用いて、物体の移動方向を判定することができる。尚、速度情報および/または方向情報を決定するロジックは、アナログ・ロジック、ディジタル・ロジック、および/または混合ロジックを含んでもよいことは言うまでもない。
【0058】
[0067] これらの実施形態では、第1所定閾値検出器出力信号240Aは、第1所定閾値検出器の位相を有し、第2所定閾値検出器出力信号240Bは、第2所定閾値検出器の位相を有する。第1および第2所定閾値検出器の位相間の差は、物体224の移動方向を示す。所定閾値検出器出力信号240A、閾値検出器の
出力信号245A、または第2所定閾値検出器出力信号240Bの周波数はいずれも、物体224の回転速度に関係する。
【0059】
[0068] 更に他の実施形態では、所定の条件は、第1または第2磁場信号276A,286Aの内一方の所定のサイクル数、例えば、3サイクルに関係する。
【0060】
[0069] 他の実施形態では、所定の条件は、第1または第2所定閾値検出器出力信号240A,240Bの内一方の所定のサイクル数、例えば、3サイクルに関係する。
【0061】
[0070] 更に他の実施形態では、所定の条件は所定の時間に対応する。実施形態の中には、この所定の時間が回転速度に関係する場合、および/または回転後の所定時間を検出する場合もある。
【0062】
[0071] 他の実施形態では、回路200はAGCを含む。このAGCは、第1または第2対の磁場検知エレメント205A,205Bの一方に結合され、第1または第2磁場信号(276A,286A)のそれぞれを処理するように構成されており、所定の条件は、AGCの条件、例えば、AGCの利得に対応する。任意に、回路200はAOAを含む。このAOAは、第1または第2対の磁場検知エレメント205A,205Bの一方に結合され、第1または第2磁場信号(276A,286A)のそれぞれを処理するように構成されており、所定の条件はAOAの条件に対応する。
【0063】
[0072] 再度
図2を参照すると、他の実施形態では、回路200は、第1追跡閾値検出器210A、第2追跡閾値検出器210B、および第1所定閾値検出器220Aを含む。この実施形態では、回路200は、第1対の磁場検知エレメント205A、および第2対の磁場検知エレメント205Bを含む。
【0064】
[0073] 実施形態の中には、第2追跡閾値検出器210Bが増幅器212Bを含む場合もある。増幅器212Bは、信号286Aを(第2磁場検知エレメント205Bから)受け取るように結合され、信号282A(または、磁場信号)を生成するように構成されている。実施形態の中には、増幅器212BがAGC増幅器である場合、および/または回路100がAOAを含む場合もある。
【0065】
[0074] 第2追跡閾値検出器210Bは、追跡回路216Bを含むことができる。追跡回路216Bは、信号282Aを受け取るように結合され、信号282Aの正および負のピークを追跡し、追跡信号277Bを生成するように構成されている。また、第2追跡閾値検出器210Bは、比較器218Bも含むことができる。比較器218Bは、信号282Aに応答する第1入力288A、追跡信号277Bに関係する入力信号に応答する第2入力288B、および第2追跡閾値検出器出力信号245Bを供給する出力288Cを有する。
【0066】
[0075] この実施形態では、回路200は出力信号選択器250(
図1に関連して説明した出力信号選択器150と同様でよい)を含む。出力信号選択器250は、第1追跡閾値検出器出力信号245Aに応答する第1入力250A、第2追跡閾値検出器出力信号245Bに応答する第2入力250D、および第1所定閾値検出器出力信号240Aに応答する第3入力250Bを有する。出力信号選択器250は、第1追跡閾値検出器出力信号245A、第1所定閾値検出器出力信号240A、または第2追跡閾値検出器出力信号245Bの内少なくとも1つに関係する回路出力信号255を、所定の条件に基づいて生成するように構成されている。
【0067】
[0076] この実施形態では、第1追跡閾値検出器出力信号245Aは、第1追跡閾値検出器位相を有し、第2追跡閾値検出器出力信号245Bは、第2追跡閾値検出器位相を有する。第1および第2追跡閾値検出器位相間の差が、物体224の移動方向を示す。第1追跡閾値検出器出力信号245A、第1所定閾値検出器出力信号240A、または第2追跡閾値検出器出力信号245Bの周波数はいずれも、物体224の回転速度に関係する。
【0068】
[0077] 再度
図2を参照すると、更に他の実施形態では、回路200は、第1追跡閾値検出器210A、第2追跡閾値検出器210B、第1所定閾値検出器220A、および第2所定閾値検出器220Bを含む。この実施形態では、出力信号選択器250は、第1追跡閾値検出器出力信号245Aに応答する第1入力250A、第1所定閾値検出器出力信号240Aに応答する第2入力250B、第2所定閾値検出器出力信号240Bに応答する第3入力250C、および第2追跡閾値検出器出力信号245Bに応答する第4入力250Dを含む。このような配置では、出力信号選択器250は、第1および第2追跡閾値検出器出力信号240A,245Bの組み合わせ、または第1および第2所定閾値検出器出力信号240A,240Bの組み合わせに対応する回路出力信号255を、所定の条件に基づいて供給するように構成されている。
【0069】
[0078] 更に他の実施形態では、所定の条件は、第1または第2磁場信号276A,286Aの一方の所定のサイクル数、例えば、3サイクルに関係する。
【0070】
[0079] 更に他の実施形態では、所定の条件は、第1所定閾値検出器出力信号240A、第2所定閾値検出器出力信号240B、第1追跡閾値検出器出力信号245A、または第2追跡閾値検出器出力信号245Bの内1つの所定のサイクル数、例えば、3サイクルに関係する。
【0071】
[0080] 更に他の実施形態では、第1または第2所定閾値検出器220A,220Bの少なくとも1つが、シュミット・トリガを含む。
【0072】
[0081] 尚、本回路は、以上で述べた構成に限定されるのではなく、多数の追跡閾値検出器(即ち、2つよりも多い追跡閾値検出器)および/または多数の所定閾値検出器(即ち、2つよりも多い所定閾値検出器)を含む、他の所望の構成も包含してもよいことは、当業者には明白なはずである。
【0073】
[0082] 回路100,200の動作については、
図7から
図9に関連して以下で説明する。
【0074】
[0083] これより
図3を参照すると、
図1の追跡回路116としての使用に適しているピーク−ピーク比率検出器26が示されている。ピーク−ピーク比率検出器26は、
図1の比較器118のような、比較器428に結合されている。
図1の信号112Aのような磁場信号18が、入力として検出器26に供給される。
【0075】
[0084] 磁場信号18は、第1比較器400の比反転入力と、第2比較器404の反転入力とに印加される。比較器400および404の出力信号は、それぞれ、入力信号GT_PDAC458およびLT_NDAC461を更新コントローラ409に供給し、更新コントローラ409は、図示のように、制御信号をカウンタ414および430に供給する。
【0076】
[0085] 更新コントローラ409は、カウント方向を制御するために、p_updn信号463をカウンタ414のUPDN(アップ/ダウン)入力に供給する。明白になるであろうが、p_updn信号463は通常ではカウンタ414を増加するようにカウントさせる。しかしながら、一定の条件の下では、p_updn信号463は、あるクロック・サイクルの間カウンタ414を減少するようにカウントさせる。カウンタ414はシステム・クロック信号CLKによって駆動される(clock)。p_hold信号465がカウンタ414のHOLD入力に結合されている。カウンタ出力は、HOLD入力信号が第1論理レベルにあるときには、一定に維持され(即ち、カウンタはディスエーブルされる)、HOLD入力信号が第2論理レベルにあるときには解放される(即ち、カウンタはイネーブルされる)。カウンタ414は、HOLD入力がローのときにイネーブルされる6ビット・カウンタとするとよい。
【0077】
[0086] カウンタ414の出力は、正ディジタル/アナログ変換器(PDAC)403の入力に結合されている。PDAC信号402を供給するために、PDAC403がバッファ424によってバッファされ、PDAC信号402は、磁場信号18の正ピークを追跡する電圧(即ち、追跡信号)であればよい。
【0078】
[0087] 比較器414、カウンタ414、PDAC403、およびバッファ424は、検出器回路の「正部分」を構成する。検出器26の「負部分」も、図示のように、同様に配置される。具体的には、更新コントローラ409が、カウント方向を制御するために、n_updn信号466をカウンタ430のUPDN入力に供給する。明らかになるであろうが、n_updn信号466は通常ではカウンタ430を減少するようにカウントさせる。しかしながら、一定の条件の下では、n_updn信号466は、あるクロック・サイクルの間カウンタ430を増加するようにカウントさせる。カウンタ430は、システム・クロック信号CLKによって駆動される。n_hold信号468が、カウンタ430のHOLD入力に結合されている。カウンタ出力は、HOLD入力信号が第1論理レベルにあるときには一定に保持され(即ち、カウンタはディスエーブルされる)、HOLD入力信号が第2論理レベルにあるときには解放される(即ち、カウンタはイネーブルされる)。カウンタ430は、HOLD入力がローのときにイネーブルされる6ビット・カウンタとするとよい。
【0079】
[0088] カウンタ430の出力は、負ディジタル/アナログ変換器(NDAC)405の入力に結合されている。NDAC信号406を供給するために、NDAC405がバッファ436によってバッファされ、NDAC信号406は、磁場信号18の負ピークを追跡する電圧(即ち、追跡信号)であればよい。
【0080】
[0089] バッファされたPDACおよびNDAC信号402、406は、ピーク−ピーク閾値信号THRESHHIおよびTHRESHLOを生成するために、直列結合された抵抗器408,412,416を備える抵抗分圧器(resistor divider)に結合される。これについては、以下で
図8に関連して更に詳しく説明する。
【0081】
[0090] 閾値信号THRESHHIおよびTHRESHLOの各々は、PDACおよびNDAC電圧間の差の比率である。即ち、言い換えると、ピーク−ピーク磁場信号18の比率である。
図8に関連して以下で更に詳しく説明するが、一実施形態では、上位閾値440はピーク−ピーク信号のほぼ75%であり、下位閾値444はピーク−ピーク信号のほぼ25%である。尚、他の比率でも適することもあることは認められよう。スイッチ424aおよび424bが、図示のように、これらの閾値レベルの一方を比較器428に印加するように配置および制御される。スイッチ424bは、POSCOMP信号によって制御される。具体的には、スイッチ424aは、POSCOMP信号の反転バージョン、即ち、POSCOMPNによって制御される。更に、磁場信号18は比較器428の比反転入力に印加される。
【0082】
[0091] これより
図4を参照すると、
図1の追跡閾値検出器110としての使用に適しているピーク基準検出器10が示されている。この検出器10は、磁場信号2を追跡するために1つのディジタル/アナログ変換器(DAC)28を用いる。磁場信号2は、追跡比較器20の反転入力に結合され、追跡比較器20は、図示のように、その非反転入力においてDAC28の出力信号PEAKDAC(即ち、追跡信号)を受け取る。磁場信号2は、更に、
図1の比較器118のような比較器40の反転入力に結合されている。比較器40は、その非反転入力において、PEAKDAC信号を受け取り、検出器出力信号POSCOMPを生成する。比較器40は、内部ヒステリシス、ここでは、約100mVを有するので、POSCOMP出力信号は、磁場信号2が約100mVだけPEAKDAC信号を超過すると、状態を変化させる。比較器20の出力信号COMPOUTは、排他的OR(XOR)ゲート36に結合され、XORゲート36は、加えて、POSCOMP信号も受け取り、HOLD入力信号をアップ/ダウン・カウンタ24に供給する。カウンタ24は、更に、クロック信号CLKおよびPOSCOMP信号にも応答して、カウンタ24が増加するようにカウントするのかまたは減少するようにカウントするのか制御する。カウンタ24の出力信号は、DAC28によって追跡PEAKDAC信号に変換される。
【0083】
[0092]
図4Bに示すように、磁場信号2が、比較器20の小さなヒステリシスだけPEAKDAC信号を超過するときにはいつでも、COMPOUT信号は論理ハイ・レベルに遷移する。カウンタ24へのHOLD入力は、排他的OR(XOR)ゲート36に結合され、XORゲート36は、COMPOUTに結合され、更にPOSCOMP信号を受け取る。一旦カウンタ24が1ステップ上にカウントすると、COMPOUT信号はローになり、信号が比較器20の小さなヒステリシスだけ再度超過するまで、カウンタ値を保持させる。時点t
1において発生するように、磁場信号が正ピークに達すると、PEAKDAC信号は信号2よりも高くなり、これによって、比較器40のヒステリシスが克服されるまで、カウンタ24へのHOLD入力をアサートさせておく。これが発生するのは、時点t
2の直前において、POSCOMP信号がローになるときである。このように、信号の正および負のピークがPEAKDAC信号によって追跡され、検出器出力信号POSCOMPは、比較器40のヒステリシス量よりも多く信号がPEAKDAC信号と異なるとき(時点t
0およびt
2において発生する)に遷移する。
【0084】
[0093] これより
図5を参照すると、いわゆる「ゼロ交差検出器」500である、追跡および比較回路を、
図1の追跡回路116および比較器118と比較することができる。ここでは、増幅器506が2つの磁場検知エレメント502,504から信号502A,502B,504A,504Bを受け取るように結合されている。増幅器506は、バンド・パス・フィルタ(BPF)508に結合される差動磁場信号506A,506Bを生成するように構成されている。磁場信号506A,506Bは、
図1の磁場信号106Aに相応する。BPF508は、差動フィルタ信号(differential filtered signal)508A,508Bを生成するように構成されている。比較器528は、差動フィルタ信号508A,508Bを受け取るように結合され、動き信号POSCOMP510Aを生成するように構成されている。
【0085】
[0094] これより
図6を参照すると、物体の移動を検出する方法600は、602において、物体に伴う磁場に比例する磁場信号を生成するステップ、604において磁場信号の正および負のピークを追跡するために磁場信号に応答する追跡信号を生成するステップ、606において、磁場信号および所定の閾値に応答して所定の閾値出力信号を生成するステップ、608において、磁場信号および追跡信号に応答して追跡閾値出力信号を生成するステップ、並びに、610において、所定の閾値出力信号または追跡閾値出力信号から選択した1つに関係する総合出力信号を、所定の条件に基づいて供給するステップを含む。
【0086】
[0095] 尚、当該方法600は、回路において実現することができ、例えば、
図1に関連して説明した回路100、または
図2に関して説明した回路200において実現できることは認められてしかるべきである。更に、方法ステップ(即ち、ステップ602,604,606,608,610)の内1つ以上をプロセッサにおいて実現することもでき、具体的には、実行のためにメモリからプロセッサにロードするコンピュータ・ソフトウェア命令として実現することができる。
【0087】
[0096] 代替として、以上の方法ステップの内1つ以上を、ディジタル信号プロセッサ回路または特定用途集積回路(ASIC)のような機能的に等価な回路によって実行することもできる。本方法は、いずれかの特定のプログラミング言語のシンタックス(syntax)を図示するのではない。むしろ、本方法は、当業者が回路を製作するため、または本明細書において記載する技法の少なくとも一部を実現するために必要とされる処理を実行するコンピュータ・ソフトウェアを生成するために必要な情報を当業者に例示する。尚、記載するブロックの特定のシーケンスは例示に過ぎず、本発明の主旨から逸脱することなく様々に変更可能であることは、当業者には認められよう。
【0088】
[0097] 方法600の他の実施形態では、所定の条件は、磁場信号の所定のサイクル数に関係する。非限定的な一例では、プロセッサは磁場信号を処理して、磁場信号の所定のサイクル数(例えば、磁場信号の3サイクル)を認識することができる。プロセッサは、所定の条件が満たされた(即ち、磁場信号の3サイクルが発生した)と判断し、所定閾値出力信号または追跡閾値出力信号から1つを選択することによって、総合出力信号を供給する。一構成では、プロセッサは、所定の条件が認められる前には(即ち、プロセッサが磁場信号の所定のサイクル数を認識する前)所定閾値出力信号に関係する総合出力信号を供給し、所定の条件が認められた後には(即ち、プロセッサが磁場信号の所定のサイクル数を認識した後)追跡閾値出力信号に関係する総合出力信号を供給する。
【0089】
[0098] 方法600の他の実施形態では、所定の条件は、所定閾値出力信号の所定のサイクル数に関係する。非限定的な一例では、プロセッサは所定閾値出力信号を処理して、この信号の所定のサイクル数を認識することができる(たとえば、所定閾値出力信号の3サイクル)。プロセッサは、所定の条件が満たされている(即ち、所定閾値出力信号の3サイクルが過ぎた)と判断し、所定閾値出力信号または追跡閾値出力信号から一方を選択することによって総合出力信号を供給する。一構成では、プロセッサは、所定の条件が認められる前には(即ち、プロセッサが所定閾値出力信号の3サイクルを認識する前)、所定閾値出力信号に関係する総合出力信号を供給し、所定の条件が認められた後には(即ち、プロセッサが所定閾値出力信号の3サイクルを認識した後)、追跡閾値出力信号に関係する総合出力信号を供給する。
【0090】
[0099] 方法600の更に他の実施形態では、所定の条件は所定の時間に対応する。この所定の時間は、任意に、
図1に関連して説明した回路100、または
図2に関連して説明した回路200のような回路の較正時間に関係付けることができる。以下で更に詳しく説明するが、較正時間は、差動信号のオフセットおよび利得調節に関係する較正期間に対応するのでもよい。
【0091】
[0100] したがって、更に他の実施形態では、方法600は、較正時間期間中に所定閾値出力信号に関係するように総合出力信号を選択し、較正時間期間の後、追跡閾値出力に関係するように総合出力信号を選択するステップを含む。このように、所定の条件は、較正時間期間の終了に対応する。
【0092】
[0101] 非限定的な一例では、プロセッサは、所定時間(例えば、実施形態の中には、この時間が目標回転速度に関係する場合もある)に基づいて、所定閾値出力信号または追跡閾値出力信号から選択した1つを供給する。更に他の実施形態では、所定の時間は、移動を検出しようとする物体が移動し始めた時刻、または回路(回路200と同一または同様でよい)が起動したまたは電源投入した時刻に関して定められる。非限定的な一例では、物体は、エンジンの回転軸に結合された回転ギアである。この回転ギアは、エンジン構成部品の動き(更に特定すれば、動きの速度および方向)を検出するために用いることができる。非限定的な一例として、車両では、これは、クランクシャフト、排気カムシャフト、吸気カムシャフト、ピストン、接続ロッド、弁、変速ギア、車輪等の動き検出を含むことができる。
【0093】
[0102] 尚、所定の時間は種々のタイミング・イベントに関して定められてもよいことは注記してしかるべきである。例えば、前述したエンジンを中立状態に入れると、その間エンジン構成部品は静止状態(またはアイドル状態)となり、移動の検出は望まれないか、または必要ない。しかしながら、一旦エンジンを始動し構成部品が動作し始めたならば、プロセッサは経過時間を追跡し、所定の時間に達するまで所定閾値出力信号を供給し、その後、プロセッサは追跡閾値出力信号を供給する。
【0094】
[0103] 他の実施形態では、方法600は、AGCを用いて磁場信号を処理するステップを含む。ここで、所定の条件はAGCの条件に対応し、例えば、AGCが更新するのを停止する時点に対応する。更に他の実施形態では、方法600は、AOAを用いて磁場信号を処理するステップを含み、所定の条件は、AOAの条件、例えば、オフセット値に対応する。
【0095】
[0104] これより
図7を参照すると、グラフ700は任意の時間単位とした目盛りを付した横軸と、任意の電圧単位とした目盛りを付した縦軸とを有する。グラフ700の一部700Aは、例えば、
図2の磁場信号272Bを表す時間可変磁場信号772Aを含む。磁場信号772Aは、物体の移動に伴う磁場に応答する。この物体は、
図2に関連して説明した物体224と同様でよい。
【0096】
[0105] グラフ700の他の部分700Cは、例えば、
図2の所定閾値検出器220Aから出力される所定閾値検出器出力信号240Aを表す、所定閾値検出器出力信号740Aを含む。動作において、所定閾値検出器出力信号740Aは、比較器(
図2に関連して説明した比較器228Aと同様でよい)の出力を表す。この比較器は、第1入力において磁場信号772Aに結合され、第2入力において所定の閾値Thを表す基準電圧に結合されている。磁場信号772は、信号772Aのピークに向かうときおよびピーク(このようなピークの例を参照番号771で示す)から離れるときに所定の閾値Thと交差して(ここでは、時点773A,773B)、比較器の出力を第1状態(この一例を参照番号776で示す)から第2状態(この一例を参照番号774で示す)に変化させ、次いで再度第1状態776に変化させる。所定閾値検出器出力信号740Aの第1および第2状態776,774は、正および負のエッジ(これらの例を、それぞれ、参照番号775Aおよび775Bで示す)によって分離されている。同じまたは異なる実施形態では、所定の閾値Thは、第1所定閾値(即ち、時点773Aにおける所定の閾値)と、第2所定閾値(例えば、時点773Cにおける所定の閾値)を含み、これらが第1および第2状態776,774を誘発する。
【0097】
[0106] 実施形態の中には、所定閾値検出器出力信号740Aの第1および第2状態776,774が、物体に伴う時間可変磁場に応答し、1対の磁場検知エレメント(
図2に関連して説明した第1対の磁場検知エレメント205Aと同様でよい)によって検知される場合がある。この1対の磁場検知エレメントは、信号772Aを供給する。磁場信号772Aは、物体が移動して磁場検知エレメントを通過するとき(そして、更に特定すれば、物体224のギア歯224A,224B,224Cのような物体の部分が移動して磁場検知エレメントを通過するとき)に生成する時間可変磁場に関係するパターン(ここでは、簡略化のために正弦波パターンにして示す)を示す。所定閾値検出器出力信号740Aの第1および第2状態776,774は、このパターンのサイクルをエンコードすると言うことができ、このようにして、このパターンを誘発する物体の移動を示す。実施形態の中には、第2状態774が、物体の部分(北極性および南極性を有するギア歯の一部のような部分)が移動して磁場検知エレメントを通過するときにおけるこれらの部分に関係する場合もある。実施形態の中には、磁場信号772Aが飽和する場合もある(その例を参照番号779Aおよび779Bで示す)。
【0098】
[0107] グラフ700の他の部分700Bは、例えば、
図2の磁場信号282Bを表す時間可変磁場信号772Bを含む。磁場信号772Bは、
図2に関連して説明した物体224と同様に、物体の移動に伴う磁場に応答する。
【0099】
[0108] グラフ700(部分700Cにおいて)は、例えば、
図2の所定閾値検出器220Bから出力された所定閾値検出器出力信号240Bを表す所定閾値検出器出力信号740Bを含む。動作において、所定閾値検出器出力信号740Bは、比較器(
図2に関連して説明した比較器228Bと同様でよい)の出力を表す。この比較器は、第1入力において磁場信号772Bに結合され、第2入力において、所定の閾値Thを表す基準電圧に結合されている。磁場信号772Bは、信号772Bのピークに向かうときおよびピークから離れるとき(このようなピークの例を参照番号781で示す)に所定の閾値Thを交差して(ここでは、時点783A,783B)、比較器の出力を第1状態(その一例を参照番号786で示す)から第2状態(その一例を参照番号784で示す)に変化させ、更に再度状態776に変化させる。所定閾値検出器出力信号740Bの第1および第2状態786,784は、正および負のエッジ(その例を、それぞれ、参照番号785Aおよび785Bで示す)によって分離されている。
【0100】
[0109] 実施形態の中には、所定閾値検出器出力信号740Bの第1および第2状態786,784が、物体に伴う時間可変磁場に応答する場合もある。この時間可変磁場は、1対の磁場検知エレメント(
図2に関連して説明した第2対の磁場検知エレメント205Bと同様でよい)によって検知される。この1対の磁場検知エレメントは信号772Bを供給する。磁場信号772Bは、物体が移動して磁場検知エレメントを通過するときに(そして、更に特定すれば、物体224のギア歯224A,224B,224Cのような物体の部分が移動して磁場検知エレメントを通過するときに)時間可変磁場に関係するパターン(ここでは簡略化のために正弦波パターンにして示す)を示す。所定閾値検出器出力信号740Bの第1および第2状態786,784は、このパターンのサイクルをエンコードすると言うことができ、このようにして、パターンを誘発する物体の移動を示す。実施形態の中には、第2状態が、物体の部分(北極性および南極性を有するギア歯の一部のような部分)が移動して磁場検知エレメントを通過するときのこれらの部分に関係する場合もある。
【0101】
[0110] 所定閾値検出器出力信号740Aのエッジ・レートまたは周期は、物体の移動速度を示す。言い換えると、エッジ・レートが高い程、相対的に速い物体移動に対応し、エッジ・レートが低い程、相対的に遅い物体移動に対応する。物体が回転ギアである実施形態では、信号周波数がギアの回転速度を示す。
【0102】
[0111]
図7において、三角形アイコン777の向きは、物体の移動方向を示す。グラフ700において見ることができるように、これらのアイコンは全て紙面の右側に向けられており、グラフに示す時間全体において物体が同じ方向に移動していることを示す。更に、所定閾値検出器出力信号740A,740Bは、相対的な位相を有すると言うことができる。立ち上がりおよび立ち下がりエッジの相対的位相シーケンスは、物体の移動方向を判定するために用いることができる。物体が回転ギアである実施形態では、アイコンの方向は、ギアの時計回りまたは反時計回り方向の回転移動を示す。
【0103】
[0112] これより
図8を参照すると、グラフ800は、任意の時間単位とした目盛りを付した横軸と、任意の電圧単位とした目盛りを付した縦軸とを有する。グラフ800の一部800Aは、例えば、
図2の磁場信号272Aを表す時間可変磁場信号872Aを含む。磁場信号872Aは、物体の移動に伴う磁場に応答する。この物体は、
図2に関連して説明した物体224と同様でよい。通常の動作では、PDAC信号874Aは、
図3に関連して説明したPDAC信号402を表すことができ、正のピーク(その一例を参照番号871Aで示す)を取り込んで追跡することができる。PDAC信号874Aは、サイクルにおける種々の時点の間、例えば、時点t
1およびt
2の間における磁場信号872Aを追跡しようとして、最終的に時点t
5付近における磁場信号872Aの正のピークに達する。これは、磁場信号872Aの約3サイクル以内(または、検出目標物の回転速度に関係付けることができる時間期間にわたって)であるとよい。PDAC信号874Aは他の時点では一定である(hold)。
【0104】
[0113] 尚、PDAC信号874Aは、磁場信号872Aの正ピークに達する前の時間(破線のボックス890Aで示す時間のような)に生成されるが、精度が低く、真の動き検出情報を表さないので、
図8には示されていないことは、注記してしかるべきである。また、実施形態の中には、PDAC信号874Aが、磁場信号872Aの正ピークの直前(例えば、正ピーク871Aの直前)に解放され、ピークを取り込んだときに磁場信号872Aを追跡する場合もあることも注記してしかるべきである。
【0105】
[0114] 同様に、NDAC信号876Aは、
図3に関連して説明したNDAC信号406を表すことができ、負のピーク(その一例を参照番号881Aで示す)を取り込み追跡することができる。NDAC信号876Aは、サイクルにおける種々の時点の間、例えば、時点t
3およびt
4の間における磁場信号872Aを追跡しようとして、最終的に時点t
6付近における磁場信号872Aの負のピークに達する。これも、磁場信号872Aの約3サイクル以内であるとよい。PDAC信号876Aは他の時点では一定である(hold)。
【0106】
[0115] 尚、NDAC信号876Aは、磁場信号872Aの負のピークに達する前の時間(破線のボックス892Aで示す時間のような)に生成されるが、精度が低く、真の動き検出情報を表さないので、
図8には示されていないことは、注記してしかるべきである。また、実施形態の中には、NDAC信号876Aが、磁場信号872Aの負のピークの直前(例えば、負ピーク881Aの直前)に解放され、ピークを取り込んだときに磁場信号872Aを追跡する場合もあることも注記してしかるべきである。
【0107】
[0116] グラフ800の他の部分800Bは、例えば、
図2の磁場信号282Aを表す時間可変磁場信号872Bを含む。磁場信号872Bは、
図2に関連して説明した物体224と同様でよい、物体の移動に伴う磁場に応答する。通常の動作では、PDAC信号874Bは、
図3に関連して説明したPDAC信号402を表すことができ、正のピーク(その一例を参照番号871Bで示す)を取り込んで追跡することができる。PDAC信号874Bは、サイクルにおける種々の時点の間、例えば、時点t
7およびt
8の間において磁場信号872Bを追跡しようとして、最終的に時点t
11の付近で磁場信号872Aの正のピークに達する。これは、磁場信号872Aの約3サイクル以内であるとよい。PDAC信号874Bは、他の時点では一定である。
【0108】
[0117] 尚、PDAC信号872Bは、磁場信号872Bの正のピークに達する前の時間(破線のボックス80Bで示す時間のような)に生成されるが、精度が低く、真の動き検出情報を表さないので、
図8には示されていないことは、注記してしかるべきである。また、実施形態の中には、PDAC信号872Bが、磁場信号872Bの正のピークの直前(例えば、正のピーク871Bの直前)に解放され、ピークを取り込んだときに磁場信号872Bを追跡する場合もあることも注記してしかるべきである。
【0109】
[0118] 同様に、NDAC信号876Bは、
図3に関連して説明したNDAC信号406を表すことができ、負ピーク(その一例を参照番号881Bで示す)を取り込んで追跡することができる。NDAC信号876Bは、サイクルにおける種々の時点の間、例えば、時点t
9およびt
10の間における磁場信号872Bを追跡しようとして、最終的に、時点t
12の付近で磁場信号872Bの負のピークに達する。これも、磁場信号872Bの約3サイクル以内であるとよい。NDAC信号876Bは、他の時点では一定である。
【0110】
[0119] 尚、NDAC信号876Bは、磁場信号872Bの負ピークに達する前の時間(破線のボックス892Bによって示される時間のような)に生成されるが、精度が低く、真の動き検出情報を表さないので、
図8には示されていないことは、注記してしかるべきである。また、実施形態の中には、NDAC信号876Bが、磁場信号872Bの負のピークの直前(例えば、負ピーク881Bの直前)に解放され、ピークを取り込んだときに磁場信号872Bを追跡する場合もあることも注記してしかるべきである。
【0111】
[0120] グラフ800の他の部分800Cは、例えば、
図2の追跡閾値検出器210Aから出力される追跡閾値検出器出力信号245Aを表す追跡閾値検出器出力信号745Aを含む。動作において、追跡閾値検出器出力信号745Aは、比較器(
図2に関連して説明した比較器218Aと同様でよい)の出力を表す。この比較器は、第1入力において磁場信号872Aに結合され、第2入力において追跡信号に結合されている。この追跡信号は、追跡回路216Aから出力され
図2に関連して説明した追跡信号277Aと同様でよい。
【0112】
[0121] 追跡閾値出力信号745Aは、磁場信号872Aの正および負ピークとそれぞれ一致するエッジ747A,747Bを有する。
図8において分かるのは、ある時点(例えば、t
6の付近)では、追跡閾値検出器出力信号745Aのエッジ間が、磁場信号872Aのピーク間の広さと一致することであり、この時点において、追跡閾値検出器が磁場信号872Aのピークに対して較正されたと言うことができる(即ち、追跡閾値検出器出力信号745Aは、精度高く磁場信号872Aの正および負のピークを追跡する)。追跡閾値検出器出力信号745Aは、磁場信号872Aのピーク間の広さに一致する前の時間(破線のボックス893によって示す時間のような)に生成されるが、用いられないので、
図8では示されていない。
【0113】
[0122] また、グラフ800の部分800Cは、例えば、
図2の追跡閾値検出器210Bから出力された追跡閾値検出器出力信号245Bを表す追跡閾値検出器出力信号745Bも含む。動作において、追跡閾値検出器出力信号745Bは、比較器(
図2に関連して説明した比較器218Bと同様でよい)の出力を表す。この比較器は、第1入力において磁場信号872Bに結合され、第2入力において、追跡信号に結合されている。この追跡信号は、
図2に関連して説明した追跡回路216Bから出力される追跡信号277Bと同様でよい。
【0114】
[0123] 前述の信号745Aと同様に、追跡閾値出力信号745Bは、磁場信号872Bの正および負のピークとそれぞれ一致するエッジ757A,757Bを有する。
図8において分かるのは、ある時点において(例えば、t
12の付近で)、追跡閾値出力信号745Bのエッジ間が、磁場信号872Bのピーク間の広さに対応することであり、この時点において、追跡閾値検出器が磁場信号872Bに対して較正されたと言うことができる(即ち、追跡閾値検出器出力信号745Bは精度高く磁場信号872Bの正および負のピークを追跡する)。追跡閾値出力信号745Bは、それが磁場信号872Bのピーク間の広さと一致する前の時間(例えば、破線ボックス893によって示される時間)に生成されるが、用いられないので
図8には示されていない。
【0115】
[0124]
図8において、三角形のアイコン(その一例を参照番号877で示す)は物体の移動速度および方向を示す。追跡閾値検出器出力信号745A、745Bのエッジ・レートまたは周期は、物体の移動速度を示す。言い換えると、エッジ・レートが高い程、相対的に速い物体移動に対応し、エッジ・レートが低い程、相対的に遅い物体移動に対応する。物体が回転ギアである実施形態では、信号の周波数はギアの回転速度を示す。
【0116】
[0125]
図8において、三角形アイコン877の向きは、物体の移動方向を示す。グラフ800において見ることができるように、第1の三角形アイコン877Aは、想像の輪郭で示されており、方向出力が生成されるが、精度が低いのでこの方向情報は所定閾値検出器から生成するとよいことを示す。他のアイコン(例えば、参照番号877Bで示すアイコン)は、紙面の右側に向けられている。
図2に関連して先に説明した回路配置と同一または同様でよいが、第1および第2追跡閾値検出器出力信号745A,745Bは、オフセット磁場検知エレメント(磁場検知エレメント204A,204Bのような)に対する物体の移動に応答する。したがって、信号745A,745Bの立ち上がりおよび立ち下がりエッジの相対的位相シーケンスは、物体の移動方向を表す。
【0117】
[0126] 連続するエッジ760Cおよびエッジ760Bは、物体の移動方向を精度高く判定し更新するために用いることができる(三角形アイコン877Bおよび他の連続するアイコンによって見ることができるように)。物体が回転ギアである実施形態では、アイコンの方向は、ギアの時計回り方向または反時計回り方向の回転移動を示す。
【0118】
[0127] 再度
図7および
図8を参照すると、所定閾値検出器出力信号(740A,740B)を用いて、時点t
0における回路の起動または電力投入に近い時点で、正しい物体移動情報(具体的には、物体の移動方向)を生成できることが分かる。例えば、所定閾値検出器出力信号(740A,740B)を用いた正しい物体移動方向情報は、時点t
0の後に時点t
01において直ちに生成することができる。追跡閾値検出器出力信号(745A,745B)を用いた正しい物体移動方向情報は、時点t
01よりも後に、時点t
02において生成することができる。時間差の少なくとも一部は、追跡閾値検出器を較正するために必要な時間に帰することができる。対照的に、所定閾値検出器は、磁場信号が所定の閾値(例えば、773A,773Bまたは773A,773C)を交差するときにはいつでも物体移動方向情報を生成することができる。これは、回路の起動または電力投入後比較的直ぐに行うことができる。
【0119】
[0128] これより
図9を参照すると、第1グラフ900Aは、任意の時間単位とした目盛りを付した横軸と、任意の電圧単位とした目盛りを付した縦軸とを有する。グラフ900Aは、例えば、
図2の所定閾値検出器220Aから出力された所定閾値検出器出力信号240Aを表す第1所定閾値検出器出力信号940Aと、例えば、
図2の回路200の所定閾値検出器220Bから出力された所定閾値検出器出力信号240Bを表す第2所定閾値検出器出力信号940Bとを含む。また、グラフ900Aは、例えば、
図2の追跡閾値検出器210Aから出力された追跡閾値検出器出力信号245Aを表す第1追跡閾値検出器出力信号945Aと、例えば、
図2の回路200の追跡閾値検出器210Bから出力された追跡閾値検出器出力信号245Bを表す第2追跡閾値検出器出力信号945Bとを含む。
【0120】
[0129] 第2グラフ900Bは、任意の時間単位とした目盛りを付した横軸と、グラフ900Aの信号940A,940B,945A,945Bの内1つと関係がある選択出力情報(その一例を参照番号955で示す)を示す縦軸とを有する。選択出力情報955は、物体の移動に関係し、
図7および
図8に関連して先に説明した物体移動情報(例えば、物体の移動速度および方向)と同一または同様でよい。
【0121】
[0130] 例えば、時点t
21において、選択物体速度情報955Aは信号940Aに関係があり、時点t
24において、選択物体速度情報955Bは信号945Aに関係がある。ここで、回路の起動または電力投入の間、出力信号選択器(
図2の回路200の出力選択器250と同一または同様でよい)が、所定閾値検出器出力信号の内1つ(例えば、第1所定閾値検出器出力信号940A)を選択して速度情報を生成し、更にt
24において追跡閾値検出器出力信号の内1つ(例えば、第1追跡閾値検出器945A)を選択して速度情報を生成する。
【0122】
[0131] 時点t
22において、選択物体方向情報955Cが、信号940A,940Bから導き出され、時点t
23において、選択物体方向情報955Dが、信号945A,945Bから導き出される。ここで、回路の起動または電力投入の間に、出力信号選択器は、所定閾値検出器出力信号(例えば、所定閾値検出器出力信号940A,940B)の相対的位相を選択して、方向情報を導き出し、時点t
23において、追跡閾値検出器出力信号(例えば、追跡閾値検出器信号945A,945B)の相対的位相を選択して、方向情報を導き出す。時点t
23(即ち、
図2の回路200の出力選択器250が、所定閾値検出器220A,220Bを使用することから、追跡閾値検出器210A,210Bを使用することに切り替える時点)は、回路の較正時点、および/または信号940A,940B,945A,945Bの所定のサイクル数を含むがこれらに限定されない所定の条件に対応するとよい。三角形アイコン977は、出力信号選択器によって出力された物体方向情報の内、第1および第2の所定閾値検出器出力信号940A,940Bに関係するものを表し、三角形アイコン979は、出力信号選択器によって出力された物体方向情報の内、第1および第2追跡閾値検出器出力信号945A,945Bに関係するものを表す。
【0123】
[0132] 尚、移動方向の素早い判定を得るためには、2つの所定閾値検出器出力信号間において相対的位相を素早く判定できるように、2つの所定閾値検出器を用いるとよいことは認められよう。しかしながら、
図1におけるように、1つの所定閾値検出器のみの使用でも、なおも利点を得ることができ、例えば、物体の移動速度の一層素早い判定ができる(例えば、時点t
21において始まる選択出力情報955を参照のこと)。
【0124】
[0133] 以上では特定数のサイクル、特定の時点、およびその他の特定のパラメータについて記載したが、他のサイクル数、他の時点、および他の特定のパラメータも用いることができることは認められよう。
【0125】
[0134] 尚、本明細書において説明した回路は、自動車エンジン管理の用途を含むがこれには限定されないセンサ用途において、速い速度および/または方向情報を生成することが望まれる、必要とされる、または必要である用途において用いるとよいことは認められてしかるべきである。
【0126】
[0135] 本明細書において引用した引例は全て、引用したことによってその内容全体が本願にも含まれるものとする。
【0127】
[0136] 以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、その概念を組み込んだ他の実施形態も用いてもよいことは当業者には今や明白であろう。したがって、これらの実施形態は開示した実施形態に限定されるのではなく、添付した請求項の主旨および範囲によってのみ限定されてしかるべきであると考える。